(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135381
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】生体情報表示装置、システム、生体情報表示方法及び生体情報表示プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/248 20210101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B5/248
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046033
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(71)【出願人】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】宮野 由貴
(72)【発明者】
【氏名】渡部 泰士
(72)【発明者】
【氏名】川端 茂▲徳▼
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA10
4C127BB05
4C127GG07
4C127GG13
4C127HH13
4C127HH16
(57)【要約】
【課題】生体信号の電流波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを直感的に把握可能にする。
【解決手段】生体情報表示装置は、計測された生体信号を含む生体信号波形を表示する波形表示部と、前記生体信号波形に含まれるノイズレベルを表す図形を前記生体信号波形のピークに対応する位置に表示するノイズレベル表示部と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測された生体信号を含む生体信号波形を表示する波形表示部と、
前記生体信号波形に含まれるノイズレベルを表す図形を前記生体信号波形のピークに対応する位置に表示するノイズレベル表示部と、
を有することを特徴とする生体情報表示装置。
【請求項2】
前記図形は、前記生体信号波形の時間軸に直交する、前記ノイズレベルに応じた長さの形状を有すること
を特徴とする請求項1に記載の生体情報表示装置。
【請求項3】
前記生体信号の計測時間のうちの指定された時間領域での前記ノイズレベルを算出するノイズレベル算出部を有し、
前記ノイズレベル表示部は、前記ノイズレベル算出部により算出された前記ノイズレベルを表す前記図形を表示すること
を特徴とする請求項1に記載の生体情報表示装置。
【請求項4】
前記ノイズレベル算出部は、前記時間領域における前記生体信号の二乗平均平方根、最大値と最小値との差、最大振幅、時間軸方向に隣り合い極性が異なるピーク値の差の最大値、又は、標準偏差を前記ノイズレベルとして算出すること
を特徴とする請求項3に記載の生体情報表示装置。
【請求項5】
前記ノイズレベル算出部は、算出した前記ノイズレベルをn倍し(nは1より大きい値)、n倍した前記ノイズレベルを前記ノイズレベル表示部に表示させること
を特徴とする請求項3に記載の生体情報表示装置。
【請求項6】
前記ノイズレベル表示部は、一端が前記ピークに位置し、他端が時間軸に沿って表示される基線側に延びる前記図形、又は、一端が前記基線に位置し、他端が前記ピーク側に延びる前記図形を表示すること
を特徴とする請求項5に記載の生体情報表示装置。
【請求項7】
前記波形表示部は、互いに異なる時刻に計測された複数の前記生体信号の各々を含む複数の前記生体信号波形のいずれかを表示し、
前記ノイズレベル算出部は、複数の前記生体信号について前記時間領域での前記ノイズレベルをそれぞれ算出し、
前記ノイズレベル表示部は、前記波形表示部により表示される前記生体信号波形の生成に使用される前記生体信号の前記時間領域での前記ノイズレベルを表す前記図形と、前記波形表示部により表示される前記生体信号波形を除く生体信号波形の生成に使用される前記生体信号の前記時間領域での前記ノイズレベルを表す前記図形と、を表示すること
を特徴とする請求項3に記載の生体情報表示装置。
【請求項8】
前記時間領域は、前記計測時間のうち、着目する前記生体信号が現れない時間に設定されること
を特徴とする請求項3に記載の生体情報表示装置。
【請求項9】
前記生体信号は、生体磁気信号、又は計測された生体磁気から算出された電流信号であること
を特徴とする請求項1に記載の生体情報表示装置。
【請求項10】
計測される前記生体信号は、生体の骨格筋由来の信号、心筋由来の信号、平滑筋由来の信号、又は神経由来の信号であること
を特徴とする請求項1に記載の生体情報表示装置。
【請求項11】
前記波形表示部は、複数の計測位置で計測された複数の前記生体信号の各々を含む複数の前記生体信号波形を表示し、予め設定された閾値以上の前記ノイズレベルに対応する前記生体信号波形の色を、前記閾値より小さい前記ノイズレベルに対応する前記生体信号波形の色と相違させること
を特徴とする請求項1に記載の生体情報表示装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の生体情報表示装置と、
生体磁気を計測して前記生体信号を生成する生体磁気計測装置と、
を有することを特徴とするシステム。
【請求項13】
計測された生体信号を含む生体信号波形を表示し、
前記生体信号波形に含まれるノイズレベルを表す図形を前記生体信号波形のピークに対応する位置に表示すること
を特徴とする生体情報表示方法。
【請求項14】
計測された生体信号を含む生体信号波形を表示する波形表示処理と、
前記生体信号波形に含まれるノイズレベルを表す図形を前記生体信号波形のピークに対応する位置に表示するノイズレベル表示処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする生体情報表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報表示装置、システム、生体情報表示方法及び生体情報表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体磁気の計測データから再構成される電流情報を用いて、複数の仮想電極での電流波形を表示画面に表示する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。加算平均することでランダムノイズが除去された心電図信号の波形を表示する場合に、表示画面において波形の表示領域の外側に設けられた領域に、心電図信号に含まれるノイズレベルを数値又はグラフで表示する手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、波形の表示領域の外側に設けられた領域にノイズレベルを表示する場合、計測データの波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを直感的に把握することが困難である。換言すれば、計測データの波形の大きさ(例えば、振幅)とノイズレベルの大きさとを直感的に比較することが困難である。
【0004】
開示の技術は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、生体信号の電流波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを直感的に把握可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態の生体情報表示装置は、計測された生体信号を含む生体信号波形を表示する波形表示部と、前記生体信号波形に含まれるノイズレベルを表す図形を前記生体信号波形のピークに対応する位置に表示するノイズレベル表示部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
生体信号の電流波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを直感的に把握可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る生体情報表示装置を含む生体情報計測装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】神経活動電流のモデルの一例を示す説明図である。
【
図3】生体の形態画像に重畳して表示される仮想電極と生体電流の一例を示す説明図である。
【
図4】
図1の表示装置に表示される電流波形とノイズレベルを表す図形との例を示す説明図である。
【
図5】表示装置に表示されるノイズレベルを表す図形の別の例を示す説明図である。
【
図6】
図4に示したノイズレベルの算出手法の例を示す説明図である。
【
図7】
図1のデータ処理装置により電流波形とノイズレベルを表す図形とを表示装置に表示する処理の一例を示すフロー図である。
【
図8】
図1のデータ処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態において表示装置に表示される電流波形とノイズレベルを表す図形との例を示す説明図である。
【
図10】表示装置に表示されるノイズレベルを表す図形の別の例を示す説明図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態において表示装置に表示される電流波形とノイズレベルを表す図形との例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る生体情報表示装置を含む生体情報計測装置の一例を示すブロック図である。例えば、
図1に示す生体情報計測装置100は、磁気センサ部10、信号取得部20、データ処理装置30、入力装置80及び表示装置90を有する。
【0010】
磁気センサ部10及び信号取得部20は、生体磁気計測装置の一例である。データ処理装置30は、PC(Personal Computer)やサーバ等のコンピュータであり、生体情報表示装置の一例である。生体磁気計測装置及び生体情報表示装置を含む生体情報計測装置100は、システムの一例である。表示装置90は、X線画像等の被検体の形態画像と生体信号の電流波形等とを表示可能である。電流波形は、生体信号波形の一例である。
【0011】
信号取得部20は、FLL(Flux Locked Loop)回路21、アナログ信号処理部22、AD(Analog-to-Digital)変換部23及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)24を有する。例えば、磁気センサ部10及び信号取得部20は、磁気を遮蔽するシールドルーム内に設置され、データ処理装置30、入力装置80及び表示装置90は、シールドルーム外に設置される。
【0012】
例えば、磁気センサ部10は、複数のSQUID(Superconducting QUantum Interference Device;超伝導量子干渉素子)磁気センサを含んでいる。なお、磁気センサ部10は、SQUID磁気センサに代えて、MR(Magneto Resistive)センサ又はOPAM(Optically Pumped Atomic Magnetometer)センサ等の他の方式の磁気センサを含んでもよい。
【0013】
磁気センサ部10により計測される生体信号は、生体の骨格筋由来の信号、心筋由来の信号、平滑筋由来の信号、又は神経由来の信号である。例えば、骨格筋は、手掌、前腕、上腕、大腿、下腿等の筋である。例えば、心筋は、心臓を構成する筋肉である。例えば、平滑筋は、胃の収縮や腸の蠕動運動を生み出す筋肉である。例えば、SQUID磁気センサにより胃などの平滑筋の磁場を計測する例は、非特許文献1に記載されている。SQUID磁気センサにより心筋の磁場を計測する例は、非特許文献2に記載されている。SQUID磁気センサにより骨格筋の磁場を計測する例は、非特許文献3に記載されている。
【0014】
例えば、神経由来の信号は、体表から刺激可能な神経から発生する。以下で説明する各実施形態は、SQUID磁気センサにより計測された骨格筋由来、心筋由来、平滑筋由来又は神経由来の生体信号から生成される電流波形について適用可能である。
【0015】
データ処理装置30は、入力制御部40、表示制御部50、動作制御部60及び記憶部70を有する。例えば、表示制御部50の機能は、データ処理装置30に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが実行する生体情報表示プログラムがハードウェアと協働して生体情報表示方法を実施することで実現される。
【0016】
生体情報計測装置100は、脳磁計(MEG:Magnetoencephalograph)、心磁計(MCG:Magnetocardiograph)又は脊磁計(MSG:Magnetospinograph)などとして使用される。なお、生体情報計測装置100は、脊髄以外の神経磁気又は筋肉磁気の計測に適用されてもよい。
【0017】
磁気センサ部10は、被検体が発生する磁気を計測し、計測した磁気を電圧として出力する。磁気センサ部10は、例えば、ベッドに横たわる被検体の磁気の計測部位に対向して設置される複数のSQUID磁気センサを有する。FLL回路21は、複数のSQUID磁気センサにより計測された非線形の磁気-電圧特性をそれぞれ線形化することで、ダイナミックレンジを向上させる。
【0018】
アナログ信号処理部22は、FLL回路21から出力される線形化されたアナログ信号を増幅し、増幅したアナログ信号のフィルタ処理等を実施する。AD変換部23は、フィルタ処理されたアナログ信号(磁気信号)をデジタル値に変換する。FPGA24は、AD変換部23によりデジタル化された磁気データのさらなるフィルタ処理や間引き処理等を実施してデータ処理装置30に転送する。
【0019】
データ処理装置30において、入力制御部40は、位置入力部41及び波形領域指定部42を有し、マウスやキーボード等の入力装置80を介してデータ処理装置30の操作者から入力される各種情報の入力処理を実施する。データ処理装置30の操作者は、後述する生体信号の電流波形の評価者でもよい。位置入力部41は、例えば、液晶ディルプレイ等の表示装置90に表示された被検体の形態画像上での仮想電極VE(
図3)の位置を受け付ける。
【0020】
波形領域指定部42は、例えば、入力装置80から受け付けたウィンドウ設定コマンドに基づいて、生体信号の電流波形を表示するウィンドウの座標等を示す情報を波形表示部52に指示する。波形表示部52は、表示装置90の表示画面において、指示された座標で囲まれる領域に生体信号の電流波形等を表示する。
【0021】
表示制御部50は、画像表示部51、波形表示部52及びノイズレベル表示部53を有し、表示装置90にX線画像、電流波形及びノイズレベル等を表示する制御を実施する。画像表示部51、波形表示部52及びノイズレベル表示部53の機能は、
図3等で説明される。なお、入力装置80及び表示装置90は、データ処理装置30に含まれてもよい。また、プリンタ等の出力装置が、データ処理装置30に接続されてもよい。
【0022】
動作制御部60は、経路生成部61、仮想電極生成部62、再構成解析部63、電流成分抽出部64及びノイズレベル算出部65を有する。経路生成部61、仮想電極生成部62、再構成解析部63、電流成分抽出部64及びノイズレベル算出部65の機能は、
図3等で説明される。
【0023】
記憶部70は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により実現され、生体磁気データ71、形態画像データ72、ノイズレベルデータ73及び各種の解析パラメータ74を記憶する領域を有する。生体磁気データ71は、磁気センサ部10で計測されて信号取得部20で処理された磁気の計測データを含む。形態画像データ72は、図示しないX線撮影装置で撮影されたX線画像データ及び磁気共鳴断層撮影装置で撮影されたMR(Magnetic Resonance)画像データの一方又は両方を含む。なお、以下では、X線画像データから生成される被検体のX線形態画像をX線画像と称し、MR画像データから生成される被検体の断面形態画像をMR画像と称する。
【0024】
ノイズレベルデータ73は、ノイズレベル算出部65で算出された仮想電極VE毎のノイズレベルを示す。解析パラメータ74は、信号取得部20に設けられるフィルタ(ハイパスフィルタ、ロウパスフィルタ)の設定値や、各種信号処理を実施する時間範囲、要素数等の生体磁気の計測に必要なパラメータと、生体情報表示方法の実施に必要なパラメータとを含む。また、解析パラメータ74は、後述するノイズレベルの算出時に使用する計算手法又は計算式等と、後述するノイズレベルを表す図形の図形データとを含んでもよい。
【0025】
図2は、神経活動電流のモデルの一例を示す説明図である。
図2は、図の上下方向に直線状に走行する神経の活動により電流が発生する様子を示しており、図の下側が末梢側であり、図の上側が中枢側である。例えば、末梢神経に電気刺激を与えることで、刺激が電流として神経軸索を下側から上側に向けて伝導される。
【0026】
このとき、図の上側(順方向)に流れる軸索内電流及び図の下側(逆方向)に流れる軸索内電流と、神経軸索外を流れ、脱分極点に帰ってくる電流成分である体積電流とが発生する。神経機能を詳細に評価するためには、神経軸索に沿って流れる軸索内電流と、体積電流によって神経軸索に垂直に流入する電流とを抽出して、表示装置90の画面等に視覚的に表示することが好ましい。
【0027】
図3は、生体の形態画像に重畳して表示される仮想電極と生体電流の一例を示す説明図である。仮想電極VEc,VEl,VEr及び生体電流は、
図1のデータ処理装置30により形態画像に重畳することができる。複数の仮想電極VEc、複数の仮想電極VEl及び複数の仮想電極VErは、複数の計測位置の一例である。以下では、仮想電極VEc,VEl,VErを区別なく説明する場合、仮想電極VEとも称する。
【0028】
ここで、仮想電極VEとは、被検体のX線画像やMR画像上に設定される仮想の電極であり、被検体の磁気の計測部位のうち、磁気データから電流成分を抽出(再構成)する電流抽出点(電流の観測対象点)を示す。なお、電流の抽出方法は、公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0029】
なお、
図3に示すX-Y面はSQUID磁気センサアレイの検知面と平行な面である。X方向はSQUID磁気センサアレイの配列方向であり、Y方向はX方向に直交する方向であり、Z方向はX-Y面に直交する方向であって、SQUID磁気センサアレイに向かう方向である。
図4に示す符号r
c,s
c,r
l,s
l,r
r,s
rは、以下の内容を示す。
【0030】
rc:軸索内電流取得位置=(xc,yc)
sc:rcにおける推定電流=(sxc,syc)
rl:左体積電流取得位置=(xl,yl)
sl:rlにおける推定電流=(sxl,syl)
rr:右体積電流取得位置=(xr,yr)
sr:rrにおける推定電流=(sxr,syr)
θ:神経軸索の角度(=X方向に対する神経軸索方向の角度)
【0031】
図3では、被検体の形態画像(X線画像)において、直線状に走行する神経経路(神経軸索)上に複数の仮想電極VEcが設置される。また、各仮想電極VEcにおいて神経軸索の両側(神経経路の直交方向)に、神経軸索外(左側と右側)の仮想電極VEl,VErが設置される。なお、
図3に示す形態画像の表示ウィンドウW1において、各仮想電極VEc,VEl,VErの周囲の矩形は、説明のために設けたものであり、実際の画面には表示されない。表示ウィンドウW1は、表示装置90の画面に表示される。
【0032】
図3では分かりにくいが、表示ウィンドウW1中の形態画像に重畳された複数の小さい矢印は、再構成により抽出された電流の向きを示しており、矢印の長さは電流強度を示している。なお、矢印において矢じりと反対側の端は、電流成分の抽出単位であるボクセルの位置を示す。また、等高線状の曲線は、電流強度が同じ位置を結ぶことで生成される電流強度分布線である。
【0033】
神経軸索を通る神経経路は、入力装置80を介して形態画像上で指定された複数の位置を位置入力部41が検出し、検出した複数の位置の座標を使用して経路生成部61が計算することで生成される。例えば、神経軸索の経路を示す位置は、データ処理装置30を操作する操作者が、形態画像中の神経を見ながら入力装置80から入力する。
【0034】
あるいは、神経軸索の経路は、形態画像中の神経の位置や走行方向等をデータ処理装置30が推論することで設定されてもよい。神経軸索の経路を推論により設定する場合、予め、経路が分かっている多数の形態画像を使用してディープラーニング等の機械学習が実施され、経路の設定用のニューラルネットワークが経路生成部61としてデータ処理装置30に構築される。経路の設定用のニューラルネットワークは、ネットワークを介してデータ処理装置30に接続されるクラウドに構築され、データ処理装置30により使用されてもよい。
【0035】
図1において、経路生成部61は、例えば、操作者が、表示装置90に表示された形態画像を見ながら指定した画像上の複数の位置の座標に基づいて、曲線(直線を含む)を生成することで神経経路等の経路を抽出する。経路生成部61は、抽出した経路を示す情報を仮想電極生成部62に通知する。ここで、抽出された経路は、複数の座標情報又は曲線を示す式等により表される。
【0036】
仮想電極生成部62は、経路生成部61から通知された経路上に、例えば、等間隔に複数の仮想電極VEcを生成する。経路上に生成される仮想電極VEcの間隔及び数は、入力装置80を介して操作者により指定され、入力制御部40により記憶部70に記憶される。仮想電極生成部62は、記憶部70に記憶された間隔及び数にしたがって、経路生成部61が生成した経路上に仮想電極VEcを生成する。
【0037】
また、仮想電極生成部62は、仮想電極VEcの両側に神経軸索外の仮想電極VEl(左側)と仮想電極VEr(右側)とを設定する。仮想電極生成部62は、設定した仮想電極VEc,VEl,VErの画像上での座標を記憶部70に記憶させる。
【0038】
仮想電極VEcから神経軸索外の仮想電極VEl,VErまでの距離は、仮想電極VEcの間隔と同様に入力装置80を介して操作者により指定されてもよい。なお、記憶部70が仮想電極VEの間隔、数及び距離の少なくともいずれかを示す情報を記憶していない場合、仮想電極生成部62は、予め設定されたデフォルトの値を使用して、仮想電極VEを生成する。
【0039】
再構成解析部63は、上記の経路生成部61及び仮想電極生成部62の動作とは独立して動作し、磁気センサ部10で計測された被検体の磁気データを使用して、所定の間隔で並ぶ仮想の電流抽出点であるボクセル毎に電流成分を再構成する。再構成解析部63は、再構成により得たボクセル毎の電流の向き、強度、座標等を示す電流情報を記憶部70に記憶させる。再構成解析部63は、画像表示部51に指示して、再構成により得たボクセル毎の電流の向きと強度とを示す矢印を、形態画像上に重畳表示させる。
【0040】
また、再構成解析部63は、ボクセル毎の電流の強度に基づいて、画像上で同じ電流強度を有する位置を抽出する。再構成解析部63は、抽出した位置を結ぶ線を電流強度分布線として記憶部70に記憶させ、画像表示部51に指示して、電流強度分布線を形態画像上に重畳表示させる。これにより、
図3に示したように、形態画像等と、計測時間毎に再構成した電流の分布(電流の矢印と電流強度分布線)とが、画面上に重ね合わせて表示される。
【0041】
電流成分抽出部64は、各仮想電極VEc,VEl,VErとボクセルとの位置関係に基づいて、ボクセルでの電流成分を使用して各仮想電極VEでの電流成分(電流密度分布)を抽出する。電流成分抽出部64は、各仮想電極VEc,VEl,VErにおいて、時間の経過に伴って変化する電流データを電流波形として取得し、取得した電流波形(電流成分の時系列データ)を記憶部70に記憶させる。電流成分抽出部64は、波形表示部52に指示して、取得した電流波形を表示装置90の画面に表示させる。電流波形の表示例は、
図4に示される。以下では、表示装置90の画面に表示させることは、表示装置90に表示させるとも称される。
【0042】
ノイズレベル算出部65は、電流成分抽出部64により仮想電極VE毎に抽出されて記憶部70に記憶された電流成分(生体電流)の時系列データに基づいて、仮想電極VE毎にノイズレベルを算出する。ノイズレベルを算出する手法については、
図6で説明される。ノイズレベル算出部65は、算出した仮想電極VE毎のノイズレベルをノイズレベルデータ73として記憶部70に記憶させる。そして、ノイズレベル算出部65は、ノイズレベル表示部53に指示して、例えば、仮想電極VE毎の電流波形のピークと重ねて、ノイズレベルを視覚的に表す図形を表示装置90に表示させる。ノイズレベルを表す図形の例は、
図4及び
図5に示される。
【0043】
なお、ノイズレベル算出部65は、ノイズレベルを電流波形と同じ縮尺で表示画面に表示させてもよく、ノイズレベルを電流波形より大きい縮尺で表示画面に表示させてもよい。また、ノイズレベル算出部65は、電流成分抽出部64が過去に取得して記憶部70に記憶させた電流波形のノイズレベルを算出してもよい。そして、ノイズレベル算出部65は、表示画面に表示される現在の電流波形と、現在の電流波形のノイズレベルとともに、過去に取得した電流波形のノイズレベルを表示画面に表示させてもよい。
【0044】
画像表示部51は、
図3に示すように、表示装置90に形態画像を表示するとともに、仮想電極VEc,VEl,VEr、ボクセル毎の電流の向きと強度とを示す矢印及び電流強度分布線を形態画像に重畳して表示画面に表示する。波形表示部52は、仮想電極VE毎の電流波形を表示装置90に表示する。ノイズレベル表示部53は、ノイズレベル算出部65により算出され、記憶部70に記憶されたノイズレベルデータ73を使用して、仮想電極VEの電流波形のノイズレベルを表す図形を、仮想電極VEの電流波形のピークと重ねて表示装置90に表示する。
【0045】
図4は、
図1の表示装置90に表示される電流波形とノイズレベルを表す図形の例を示す説明図である。
図4に示す表示ウィンドウW2は、例えば、
図3に示した形態画像が表示される表示ウィンドウW1と並べて表示装置90の画面に表示される。表示ウィンドウW2には、仮想電極VEc,VEl,VErの電流波形がそれぞれ表示されている。各仮想電極VEc,VEl,VErの電流波形に示す数字は、電極番号を示す。
【0046】
電流波形(電流強度の時間変化)は、仮想電極VEc,VEl,VEr毎に、全ての電極番号に共通の時間軸を使用して表示される。
図4の各グラフの右下に示す数値(この例では、6nAm)は、電流双極子を示す。表示ウィンドウW2には、波形表示部52により、
図3の複数の仮想電極VEc,VEl,VErの各々での電流波形が表示される。
【0047】
仮想電極VEcの電流波形により、神経軸索内を流れる電流の変化を見ることができる。各仮想電極VEl,VErの電流波形により、神経軸索に流入する体積電流の変化を見ることができる。例えば、電流は、被検体の末梢神経に電気刺激を与えてから電流値が大きく変化するまでの時間である潜時により評価され、潜時は、電流波形のピーク値により検出される。
【0048】
神経活動が正常であるか否かを評価する場合、例えば、神経軸索内を流れる電流を示す仮想電極VEcの電流波形と、神経軸索に流入する電流を示す仮想電極VEl,VErでの電流波形とが参照される。各仮想電極VEc,VEl,VErの電流波形の変化により、神経活動のピーク潜時が進んでいるかを確認することができる。
【0049】
また、表示ウィンドウW2には、ノイズレベル表示部53により、ノイズレベルNL1、NL2を表すI字状の図形が、各仮想電極VElの電流波形のピークに重ねて表示される。例えば、I字状の図形において、時間軸に直交する方向の長さは、電流波形の電流強度と同じ縮尺に設定されたノイズレベルの大きさを示す。
【0050】
図4では、ノイズレベルNL1、NL2は、仮想電極VEl毎に算出されて、図形として表示されるが、指定する1つの仮想電極VElのノイズレベルNL1、NL2を表すI字状の図形が、他の仮想電極VElのノイズレベルとして共通に表示されてもよい。
【0051】
また、
図4では、仮想電極VElのみの電流波形にノイズレベルNL1、NL2を表す図形が重畳されているが、仮想電極VEc,VEl,VErの1つ又は複数の電流波形にノイズレベルを表す図形が重畳されてもよい。ノイズレベルを表す図形をどの仮想電極VEc,VEl,VErの電流波形に重畳させるかは、評価者が入力装置80を操作して、表示装置90の表示画面中に表示された選択ウィンドウから選択することで可能である。
【0052】
ノイズレベルNL1を表す図形は、各仮想電極VElの電流波形の正のピークに対応して表示される。ノイズレベルNL2を表す図形は、各仮想電極VElの電流波形の負のピークに対応して表示される。例えば、
図4に示す例では、表示ウィンドウW2に表示される電流波形を評価する評価者は、各仮想電極VElの電流波形の正のピークにより被検体の状態を評価する。このため、評価者は、電流波形の負のピークに重畳して表示されるノイズレベルNL2を表す図形では、神経活動の評価の補助に使用可能な電流波形か否かを判断しない。
【0053】
電流波形のピークの振幅が低下しているか否かは、神経活動を評価する際に重要である。例えば、神経活動の伝導を示す電流波形がノイズの影響を受けると、電流波形の振幅の評価とピークの潜時の評価とに影響を与えてしまい、神経活動の正常な評価ができなくなるおそれがある。このため、電流波形がノイズの影響をどの程度受けているかを視覚的に表示することは、評価に使用できない電流波形を直感的に判断するために重要である。
【0054】
例えば、
図4では、ノイズレベルNL1、NL2を表すI字状の図形は、電流波形の電流強度と同じ縮尺に設定されたノイズレベルの大きさを示し、I字状の中心を電流波形のピークの位置に重ねて表示される。電流強度と同じ縮尺のノイズレベルを表す図形を電流波形に重畳することで、評価者は、電流波形の信号レベルとノイズレベルとの比であるSN比を直感的に把握することができる。これにより、評価者は、着目する仮想電極VElの電流波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを直感的に把握することができる。
【0055】
この結果、評価者は、取得した電流波形が神経活動の評価の補助に使用可能な電流波形か否かを容易かつ適切に判断することができる。例えば、SN比が小さい電流波形を直感的に把握して、評価の補助に使用しないことを判断することができる。また、同一の計測条件で生体磁気データを計測し、磁気データから算出した生体電流の電流波形を重畳して電流波形の再現性を検討する場合、得られた波形が妥当な電流波形であるかを視覚的に判断しやすくできる。
【0056】
なお、ノイズレベル表示部53は、ノイズレベルを電流波形より大きい縮尺(例えば、2倍又は3倍)で表示装置90に表示させてもよい。また、
図4では、ノイズレベルNL1、NL2を表す図形を強調して表しているが、ノイズレベルNL1、NL2を表す図形は、電流波形と同程度の太さでもよく、電流波形の色と異なる色で表示されてもよい。また、波形表示部52は、予め設定された閾値以上のノイズレベルを含む電流波形の色を、閾値より小さいノイズレベルを含む電流波形の色と相違させてもよい。この場合、閾値以上のノイズレベルを含む電流波形を容易に認識することができる。
【0057】
図5は、表示装置に表示されるノイズレベルを表す図形の別の例を示す説明図である。
図5に示す例では、ノイズレベル表示部53は、
図4に示したI字状の図形の代わりに、時間軸に直交する方向に向き、中心が電流波形と交差する線状の図形を表示する。線状の図形の長さは、電流波形の電流強度と同じ縮尺に設定されたノイズレベルの大きさを示す。なお、ノイズレベル表示部53は、
図5に示す線状の図形を電流波形の全ての時刻に表示してもよい。この場合、ノイズレベルを示す帯状の図形が電流波形に沿って表示される。また、ノイズレベルを表す図形は、矩形状又は矢印でもよい。
【0058】
図6は、
図4に示したノイズレベルの算出手法の例を示す説明図である。
図1のノイズレベル算出部65は、生体信号の計測時間のうちの指定された時間領域での電流波形のノイズレベルを算出する。例えば、生体信号の計測時間は、表示ウィンドウW2に表示される時間軸で示され、
図6では、-5msから30msまでの35msである。例えば、0msは、電気刺激が末梢神経に印加されるタイミングである。
【0059】
指定された時間領域は、
図6に示す例では、20msから25msまでの5msの領域である。なお、時間領域は、計測時間のうち、着目する生体信号(電流波形)が現れない時間に設定されればよい。例えば、時間領域は、電気刺激が印加される前の-5msから0msまでの5msに設定されてもよい。
【0060】
電流波形を評価する評価者は、表示装置90に表示される入力ウィンドウを入力装置80を介して操作することで、時間領域を指定可能である。また、評価者は、表示装置90に表示される入力ウィンドウを入力装置80を介して操作することで、ノイズレベルの算出手法を選択可能である。なお、ノイズレベルの算出に使用する時間領域は、表示ウィンドウW2に表示されていない計測時間に含まれてもよい。
【0061】
図6に示す例では、評価者は、(a)から(e)で示される5つの算出手法のいずれかを選択可能である。手法(a)が選択された場合、ノイズレベル算出部65は、指定された時間領域の電流値の二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)を算出する。手法(b)が選択された場合、ノイズレベル算出部65は、指定された時間領域での電流値の最大値(I1)と最小値(-I3)との差(I1-(-I3))を算出する。
【0062】
手法(c)が選択された場合、ノイズレベル算出部65は、指定された時間領域の電流波形の最大振幅(I1)を算出する。手法(d)が選択された場合、ノイズレベル算出部65は、指定された時間領域において時間軸方向に隣り合う、極性が異なるピーク値の差の最大値(I1-(-I2))を算出する。手法(e)が選択された場合、ノイズレベル算出部65は、指定された時間領域の電流値の標準偏差を算出する。
【0063】
図7は、
図1のデータ処理装置30により電流波形とノイズレベルを表す図形とを表示装置90に表示する処理の一例を示すフロー図である。
図7に示すフローは、表示装置90に生体情報を表示する生体情報表示方法の処理を示し、データ処理装置30が実行する生体情報表示プログラムにより実現される。
【0064】
図7に示す例では、被検体の計測対象部位の形態画像を取得するため、被検体の磁気信号の計測とは別に、ステップS10において、X線撮影装置を使用して被検体のX線画像が取得され、形態画像データ72として記憶部70に記憶される。画像表示部51は、記憶部70に記憶された形態画像データ72が示す形態画像を表示装置90に表示する。
【0065】
この後、ステップS20において、データ処理装置30の経路生成部61は、操作者が、表示装置90に表示された形態画像を見ながら指定した画像上の複数の位置の座標に基づいて、曲線(直線を含む)を生成することで神経経路を抽出する。神経経路の抽出は、ディープラーニング等の機械学習の手法を利用して自動的に実施されてもよい。
【0066】
画像表示部51は、経路生成部61が抽出した神経経路を、表示装置90の画面に表示されている形態画像に重畳して表示する。経路生成部61は、抽出した神経経路の画像上での座標と曲線の式等を、記憶部70に記憶させる。
【0067】
一方、ステップS30において、生体情報計測装置100は、例えば、被検体の末梢神経に与える電気パルス刺激に同期して、SQUID磁気センサにより被検体の生体磁気を計測する。次に、ステップS31において、信号取得部20は、計測した磁気に対応してSQUID磁気センサが出力する電圧に基づいて、デジタルの磁気データを生成し、生成した磁気データを生体磁気データ71として記憶部70に記憶させる。なお、ステップS30、S31は、繰り返し実施される。ここまでにより、被検体の計測対象部位の電流波形を取得する準備が完了する。
【0068】
ステップS20の後、ステップS21において、データ処理装置30の動作制御部60は、ステップS20により神経経路が抽出された形態画像中での磁気データの計測位置を対応付ける。次に、ステップS22において、再構成解析部63は、計測時間毎の磁気データに基づいて電流成分を再構成する。再構成解析部63は、再構成により得た複数の再構成点での電流の向き、強度、座標等を示す電流情報を、形態画像データ72として記憶部70に記憶させる。
【0069】
次に、ステップS23において、再構成解析部63は、画像表示部51に指示して、再構成により得た複数の再構成点での電流の向きと強度とを示す矢印を、形態画像上に表示させる。また、再構成解析部63は、再構成点毎の電流の強度に基づいて、画像上で同じ電流強度を有する位置を抽出し、電流強度分布線として形態画像に重ね合わせて表示させる。再構成解析部63は、電流強度分布線を示す情報を形態画像データ72として記憶部70に記憶させる。これにより、例えば、
図3に示したように、X線画像等と、計測時間毎に再構成した電流の分布(電流の矢印と電流強度分布線)とが、画面上に重ね合わせて表示される。
【0070】
次に、ステップS24において、仮想電極生成部62は、ステップS20で抽出した神経経路上に所定数の仮想電極VEcを、間隔をおいて設定する。仮想電極VEcの数及び間隔は、操作者等により予め設定される。また、仮想電極生成部62は、仮想電極VEcにおいて神経経路の直交方向の両側に仮想電極VEl,VErを設定する。仮想電極生成部62は、設定した仮想電極VEc,VEl,VErの画像上での座標を、形態画像データ72として記憶部70に記憶させる。
【0071】
仮想電極生成部62は、画像表示部51に指示して、設定した仮想電極VEcと仮想電極VEl,VErとを神経経路が表示された形態画像に重ねて表示させる。これにより、
図3に示したように、神経経路(神経軸索)上に設定された仮想電極VEcと、各仮想電極VEcの両側に設定された仮想電極VEl,VEr等とがX線画像等に重畳されて表示装置90に表示される。
【0072】
次に、ステップS25において、電流成分抽出部64は、各仮想電極VEc,VEl,VErにおいて、時間の経過に伴って変化する電流データを電流波形として取得する。次に、ステップS26において、電流成分抽出部64は、取得した電流波形を表示装置90の表示画面に表示させることを波形表示部52に指示する。ステップS26の処理は、計測された生体信号を含む生体信号波形を表示する波形表示処理の一例である。
【0073】
波形表示部52は、電流成分抽出部64が仮想電極VE毎に抽出した電流成分の時間変化を電流波形として表示装置90に表示する。例えば、電流波形は、表示装置90の画面において
図3に示した形態画像が表示される表示ウィンドウW1とは別に
図4又は
図5に示した表示ウィンドウW2に表示される。
【0074】
次に、ステップS27において、ノイズレベル算出部65は、予め設定された算出手法を使用して、予め設定された時間領域でのノイズレベルを算出する。ノイズレベル算出部65は、算出したノイズレベルをノイズレベルデータ73として記憶部70に記憶させる。
【0075】
次に、ステップS28において、ノイズレベル算出部65は、算出したノイズレベルのうち、表示が指定された仮想電極VEに対応するノイズレベルを示す図形を、表示装置90の表示画面に表示させることをノイズレベル表示部53に指示する。この際、ノイズレベル算出部65は、表示する図形の図形データを解析パラメータ74から取得するようにノイズレベル表示部53に指示する。ステップS28の処理は、電流波形に含まれるノイズレベルを表す図形を電流波形のピークに対応する位置に表示するノイズレベル表示処理の一例である。
【0076】
ノイズレベル表示部53は、指示された図形データを解析パラメータ74から取得する。そして、ノイズレベル表示部53は、指定された仮想電極VEに対応するノイズレベルを示す図形を、指定された仮想電極VEの電流波形のピークに対応する位置に表示する。これにより、
図4に示したように、電流波形とノイズレベルを示す図形とを表示ウィンドウW2に表示する一連の処理が完了する。
【0077】
図8は、
図1のデータ処理装置30のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。データ処理装置30は、CPU301とROM(Read Only Memory)302とRAM(Random Access Memory)303と外部記憶装置304とを有する。また、データ処理装置30は、入力インタフェース部305と出力インタフェース部306と入出力インタフェース部307と通信インタフェース部308とを有する。例えば、CPU301とROM302とRAM303と外部記憶装置304と入力インタフェース部305と出力インタフェース部306と入出力インタフェース部307と通信インタフェース部308とは、バスBUSを介して相互に接続される。
【0078】
CPU301は、OS及びアプリケーション等の各種プログラムを実行し、データ処理装置30の全体の動作を制御する。ROM302は、各種プログラムをCPU301により実行可能にするための基本プログラムや各種パラメータ等を保持する。RAM303は、CPU301により実行される各種プログラムや、プログラムで使用するデータを記憶する。各種プログラムは、
図3に示した形態画像を表示する形態画像表示プログラムと、
図4に示した電流波形及びノイズレベルを表す図形を表示する電流波形表示プログラムとを含む。形態画像表示プログラム及び電流波形表示プログラムは、生体情報表示プログラムの一例である。
【0079】
外部記憶装置304は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等であり、RAM303に展開する各種プログラムを記憶する。各種プログラムには、ノイズレベルを算出するノイズレベル算出プログラムと、磁気データから再構成された電流波形とノイズレベルを表す図形とを表示装置90に表示する電流波形表示プログラムとが含まれてもよい。
【0080】
入力インタフェース部305には、データ処理装置30を操作する操作者等からの入力を受け付けるキーボード、マウスやタブレット等の入力装置80が接続される。出力インタフェース部306には、CPU301が実行する各種プログラムにより生成される表示画面等を表示する表示装置やプリンタ等の出力装置92(例えば、
図1の表示装置90)が接続される。
【0081】
入出力インタフェース部307には、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体400が接続される。例えば、記録媒体400には、上述した形態画像表示プログラム及び電流波形表示プログラム等の各種プログラムが格納されてもよい。この場合、プログラムは、入出力インタフェース部307を介して記録媒体400からRAM303に転送される。なお、記録媒体400は、CD-ROMやDVD(Digital Versatile Disc:登録商標)等でもよく、この場合、入出力インタフェース部307は、接続する記録媒体400に対応するインタフェースを有する。通信インタフェース部308は、データ処理装置30をネットワーク等に接続する。
【0082】
以上、第1の実施形態では、生体信号の電流波形に含まれるノイズレベルを表す図形を電流波形のピークに対応する位置に表示することで、生体信号の電流波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを直感的に把握可能にすることができる。ノイズレベルを表す図形をノイズレベルに応じた長さにすることで、電流波形の信号レベルとノイズレベルとの比であるSN比を直感的に把握することができる。
【0083】
生体信号の計測時間のうちの指定された時間領域でのノイズレベルを算出することで、評価者は、ウィンドウW2に表示された電流波形を見ながら、適切な時間領域を指定することができる。例えば、着目する前記生体信号が現れない時間に時間領域を設定することで、より正確なノイズレベルを算出することができる。
【0084】
予め設定された閾値以上のノイズレベルを含む電流波形の色を、閾値より小さいノイズレベルを含む電流波形の色と相違させることで、閾値以上のノイズレベルを含む電流波形を容易に認識することができる。これにより、神経活動の評価の補助に使用可能な電流波形か否かを適切に識別することができる。
【0085】
<第2の実施形態>
図9は、本発明の第2の実施形態において表示装置に表示される電流波形とノイズレベルを表す図形との例を示す説明図である。第1の実施形態と同様の要素及び同様の機能については、詳細な説明は省略する。この実施形態の表示装置を搭載する生体情報計測装置の構成及び機能は、ノイズレベル表示部53の機能が相違することを除き、
図1に示した生体情報計測装置100の構成及び機能と同様である。
【0086】
この実施形態のノイズレベル表示部53は、ノイズレベル表示部53により算出された仮想電極VE毎のノイズレベルをn倍(nは1より大きい値)したI字状の図形を表示ウィンドウW2に表示する。例えば、ノイズレベル表示部53は、ノイズレベルを3倍する(n=3)。ノイズレベル表示部53は、ノイズレベルを表すI字状の図形を表示する際に、図形の一端を電流波形のピークに位置させ、図形の他端を時間軸に沿って表示される基線側に延ばす。
【0087】
なお、
図9においても、
図4と同様に、各仮想電極VElの電流波形の正のピークにより被検体の状態が評価される。例えば、電流波形の評価者は、ノイズレベルNL1を示すI字状の図形が基線を跨ぐ電流波形を評価に使用できないと判断する。すなわち、n倍したノイズレベルを表す図形は、評価の使用の可否を判別する閾値として使用される。このように、評価者は、着目する仮想電極VElの電流波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを、n倍化されたノイズレベルを表す図形により直感的に把握することができる。
【0088】
図10は、表示装置に表示されるノイズレベルを表す図形の別の例を示す説明図である。
図10においても、ノイズレベル表示部53は、ノイズレベル表示部53により算出された仮想電極VE毎のノイズレベルをn倍(例えば、3倍)したI字状の図形を表示ウィンドウW2に表示する。但し、
図10では、ノイズレベル表示部53は、ノイズレベルを表すI字状の図形を表示する際に、図形の一端を基線に位置させ、図形の他端を電流波形のピーク側に延ばす。
【0089】
なお、
図10においても、
図4と同様に、各仮想電極VElの電流波形の正のピークにより被検体の状態が評価される。例えば、電流波形の評価者は、I字状の図形が電流波形を跨ぐ場合、その電流波形を評価に使用できないと判断する。すなわち、
図10においても、n倍したノイズレベルを表す図形は、評価の使用の有無を判別する閾値として使用される。このように、評価者は、着目する仮想電極VElの電流波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを、n倍化されたノイズレベルを表す図形により直感的に把握することができる。なお、
図9及び
図10に示すI字状の図形の代わりに、
図5に示した線状の図形が表示されてもよく、他の棒状の図形が表示されてもよい。また、I字状の図形において、基線と反対側の端部の位置に合わせて時間軸と平行な直線が表示されてもよい。この際、I字状の図形を表示せずに、時間軸と平行な直線のみが表示されてもよい。
【0090】
以上、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、ノイズレベル表示部53は、ノイズレベルをn倍したI字状の図形を、一端を前記ピークに位置させ、他端を基線側に延ばしてウィンドウW2に表示する。あるいは、ノイズレベル表示部53は、ノイズレベルをn倍したI字状の図形を、一端を基線に位置させ、他端をピーク側に延ばして表示ウィンドウW2に表示する。これにより、評価者は、着目する仮想電極VElの電流波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを、n倍化されたノイズレベルを表す図形により直感的に把握することができる。
【0091】
<第3の実施形態>
図11は、本発明の第3の実施形態において表示装置に表示される電流波形とノイズレベルを表す図形との例を示す説明図である。第1の実施形態と同様の要素及び同様の機能については、詳細な説明は省略する。この実施形態の表示装置を搭載する生体情報計測装置の構成及び機能は、ノイズレベル表示部53の機能が相違することを除き、
図1に示した生体情報計測装置100の構成及び機能と同様である。
【0092】
この実施形態では、ノイズレベル算出部65は、互いに異なる計測時刻に計測された生体磁気から算出された電流波形に含まれるノイズレベルをそれぞれ算出し、算出したノイズレベルをノイズレベルデータ73として記憶部70に記憶させる。
【0093】
波形表示部52は、
図4と同様に、指定された電流波形と、電流波形に含まれるノイズレベルNL1,NL2を表す図形とをウィンドウW2に表示する。以下では、指定された電流波形は、現在の電流波形とも称される。さらに、波形表示部52は、現在の電流波形を除く電流波形に含まれるノイズレベルNL1old,NL2oldを表す図形とをウィンドウW2に表示する。例えば、ノイズレベルNL1old,NL2oldを含む電流波形は、ウィンドウW2に表示された現在の電流波形を算出した生体磁気データの計測時刻より前に計測された生体磁気から算出された過去の電流波形である。
【0094】
例えば、ノイズレベルNL1old,NL2oldを表す図形の色を、ノイズレベルNL1,NL2を表す図形の色と相違させることで、電流波形の評価者は、現在と過去の電流波形に含まれるノイズレベルを容易に識別することができる。ノイズレベルNL1old,NL2oldを表す図形の濃さは、ノイズレベルNL1,NL2を表す図形の濃さより薄く設定されてもよい。また、ノイズレベルNL1old,NL2oldを表す図形の太さは、ノイズレベルNL1,NL2を表す図形の太さより細く設定されてもよい。
【0095】
また、I字状の図形を表示せず、計測時刻が異なるノイズレベルを示すI字状の長さ分を基線から離した位置に、時間軸と平行に直線がそれぞれ表示されてもよい。この際、計測時刻が異なるノイズレベル毎に直線の色又は線種が変えられて表示されてもよい。さらに、
図11に示すI字状の図形の代わりに、
図5に示した線状の図形が表示されてもよい。また、ノイズレベルNL1,NL2,NL1old,NL2oldを表す図形は、
図9及び
図10に示したように、n倍化されたノイズレベルを表すものでもよい。
【0096】
過去の電流波形のノイズレベルを表す図形を表示することで、現在の電流波形に含まれるノイズ量が相対的に多いか否かを直感的に判断することができる。なお、過去の電流波形のノイズレベルは、複数の過去の電流波形のノイズレベルの平均値又は最大値でもよい。
【0097】
以上、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、生体信号の電流波形に含まれるノイズレベルを表す図形を電流波形のピークに対応する位置に表示するため、生体信号の電流波形がノイズの影響をどの程度受けているのかを直感的に把握可能にすることができる。さらに、第3の実施形態では、過去の電流波形のノイズレベルを表す図形を表示することで、現在の電流波形に含まれるノイズ量が相対的に多いか否かを直感的に判断することができる。
【0098】
なお、上述した実施形態では、ノイズレベルを示す図形を、生体情報計測装置100により計測された生体磁気に基づいて算出される電流波形に重畳して表示する例が説明された。しかしながら、上述した実施形態で説明したノイズレベルを表す図形を電流波形に重畳して表示する手法は、心電計等の生体電位の電位波形の評価に応用されてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、計測された磁気から算出された生体電流信号が生体信号として処理される例が説明されたが、計測された生体磁気信号が生体信号として処理されてもよい。
【0100】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1>
計測された生体信号を含む生体信号波形を表示する波形表示部と、
前記生体信号波形に含まれるノイズレベルを表す図形を前記生体信号波形のピークに対応する位置に表示するノイズレベル表示部と、
を有することを特徴とする生体情報表示装置。
<2>
前記図形は、前記生体信号波形の時間軸に直交する、前記ノイズレベルに応じた長さの形状を有すること
を特徴とする<1>に記載の生体情報表示装置。
<3>
前記生体信号の計測時間のうちの指定された時間領域での前記ノイズレベルを算出するノイズレベル算出部を有し、
前記ノイズレベル表示部は、前記ノイズレベル算出部により算出された前記ノイズレベルを表す前記図形を表示すること
を特徴とする<1>又は<2>に記載の生体情報表示装置。
<4>
前記ノイズレベル算出部は、前記時間領域における前記生体信号の二乗平均平方根、最大値と最小値との差、最大振幅、時間軸方向に隣り合い極性が異なるピーク値の差の最大値、又は、標準偏差を前記ノイズレベルとして算出すること
を特徴とする<3>に記載の生体情報表示装置。
<5>
前記ノイズレベル算出部は、算出した前記ノイズレベルをn倍し(nは1より大きい値)、n倍した前記ノイズレベルを前記ノイズレベル表示部に表示させること
を特徴とする<3>又は<4>に記載の生体情報表示装置。
<6>
前記ノイズレベル表示部は、一端が前記ピークに位置し、他端が時間軸に沿って表示される基線側に延びる前記図形、又は、一端が前記基線に位置し、他端が前記ピーク側に延びる前記図形を表示すること
を特徴とする<5>に記載の生体情報表示装置。
<7>
前記波形表示部は、互いに異なる時刻に計測された複数の前記生体信号の各々を含む複数の前記生体信号波形のいずれかを表示し、
前記ノイズレベル算出部は、複数の前記生体信号について前記時間領域での前記ノイズレベルをそれぞれ算出し、
前記ノイズレベル表示部は、前記波形表示部により表示される前記生体信号波形の生成に使用される前記生体信号の前記時間領域での前記ノイズレベルを表す前記図形と、前記波形表示部により表示される前記生体信号波形を除く生体信号波形の生成に使用される前記生体信号の前記時間領域での前記ノイズレベルを表す前記図形と、を表示すること
を特徴とする<3>ないし<6>のいずれか1項に記載の生体情報表示装置。
<8>
前記時間領域は、前記計測時間のうち、着目する前記生体信号が現れない時間に設定されること
を特徴とする<3>ないし<7>のいずれか1項に記載の生体情報表示装置。
<9>
前記生体信号は、生体磁気信号、又は計測された生体磁気から算出された電流信号であること
を特徴とする<1>ないし<8>のいずれか1項に記載の生体情報表示装置。
<10>
計測される前記生体信号は、生体の骨格筋由来の信号、心筋由来の信号、平滑筋由来の信号、又は神経由来の信号であること
を特徴とする<1>ないし<9>のいずれか1項に記載の生体情報表示装置。
<11>
前記波形表示部は、複数の計測位置で計測された複数の前記生体信号の各々を含む複数の前記生体信号波形を表示し、予め設定された閾値以上の前記ノイズレベルに対応する前記生体信号波形の色を、前記閾値より小さい前記ノイズレベルに対応する前記生体信号波形の色と相違させること
を特徴とする<1>ないし<10>のいずれか1項に記載の生体情報表示装置。
<12>
<1>ないし<11>のいずれか1項に記載の生体情報表示装置と、
生体磁気を計測して前記生体信号を生成する生体磁気計測装置と、
を有することを特徴とするシステム。
<13>
計測された生体信号を含む生体信号波形を表示し、
前記生体信号波形に含まれるノイズレベルを表す図形を前記生体信号波形のピークに対応する位置に表示すること
を特徴とする生体情報表示方法。
<14>
計測された生体信号を含む生体信号波形を表示する波形表示処理と、
前記生体信号波形に含まれるノイズレベルを表す図形を前記生体信号波形のピークに対応する位置に表示するノイズレベル表示処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする生体情報表示プログラム。
【0101】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0102】
10 磁気センサ部
20 信号取得部
21 FLL回路
22 アナログ信号処理部
23 AD変換部
24 FPGA
30 データ処理装置
40 入力制御部
41 位置入力部
42 波形領域指定部
50 表示制御部
51 画像表示部
52 波形表示部
53 ノイズレベル表示部
60 動作制御部
61 経路生成部
62 仮想電極生成部
63 再構成解析部
64 電流成分抽出部
65 ノイズレベル算出部
70 記憶部
71 生体磁気データ
72 形態画像データ
73 ノイズレベルデータ
74 解析パラメータ
80 入力装置
90 表示装置
100 生体情報計測装置
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 外部記憶装置
305 入力インタフェース部
306 出力インタフェース部
307 入出力インタフェース部
308 通信インタフェース部
400 記録媒体
NL1,NL2 ノイズレベル
VEc,VEl,VEr 仮想電極
W1,W2 表示ウィンドウ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2021-083479号公報
【特許文献2】特許第6055679号公報
【非特許文献】
【0104】
【非特許文献1】Andrei Irimia et al., Magnetogastrographic detection of gastric electrical response activity in humans, PHYSICS IN MEDICINE AND BIOLOGY, Phys. Med. Biol. 51 (2006) 1347-1360
【非特許文献2】Yasuhiro Shirai et al., Magnetocardiography Using a Magnetoresistive Sensor Array, Int Heart J, January 2019, 50-54
【非特許文献3】Tadashi Masuda et al., Magnetic fields produced by single motor units in human skeletal muscles, Clinical Neurophysiology 110 (1999) 384-389