(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135272
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】投受光装置、測距システム、測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/483 20060101AFI20240927BHJP
G01S 17/894 20200101ALI20240927BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20240927BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01S7/483
G01S17/894
G01S17/10
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045879
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 建郁
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA25
2F112DA28
2F112FA03
2F112FA07
2F112FA21
2F112FA23
2F112FA45
2F112GA01
2F112GA03
5J084AA05
5J084AD01
5J084AD02
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA14
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5J084BA40
5J084CA03
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5J084CA49
5J084CA67
5J084CA69
5J084CA70
5J084EA04
5J084EA11
5J084EA40
(57)【要約】
【課題】高精度の計測を可能とする投受光装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる投受光装置は、第1の光を投光する第1投光部と、第2の光を投光する第2投光部と、領域内の物体で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部と、を備え、前記第1の光を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光であり、前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光であり、前記第2の光の積算光量は、前記第1の光の積算光量よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を投光する第1投光部と、
第2の光を投光する第2投光部と、
領域内の物体で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部と、
を備え、
前記第1の光を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、
前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光であり、
前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光であり、
前記第2の光の積算光量は、前記第1の光の積算光量よりも大きい投受光装置。
【請求項2】
第1の光を投光する第1投光部と、
第2の光を投光する第2投光部と、
領域内の物体で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部と、
を備え、
前記第1の光を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、
前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光であり、
前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光であり、
前記第2の受光は、前記第1の受光よりも長い積算時間及び大きい増幅率の少なくとも一方を含む投受光装置。
【請求項3】
前記第1投光部および前記第2投光部から投光される前記第1の光および前記第2の光の積算光量、または前記受光部の積算時間、増幅率を制御する制御部を備える
ことを特徴とした請求項1または2に記載した投受光装置。
【請求項4】
前記第1投光部および前記第2投光部は複数の光源からなり、
発光する光源数を変化させることによって積算光量を制御する
ことを特徴とした請求項1または2に記載した投受光装置。
【請求項5】
前記第1投光部は第1光源を含み、前記第2投光部は第2光源を含み、該第1光源及び該第2光源は各々複数の発光部を有し、前記第2光源の発光部数は前記第1光源の発光部数よりも多い
ことを特徴とした請求項1または2に記載した投受光装置。
【請求項6】
前記投光部から出射される光以外の外光の光量を前記受光部によって検出し、
検出された前記外光の光量に基づき
前記第1の光の積算光量および前記第2の光の積算光量を変化させる
ことを特徴とした請求項1または2に記載した投受光装置。
【請求項7】
前記第1投光部および前記第2投光部から出射される光以外の外光の光量を前記受光部によって検出し、
検出された前記外光の光量に基づき、
前記第1の受光の積算時間及び増幅率の少なくとも一方と、前記第2の受光の積算時間及び増幅率のうち少なくとも一方を変化させる
ことを特徴とした請求項1または2に記載した投受光装置。
【請求項8】
前記投受光装置の温度計測を行い、
前記計測された温度に基づき、前記第1の光の積算光量と前記第2の光の積算光量の少なくとも一方を変化させ、前記第1の受光の積算時間と増幅率および前記第2の受光の積算時間と増幅率のうち少なくとも1つを変化させる
ことを特徴とした請求項1または2に記載した投受光装置。
【請求項9】
前記受光部は、光を検出する光検出器を含み、同一の該光検出器により前記第1の受光と前記第2の受光が行われる
ことを特徴とした請求項1または2に記載した投受光装置。
【請求項10】
第1の光を投光する第1投光部と、
第2の光を投光する第2投光部と、
領域内の物体で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部と、
前記受光部によって検出した情報から前記物体の距離情報を演算する距離計算部と、
を備え、
前記第1の光を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、
前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光であり、
前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光であり、
前記第2の光の積算光量は、前記第1の光の積算光量よりも大きい測距システム。
【請求項11】
第1の光を投光する第1投光部と、
第2の光を投光する第2投光部と、
領域内の物体で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部と、
を備え、
前記第1の光を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、
前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光であり、
前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光であり、
前記第2の受光は、前記第1の受光よりも長い積算時間及び大きい増幅率の少なくとも一方を含む測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投受光装置、測距システム、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、光を発して光源として機能する発光部と、発光部で発光された光を集光して測距光を形成する集光部と、測距光が測距対象の物体に反射した反射光を受光する受光部と、発光部および受光部を制御して、発光部において光を発光した発光タイミングと、受光部において反射光が受光された受光タイミングとに基づいて、物体までの距離を測定する制御部とを備えた測距装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高精度の計測を可能とする投受光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる投受光装置は、第1の光を投光する第1投光部と、第2の光を投光する第2投光部と、領域内の物体で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部と、を備え、前記第1の光を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光(スポット光)であり、前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光(拡散光)であり、前記第2の光の積算光量は、前記第1の光の積算光量よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
高精度の計測を可能とする投受光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態のハードウェア構成図である。
【
図3】第1の実施形態の光源部のハードウェア構成図である。
【
図4】第1の変形例の光源部のハードウェア構成図である。
【
図5】第1の実施形態の光源部のハードウェア構成図である。
【
図6】第2の変形例の光源部のハードウェア構成図である。
【
図11】拡散光に起きるマルチパス干渉を説明する図である。
【
図12】スポット光によるマルチパス干渉の補正方法を説明する図である。
【
図13】スポット光および拡散光を説明する図である。
【
図14】スポット光による補正範囲を説明する図である。
【
図15】第1の実施形態のフローチャート図である。
【
図18】第2の実施形態の変換回路を説明する図である。
【
図19】第2の実施形態のフローチャート図である。
【
図21】第3の実施形態のフローチャート図である。
【
図23】第4の実施形態のフローチャート図である。
【
図24】投光の照射距離とセンサに入射する光強度の関係を示した図である。
【
図25】第5の実施形態のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<第一の実施形態>
図1は、第1の実施の形態にかかる測距装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。撮像装置としても機能する測距装置100は、測距装置100から対象物までの測距を行う。測距装置100は、光を照射してから反射光を受光するまでの時間に基づき対象物までの距離を算出するTOF(Time of Flight)カメラである。
【0010】
図1に示すように、測距装置100は、3つの投光部1-1、1-2、1-3を有している。受光部2は、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)3、および制御部である測距制御部4を有している。
【0011】
投光部1-1としては、例えばVCSEL(垂直共振器型面発光レーザ:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)等の光源部10-1と、レンズ等の光学素子11-1と、を用いることができる。投光部1-1は、例えば広角レンズ又は魚眼レンズ等の光学素子11-1を介して広い範囲にVCSEL等の光源部10-1からのレーザ光を投光する。なお、投光部1-1はレーザと広角レンズの組み合わせに限定するものではなく、対象物に投光することができればよく、光源部10-1としてはLED(発光ダイオード)などを用いてもよいし光学素子11-1としては回折光学素子(DOE)や拡散板などを用いてもよい。投光部1-1は、投射範囲内28で略均一な明るさになるように、光を拡散させるものとする。すなわち、投光部1-1が投光する光は、拡散光27である。
【0012】
投光部1-2も同様に拡散光として利用する。例えばVCSEL等の光源部10-2と、レンズ等の光学素子11-2と、を用いることができる。投光部1-2は、例えば広角レンズ又は魚眼レンズ等の光学素子11-2を介して広い範囲にVCSEL等の光源部10-2からのレーザ光を投光する。投光部1-2は、投射範囲内で略均一な明るさになるように、光を拡散させるものとする。すなわち、投光部1-2が投光する光は、拡散光27である。
【0013】
投光部1-3としては、例えばVCSEL等の光源部10-3と、レンズや回折光学素子、コリメータ、MLA(マイクロレンズアレイ)等の投光光学系11-3と、を用いることができる。このような構成により、投光部1-3は、投光する光を点状にして複数投影する。すなわち、投光部1-3が投光する点状光は、構造化光の一例であるスポット光29である。
【0014】
ここで、スポット光について説明する。スポット光は、実際にはある程度の光の広がりや少量のマルチパス干渉が存在するため、受光部2で受光したスポット光の反射光の点とそれ以外の領域とのコントラスト差を、必ずしも“100:0”とするものではない。一般的な光のビーム径の決定方法の一つを例に、以下においてスポット光を定義する。
【0015】
図2は、スポット光を例示的に示す図である。
図2(a)はスポット光の投光状態を示す図であり、
図2(b)は
図2(a)に示すスポット光の一部の輝度値を示す図である。今日、ピークの輝度値の1/e
2倍となる範囲を、光のビーム径とする考え方がある。ビーム領域とそれ以外とを分けるためには、
図2(a)の直線aに示すスポット光の一部の断面の輝度値(
図2(b))に示すように、おおむねピークの輝度値に対して谷の輝度値が1/e
2倍、つまり約13.5%以下となるような投光にする。おおむねピークの輝度値に対して谷の輝度値が1/e
2倍、つまり約13.5%以下となれば、スポット光とそれ以外の領域とを明確に区別可能である。
【0016】
以上は、ビーム径決定方法を例にしたスポット光の定義であるが、数字自体に発明性の意味はなく、何らかの方法で点とそれ以外の領域が識別できる程度のコントラスト差が得られれば良い。なお、光源部10-1、10-2、10-3から射出される光の波長は、例えば850nmや、940nmである。光源部10-1の波長と光源部10-2の波長と光源部10-3の波長は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
なお、投光する光を点状(スポット光)にして複数投影する投光部1-3を例に挙げてきたが、これに限るものではなく、不規則なドット配置によるランダムドットパターンやストライプパターンなどの任意のパターン化光(構造化光)を照射する投光部1-3であってもよい。
【0018】
受光部2としては、イメージセンサ2aと、レンズ等の受光光学素子と、を用いることができる。イメージセンサ2aは、光検出器の一例であり、例えばTOFセンサである。イメージセンサ2aは、光源部10-1、光源部10-2または光源部10-3から対象物26に照射され、物体等で反射された光25を受光する。受光部2は、投光部1-1および1-2から対象物へ照射された拡散光の反射光を受光する。
また、投光部1-3から対象物26へ照射されたスポット光29の反射光25も異なるタイミングで受光する。詳しくは後述するが、イメージセンサ2aは、受光した反射光の強度に応じた電気信号を、複数の位相信号に分けて画素毎に取得する。受光部2のイメージセンサ2aの数は限定されず、各投光部から投光された拡散光とスポット光の反射光を同一のセンサで受光してもよく、拡散光の反射光を受光するセンサとスポット光の反射光を受光するセンサを別としてもよい。
【0019】
ADC3は、画素毎に取得した位相信号をアナログ信号からデジタルデータに変換して、測距制御部4に供給する。
【0020】
測距制御部4は、センサI/F(Interface)41、光源駆動回路42、入出力インタフェース(入出力I/F)43、CPU(Central Processing Unit)44、ROM(Read Only Memory)45、RAM(Random Access Memory)46、SSD(Solid State Drive)47を有する。センサI/F41、入出力I/F43、CPU44、ROM45、RAM46及びSSD47は、システムバス48を介して相互に電気的に接続されている。
【0021】
センサI/F41は、イメージセンサ2aからの位相信号を取得するインタフェースである。
【0022】
入出力I/F43は、メインコントローラ装置又はパーソナルコンピュータ装置等の外部機器と接続するためのインタフェースである。
【0023】
CPU44の信号により、光源部10を制御する。光源部10-1~10-3の複数の光源部のうち、一部の光源部を同時に発光制御し、又は、発光させる光源部を変化させることも可能である。
【0024】
ROM45は、電源を切ってもプログラム又はデータを保持することが可能な不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROM45には、CPU44の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)及びOS(Operating System)設定等のプログラム又はデータが記憶されている。RAM46は、プログラム又はデータを一時的に保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。
【0025】
SSD47は、測距制御部4による処理を実行するプログラム又は各種データが記憶された不揮発性メモリである。一例ではあるが、SSD47には、測距撮像プログラムが記憶されている。詳しくは、後述するが、CPU44は、この測距撮像プログラムを実行することで、受光した反射光の強度に応じた電気信号を、複数の位相信号に分けて画素毎に取得するように、イメージセンサ2aを制御する。なお、SSD47の代りに、HDD(Hard Disk Drive)等の他の記憶装置を用いてもよい。
【0026】
CPU44は、ROM45又はSSD47等の記憶装置からプログラム又はデータをRAM46上に読み出し、処理を実行することで、測距制御部4全体の制御を行う。なお、CPU44の機能の一部又は全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の電子回路で実現してもよい。
【0027】
図3は光源部を説明するハードウェア構成図である。発光回路部105および発光制御部102、DC/DC(Direct Current-Direct Current)コンバータ101などから構成されている。VCSELもしくはLD110の光源110、駆動スイッチ104と、発光制御部102と、温度検出部103とを有する。各構成部は、電気基板等に実装され、光源部10を構成している。
【0028】
光源部10の中にある発光回路部105および発光制御部102は、CPU44から供給される制御信号に基づいて、所定の電圧波形、及び所定の発光周波数で駆動信号を供給して、光源110による発光を時間変調(時間的制御)する。なお、光源110に供給する駆動信号としては、矩形波、正弦波又は所定の波形形状の電圧波形を用いることができる。光源(VCSEL/LD)110は、電圧波形の周波数を変化させて、駆動信号の周波数を変調制御する。
【0029】
光源部10は、DC/DCコンバータ101と、発光制御部102とを有し、発光制御部102と駆動スイッチ104が発する光のパルス幅と、DC/DCコンバータ101への印加電圧とを制御する。
【0030】
DC/DCコンバータ101は、外部電源から入力する電圧を所定値の電圧に変換して、発光回路部105への印加電圧を生成する電圧印加部の一例である。例えば、DC/DCコンバータ101は、外部電源が出力する5[V]、12[V]又は24[V]等の電圧を、5[V]乃至100[V]に変換して印加電圧を生成することができる。外部電源には、例えばLIDAR装置が搭載される自動車が備えるバッテリ等がある。
【0031】
発光制御部102は、FPGA又はSoC(System on a Chip)等を含んで構成されている。発光制御部102は、駆動スイッチ104を所望のタイミングでスイッチング駆動させることで、発光制御部102が発する光のパルス幅を制御するパルス幅制御部の一例である。
【0032】
発光回路部105は、LD(Laser Diode)などの光源110と、駆動スイッチ104とを有し、レーザ光110を発する光源部10の一部である。
【0033】
光源110は、レーザ光を射出する光源である。なお、LDに代えて、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL;Vertical Cavity Surface Emitting LASER)や発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)等を使用してもよい。
【0034】
駆動スイッチ104は、光源110によるレーザ光の射出(オン)と非射出(オフ)を切り替えるスイッチング回路である。実施形態では、駆動スイッチ104は、GaN(窒化ガリウム)FETを含んでいる。但し、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)や他のトランジスタ等を含んで構成することもできる。
【0035】
温度検出部103は、光源(VCSEL,LD)110、及び/又は光源(VCSEL,LD)110周辺の温度を検出する熱電対等の温度センサを含んでいる。光源(VCSEL,LD)110は、温度によりI-V特性やI-L特性が変化する場合があるため、温度検出部103による検出値に基づき、光源(VCSEL,LD)110を制御できるようになっている。
【0036】
なお、投光部1は、上記の構成の他、レンズやミラー等の光学素子や、投光するレーザ光を分光する分光器、投光するレーザ光の光量を測定する光量測定器等を備えることもできる。
【0037】
図4は、第1の変形例として、光源を直列に2つ繋いだ方式を示す。光源(VCSEL,LD)110が複数直列に接続されている場合には20Vを超える場合もあり、DC/DCコンバータ101で昇圧する。光源(VCSEL,LD)110は駆動スイッチ104によってOn/Off制御される。このタイミングは発光制御部によって決められる。一例としては、発光制御部からは100MHzの矩形信号が1ms程度入力され、その矩形信号によって駆動スイッチが100MHzでOn/Offを繰り返す。その結果、100MHzの光信号が生成される。
発光制御では、駆動スイッチ104を駆動するための素子がおかれる。一般的にFETと呼ばれるICである。光源(VCSEL,LD)110はDC/DCコンバータに複数並列に接続したり、複数直列に接続したりしても構わない。発光部は高出力な光源が用いられることが多く、温度検出部103を設ける場合もある。例えば、温度ICやサーミスターなどを用いることがある。
【0038】
図5は発光回路部105を詳細に示したハードウェハ構成図である。DC/DCコンバータ101から供給される電圧を、抵抗106、光源(VCSEL,LD)110、FET104を接続してGNDに接続する。本実施形態では、駆動スイッチ104にはFET104を採用している。抵抗106は光源(VCSEL,LD)110に最適な電流値を設定するために接続する。例えば、1Ωや0.56Ωなどを使用する場合がある。抵抗106を可変にすることや、複数の抵抗106を選択式にしたりすることで光量の変更が可能である。また、DC/DCコンバータ101の電圧を変えることでも、光量を変更することが可能である。FET104にはMOS-FETやGaN-FETを使用する場合がある。
【0039】
図6は第2の変形例である光源部10の機能ブロック図である。抵抗、FETをワンチップに内蔵したLDDR(laser driver)107を用いた例である。LDDR107の構成としては、可変抵抗とFET、カレントミラー回路といった構成が一例としては上げられる。
【0040】
ここで、一般的なTOFカメラを用いた測距原理について説明する。
【0041】
(位相信号の取得動作)
イメージセンサ2aは、1つの受光素子に対して、例えば2つの電荷蓄積部(第1の電荷蓄積部及び第2の電荷蓄積部)を有しており、電荷を蓄積する電荷蓄積部を高速に切り替えることができる。このため、一つの矩形波に対して、真逆となる2つの位相信号を同時に検出できる。一例として、0度の位相信号及び180度の位相信号を同時に検出できる。また、90度の位相信号及び270度の位相信号を同時に検出できる。これは、2回の投光受光プロセスにより、距離計測が可能であることを意味している。
【0042】
図8は、測距原理を説明するためのタイミングチャートである。このうち、
図7(a)は投光のタイミングを示し、
図7(b)は、投光により得られる反射光のタイミングを示している。また、
図7(c)は、イメージセンサ2aが備える2つの電荷蓄積部のうち、第1の電荷蓄積部に0度の位相の位相信号が蓄積されるタイミングを示し、
図7(d)は、第2の電荷蓄積部に180度の位相の位相信号が蓄積されるタイミングを示している。また、
図7(e)は、イメージセンサ2aが備える2つの電荷蓄積部のうち、第1の電荷蓄積部に90度の位相の位相信号が蓄積されるタイミングを示し、
図7(f)は、第2の電荷蓄積部に270度の位相の位相信号が蓄積されるタイミングを示している。
【0043】
図7(c)~
図7(f)に斜線で示す間に、各位相の位相信号の電荷が第1の電荷蓄積部又は第2の電荷蓄積部に蓄積される。具体的には、0度の位相の位相信号の電荷としては、
図7(c)に示すように、投光終了のパルスエッジと、反射光の受光開始のパルスエッジの間の電荷が第1の電荷蓄積部に蓄積される。180度の位相の位相信号の電荷としては、
図7(d)に示すように、0度の位相の位相信号の電荷蓄積完了から、反射光の受光終了のパルスエッジの間の電荷が第2の電荷蓄積部に蓄積される。
【0044】
同様に、90度の位相の位相信号の電荷としては、
図7(e)に示すように、反射光の受光開始のパルスエッジから、電荷蓄積制御を行うパルスの電荷蓄積終了のパルスエッジの間の電荷が第1の電荷蓄積部に蓄積される。270度の位相の位相信号の電荷としては、
図7(f)に示すように、90度の位相の位相信号の電荷蓄積完了から、反射光の受光終了のパルスエッジの間の電荷が第2の電荷蓄積部に蓄積される。
【0045】
なお、実際には、蓄積される電荷量を増やすため、投光は1回の矩形波ではなく、矩形波の繰り返しパターンとされ、この繰り返しパターンの光を投光するタイミングに応じた第1及び第2の電荷蓄積部への切り替え制御も繰り返し行われる。
【0046】
(距離値の算出)
0度(A0)、90度(A90)、180度(A180)及び270度(A270)の4つの位相信号は、それぞれ投光される光(照射光)のパルス周期に対して、時間的に0度、90度、180度及び270度の4つの位相に分割された位相信号である。このため、以下の数式を用いて、位相差角φを求めることができる。
【0047】
φ=Arctan{(A90-A270)/(A0-A180)}
【0048】
また、この位相差角φから、以下の数式を用いて、遅延時間Tdを求めることができる。
【0049】
Td=(φ/2π)×T(T=2T0、T0:照射光のパルス幅)
【0050】
また、この遅延時間Tdから、以下の数式を用いて、対象物までの距離値dを求めることができる。
【0051】
d=Td×c÷2(c:光速)
【0052】
図7の例は、1回目の測定で0度と180度の位相信号を取得する例であるが、外光の影響がある場合、1回目の測定で取得された第1の電荷蓄積部の電荷量から第2の電荷蓄積部の電荷量を減算処理した位相信号を生成する。このような測定では、1回の発光及び露光で1つの位相信号を取得する。このため、4位相分の位相信号を取得するには、4回の発光及び露光が必要となり、外光がない場合の撮影に比べて撮影時間が2倍となってしまうが、減算処理によって外光の影響を低減できるメリットがある。
【0053】
上記手法により、1回目の測定で取得された第1の電荷蓄積部の電荷量から第2の電荷蓄積部の電荷量を減算処理し演算された信号をDCS(DCS:Differential Correlation Sample)信号と呼ぶ。このDCS信号から、距離画像へ変換する。変換方法は、先に示した方法と同様で、以下の式から位相差角φを算出する。
【0054】
φ=Arctan{(DCS90-DCS270)/(DCS0-DCS180)}
【0055】
ここで、DCS90は90度の時のDCS信号である。また、この位相差角φから、以下の数式を用いて、遅延時間Td、対象物までの距離値dを求めることができる。
【0056】
なお、以下の説明する位相信号は、減算処理を行った位相信号とし、適宜、DCS信号と置き換えることが可能である。
【0057】
続いて、一般的なTOFカメラでマルチパス干渉によるノイズが発生する原理について説明する。
【0058】
図8は、TOFカメラでマルチパス干渉によるノイズが発生する原理を示す図である。
図8に示すように、一回反射のτ0光路に2回反射のτ1が混じって受光される。実際には均一照明なので無数の複数回反射の光が本来受光したいτ0の光路に交じって受光されてしまう。
図8に示す点線の距離情報(測距値)に対して、実線の距離情報(測距値)が混じるので、実際の距離に対して遠い値が計算されてしまう。特に、部屋のカドのような複数光路の光が反射して受光されるシーンで発生しやすい。すなわち、拡散光は、高い空間解像度で深度値取得が可能であるが、マルチパス干渉による誤差が大きくなる。
【0059】
そこで、本実施形態の測距装置100は、複数の異なる投光部1-1(拡散光),1-3(スポット光)を使って得た測距結果を用いて距離補正を行うことで、マルチパス干渉による誤差を減らすようにしたものである。
【0060】
続いて、測距制御部4の機能について説明する。
【0061】
図9は、測距制御部4の機能構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、測距制御部4のCPU44は、SSD47に記憶されている測距撮像プログラムを実行することで、撮像制御部401、画像保存部402、距離計算部403、補正値算出部404、距離補正部405及び出力部406の各機能を実現する。
【0062】
画像保存部402は、ADC3から出力されたイメージセンサ2aからの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存し、又は、読み出し制御する。
【0063】
距離計算部403は、画像保存部402によって保存された複数枚の位相画像に基づいて、対象物までの間の距離を示す距離情報を計算する。
【0064】
補正値算出部404は、光源部10-1(光源部10-2)を発光して距離計算部403で得られた距離画像と、光源部10-3を発光して距離計算部403で得られた距離画像とを用いて、距離情報を補正する補正値を算出する。
【0065】
距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を用い、光源部10-1(光源部10-2)を発光して得られた距離情報の補正を行う。
【0066】
出力部406は、距離補正部405で補正された対象物までの間の距離を示す距離情報を、入出力I/F43を介して外部機器に出力する。
【0067】
なお、
図9に示した画像保存部402、距離計算部403、補正値算出部404、距離補正部405及び出力部406の各機能は、それぞれ測距撮像プログラムにより、ソフトウェアで実現することとした。しかし、これらのうち全部又は一部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアで実現してもよい。
【0068】
図10は、測距装置100の設置例を示す図である。
図10に示すように、測距装置100の計測対象領域内には、部屋の角が含まれている。以降、測距装置100で部屋の角を撮影した例で詳細を説明する。
【0069】
ここで、マルチパス干渉の影響について説明する。
【0070】
図11は、マルチパス干渉の影響を例示的に示す図である。部屋の角の測距値(測距点)を俯瞰で表すと
図11に示すようになる。
図11に示すように、拡散照明である投光部1-1(1-2)で得られる拡散光の測距値は、原理的には全画素を測距点にできるため、高い空間分解能で連続的に取得できる。しかしながら、拡散照明である光源部10-1(10-2)で得られる拡散光の測距値は、マルチパス干渉の影響で誤差が大きくなる。具体的には、前述のとおり、拡散照明である光源部10-1(10-2)で得られる拡散光の測距値(測距点)は、距離が本来の位置より遠く算出される。一方、
図11に示すように、スポット照明である光源部10-3で得られるスポット光の測距値は、測距点が少ないため不連続ではあるが、比較的正確である。
【0071】
そこで、本実施形態の測距装置100の補正値算出部404は、以下に示す手法によって、拡散照明である投光部1-1(1-2)を発光して得られた距離情報の補正を行う。これにより、スポット照明を用いた測距値に基づく、より正確性の高い距離情報を、スポット照明を用いた測距点よりも多い点について出力することを可能とする。
【0072】
ここで、
図12は補正値算出の手法を例示的に示す図である。
図12に示すように、補正値算出部404は、補正値(補正量)を、拡散光の測距値からスポット光の測距値を減算することで算出する。加えて、上述の手法ではスポット間の画素に関して補正値が算出されないので、補正値算出部404は、スポット間の画素に関しては補間処理を行って、スポット光の距離画像で、測距結果である測距値(距離情報)が得られていない画素における補正値(補正量)を算出する。補正値算出部404による画像処理を利用した補正値(補正量)の算出について以下に説明する。
【0073】
例えば、拡散光の距離画像における測距値をddiffusion、スポット光の距離画像における測距値をdspotとする。
【0074】
補正値算出部404は、画像上の位置(x,y)の画素の補正値c(x,y)を、下記式(1)により算出する。ただし、補正値算出部404は、式(1)のx,yについて、スポット光の測距値が得られている画素値のみで計算する。
【0075】
【0076】
補正値算出部404は、スポット光の測距値が得られていない画素位置(x’,y’)における補正値を、下記式(2)により補間する。xN、yNは、それぞれ(x’,y’)から最も近い補正値が計算できている画素の座標(スポット光の測距値が取得できている画素の座標)である。
【0077】
【0078】
続いて、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を用い、投光部1-1を発光して得られた測距値の補正を行う。具体的には、距離補正部405は、下記式(3)に示すように、拡散光の測距値ddiffusionから補正値を引くことで補正後の距離値(距離情報)dcorrectionを計算する。補間処理によってスポット光の測距値が得られていない画素における補正値を補間しているため、距離補正部405は、式(3)のx,yについて、画像内のすべての画素位置に対して補正を実行することができる。
【0079】
【0080】
なお、上述の補間方法は単純な最近傍補間であるが、補間方法自体は問わない。例えば、複数の補正値を使って間を線形補間する等であってもよい。
【0081】
なお、補正処理は、画像内のすべての画素に対して行ってもよいが、画像内の一部の画素に対して行うようにしてもよい。例えば、反射光強度が低いなどスポット光の測距値の信頼度が低い領域や、拡散光の測距値とスポット光の測距値に大きな違いがない領域では、補正を行わず、拡散光の測距値をそのまま採用してもよい。また、補正を行わない領域では、補間処理も省くことで処理を高速化してもよい。
【0082】
<マルチパス干渉補正範囲の拡大>
しかしながら、上記のようなマルチパス干渉の補正ができるのは、スポット光と拡散光とで計測が可能な計測距離が一致している領域に限られる。スポット光を投光する光源の光量出力と拡散光を投光する光源の光量出力が同一であった場合、スポット光では光がスポット状に絞られている一方、拡散光では光が照射エリア全体に広げられる。そのため、双方の光源出力が同一である場合は、スポット光を投光したときの各スポットにおける光量が、そのスポットと同じ領域に拡散光を投光したときの拡散光の光量よりも大きくなる。そのため、スポット光を投光したときに拡散光投光の場合よりも計測範囲が遠い距離となってしまい、逆に近い距離は検出光量の飽和によって検出できなくなってしまう。つまり、スポット光と拡散光とで検出できる距離範囲が異なるという不具合が生じてしまう。
【0083】
以下では、スポット光の光量と拡散光の光量とがどの程度異なるか具体的に計算する。
図13はスポット光と拡散光との光量比を比較するモデル図である。スポット光を半径Rの円として考え、ピッチを100R、単位面積当たりの光量である拡散照明の強度は点線の四角を考える。スポット光の照射面積はπR
2であるのに対し、拡散光の照射面積は100R×100R=10000R
2となる。
つまり、照射面積比率としては、スポット光/拡散光≒3200となる。同じ光源で同じ光量の光を発光させ、スポット光と拡散光とを各々の光学系により生成した場合には、このような大きな相違が発生し、これらの光を同じセンサで検出するには、この大きな相違に対応できるだけの大きなダイナミックレンジが必要となる。この例よりもさらにスポット間をあける場合には、光量差がより大きくなるため、より大きなダイナミックレンジが必要となる。
【0084】
したがって、スポット光は遠距離、拡散光は近距離が測距のレンジとなるため、マルチパス干渉の補正範囲は狭くなってしまう。
【0085】
図14は、マルチパス干渉の補正範囲についてその概念図を示す。縦軸は、距離を示し、散乱照明とスポット照明の測距可能な距離を棒グラフで示している。この棒グラフの上限距離から下限距離が測距可能なレンジとなる。
【0086】
上限距離つまりは、計測可能な最も遠い距離は、遠方から戻ってくる光(信号S)と外部などの光(ノイズN)のSN比によって、決定される。ノイズには電子回路におけるアンプなどから発生するノイズなども含まれる。この電子回路のノイズは、外部の電子線や電子機器からの環境ノイズが主なのである。
【0087】
また、このノイズ成分は外気温などによっても変化する。温度が高い方が、ノイズが増える。熱ノイズは、ジョンソン・ノイズまたはナイキスト・ノイズとも呼ばれるものを指す。このノイズは、抵抗などの電子回路内部における電荷担体の熱運動に起因して生じます。ほぼホワイト・ノイズとして現れ、ガウス分布に近い分布を示す。
【0088】
下限距離、つまりは、計測可能な最も近い距離は、検出値の飽和によって制限されていることがある。この検出値の飽和状態は、検出器の積算時間およびゲインよって制御することが可能である。また、光源の積算光量によっても、飽和状態を制御することが可能である。
【0089】
拡散照明とスポット照明では、測距レンジが異なってしまう。これは、ターゲット上に照射される照射面積が異なるためである。このことは先述したとおりであるが、本発明では、測距レンジを調整することでマルチパス干渉の補正範囲を増加させることが可能である。
【0090】
具体的には、拡散照明による撮像とスポット照明による撮像の間で、光源数、光量、積算時間、センサゲインのいずれかを変えることで、測距レンジを調整することが可能となる。これにより、広い距離範囲についてマルチパス干渉による距離誤差が少ない測距データを取得することが可能となる。また、同一TOFセンサを使用可能なため、回路の共通化が可能であり、低コスト、小型化が可能である。
【0091】
また、積算光量とは、1回の撮影に対する光量を積算したものである。例えば、断続的に出射されるパルス光の場合、そのパルス幅やピークの光量などからその積分値として積算光量を決めることができる。単位は電力(W)である。
【0092】
例えば、スポット光と拡散光とでピーク強度とパルス幅がほぼ同じだとしても、スポット光を1パルス、拡散光を2パルスとして撮影をした場合、拡散光の積算光量をスポット光の積算光量のほぼ2倍とすることができる。複数回の積算、例えば、画像を2枚撮像して積算することで、複数の画像を足し合わせて積算光量を確保し、さらに平均化ができるため、ショットノイズなどへの耐性を持つことができる。
【0093】
以下では、具体的にマルチパス干渉の補正範囲を拡大する手法について説明する。
【0094】
本実施形態での測距装置の機能ブロック図を
図9に示している。投光部には光源部(10-1、10-2、10-3)が3台配置される。それぞれ、駆動条件設定部150から制御されている。
【0095】
拡散光照明としては、光源部(10-1、10-2)の2台用いる。光源部(10-1、10-2)にはそれぞれ光学素子部が設置され、2つの光源によって、拡散光が照射するエリアをすべて均等に照射できるように光学設計されている。スポット光照明は光源部(10-3)によって構成されている。
【0096】
次に光源部10の設定の方法について説明する。
【0097】
設定条件の一例を表1に示す。
【表1】
表1は光量を電圧値で示している。単位は電圧(V)である。具体的な光量調整方法としては、
図3に示したDC/DCコンバータ101の電圧を変える方法がある。その際、駆動条件設定部150から設定電圧を指定する。
【0098】
ここで、第1の光源は、拡散光の場合は、光源部10-1を示し、スポット光の場合は光源部10-3を示している。第2の光源は、拡散光の場合は光源部10-2を示す。スポット光の光源は1台であるため、第2の光源部はない。
【0099】
また、光量を電流値で設定することも可能である。この場合、
図6の回路においては、LDDR107、光源(VCSEL)110に流れる電流を変更し、流れる電流を変更することで光量を変更することができる。ただし、表2は表1とは異なる光量を示しており、電流での設定の一例として示している。
【表2】
表2は光量を電流値で示している。単位は(A)である。
【0100】
光量の設定方法として、出力した光量を電力(ワット単位)で記録する方法がある。この場合は、光学素子を介して出射した光を大きな検出器で検出して、単位時間当たりのワット数に変換するなどして定量化する。設定の方法としては、複数の出力光量(電力単位)に対し、電圧値や電流値を表にして記録しておき、必要な設定電力値に対して、記録してある電圧または電流値で設定する。
出射光量(電力値)の記録がない場合、出射光量(電力値)は、近傍の記録した出射光量(電力値)を直線補完して導出する。VCSELなどの光源の場合には、出射光量と入力電流および入力電圧はほぼ直線関係にあり、同一温度下においては再現することを前提としている。この単位系であれば、光学素子などを含めて定量化することが可能である。以下、表3にその一例を示す。ただし、表3は表1、表2とは異なる光量を示しており、電力での設定の一例として示している。
【表3】
表3は光量を電力で示している。単位は(W)である。
【0101】
第1の変形例として、拡散光の光源を2台にする方法もある。この場合は、表4に示すようになる。第2の光源は、光源部10-2などがそれにあたる。光源数は、このように設定によって変えることが可能である。表4は光源数を複数にした際の一例である。
【表4】
表4は光量を電力で示している。単位はWである。
【0102】
本実施形態にかかる測距装置100は、前記第1投光部は第1光源(光源部10-3など)を含み、前記第2投光部は第2光源(光源部10-1など)を含み、該第1光源及び該第2光源は各々複数の発光部を有し、前記第2光源の発光部数は前記第1光源の発光部数よりも多いことを特徴とする。発光部とは、発光領域を有する発光素子を指す。例えば、光源がVCSELの場合、電流狭窄層と活性層によって決定される発光領域を有するVCSEL素子を指す。複数の発光部は各々独立した発光領域を有するので、1つの発光部には、それぞれ同程度の発光強度の限界がある。そのため、発光部を少しでも多く有した光源の方が、より強い積算光量を得ることが可能である。
【0103】
また、発光部が多いとは、発光領域が多くあることを示すが、VCSELやLD、LEDなどの発光素子のチップ数が多いことも含まれる。また、VCSELなどの発光素子や抵抗、FETなどのスイッチング素子を含む光源素子回路を含む光源部10の数が多いことで実現しても構わない。また、光源部10と光学素子11を含む投光部1の台数が多くても構わない。散乱光の積算光量を大きくすることができる構成をここでは含むこととする。
【0104】
本実施形態にかかる測距装置100は、前記投光部は複数の光源部10からなり、発光する光源数を変化させることによって積算光量を制御することを特徴とする。ここで光源部10は、VCSELなどの発光素子や抵抗、FETなどのスイッチング素子を含む光源素子回路を含む部分を指す。また、発光部10内に含まれる発光制御部104などにより、発光数を制御して、積算光量を制御することが可能である。これにより、積算光量を維持しつつ複数の光源部によって分担でき、大きな光を放つための発熱によって光源部10が高温になってしまうことを避けることができる。
【0105】
VCSELなどの発光素子は、出力光量によって効率が異なることが知られている。したがって、積算された全ての光量は同じでも、発光素子であるVCSEL数を増やして、各VCSELの出力光量を減らすことで、発熱量を抑えることができる。これにより、フレームレートを向上するなど、発熱による温度変動を抑えられ、高精度の計測が可能となる。発光素子およびVCSELは光源の一例である。
【0106】
第1の変形例にかかる測距装置は、前記投光部は複数の光源からなり、発光する光源数によって積算光量を制御することを特徴とする。拡散光は2台の光源部10-1、10-2で積算光量を分担している。大きな光を放つための発熱によって光源部10が高温になってしまうことを避けることができる。さらなる高精度の計測が可能となる。
【0107】
第1の変形例にかかる測距装置は、前記第1投光部は第1光源を含み、前記第2投光部は第2光源を含み、該第1光源及び該第2光源は各々複数の発光部を有し、前記第2光源の発光部数は前記第1光源の発光部数よりも多いことを特徴とする。つまり、拡散光は2台の光源部10-1、10-2とで積算光量を分担している。スポット光に比べ、拡散光の方が多くの積算光量を出射することが可能となる。これによりさらなる高精度の計測が可能となる。
【0108】
この発光部は電気的に独立していてもよいし、他の発光部と並列に電気的に接続されていても構わない。酸化狭窄層によって、発光部が離散的に配置されることで、それぞれの発光部によって起きる発熱を裏面などの高い熱伝導率の材質に熱を放出しやすくなる。熱的にも離散的には独立した発光部を多く有する光源の方が、積算光量を大きくすることが可能となる。
【0109】
図15は、測距装置100における測距処理の流れを示すフローチャートである。
図15に示すように、まず、駆動条件設定部150により、光源部(10-3)の発光条件を設定する。同時にイメージセンサ2aおよび変換回路2bには、固定のスポット光用の積算時間およびゲインの設定が行われている(ステップS1)。スポット光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光による反射光を受光させて撮影を行う(ステップS2)。次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する(ステップS3)。
【0110】
続いて、距離計算部403は、画像保存部402によって保存された複数枚の位相画像に基づいて、対象物までの間の距離を示す距離情報を計算する(ステップS4)。
【0111】
加えて、駆動条件設定部により、光源部(10-1および10-2)の発光条件を設定する。同時にイメージセンサ2aおよび変換回路2bには、固定のスポット光用の積算時間およびゲインの設定が行われている(ステップS5)。散乱光を発光させて、イメージセンサ2に散乱光の反射光を受光させて撮影を行う(ステップS6)。
【0112】
次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する(ステップS7)。続いて、距離計算部403は、画像保存部402によって保存された複数枚の位相画像に基づいて、対象物までの間の距離を示す距離情報を計算する(ステップS8)。
【0113】
すなわち、測距装置100は、拡散光とスポット光とを異なるタイミングで発光して撮影を行い、2枚の距離画像を取得する。
【0114】
なお、本実施形態においては、拡散光からスポット光の順に距離画像を取得するようにしたが、これに限るものではなく、撮影タイミングが異なっていれば順番は問わないものとする。
【0115】
ここで、
図16は距離画像の例を示す図である。
図16(a)は拡散光の発光により得られる距離画像の例、
図16(b)はスポット光の発光により得られる距離画像の例である。
図16(a)に示すように、拡散光では領域の全面に均等に光が照射されるので、検出される画像は、光が返ってくる画素でほぼ埋まることになる。一方、
図16(b)に示すように、スポット光では光を絞っているので、光が当たっている画素のみ信号が得られ、その距離が計算できる。すなわち、
図16(b)に示すように、スポット光では点の部分のみ距離画像が得られることになる。
【0116】
次に、補正値算出部404は、光源部10-3を発光して得られた距離画像と、光源部10-1、10-2を発光して得られた距離画像とを用いて、距離情報を補正する補正値を算出する(ステップS9)。具体的には、補正値算出部404は、光源部10-3を発光して得られた距離画像においてスポットが得られた位置での残差(拡散光の測距値とスポット光の測距値との差)を補正値とし、スポットが得られない位置は一般的な画像処理で補間を行うことで、画像全体の補正値を計算する。
【0117】
次に、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を用い、光源部10-1を発光して得られた距離情報の補正を行う(ステップS10)。具体的には、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を、光源部10-1、10-2を発光して得られた拡散光の測距値から減算することで補正を行う。
【0118】
なお、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された拡散光の測距値とスポット光の測距値との差や比が所定の範囲内の場合には、補正を実行しないようにしてもよい。
【0119】
最後に、出力部406は、距離補正部405で補正された対象物までの間の距離を示す距離情報を、入出力I/F43を介して外部機器に出力する(ステップS11)。
【0120】
本実施形態にかかる測距装置100は、第1の光を投光する第1投光部1-3と、第2の光を投光する第2投光部1-1と、領域内28の物体26で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部2と、を備え、前記第1の光27を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光29を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光(スポット光)であり、前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光(拡散光)であり、前記第2の光の積算光量は、前記第1の光の積算光量よりも大きいことを特徴とする。
【0121】
スポット光は第1の光の一例である。拡散光は第2の光の一例である。第1の光には、構造化光や集光などのような光も含む。
【0122】
領域28は拡散光やスポット光が届く距離内の空間を示す。その空間内に、張ることができる任意の曲面において、拡散光およびスポット光が照射されることを想定する。その曲面に投影された光量分布において、その光の強度が最大値と最小値との差分を比較する。その差分の比較において、大きい方をスポット光(第1の光)と呼び、小さい方を拡散光(第2の光)とする。
【0123】
また、光源部10から出てきた光は、光学素子11で偏向されるが、測距装置100の筐体から出てきたすべての光を全方位積算することとする。これは光源に投入される電力量に比例し、スポット光および拡散光の大小関係は変わらない。つまり、積算光量は投入電力量と言い換えることもできる。ここで、光学素子11に含まれる光学アパーチャーなどの測距装置100内部の光学系による光の吸収などは、拡散光、スポット光の光量比較において大きな影響を受けないと仮定している。この測距装置100内部での光吸収が大きい場合などの一般的ではない場合には、より正確な測距装置100から出射された光を全方位に積算した光の量を積算光量とする。
【0124】
本実施形態にかかる測距装置100は、前記第1投光部1-3および前記第2投光部1-1から投光される前記第1の光および前記第2の光の積算光量、または前記受光部の積算時間、増幅率を制御する制御部(駆動条件設定部150がその一例である。)を備えることを特徴とする。積算光量を適切に制御することができるため、広い距離範囲について高精度の計測が可能となる。
【0125】
本実施形態にかかる測距装置100は、前記受光部は、光を検出する光検出器を含み、同一の該光検出器により前記第1の受光と前記第2の受光が行われることを特徴とする。これにより、受光部を複数台設置する必要がなく製造コストを低減できる。
【0126】
また、本実施形態によれば、複数の異なる投光部を使って得た測距結果を用いて距離補正を行うことでマルチパス干渉による誤差を減らすことができるので、より精度の高い距離画像を生成可能とすることができる。すなわち、本実施形態によれば、高空間分解能の画像のマルチパス誤差成分のみを除去することになるので、通常のTOF測距よりも高精度・高分解能の測距が可能となる。これにより、より精度の高い距離画像を生成可能な画像を撮像することができる撮像装置、測距装置、測距システムおよび測距方法を提供することができる。
【0127】
また、本実施形態によれば、スポット光を用いて測距を行うと、画素密度は低いが一般的なTOFカメラと比較して正確な測距値を得ることができる。さらに、スポット位置で測距に必要な光量を発光した時、同じスポット位置で同一光量を得るように発光した場合の拡散照明よりも総光量が少なくて済む。さらにまた、一般的なTOFカメラよりも発光している総光量が少ないので、マルチパス干渉の影響を減らすことができる。
【0128】
また、本実施形態によれば、拡散光を用いて得られた測距値とスポット光を用いて得られた測距値から算出された補正値に基づき、スポット光の測距値が得られていない画素における補正値を補間するので、より精度の高い補正を行うことができる。
【0129】
<第2の実施形態>
図17に本実施形態の機能ブロック図を示す。受光制御部によって受光の条件を設定できる。具体的には、イメージセンサ2aおよび変換回路2bで制御する受光の積算時間およびゲインの制御である。また、本実施形態では、光源部を2台として、スポット光(10-3)と拡散光(10-1)としている。
【0130】
測距を高フレームレートで実施したい場合がある。その一例が動画撮影である。その際には、光源(VCSEL)110の光量、発光の積算時間を最小限にすることで高フレームレートの課題である発熱を抑えることがきる。一例として、VCSEL光量、発光の積算時間をスポット光、拡散光ともに光量を最小限(VCSELの発光閾値程度)として、TOFセンサのゲインのみを変更することで高フレームレートに有利としつつ、スポット光と拡散光の測距レンジを合わせることができる。表5に設定例を表に示す。ここで、光量は出射光量を電力(W)の単位で表記している。積算時間は、
図17に示すように、受光制御部160から制御され、イメージセンサ2aおよび変換回路2bによって設定される。また、ゲインは変換回路2bによって変更される。
【表5】
【0131】
具体的なゲインを変更する構成を
図18に示す。受光系制御部から、マルチプレクサを制御し、1つのゲインを選択する。
図18では、変換回路にマルチプレクサを入れたが、イメージセンサ部に同様な回路を入れても構わない。マルチプレクサは変換回路の一例である。
【0132】
図19は本実施形態の測距処理の流れを示すフローチャートである。
図19に示すように、まず、受光系制御部160は、イメージセンサ2aおよび変換回路2bを制御し、スポット光用の積算時間およびゲインの設定を行う(ステップS21)。また、同時に駆動条件設定部150により、光源部(10-3)の発光条件を設定する。スポット光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光を受光させて撮影を行う(ステップS22)。次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する。
次に、受光系制御部160は、イメージセンサ2aおよび変換回路2bを制御し、拡散光用の積算時間およびゲインの設定を行う(ステップS23)。また、同時に駆動条件設定部により、光源部(10-1)の発光条件を設定する。拡散光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光を受光させて撮影を行う(ステップS24)。次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する。
【0133】
すなわち、測距装置100は、拡散光とスポット光とを異なるタイミングで発光して撮影を行い、2枚の距離画像を取得する。
【0134】
なお、本実施形態においては、拡散光からスポット光の順に距離画像を取得するようにしたが、これに限るものではなく、撮影タイミングが異なっていれば順番は問わないものとする。
【0135】
続いて、距離計算部403は、画像保存部402によって保存された複数枚の位相画像に基づいて、対象物までの間の距離を示す距離情報を計算する。
【0136】
次に、補正値算出部404は、光源部10-1(拡散光)を発光して得られた距離画像と、光源部10-3(スポット光)を発光して得られた距離画像とを用いて、距離情報を補正する補正値を算出する。具体的には、補正値算出部404は、光源部10-1(拡散光)を発光して得られた距離画像においてスポット光が得られた位置での残差(拡散光の測距値とスポット光の測距値との差)を補正値とし、スポット光が得られない位置は一般的な画像処理で補間を行うことで、画像全体の補正値を計算する。
【0137】
次に、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を用い、光源部10-3(スポット光)を発光して得られた距離情報の補正を行う。具体的には、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を、光源部10-1を発光して得られた拡散光の測距値から減算することで補正を行う(ステップS25)。
【0138】
なお、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された拡散光の測距値とスポット光の測距値との差や比が所定の範囲内の場合には、補正を実行しないようにしてもよい。
【0139】
最後に、出力部406は、距離補正部405で補正された対象物までの間の距離を示す距離情報を、入出力I/F43を介して外部機器に出力する。
【0140】
本実施形態にかかる測距装置100は、第1の光を投光する第1投光部1-3と、第2の光を投光する第2投光部1-1と、領域内28の物体26で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部2と、を備え、前記第1の光27を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光29を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、前記第1の光は、前記領域内28での強度分布を有する光(スポット光)であり、前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光(拡散光)であり、前記第2の受光は、前記第1の受光よりも長い積算時間及び大きい増幅率の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0141】
受光の積算時間は受光系制御部160で設定され、イメージセンサ2aと変換回路2b、ADC3によって受光は信号として積算される。この積算時間によって、信号はより精度の向上が図られる。
【0142】
スポット光の反射光を受光したイメージセンサの設定は、前記第1の光を投光した場合の第1の受光の設定の一例である。拡散光の反射光を受光したイメージセンサの設定は、前記第2の光を投光した場合の第2の受光の設定の一例である。またゲインは増幅率の一例である。この増幅率によって、信号は増強されて、ADCによってデジタル化される。
【0143】
本実施形態では、受光部の積算時間およびゲインをスポット光および拡散光で個別に制御することが可能なっている。このため、この数値を制御することで発光光量を制御することが可能となる。このように本実施形態によれば、発光光量を極力低減して光源の発熱量を抑えることができるため、高いフレームレートでの撮影が可能となり、動画などのTOF測距が可能となる。また、複数の異なる投光部を使って得た測距結果を用いて距離補正を行うことでマルチパス干渉による誤差を減らすことができるので、より精度の高い距離画像を生成可能とすることができる。
すなわち、本実施形態によれば、高空間分解能の画像のマルチパス誤差成分のみを除去することになるので、通常のTOF測距よりも高精度・高分解能の測距が可能となる。これにより、より精度の高い距離画像を生成可能な画像を撮像することができる撮像装置、測距装置、測距システムおよび測距方法を提供することができる。
【0144】
<第3の実施形態>
図20は本実施形態の機能ブロック図である。受光系や投光系に温度測定部171~173を有している点が特徴である。また、その温度計測を行った結果を温度判定部170でそれぞれの基準値と比較して、判定をする。その判定結果から受光系制御部160および駆動条件設定部150にそれぞれの設定値を設定させる。その設定値に制御された発光および受光を行い撮影する。
【0145】
受光部2の温度測定部171は、イメージセンサの内蔵温度センサや、イメージセンサを実装した基板に温度センサを搭載する。また、投光部1-1には、光源基板に温度センサを搭載することで温度測定部172とする。投光部1-3には、光源基板に温度センサを搭載することで温度測定部173とする。これにより、温度情報に基づき、最適な制御を行うことも可能である。例えば、各温度センサの値を取得し、基準温度との比較を行う。基準温度は部品の定格からマージンを持った値(例えば、10℃)や、測距性能が確保できる温度の上限、下限であってもいい。各温度センサの値が基準温度以上かつ許容温度以上の場合(例えば、異常発熱時)には、撮影をせずに終了する。ここで許容温度は各部品の定格からマージンを持った値な温度などを設定する。
【0146】
許容温度以下で、基準温度以上の部品が1つである場合には、以下の表に示すような設計に、投光系、受光系を設定することで、スポット照明と拡散照明の測距レンジを合わせることができる。また、許容温度以下で、基準温度以上の部品が1つ以上である場合には、最も基準温度に近い部品、最も高温な部品などを、以下に示すように設定を変更することが有効である。
【表6】
表6は基準設定値である。
【表7】
表7は拡散照明用の光源(VCSEL)基板が高熱の場合の設定値である。例えば、VCSEL光量を変化させ、ゲインを変更することでVCSEL基板の発熱を抑えつつ、拡散照明とスポット照明の両方で測距可能となり、マルチパス干渉補正が可能となる。
【表8】
表8はスポット照明用のVCSEL基板が高熱の場合の設定値である。例えば、積算時間およびゲインを変更することでVCSEL基板の発熱を抑えつつ、拡散照明とスポット照明の両方で測距可能となり、マルチパス干渉補正が可能となる。
【表9】
表9はイメージセンサが高熱の場合の設定値である。積算時間が長いほど、イメージセンサが動作し、発熱するため、積算時間を減らすことが発熱量緩和に有効である。そこで、積算時間を減少させて、ゲインもしくは光源光量を大きくすることで、拡散照明とスポット照明の両方で測距可能となり、マルチパス干渉補正が可能となる。
【0147】
図21は本実施形態の測距処理の流れを示すフローチャートである。
図21に示すように、まず、基板温度の計測を行う(ステップS31)。ここでの基板温度は、イメージセンサに関わる温度測定部171と、光源部10-1に関わる温度測定172と、光源部10-2に関わる温度測定173とで計測した温度を指している。それぞれの温度は、それぞれ決められた基準値を温度判定部に有している。
この時、得られた温度の基準値との比較を行う(ステップS32)。基準値よりも高い場合には、それが許容の範囲かを判断する(ステップS33)。基準値より低い場合には、事前に設定されていた標準設定値(表6はその一例)での撮影を行う。
【0148】
許容値内であれば、モードを選択し、設定値を決定する。その設定値は、先に示した表6~表9のような設定値となる。その設定値に更新する(ステップS34)。許容値よりも高い場合には、アラートの表示を行い(ステップS42)計測を終了する。
【0149】
駆動条件設定部により、光源部(10-2)の発光条件を設定する(ステップS35)。受光系制御部160は、イメージセンサ2aおよび変換回路2bを制御し、スポット光用の積算時間およびゲインの設定を行う(ステップS36)。スポット光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光を受光させて撮影を行う(ステップS37)。次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する。
【0150】
次に、駆動条件設定部により、光源部(10-1)の発光条件を設定する(ステップS38)。受光系制御部160は、イメージセンサ2aおよび変換回路2bを制御し、拡散光用の積算時間およびゲインの設定を行う(ステップS39)。また、同時に駆動条件設定部により、光源部(10-2)の発光条件を設定する。拡散光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光を受光させて撮影を行う(ステップS40)。次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する。
【0151】
すなわち、測距装置100は、拡散光とスポット光とを異なるタイミングで発光して撮影を行い、2枚の距離画像を取得する。
【0152】
なお、本実施形態においては、拡散光からスポット光の順に距離画像を取得するようにしたが、これに限るものではなく、撮影タイミングが異なっていれば順番は問わないものとする。
【0153】
続いて、距離計算部403は、画像保存部402によって保存された複数枚の位相画像に基づいて、対象物までの間の距離を示す距離情報を計算する。
【0154】
次に、補正値算出部404は、光源部10-1を発光して得られた距離画像と、光源部10-3を発光して得られた距離画像とを用いて、距離情報を補正する補正値を算出する。具体的には、補正値算出部404は、光源部10-1(拡散光)を発光して得られた距離画像において光源部10-3(スポット光)が得られた位置での残差(拡散光の測距値とスポット光の測距値との差)を補正値とし、スポット光が得られない位置は一般的な画像処理で補間を行うことで、画像全体の補正値を計算する。
【0155】
次に、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を用い、光源部10-3(スポット光)を発光して得られた距離情報の補正を行う。具体的には、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を、光源部10-1を発光して得られた拡散光の測距値から減算することで補正を行う(ステップS41)。
【0156】
なお、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された拡散光の測距値とスポット光の測距値との差や比が所定の範囲内の場合には、補正を実行しないようにしてもよい。
【0157】
最後に、出力部406は、距離補正部405で補正された対象物までの間の距離を示す距離情報を、入出力I/F43を介して外部機器に出力する。
【0158】
本実施形態によれば、許容温度以下で、基準温度以上の部品が1つである場合には、投光系、受光系を設定することで、スポット照明と拡散照明の測距レンジを合わせることができる。また、許容温度以下で、基準温度以上の部品が1つ以上である場合には、最も基準温度に近い部品、最も高温な部品などの設定を変更することが有効である。これにより、連続動作や動画撮影などの発光により発熱し、測距装置が高温状態になっても、安定した動作が確保できる。また、気温が上昇したとしても、安定した動作を実現できる測距装置を提供できる。
【0159】
本実施形態にかかる測距装置100は、前記投受光装置の温度計測を行い、前記計測された温度に基づき、前記第1の光の積算光量と前記第2の光の積算光量の少なくとも一方を変化させ、前記第1の受光の積算時間と増幅率および前記第2の受光の積算時間と増幅率のうち少なくとも1つを変化させることを特徴とする。発熱による光量低下を避けることができる。これによりさらなる高精度の計測が可能となる。
【0160】
<第4の実施形態>
図22は本実施形態の機能ブロック図である。外光を計測し画像保存部に保存された計測値を外光判定部180で判定する。この時、検出方法として、イメージセンサ2aを利用してもよいし、外光を検出するために設置された外光取得部181を利用してもよい。その判定結果から受光系制御部160および駆動条件設定部150にそれぞれの結果を送信する。その結果を受けて、受光系制御部160および駆動条件設定部150によって投光部および受光部の設定値を設定する。その設定値に制御された発光および受光を行い撮影する。測定前に、外光を取得することで、外光に有利なスポット照明、拡散照明の条件を設定することができる。外光取得の方法としては、レーザ光を発光せずに、画像を取得する方法などがある。この方法を使えば、外光量に比例した値を取得することが可能である。
【0161】
また、外光が大きい場合と、小さい場合とでは、マルチパス干渉補正範囲を最大にする設定値が異なる。外光が大きい場合、外光によって、遠い距離でのSN比が低下するので、遠い距離の計測が難しくなる。また、近距離ではイメージセンサが飽和してしまう確率が上昇する。そのため、近い距離での計測も難しくなる。そこで、外光の量を検出した後、スポット光および拡散光の光量を増大し、遠い距離の計測を増強する。また、イメージセンサおよび変換回路のゲインおよび積算時間を短くして、飽和状態が生じないようにする。
【0162】
受光および投光の設定条件の一例として、表10および表11を示す。
【表10】
表10は、外光が少ない場合の基準の設定である。
【表11】
表11は外光の強い場合の設定の一例である。光源光量を増加させ、その分、積算時間及びゲインの少なくとも一方を調整することで、外光が大きい場合でも測距可能となる。
【0163】
図23は本実施形態の測距処理の流れを示すフローチャートである。
図23に示すように、まず、外光の計測を行う(ステップS51)。ここでの外光測定では、イメージセンサを利用して、測距装置が発光していない状態での被対象物が、太陽光や室内光などによって照らされ、反射してくる光を定量する。この計測はイメージセンサ2aに限定されず、外部取得部181を利用してもよい。この外光は、基準値との比較を行う(ステップS52)。基準値よりも高い場合には、事前に設定されていた標準設定値(表10はその一例)での設定を行う。外光が基準値よりも高い場合には、設定値を変更する(表11がその一例)(ステップ60)。
【0164】
駆動条件設定部により、光源部(10-2)の発光条件を設定する(ステップS53)。受光系制御部160は、イメージセンサ2aおよび変換回路2bを制御し、スポット光用の積算時間およびゲインの設定を行う(ステップS54)。スポット光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光を受光させて撮影を行う(ステップS55)。次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する。
【0165】
次に、駆動条件設定部により、光源部(10-1)の発光条件を設定する(ステップS56)。受光系制御部160は、イメージセンサ2aおよび変換回路2bを制御し、拡散光用の積算時間およびゲインの設定を行う(ステップS57)。また、同時に駆動条件設定部により、光源部(10-3)の発光条件を設定する。拡散光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光を受光させて撮影を行う(ステップS58)。次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する。
【0166】
すなわち、測距装置100は、拡散光とスポット光とを異なるタイミングで発光して撮影を行い、2枚の距離画像を取得する。
【0167】
なお、本実施形態においては、拡散光からスポット光の順に距離画像を取得するようにしたが、これに限るものではなく、撮影タイミングが異なっていれば順番は問わないものとする。
【0168】
続いて、距離計算部403は、画像保存部402によって保存された複数枚の位相画像に基づいて、対象物までの間の距離を示す距離情報を計算する。
【0169】
次に、補正値算出部404は、光源部10-1を発光して得られた距離画像と、光源部10-3を発光して得られた距離画像とを用いて、距離情報を補正する補正値を算出する。具体的には、補正値算出部404は、光源部10-1(拡散光)を発光して得られた距離画像において光源部10-3(スポット光)が得られた位置での残差(拡散光の測距値とスポット光の測距値との差)を補正値とし、スポット光が得られない位置は一般的な画像処理で補間を行うことで、画像全体の補正値を計算する。
【0170】
次に、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を用い、光源部10-3(スポット光)を発光して得られた距離情報の補正を行う。具体的には、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を、光源部10-1を発光して得られた拡散光の測距値から減算することで補正を行う(ステップS59)。
【0171】
なお、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された拡散光の測距値とスポット光の測距値との差や比が所定の範囲内の場合には、補正を実行しないようにしてもよい。
【0172】
最後に、出力部406は、距離補正部405で補正された対象物までの間の距離を示す距離情報を、入出力I/F43を介して外部機器に出力する。
【0173】
本実施形態にかかる測距装置100は、前記投光部から出射される光以外の外光の光量を前記受光部2(もしくは外部取得部181)によって検出し、検出された前記外光の光量に基づき前記第1の光の積算光量および前記第2の光の積算光量を変化させることを特徴とする。これにより、外光によるノイズを低減できる。特に、遠方の計測にも、光強度で有意差を出すことができる光強度に調整することが可能である。遠方のS/N比が改善し、さらなる高精度の計測が可能となる。
【0174】
本実施形態にかかる測距装置100は、前記第1投光部および前記第2投光部から出射される光以外の外光の光量を前記受光部2(もしくは外部取得部181)によって検出し、検出された前記外光の光量に基づき、前記第1の受光の積算時間及び増幅率の少なくとも一方と、前記第2の受光の積算時間及び増幅率のうち少なくとも一方を変化させることを特徴とする。これにより、外光によるノイズを低減できる。特に、近距離の反射率の高い物体に対して、イメージセンサが飽和してしまう不具合を低減できる。これは増幅率や低下させ、積算時間を減少させることで実現できる。これにより近距離での飽和による不具合が低減でき、近距離の計測が改善し、これによりさらなる高精度の計測が可能となる。
【0175】
<第5の実施例>
受光光量は距離の二乗に反比例して小さくなるので、測距レンジが広いほど、受光光量レンジが広くなる。イメージセンサのダイナミックレンジは狭いので、1回ですべてを賄うには限界がある。複数の撮影を合成して1つの測距にするHDR撮影(HDR:High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)方式がある。
【0176】
スポット照明・拡散照明の併用でもHDR撮影をすることでより広範囲で測距することが可能である。
図24は横軸を距離、縦軸をイメージセンサに入力される光量として示している。例えば、0.25m~10mまでの広レンジで測定する際には、10mでのターゲット反射による光量と25cmでのターゲット反射光は約1000倍も必要となる。
【0177】
本実施形態では、それぞれの距離に対して適した光量を投光することを検討した。例えば、距離を近距離(1m以下)、中距離(1m~3m)、遠距離(3m~10m)と設定し、光量をそれぞれに設定するという手法である。一例として表12~表14のようにゲイン、光量、積算時間を調整した。これにより、設定した3種類の距離に対し、スポット照明と拡散照明の両方の測距が可能となる。これにより、それぞれの距離に対して、適したマルチパス干渉補正を行うことができる。この場合でも他のフローチャートに基づき、外光、基板温度等で値を更新することでより高精度な測距が可能となる。
【表12】
表12は近距離の設定条件である。
【表13】
表13は中距離の設定条件である。
【表14】
表14は遠距離の設定条件である。
【0178】
図25は本実施形態の測距処理の流れを示すフローチャートである。
図25に示すように、まず、駆動条件設定部により、光源部(10-3)の発光条件を設定する(ステップS71)。この時、発光条件の設定は3種類、近距離(表12)、中距離(表13)、遠距離(表14)に即した光量とする。受光系制御部160は、イメージセンサ2aおよび変換回路2bを制御し、スポット光用の積算時間およびゲインの設定を行う(ステップS72)。この時、受光条件の設定は3種類、近距離(表12)、中距離(表13)、遠距離(表14)に即した条件とする。スポット光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光を受光させて撮影を行う。この時、撮影は3回、近距離、中距離、遠距離と条件を変えて撮影を行う(ステップS73)。次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する。
【0179】
次に、駆動条件設定部により、光源部(10-1)の発光条件を設定する(ステップS74)。この時、発光条件の設定は3種類、近距離(表12)、中距離(表13)、遠距離(表14)に即した光量とする。受光系制御部160は、イメージセンサ2aおよび変換回路2bを制御し、拡散光用の積算時間およびゲインの設定を行う(ステップS75)。この時、受光条件の設定は3種類、近距離(表12)、中距離(表13)、遠距離(表14)に即した条件とする。拡散光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光を受光させて撮影を行う(ステップS76)。次に、画像保存部402は、イメージセンサ2からの各位相の位相信号(位相画像)を、RAM46等の記憶部に保存する。
【0180】
すなわち、測距装置100は、3種類の距離、拡散光とスポット光とを異なるタイミングで発光して撮影を行い、計6枚の距離画像を取得する。
【0181】
なお、本実施形態においては、拡散光からスポット光の順に距離画像を取得するようにしたが、これに限るものではなく、撮影タイミングが異なっていれば順番は問わないものとする。
【0182】
続いて、距離計算部403は、画像保存部402によって保存された複数枚の位相画像に基づいて、対象物までの間の距離を示す距離情報を計算する。
【0183】
次に、補正値算出部404は、光源部10-1を発光して得られた距離画像と、光源部10-3を発光して得られた距離画像とを用いて、距離情報を補正する補正値を算出する。具体的には、補正値算出部404は、光源部10-1(拡散光)を発光して得られた距離画像においてスポット光が得られた位置での残差(拡散光の測距値とスポット光の測距値との差)を補正値とし、光源部10-3(スポット光)が得られない位置は一般的な画像処理で補間を行うことで、画像全体の補正値を計算する。
【0184】
次に、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を用い、光源部10-3(スポット光)を発光して得られた距離情報の補正を行う。具体的には、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された補正値を、光源部10-1を発光して得られた拡散光の測距値から減算することで補正を行う(ステップS59)。
【0185】
なお、距離補正部405は、補正値算出部404で算出された拡散光の測距値とスポット光の測距値との差や比が所定の範囲内の場合には、補正を実行しないようにしてもよい。
【0186】
最後に、出力部406は、距離補正部405で補正された対象物までの間の距離を示す距離情報を、入出力I/F43を介して外部機器に出力する。
【0187】
<第6の実施形態>
図26は、本実施形態の機能ブロック図である。本実施形態は、被対象物に、光を照射してその反射光を検出する投受光装置200および位相信号(DCS信号)から距離情報へ変換するコンピューター310とで構成される測距システム300である。
【0188】
投受光装置200は検出した結果を位相信号などとして出力する。出力はクラウド216へ送信され、コンピューター310に送られる。本実施形態では、信号を外部のクラウドに通信するため、通信容量の少ない位相信号が適しているが、外光などが多い場合には適宜、DCS信号との使い分けができる。以下では、位相信号を伝送する例を説明する。
【0189】
投光部1は、駆動条件設定部150に設定された条件で光源部10を発光させる。本実施形態では光源部を1つとして、変換素子部102で、光路を機械的に切り替える。ミラーなどの光学素子に機械的な駆動部をもった切り替え装置がその一例である。この変換素子部102にて、スポット光および拡散光を切り替える。切り替えた先には、スポット光を形成する光学素子11-2、もしくは拡散光を形成する光学素子11-1が配置されている。
【0190】
受光部2は、光学素子を介してイメージセンサ2aによって光から電気信号へ変換され、その信号を増幅、積算する。受光系制御部160によって設定された積算時間、およびゲインを経て、ADCによってデジタル値に変換される。この変換した信号をセンサのI/F部を介して、演算部に送信する。演算部では、先に記した位相信号を算出する。演算された位相信号を出力する。出力は送信部215を介して、クラウド216を介しコンピューター310に送信される。位相信号は、コンピューター310によって距離情報に変換される。
【0191】
図27は本実施形態の測距処理の流れを示すシーケンス図である。
図27に示すように、まず、駆動条件設定部により、光源110の発光条件を設定する(ステップS81)。スポット光を発光させて、イメージセンサ2にスポット光を受光させて撮影を行う(ステップS82)。次に、イメージセンサ2からの信号を記憶部に保存する。この記憶されたイメージセンサの信号から演算部にて位相信号を算出する。その算出結果を記憶部に保存する(ステップS83)
【0192】
次に、光源110から出てくる光の経路を変換する変換素子102を切り替える(ステップS84)。これによって、光路は拡散光の光学素子を介して出射するようになる。
【0193】
駆動条件設定部150により、光源110の発光条件を設定する(ステップS85)。拡散光を発光させて、イメージセンサ2に拡散光の反射光を受光させて撮影を行う(ステップS86)。次に、イメージセンサ2からの信号を記憶部に保存する。この記憶されたイメージセンサの信号から演算部にて位相信号を算出する。その算出結果を記憶部に保存する(ステップS87)。スポット光で得られた位相信号および拡散光で得られた位相信号を出力部から出力する(ステップS88)。
【0194】
出力された位相信号は、クラウド216を介して、コンピューター310受信される(ステップS89)。I/F301を介して受信し、一度、コンピューター内部の記憶部304に保存される(ステップS90)。初めに、散乱光によって撮影された位相信号を距離画像へ変換する(ステップS91)。次に、スポット光によって撮影された位相信号を距離画像へ変換する(ステップS92)。それぞれの距離画像からマルチパス干渉の補正を行う(ステップS93)。補正された距離画像を記憶部304に保存する(ステップS94)。距離画像を出力し、クラウド216に送信する。
【0195】
本実施形態の投受光装置によって、出力された位相画像を一度クラウドなどの通信網を介して、大規模な計算容量があるコンピューターなどによって演算することが容易になる。例えば、位相信号から測距情報を生成する場合などは、GPU(Graphics Processing Unit)などを大規模な実装した装置を利用することが適している。高速に動く対象物を、短時間ごとの画像としてとらえ、それぞれの画像の測距データを作り上げることが可能となる。高速に動く対象物の動作様態を分析することが可能となる。
【0196】
以上説明したように、本発明の様態の一例は以下の通りである。
【0197】
<1>
本実施形態にかかる投受光装置200は、第1の光を投光する第1投光部1-3と、第2の光を投光する第2投光部1-1と、領域内28の物体26で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部2と、を備え、前記第1の光27を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光29を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光(スポット光)であり、前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光(拡散光)であり、前記第2の光の積算光量は、前記第1の光の積算光量よりも大きいことを特徴とする。これにより高精度の計測が可能となる。
【0198】
<2>
本実施形態にかかる投受光装置200は、第1の光を投光する第1投光部1-3と、第2の光を投光する第2投光部1-1と、領域内28の物体26で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部2と、を備え、前記第1の光27を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光29を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、前記第1の光は、前記領域内28での強度分布を有する光(スポット光)であり、前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光(拡散光)であり、前記第2の受光は、前記第1の受光よりも長い積算時間及び大きい増幅率の少なくとも一方を含むことを特徴とする。これによりさらなる高精度の計測が可能となる。
【0199】
<3>
本実施形態にかかる投受光装置200は、前記第1投光部1-3および前記第2投光部1-1から投光される前記第1の光および前記第2の光の積算光量、または前記受光部の積算時間、増幅率を制御する制御部(駆動条件設定部150など)を備えることを特徴とした<1>および<2>に記載した投受光装置であることを特徴とする。これによりさらなる高精度の計測が可能となる。
【0200】
<4>
本実施形態にかかる投受光装置200は、前記第1投光部および前記第2投光部は複数の光源からなり、発光する光源数を変化させることによって積算光量を制御することを特徴とした<1>~<3>に記載した投受光装置であることを特徴とする。これにより、複数の光源によって分担して積算光量を維持できる。大きな光を放つための発熱によって光源部10が高温になってしまうことを避けることができる。さらなる高精度の計測が可能となる。
【0201】
<5>
本実施形態にかかる投受光装置200は、前記第1投光部は第1光源(光源部10-3など)を含み、前記第2投光部は第2光源(光源部10-1など)を含み、該第1光源及び該第2光源は各々複数の発光部を有し、前記第2光源の発光部数は前記第1光源の発光部数よりも多いことを特徴とした<1>~<4>に記載した投受光装置であることを特徴とする。これによりさらなる高精度の計測が可能となる。
【0202】
<6>
本実施形態にかかる投受光装置200は、前記投光部から出射される光以外の外光の光量を前記受光部2(もしくは外光取得部181)によって検出し、検出された前記外光の光量に基づき前記第1の光の積算光量および前記第2の光の積算光量を変化させることを特徴とした<1>~<5>に記載した投受光装置であることを特徴とする。これにより、外光によるノイズを低減できる。特に、遠方の計測にも、光強度で有意差を出すことができる光強度に調整することが可能である。遠方のS/N比が改善し、さらなる高精度の計測が可能となる。
【0203】
<7>
本実施形態にかかる投受光装置200は、前記第1投光部および前記第2投光部から出射される光以外の外光の光量を前記受光部2(もしくは外光取得部181)によって検出し、検出された前記外光の光量に基づき、前記第1の受光の積算時間及び増幅率の少なくとも一方と、前記第2の受光の積算時間及び増幅率のうち少なくとも一方を変化させることを特徴とした<1>~<6>に記載した投受光装置であることを特徴とする。これにより、外光によるノイズを低減できる。特に、近距離の反射率の高い物体に対して、イメージセンサが飽和してしまう不具合を低減できる。これは増幅率や低下させ、積算時間を減少させることで実現できる。これにより近距離での飽和による不具合が低減でき、近距離の計測が改善し、これによりさらなる高精度の計測が可能となる。
【0204】
<8>
本実施形態にかかる投受光装置200は、前記投受光装置の温度計測を行い、前記計測された温度に基づき、前記第1の光の積算光量と前記第2の光の積算光量の少なくとも一方を変化させ、前記第1の受光の積算時間と増幅率および前記第2の受光の積算時間と増幅率のうち少なくとも1つを変化させることを特徴とした<1>~<7>に記載した投受光装置であることを特徴とする。発熱による光量低下を避けることができる。これによりさらなる高精度の計測が可能となる。
【0205】
<9>
本実施形態にかかる投受光装置200の前記受光部は、光を検出する光検出器を含み、同一の該光検出器により前記第1の受光と前記第2の受光が行われることを特徴とした<1>~<8>に記載した投受光装置であることを特徴とする。これによりさらなる高精度の計測が可能となる。
【0206】
<10>
本実施形態にかかる測距システム300は、第1の光を投光する第1投光部と、第2の光を投光する第2投光部と、領域内の物体で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部と、前記受光部によって検出した情報から前記物体の距離情報を演算する距離計算部と、を備え、前記第1の光を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光であり、前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光であり、前記第2の光の積算光量は、前記第1の光の積算光量よりも大きいことを特徴とする。これにより外部のコンピューターのGPUなどの大規模な計算装置を利用することができ、高精度の測距情報を提供できる測距システムを提供できる。
【0207】
<11>
本実施形態にかかる測距装置100は、第1の光を投光する第1投光部と、第2の光を投光する第2投光部と、領域内の物体で反射された、前記第1の光及び前記第2の光を検出する受光部と、を備え、前記第1の光を投光したときの前記受光部による第1の受光と、前記第2の光を投光したときの前記受光部による第2の受光とを行い、前記第1の光は、前記領域内での強度分布を有する光であり、前記第2の光は、前記第1投光部から投光される光よりも前記領域内での強度分布の小さい光であり、前記第2の受光は、前記第1の受光よりも長い積算時間及び大きい増幅率の少なくとも一方を含むことを特徴とする。これにより高精度の測距情報を提供できる測距装置を提供できる。
【符号の説明】
【0208】
1 投光部
1-1 投光部(第2の投光部(拡散光)の一例)
1-2 投光部(第2の投光部(拡散光)の一例)
1-3 投光部(第1の投光部(スポット光)の一例)
2 受光部
2a イメージセンサ
2b 変換回路
3 ADC
4 制御部
100 測距装置
10 光源部
10-1 第2の光源部(拡散光)
10-3 第1の光源部(スポット光)
110 光源(VCSELなど)
150 駆動条件設定部
160 受光系制御部
170 温度判定部
180 外光判定部
200 投受光装置
300 測距システム