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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135307
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/762 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/76 D
H01L21/76 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045930
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 時生
【テーマコード(参考)】
5F032
【Fターム(参考)】
5F032AA35
5F032AA44
5F032CA17
5F032DA01
5F032DA04
5F032DA22
5F032DA33
5F032DA53
(57)【要約】
【課題】素子形成領域の素子分離領域に隣接する端部において、酸化膜の成膜性を損なうことがなく、形成される酸化膜の厚さばらつきを低減することができる、半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板と、半導体基板上に形成され、半導体素子が形成される素子形成領域と、半導体基板上に形成され、素子形成領域を半導体素子毎に分離する素子分離領域と、素子形成領域及び素子分離領域を覆う酸化膜と、を備え、素子形成領域の素子分離領域に隣接する端部が、半導体基板の主面と平行な平坦部と、素子形成領域の表面と素子分離領域の表面との段差を面取りした面取り部と、を備え、面取り部は、素子分離領域の幅方向に沿った断面において、素子形成領域と素子分離領域との境界から平坦部に向かって高さが高くなり且つ曲率半径が大きくなる形状である、半導体装置とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、半導体素子が形成される素子形成領域と、
前記半導体基板上に形成され、前記素子形成領域を半導体素子毎に分離する素子分離領域と、
前記素子形成領域及び素子分離領域を覆う酸化膜と、
を備え、
前記素子形成領域の前記素子分離領域に隣接する端部が、前記半導体基板の主面と平行な平坦部と、前記素子形成領域の表面と前記素子分離領域の表面との段差を面取りした面取り部と、を備え、
前記面取り部は、前記素子分離領域の幅方向に沿った断面において、前記素子形成領域と前記素子分離領域との境界から前記平坦部に向かって高さが高くなり且つ曲率半径が大きくなる形状である、
半導体装置。
【請求項2】
前記面取り部は、前記曲率半径が無限大になる斜面を備える、請求項1の半導体装置。
【請求項3】
前記素子形成領域上に形成される前記酸化膜は、自然酸化膜と絶縁酸化膜の二層構造である、請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板上の素子分離領域に素子分離溝を形成する工程と、
前記素子分離溝に半導体酸化物を充填する工程と、
前記素子分離溝に充填された前記半導体酸化物をエッチングする工程と、
前記半導体基板上の素子形成領域及び前記素子分離領域の表面を洗浄する工程と、
を含み、
前記洗浄する工程は、前記素子形成領域の表面に形成された自然酸化膜を第1洗浄液により除去する第1洗浄と、前記第1洗浄の後に行われ、前記素子形成領域の半導体基板の表面を第2洗浄液により削り取ると共に、露出した前記素子形成領域の半導体基板の表面に自然酸化膜を形成する第2洗浄とにより行われ、
前記素子形成領域の表面と前記素子分離領域の表面との間に段差部が生じている場合に、前記第2洗浄では、前記第2洗浄液を斜め上方から前記段差部に噴射して、前記段差部を面取りする、
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記洗浄する工程を、複数回繰り返し行う、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記段差部が面取りされて形成される面取り部が、前記素子分離領域の幅方向に沿った断面において、前記素子分離領域との境界から中央部に向かって高さが高くなり且つ曲率半径が大きくなる形状になるまで、前記洗浄する工程を複数回繰り返し行う、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記段差部が面取りされて形成される面取り部が、前記素子分離領域の幅方向に沿った断面において、前記素子分離領域との境界から中央部に向かって高さが高くなり且つ曲率半径が大きくなり、前記曲率半径が無限大になる斜面を含む形状になるまで、前記洗浄する工程を複数回繰り返し行う、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1洗浄が、前記第1洗浄液として希フッ酸を用いるDHF洗浄であり、
前記第2洗浄が、前記第2洗浄液として塩酸、過酸化水素水、及び水の混合物を用いるHPM洗浄である、
請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記洗浄する工程の終了後に、前記素子分離領域上と、前記第2洗浄により自然酸化膜が形成された前記素子形成領域上とに、絶縁酸化膜と形成する工程をさらに含む、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
STI(Shallow Trench Isolation)技術を用いて作製される半導体装置は、図5に示すように、シリコン基板110上に、素子分離溝154と、素子分離溝154によって分離された素子形成領域114とを備えている。素子分離溝154には、酸化シリコン112が埋め込まれている。素子形成領域114のウェル118には、ゲート電極120、チャネル領域122、ソース領域124及びドレイン領域126を備えるMOSトランジスタ116が形成されている。
【0003】
図6に示すように、素子形成領域114の端部114Eの表面と、素子分離溝154内に埋め込まれた酸化シリコン112の表面との間に段差が生じる場合がある。段差は、製造工程において酸化シリコン112が過剰にエッチバックされることで発生する。このような段差は、その上に形成されるゲート絶縁膜128等の酸化膜130の成膜性に影響を及ぼし、ひいては半導体装置の性能の低下を引き起こす。例えば、矢印で示すように、段差のエッジの尖った角部では酸化膜が薄くなるため、電解集中が発生し、耐圧不良の原因となる。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1に記載の半導体装置の製造方法は、ウエットエッチングによりトレンチの上端部に丸みを形成する工程を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-21970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、エッジのみがエッチングにより削れて丸くなるだけであり、段差が無くなる訳ではない。その結果、酸化膜の成膜性が悪化するという問題は依然として存在する。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、素子形成領域の素子分離領域に隣接する端部において、酸化膜の成膜性を損なうことがなく、形成される酸化膜の厚さばらつきを低減することができる、半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、半導体装置に係るものであり、半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、半導体素子が形成される素子形成領域と、前記半導体基板上に形成され、前記素子形成領域を半導体素子毎に分離する素子分離領域と、前記素子形成領域及び素子分離領域を覆う酸化膜と、を備え、前記素子形成領域の前記素子分離領域に隣接する端部が、前記半導体基板の主面と平行な平坦部と、前記素子形成領域の表面と前記素子分離領域の表面との段差を面取りした面取り部と、を備え、前記面取り部は、前記素子分離領域の幅方向に沿った断面において、前記素子形成領域と前記素子分離領域との境界から前記平坦部に向かって高さが高くなり且つ曲率半径が大きくなる形状である、半導体装置とする。
【0009】
本発明のもう1つの態様は、半導体装置の製造方法に係るものであり、半導体基板上の素子分離領域に素子分離溝を形成する工程と、前記素子分離溝に半導体酸化物を充填する工程と、前記素子分離溝に充填された前記半導体酸化物をエッチングする工程と、前記半導体基板上の素子形成領域及び前記素子分離領域の表面を洗浄する工程と、を含み、前記洗浄する工程は、前記素子形成領域の表面に形成された自然酸化膜を第1洗浄液により除去する第1洗浄と、前記第1洗浄の後に行われ、前記素子形成領域の半導体基板の表面を第2洗浄液により削り取る第2洗浄とにより行われ、前記素子形成領域の表面と前記素子分離領域の表面との間に段差部が生じている場合に、前記第2洗浄では、前記第2洗浄液を斜め上方から前記段差部に噴射して、前記段差部を面取りする、半導体装置の製造方法とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、素子形成領域の素子分離領域に隣接する端部において、酸化膜の成膜性を損なうことがなく、形成される酸化膜の厚さばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図2】(A)及び(B)は図1の領域Aの詳細構成の一例を示す拡大図である。
図3】(A)~(G)は半導体装置の素子分離溝形成工程の一例を示す断面図である。
図4】(A)~(F)は、図3に示す素子分離溝形成工程における洗浄工程の処理手順の一例を示す模式図である。
図5】従来の半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図6図5の領域Bの詳細構成の一例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0013】
<半導体装置>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る半導体装置の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、半導体基板の一例であるシリコン基板10上に、素子分離領域の一例である素子分離溝54と、素子分離溝54によって分離された素子形成領域14とを備えている。素子分離溝54には、半導体酸化物の一例である酸化シリコン12が埋め込まれている。素子形成領域14のウェル18には、半導体素子の一例であるMOSトランジスタ16が形成されている。
【0014】
MOSトランジスタ16は、ウェル18の表面にゲート絶縁膜28を介して形成されたゲート電極20と、ゲート電極20の下方に位置するチャネル領域22と、チャネル領域22の両側に配置されたソース領域24及びドレイン領域26とを備えている。素子形成領域14及び素子分離溝54が形成される素子分離領域の各々は、酸化シリコンからなる絶縁酸化膜30で覆われている。
【0015】
(素子形成領域の端部の構造)
図2(A)及び図2(B)は、図1に領域Aで示す素子形成領域14の端部の構造を拡大して示す図である。後述するように、製造工程で素子形成領域14の端部に生じる段差は、DHF洗浄とHPM洗浄を組み合わせた洗浄工程を複数回繰り返すことより取り除かれる(図3(F)及び(G)を参照)。洗浄工程を繰り返す回数が多くなるほど、段差部が大きく削り取られて行く。
【0016】
図2(A)は、洗浄工程を閾値未満の回数だけ繰り返した場合の構造を示す。この場合、素子形成領域14の端部14Eは、素子形成領域14中央の平坦部14Tと、平坦部14Tから続く面取り部14Rとで構成される。面取り部14Rはなだらかな曲面である。面取り部14Rは、素子分離溝54の幅方向に沿った断面を見たときに、素子形成領域14と素子分離溝54(すなわち、酸化シリコン12)との境界から平坦部14Tに向かって曲率半径が大きくなる形状である。
【0017】
図2(B)は、洗浄工程を閾値未満の回数だけ繰り返した場合の構造を示す。この場合、素子形成領域14の端部14Eは、素子形成領域14中央の平坦部14Tと、平坦部14Tから続く面取り部14Rとで構成される。面取り部14Rはなだらかな斜面を含む。面取り部14Rは、素子分離溝54の幅方向に沿った断面を見たときに、素子形成領域14と素子分離溝54との境界から平坦部14Tに向かって曲率半径が大きくなる形状である。斜面の部分では、曲率半径は無限大となる。また、図2(A)と比べると、平坦な部分(平坦部14T)が減少し、傾斜部分(面取り部14R)が増加している。
【0018】
図2(A)及び図2(B)に示すように、素子形成領域14の端部14Eでは、段差の角部が削り取られて略平坦にされるので、素子形成領域14及び酸化シリコン12の表面上に酸化膜30を形成すると、酸化膜30は略均一な厚さで形成される。また、何れの構造でも、素子形成領域14の表面は、ケミカル酸化膜32で覆われている。このため、素子形成領域14上では、酸化膜は、ケミカル酸化膜32と絶縁酸化膜30の二層構造となる。ここで「ケミカル酸化膜」とは、例えば洗浄剤処理等の化学的酸化処理が施されて形成された酸化膜であり、特許請求の範囲に記載した「自然酸化膜」の一例である。
【0019】
<半導体装置の製造工程>
次に、図3を参照して図1に示す半導体装置の製造工程について説明する。
なお、ここでは、MOSトランジスタ16を形成する工程は省略し、酸化シリコン12が充填された素子分離溝54を形成する工程を中心に説明する。なお、MOSトランジスタ16は、従来から周知の方法で形成することができる。
【0020】
まず、シリコン基板10の表面にパッド酸化膜50を形成した後、CVD法を用いてシリコン窒化膜52を形成する(図3(A))。
【0021】
次に、シリコン窒化膜52上にレジスト膜(図示せず)を塗布した後、フォトリソグラフィ技術によって、素子分離溝54に対応する開口を有するレジストパターンを形成する。続いて、レジストパターンをマスクにして、シリコン窒化膜52及びパッド酸化膜50を順次エッチングする。続いて、エッチングされずに残ったシリコン窒化膜52及びパッド酸化膜50をマスクにして、シリコン基板10をエッチングして、素子分離溝54を形成する(図3(B))。
【0022】
次に、熱酸化法によって、素子分離溝54の側面及び底面を酸化して熱酸化膜(図示せず)を形成する。続いて、高密度プラズマCVD法によって、シリコン窒化膜52上及び素子分離溝54内に酸化シリコン12を堆積して、酸化シリコン12を素子分離溝54内に埋め込む(図3(C))。
【0023】
次に、化学的機械研磨(CMP)によって、酸化シリコン12の表面を平坦化する(図3(D))。続いて、熱リン酸を用いたウエットエッチングによって、シリコン窒化膜52を除去してパッド酸化膜50を露出させる。続いて、フッ酸を用いたウエットエッチングによって、パッド酸化膜50を除去した後、露出したシリコン基板10の表面に、犠牲酸化膜56を形成する。
【0024】
次に、フッ酸を用いたウエットエッチングによって、素子分離溝54内の酸化シリコン12を、シリコン基板10の表面の高さまでエッチバックする。ここで、犠牲酸化膜56で覆われていない酸化シリコン12の表面は、過剰にエッチバックされて、シリコン基板10の表面よりも低くなり、段差が形成される。続いて、犠牲酸化膜56を除去してシリコン基板10の表面を露出させる(図3(F))。
【0025】
次に、後述する洗浄工程を複数回繰り返し行い、シリコン基板10の表面及び酸化シリコン12の表面を洗浄する。この洗浄により、シリコン基板10の素子形成領域14の角部を削って段差を解消する。洗浄工程終了後、シリコン基板10の表面にはケミカル酸化膜32が形成されている。最後に、シリコン基板10の表面上、及び酸化シリコン12の表面上に、絶縁酸化膜30を所定の厚さで形成する(図3(G))。
【0026】
(洗浄工程)
次に、図4(A)~(F)を参照して洗浄工程について説明する。
図4(A)~(F)は、素子形成領域14の端部14E周辺の拡大図であり、洗浄工程により端部14Eにある角部が削られて、面取り部14Rが形成されて行く様子を表している。
【0027】
洗浄工程は、DHF洗浄とHPM洗浄との組み合わせにより行う。DHF洗浄は、希フッ酸(HF/HO)を洗浄液として用いて、シリコン表面のケミカル酸化膜を除去する処理である。HPM洗浄は、塩酸と過酸化水素水と純水が1:1~2:5~7の容積配合比で組成された洗浄液を用いて、金属を除去する処理である。DHF洗浄と、DHF洗浄後のHPM洗浄とを1セットの洗浄工程とし、1セットの洗浄工程を複数回実施する。
【0028】
図3(F)で犠牲酸化膜56を除去した後の、素子形成領域14の端部14Eと、素子分離溝54に充填された酸化シリコン12との境界部分の状態を図4(A)に示す。素子形成領域14の表面は、酸化シリコン12の表面よりも高い位置にあり、素子形成領域14と酸化シリコン12との間には段差が形成されている。素子形成領域14の表面はケミカル酸化膜32で覆われている。この状態では、端部14Eの表面はすべてが平坦部14Tであり、端部14Eのエッジは段差によって尖った角部となっている。
【0029】
1回目の洗浄工程では、まずDHF洗浄が行われる。DHF洗浄により、図4(B)に示すように、ケミカル酸化膜32が除去されると共に、酸化シリコン12が削り取られて酸化シリコン12の表面が後退する。酸化シリコン12の表面のDHF洗浄前の高さを点線で示す。酸化シリコン12の表面が後退することにより、素子形成領域14の側面(素子分離溝54の壁面)の露出部分が増加する。
【0030】
続いてHPM洗浄が行われる。HPM洗浄は浸漬処理により行われるのが通常であるが、本実施形態では、図4(B)に矢印で示すように、HPM洗浄液を上方から素子形成領域14の表面に向けて噴射して、素子形成領域14の表面を洗浄する。素子形成領域14の端部14Eについては、斜め上方から角部に向かってHPM洗浄液を噴射する。
【0031】
HPM洗浄液の噴射角度は、面取り部14Rの所望の傾きに応じて決められる。例えば、面取り部14Rの斜面を、基板の主面に対して45度だけ傾けたい場合は、HPM洗浄液を主面に対して45度の角度で噴射する。
【0032】
このHPM洗浄により、図4(C)に示すように、金属であるシリコン表面が削り取られて、素子形成領域14の表面が後退する。図4(B)に、素子形成領域14の酸化シリコン12の表面のHPM洗浄後の高さを一点鎖線で示す。素子形成領域14の端部14Eでは、角部が削り取られて面取りされ、曲面状の面取り部14Rが形成される。また、露出した素子形成領域14の表面にはケミカル酸化膜32が形成される。ケミカル酸化膜32が形成されると、HPM洗浄液にそれ以上反応しなくなる。
【0033】
DHF洗浄とHPM洗浄とをセットで行うのは、DHF洗浄により、素子形成領域14の表面に形成されたケミカル酸化膜32を除去して、素子形成領域14のシリコン表面を露出させた後でなければ、素子形成領域14のシリコンはHPM洗浄液と反応しないためである。DHF洗浄の後にHPM洗浄を行うのも同様の理由による。
【0034】
2回目の洗浄工程では、再度、DHF洗浄が行われる。DHF洗浄により、図4(D)に示すように、HPM洗浄で形成されたケミカル酸化膜32が除去されると共に、酸化シリコン12が削り取られて酸化シリコン12の表面が後退する。酸化シリコン12の表面が後退することにより、素子形成領域14の側面の露出部分がさらに増加する。また、2回目のDHF洗浄では、HPM洗浄でケミカル酸化されたシリコンが除去されるので、間接的に素子形成領域14のシリコン表面が削り取られることになる。
【0035】
続いてHPM洗浄が行われる。HPM洗浄により、図4(E)に示すように、金属である素子形成領域14のシリコン表面が削り取られて、素子形成領域14の表面が後退する。素子形成領域14の端部14Eでは、面取り部14Rがさらに丸められると共に、平坦部14Tが斜めに削り取られて面取り部14Rの領域が増加する。また、露出した素子形成領域14の表面にはケミカル酸化膜32が形成される。
【0036】
その後、図4(F)に示すように、例えば5回目の洗浄工程終了後、シリコン基板10の表面にはケミカル酸化膜32が形成されている。最後に、シリコン基板10の表面上、及び酸化シリコン12の表面上に、絶縁酸化膜30を所定の厚さで形成する。
【0037】
本実施の形態では、1セットの洗浄工程を複数回実施する。素子形成領域14の最初から露出している部分は、HPM洗浄を受ける回数に応じて削り取られる。HPM洗浄液を斜め上方から噴射することで、素子形成領域14の端部14Eの段差部も削り取られる。また、素子形成領域14の側面の新たに露出する部分は、露出後にHPM洗浄を受ける回数に応じて削り取られる。このため、面取り部14Rは、素子分離溝54の幅方向に沿った断面を見たときに、素子形成領域14と素子分離溝54との境界付近では曲率半径が小さく、平坦部14Tに近づくほど曲率半径が大きくなる形状になる。
【0038】
また、最初から露出している段差部は、HPM洗浄を受ける回数が多く、徐々に削り取られて平坦に近づく。例えば、洗浄工程を閾値未満の回数だけ繰り返すことで、図2(A)に示すように、面取り部14Rはなだらかな曲面となり、洗浄工程を閾値以上の回数だけ繰り返すことで、図2(B)に示すように、面取り部14Rはなだらかな斜面となる。閾値は、洗浄条件に応じて決められるが、例えば、3回~8回とすることができる。
【0039】
以上の通り、本実施形態では、素子形成領域14の端部14Eの角部を面取りして、なだらかな曲面又はなだらかな斜面とすることができ、その上に形成される酸化膜の成膜性を向上させることができる。すなわち、面取り部14Rを含む端部14E上に酸化膜を形成する場合、角部の上に酸化膜を形成する場合に比べて、酸化膜の厚さばらつきを低減することができる。また、酸化膜の厚さが均一になることで、電解集中も発生し難くなり、耐圧特性も改善される。
【0040】
また、DHF洗浄で酸化シリコン12の表面が削り取られ、HPM洗浄で素子形成領域14のシリコン表面が削り取られる。より詳細には、2回目以降のDHF洗浄で、HPM洗浄でケミカル酸化されたシリコンが除去され、間接的に素子形成領域14のシリコン表面が削り取られる。図3では誇張しているが、洗浄で削り取られる量はエッチングに比べて微量である。また、HPM洗浄では、ケミカル酸化膜32の形成により素子形成領域14の表面が不動態化し、HPM洗浄液による浸食は停止する。DHF洗浄でケミカル酸化膜32を除去するまで、次のHPM洗浄を行うことはできない。したがって、洗浄工程を実施する回数によって削り取られる量を調整することができる。
【0041】
また、斜め上方からのHPM洗浄により、素子形成領域14の端部14Eを面取りすることが可能である。HPM洗浄液の噴射角度により、面取り部14Rの傾斜角度を決めることができる。したがって、HPM洗浄の条件設定により、素子形成領域14の端部14Eを所望の形状とすることが可能である。
【0042】
<変形例>
上記実施の形態で説明した半導体装置及びその製造方法の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【0043】
上記実施の形態では、面取り部14Rが所定の傾きの斜面を有する構造(図2(B)参照)を例示したが、面取り部14Rの構造はこれに限定されない。面取り部14Rが斜面を有する場合、面取り部14Rは傾きの異なる複数の斜面を有していてもよい。この場合、複数の斜面の傾きは、境界側で急であり、平坦部14Tに近づくほど緩やかになる。
【0044】
また、上記実施の形態では、DHF洗浄とHPM洗浄とを行う場合について説明したが、第1洗浄は、素子形成領域の表面に形成されたケミカル酸化膜を除去することができ、第2洗浄は、素子形成領域の半導体基板の表面を削り取ることができればよく、洗浄の種類はDHF洗浄とHPM洗浄には限定されない。
【0045】
[付記]なお、以上の実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
本開示の第1態様は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、半導体素子が形成される素子形成領域と、前記半導体基板上に形成され、前記素子形成領域を半導体素子毎に分離する素子分離領域と、前記素子形成領域及び素子分離領域を覆う酸化膜と、を備え、前記素子形成領域の前記素子分離領域に隣接する端部が、前記半導体基板の主面と平行な平坦部と、前記素子形成領域の表面と前記素子分離領域の表面との段差を面取りした面取り部と、を備え、前記面取り部は、前記素子分離領域の幅方向に沿った断面において、前記素子形成領域と前記素子分離領域との境界から前記平坦部に向かって高さが高くなり且つ曲率半径が大きくなる形状である、半導体装置である。
本開示の第2態様は、前記面取り部は、前記曲率半径が無限大になる斜面を備える、第1態様の半導体装置である。
本開示の第3態様は、前記素子形成領域上に形成される前記酸化膜は、自然酸化膜と絶縁酸化膜の二層構造である、第1態様又は第2態様の半導体装置。
本開示の第4態様は、半導体基板上の素子分離領域に素子分離溝を形成する工程と、前記素子分離溝に半導体酸化物を充填する工程と、前記素子分離溝に充填された前記半導体酸化物をエッチングする工程と、前記半導体基板上の素子形成領域及び前記素子分離領域の表面を洗浄する工程と、を含み、前記洗浄する工程は、前記素子形成領域の表面に形成された自然酸化膜を第1洗浄液により除去する第1洗浄と、前記第1洗浄後に行われ、前記素子形成領域の半導体基板の表面を第2洗浄液により削り取る第2洗浄とにより行われ、前記素子形成領域の表面と前記素子分離領域の表面との間に段差部が生じている場合に、前記第2洗浄では、前記第2洗浄液を斜め上方から前記段差部に噴射して、前記段差部を面取りする、半導体装置の製造方法である。
本開示の第5態様は、前記洗浄する工程を、複数回繰り返し行う、第4態様の半導体装置の製造方法である。
本開示の第6態様は、前記段差部が面取りされて形成される面取り部が、前記素子分離領域の幅方向に沿った断面において、前記素子分離領域との境界から中央部に向かって高さが高くなり且つ曲率半径が大きくなる形状になるまで、前記洗浄する工程を複数回繰り返し行う、第4態様又は第5態様の半導体装置の製造方法である。
本開示の第7態様は、前記段差部が面取りされて形成される面取り部が、前記素子分離領域の幅方向に沿った断面において、前記素子分離領域との境界から中央部に向かって高さが高くなり且つ曲率半径が大きくなり、前記曲率半径が無限大になる斜面を含む形状になるまで、前記洗浄する工程を複数回繰り返し行う、第4態様又は第5態様の半導体装置の製造方法である。
本開示の第8態様は、前記第1洗浄が、前記第1洗浄液として希フッ酸を用いるDHF洗浄であり、前記第2洗浄が、前記第2洗浄液として塩酸、過酸化水素水、及び水の混合物を用いるHPM洗浄である、第4態様から第7態様までのいずれか1つの半導体装置の製造方法である。
本開示の第9態様は、前記洗浄する工程の終了後に、前記素子分離領域上と、前記第2洗浄により自然酸化膜が形成された前記素子形成領域上とに、絶縁酸化膜と形成する工程をさらに含む、第4態様から第8態様までのいずれか1つの半導体装置の製造方法である。
【符号の説明】
【0046】
10 シリコン基板
12 酸化シリコン
14 素子形成領域
14E 端部
14R 面取り部
14T 平坦部
16 トランジスタ
18 ウェル
20 ゲート電極
22 チャネル領域
24 ソース領域
26 ドレイン領域
28 ゲート絶縁膜
30 絶縁酸化膜(酸化膜)
32 ケミカル酸化膜
50 パッド酸化膜
52 シリコン窒化膜
54 素子分離溝
56 犠牲酸化膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6