IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 田中貴金属工業株式会社の特許一覧

特開2024-135328生体適合性の金属表面を有する三次元細胞培養足場の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135328
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】生体適合性の金属表面を有する三次元細胞培養足場の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240927BHJP
   C23C 18/42 20060101ALI20240927BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240927BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20240927BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALN20240927BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C23C18/42
C12M1/00 A
C12N5/071
C12N5/07
C12N5/0775
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045955
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(72)【発明者】
【氏名】関根 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】黒田 龍郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 大晶
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4K022
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC08
4B065AA93X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BC41
4B065CA44
4B065CA46
4K022AA13
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA03
4K022CA06
4K022DA01
(57)【要約】
【課題】生体適合性の金属表面を有する三次元細胞培養足場の製造方法を提供する。
【解決手段】生体適合性の金属表面を有する細胞培養足場の製造方法は、(a)光ラジカル硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂と、酸触媒とを含む樹脂液を造形する造形工程、(b)仕上げ光硬化工程、(c)熱硬化工程、(d)生体適合性の金属ナノ粒子を造形物表面に担持させる触媒担持工程、及び(e)無電解めっきを施すめっき工程、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(e)の工程を含む、生体適合性の金属表面を有する細胞培養足場の製造方法:
(a)光ラジカル硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂と、酸触媒とを含み、熱硬化性樹脂として、メラミン系架橋剤又はベンゾグアナミン系架橋剤を含み、更に、前記熱硬化性樹脂を3重量%以上60重量%以下含む樹脂液を用いて造形し、第一造形物を得る造形工程、
(b)前記第一造形物に波長300nm以上の光を照射して光硬化させて第二造形物を得る仕上げ光硬化工程、
(c)前記第二造形物を60℃以上280℃以下に加熱して熱硬化させて第三造形物を得る熱硬化工程、
(d)生体適合性の金属ナノ粒子及び水を含む無電解めっき用前処理液を前記第三造形物の表面に接触させて前記金属ナノ粒子を前記第三造形物の表面に担持し、触媒担持領域を形成する触媒担持工程、及び
(e)前記触媒担持領域に無電解めっきを施し金属表面を有する細胞培養足場を得るめっき工程
【請求項2】
前記工程(e)の後に、さらに下記(f)の工程を含む、請求項1に記載の細胞培養足場の製造方法:
(f)前記細胞培養足場の表面の一部または全部をコーティング剤により修飾し、細胞の生命現象を足場上で制御する領域を形成する表面修飾工程
【請求項3】
前記金属ナノ粒子が金、白金、又はパラジウムのナノ粒子である、請求項1に記載の細胞培養足場の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)の造形が、3Dプリンタによる造形である、請求項1に記載の細胞培養足場の製造方法。
【請求項5】
前記光ラジカル硬化性樹脂として、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項1に記載の細胞培養足場の製造方法。
【請求項6】
前記メラミン系架橋剤として、メチロールメラミン又はメチロールメラミン誘導体を含む請求項1に記載の細胞培養足場の製造方法。
【請求項7】
前記ベンゾグアナミン系架橋剤として、メチロールベンゾグアナミン又はメチロールベンゾグアナミン誘導体を含む請求項1に記載の細胞培養足場の製造方法。
【請求項8】
前記酸触媒として、スルホン酸系酸触媒又はリン酸系酸触媒を含む、請求項1に記載の細胞培養足場の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の製造方法により製造された金属表面を有する細胞培養足場の上で細胞を培養する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性の金属表面を有する三次元細胞培養足場の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養のための足場基材は様々な用途において重要な要素である。とりわけ再生医療などの分野では臓器の形状を再現するために立体的な構造をもつ三次元細胞培養足場が求められている。
特許文献1には、生体細胞によってコロニー形成される生体適合性ポリマーからなる3Dスキャフォールドが開示されている。生体適合性のポリマーをステレオリソグラフィ3D印刷法により構築することで製造される。
【0003】
また、細胞培養のための足場基材の表面を修飾し、細胞の接着、増殖、分化及び移動等に代表される細胞の生命現象を足場上で制御する方法が知られている。
非特許文献2には、チタン表面にインスリン様成長因子(IGF)-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)をチタン表面に結合することで、MC3T3-E1細胞(マウス頭蓋冠由来)の骨芽細胞誘導の分化誘導効果の増加が確認されたことが記載されている。
非特許文献3には、金基板の表面にアルカンチオールの自己組織化単分子膜(SAM)を形成し、SAMに合成ペプチドPA22-2を固定することで、神経細胞の金表面への接着及び伸展が促進されたことが記載されている。
【0004】
金属表面は修飾が容易であり、細胞の生命現象を足場上で制御するために金属表面を有する細胞足場が求められる。金属表面を有し、かつ三次元構造を有する細胞培養足場の例は少ない。
非特許引用文献1には、生体適合性無電解めっきを利用して立体構造の表面をめっきする方法が記載されている。有機基板の表面を光露光により改質し、生体適合性の無電解めっきを行うことで生体適合性の金属表面を形成する方法が記載されている。
本出願の出願日には未公開である特許文献2には、金属の立体的な構造体を含む造形物の製造に適した樹脂液及び造形物形成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2022-548423号公報
【特許文献2】特願2022-125909号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】コルドニエ クリス、外4名、「生体適合性無電解金めっきの研究」、表面技術、一般社団法人表面技術協会、2019年、第70巻、第9号、p.461-465
【非特許文献2】多田誠一、外11名、“さまざまな材料表面を生理活性に 人工合成した接着性成長因子”、[online]、2021年7月1日、東京工業大学、[2023年3月22日検索]、インターネット<URL:https://www.titech.ac.jp/news/2021/061252>
【非特許文献3】"Chemical and Biological Characterization of Thiol SAMs for Neuronal Cell Attachment", Langmuir, (米), 2009, 25(8), p.4564-4570
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
修飾が容易な生体適合性の金属表面を有する三次元細胞培養足場が求められている。
特許文献1に記載されるような樹脂の構築物は、一般的なめっき方法である電解めっきではめっきすることができず、金属表面を形成することができない。非特許文献1に記載の無電解めっき方法では、有機基板のめっきする表面を光露光により改質する工程を含んでおり、3Dプリンタから出力されるような複雑な立体構造の内側を十分にめっきすることは困難である。
本発明の目的は、三次元プリンタを用いて造形した造形物の表面を無電解めっきする方法を提供し、生体適合性の金属表面を有する三次元細胞培養足場を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施形態は下記(a)~(e)の工程を含む、金属表面を有する細胞培養足場の製造方法である:
(a)光ラジカル硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂と、酸触媒とを含み、熱硬化性樹脂として、メラミン系架橋剤又はベンゾグアナミン系架橋剤を含み、更に、前記熱硬化性樹脂を3重量%以上60重量%以下含む樹脂液を用いて造形し、第一造形物を得る造形工程、
(b)前記第一造形物に波長300nm以上の光を照射して光硬化させて第二造形物を得る仕上げ光硬化工程、
(c)前記第二造形物を60℃以上280℃以下に加熱して熱硬化させて第三造形物を得る熱硬化工程、
(d)生体適合性の金属ナノ粒子及び水を含む無電解めっき用前処理液を前記第三造形物の表面に接触させて前記金属ナノ粒子を前記第三造形物の表面に担持し、触媒担持領域を形成する触媒担持工程、及び
(e)前記触媒担持領域に無電解めっきを施し金属表面を有する細胞培養足場を得るめっき工程
【0009】
本発明の一つの実施形態は、工程(e)の後に、さらに下記(f)の工程を含む、請求項1に記載の細胞培養足場の製造方法である:
(f)前記細胞培養足場の表面の一部をコーティング剤により修飾し、細胞の生命現象を足場上で制御する領域を形成する表面修飾工程
【発明の効果】
【0010】
本発明は、生体適合性の金属表面を有する細胞培養足場の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、化学的、構造的に安定し機械的強度に優れた細胞培養足場を製造できる。また、細胞培養足場が金属表面を有することにより、電気伝導性を有し、表面の処理が容易になる。本発明の製造方法では3Dプリンタ等により三次元構造を有する細胞培養足場を製造できるため、機械的強度を維持したまま高度な寸法制御を行った細胞培養足場を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施例2で造形した三次元足場のCAD設計図である。
図2A図2Aは、本発明の実施例2で造形した三次元金表面足場の実体顕微鏡による正面図である。
図2B図2Bは、本発明の実施例2で造形した三次元金表面足場の実体顕微鏡による側面図である。
図2C図2Cは、本発明の実施例2で造形した三次元金表面足場の実体顕微鏡による断面図である。微細な内部構造を含む三次元造形物の全表面が金めっきされていることを示している。
図3図3は、試験例1で組織培養プレート(TCP)及び実施例1で造形した二次元金表面足場上に培養した細胞の細胞数測定結果の推移を表すグラフである。対照と本発明の二次元金表面足場の間で細胞数に有意な差は見られなかった。本発明の金属表面足場に細胞毒性は確認されず、公知の組織培養基材の表面と同等の生体適合性を有することを示すグラフである。
図4A図4Aは、試験例1で組織培養プレート(TCP)上に培養した細胞の3日目の位相差顕微鏡像である。
図4B図4Bは、試験例1で組織培養プレート(TCP)上に培養した細胞の3日目の染色後の顕微鏡像である。
図5A図5Aは、試験例1で、実施例1で造形した二次元金表面足場に培養した細胞の3日目の位相差顕微鏡像である。対照の図4Aと同等の細胞数が観察された。
図5B図5Bは、試験例1で、実施例1で造形した二次元金表面足場に培養した細胞の3日目の染色後の顕微鏡像である。対照の図4Bと同等の細胞数が観察された。また、対照と同じく死細胞は観察されなかった。
図6図6は、試験例1で、実施例2で造形した三次元金表面足場上に培養した細胞の細胞数測定結果の推移を表すグラフである。3Dプリンタによって構造が制御された本発明の三次元金表面足場で細胞培養に成功したことを示している。
図7A図7Aは、試験例1で、実施例2で造形した三次元金表面足場上に培養した細胞の11日目の位相差顕微鏡像である。図1の0.80mm×0.80mmの空孔を正面から撮影した図である。位相差顕微鏡像は3Dプリンタによって構造が制御された本発明の三次元金表面足場の内側で細胞培養に成功したことを示している。
図7B図7Bは、試験例1で、実施例2で造形した三次元金表面足場上に培養した細胞の11日目の細胞核染色後の蛍光顕微鏡像である。図1の0.80mm×0.80mmの空孔を正面から撮影した図である。細胞核染色後の蛍光顕微鏡像は3Dプリンタによって構造が制御された本発明の三次元金表面足場の内側で三次元的な細胞培養に成功したことを示している。
図7C図7Cは、図7A及び図7Bを重ね合わせた図である。
図8図8は、試験例1で、実施例2で造形したPEG-SH修飾なしの足場及び実施例3で造形し修飾したPEG-SH修飾ありの足場の上に培養した細胞の細胞数測定結果を表すグラフである。表面に細胞非接着性の修飾を行うことで細胞の接着と増殖が行われなくなることを示しており、本発明の三次元金属表面足場の表面を修飾することで細胞培養の状態を制御できることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る細胞培養足場の形成方法について説明する。
【0013】
本実施形態に係る細胞培養足場の形成方法は、樹脂液を用いて造形し、第一造形物を得る造形工程と、第一造形物に波長300nm以上の光を照射して光硬化させて第二造形物を得る仕上げ光硬化工程と第二造形物を60℃以上280℃以下に加熱して熱硬化させて第三造形物を得る熱硬化工程と、第三造形物の表面に無電解めっき用前処理液を接触させて第三造形物の表面に金属ナノ粒子を担持させ触媒担持領域を形成する触媒担持工程と、触媒担持領域に無電解めっきを施し金属表面を有する細胞培養足場を得るめっき工程とを含む。
一つの実施形態では、触媒担持工程の前にパターン形成工程を含んでもよい。
一つの実施形態では、めっき工程の後に金属表面の一部または全部をコーティング剤により修飾する表面修飾工程を含んでもよい。
【0014】
本実施形態に使用する樹脂液は、光ラジカル硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂と、酸触媒とを含む。この樹脂液は、熱硬化性樹脂として、メラミン系架橋剤又はベンゾグアナミン系架橋剤を含む。この樹脂液は、熱硬化性樹脂を3重量%以上60重量%以下含む。
【0015】
本実施形態に係る細胞培養足場形成方法によれば、金属の立体的な構造体を含む細胞培養足場の製造方法を提供することができる。すなわち、樹脂液を用いて造形した第一造形物は、立体的構造を長期間維持又は形状を壊さずに取り扱える程度に十分な固さを有しない場合があるが、樹脂液が光ラジカル硬化性樹脂を含むため、光硬化工程により、立体的構造を維持する程度に十分な固さを有する第二造形物になる。更に、樹脂液が熱硬化性樹脂と酸触媒とを含むことで、熱硬化工程により、第二造形物は完全に硬化し、且つ、無電解めっきを行うための触媒を担持するためのアミノ基をその造形物表面に有する第三造形物となる。さらに第三造形物に無電解めっきを行うことにより、金属表面を有する細胞培養足場を得ることができるのである。
【0016】
以下、金属表面を有する細胞培養足場の形成方法について詳述する。
【0017】
本実施形態に使用する樹脂液は、光ラジカル硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂と、酸触媒とを含み、更にフィラー、顔料及びその他の添加剤を含み得る。
【0018】
フィラー、顔料及びその他の添加剤は、本実施形態の目的を損なう程度に光ラジカル硬化及び熱硬化を阻害するものではなく、また、本実施形態の目的を損なう程度に熱硬化性樹脂のアミノ基を失活させるものでなければ、特に制限なく使用可能である。
【0019】
光ラジカル硬化性樹脂は、硬化反応によって、金属の立体的な構造体を保持する支持体となる造形物を構築する材料である。本実施形態において、光ラジカル硬化性樹脂との概念には、樹脂としては分子量が比較的小さいもの、具体的には、光ラジカル硬化性樹脂となり得るプレポリマ又はモノマーを含む。重量平均分子量は、好ましくは150以上20000以下である。
【0020】
光ラジカル硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0021】
光ラジカル硬化性樹脂には、光重合開始剤が含まれていることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合剤、チオキサントン系、分子内水素引き抜き型光重合開始剤等を用いる事が出来る。
【0022】
熱硬化性樹脂としては、アルキル化アミノ樹脂、具体的には、メラミン系架橋剤又はベンゾグアナミン系架橋剤を含み得る。
【0023】
メラミン系架橋剤としては、メチロールメラミン又はメチロールメラミン誘導体が含まれる。メラミン系架橋剤としては、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体、メチロールメラミンに低級アルコールを反応させて部分的もしくは完全にエーテル化した化合物又はこれらの混合物などを用いることができる。低級アルコールとしては、炭素数1から4の脂肪族アルコールが挙げられる。また、メラミン系架橋剤としては単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでも良く、これらの混合物でもよい。単量体であれば、ヘキサメトキシメチルメラミンが好ましく用いられる。多量体からなる縮合物は、具体的には、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂等が挙げられる。
【0024】
ベンゾグアナミン系架橋剤としては、メチロールベンゾグアナミン又はメチロールベンゾグアナミン誘導体が含まれる。ベンゾグアナミン系架橋剤としては、ベンゾグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化ベンゾグアナミン誘導体、メチロールベンゾグアナミンに低級アルコールを反応させて部分的もしくは完全にエーテル化した化合物又はこれらの混合物などを用いることができる。低級アルコールとしては、炭素数1~4の脂肪族アルコールが挙げられる。また、ベンゾグアナミン系架橋剤としては単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでも良く、これらの混合物でもよい。単量体であれば、テトラメトキシメチルベンゾグアナミンが好ましく用いられる。多量体からなる縮合物は、具体的には、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂、メチロールベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
【0025】
ベンゾグアナミン系架橋剤は、メラミン系架橋剤と共に用いてよい。
【0026】
酸触媒としては、スルホン酸系酸触媒又はリン酸系触媒を用いることができる。例えば、ジノニルナフタレンジスルホン酸触媒、ジノニルナフタレンスルホン酸触媒、p-トルエンスルホン酸又はこれらのブロック酸触媒及びリン酸のブロック酸触媒を用いる事が出来る。
【0027】
本実施形態に使用する樹脂液は、上述のごとく、光ラジカル硬化性樹脂を含む。これにより、第二造形物が、光硬化工程により硬化可能となる。
【0028】
本実施形態に使用する樹脂液は、溶媒を除いた質量比において、光ラジカル硬化性樹脂を、40%以上97%以下含み、好ましくは、50%以上95%以下含む。これにより、第二造形物が、光硬化工程により、立体的構造を維持する程度に十分適切な固さを有するものになる。
【0029】
本実施形態に使用する樹脂液がメラミン系架橋剤又はベンゾグアナミン系架橋剤を含む熱硬化性樹脂と酸触媒とを含むことで、熱硬化工程により、第二造形物は完全に硬化し、且つ、無電解めっきを行うための触媒を担持するためのアミノ基をその造形物表面に有する第三造形物となる。
【0030】
本実施形態に使用する樹脂液は、溶媒を除いた質量比において、熱硬化性樹脂を、3%以上60%以下含み、好ましくは、5%以上50%以下含む。これにより、第三造形物が、熱硬化工程により、金属の立体的な構造体として適切な強度を有するものになる。
【0031】
本実施形態に使用する樹脂液は、粘度調整などの目的で、必要に応じて溶媒を含んでもよい。
【0032】
本実施形態に係る細胞培養足場の製造方法は、上述のごとく、第一造形物を得る造形工程、第一造形物から第二造形物を得る仕上げ光硬化工程、第二造形物から第三造形物を得る熱硬化工程、第三造形物の表面に無電解めっき用前処理液を接触させて第三造形物の表面に金属ナノ粒子を担持させ触媒担持領域を形成する触媒担持工程、及び、触媒担持領域に無電解めっきを施し金属表面を有する細胞培養足場を得るめっき工程、を含む。
【0033】
造形工程は、樹脂液から、金属の立体的な構造体を含む造形物に対応する形状の第一造形物を得る工程である。
【0034】
造形工程は、いわゆる3Dプリンタにより行える。3Dプリンタの方法としては、例えば、樹脂液に点状の紫外光などの光を照射して、土台から少しずつ樹脂を固めて積み重ねる事で立体形状を構築するSLA(Stereolithography Apparatus)方式、樹脂液に面状の紫外光などの光を照射して、土台から樹脂を固めて積み重ねる事で立体形状を構築するDPL(Digital Light Projector)方式、樹脂液を複数のノズルから噴射し、紫外光などの光を照射して硬化させながら積み重ねる事で立体形状を構築するMJ(Material Jetting)方式(インクジェット方式ともいわれる)を採用しうる。
【0035】
第一造形物は、立体的構造を長期間維持又は形状を壊さずに取り扱える程度に十分な固さを有しなくてもよく、光硬化工程に供することができる程度の強度を有していればよい。
【0036】
造形工程において、樹脂液を光硬化させるために用いる光の波長は、300nm以上450nm以下、好ましくは、350nm以上410nm以下の紫外光である。300nm以上の波長の光を用いて樹脂液を光硬化させることで、無電解めっきを行うための触媒を担持するためのアミノ基の失活を抑制することができる。
【0037】
第一造形物は、仕上げ光硬化工程により仕上げ硬化されて、立体的構造を長期間維持又は形状を壊さずに取り扱える程度に十分な固さを有する第二造形物とされる。
【0038】
仕上げ光硬化工程では、300nm以上450nm以下、好ましくは、350nm以上 410nm以下の紫外光を第一造形物に照射する。これにより、第一造形物を硬化させつつも無電解めっきを行うための触媒を担持するためのアミノ基の失活を抑制することができる。
【0039】
第二造形物は、熱硬化工程により熱硬化されて完全に硬化し、且つ、無電解めっきを行うための触媒を担持するためのアミノ基をその造形物表面に有する第三造形物とされる。熱硬化工程では、60℃以上280℃以下に加熱して第二造形物を熱硬化させる。熱硬化工程における加熱温度は、低すぎる場合は熱硬化に要する時間が長くなりすぎる場合があり、高すぎる場合は、第三造形物の構成成分の何れかが変質又は劣化してしまう場合がある。熱硬化に要する時間が長くなってもよい場合は、60℃以下の加熱温度を採用しても構わない。また、第三造形物の構成成分の何れかが変質又は劣化しない場合は、280℃以上の加熱温度を採用しても構わない。なお、多くのケースでは、80℃以上150℃以下の加熱温度が好適である。
【0040】
第三造形物は、その後、金属ナノ粒子をその表面に担持した触媒担持領域を形成する触媒担持工程に供される。触媒担持領域には容易に還元型無電解めっきを施すめっき工程を行えるようになる。第三造形物は、後述するように、金属の立体的な構造体を含む造形物の製造に適した基材となる。
【0041】
一つの実施形態では、所望により、触媒担持工程の前にパターン形成工程を行うことができる。触媒担持工程では、第三造形物の表面に存在するアミノ基に金属ナノ粒子が吸着されて担持される。そこで、触媒担持工程の前に、第三造形物の表面にアミノ基を失活させた領域と、アミノ基が失活されず温存される領域とを形成することで、触媒担持工程において、アミノ基が失活されず温存される領域にのみへの金属ナノ粒子の担持を実現することができる。すなわち、アミノ基が失活されず温存される領域にのみへの無電解めっきを実現することができる。
【0042】
パターン形成工程は、第三造形物の表面にアミノ基を失活させた領域と、アミノ基が失活されず温存される領域とを形成する方法を実現する工程であり、一例として、第三造形物の表面の一部に波長300nm未満の光(深紫外光)を照射して、波長300nm未満の光が照射された照射領域と、波長300nm未満の光が照射されていない非照射領域とを形成する、光照射によるパターン形成工程が挙げられる。
【0043】
光照射によるパターン形成工程では、第三造形物の表面の一部に波長300nm未満の光を照射すること(すなわち、波長300nm未満の光の部分的な照射を行うこと)で、第三造形物の表面にアミノ基を失活させた領域を形成することができる。なお、第三造形物の表面において、非照射領域は、アミノ基が失活されず温存される領域となる。
【0044】
パターン形成工程のように、アミノ基を失活させた領域と、アミノ基が失活されず温存される領域とを形成することで、めっき工程においてめっき部分すなわち、金属の立体的な構造体の形状を描くことができる。すなわち、パターン形成工程、触媒担持工程及びめっき工程により、第三造形物を基材として、金属の立体的な構造体を構築することができるのである。
【0045】
パターン形成工程において、波長300nm未満の光の部分的な照射には、石英マスクまたはメタルマスク等のフォトマスクを用いてもよいし、深紫外光レーザーによる部分的な照射を行ってもよい。
【0046】
触媒担持工程において用いられる無電解めっき用前処理液は、生体適合性を示す無電解めっき用前処理液であり、好ましくは還元型無電解めっきの触媒となる金属ナノ粒子を含有したコロイド溶液である。無電解めっき用前処理液は、周期律表のIB族またはVIIIB族の金属ナノ粒子、糖アルコールおよび水とからなる無電解めっき用前処理液であることが好ましい。
【0047】
無電解めっき用前処理液は、pH=6.5以上8.0以下、ゼータ電位=-50mV以上-80mV以下であることが好ましい。無電解めっき用前処理液において、金属ナノ粒子は、平均粒径=10nm以上40nm以下で、金属濃度=50mg/L以上200mg/L以下であることがこのましい。また、無電解めっき用前処理液において、糖アルコール濃度は0.05g/L以上1.0g/L以下であることが好ましい。
【0048】
金属ナノ粒子は、周期律表のIB族またはVIIIB族の元素のナノ粒子である。具体的には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)及び鉄(Fe)である。これらの金属は糖アルコールによって安定したコロイド状態で液中に分散することができる。特に、金属ナノ粒子は、生体に有害な元素を含まない生体適合性を示す金属ナノ粒子であることが好ましく、金(Au)、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)のコロイドナノ粒子であることが好ましい。
【0049】
糖アルコールは、トリトール、テトリトール、ペンチトール、ヘキシトール、ヘプチトール、オクチトール、イノシトール、クエルシトール、ペンタエリスリトールからなる群のうちの少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0050】
また、好ましい組み合わせは次のとおりである。コロイドナノ粒子が白金(Pt)ナノ粒子であり、かつ、糖アルコールがグリセリン、エリスリトール、キシリトール、イノシトールまたはペンタエリスリトールのうちの少なくとも1種以上であることが好ましい。また、コロイドナノ粒子がパラジウム(Pd)であり、かつ、糖アルコールがグリセリン、エリスリトール、キシリトールまたはマンニトールのうちの少なくとも1種以上であることが好ましい。また、コロイドナノ粒子が金(Au)であり、かつ、糖アルコールがグリセリン、エリスリトール、キシリトール、マンニトールまたはペンタエリスリトールのうちの少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0051】
触媒担持工程では、無電解めっき用前処理液に第三造形物を浸漬するなどして、無電解めっき用前処理液に第三造形物を接触させればよい。これにより、アミノ基が失活されず温存される領域、すなわち、非照射領域に金属ナノ粒子が吸着して担持される。
【0052】
めっき工程では、金属ナノ粒子が表面に吸着した第三造形物を、還元型無電解めっき液に浸漬する。これにより金属ナノ粒子が無電解めっき反応の触媒となり、無電解めっき反応が進行して非照射領域に金属膜が形成される。このようにして、第三造形物の表面形状に沿って形成された金属の立体的な構造体を含む造形物を構築することができる。
還元型無電解めっき液は公知の任意のめっき液を使用でき、例えばEEJA社の製品名:AC FAB Au-ACG3000WXが挙げられる。
【0053】
一つの実施形態では、所望により、めっき工程の後に金属表面の一部または全部をコーティング剤により修飾し、細胞の生命現象を足場上で制御する領域を形成する表面修飾工程を行っても良い。コーティング剤により修飾された金属表面では細胞の接着、増殖、分化及び移動等に代表される細胞の生命活動が制御され、細胞培養足場上の細胞状態を制御することができる。コーティング剤は、所望の細胞状態に応じて公知の化合物を任意に選択できる。表面修飾の例としては、非特許文献2及び非特許文献3に記載の例が挙げられる。
一例として、コーティング剤は、細胞非接着性の化合物を含み、金属表面に結合するための置換基を含む剤である。細胞非接着性の化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)及びその誘導体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びその誘導体、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及びその誘導体、並びにアルブミン等の細胞非接着性タンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属表面に結合するための置換基は、金属に合わせて公知の置換基から自由に選択できるが、例えば、チオール基(-SH)、ヒドロキシ基(-OH)、ヒドロキシカルボニル基(-COOH)、アミノ基(-NH)が挙げられる。好ましくは、コーティング剤はPEG-SHである。
【実施例0054】
以下では、実施例により本実施形態に係る製造方法を説明する。なお、以下の説明において、単に「%」と記載する場合は、「重量%」を意味する。
【0055】
(実施例1) 二次元金めっき足場の製造
既製の光ラジカル硬化型光硬化性樹脂液(製品名:Clear Resin、formlabs製、主成分としてメタクリレートモノマー15~25%、ウレタンアクリレート55~75%、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を0.9%含む)を90%、メチロールメラミン架橋剤(製品名:CYMEL303LF、Allnex製、主成分として、アルキル化メラミンを99%以上含む)を9%、スルホン酸系の酸触媒(製品名:CYCAT4040、Allnex製、主成分として、p-トルエンスルホン酸40%、イソプロパノールを54%含む)を1%含む、造形物形成用の樹脂液を調製した。なお、この樹脂液において、光ラジカル硬化型光硬化性樹脂は89%、熱硬化性樹脂は10%である。また、酸触媒は1%である。
【0056】
直径8mmの孔を打ち抜いたシリコーンシートをスライドガラスに貼り付け、孔に調製した造形物形成用の樹脂液を流し込み、波長405nmの紫外光で硬化し、スライドガラス、シリコーンシートから硬化した円柱状樹脂を剥離し、第一造形物を得た。
【0057】
第一造形物をエタノールで洗浄した後、中心波長405nmの光(ただし、波長300nm未満の光は含まない)を照射して、二次硬化させ、第二造形物を得た。
【0058】
さらに、内部の雰囲気温度を100℃とした大気下オーブンに仕込んで加熱した。オーブン内での加熱時間(オーブン内での保持時間)は10分間とした。これにより、第二造形物を熱硬化させて、第三造形物を得た。
【0059】
次に、第三造形物を、無電解めっき用前処理液としての無電解めっき用金ナノ粒子触媒コロイド溶液(製品名:シードキャット CAT-Au10、EEJA製)に浸漬させて還元型無電解めっきの前処理を行った。前処理時の無電解めっき用前処理液の温度は25℃とした。前処理時の無電解めっき用前処理液への浸漬時間は15分間とした。
【0060】
この前処理により、表面には粒径約20nmの金ナノ粒子触媒が均一に吸着して担持された。次に、還元型の無電解金めっき液(製品名:AC FAB Au-ACG3000WX、EEJA製)に浸漬させて、還元型無電解めっき処理を行い、目的の円柱状の二次元金めっき足場を得た。
【0061】
(実施例2) 三次元金めっき足場の製造
既製の光ラジカル硬化型光硬化性樹脂液(製品名:Clear Resin、formlabs製、主成分としてメタクリレートモノマー15~25%、ウレタンアクリレート55~75%、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を0.9%含む)を90%、メチロールメラミン架橋剤(製品名:CYMEL303LF、Allnex製、主成分として、アルキル化メラミンを99%以上含む)を9%、スルホン酸系の酸触媒(製品名:CYCAT4040、Allnex製、主成分として、p-トルエンスルホン酸40%、イソプロパノールを54%含む)を1%含む、造形物形成用の樹脂液を調製した。なお、この樹脂液において、光ラジカル硬化型光硬化性樹脂は89%、熱硬化性樹脂は10%である。また、酸触媒は1%である。
【0062】
この樹脂液を、SLA方式光造形3Dプリンタ(製品名:Form2、formlabs製)に投入し、三次元造形して、格子状の面を6面有する格子状の第一造形物を得た。三次元造形に用いたCAD設計図を図1に示す。三次元造形時に用いた光硬化用の光は、中心波長が405nmの紫外光及び青紫光であり、波長300nm未満の光は含まない。
【0063】
第一造形物は、エタノールで洗浄した後、中心波長405nmの光(ただし、波長300nm未満の光は含まない)を照射して、二次硬化させ、第二造形物を得た。
【0064】
さらに、内部の雰囲気温度を100℃とした大気下オーブンに仕込んで加熱し熱硬化を行った。オーブン内での加熱時間(オーブン内での保持時間)は10分間とした。これにより、第二造形物を熱硬化させて、第三造形物を得た。
【0065】
次に、無電解めっき用前処理液としての無電解めっき用金ナノ粒子触媒コロイド溶液(製品名:シードキャット CAT-Au10、EEJA製)に浸漬させて還元型無電解めっきの前処理を行った。前処理時の無電解めっき用前処理液の温度は25℃とした。前処理時の無電解めっき用前処理液への浸漬時間は15分間とした。この前処理により、造形物の表面には粒径約20nmの金ナノ粒子触媒が均一に吸着して担持された。次に、前処理後の造形物を、還元型の無電解金めっき液(製品名:AC FAB Au-ACG3000WX、EEJA製)に浸漬させて、還元型無電解めっき処理を行い、目的の三次元金めっき足場を得た。めっき処理時の無電解金めっき液の温度は65℃とした。めっき処理時の無電解金めっき液への造形物の浸漬時間は20分間とした。
【0066】
得られた三次元金めっき足場の実体顕微鏡の正面図、側面図、及び断面図を図2A図2Cに示す。いずれも足場の表面全体に金色の金属光沢が見られ、微細な内部構造を含む三次元造形物の全表面が金めっきされていることが確認できた。
【0067】
(実施例3) コーティングされた金めっき足場の製造
実施例2の三次元金めっき足場を70%エタノール、及び脱水エタノールで洗浄後、脱水エタノールで希釈した2mMのPEG-SH(平均分子量5000)溶液に浸漬し、4℃で1昼夜保持した。浸漬後、純水による洗浄を行い、PEG-SHでコーティングされた金めっき足場を得た。
【0068】
(試験例1)
[細胞培養]
実施例1~3の金めっき足場及び対照としての組織培養プレート(Tissue Culture Plate, TCP)足場を、それぞれ足場の清浄化後、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞を5,000 cells/cmとなるよう播種し、COインキュベーター内で培養を行った(37℃、CO濃度5.0%)。培地交換は播種1日後を最初に2日おきに実施した。所定の時間培養後、足場を回収した。
対照の組織培養プレート及び実施例1の金めっき足場で細胞培養した3日目の状態を位相差顕微鏡像で撮影した結果をそれぞれ図4A図5Aに示す。
実施例2の金めっき足場で細胞培養した11日目の状態を位相差顕微鏡像で撮影した結果を図7Aに示す。図7Aで撮影された写真は、図1の0.80mm×0.80mmの空孔に相当する部分を正面から撮影した写真である。
【0069】
[細胞数の測定]
培養後の足場をPBSで洗浄し、2mMのSDS溶液に浸漬し、一昼夜保持した。回収した溶液中のDNA量をHoechst 33288を用いて定量した。
対照の組織培養プレート及び実施例1の金めっき足場の細胞数の推移を図3に示す。実施例2の金めっき足場の細胞数の推移を図6に示す。実施例2及び実施例3の金めっき足場で細胞培養した細胞数の推移を図8に示す。
【0070】
[生/死細胞染色・位相差顕微鏡観察]
培養後の足場をPBSで洗浄し、CalceinとEthidium homodimer Iによる染色を実施した。その後、4%PFAによる固定化処理を実施しPBSで洗浄し、位相差蛍光顕微鏡で観察を行った。
対照の組織培養プレート及び実施例1の金めっき足場で細胞培養した3日目の状態を撮影した結果をそれぞれ図4B図5Bに示す。
【0071】
[細胞核染色・蛍光顕微鏡観察]
培養後の足場をPBSで洗浄し、4%PFAによる固定化処理を実施した。その後、1% BSAでブロッキング処理を行い、DAPIによる核の染色を実施した。染色後の足場をPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡で観察を行った。
実施例2の金めっき足場で細胞培養した11日目の細胞核染色後の蛍光顕微鏡像を図7Bに示す。図7Bで撮影された写真は、図1の0.80mm×0.80mmの空孔に相当する部分を正面から撮影した写真である。
【0072】
図3に示す通り、本発明の金属表面を有する細胞培養足場と公知の組織培養プレートとは、細胞培養後の細胞数に有意な差は見られなかった。図5A及び図5Bに示す本発明の金属表面を有する細胞培養足場上での細胞培養後の顕微鏡像も、図4A及び図4Bに示す対照の細胞培養後の顕微鏡像と有意な差は見られなかった。すなわち、本発明の金属表面を有する細胞培養足場は細胞毒性を有さず、生体適合性を有することが確認された。
また、本発明の金属表面を有する細胞培養足場の製造方法は、三次元プリンタ等により複雑な立体構造を造形することも可能であり、立体構造の内側の表面も十分に金属表面が形成される(図2A図2C参照)。本発明の金属表面を有する細胞培養足場は立体構造を有する造形物でも、細胞培養足場として利用可能である(図6、及び図7A図7C参照)。
また、本発明の金属表面を有する細胞培養足場は、表面の修飾が容易であり、PEG-SHなどの公知のコーティング剤によって金属表面を修飾することができ、表面の性質を任意に変更することができる(図8参照)。
【0073】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、再生医療等に有用な生体適合性の金属表面を有する三次元細胞培養足場の製造方法を提供できる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8