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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135269
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】積層フィルムおよびフィルム積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240927BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20240927BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B15/08 A
B32B15/09 Z
G02B5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045873
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】安富 史郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄三
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
【Fターム(参考)】
2H042DA04
2H042DA11
2H042DA14
2H042DA17
2H042DA21
2H042DC02
4F100AA20D
4F100AA20E
4F100AB01B
4F100AB12A
4F100AB24B
4F100AB31B
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK25C
4F100AK36C
4F100AK41A
4F100AK41C
4F100AK41D
4F100AK41E
4F100AK51C
4F100AK53C
4F100AT00A
4F100AT00D
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA00C
4F100CA02C
4F100CA18C
4F100CB00B
4F100DE01D
4F100DE01E
4F100EH20
4F100EH46
4F100EH46C
4F100EH66
4F100EH66B
4F100EH71
4F100EH71B
4F100EJ38
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4F100EJ65E
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4F100EJ86C
4F100GB41
4F100JA06
4F100JB12C
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4F100JN01
4F100JN06
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】
フィルム構成上、反射率が低下しやすい使い方であるにも関わらず、反射率の低下を抑制し、高輝度を実現可能な積層フィルムを提供することである。
【解決手段】
基材フィルムの片面に金属層を備え、他方の面に樹脂層を備えた構成であり、SCE方式による樹脂層表面の反射L(D65)値が13.0以上である積層フィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面に金属層を備え、他方の面に樹脂層を備えた構成であり、SCE方式による樹脂層表面の反射L(D65)値が13.0以上である積層フィルム。
【請求項2】
前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムが少なくとも三層構成である、請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
少なくとも三層構成である前記ポリエステルフィルムの樹脂層と接するポリエステル層が実質的に粒子を含有しない、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
少なくとも三層構成である前記ポリエステルフィルムの金属層を設ける側のポリエステル層が実質的に粒子を含有しない、請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記ポリエステルフィルム中にチタン元素を含む、請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記樹脂層がメラミン、オキサゾリン、エポキシ、及びイソシアネートからなる群から選択される1種以上の(A)架橋剤を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記樹脂層がポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上の(B)バインダー樹脂を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記樹脂層の厚みが10~200nmである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記基材フィルムの厚みが9~75μmである、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記金属層が蒸着、スパッタ、またはメッキの何れかにより設けられる、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項12】
前記金属層が銀または銀を主成分とする銀合金を含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項13】
前記基材フィルムと前記金属層との間にアンカー層を備えた、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項14】
前記金属層上に保護層を備えた、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項15】
請求項1~14の何れかに記載の積層フィルムの金属層側に接着層を介して他の樹脂フィルムを貼合した、フィルム積層体。
【請求項16】
前記他の樹脂フィルムが白色フィルムである、請求項15に記載のフィルム積層体。
【請求項17】
前記他の樹脂フィルムの厚みが9~75μmである、請求項15に記載のフィルム積層体。
【請求項18】
反射シート用である、請求項1~14の何れかに記載の積層フィルム。
【請求項19】
反射シート用である、請求項15に記載のフィルム積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよびフィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
工業材料、光学材料、電子部品材料、電池用包装材など様々な分野で、基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層を設けた積層フィルムが使用されている。積層フィルムの基材フィルムとしては、ポリエステルフィルムとして代表的なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、特に2軸延伸PETフィルムが、透明性、機械強度、耐熱性、柔軟性などに優れることから広く使用されている。
【0003】
従来から、プラスチックフイルムにアルミニウム薄膜層や銀薄膜層等からなる金属層を備えた反射フィルムと、アルミニウム板やステンレス板等の金属板である支持体とが、接着剤層を介して積層された構成を有する反射材が知られている。特許文献1には、プラスチックフイルムからなる基材の片面に、アンカー層、銀蒸着層、樹脂からなる腐食防止層を形成し、さらにプラスチックフイルムからなる基材の反対面に、紫外線吸収機能を有する樹脂層を設けた反射フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-122717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される反射フィルムにおいて、反射面を前記樹脂層側とした場合には、外から入射した光は、厚さが比較的厚い、通常、25μm程度以上の厚さである樹脂フィルムからなる基材を一旦通過した後、アンカー層を通過して、反射層である銀蒸着層で反射される。その後、反射された光は、さらにもう一度、アンカー層、樹脂フィルムからなる基材を順に通過するため、腐食防止層側を反射面とした場合と比較して、反射光の反射率は低下しやすくなる傾向にあった。近年、ディスプレイ用の反射部材においてはさらに高輝度なタイプが必要とされる状況にあり、前記反射特性のさらなる改善が望まれる状況にあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に対して、フィルム構成上、反射率が低下しやすい使い方であるにも関わらず、反射率の低下を抑制し、高輝度を実現可能な積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定構成の樹脂組成物を基材フィルムの一方に塗布して樹脂層を設けた、積層フィルムを用いることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[19]を提供するものである。
[1]基材フィルムの片面に金属層を備え、他方の面に樹脂層を備えた構成であり、SCE方式による樹脂層表面の反射L(D65)値が13.0以上である積層フィルム。
[2]前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、上記[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記ポリエステルフィルムが少なくとも三層構成である、上記[2]に記載の積層フィルム。
[4]少なくとも三層構成である前記ポリエステルフィルムの樹脂層と接するポリエステル層が実質的に粒子を含有しない、上記[3]に記載の積層フィルム。
[5]少なくとも三層構成である前記ポリエステルフィルムの金属層を設ける側のポリエステル層が実質的に粒子を含有しない、上記[3]又は[4]に記載の積層フィルム。
[6]前記ポリエステルフィルム中にチタン元素を含む、上記[2]~[4]の何れかに記載の積層フィルム。
[7]前記樹脂層がメラミン、オキサゾリン、エポキシ、及びイソシアネートからなる群から選択される1種以上の(A)架橋剤を含む、上記[1]~[6]の何れかに記載の積層フィルム。
[8]前記樹脂層がポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選択される1種以上の(B)バインダー樹脂を含む、上記[1]~[7]の何れかに記載の積層フィルム。
[9]前記樹脂層の厚みが10~200nmである、上記[1]~[8]の何れかに記載の積層フィルム。
[10]前記基材フィルムの厚みが9~75μmである、上記[1]~[9]の何れかに記載の積層フィルム。
[11]金属層が蒸着、スパッタ、またはメッキの何れかにより設けられる、[1]~[10]の何れかに記載の積層フィルム。
[12]前記金属層が銀または銀を主成分とする銀合金を含む、上記[1]~[11]の何れかに記載の積層フィルム。
[13]前記基材フィルムと前記金属層との間にアンカー層を備えた、上記[1]~[12]の何れかに記載の積層フィルム。
[14]前記金属層上に保護層を備えた、上記[1]~[13]の何れかに記載の積層フィルム。
[15][1]~[14]の何れかに記載の積層フィルムの、金属層側に接着層を介して他の樹脂フィルムを貼合した、フィルム積層体。
[16]前記他の樹脂フィルムが白色フィルムである、上記[15]に記載のフィルム積層体。
[17]前記他の樹脂フィルムの厚みが9~75μmである、上記[15]または[16]に記載のフィルム積層体。
[18]反射シート用である、上記[1]~[14]の何れかに記載の積層フィルム。
[19]反射シート用である、上記[15]~[17]の何れかに記載のフィルム積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射率の低下を抑制し、高輝度を実現可能な積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施態様を示す金属積層フィルムの構成例である。
図2】金属積層フィルムの構成を元に光の入射・反射の仕方を示した図である。
図3】本発明の実施態様を示すフィルム積層体の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明は、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の積層フィルムは、基材フィルム片面に金属層を備え、他方の面に樹脂層を備えた構成である。樹脂層は、該樹脂層を形成するための樹脂組成物を塗布し、その後、乾燥及び硬化することで形成される。以下、片面に金属層を備え、樹脂組成物が硬化してなる樹脂層が基材フィルム上の他の面に設けられる積層フィルムの実施形態を参照しつつ本発明を説明する。
【0012】
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの片面に金属層を備え、他方の面に樹脂層を備えた構成である。以下、各部材についてより詳細に説明するが、まず積層フィルムを構成する部材についてさらに詳細に説明する。
【0013】
[基材フィルム]
積層フィルムを構成する基材フィルムは、フィルム状を呈するものであれば、その材料を特に限定するものではない。例えば、紙製、樹脂製、金属製などであってもよい。これらの中でも、機械的強度および柔軟性の観点から、樹脂製であることが好ましい。
【0014】
樹脂製の基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの高分子を膜状に形成した樹脂フィルムを挙げることができる。また、フィルム化が可能であれば、これらの材料を混合したもの(ポリマーブレンド)や構成単位を複合化したもの(共重合体)であっても構わない。
【0015】
上記例示したフィルムの中でも、ポリエステルフィルムは、耐熱性、平面性、光学特性、強度などの物性が優れており、特に好ましい。上記ポリエステルフィルムは単層でも、性質の異なる2以上の層を有する多層フィルム(すなわち、積層フィルム)でもよい。ポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分樹脂とするフィルムである。
また、ポリエステルフィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであるのが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性の観点で、二軸延伸フィルムであるのがより好ましい。したがって、二軸延伸ポリエステルフィルムがよりさらに好ましい。
【0016】
上記ポリエステルフィルムの主成分樹脂であるポリエステルは、ホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。なお、主成分樹脂とは、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の中で最も質量割合の大きい樹脂の意味であり、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の50質量%以上、或いは75質量%以上、或いは90質量%以上、或いは100質量%を占めればよい。
【0017】
上記ホモポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、テレフタル酸が好ましい。脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができ、エチレングリコールが好ましい。
代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等を例示することができる。
【0018】
一方、上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の一種又は二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を挙げることができる。共重合ポリエステルは、ジカルボン酸がテレフタル酸を含み、グリコール成分がエチレングリコールを含み、かつ第3成分がこれら以外であることが好ましい。
中でも、本離型フィルムにおける基材としては、60モル%以上、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0019】
本積層フィルムにおける基材フィルムには、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステルフィルムの場合には、ポリエステルの製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0020】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.1~3μmの範囲である。平均粒径を上記範囲で用いることにより、フィルムに適度な表面粗度を与え、良好な滑り性と平滑性が確保できる。
粒子を配合する場合、例えば、表層と、中間層を設けて、表層に粒子を含有させることが好ましい。この場合、より好ましくは、粒子を含有する表層、中間層、及び粒子を含有する表層をこの順に有する多層構造とするとよい。
【0021】
さらに基材フィルム中の粒子の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.0003~3質量%の範囲である。粒子の含有量を上記範囲内とすることで、基材フィルムの透明性を確保しつつ、基材フィルムに滑り性を付与しやすくなる。ただし、基材フィルムは、実質的に粒子を含有しなくてもよい。
なお、本明細書において「実質的に粒子を含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子質量濃度)がその部材や層(ここでは、基材フィルム)に対して、200ppm以下、より好ましくは150ppm以下のことを指す。以下で示す同様の用語も同様の意味である。
なお、基材フィルムに粒子が実質的に含有されない場合、あるいは含有量が少ない場合は、基材フィルムの透明性が高くなり外観が良好なフィルムが得られ、また、樹脂層表面の平滑性が高くなりやすくなる。一方で、積層フィルムの滑り性が不十分となる場合がある。そのため、そのような場合には、樹脂層中に粒子を配合するなどすることで、滑り性を向上させたりしてもよいし、後述する粒子を有する易滑層などを設けて滑り性を向上させてもよい。
【0022】
本発明の積層フィルムにおいては、少なくとも三層構成であることが好ましく、例えば三層のポリエステル層からなる態様がある。粒子については、後に詳述する樹脂層と接するポリエステル層は実質的に粒子を含有しない態様が好ましい。粒子を実質的に含有しないことで、透過する光の直進性を良好とし、輝度向上効果が期待できる。
また、樹脂層の反対面側にある金属層を設ける側のポリエステル層が、実質的に粒子を含有しないことが好ましい。粒子を実質的に含有しないことで、基材フィルムの輝度向上効果が期待できる。
以上のように、積層フィルムの両表層において、易滑性と輝度向上効果の観点から粒子の含有量を制御することが重要であり、仕様に応じて粒子の含有量は調整されることが好ましい。
【0023】
≪ポリエステル重縮合触媒≫
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物等が挙げられる。これらの中では、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかが好ましく、とりわけ、チタン化合物を用いて得られるポリエステルを使用することが好ましい。
したがって、ポリエステルフィルムは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、ポリエステルフィルムは、チタン化合物を含むことがより好ましい。
前記チタン化合物を使用することで、積層フィルム中を進む光が金属層で反射して戻ってきた際、光の色目が白っぽく明るいため、さらなる輝度向上に寄与することが期待できる。光の明暗という観点で見た場合、アンチモン化合物を用いた場合、フィルムの透過光はくすんでいて、往々にして暗い傾向にある。
【0024】
本ポリエステルフィルムの場合、少なくとも一層にチタン化合物を含有するのが好ましく、さらに好ましくはすべての層において、チタン化合物を含有するのがよい。
当該ポリエステルフィルム中に含まれるチタン化合物に由来するチタン元素含有量は3ppm以上300ppm以下であることが好ましく、5ppm以上200ppm以下であることがより好ましい。
上記範囲内であれば、ポリエステルの製造効率を低下させることなく、フィルムの更なる輝度向上に寄与することができる。
【0025】
基材フィルムの厚みは、好ましくは12~75μmであり、より好ましくは20~60μmである。基材フィルムが上記範囲内であると、工業材料、光学部品、電子部品、電池用包装材などの各分野において好適に使用できる。
【0026】
(本フィルムの積層構造)
本フィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、ベース層Aと表面層B及び表面層Cから構成されるB/A/C及びベース層Aと表面層Bから構成されるB/A/Bの3層構造が好ましい。本フィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、各層を構成する主成分樹脂は、上記の通りポリエステルが好ましい。
【0027】
上記B/A/C及び上記B/A/Bの3層構造において、表面層B及び表面層Cは、ハンドリング性を確保するために、必要最低限の粒子を含有してもよい。好ましくは、粒子は実質的に含有しないことがよい。
【0028】
また、上記B/A/C及びB/A/Bの3層構造において、表面層B及び表面層Cそれぞれは、粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する(いわゆる単分散性を有する)粒子を含有することが特に好ましい。
【0029】
表面層Bは、例えば平均粒径0.1~3μmの粒子を含有し、平均粒径0.1~0.5μmの粒子を含有することが好ましい。前記表面層Cは、例えば平均粒子径0.1~3μmの粒子を含有し、また、平均粒径0.05~0.2μmの粒子を含有することが好ましく、0.05~0.1μmの粒子を含有することがより好ましい。
【0030】
なお、粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径とする。
【0031】
また、本フィルムは、前記粒子を例えば900ppm以上の質量割合で含み、2000~10000ppmの質量割合で含むことが好ましく、中でも2500ppm以上9500ppm以下がより好ましく、その中でも3000ppm以上9000ppm以下の質量割合で含むことがさらに好ましい。なお、ここでいう質量割合とは、各表面層における粒子の割合である。
【0032】
また、前記表面層Cは、前記粒子を900ppm以上6000ppm以下の質量割合で含むことがとりわけ好ましい。
前記表面層Cが、係る範囲で粒子を含むことでフィルムの取扱い性を良好とできる。
【0033】
また、前記表面層Bは、前記粒子を5000ppm未満の質量割合で含むことがとりわけ好ましく、前記粒子を2000ppm以上4000ppm以下の質量割合で含むことが最も好ましい。
【0034】
前記ベース層Aは、最も厚みの厚い主層として機能させることが好ましく、コストダウンするために、粒子を実質的に含まないか、或いは、少なくとも表面層Bよりも低濃度で粒子を含むことが好ましい。なお、本態様では、表面層Bは金属層側の表面層であるとよい。
【0035】
<樹脂層>
樹脂層は、樹脂組成物を硬化して形成されるものであり、基材フィルム上に設けられる。樹脂層は、基材フィルムの片面のみに設けられてもよいが、両面に設けられてもよい。
樹脂層は、基材フィルムの光学特性を向上させる機能を有する。樹脂組成物は、バインダー樹脂、架橋剤、粒子の組み合わせにより、フィルムヘーズを小さくしたままで、全光線透過率をさらに向上させることができる。
樹脂層を両面に設ける場合には、光線透過率をさらに向上させながら、それでいて、金属層に対する密着性向上効果も付与できる場合がある。
樹脂層の厚みは0.01~2μmであることが好ましく、0.03~1.5μmであることがより好ましく、0.03~1.0μmであることがさらに好ましい。
樹脂層の厚みが上記下限値以上であると均一な樹脂層を形成しやすい利点があり、上記上限値以下であると硬化性向上の利点がある。なお、樹脂層の厚みは乾燥後の厚みである。
【0036】
本発明の積層フィルムにおける樹脂層は、架橋剤を含有していることが好ましい。架橋剤を含むことで、樹脂層の強度、耐熱性等が向上する。
(A)架橋剤
架橋剤としては、種々公知の架橋剤が使用でき、例えば、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。なお、オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を有するアクリルポリマーなどであってよい。
これらの中でも、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、及びエポキシ化合物が好ましい。これら架橋剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物における架橋剤の含有量は、固形分基準で、例えば、5~50質量%、好ましくは10~40質量%である。
【0037】
また、本発明の積層フィルムにおける樹脂層は、バインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂を含むことで、樹脂層の強度、耐熱性等が向上する。
(B)バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等のポリビニル系樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも、皮膜形成性の観点からは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましく、より好ましくはポリエステル樹脂、アクリル樹脂である。これらバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。樹脂組成物において、バインダー樹脂の含有量は、固形分基準で、例えば20~90質量%、好ましくは30~80質量%である。
【0038】
樹脂組成物には、耐ブロッキング性、滑り性改良を目的として粒子を配合してもよい。粒子としては、後述する易滑層で示したものを適宜使用できる。ただし、樹脂組成物は、実質的に粒子を含有しないことが好ましい。粒子を実質的に含有しないことで、樹脂層表面の平滑性を高めることができる。
また、樹脂組成物には、架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒などが配合されていてもよい。さらに、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することも可能である。
【0039】
樹脂組成物は、一般的に、水、有機溶剤、又はこれらの混合液により希釈されていることが好ましく、樹脂層は、樹脂組成物の希釈液を、基材フィルムの表面に塗布液としてコーティングして、乾燥することにより形成するとよい。コーティングは、従来公知の方法で行うとよい。樹脂層の厚さは、通常、10~200nmの範囲であり、好ましくは10~150nm、さらに好ましくは20~100nmの範囲である。前記範囲を満足することで外部からの光の取り込みが容易となり、樹脂層構成材料との組み合わせにより、全光線透過率がさらに向上する。
【0040】
<樹脂層の形成方法>
上記のとおり、樹脂層は、樹脂組成物を基材フィルム表面に塗布し、乾燥して塗布層を形成し、その塗布層を硬化することで得ることができる。
樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレーコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等従来公知の塗布方法を用いることができる。
乾燥条件は、特に限定されず、室温付近で行ってもよいし、加熱により行ってもよく、例えば25~120℃程度、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~90℃である。また、乾燥時間は、溶媒が十分に揮発できる限り特に限定されず、例えば10秒~30分程度、好ましくは15秒~10分程度である。
【0041】
<ポリエステルフィルムの物性>
(フィルムヘーズ)
フィルムヘーズ値が1.3%以下を満足することが好ましい。フィルムヘーズ値を上記上限値以下とすることで、例えば、視認性を必要とする用途に適用可能となる。フィルムヘーズ値は好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。
【0042】
(全光線透過率)
全光線透過率が89%以上を満足することが好ましい。さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率を上記下限値以上とすることで、例えば、高度なレベルの輝度を必要とするディスプレイ用途などに適用可能となる。
【0043】
<積層フィルム(金属層付き)の物性>
(SCE方式による樹脂層表面の反射L(D65))
SCE方式による反射L(D65)は13.0以上であることが必要である。好ましくは15.0以上、さらに好ましくは17.0以上、その中でも特に19.0以上が好ましい。前記範囲を満足することで高度なレベルで輝度が必要とされる用途、例えば、ディスプレイ用反射シートなどに好適となる。
本発明においては、人がモノを見るときの状態に近い状態を再現するために正反射光を除き、拡散光のみで測定する方式(SCE方式)を採用し、さらに光源D65を用いた時の反射L値が輝度と良好な相関関係にあることを知見し、本発明を完成させるにいたった。
【0044】
具体的には、図2に示すように外から光を取り込む方式により、測定するものである。
金属層まで光が通過する場合(矢印A)には樹脂層、基材フィルム、アンカー層において、光の吸収が起こり、金属層に達するまでに光量が減衰する傾向にある。
さらにその後、金属層表面で反射した光は外側に向かって、今まで来たルートと逆方向(図2の矢印B)に進行する。その結果、樹脂層表面に到達するまでに、光量が減衰したままの状態であるため、さらに輝度を向上させるためには、何らかの形で、外から取り込む光量を増やす必要があった。
そこで、本発明者は特定構成の樹脂層が外から取り込む光量を増やす、いわゆる、「輝度向上層」として作用する、異質な作用効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。実施例と比較例との比較により、樹脂層の有無により、全光線透過率に差があることがわかり、樹脂層により、より多くの光を取り込んで、透過させることができる。その結果、金属層を裏面に備えたフィルム構成において、同じ程度、すなわち、光量が減衰したとしても、結果的により多くの光が反射して戻ってくるので、輝度がさらに向上するものと推察される。
【0045】
<金属層>
金属層は基材フィルムの樹脂層が設けられていない面に直接あるいは、アンカー層を介して設けられるのが好ましい。
また、金属の種類に関しては、銀または銀を主成分とする銀合金を含むことが好ましい。なお、ここで「銀を主成分とする」とは、銀合金中の銀の含有量が50質量%以上であることを意味する。銀合金中の銀の含有量としては、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることからさらに好ましい。
【0046】
銀合金を構成する場合、他の金属の種類は特に限定されるわけではない。従来から公知の材料を用いることができる。具体例として、銅、ビスマス、金、白金、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、マグネシウム、鉛などが例示される。銀合金に含まれる他の金属の割合は、0.1~10(単位:原子%)であることが好ましい。
【0047】
金属層の厚みに関しては、通常、40~300nm、好ましくは60~200nm、さらに好ましくは80~150nmである。前記範囲を満足することにより、例えば、反射用途に用いた場合、良好な反射特性が得られる。
【0048】
金属層の積層方法に関しては、従来から公知の手法を採用することができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、EB蒸着法、CVD蒸着法、イオンプレーティング法などの、「ドライコーティング法」を用いることができる。
【0049】
<保護層>
金属層表面の傷付着あるいは腐食から保護する目的で保護層を金属層上に備えてもよい。保護層は単層でも、2層以上の積層構成であってもよく、積層フィルムの用途あるいは要求特性に応じて、適宜選択できる。
【0050】
保護層を構成する組成物としては、従来から公知の樹脂が使用できる。
例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂等の樹脂が例示される。これらは、単独あるいは2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、金属層を傷付着あるいは腐食から保護する目的で、上記保護層に替えて、あるいは保護層とともに、さらに接着層を介して「他の樹脂フィルム」を貼合した構成であってもよい。
上記「他の樹脂フィルム」としては、前記基材フィルムに用いる樹脂フィルムと同様のフィルムが使用できる。その中でも「他の樹脂フィルム」は、反射特性を良好とする観点から、白色フィルムであるのが好ましい。また、「他の樹脂フィルム」の厚みは、ディスプレイ用部材など、限られたスペースへの搭載を想定し、厚みを極力抑える観点から、9~75μmが好ましく、12~50μmであることがさらに好ましい。
【0052】
本発明の積層フィルムは、工業材料、光学部品、電子部品、電池用包装材など様々な分野で使用可能であるが、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、窓ガラス等の光学用に好適である。
本発明の積層フィルムは、上記のとおり、ヘーズ値が低い値に維持されるので、光学部品などに使用されても、光学部品の性能を低下させることはない。特にディスプレイ周辺部材の中でも、反射シートとして好適である。
【0053】
<語句の説明など>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0054】
次に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明が、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0055】
<評価方法>
種々の物性及び特性の測定及び評価方法は、以下の通りである。
【0056】
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0057】
(2)粒子の平均粒径
走査型電子顕微鏡(HITACHI製、「S3400N」)を用いて、粉体を観察した。
得られた画像データから粒子1個の大きさを測定し、10点の平均値を平均粒径とした。
【0058】
(3)フィルムヘーズ、全光線透過率
JIS K 7136に準拠し、村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHM-150を使用して、各積層フィルムのフィルムヘーズを測定した。また、全光線透過率は、JIS K 7361に準拠し、前記と同様の装置を使用して測定した。
【0059】
(4)SCE方式による反射L(D65)
コニカミノルタ社製分光測色計(型式:CM25-cG)を用いて、金属層/基材フィルム/樹脂層から構成される積層フィルムを用いて、SCE方式による、樹脂層表面の反射L(D65)値、a(D65)値、及びb(D65)を測定した。なお、金属層を蒸着する前の積層フィルム(基材フィルム/樹脂層)についても、L値、a値、及びbを測定した。
【0060】
各実施例および比較例における積層フィルムの原料は、以下のとおりである。
(基材フィルム)
<ポリエステル(A)>
ジメチルテレフタレート100モル%、エチレングリコール100モル%、および酢酸カルシウム一水塩0.07質量部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノールを留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4時間半を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次に燐酸0.04質量部および三酸化アンチモン0.035質量部を添加し、常法に従って重合した。反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化してポリエステル(A)を得た。得られた極限粘度は0.63であった。
<ポリエステル(B)>
上記ポリエステル(A)に平均粒径2μmのシリカ粒子を加え、シリカ粒子を0.2質量%含有するポリエステル(B)を得た。極限粘度は0.65であった。
【0061】
[実施例1]
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ90質量%、10質量%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)のみを中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1/8/1の吐出量(質量比))の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記の樹脂層組成物の塗布液を塗布し、テンターに導き、横方向に110℃で4.3倍延伸し、235℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、膜厚(乾燥後)が30nmの樹脂層を有する厚さ23μmのポリエステルフィルム(基材フィルム)を得た。
【0062】
(樹脂組成物の配合条件)
下記化合物をA1:B1=90:10(固形分の質量%)で混合した。
(B1)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(A1)メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン
【0063】
(金属層の形成)
上記で得たポリエステルフィルムの樹脂層とは反対側の面に、銀(純度99.999%:高純度化学研究所製)を使用し、電子ビーム(EB)真空蒸着法により蒸着し、金属層を設けた。
以上のようにして得た積層フィルムについて、上記方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0064】
[実施例2]
実施例1において、樹脂層組成物と樹脂層厚みを変更する以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
下記化合物をA1:A2=60:40で混合した。
乾燥・延伸後の樹脂層厚みは100nmであった。
(A1)メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン
(A2)オキサゾリン化合物:オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー
【0065】
[実施例3]
実施例1において、樹脂層組成物と樹脂層厚みを変更する以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
下記組成物をB2:B1:A1:A2:A3=40:30:10:10:10で配合した。乾燥・延伸後の樹脂層厚みは100nmであった。
(B2)下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6-ナフタレンジカルボン酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=92/8//80/20(mol%)
(B1)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(A1)メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン
(A2)オキサゾリン化合物:オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有 するアクリルポリマー
(A3)エポキシ化合物:ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
【0066】
[実施例4]
実施例1において、樹脂層組成物と樹脂層厚みを変更する以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
下記B1:A2=90:10で配合、乾燥・延伸後の樹脂層厚みは30nm。
(B1)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(A2)オキサゾリン化合物:オキサゾリン基及びポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマー
【0067】
[比較例1]
実施例1において、樹脂層を設けないこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
(考察)
実施例1~4は比較例1と比較して、蒸着加工後のSCE方式における樹脂層表面の反射L(D65)値がいずれも大きく、良好であることがわかった。
また、蒸着前のポリエステルフィルムの全光線透過率とも相関が見られ、外部からの光の取り込む量が多いものは総じて、蒸着後の反射L(D65)値も大きい傾向を示した。
蒸着前のポリエステルフィルムにおける全光線透過率が比較例と比較しても1~3%程度の差と、見過ごされがちなレベルであるにもかかわらず、輝度の代用評価として、SCE方式による反射L(D65)値を見るとサンプル間(実施例1~実施例4)で大きな差になっていることがわかった。
樹脂層を構成する材料と樹脂層の厚み(乾燥後)を適切に組み合わせることで、従来よりもさらに反射L(D65)値を大きくできることもわかった。
【符号の説明】
【0070】
1 樹脂層
2 基材フィルム
3 アンカー層
4 金属層
5 保護層
6 他の樹脂フィルム
A 入射光
B 反射光
図1
図2
図3