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特開2024-135277電気音響変換器、音響機器およびウェアラブルデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135277
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電気音響変換器、音響機器およびウェアラブルデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20240927BHJP
   H04R 17/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R17/02
H04R17/00 330G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045890
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 渉
【テーマコード(参考)】
5D004
5D019
【Fターム(参考)】
5D004AA02
5D004DD01
5D004DD02
5D019AA07
5D019EE02
(57)【要約】
【課題】振動部の平面方向に生じる応力を抑制する。
【解決手段】振動部と、前記振動部上に設けられ、前記振動部を駆動させる複数の駆動部と、前記振動部の周囲に配置される枠部と、前記枠部の外側に配置される外側固定枠部と、前記枠部と前記外側固定枠部との間に配置され、前記枠部と前記外側固定枠部とを接続する、複数の弾性ばね部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部と、
前記振動部上に設けられ、前記振動部を駆動させる複数の駆動部と、
前記振動部の周囲に配置される枠部と、
前記枠部の外側に配置される外側固定枠部と、
前記枠部と前記外側固定枠部との間に配置され、前記枠部と前記外側固定枠部とを接続する、複数の弾性ばね部と、を備える
ことを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
前記振動部は、平面視において、第1の辺と、前記第1の辺と対向する第2の辺と、で前記枠部と接続され、
前記駆動部は、
前記第1の辺の少なくとも一部と重なる位置に設けられる第1駆動部と、
前記第2の辺の少なくとも一部と重なる位置に設けられる第2駆動部と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記第1の辺の中点と前記第2の辺の中点を結ぶ線分に平行な方向における、前記振動部上の前記第1駆動部及び前記第2駆動部の少なくとも一方の長さは、前記線分の長さの35%以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項4】
前記第1の辺の中点と前記第2の辺の中点を結ぶ線分に平行な方向における、前記振動部上の前記第1駆動部及び前記第2駆動部の少なくとも一方の長さは、前記線分の長さの25%以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項5】
前記複数の弾性ばね部は、ミアンダ構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項6】
前記振動部の前記第1の辺及び前記第2の辺と異なる辺は、前記枠部と離隔している
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項7】
前記複数の弾性ばね部の少なくとも1つは、前記第1の辺及び前記第2の辺が対向する方向に設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の電気音響変換器。
【請求項8】
前記複数の弾性ばね部と前記枠部との接続位置は、前記振動部の中心に対して点対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項9】
前記複数の弾性ばね部と前記枠部との接続位置は、前記振動部の中心に対して線対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項10】
前記複数の弾性ばね部は、ばね定数がそれぞれ異なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項11】
前記複数の弾性ばね部は、前記枠部を所定の方向に傾斜させる第3駆動部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の電気音響変換器を備える、
ことを特徴とする音響機器。
【請求項13】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の電気音響変換器を備える、
ことを特徴とするウェアラブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気音響変換器、音響機器およびウェアラブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音楽や動画の視聴、及びテレビ会議などの用途として、イヤホンなどの音響機器の開発が行われている。音響機器は、電気音響変換器であるスピーカドライバを、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって実現している。例えば、スピーカドライバとしては、小型化が容易なPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電膜の電圧印加による収縮を用いた圧電駆動MEMSが多く選択されている。このようなスピーカドライバは、1kHzで100dB以上の音圧レベルを低い電圧(<10V)で出力でき、かつ、広い周波数帯でフラットな音圧レベルであることを要求される。
【0003】
特許文献1には、シリコン層上にPZT膜が形成された正方形の圧電MEMSを備える電気音響変換器が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の圧電駆動MEMSを用いた電気音響変換器においては、電圧あたりの音圧レベルを向上させることを目的として、MEMS部分の振動部のシリコン厚を薄くし、電気音響変換器の表面の駆動しやすさを向上させ、体積速度(振幅変位量)を大きくすることが多く行われている。しかし、このような方法によれば、電気音響変換器をパッケージングする際の残留応力により、電気音響変換器の共振周波数や駆動感度が低下しやすくなってしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、振動部の平面方向に生じる応力を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、振動部と、前記振動部上に設けられ、前記振動部を駆動させる複数の駆動部と、前記振動部の周囲に配置される枠部と、前記枠部の外側に配置される外側固定枠部と、前記枠部と前記外側固定枠部との間に配置され、前記枠部と前記外側固定枠部とを接続する、複数の弾性ばね部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動部の平面方向に生じる応力を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態にかかる電気音響変換器の構成の一例を示す平面図である。
図2図2は、図1の一点鎖線A-A'における断面図である。
図3図3は、電気音響変換器のパッケージ例を示す図である。
図4図4は、第2の実施の形態にかかる電気音響変換器の構成の一例を示す平面図である。
図5図5は、第3の実施の形態にかかる電気音響変換器の構成の一例を示す平面図である。
図6図6は、第4の実施の形態にかかる電気音響変換器の構成の一例を示す平面図である。
図7図7は、メガネ型のウェアラブルデバイスの外観構成を説明する概略構成図である。
図8図8は、腕時計型のウェアラブルデバイスの外観構成を説明する概略構成図である。
図9図9は、ワイヤレスイヤホンの外観構成を説明する概略構成図である。
図10図10は、超音波発振器の外観構成を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、電気音響変換器、音響機器およびウェアラブルデバイスの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる電気音響変換器20の構成の一例を示す平面図である。図1に示すように、電気音響変換器20は、圧電駆動MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スピーカドライバである。電気音響変換器20は、振動部4と、枠部3と、駆動部として機能する第1駆動部である圧電駆動部5a及び第2駆動部である圧電駆動部5bと、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと、外側固定枠部16と、を備える。なお、圧電駆動部5a及び圧電駆動部5bを総称する場合、圧電駆動部5とすることがある。また、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bを総称する場合、ミアンダ構造弾性ばね部15とすることがある。
【0011】
振動部4は、MEMSを構成するシリコン活性層を主体に形成されている。振動部4は、正方形状である。枠部3は、平面視において、振動部4の周囲に、振動部4を囲うように設けられる。枠部3は、振動部4に接続される。枠部3は、矩形枠状である。圧電駆動部5は、枠部3及び振動部4に設けられ振動部4を駆動させる。圧電駆動部5は、矩形状である。なお、平面視とは、振動部4の上面の法線方向から対象を見ることである。
【0012】
図1には、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示される。X軸方向及びY軸方向は、振動部4の上面に平行な平面内で互いに直交する方向である。また、Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向である。言い換えれば、Z軸方向は、振動部4の上面の法線方向である。ここで、平面視における電気音響変換器20とは、図1のXY平面で示す電気音響変換器20を指すものとする。なお、他の図においても、図1に対応するX軸、Y軸、及びZ軸を示す場合がある。
【0013】
平面視において、振動部4は、第1の辺である接続辺11aと、接続辺11aと反対側に位置する第2の辺である接続辺11b(接続辺11a及び接続辺11bを総称する場合、接続辺11とすることがある)と、で枠部3と接続される。接続辺11は、Y軸方向と平行である。振動部4の枠部3と接続されていない辺12a及び12b(以下、開放辺12a及び12bと参照し、総称する場合は、開放辺12とすることがある)は、スリット14により開放されている。スリット14は、開放辺12a又は12bに沿って設けられており、接続辺11a及び11bと交差する方向に延伸している。スリット14を有することにより、振動部4と枠部3の衝突による破壊を防ぐことができる。
【0014】
なお、振動部4の形状は正方形状に限られず、その他の多角形状、又は円形状であっても良い。これにより、振動部4の形状に応じて音に所望の指向性を与えることができ、例えば、振動部4を円形状とした場合は、対称性の良い音圧分布を得ることができる。
【0015】
また、枠部3の内縁は、振動部4を囲うことできれば、振動部4の外縁と形状が一致していなくても良い。なお、接続辺11及び開放辺12は、曲線(弧)である場合を含む。また、本実施形態では振動部4の一辺全体が枠部3と接続されているが、一辺のうち一部分のみが接続されていても良い。
【0016】
その他、接続辺11a及び接続辺11bは、対向する2辺であることが好ましく、接続辺11a及び11bの長さが等しいことが好ましい。これにより、振動部4を対称性良く枠部3と接続することにより、振動の安定性を向上させることができ、振動時のノイズの発生を抑制することができる。
【0017】
圧電駆動部5a及び圧電駆動部5bは、枠部3へ接続された箇所の近傍の振動部4の表面に形成されており、振動部4の中心に向かって延伸している。より詳細には、圧電駆動部5a及び圧電駆動部5bは、それぞれ第1及び第2の駆動部の一例であり、枠部3及び振動部4の+Z側の面上に、それぞれ接続辺11a又は11bに重なる位置に設けられている。
【0018】
圧電駆動部5a及び圧電駆動部5bは、それぞれ振動部4の面上に接続辺11a及び11bの少なくとも一部と重なるように設けられていれば、枠部3の面上に設けられていなくても良い。しかし、枠部3の面上を含むように圧電駆動部5を設けることで、振動部4を駆動させた際、接続辺11a及び接続辺11b付近に応力が集中することによる圧電駆動部5の剥がれや壊れ等を抑制することができる。
【0019】
また、圧電駆動部5の形状は、矩形状以外の多角形状、又は円形状等であっても良く、接続辺11a及び11bの全部に重ならなくても良い。ただし、圧電駆動部5は、接続辺11a及び11bの全部を含むように設けられている方が、振動部4をより大きく駆動させ、音圧レベルをより高くすることができる点で好ましい。
【0020】
ここで、接続辺11aの中点Pと接続辺11bの中点Qを結ぶ線分PQの長さをL(以下、振動部の長さLと参照する)とし、Y軸と平行な方向における振動部4の幅をW(以下、振動部の幅Wと参照する)とする。また、振動部4と重なるように設けられた圧電駆動部5の、線分PQに平行な方向における長さ、すなわち、X軸上における接続辺11a又は11bから振動部4の中心方向への延伸長さをLpする(以下、圧電駆動部5の長さLpと参照する)。このとき、振動部4上の圧電駆動部5a及び圧電駆動部5bの少なくとも一方の長さは、線分PQの長さの35%以下であることが好ましい。また、振動部4上の圧電駆動部5a及び圧電駆動部5bの少なくとも一方の長さは、線分PQの長さの25%以上であることが好ましい。なお、測定位置によってLpの値が異なる場合は、最大値をLpとする。
【0021】
外側固定枠部16は、平面視において、枠部3の外側に配置される。
【0022】
ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、蛇行したように折り返した形状であるミアンダ構造となった弾性ばね部である。図1に示す例では、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、ミアンダ構造となった弾性ばねの折り返し数を“2”としている。本実施形態では、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのミアンダ構造となった弾性ばねの折り返し数、すなわちばね定数を、それぞれのミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bで同数としている。
【0023】
ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、枠部3と外側固定枠部16との間に配置される。ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、枠部3と外側固定枠部16とを接続するばね部の一例である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態では、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと枠部3との接続位置は、振動部4の中心に対して点対称に配置されている。このようにミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと枠部3との接続位置を、振動部4の中心に対して点対称に配置することにより、通電によって一方のミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bを変位させることで、電気音響変換器20の指向性の調整を行うことができる。
【0025】
なお、ミアンダ構造弾性ばね部15は、外側固定枠部16の対向する2辺に設けられることが好ましいが、これに限るものではない。また、ミアンダ構造弾性ばね部15は、外側固定枠部16の4辺に設けられるものであってもよい。
【0026】
図2は、図1の一点鎖線A-A'における断面図である。振動部4は、例えば、シリコン活性層で形成されている。シリコン活性層の厚さ(Z軸方向の幅)は特に限定されないが、より薄く形成されている方が好ましい。シリコン活性層がより薄く形成される場合は、より大きな音圧レベルを得ることができる。
【0027】
シリコン活性層の具体的な厚さとしては、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらにより好ましい。シリコン活性層の厚さの他、寸法(XY平面上の面積)を変更することにより、振動部4のばね定数を変更し、狙いの共振及び反共振の設計を実施することができる。振動部4はシリコン活性層に限定されるものではなく、酸化材料や無機材料、有機材料等で形成されていても良い。
【0028】
枠部3は、シリコン活性層10と、シリコン活性層10の-Z側の面に積層する支持層9を含む。枠部3が有するシリコン活性層10は、例えば半導体プロセスにより加工することで、振動部4と一体的に形成されていても良い。支持層9は、SOI基板の単結晶シリコンや、或いは無機材料、有機材料等で構成され、複数層によって構成されていても良い。また、シリコン活性層10と支持層9との層間に、酸化シリコン等で構成される層間膜が設けられていても良い。
【0029】
圧電駆動部5a及び5bのそれぞれは、枠部3及び振動部4の+Z側の面の上に、下部電極8、圧電部7、及び上部電極6が順に積層されている。下部電極8及び上部電極6は、例えば、金(Au)または白金(Pt)等により形成されている。圧電部7は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等により形成されているが、その他の圧電材料であってもよく、種類は問わない。また、圧電駆動部5は、圧電部が複数積層され、中間電極を含む構造のものであっても良い。圧電駆動部5は、外部制御装置に電気的に接続されており、電圧を印加することで駆動する圧電アクチュエータである。
【0030】
圧電駆動部5に電圧を印加すると、圧電駆動部5が備える圧電部7に面内方向(XY方向)でひずみが発生し、振動部4とのユニモルフとして、圧電駆動部5はZ軸方向へ変形する。圧電駆動部5への印加電圧を時間的に変化させた場合、振動部4の表面は振動して周辺空気に圧力波を発生させ、これが音として人間に感知される。入力する電圧波形は、再生したい音の波形が電圧変換されたものであり、この電圧波形を圧電駆動部5へ入力することにより音が再生される。
【0031】
また、図2に示すように、枠部3の外側に外側固定枠部16が配置されている。枠部3と外側固定枠部16との間に、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bが配置されている。
【0032】
外側固定枠部16は、シリコン活性層10と、シリコン活性層10の-Z側の面に積層する支持層17を含む。なお、支持層17は、枠部3の支持層9よりも長く形成される。外側固定枠部16が有するシリコン活性層10は、例えば半導体プロセスにより加工することで、振動部4と一体的に形成されていても良い。支持層17は、SOI基板の単結晶シリコンや、或いは無機材料、有機材料等で構成され、複数層によって構成されていても良い。また、シリコン活性層10と支持層17との層間に、酸化シリコン等で構成される層間膜が設けられていても良い。
【0033】
ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、振動部4と同じシリコン活性層10で形成される。ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bが有するシリコン活性層10は、例えば半導体プロセスにより加工することで、振動部4と一体的に形成されていても良い。なお、図2に示す例では、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、振動部4と同じシリコン活性層10で形成されているが、これに限定されるものではない。また、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、Z方向へのばね定数よりも、XY方向へのばね定数が小さい方が好ましい。また、XY方向のうち、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bの延伸方向(図1ではX軸方向)へのばね定数が小さい方がより好ましい。
【0034】
ここで、図3は電気音響変換器20のパッケージ例を示す図である。図3に示すように、外側固定枠部16の支持層17は、枠部3の支持層9よりも長く形成されるため、電気音響変換器20をパッケージ部材(例えば、電子基板など)30にパッケージングする場合、外側固定枠部16のみがパッケージ部材30へ接合され、枠部3は接合されない。
【0035】
このような電気音響変換器20を、パッケージング工程等において線膨張係数の異なるパッケージ部材30へ接合させたとしても、その際のプロセス温度を原因とした熱応力は、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bの変形により吸収され、枠部3の内部に配置された振動部4にかかる応力が低減される。そのため、音圧レベル感度の低下を抑制する構造となっている。すなわち、パッケージ部材30に対するパッケージングの際においては外側固定枠部16に応力がかかるが、その変形は、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bにより吸収され、振動部4の平面方向に生じる応力が抑制される。したがって、音圧レベルを高く保つことができる。また、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、上述した熱応力の他、例えば、電気音響変換器20を駆動させた際の温度環境変化によって生じる熱に由来した歪等も抑制可能である。
【0036】
このように本実施形態によれば、振動部4の平面方向に生じる応力を抑制することができる。これにより、MEMSを構成する振動部4のシリコン活性層10の厚みを薄くしたとしても、駆動電圧あたりの音圧レベルを高く保つことができる。
【0037】
なお、図1に示す例では、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのミアンダ構造となった弾性ばねの折り返し数を“2”としたが、これに限るものではなく、弾性ばねの折り返し数を“3”以上としてもよい。弾性ばねの折り返し数を多くすることにより、更に音圧レベル感度を低下させることがない構造とすることができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0039】
第1の実施の形態では、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと枠部3との接続位置を振動部4の中心に対して点対称に配置するようにしたが、第2の実施の形態は、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと枠部3との接続位置を振動部4の中心に対して線対称に配置する点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0040】
ここで、図4は第2の実施の形態にかかる電気音響変換器20の構成の一例を示す平面図である。図4に示すように、電気音響変換器20は、枠部3と外側固定枠部16との間に、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bが配置されている。ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、枠部3と外側固定枠部16とを接続する。本実施形態においては、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと枠部3との接続位置は、振動部4の中心に対して線対称に配置されている。
【0041】
また、本実施形態では、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのミアンダ構造となった弾性ばねの折り返し数、すなわちばね定数を、それぞれのミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bで同数としている。
【0042】
このように本実施形態によれば、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと枠部3との接続位置を、振動部4の中心に対して線対称に配置する。これにより、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bより枠部3に力が加わったとしても枠部3が回転せず、電気音響変換器20の指向性を変化させることがない。
【0043】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0044】
第3の実施の形態は、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのばね定数を、それぞれ異ならせる点が、第1の実施の形態または第2の実施の形態と異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態または第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0045】
ここで、図5は第3の実施の形態にかかる電気音響変換器20の構成の一例を示す平面図である。図5に示すように、電気音響変換器20は、枠部3と外側固定枠部16との間に、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bが配置されている。ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bは、枠部3と外側固定枠部16とを接続する。本実施形態においては、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと枠部3との接続位置は、振動部4の中心に対して線対称に配置されている。
【0046】
また、本実施形態では、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのミアンダ構造となった弾性ばねの折り返し数、すなわちばね定数を、それぞれのミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bで異ならせている。図5に示す例では、ミアンダ構造弾性ばね部15aのミアンダ構造となった弾性ばねの折り返し数を“4”とし、ミアンダ構造弾性ばね部15bのミアンダ構造となった弾性ばねの折り返し数を“6”としている。このように枠部3と外側固定枠部16の間に配されたそれぞれのミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのばね定数は、異なっていてもよい。
【0047】
このように本実施形態によれば、例えば、枠部3の内部の振動部4と圧電駆動部5a及び圧電駆動部5bが線対称となっていない場合などにおいて、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのばね定数を異ならせて調整することにより、外側固定枠部16に対して対称なばね定数とすることができ、意図しない共振周波数での振動を防ぐことができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと枠部3との接続位置を振動部4の中心に対して線対称とした場合について説明したが、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bと枠部3との接続位置を振動部4の中心に対して点対称とした場合についても同様に、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのばね定数を、それぞれ異ならせるようにしてもよい。
【0049】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0050】
第4の実施の形態は、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのミアンダ構造となった弾性ばねの表面に、圧電駆動部19を配置した点が、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0051】
ここで、図6は第4の実施の形態にかかる電気音響変換器20の構成の一例を示す平面図である。図6に示すように、電気音響変換器20は、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bのミアンダ構造となった弾性ばねの表面に、第3駆動部として機能する圧電駆動部19を配置する。
【0052】
このようなミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bの表面に配した圧電駆動部19に対して、枠部3の内部の圧電駆動部5と同様に、音声信号を入力することにより、枠部3の圧電駆動部5とミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15b上の圧電駆動部19とを、並列で持つスピーカとして使用することができ、音圧レベル駆動感度を向上させることができる。
【0053】
また、ミアンダ構造弾性ばね部15a及びミアンダ構造弾性ばね部15bの表面に配した圧電駆動部19へ周期波を入力し、かつ隣り合った枠部3の内部の圧電駆動部5と逆相で動作させることにより、枠部3を周期的に傾斜させることができる。これにより、電気音響変換器20の指向特性を電気的に変化させることができる。
【0054】
上述した第1~第4の実施の形態は、電気音響変換器にとどまらず、イヤホン、ヘッドホン、スピーカなどの、電気音響変換器を有する音響機器についても適用できる。また、例えば、腕時計型、メガネ型、HMD(Head Mounted Display)型、胴体装着型等、利用者の人体に直接的又は間接的に装着可能な形態としてのウェアラブルデバイスに、音響機器等として組み込んで使用されていても良い。
【0055】
図7は、メガネ型のウェアラブルデバイス100の外観構成を説明する概略構成図である。図7に示すように、メガネ型のウェアラブルデバイス100は、一例として第1ユニット101と第2ユニット102を備える。第1ユニット101は、一例としてメガネフレーム100aの一部に配置され、当該メガネ型のウェアラブルデバイス100の全体を制御するコントローラやバッテリ、マイク、スピーカとして機能する電気音響変換器20等が内蔵されている。また、第2ユニット102もまたメガネフレーム100aの一部に配置され、表示部やカメラ、スイッチ、各種センサ等が内蔵されている。ユーザは、メガネ型のウェアラブルデバイス100をメガネをかけるが如く頭部に装着する。その結果、表示部に表示される画像がユーザの眼前に拡張現実を実現し、様々な情報を提供する。
【0056】
図8は、腕時計型のウェアラブルデバイス200の外観構成を説明する概略構成図である。図8に示すように、腕時計型のウェアラブルデバイス200は、本体部201の表面に配置された表示部202と、本体部201の側面に配置されたカメラ203と、本体部201を支持すると共にユーザの腕に固定するバンド204等を含む。なお、本体部201には、メガネ型のウェアラブルデバイス100と同様に、マイク、スピーカとして機能する電気音響変換器20、スイッチ等が配置されている。
【0057】
図9は、ワイヤレスイヤホン300の外観構成を説明する概略構成図である。図9に示すように、ワイヤレスイヤホン300は、本体部301の表面にスピーカとして機能する電気音響変換器20を配置している。なお、本体部301には、メガネ型のウェアラブルデバイス100と同様に、マイク、スイッチ等が配置されている。
【0058】
さらに、各実施形態に係る電気音響変換器20は、電気音響変換器20の振動によって超音波を発生する超音波発振器などにも適用可能である。
【0059】
図10は、超音波発振器400の外観構成を説明する概略構成図である。図10に示すように、超音波発振器400は、超音波を発生させる超音波振動子として電気音響変換器20を備えている。
【0060】
これまで、本発明の一実施形態に係る電気音響変換器について説明してきたが、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態の追加、変更又は削除等、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
3 枠部
4 振動部
5a 駆動部、第1駆動部
5b 駆動部、第2駆動部
11a 第1の辺
11b 第2の辺
15a、15b 弾性ばね部
16 外側固定枠部
19 第3駆動部
20 電気音響変換器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0178000号明細書
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10