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特開2024-135227測定装置、表面プラズモン共鳴センサ、ウェアラブルセンサおよび製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135227
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】測定装置、表面プラズモン共鳴センサ、ウェアラブルセンサおよび製造方法。
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01N21/41 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045807
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】長澤 和輝
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB13
2G059CC12
2G059EE04
2G059GG01
2G059GG02
2G059KK04
(57)【要約】
【課題】
小型の測定装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、半導体基板と前記半導体基板上に形成され、光を前記半導体基板内に出射する発光素子と前記半導体基板内を通過した前記光が入射光として入射し、前記入射光の少なくとも一部を反射光として反射する測定部と前記半導体基板内を通過した前記反射光を受光する受光素子とを備えた測定装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と
前記半導体基板上に形成され、光を前記半導体基板内に出射する発光素子と
前記半導体基板内を通過した前記光が入射光として入射し、前記入射光の少なくとも一部を反射光として反射する測定部と
前記半導体基板内を通過した前記反射光を受光する受光素子と
を備えた測定装置。
【請求項2】
半導体基板と
光を前記半導体基板内に出射する発光素子と
前記半導体基板内を通過した前記光が入射光として入射し、前記入射光の少なくとも一部を反射光として反射する測定部と
前記半導体基板上に形成され、前記半導体基板内を通過した前記反射光を受光する受光素子と
を備えた測定装置。
【請求項3】
前記受光素子が前記半導体基板上に形成されたことを特徴とする請求項1の測定装置。
【請求項4】
前記半導体基板、前記発光素子、前記受光素子、前記測定部が一体に構成された
ことを特徴とする請求項1の測定装置。
【請求項5】
前記発光素子および前記受光素子が前記半導体基板の同一表面に成膜形成された
ことを特徴とする請求項3または4の測定装置。
【請求項6】
前記発光素子が面発光型レーザであることを特徴とする
請求項1に記載の測定装置。
【請求項7】
前記発光素子は、第1の上部コンタクト層と、第1のキャリア励起層と、前記第1の上部コンタクト層よりも前記半導体基板に近い側の第1の下部コンタクト層と、を備え、
前記受光素子は、第2の上部コンタクト層と、第2のキャリア励起層と、前記第2の上部コンタクト層よりも前記半導体基板に近い側の第2の下部コンタクト層と、を備え、
少なくとも、前記第1の下部コンタクト層と前記第2の下部コンタクト層とが同じ材料であることを特徴とする
請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
前記発光素子と前記受光素子は、
前記キャリア励起層を異なる膜厚、もしくは異なる材料からなる
ことを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項9】
前記光が前記半導体基板内部で少なくとも2回以上反射する
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項10】
請求項1に記載の測定装置を備えたウェアラブルデバイス。
【請求項11】
発光された光が半導体基板内に出射されるように前記半導体基板に発光素子を形成する工程と
前記半導体基板内を通過した前記光が入射するように前記半導体基板に測定部を配置する工程とを備える
測定装置の製造方法。
【請求項12】
半導体基板内を通過した光が入射するように前記半導体基板に測定部を配置する工程と
前記測定部に入射した前記光が前記測定部で反射した反射光が入射するように前記半導体基板に受光素子を形成する工程とを備える
測定装置の製造方法。
【請求項13】
前記測定部に表面プラズモン共鳴を発生させる金属層を備える請求項1または2の表面プラズモン共鳴センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、表面プラズモン共鳴センサ、ウェアラブルセンサおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、光源として光の指向性、偏光面制御性に優れ、アレイ化に適した面発光レーザを、また光検出器としてCCDなどのセンサアレイを用い、これらを同一の基板に作製し、基板上に設けた或は存在する光透過性媒体と金属薄膜とを有する表面プラズモン共鳴センサ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3647267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小型化された測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる測定装置は、半導体基板と前記半導体基板上に形成され、光を前記半導体基板内に出射する発光素子と前記半導体基板内を通過した前記光が入射光として入射し、前記入射光の少なくとも一部を反射光として反射する測定部と前記半導体基板内を通過した前記反射光を受光する受光素子とを備えたことを特徴する。
【発明の効果】
【0006】
小型化された測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の概略図である。
図2】発散角2.5°の面発光レーザの表面プラズモン共鳴波形である。
図3】第1の実施形態の概略図(平面図)(a)表面(b)裏面である。
図4】第1の実施形態に係る面発光レーザ素子とフォトダイオードの断面図である。
図5】第1の実施形態に係る感応部の断面図である。
図6】第3の実施形態に係る面発光レーザとフォトダイオードの部分断面図である。
図7】第3の実施形態に係る製造方法を説明する概略図(断面図)である。
図8】第3の実施形態に係る面発光レーザとフォトダイオードの部分断面図である。
図9】第4の実施形態の概略図(平面図)(a)表面(b)裏面である。
図10】第4の実施形態の概略図(断面図)である。
図11】第4の実施形態に係るミラー構造を例示する部分断面図である。
図12】第4の実施形態に係る感応部を例示する部分断面図である。
図13】黒線は発生した表面プラズモン共鳴の波形を示し、丸い点はフォトダイオードアレイでの測定点を示す。(a)比較例(b)本実施形態を示す。
図14】第5の実施形態の概略図(平面図)(a)表面(b)裏面である。
図15】第5の実施形態に係る概略図(断面図)である。
図16】第6の実施形態に係る概略図(断面図)である。
図17】第7の実施形態に係る概略図(断面図)である。
図18】第8の実施形態に係る概略図(断面図)である。
図19】第9の実施形態の概略図(断面図)である。
図20】第10の実施形態の概略図である。(a)指輪型(b)腕時計型(c)コンタクトレズ型である。
図21】第11の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<第一の実施形態>
図1は第1の実施形態である測定装置100の概略図である。本実施形態の測定装置100は表面プラズモン共鳴センサとも呼ばれる表面プラズモン共鳴現象を利用した測定装置である。主要構成要素は、光源104、感応部102、フォトダイオードアレイ103および半導体基板101である。光源104から発生した光106は半導体基板101内を伝搬し、傾斜ミラー構造105で反射し、入射光106として感応部102に入射し、感応部102で入射光106の少なくとも一部が反射され、反射光106’がフォトダイオードアレイ103で受光される。まず初めに、主要な構成要素をそれぞれ個別に説明する。
【0010】
<光源>
光源104には裏面出射型発光ダイオード構造や裏面出射型面発光レーザ等を使用する。これらの光源は半導体基板101上に有機金属気相成長法や分子線エピタキシー法などで形成される。
【0011】
図1に示した軸の表示に従い、半導体基板101は、XY平面上にあり、+Z方向からみた面を表面とし、-Z方向からみた面を裏面とする。以下、裏面および表面はこれに従う。裏面出射型面発光レーザは、半導体基板101の裏面(-Z面)に形成した面発光レーザ104の場合、+Z方向(半導体基板101側)に光出射する。
【0012】
発光ダイオードの場合の層構成は基板上に下部コンタクト層、キャリア活性層を含む発光領域、上部コンタクト層からなっている。裏面側へ出射しやすいように必要に応じて、発光領域と上部コンタクト層の間に、反射率を高めるような多層膜構造(例えば、ブラッグ反射鏡構造。ブラッグ反射鏡の説明は以下に記述)を形成してもよい。面発光レーザの場合の層構成は半導体基板101上に下部ブラッグ反射鏡、活性層を含む共振領域、上部ブラッグ反射鏡を成長させたものである。
【0013】
ブラッグ反射鏡とは、屈折率の異なる材料が出射波長λに対して1/4波長の光学膜厚で交互に積層された構造体である。
【0014】
上部ブラッグ反射鏡と下部ブラッグ反射鏡の間で光が基板に対して垂直方向に共振し、一部の光が基板に対して垂直方向に出射することを特徴とする。上部のミラーの反射率を高く設計することで基板方向にレーザ光が出射する裏面出射型面発光レーザ構造である。
【0015】
この多層膜の成長構造を様々な半導体プロセス技術を用いて、メサ状に成型、選択酸化などによる電流狭窄領域の形成、パッシベーション層や電極の形成などを行い面発光レーザや発光ダイオードが完成する。
【0016】
光源はアレイ状に複数配置しても良い。光源の波長は半導体基板に吸収されない波長を選択して使用する。
【0017】
<フォトダイオードアレイ>
フォトダイオードの成長構造は光源と同一である。発光ダイオードもしくは面発光レーザに光を照射すると、活性層で光吸収が発生し、キャリアが励起される。電極を通して活性層に電圧をかけておき、励起されたキャリアを取り出し、電流量を光量に換算する。
【0018】
パターニングの変更のみで、光源形成と同様の半導体プロセスを行うことで完成するため、光源形成と同時にフォトダイオードアレイを形成することができる。フォトダイオードアレイは1次元的でも2次元的に配置してもよい。
【0019】
<表面プラズモン共鳴>
異なる誘電率を持つ2つの領域が接する平らな界面では、界面に沿って進む電磁波が存在することがある。金属と誘電体の界面の場合、金属の自由電子が界面に沿って粗密波を作り伝搬する表面プラズモン波と呼ばれる。金属表面近傍の誘電体内には表面プラズモンの電子の粗密波に起因し、電子の粗な領域から電子の密な領域へ電場が形成されている。電場は界面から垂直方向に形成されているため、電場と相互作用させて表面プラズモンを励起するためには、垂直方向に電場を有するp偏光が必要である。
【0020】
また、表面プラズモンの波数は通常の光の波数と比較して大きいため、波数保存則が成立せず、表面プラズモンを励起することができない。臨界角以上で入射するp偏光の光が全反射する際に発生するエバネッセント波は、表面プラズモン波と波数が一致する入射角が存在する。この角度は一般に表面プラズモン共鳴角と呼ばれ、表面プラズモン波が強く励起される。この現象を表面プラズモン共鳴と呼ぶ。
【0021】
共鳴角付近では入射光のエネルギーがエバネッセント波を介して、表面プラズモン波を励起することに使われるため、反射光強度が低下する。
【0022】
共鳴角は金属表面から垂直方向に100nm程度の領域の屈折率の微小な変化に大きく影響を受ける。例えば金属表面に抗体を固定化しておき、そこに抗原を含む流体を流すと、抗体が抗原を補足することで表面の屈折率がわずかに変化し共鳴角が変動する。このような反応を利用して、共鳴角の変化をセンシングすることにより有機分子の検知や濃度推定をすることができる。このような測定装置を表面プラズモン共鳴センサ100と呼ぶ。
【0023】
光源は発光ダイオードでも面発光レーザのどちらでも良いが、表面プラズモン共鳴の励起にはp偏光での入射光が必要である。面発光レーザであればp偏光での出射が可能である。発光ダイオード構造の場合無偏光の光出射になるため、表面プラズモン共鳴の波形はs偏光成分の反射光と同時に測定されることになり、表面プラズモン共鳴センサ100の精度が落ちる。
【0024】
面発光レーザの場合、発光ダイオードと比較して単色性に優れるため、表面プラズモン共鳴の波長分散による波形がシャープに得ることが可能である。よって表面プラズモン共鳴の測定精度は面発光レーザを適応した形態のほうが高い。
【0025】
一方で発光ダイオードは低コストで作製することが可能なため、必要に応じて面発光レーザが発光ダイオードかを選択すればよい。
【0026】
<傾斜ミラー構造>
光源から出射した光は基板の裏面に形成された傾斜ミラー構造105により反射され、半導体基板101内を直進、反射をしながら進む。
【0027】
傾斜ミラー構造105はグレースケール露光とエッチングや、結晶方位ごとのエッチングレートの違いを利用したエッチングなどにより形成する。傾斜ミラー構造105のミラー面には感応部102が形成されている。ミラー構造105は曲面であってもよく、特に、光を発散させて反射させる曲率を有する曲面ミラーが好ましい。
【0028】
<感応部>
感応部102は一般的なフォトリソグラフィとプラズマ化学堆積法等を用いて、反射防止コーティングと誘電体層、フォトリソグラフィと真空蒸着やスパッタリング等の技術を用いて金属層が形成されている。金属層の上には抗体などのような測定対象物質を補足するための感応膜が形成されている。感応膜は自己組織化単分子膜や抗体等の有機分子の固定化プロセスで形成され、フォトリソグラフィなどのパターニング技術と併用してもよい。併用せずにウエハ全面に形成してもよい。なお、感応部102は金属層と感応膜だけでも良く、反射防止コーティングや誘電体層はあってもなくても良い。傾斜ミラー構造105の形成と感応膜の形成は、半導体基板101の裏面に対して半導体プロセスの手法で形成する。
【0029】
光源104から光は発散角を持ち、広がりながら半導体基板101(光路)中を伝搬していく。光は傾斜ミラー構造105の上に形成された感応部へ入射し、金属層で反射される。光のもつ発散角が感応部102内の金属層への入射角となる。反射光の強度分布は、表面プラズモン共鳴の入射角度に対する反射率と、発散角を持つ光の強度分布との積の形になる。以下の図2に一例として発散角2.5度の裏面出射型面発光レーザの場合の反射光の強度分布を示す。図2は発散角2.5度の面発光レーザの表面プラズモン共鳴波形である。
【0030】
反射光は半導体基板101内をさらに直進し、フォトダイオードアレイ103に入射する。反射光の角度成分を、フォトダイオードアレイ103の座標に変換して検出する。感応部102にて有機分子が感応膜に補足されると、共鳴角がシフトするため、フォトダイオードアレイ103での信号の座標変化として検出される。
【0031】
実際は図2の波形をフォトダイオードの配置のピッチで測定するため、波形を連続的に測定することはできない。特に共鳴角付近は測定点が少なくなることから、フォトダイオードアレイの配置ピッチは可能な限り狭小化すべきであり、必要に応じて2次元アレイ構造を採用し空間分解能を高めてもよい。また、フォトダイオードの計測ノイズなどの誤差を小さくするため、同じ条件での複数回の測定を行い、平均化処理等を行う。その後、波形の推定を行い共鳴角変化の測定結果を得る。
【0032】
本方式では表面プラズモン共鳴センサ100の各素子を半導体プロセスの集積性で形成することができ、従来の素子ごとに実装する方式、及びチップ分割後に行うプロセスよりも小型な表面プラズモン共鳴センサを作ることが可能である。
【0033】
<測定装置の詳細説明>
図3は、本実施形態の測定装置を示す平面図である。なお、図3は本実施形態の説明のため簡略化されており、便宜上実際の構成とは縮尺や構成している素子の数などが異なる。
【0034】
図4は、本実施形態に係る面発光レーザ104とフォトダイオード206を例示する部分断面図であり、図3のA-A’線と図3のB-B’線に沿う断面を示している。なお、図4は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上詳細な層構成等の記載は省略されている。
【0035】
図5は、本実施形態に係る傾斜ミラー構造105とその上に形成された感応部102を例示する部分断面図であり、図3のD-D’線に沿う断面を示している。なお、図5は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上詳細な層構成等の記載は省略されている。
【0036】
図3に示す感応部102はGaAs基板上に形成されている。結晶成長面側には1個もしくは複数個の光源104が形成されており、フォトダイオード206がアレイ状に形成され、フォトダイオードアレイ103を形成している。光源104を複数形成する場合、1次元的にも2次元的にも形成してよい。フォトダイオードアレイは2次元的にアレイ化してもよい。正極側電極204と負極側電極207は各々の素子に個別に接続されている。
【0037】
半導体基板101の裏面(結晶成長面と逆で、+Z方向から見た面)側には傾斜ミラー構造105と感応部102が形成されている。この感応部102は長手方向1mm以下程度、短手方向100μm程度のチップサイズで形成されている。なお、各素子を形成する際の加工プロセスの最小加工幅で、素子の配置をより高密度にすることでさらなる小型化をしてもよい。
【0038】
以下ではまず光源104の裏面出射型面発光レーザの場合について説明する。図4では図3における光源104の破線A-A’、フォトダイオードアレイ103の破線B-B’における、構造断面の簡略図である。
【0039】
図3及び4に示すように、面発光レーザ104はメサ構造となっている。面発光レーザ104の上部から視たメサ構造の形状は、円形であってもよく、楕円形、正方形、長方形等であってもよい。面発光レーザ104では、半導体基板101裏面(結晶成長面と反対)側(図4の矢印の方向320)にレーザ光が出射され、GaAs基板内を伝搬する。この面発光レーザは複数形成しても良く、各々の面発光レーザは各々に対応した電極に接続されている。
【0040】
面発光レーザ104において、半導体基板101上には、n型コンタクト層308が形成されている。n型コンタクト層は例えばn-GaAsから形成されている。n型コンタクト層308はn電極309に接続されている。n型コンタクト層の上には、下部ブラッグ反射鏡307(以下、下部DBR307とする)形成されている。なお、DBRとは、Distributed Bragg Reflectorの略である。
【0041】
半導体基板101としては、例えば、SI-GaAs基板(Semi-Insulating Type)を用いることができる。下部DBR307は、屈折率の異なる半導体材料を交互に積層形成したものである。具体的には、下部DBR307は、例えば、n-Al0.16Ga0.84As高屈折率層とn-Al0.9Ga0.1As低屈折率層とを各々の層の光学的膜厚が1/4波長となるように23.5ペア積層することにより形成することができる。なお、下部DBR307のペア数は必要な所望の反射率を達成するために23.5ペアから多くても少なくても良く、材料系はAlGaAsの組成比を変更しても良い。
【0042】
下部DBR307上には、AlGaAsからなる下部スペーサ層、GaInAs量子井戸層/AlGaAs障壁層からなる活性層、AlGaAsからなる上部スペーサ層からなる、共振器領域306が形成されている。なお、共振器領域306は1波長の光学的膜厚となっている。共振器領域306の上には、第一の上部ブラッグ反射鏡312(以下、上部DBR312とする)が形成されている。
【0043】
第1の上部DBR312は、屈折率の異なる半導体材料を交互に積層形成したものである。具体的には、第1の上部DBR312は、例えば、p-Al0.16Ga0.84As高屈折率層とp-Al0.9Ga0.1As低屈折率層とを各々の層の光学的膜厚が1/4波長となるように1ペア積層することにより形成することができる。なお、上部DBR312のペア数は必要な所望の反射率を達成するために1ペアから多くても少なくても良く、材料系はAlGaAsの組成比を変更しても良い。
【0044】
第1の上部DBR312の上には、AlAsからなる電流狭窄層304が形成されている。電流狭窄層304の周辺部分は選択酸化されて選択酸化領域305が形成されており、中心部分は酸化されていない電流狭窄領域304が形成されている。
【0045】
酸化層304及び選択酸化領域305の上には、第2の上部ブラッグ反射鏡303(以下、上部DBR303とする)が形成されている。第2の上部DBR303は第1の上部DBR312と同じ材料系で形成してもよく、40ペア積層することにより形成することができる。なお、上部DBR303のペア数は必要な所望の反射率を達成するために40ペアから多くても少なくても良く、材料系はAlGaAsの組成比を変更しても良い。
【0046】
第2の上部DBR303の上には、コンタクト層302が形成されている。コンタクト層302は、例えば、p-GaAsから形成することができる。p型コンタクト層302はp電極301に接続されている。
【0047】
光源104の波長は半導体基板101の吸収が無い波長帯であればどの波長でも良く、例えばSI-GaAs基板の場合、940nm帯の出射波長にすることができる。それよりも長波長でも良い。
【0048】
このように基板310上に複数の層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」と称する場合がある。積層体の形成は、例えば、有機金属気相成長(MOCVD)法で行うことができる。又、分子線エピタキシャル成長(MBE)法等を用いて行ってもよい。
【0049】
面発光レーザ104はメサ側壁の保護や、パッシベーション膜として窒化ケイ素からなる誘電体膜311が形成されている。誘電体膜311の材料は窒化ケイ素の他にも酸化ケイ素や、それ以外の誘電体材料でも良い。誘電体膜311の形成は、例えば、プラズマ化学気相堆積法や原子層堆積法等を用いて行っても良い。n電極309、p電極301は、適切な材料を真空蒸着やめっき加工等で行っても良い。
【0050】
なお、活性層よりも上部を誘電体で形成して、適切なコンタクト層や電極等の形成を行い、イントラキャビティ型の面発光レーザ構造としても良い。
【0051】
上記で説明した内容は面発光レーザの場合であるが、発光ダイオード構造でもよい。発光ダイオード構造の場合、上記の構造から下部DBR307、酸化層304、被酸化領域305、第1の上部DBR312、第2の上部DBR303を除去した構造である。また、基板方向への出射効率を高めるために、上部DBRだけ残す等してもよい。
【0052】
本実施例ではGaAs基板上にAlGaAsやInGaAsなどの材料を用いて光源を形成しているが、半導体基板は例えばGaAs以外のInP、GaN、Si、Ge、サファイアなどの一般的な半導体デバイスに使われるものでも良く、結晶成長状形成可能な成長構造であれば、どのような材料、膜厚、層構成でも良い。
【0053】
フォトダイオード206は光源104と同一の成長構造であり、一度の結晶成長で形成されている。よって図3における、基板101、パッシベーション膜311と411、下部コンタクト層308と408、下部電極309と409、下部DBR307と407、共振器領域306と406、第一の上部DBR312と412、電流狭窄層304と405、第二の上部DBR303と403、上部コンタクト層302と402、上部電極301と401は共通の材料、膜厚で構成されている。
【0054】
フォトダイオード206と光源104のデバイス構造は半導体プロセスにおけるパターニングの違いのみであり、一度の半導体プロセスで同時に形成されている。光源が面発光レーザの場合、フォトダイオード206は面発光レーザ104と同じ成長構造(層構造)であるが、電流狭窄層405に対して選択酸化は行わない構造である。光源が発光ダイオード構造の場合、フォトダイオード構造は光源と同一になる。
【0055】
図5では図3における傾斜ミラー構造105上に形成された感応部102における破線D-D’の断面簡略図を示す。傾斜ミラー構造105はGaAs基板の表面(結晶成長面と反対)側に形成されている。
【0056】
傾斜ミラー構造105が形成されている位置は光源104から出射した光が、GaAs基板101を伝搬してきて、入射する位置である。
傾斜ミラー構造105のミラー角は感応部102にて表面プラズモン共鳴が発生する角度で形成されている。
【0057】
傾斜ミラー構造105はGaAs基板表面(結晶成長面の反対で+Z方向から見た面)側に、例えば、グレースケール露光で3次元的なフォトレジストマスクを形成し、反応性イオンエッチングのようなドライエッチングプロセスや硫酸と過酸化水素水の混合液への浸液のようなウェットエッチングプロセスなどによりミラー構造を形成する。または、基板のオフ角を特定のものを選択し、結晶方位ごとのエッチング速度の変化を利用し、所望の角度を持つミラー構造を形成しても良い。
【0058】
GaAs基板101の上には、反射防止コーティング604が形成されている。反射防止コーティング604は例えば、適切な材料、構成、膜厚でプラズマ化学気相堆積法や原子層堆積法などで形成してもよい。
【0059】
反射防止コーティング604の上には誘電体層603が形成されている。誘電体層603は例えば、窒化ケイ素が400nm程度の膜厚で形成されている。誘電体層603の材料は酸化ケイ素やそれ以外の誘電体材料でもよく、層構成は単層でも多層構成でもよい。膜厚は400nmよりも厚くても薄くても良い。誘電体層603はプラズマ化学気相堆積法等で形成してもよい。
【0060】
誘電体層603の上には金属層602が形成されている。金属層602はクロム2nmの上に金40nmが形成されている。金属層602の材料はクロム、金以外にもアルミニウムや白金、チタン、その他の金属材料でも良い。各層の金属層の形成には真空蒸着法やスパッタリング法、メッキ法などで行っても良い。表面プラズモン波を励起するエバネッセント波は、誘電体層603と金属層602の界面で発生し、その基板垂直方向の染み出し長は約200~300nm程度である。そのため、金属の膜厚はそれ以下の膜厚で形成されている。
【0061】
なお、反射防止コーティング604と誘電体層603を無くし、金属層602を直接GaAs基板101に接するように形成してもよい。その他にも必要に応じて層を形成してもよい。
【0062】
金属層602の上には感応膜601が形成されている。感応膜601はセンシングしたい対象によって様々な材料や構造で形成される。例えば、一般にストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールのセンシングに用いられる感応膜を形成する場合の実施例を以下に示す。感応膜601は自己組織化単分子膜層と抗体層の2層で構成されている。
【0063】
金属層602の上には自己組織化単分子膜が形成されている。自己組織化単分子膜は、濃塩酸でpH約2に調整したエタノールに自己組織化単分子膜剤を攪拌し、ウエハを浸液し、暗室で48時間程度静置することで形成される。その後、ウエハをエタノールで繰り返し洗浄し、窒素で乾燥させる。
【0064】
自己組織化単分子膜剤は片側がチオール基、片側がカルボキシル基のもの、炭素鎖5以上のものを用いる。金属層602の金表面と自己組織化単分子膜剤のチオール基がAu―S結合を形成し、表面に自己組織化単分子膜を形成する。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の混合溶液にウエハを浸液する。これにより自己組織化単分子膜のカルボキシル基が活性化する。
【0065】
コルチゾールを補足する抗体をリン酸緩衝液に入れ攪拌し、ウエハを浸液する。これにより、活性化したカルボキシル基と抗体の一部がアミンカップリングで結合し、基板に抗体が固定化される。
【0066】
その後エタノールアミン溶液にウエハを浸液する。これにより、抗体が結合しなかったカルボキシル基を不活性化することができる。純水で洗浄し、窒素で乾燥させる。上記のような手法で、コルチゾールのセンシングに用いることができる感応膜601を形成することができる。その他にも別の種類の自己組織化単分子膜の使用や、自己組織化単分子膜の代わりに、カルボキシメチルデキストランなどの膜を形成しても良い。
【0067】
また、コルチゾール以外の測定対象には、使用する自己組織化単分子膜や抗体等を測定対象に適切なものを選択し、適切なプロセスで形成すればよい。また、有機分子の補足に抗体反応以外でも、金表面に有機物の補足等を行い、金表面近傍の屈折率を変化させる手法でも良い。
【0068】
<本実施形態の特徴>
本実施形態の測定装置100は、半導体基板101に、発光素子104と測定部102と受光素子103とを配置し、一体に構成したことを特徴とする。光源および面発光レーザ104は発光素子の一例である。フォトダイオードアレイ103は受光素子の一例である。感応部102は測定部の一例である。GaAs基板101は半導体基板の一例である。これにより発光素子、受光素子、測定部の保持部と光を伝搬する経路を兼用していることによる小型化が可能となる。
【0069】
本実施形態にかかる測定装置100は、半導体基板101と前記半導体基板101上に形成され、光106を前記半導体基板内に出射する発光素子104と前記半導体基板101内を通過した前記光106が入射光として入射し、前記入射光の少なくとも一部を反射光106’として反射する測定部102と前記半導体基板101内を通過した前記反射光106’を受光する受光素子とを備えたことを特徴とする。これにより発光素子の保持部と光を伝搬する経路を兼用していることによる小型化が可能となる。
【0070】
本実施形態にかかる測定装置100は、半導体基板101と光106を前記半導体基板101内に出射する発光素子104と前記半導体基板101内を通過した前記光106が入射光として入射し、前記入射光の少なくとも一部を反射光106’として反射する測定部と前記半導体基板101上に形成され、前記半導体基板101内を通過した前記反射光106’を受光する受光素子103とを備えたことを特徴とする。これにより受光光素子の保持部と光を伝搬する経路を兼用していることによる小型化が可能となる。
【0071】
本実施形態にかかる測定装置100は、前記受光素子103が前記半導体基板101上に形成されたことを特徴とする。これにより受光光素子の保持部と発光素子の保持部とを兼用していることによる小型化が可能となる。
【0072】
本実施形態にかかる測定装置100は、前記半導体基板101、前記発光素子104、前記受光素子103、前記測定部102が一体に構成されたことを特徴とする。これにより、発光素子と受光素子を近傍に形成でき、測定装置の主要な要素を高密度に作りこむことができる。発光素子104、受光素子103、測定部102を高精度に位置合わせができているため、計測精度が向上する。
【0073】
本実施形態にかかる測定装置100は、前記発光素子104および前記受光素子103が前記半導体基板101の同一表面に成膜形成されたことを特徴とする。これにより、同一平面上に実施するフォトリソグラフィなどの半導体プロセスにより、発光素子、受光素子の相対的な位置精度が向上し、測定の精度が向上する。
【0074】
本実施形態にかかる測定装置100は、前記測定部に表面プラズモン共鳴を発生させる金属層602を備える表面プラズモン共鳴センサである。これにより、表面プラズモン共鳴現象を利用した非常に高感度な計測が可能となる。
【0075】
本実施形態にかかる測定装置100は、前記発光素子104が面発光型レーザであることを特徴とする。これにより光を半導体基板101に対して、直接入射することが可能となり、小型の測定装置を提供できる。
【0076】
本実施形態にかかる測定装置100の製造方法は、発光された光106が半導体基板101内に出射されるように前記半導体基板に発光素子104を形成する工程と前記半導体基板101内を通過した前記光106が入射するように前記半導体基板に測定部102を配置する工程とを備えることを特徴とする。
【0077】
本実施形態にかかる測定装置100の製造方法は、半導体基板101内を通過した光106が入射するように前記半導体基板101に測定部102を配置する工程と前記測定部102に入射した前記光106が前記測定部102で反射した反射光106’が入射するように前記半導体基板に受光素子103を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0078】
<本実施形態の効果>
本方式では、表面プラズモン共鳴センサを構成する光源104を、光伝搬経路となる半導体基板101上に半導体プロセスで形成することができる。従来の小型化技術では、光源と光伝搬経路となる媒体とを個別に実装する必要や、チップごとに加工プロセスが必要である。そのため実装可能なサイズや加工可能なサイズでの小型化には限界があった。一方、本方式では半導体プロセスで光源104を光伝搬経路となる半導体基板101上に形成するので、従来よりも小型な測定装置を実現可能である。
【0079】
また、本方式では、表面プラズモン共鳴センサを構成するフォトダイオードアレイ103を、光伝搬経路となる半導体基板101上に、半導体プロセスで形成することができる。これにより、従来よりも小型な測定装置を実現可能である。
【0080】
また、本方式では、表面プラズモン共鳴センサを構成する光源104とフォトダイオードアレイ103を、光伝搬経路となる半導体基板101上に、半導体プロセスで形成することができる。これにより、従来よりも小型な測定装置を実現可能である。さらに、傾斜ミラー構造105、感応部102も半導体プロセスで形成することで、従来の小型化技術のような個別の実装やチップごとの加工プロセスが不要となり、従来よりも高い精度でより小型な測定装置を実現可能である。
【0081】
<第2の実施形態>
本実施形態の概略図を図6に示す。本実施形態に係る面発光レーザ104とフォトダイオード220を例示する部分断面図である。第2の実施形態は、フォトダイオード220を光源104と異なる層構成にして、表面プラズモン共鳴センサの性能を向上させる手法を採用している。本実施形態では、フォトダイオード部のみをエッチングする加工プロセスを追加し、一度目の結晶成長後に光源形成部をフォトレジスト等で保護し、フォトダイオード部をエッチングで除去した後に所望のフォトダイオード構造を二度目の結晶成長で形成してもよい。
【0082】
これによりDBRでの反射や材料ごとの屈折率差による反射を低減することができ、フォトダイオードへ入射する光量の向上や、迷光の低減によるSNの向上が可能であり、表面プラズモン共鳴センサの性能向上が可能である。以下に本実施形態の具体的な説明を行うが、この記載は本発明の範囲を限定するものではない。
【0083】
以下では、第1の実施形態からフォトダイオードに関して光源と層構成を加工プロセスで一部変更した箇所を説明する。その他の構造や加工プロセスは第1の実施形態と同じものである。
【0084】
図6は、第2の実施形態に係る面発光レーザ104とフォトダイオード220を例示する部分断面図であり、図3のA-A’線と図3のB-B’線に沿う断面を示している。なお、図6は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上詳細な層構成等の記載は省略されている。
【0085】
図6の層構成は光源と一部共通で、半導体基板101、パッシベーション膜311と411、下部コンタクト層308と408、下部電極309と409、下部DBR307と407、共振器領域306と406、第一の上部DBR312と412、上部電極301と401は共通の材料、膜厚で構成されている。
【0086】
第一の上部DBR312と412は、それよりも上層と異なる材料系で形成されている。例えば第一の上部DBRより上層をAlAsやAlGaAs、GaAsで形成しておき、第一の上部DBR312と412はGaInPやAlGaInPなどで形成されている。AlAsやAlGaAs、GaAs層は硫酸と過酸化水素水の混合液でエッチングすることができ、GaInPやAlGaInP層は硫酸と過酸化水素水の混合液ではエッチングされない性質を有している。このようなエッチングの選択性を有する層を以下ではエッチストップ層と呼ぶこともある。
【0087】
そのため、結晶成長の後に光源部をフォトマスク等で保護したうえで、第一の上部DBR312と412と選択酸化層305の界面までエッチングを選択的に行う。その後、第1の実施形態と同様に加工プロセスを行うことでフォトダイオード220を形成する。
【0088】
第一の上部DBRの材料とそれより上層の層構成はエッチングによる選択性を確保できるならば、別の材料でも良い。また、エッチングに用いる混合液は例えばリン酸と過酸化水素水の混合液やそのほかエッチング選択性を確保できるならば別の混合液を用いても良い。また、エッチング選択性のある層を第一の上部DBR以外の場所に形成してもよく、例えば第二の上部DBRの途中に形成しても良く、その他の層に形成しても良い。
【0089】
また、光源が発光ダイオード構造の場合でも同様に任意の場所にエッチング選択性のある層を設けて、形成しても良い。
【0090】
本実施形態にかかる測定装置100における前記発光素子104は、第1の上部コンタクト層302と、第1のキャリア励起層306と、前記第1の上部コンタクト層302よりも前記半導体基板101に近い側の第1の下部コンタクト層308と、を備え、前記受光素子103は、第2の上部コンタクト層402と、第2のキャリア励起層406と、前記第2の上部コンタクト層402よりも前記半導体基板101に近い側の第2の下部コンタクト層408と、を備え、少なくとも、前記第1の下部コンタクト層308と前記第2の下部コンタクト層408とが同じ材料であることを特徴とする。これにより、同時に結晶成長することで低コストの製造方法を採用でき、低コストの小型測定装置を提供できる。
【0091】
本実施形態の測定装置の製造方法は、半導体基板101に発光素子104と受光素子103を同時に結晶成長する工程と、受光素子103の一部を選択エッチングで除去する工程とを備えることを特徴とする。
【0092】
<本実施形態の効果>
本実施形態では、フォトダイオードの一部の層を加工プロセスで除去することでフォトダイオードに入射する光量を向上させている。例えば上部DBR303を除去することで、反射率を低下させ、フォトダイオードへの入射光の光量を向上させることができる。また、不要な反射光が減ることで迷光成分が減り、検出のSNが向上する。これにより表面プラズモン共鳴センサの計測精度を向上することができる。
【0093】
<第3の実施形態>
本実施形態は、フォトダイオード206に対して、加工プロセスと二度目の結晶成長を行うことで、光源104とは一部層構成が異なる実施形態である。以下に記述されていないその他の構造や加工プロセスは第1の実施形態と同じものである。
【0094】
図7は第3の実施形態に係る光源とフォトダイオードを形成する領域の断面の簡略図と、加工プロセスフローを示している。なお、図7は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上詳細な層構成等の記載は省略されている。
【0095】
図8は、第3の実施形態に係る面発光レーザ104とフォトダイオード206を例示する部分断面図であり、図3のA-A’線と図3のB-B’線に沿う断面を示している。なお、図8は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上詳細な層構成等の記載は省略されている。
【0096】
図7(a)はGaAs基板101上に一度目の結晶成長を行った後の層構造の簡略図である。GaAs基板101の上にはエッチストップ層801が形成されている。エッチストップ層801は例えばGaInPやAlGaInPなどで形成されている。エッチング選択性があれば、その他の材料の層でもよい。
【0097】
エッチストップ層801の上には光源の構造を形成する光源層802が形成されている。光源層802は例えばAlGaAsやAlAs、GaAs、InGaAs、AlInGaAs、GaAsP層などで形成されている。光源層802には面発光レーザ構造の場合はDBR層や共振領域、コンタクト層等、必要な層が形成されており、発光ダイオード構造の場合はコンタクト層や発光層等、必要な層が形成されている。
【0098】
光源層802の上にはエッチストップ層803が形成されている。エッチストップ層803は例えばGaInPやAlGaInPなどで形成されている。エッチング選択性があれば、その他の材料の層でもよい。
【0099】
図7(b)はフォトリソグラフィと選択エッチングを行った後の層構造の簡略図である。光源形成領域に例えばフォトリソグラフィでフォトレジスト804を形成し、エッチストップ層803、光源層802、エッチストップ層801にそれぞれ選択エッチングを行う。エッチストップ層803、801は例えば希釈塩酸で選択エッチングを行い、光源層802は例えば硫酸と過酸化水素水の混合液で選択エッチングを行う。エッチングに用いる薬液は、選択エッチングができるものならば他のものを用いても良い。
【0100】
図7(c)はフォトレジストを剥離後、二度目の結晶成長を行った後の層構造の簡略図である。フォトレジスト804の剥離は例えば剥離液を用いて剥離する。剥離液以外にもアセトン等の有機溶剤を使用しても良い。その後、再度結晶成長装置にウエハを導入し、フォトダイオード層806とエッチストップ層805を二回目の結晶成長で形成する。フォトダイオード層806は光を吸収してキャリアを励起する層を含み、例えばAlGaAsやGaAs、InGaAs、GaInAsP層などで形成されている。フォトダイオードとしての機能を発現できるならば、その他の材料でも良い。エッチストップ層805はエッチストップ層801、803と同じ材料で形成されている。
【0101】
図7(d)はフォトリソグラフィと選択エッチングを行った後の層構造の簡略図である。フォトダイオード形成領域に例えばフォトリソグラフィでフォトレジスト809を形成し、エッチストップ層805、フォトダイオード層806にそれぞれ選択エッチングを行う。各層の選択エッチングは光源層802とエッチストップ層801,803の選択エッチングと同様の手法で行う。
【0102】
図7(e)はフォトレジストを剥離後、選択エッチングを行った後の層構造の簡略図である。フォトレジスト809の剥離はフォトレジスト804の剥離と同様の手法で行う。エッチストップ層803、806の選択エッチングはエッチストップ層801、803の選択エッチングと同様の手法で行う。
【0103】
上記加工プロセスを行った後に、光源形成領域807とフォトダイオード形成領域808に第1の実施形態と同様の加工プロセスで光源104とフォトダイオード206を形成する。また、必要に応じて光源104とフォトダイオード206を個別の加工プロセスで形成してもよい。
【0104】
また、光源層802の一部にはGaInPやAlGaInP層などを用いても良く、その際は必要な選択エッチング等の加工プロセスを適切に追加して行えばよい。
【0105】
図8に本実施形態の光源104とフォトダイオード230が示されている。光源104の構造は第1の実施形態と同様に面発光レーザの場合を示している。以下ではフォトダイオード230について説明する。
【0106】
GaAs基板101の上にはn型コンタクト層408を形成している。n型コンタクト層408は例えばn-GaAsから形成されている。
【0107】
n型コンタクト層408の上にはキャリア励起層450が形成されている。キャリア励起層450は例えばInGaAsで形成されている。使用する波長に対して光吸収が発生しキャリア励起できるならば、他の材料系でもよい。キャリア励起層450の上にはp型コンタクト層412が形成されている。p型コンタクト層は例えばp-GaAsから形成されている。
【0108】
本実施形態の測定装置の製造方法は、半導体基板101に発光素子104を形成する工程と半導体基板101に受光素子103を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0109】
本実施形態にかかる測定装置100における前記発光素子104と前記受光素子103は、前記キャリア励起層(306、450)を異なる膜厚、もしくは異なる材料からなることを特徴とする。これにより、下部コンタクト層を同時に結晶成長できるため、製造方法として低コストを実現する方法を選択しつつ、個別に結晶成長する受光素子を、受光に最適な膜厚、材料とすることで、受光感度を向上することができる。高感度化した受光素子による高精度な測定が可能となる。
【0110】
本実施形態の測定装置の製造方法は、半導体基板101に発光素子104と受光素子103を同時に結晶成長する工程と、受光素子103の一部を選択エッチングで除去する工程とを備えることを特徴とする。
【0111】
<本実施形態の効果>
本方式ではフォトダイオード206のキャリア励起層450の材料や膜厚を、光源104とは別の層構造で形成することが可能である。そのため、例えばキャリア励起層の膜厚を厚くしてキャリアの生成効率を高めることや、キャリア励起層までの屈折率差を低減し、フォトダイオードへの光の入射時での意図しない反射を低減し、光量の増加、迷光の低減することが可能である。これにより表面プラズモン共鳴センサの高精度化を実現することができる。
【0112】
<第4の実施形態>
図9および図10に本実施形態を図示する。GaAs基板内の伝搬距離を長くして、計測精度を向上させている。感応部で表面プラズモン共鳴を発生させた後に、光路内の伝搬距離を長くする構成にしてもよい。光源からの光は発散角を持つため、伝搬距離が長いほどフォトダイオードアレイ上に投影される反射波形の面積が大きくなる。測定に寄与するフォトダイオードの数が増えるため、推定精度が向上し、表面プラズモンセンサの性能が向上する。
【0113】
また、伝搬距離を長くすることで、有機分子が感応部に補足された際の共鳴角の変化によるフォトダイオードアレイに入射する座標の変化分が大きくなり、表面プラズモン共鳴センサの精度が向上する。
【0114】
必要に応じてミラー構造と感応部を分離または、複数のミラー構造を追加で形成して、基板内を複数回反射させて伝搬距離を長くしてもよい。半導体基板を光路にする本発明では、従来技術のような体積の大きい透光性媒体に光を入射させる方式に比べ、伝搬距離を長くすることが難しい。フォトダイオードアレイの検出効率と空間分解能によっては表面プラズモン共鳴センサとしての所望の性能に到達しない場合もある。その際、基板内を複数回反射させて伝搬距離を長くすることで、センサの性能を向上させることが可能である。
【0115】
以下に本実施形態の具体的な説明を行うが、この記載は本発明の範囲を限定するものではない。
【0116】
本実施形態は、図10に示すように、第1の傾斜ミラー構造105と感応部102を個別に形成し、第2のミラー構造709を光源とフォトダイオードアレイの間に形成した際の実施例である。以下に記述されていないその他の構造や加工プロセスは第1から第3の実施形態のいずれかと同じものである。
【0117】
図9は、第4の実施の形態に係る測定装置100(表面プラズモン共鳴センサ)を例示する平面図である。なお、図9は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上実際の構成とは縮尺や構成している素子の数などが異なる。
【0118】
図10は第4の実施の形態に係る裏面出射型面発光レーザを使用した場合の本発明が提案する、表面プラズモン共鳴センサの構成の概略図である。なお、図10は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上実際の構成とは縮尺や構成している素子の数などが異なる。
【0119】
図11は、第4の実施形態に係る傾斜ミラー構造105を例示する部分断面図であり、図9のE-E’線に沿う断面を示している。なお、図11は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上詳細な層構成等の記載は省略されている。
【0120】
図12は、第4の実施形態に係る感応部102を例示する部分断面図であり、図9のF-F’線に沿う断面を示している。なお、図12は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上詳細な層構成等の記載は省略されている。図13は、第3の実施形態に係るフォトダイオード上に投影される信号波形の簡略図であり、便宜上簡略化している。
【0121】
図9には、第4の実施形態の構造を示している。本実施形態は半導体基板に光源104、傾斜ミラー構造105、第2のミラー構造709、感応部102、フォトダイオード206がアレイ状に配置された構造をしている。光源とフォトダイオードは各々個別の電極p電極204とn電極207に接続されている。光源は複数アレイ状に配置しても良い。フォトダイオードアレイは2次元的に配置しても良い。
【0122】
図10の光源104から出射した光は傾斜ミラー構造105で反射され基板内を直進する。その後第2のミラー構造709で反射され感応部102に入射する。感応部102で表面プラズモン共鳴が発生し、フォトダイオードアレイで検出される。
【0123】
図11のミラー構造は光源104から出射した光が入射する位置に形成されており、ミラー角度は表面プラズモン共鳴が感応部で発生する角度で形成されている。GaAs基板101はGaAs基板裏面(結晶成長面の反対)側に、例えば、グレースケール露光で3次元的なフォトレジストマスクを形成し、反応性イオンエッチングのようなドライエッチングプロセスや硫酸と過酸化水素水の混合液への浸液のようなウェットエッチングプロセスなどによりミラー構造を形成する。
【0124】
または、基板のオフ角を特定のものを選択し、結晶方位ごとのエッチング速度の変化を利用し、所望の角度を持つミラー構造を形成しても良い。ミラー構造の上には、例えば反射率を高めるための反射用金属層501が形成されている。反射用金属層501は感応部の形成時に使う材料構成でもよく、その場合感応部の形成と同時に形成することが可能である。
【0125】
なお、反射用金属層501は、金属の代わりに適切な誘電体材料、適切な膜厚の単層膜、または多層膜構造を形成してもよい。または、傾斜ミラー構造105の上には何も形成せずに、空気との屈折率差を利用したミラーとしてもよい。または、傾斜ミラー構造105は回折格子状の形状にしてもよい。
【0126】
平行平板の半導体基板101に、任意の角度で傾斜ミラー構造(反射面)105を有している。この反射面を傾斜にさせることで、半導体基板101に垂直(Z方向)に出射する光を曲げることができる。これにより、光を無駄にすることなく効率的に、光を第2のミラーおよび感応部102に誘導することができる。最終的に大きな光強度で受光部を入射することができる。これにより、感応部102での感度が向上し、精度の高い測定装置を提供できる。
【0127】
図12に感応部102の断面簡略図を示す。感応部102はGaAs基板101の上には、反射防止コーティング604が形成されている。反射防止コーティング604は適切な材料、構成、膜厚でプラズマ化学気相堆積法や原子層堆積法などで形成する。
【0128】
反射防止コーティング604の上には誘電体層603が形成されている。誘電体層603は例えば、窒化ケイ素が400nm程度の膜厚で形成されている。誘電体層603の材料は酸化ケイ素やそれ以外の誘電体材料でもよく、層構成は単層でも多層構成でもよい。膜厚は400nmよりも厚くても薄くても良い。誘電体層603はプラズマ化学気相堆積法等で形成してもよい。
【0129】
誘電体層603の上には金属層602が形成されている。金属層602はクロム2nmの上に金40nmが形成されている。金属層602の材料はクロム、金以外にもアルミニウムや白金、チタン、その他の金属材料でも良い。各層の金属層の形成には真空蒸着法やスパッタリング法、メッキ法などで行っても良い。表面プラズモン波を励起するエバネッセント波は、誘電体層603と金属層602の界面で発生し、その基板垂直方向の染み出し長は約200~300nm程度である。そのため、金属の膜厚はそれ以下の膜厚で形成されている。
【0130】
なお、金属層602は反射防止コーティング604と誘電体層603を無くし、直接GaAs基板101に接するように形成してもよい。
【0131】
第2のミラー構造709は金属層が形成されている。金属層は光源とフォトダイオードの電極形成時に使う材料構成でも良く、電極形成時に同時に形成することが可能である。また、金属の代わりに適切な誘電体材料、適切な膜厚の単層膜、または多層膜構造を形成してもよい。または、何も形成せずに、空気との屈折率差を利用したミラーとしてもよい。または、面発光レーザの加工プロセス時に下部DBRを残した構造にして、ミラーとして利用しても良い。
【0132】
光源とフォトダイオードは第1の実施形態に記述されているような光源とフォトダイオードが同じ構造でも、第2または第3の実施形態に記述されているような層構成が異なる構造でもよい。
【0133】
<本実施形態の効果>
【0134】
本実施形態の測定装置100は発光素子104から発せられた光106、106’が、半導体基板101の表面で少なくとも2回以上反射することを特徴とする。
【0135】
フォトダイオードアレイの配置ピッチよっては、フォトダイオードアレイ上に光が十分広がらないことがある。これにより信号波形に対して測定座標間隔が小さく、十分な波形推定ができずに計測精度が低下する場合がある。図13(a)は感応部で反射後、GaAs基板内で一度も反射せずにフォトダイオードアレイに入射する場合(伝搬距離が短い場合)である。図13(b)は傾斜ミラー構造と第2のミラー構造で反射して、フォトダイオード上に投影される面積が広がった場合(伝搬距離が長い場合)である。以下にこの2つの図の比較説明を行う。
【0136】
図13の黒線は発生した表面プラズモン共鳴の波形を示し、丸い点はフォトダイオードアレイでの測定点を示す。
【0137】
伝搬距離が短い場合、フォトダイオードアレイの配置ピッチによっては波形の全体像の測定点が少なく、伝搬距離が長い場合は波形の全体像の測定点が増えている。これらの測定点からfitting等を行い、波形推定し共鳴角の変化を算出する。伝搬距離が長いほど波形の全体像に対して、波形推定に有効な測定点の数が多いため、推定精度が向上する。これにより伝搬距離を長くすることで、表面プラズモン共鳴センサの性能が向上する。
【0138】
<第5の実施形態>
図14および図15は本実施形態に関わる測定装置100の概略図である。本実施形態では、傾斜ミラー構造105と感応部102を個別に形成し、感応部102を光源とフォトダイオードアレイの間に形成し、第2のミラー構造709を半導体基板101裏面側に形成している。本実施形態に記述されていないその他の構造や加工プロセスは第1~第4の実施形態のいずれかと同じものである。
【0139】
なお、図14および図15は本実施の形態の説明のため簡略化されており、便宜上実際の構成とは縮尺や構成している素子の数などが異なる。
【0140】
本実施形態では半導体基板101に光源104、傾斜ミラー構造105、感応部102、第2のミラー構造709、フォトダイオード206がアレイ状に形成されている。光源とフォトダイオードは各々個別の電極p電極204とn電極207に接続されている。光源は複数アレイ状に配置しても良い。フォトダイオードアレイは2次元的に配置しても良い。
【0141】
<第6の実施形態>
図16は第6の実施形態に係る測定装置100の構成の概略図である。なお、図16は本実施形態の説明のため簡略化されており、便宜上実際の構成とは縮尺や構成している素子の数などが異なる。
【0142】
本実施形態では感応部102で表面プラズモン共鳴が発生した反射光が基板内を直進し、基板裏面に設けられた第2のミラー構造709で反射され、第3のミラー構造907を複数回反射してフォトダイオードアレイに入射する構成である。より伝搬距離を長くするために、基板内を複数回反射するような構成としている。第3のミラー構造は第2のミラー構造と同様の構造でも異なる構造でもよい。
【0143】
本実施形態では第4の実施形態のように感応部102が基板裏面側に形成されている場合でも、第1の実施形態のようにミラー構造の上に形成されている構成でも、反射光を基板内で複数回反射可能な位置に第2のミラー構造と第3のミラー構造を形成して、実現しても良い。
【0144】
本実施形態の測定装置100は、発光素子104から発せられた光106、106’が、半導体基板101の表面で少なくとも2回以上反射することを特徴とする。
【0145】
<第5および6の実施形態の効果>
本実施形態では、感応部102で発生した表面プラズモン共鳴が発生した反射光が、基板内を伝搬する距離が第1~4の実施形態に比べ長い。感応部に補足された有機分子による共鳴角の変化は、伝搬距離が長いほどフォトダイオードアレイに入射する座標の変化量が増加して検出される。これにより表面プラズモン共鳴センサの性能が向上する。本方式では、加工プロセスや実装形態、コストなどの制限が他の第1~4の実施形態よりは大きくなるものの、それらを許容できる範囲で最適な反射回数を設定すればよい。
【0146】
<第7の実施形態>
図17は本実施形態に係る測定装置100の構成の概略図である。半導体基板101から透明基板603に光を取り出して、再度、半導体基板101に戻すことで計測精度を向上させる手法を説明する。第4の実施の形態で示したように、表面プラズモン共鳴を発生させた後に、伝搬距離を長くとることで、共鳴角変化がフォトダイオードアレイ上での座標の変化として拡大することが可能である。これにより計測精度が向上する。
【0147】
本実施形態では、半導体基板よりも体積の大きい透明基板に光を入射させる。透明基板上に形成された感応部で表面プラズモン共鳴を発生させ、再度、半導体基板101に光を戻す構成である。以下に本実施形態の具体的な説明を行うが、この記述は本発明の範囲を限定するものではない。
【0148】
なお、図17は本実施形態の説明のため簡略化されており、便宜上実際の構成とは縮尺や構成している素子の数などが異なる。本実施形態に記述されていないその他の構造や加工プロセスは第1~6の本実施形態のいずれかと同じものである。
【0149】
<第8の実施形態>
【0150】
図18は本実施形態に係る測定装置100の構成の概略図である。なお、図18は本実施形態の説明のため簡略化されており、便宜上実際の構成とは縮尺や構成している素子の数などが異なる。本実施形態に記述されていないその他の構造や加工プロセスは第1~7の実施形態のいずれかと同じものである。
【0151】
GaAs基板101に結晶成長と半導体プロセスにより光源104とフォトダイオードアレイ103が形成されている。GaAs基板の裏面(結晶成長面と反対)側には反射防止コーティング604が形成されている。
【0152】
反射防止コーティング604の上には透明部材であるガラス基板603が接触されている。ガラス基板603は例えば張り合わせや接着などで固定されている。また、ガラス基板は透光性があれば樹脂やその他の材料でもよい。ガラス基板603はマイクロ流路の一部として形成してもよい。
【0153】
ガラス基板603には傾斜ミラー構造105が形成されている。傾斜ミラー構造105は研磨やグレースケール露光とエッチング等で形成されている。傾斜ミラー構造105の角度は感応部で表面プラズモン共鳴が発生する角度になっている。傾斜ミラー構造105の表面には反射率を高めるための金属や誘電体多層膜構造などが形成されていても良い。
ガラス基板603の上には金属層602が形成されている。金属層602で表面プラズモン共鳴が発生する。金属層602の上には感応膜601が形成されている。
【0154】
変形例として傾斜ミラー構造105をGaAs基板101に形成してもよい。傾斜ミラー構造105は第1~6の実施形態のいずれかと同様の方法で形成されている。光源104とフォトダイオードアレイ103、傾斜ミラー構造105、反射防止コーティング604を形成した半導体基板(ウエハ状態)101に、金属層602と感応膜601を形成したガラス基板を貼り合わせてウエハ状態で完成させても良い。その場合、ガラス基板603は高精度な位置合わせは不要で接着することができる。ガラス基板603にはマイクロ流路を形成してもよい。
【0155】
<第7および第8の実施形態の効果>
本実施形態の測定装置100は、半導体基板101に透明基板603が接合しており、
透明基板603の表面に前記金属層が形成されていることを特徴とする。
【0156】
本実施形態では第4の実施形態と同様伝搬距離を長くすることで表面プラズモン共鳴センサの性能を向上させている。透光性媒体をそのまま流路にすることが可能なため、第1~3の実施形態と比較してコストを結果的に下げられる可能性がある。
【0157】
また、第7および第8の実施形態ではフォトダイオードアレイと半導体基板に形成した反射面が近いため、加工法によってミラー面の平坦性などにより意図しない方向への反射光が増え迷光になり、表面プラズモン共鳴の性能が低下する可能性がある。コストや要求される性能の制限の中で、本実施形態の方式か第1~6の実施形態の方式か、最適な方法を選択すればよい。
【0158】
<第9の実施形態>
図19は第9の実施形態に係る測定装置100をシステム化した概略図である。第1から第8の実施形態のいずれかに係る測定装置(表面プラズモン共鳴センサ)100を、逆イオントフォレシス機構付きのマイクロ流路に接続しシステム化した構成である。なお、図19は本実施形態の説明のため簡略化されており、便宜上実際の構成から縮尺や構成要素の配置、数などが異なる。
【0159】
第1から第8の実施形態のいずれかの測定装置(表面プラズモン共鳴センサ)100は、マイクロ流路に固定されて使用される。マイクロ流路はガラスや樹脂、Si基板などにフォトリソグラフィとエッチングなどで形成されている。流路幅は数十μm~数百μm程度である。マイクロ流路を用いて表面プラズモン共鳴センサの感応部に液体サンプルを送液する。マイクロ流路にはMEMS技術などを用いたマイクロポンプやマイクロバルブなどを形成しておき、必要な液体の移動制御が可能である。マイクロ流路での毛細管現象を利用する場合にはマイクロポンプやマイクロバルブなどは不要である。
【0160】
汗を測定対象とする場合、積極的なサンプリングのために例えば、逆イオントフォレシス技術を適応する。逆イオントフォレシス技術とは、皮膚に電極を接触させ、電流を流すと皮膚上に汗の成分をにじみ出させる技術である。マイクロ流路の一部には電極を設けておき、電流を流すことで積極的な汗のサンプリングが行われる。なお、積極的なサンプリングが不要な場合、逆イオントフォレシス技術の適応は不要である。その場合、サンプリング方法は何でもよく、感応部にサンプルを接触させることができるならば、どのような方法を用いても良い。
【0161】
流路はサンプルの送液補助や感応部の保護のため適切な薬液を蓄えておく領域に接続されている。薬液は例えばリン酸緩衝液であり、それ以外でも純水や適切な薬液を選択しても良い。薬液は定期的に補充する。または、常時薬液を蓄えておく領域に接続されていなくてもよく、外部から都度接続して使用してもよい。
【0162】
流路は感応部の表面に補足された有機分子を除去し、センサの機能を再生させる再生剤を蓄えておく領域に接続されている。再生剤は定期的に補充する。または、常時再生剤を蓄えておく領域に接続されていなくてもよく、外部から都度接続して使用してもよい。
【0163】
流路は測定したサンプルを蓄えておく領域に接続されており、測定したサンプルは一時的に保持しておき、定期的に廃棄する。または、常時サンプルを蓄えておく領域に接続されていなくてもよく、外部に都度放出してもよい。サンプルは汗以外でも唾液、血漿、尿、涙などを対象としても良い。
【0164】
図19の本実施形態の構成を説明する。測定装置(表面プラズモン共鳴センサ)100の感応部102はマイクロ流路1001に接続されている。マイクロ流路1001を通る有機分子は途中で感応部102に補足され共鳴角の変化を発生させる。
【0165】
マイクロ流路1001には第1の電極1002と第2の電極1002が設けられていて、例えば皮膚に電極を接触させて電流を流すと、逆イオントフォレシス技術により汗を皮膚から滲み出させることが可能である。にじみ出てきた汗を感応部まで導きセンシングする。逆イオントフォレシスの電極は長方形や円形のパッド型でもよく、片方の極性の電極を取り囲むような形でもう片方の極性の電極を配置しても良い。その他、効率の良いサンプリングが可能な電極の配置をしても良い。
【0166】
唾液や血漿などを別途採取する場合、逆イオントフォレシス技術の適応は不要であり、マイクロ流路のみでもよい。マイクロ流路1001にはマイクロポンプやマイクロバルブ機構が形成されており、マイクロ流路内の必要な流体制御が可能な構成である。
【0167】
マイクロ流路1001は送液補助や感応膜の保護のための薬液が蓄えられている領域1008に接続されている。電極1003付近のマイクロ流路1001内ににじみ出てきた測定対象となる有機分子を、例えばリン酸緩衝液で感応部へ送液する。使用する薬液はリン酸緩衝液以外でもよく、感応膜の材料などに応じて適切なものを使用すればよい。
【0168】
また、感応膜によっては大気暴露や乾燥時の感応膜表面への不純物の固着などにより、表面プラズモン共鳴センサとしての性能の低下や機能喪失することがある。そのため、表面保護のために常に薬液に浸された状態や、薬液が感応膜表面を常に流れ続ける構造にしておく。または不純物の固着などが発生しない乾燥プロセスを実施してもよい。また、薬液が蓄えられている領域1008を無くして、必要なタイミングに薬液の供給を外部から直接行っても良い。
【0169】
マイクロ流路1001は感応膜601に補足された有機分子を除去するための再生剤を蓄えておく領域1009に接続されている。感応膜601に有機分子が補足されると、通常そのまま補足され続けるため、次回測定に悪影響を与える。そのため測定ごとに再生剤で有機分子を除去する必要がある。例えばコルチゾールを補足する抗体が感応膜として使用されている場合、pH2.5の10mMのHCLグリシン緩衝液などが用いられる。それ以外にも適切な薬液を選択しても良い。また、再生剤が蓄えられている領域1009を無くして、必要なタイミングに再生剤の供給を外部から直接行っても良い。
【0170】
マイクロ流路1001は測定したサンプルや緩衝液等は廃液として、一時的に蓄えておく領域1005に接続されている。廃液はすべてここに集められ適切なタイミングで廃棄する。また、廃液が蓄えられている領域1005を無くして、外部へ放出する方式にしても良い。
【0171】
表面プラズモン共鳴センサ100やマイクロ流路1001、各薬剤や廃液を蓄えておく領域1005、1008、1009、逆イオントフォレシスの電極1002、1003は一つのPKG等にまとめられて実装されており、様々なシステムに組み込める構造である。または、必要に応じて各素子を個別に実装しても良い。
【0172】
本実施形態の測定装置100は、透明基板603の少なくとも一部が金属層602へ被検体を送液するための流路となっていることを特徴とする。
【0173】
本実施形態の測定装置100は、透明基板603の表面に電極1002、1003が形成されていることを特徴とする。
【0174】
<本実施形態の効果>
流路は逆イオントフォレシス用の電極を備えたマイクロ流路を用いることで、システムサイズの大型化を防ぎ、積極的なサンプリングによるリアルタイム計測が可能である。
【0175】
<第10の実施形態>
本実施形態の概略図を図20に示す。本実施形態は、第1から第8の実施の形態のいずれかに係る測定装置(表面プラズモン共鳴センサ)100、もしくはそのシステム1102を適応した生体分子のリアルタイムモニタリングが可能な各種ウェアラブルデバイスの例である。
【0176】
従来よりも小型な1mm以下のサイズの表面プラズモン共鳴センサ100はチップ形状であり、流路等を付けても数mm程度のシステムサイズで作製可能なため、様々なウェアラブル機器に適応することが可能である。
【0177】
皮膚と接触するウェアラブルデバイスには汗を測定対象として、例えばコルチゾールのリアルタイム常時モニタリングが可能となる。コルチゾール以外にもグルコースやその他の様々な生体有機分子のリアルタイムモニタリングが可能となる。これまで難しかったストレスホルモンであるコルチゾールのリアルタイム定量によるストレスの定量的なモニタリングや、非侵襲の血糖値のリアルタイムモニタリング、その他人間や動物の生命活動や社会活動における重要な生体分子のリアルタイムモニタリングに活用することができる。以下に実施例を示し第10の実施形態の具体的な説明を行うが、この実施形態は本発明の範囲を限定するものではない。
【0178】
図20は本実施形態に関わる表面プラズモン共鳴センサ100を適応した指輪型デバイス、腕時計型デバイス、コンタクトレンズ型デバイスを例示する図である。なお、図20は本実施形態の説明のため、簡略化されており、便宜上実際の構成と異なる。図20(a)は指輪型デバイスの断面の簡略図、図20(b)は腕時計型デバイスの断面の簡略図、図20(c)はコンタクトレンズ型デバイスの俯瞰の簡略図を示す。
【0179】
図20(a)の指輪型デバイス1101の内側に表面プラズモン共鳴センサシステム1102が実装されている。皮膚と接触する部分には逆イオントフォレシスの電極が形成されており、積極的な汗のサンプリングが行われ、汗に含まれるコルチゾールなどの生体分子濃度の常時モニタリングが可能である。その他必要な制御用ICや電池等も指輪型デバイス1101内に内蔵されている。
【0180】
同様に図20(b)の腕時計型デバイス1103の皮膚に接触する領域に表面プラズモン共鳴センサシステム1102が形成されている。表面プラズモン共鳴センサシステム1102は文字盤の裏の位置ではなくバンド部に形成しても良い。同様に図20(c)のコンタクトレンズ型デバイス1104に表面プラズモン共鳴センサシステム1102が形成されている。この場合、サンプルは汗ではなく涙になる。逆イオントフォレシスの電極を無くしても良い。その他にも眼鏡やVRゴーグル、ネックレス、イヤリング、ピアス、靴など、皮膚に接触する時間が長いものには適応可能である。
【0181】
本実施形態にかかるウェアラブルデバイス(1101、1103、1104)は、測定装置100(1102)を備えていることを特徴としている。これにより、小型な測定装置として快適性を維持しつつ高精度な検出が可能なウェアラブルセンサとなる。
【0182】
<本実施形態の効果>
生体の健康状態やストレス状態は、生体内部に存在する様々な生体分子の濃度変化と相関がある。その変化は、例えばストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの場合、数分~数十分の時間で変動する。従来のホルモン分析方法(ELISA等)では数分間隔の頻繁な測定は現実的ではない。
【0183】
本実施形態で示すように、小型の表面プラズモン共鳴センサをウェアラブルデバイスなどの皮膚と接触する時間が長い機器に適応し、逆イオントフォレシス技術等で積極的なサンプリングを行えば、これまでできなかった生体分子濃度の常時モニタリングが可能になる。
【0184】
<第11の実施形態>
本実施形態の概略図を図21に示す。本実施形態の測定装置100は、ATR法(Attenuated Total Reflection)(全反射測定法)を採用した測定部108を有していることを特徴とする。発光素子104や受光素子103を半導体基板110に成膜形成しており、光106、106’は半導体基板内を伝搬するため、非常に小さいATR法による計測装置となっている。このため、生体分子のリアルタイムモニタリングが可能なウェアラブルデバイスとなる例である。
【0185】
赤外光を利用した分子分析は、分子が分子振動により特定の波長の光を吸収する性質を利用した分子構造の分析技術である。一般に中赤外領域の光で吸収が発生するため、広帯域の中赤外光を放射する光源を利用する。光源からの光をサンプルに照射し、透過光を分光器等で分光後に検出し透過スペクトル(もしくは吸収スペクトル)を得る。得られたスペクトル形状から分子の同定や濃度等の分析を行う。また、干渉系を構築して干渉した赤外光をサンプルに照射し透過した干渉光をフーリエ変換することで吸収スペクトルを得る分析手法がある。こちらはFT-IRという分子構造の分光分析技術である。
【0186】
中赤外光ではなく近赤外光を利用した分光分析技術がある。近赤外光を利用した場合でも前述した赤外分光技術と同様の光学系で利用することが可能である。特にFT-IRと同様の分析を近赤外光で行う場合、FT-NIRと呼ばれる。
【0187】
ATR法とは、プリズムにサンプルを密着させてプリズム面で光が全反射する際に発生するエバネッセント波を利用した分光分析手法である。前述したFT-IRなどの分析技術と併用して扱うことが可能である。プリズムからサンプルの界面へ臨界角以上で光が入射すると全反射が発生する。その際、入射光は一度サンプルに数百nm程度浸透して(エバネッセント波)から反射する。サンプル内に浸透したエバネッセント波に、サンプルの分子構造に依存した吸収が発生し、反射光を検出することで分子分析を行う。プリズムの材料はガラスやゲルマニウム、ZnSeなどが一般に使われるが、それ以外でもよい。
【0188】
中赤外の広帯域の光源を利用せず、レーザなどの単波長光源を利用する場合、分子の吸収スペクトルの特徴的な吸収ピークを得られる波長で出射する光源を利用する。主要な分子と吸収する特徴的な波長の相関を表1にまとめる。なお、以下に記述した波長以外にも特徴的な波長は存在するため、任意の波長を利用すればよい。
【0189】
【表1】
【0190】
OCT(optical coherence tomography)における断層像の一定深さの信号変化をとらえることで血糖値推定を行なうことができるとして、1300nmの近赤外光を利用したOCT装置により皮膚表面から200~600μm下方の皮膚組織(真皮組織)をピンポイント測定した信号から血糖値を推定した例が示されており、また測定されるOCT信号の変化が皮膚組織中のグルコース濃度変化にともなう散乱係数の変化として計測され、10mg/dLのグルコース濃度変化に対して最大2.8%の変化があったことが示されている(非特許文献1)。
【非特許文献1】K.V.Larin, M.M.Motamedi, M.S.Eledrisi, R.O.Esenaliev,“Noninvasive Blood Glucose Monitoring With Optical Coherence Tomography”,Diabetes Care,25,12,2263-2267
【0191】
第1~10の実施形態では光源として例えば裏面出射型発光ダイオード、もしくは裏面出射型面発光レーザを例示している。これら光源の出射波長帯は材料の特性により一般に可視光から2,000nmの近赤外線である。そのため近赤外分光で使用可能である。一方で、FT-IRなどの赤外分光での分子分析に適した波長は一般に2,000nm~20,000nmの中赤外線であるため、中赤外線を出射可能な光源の形成が必要である。
【0192】
基板方向に光を出射できる光源であり、中赤外線を出射することが可能な光源として、例えば量子カスケード面発光レーザ(QC-VCSEL)がある。本構成でも半導体基板上にMOCVD装置やMBE装置などでQC-VCSEL構造を結晶成長し、適切な半導体プロセスで構造を形成し、基板方向に出射する中赤外線の光源として用いることができる。
【0193】
近赤外光を利用した赤外分光の場合、受光素子は第1~10の実施形態と同様にフォトダイオードアレイを利用することが可能である。一方で、例えばQC-VCSELを利用した中赤外線に対しては通常のフォトダイオード構造では検出することが難しい。そこで例えば、第3の実施形態のように選択エッチングと再結晶成長技術を利用して受光素子を形成する際に、中赤外線に感度を持つキャリア生成層の材料や各層の膜厚を設計する必要がある。中赤外線に感度を持つキャリア生成層の材料としては例えばInAsSbなどがある。
【0194】
また、InAsとGaSbの超格子構造を各層適切な膜厚で成長すると、狭いエネルギー間隔のミニバンドが形成され、中赤外線を吸収しミニバンド間でのキャリアの遷移が発生する。この光吸収を利用して中赤外線の受光素子として機能させることが可能である。これらの材料はMOCVDやMBEなどの結晶成長技術で形成することが可能である。キャリア生成層はInAsSbやInAs、GaSb以外の材料系で形成されていてもよい。その他に必要に応じてボロメータやMCT、焦電センサ、量子ドットセンサなどの中赤外線検出器を利用してもよい。
【0195】
従来のATR法を用いた赤外分光による分子分析の光学系は、分光器や干渉系、その他ミラーやレンズなどの光学素子が必要で、装置の大型化が発生していた。これに対し、第1~10の実施形態の感応部に金属を蒸着せずに基板自体をATR法のプリズムの代替として使用することで、従来のATR法を利用した赤外分光分析装置よりも小型化が可能である。
【0196】
図21の光源104はInP基板上にMOCVDやMBEなどの結晶成長技術によって、形成された波長1300nm帯の面発光レーザ10である。本実施形態では隣接して、1400nm帯の面発光レーザ11も備え、光吸収量から血糖値を相対的に定量する際にリファレンス光として利用する。2波長あることで、環境変化としての水分量や測定部の皮膚との接触具合などの外部要因などの変動を補正することができる。この補正により継続的に安定した計測が可能となり、血糖値などの相対的な経時変化をグラフにして可視化できる。2波長の面発光レーザを同一基板上に形成する製造方法は、第3の実施形態に記載した手法を利用してもよいし、特許文献2などにも詳細な記載があるので、ここでは割愛する。
【特許文献2】特開2020‐161800号公報
【0197】
半導体基板110はInP基板であり、本実施形態で採用している波長1300nmや1400nmでは透明であるため、光106は減衰することなく、測定部108に入射する。この際に、伝搬経路には傾斜ミラー105が配置されており、伝搬する光106は測定部108に設計された入射角で測定部108に入射し、全反射角を利用するATR法を実現できている。半導体基板110を伝搬する光は多重反射を起こすように、-Z方向から見た面は、第2のミラー構造709となっている。多重反射することに、何度も測定部108に光106が入射することで高感度化が図れている。計測部108から反射された光106’は傾斜ミラー109を介して、受光素子103に入射し、検出される。なお、本実施形態では、計測部108での複数回の反射のうち最後に反射され受光素子103に向かう光を反射光106’としている。
【0198】
本実施形態の測定装置100は、血糖値に相関があるといわれている1300nm帯であるため、継続して計測することで血糖値の経時変化を読み取ることが可能である。本実施形態では数mmと小さい装置であるため、口腔内に粘膜貼付剤を介して固定することが可能である。口腔内は皮膚の厚さが薄いため、ATR法で計測される真皮近傍の血糖値と相関が取れるとされている(特許文献3)。または、口腔内の薄い皮膚には間質液が多く含まれているので、検出精度が向上する。
【特許文献3】特開2021‐067652号公報
【0199】
本実施形態のような小さい測定装置でも、数日間は電池駆動させることが可能であり、経時変化を検出するウェアラブルセンサとして適している。
【0200】
以上説明したように、本発明の態様の一例は以下の通りである。
【0201】
<1>
本実施形態にかかる測定装置100は、半導体基板101と前記半導体基板上に形成され、光106を前記半導体基板内に出射する発光素子と前記半導体基板内を通過した前記光106が入射光として入射し、前記入射光の少なくとも一部を反射光106’として反射する測定部102と前記半導体基板内100を通過した前記反射光を受光する受光素子とを備えたことを特徴とする。これにより発光素子の保持部と光の伝搬経路とを兼用していることによる小型化が可能となる。
【0202】
<2>
本実施形態にかかる測定装置100は、半導体基板101と光106を前記半導体基板101内に出射する発光素子104と前記半導体基板101内を通過した前記光106が入射光として入射し、前記入射光の少なくとも一部を反射光106’として反射する測定部と前記半導体基板上に形成され、前記半導体基板内を通過した前記反射光106’を受光する受光素子103とを備えたことを特徴とする。これにより受光光素子の保持部と光の伝搬経路とを兼用していることによる小型化が可能となる。
【0203】
<3>
本実施形態にかかる測定装置100は、前記受光素子103が前記半導体基板101上に形成されたことを特徴とする<1>に記載の測定装置。これにより受光光素子の保持部と発光素子の保持部とを兼用していることによる小型化が可能となる。
【0204】
<4>
本実施形態にかかる測定装置100は、前記半導体基板101、前記発光素子104、前記受光素子103、前記測定部102が一体に構成されたことを特徴とする<1>~<3>に記載の測定装置である。これにより、発光素子と受光素子を近傍に形成でき、測定装置の主要な要素を高密度に作りこむことができる。発光素子104、受光素子103、測定部102を高精度に位置合わせができているため、計測精度が向上する。
【0205】
<5>
本実施形態にかかる測定装置100は、前記発光素子104および前記受光素子103が前記半導体基板101の同一表面に成膜形成されたことを特徴とする<1>~<4>に記載の測定装置である。これにより、同一平面上に実施するフォトリソグラフィなどの半導体プロセスにより、発光素子、受光素子の相対的な位置精度が向上し、測定の精度が向上する。
【0206】
<6>
本実施形態にかかる測定装置100は、前記発光素子104が面発光型レーザであることを特徴とする<1>~<5>に記載の測定装置である。これにより光を半導体基板101に対して、直接入射することが可能となり、小型の測定装置を提供できる。
【0207】
<7>
本実施形態にかかる測定装置100における前記発光素子104は、第1の上部コンタクト層302と、第1のキャリア励起層306と、前記第1の上部コンタクト層302よりも前記半導体基板101に近い側の第1の下部コンタクト層308と、を備え、前記受光素子103は、第2の上部コンタクト層402と、第2のキャリア励起層406と、前記第2の上部コンタクト層402よりも前記半導体基板101に近い側の第2の下部コンタクト層408と、を備え、少なくとも、前記第1の下部コンタクト層308と前記第2の下部コンタクト層408とが同じ材料であることを特徴とする<1>~<6>に記載の測定装置である。これにより、同時に結晶成長することで低コストの製造方法を採用でき、低コストの小型測定装置を提供できる。
【0208】
<8>
本実施形態にかかる測定装置100における前記発光素子104と前記受光素子103は、前記キャリア励起層(306、450)を異なる膜厚、もしくは異なる材料からなることを特徴とする<1>~<7>に記載の測定装置である。これにより、下部コンタクト層を同時に結晶成長できるため、製造方法として低コストを実現する方法を選択しつつ、個別に結晶成長する受光素子を、受光に最適な膜厚、材料とすることで、受光感度を向上することができる。高感度化した受光素子による高精度な測定が可能となる。
【0209】
<9>
本実施形態にかかる測定装置100は、前記光が前記半導体基板101内部で少なくとも2回以上反射することを特徴とする<1>~<8>に記載の測定装置である。これにより小型であることを維持しつつ、光が伝搬する距離を長くすることが可能となり、検出精度を向上することができる。
【0210】
<10>
本実施形態にかかるウェアラブルデバイス(1101、1103、1104)は、<1>~<9>に記載の測定装置100(1102)を備えていることを特徴としている。これにより、小型な測定装置として快適性を維持しつつ高精度な検出が可能なウェアラブルセンサとなる。
【0211】
<11>
本実施形態にかかる測定装置100の製造方法は、発光された光106が半導体基板101内に出射されるように前記半導体基板に発光素子104を形成する工程と前記半導体基板101内を通過した前記光106が入射するように前記半導体基板に測定部102を配置する工程とを備えることを特徴とする。これにより、小型化された測定装置を提供できる。
【0212】
<12>
本実施形態にかかる測定装置100の製造方法は、半導体基板101内を通過した光106が入射するように前記半導体基板101に測定部102を配置する工程と前記測定部102に入射した前記光106が前記測定部102で反射した反射光106’が入射するように前記半導体基板に受光素子103を形成する工程とを備えることを特徴とする。これにより、小型化された測定装置を提供できる。
【0213】
<13>
本実施形態にかかる測定装置100は、前記測定部に表面プラズモン共鳴を発生させる金属層602を備える<1>~<12>に記載の特徴を有する表面プラズモン共鳴センサである。これにより、表面プラズモン共鳴現象を利用した非常に高感度な計測が可能となる。
【符号の説明】
【0214】
100 表面プラズモン共鳴センサ(測定装置の一例)
101 GaAs基板(半導体基板の一例)
102 感応部(測定部の一例)
103 フォトダイオードアレイ(受光素子の一例)
104 面発光レーザ(発光素子、光源の一例)
105 傾斜ミラー構造
106 光(入射光の一例)
106’ 光(反射光の一例)
206 フォトダイオード(受光素子の一例)
220 フォトダイオード(上部DBRを取り外した受光素子の一例)
230 フォトダイオード(キャリア励起層を最適化した受光素子の一例)
307 下部コンタクト層(発光素子)
306 キャリア励起層(受光素子)
302 上部コンタクト層(受光素子)
407 下部コンタクト層(受光素子)
406 キャリア励起層(受光素子)
402 上部コンタクト層(受光素子)
450 キャリア励起層(材料・厚さを受光性能に最適化した)
601 感応膜
602 金属層
603 誘電体膜、ガラス基板(透明基板の一例)
709 第2のミラー構造
907 第3のミラー構造
1001 流路
1002 第1の電極
1003 第2の電極
1101 指輪型ウェアラブルセンサ
1102 表面プラズモン共鳴センサシステム(測定装置の一例)
1103 腕時計型ウェアラブルセンサ
1104 コンタクトレンズ型ウェアラブルセンサ
図1
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