(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135383
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】面発光レーザ、光源装置、表示装置、ヘッドマウントディスプレイ、及び生体情報取得装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20240927BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240927BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01S5/183
G02B27/02 Z
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046036
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】上西 盛聖
【テーマコード(参考)】
2H199
5E555
5F173
【Fターム(参考)】
2H199CA02
2H199CA06
2H199CA12
2H199CA29
2H199CA34
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA47
2H199CA53
2H199CA59
2H199CA66
2H199CA69
2H199CA87
5E555AA51
5E555BA08
5E555BB08
5E555BC30
5E555CA42
5E555CB69
5E555CC30
5E555EA05
5E555EA22
5E555FA00
5F173AC03
5F173AC14
5F173AC35
5F173AC42
5F173AH22
5F173AP05
5F173AP33
5F173AR12
(57)【要約】
【課題】低出力の発光素子、光源装置、表示装置、ヘッドマウントディスプレイ及び生体情報取得装置を提供する。
【解決手段】面発光レーザは、活性層と、該活性層を挟む、第1半導体層と、第2半導体層と、を含む共振器領域と、前記共振器領域を挟む、第1反射鏡と、第2反射鏡と、を備え、前記第1反射鏡は、複数の半導体層が積層された多層膜反射鏡であり、前記活性層と前記第1反射鏡の間の距離は、400nm以下であり、前記複数の半導体層の少なくとも一層は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層と、該活性層を挟む、第1半導体層と、第2半導体層と、を含む共振器領域と、
前記共振器領域を挟む、第1反射鏡と、第2反射鏡と、
を備え、
前記第1反射鏡は、複数の半導体層が積層された多層膜反射鏡であり、
前記活性層と前記第1反射鏡の間の距離は、400nm以下であり、
前記複数の半導体層の少なくとも一層は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層である、面発光レーザ。
【請求項2】
活性層と、該活性層を挟む、第1半導体層と、第2半導体層と、を含む共振器領域と、
前記共振器領域を挟む、第1反射鏡と、第2反射鏡と、
を備え、
前記第1反射鏡は、複数の半導体層が積層された多層膜反射鏡であり、
前記活性層と前記第1反射鏡の間の距離は、400nm以下であり、
前記第1反射鏡の熱抵抗値は、0.07mK/W以上である、面発光レーザ。
【請求項3】
前記複数の半導体層の少なくとも1層は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層である、請求項2に記載の面発光レーザ。
【請求項4】
前記複数の半導体層は、第1屈折率を有する低屈折率層と、前記第1屈折率より高い屈折率である第2屈折率を有する高屈折率層と、を含む半導体層のペアを複数含み、
前記複数のペアの少なくとも1つのペアを構成する低屈折率層及び高屈折率層は、ともに三種類以上の元素を含む化合物半導体層である、請求項1又は請求項2に記載の面発光レーザ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのペアは、前記共振器領域に隣接する、請求項4に記載の面発光レーザ。
【請求項6】
前記複数の半導体層は、第1屈折率を有する低屈折率層と、前記第1屈折率より高い屈折率である第2屈折率を有する高屈折率層と、を含む半導体層のペアを複数含み、
前記複数のペアの少なくとも1つのペアを構成する低屈折率層及び高屈折率層の一方は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層であり、他方は、二種類の元素を含む化合物半導体層である、請求項1又は請求項2に記載の面発光レーザ。
【請求項7】
前記少なくとも1つのペアは、前記共振器領域に隣接する、請求項6に記載の面発光レーザ。
【請求項8】
前記第1半導体層は、低熱抵抗層と、前記低熱抵抗層より高い熱抵抗値を有する高熱抵抗層を含む、請求項1又は請求項2に記載の面発光レーザ。
【請求項9】
前記高熱抵抗層は、前記低熱抵抗層より、前記活性層に近い側に配置される、請求項8に記載の面発光レーザ。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の面発光レーザを備えることを特徴とする光源装置。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載の面発光レーザを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載の面発光レーザを備えることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
【請求項13】
生体に光を照射する光源装置と、
前記生体からの反射光を受光する受光装置と、
前記受光装置の出力に基づき前記生体の情報を取得する情報取得部と、
を有し、
前記光源装置は、請求項1又は請求項2に記載の面発光レーザを備えることを特徴とする生体情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザ、光源装置、表示装置、ヘッドマウントディスプレイ及び生体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直方向に共振器を形成した面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting LASER;VCSEL)が知られている(特許文献1)。また、AlGaN層と、InGaN層との間にGaN層を配置した反射鏡を備えた面発光レーザが、開示されている(特許文献2)。
【0003】
面発光レーザは活性層体積が小さく、低閾値、低消費電力である。素子の出力が数百μW~数mW程度で、アレイ化することで大出力にすることもできる。これにより、照明、通信、表示装置等への応用が期待されている。さらに、低出力、低消費電力なデバイスの特徴を生かして、ウェアラブルデバイスの光源として網膜走査型ディスプレイ用の光源や、低出力を生かして虹彩情報を取得するためのバイオメトリック用光源として期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
網膜の最大被爆限界は、波長にもよるが数十μW~数百μWである。網膜ディスプレイやバイオメトリック用の光源としてVCSELが使用される時には、さらに光出力を落とし、例えば0.05~0.2μW程度にされる。従来のVCSELの光出力は数百μW~数mW程度であり、従来のVCSELをそのままアイセーフな光源として用いることはできない。例えば、アイセーフな光源としてVCSELを用いるためには、従来よりも数桁以上光出力を抑えることが望まれる。
【0005】
本発明は、低出力の発光素子、光源装置、表示装置、ヘッドマウントディスプレイ及び生体情報取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一態様に係る面発光レーザは、活性層と、該活性層を挟む、第1半導体層と、第2半導体層と、を含む共振器領域と、前記共振器領域を挟む、第1反射鏡と、第2反射鏡と、を備え、前記第1反射鏡は、複数の半導体層が積層された多層膜反射鏡であり、前記活性層と前記第1反射鏡の間の距離は、400nm以下であり、前記複数の半導体層の少なくとも一層は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層である。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、低出力の光源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る面発光レーザを示す断面模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る第1反射鏡の構成の詳細を示す断面模式図である。
【
図3】第1反射鏡及び活性層の間の距離を変化させた際の活性層の温度変化に関するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図4】第1スペーサ層の厚さを変化させた際の面発光レーザにおける素子抵抗の変化に関するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図5】第2実施形態に係る面発光レーザを示す断面模式図である。
【
図6】第2実施形態に係る第1反射鏡の構成の詳細を示す断面模式図である。
【
図7】第3実施形態に係る面発光レーザを示す断面模式図である。
【
図8】第4実施形態に係る投影装置の構成例を示す図である。
【
図9】第5実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの構成例の斜視図である。
【
図10】第5実施形態に係るヘッドマウントディスプレイの構成例の断面図である。
【
図11】第6実施形態に係るバイオメトリック認証装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態の概要>
実施形態は、光出力が低減され、例えば、網膜ディスプレイやバイオメトリック用の光源としても適用可能な面発光レーザに関する。
【0010】
面発光レーザの光出力を抑える方法はいくつかある。最もシンプルであると考えられる方法は、光路の途中に光出力を落とすためのND(Neutral Density)フィルター等の部品を設ける方法である。しかし、この方法では、部品の欠落等の故障時に網膜に被爆限界を超えた光が入るおそれがある。
【0011】
他の方法として、面発光レーザの発振閾値電流付近の出力が弱いところで電流を細かく制御する方法が挙げられる。この方法によれば極低出力の光を出力できる可能性があるが、微小電流の制御が難しく素子を安定動作させることが難しい。
【0012】
さらに他の方法として、素子設計で、光を取り出す側の反射鏡の反射率を99.99%以上まで高める方法が挙げられる。この方法によれば理論的には光出力を数十μW程度まで出力を下げられる。しかしながら、さらに光出力を1~2桁出力を落とすためには、反射鏡の反射率をさらに高めなければならず、反射率をこのレベルまで高めることが極めて難しい。
【0013】
これに対して、実施形態に係る面発光レーザは、熱抵抗値の高い層を含み、面発光レーザ内部からの放熱を抑制する。これにより、最大出力のコントロールが可能となり、出力が低減されたレーザ光を出射することができる。
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を適宜省略する。また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例であって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。
【0015】
(第1実施形態)
<全体構成>
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は面発光レーザに関する。
図1は、第1実施形態に係る面発光レーザを示す断面模式図である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態に係る面発光レーザ1は、基板101と、第1反射鏡102と、第1スペーサ層103と、活性層104と、第2スペーサ層105と、透明導電層106と、第2反射鏡107と、第1電極108と、第2電極109と、を有する。第1スペーサ層103は、「第1半導体層」の一例である。また、第2スペーサ層105は、「第2半導体層」の一例である。
【0017】
第1実施形態に係る面発光レーザ1において、基板101の表面に垂直な方向に光が出射する。以下、基板101の表面に垂直な方向を「面直方向」という場合がある。面発光レーザ1を構成する各層の「厚さ」は、面直方向に沿った方向の寸法である。また、基板101の表面に平行な方向を「面内方向」ということがある。
【0018】
第1反射鏡102は、基板101の上に設けられる。第1スペーサ層103は、第1反射鏡102の上に設けられる。活性層104は、第1スペーサ層103の上に設けられる。第2スペーサ層105は、活性層104の上に設けられる。第2反射鏡107は、透明導電層106を介して、第2スペーサ層105の上に設けられる。
【0019】
第1実施形態では、第1スペーサ層103、活性層104、及び第2スペーサ層105で共振器が構成される。すなわち、第1スペーサ層103、活性層104、及び第2スペーサ層105に亘る領域が、「共振器領域100C」に対応する。共振器領域100Cにおいて、第1スペーサ層103は、活性層104に対して、面直方向下方側に配置される。第2スペーサ層105は、活性層104に対して、面直方向上側に配置される。これにより、活性層104は、第1スペーサ層103と第2スペーサ層105とに挟まれる。
【0020】
第1反射鏡102は、共振器領域100Cに対して、面直方向下側に配置される。第2反射鏡107は、共振器領域100Cに対して、面直方向上側に配置される。これにより、共振器領域100Cは、第1反射鏡102と第2反射鏡107とに挟まれる。活性層104で生じた光は、第1反射鏡102及び第2反射鏡107のそれぞれで反射され、共振器領域100Cを往復する。
【0021】
第2スペーサ層105と、活性層104と、第1スペーサ層103の上部領域とがエッチングされて、メサ構造150が形成される。
【0022】
透明導電層106は、メサ構造150の上面を覆う。透明導電層106の例として、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)膜、フッ素ドープ酸化スズ(F-doped Tin Oxide:FTO)膜等の透明導電薄膜が挙げられる。
【0023】
第1電極108は、透明導電層106を介して、第2スペーサ層105の上に配置される。すなわち、第1実施形態に係る面発光レーザ1は、イントラキャビティ構造を備える。ただし、第1電極108の位置は、活性層104に電流を注入できる位置であれば、これに限定されない。例えば、第1電極108は、第2反射鏡107の上に配置されていてもよい。第2電極109は、第1スペーサ層103の上に設けられる。
【0024】
第1電極108と第2電極109との間に電圧が印加されることで、第1スペーサ層103及び第2スペーサ層105のそれぞれから、活性層104にキャリアが注入される。活性層104は、注入されたキャリアを閉じ込めて発光する。レーザ発振条件が満たされることで、活性層104で生じた光が増幅され、面発光レーザ1からレーザ光が出射する。
【0025】
基板101として、GaN基板及びAlN基板等の半導体基板を用いることができる。また、基板101として、例えば、異種基板上に半導体層を成膜したGaNテンプレートを用いることもできる。異種基板としては、例えば、サファイア基板、Si基板、GaAs基板、SiC基板等を用いることができる。
【0026】
第1反射鏡102は、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された多層膜反射鏡である。1周期の高屈折率層及び低屈折率層の光学的厚さは、第1反射鏡102での反射光の波長をλとしたとき、例えば、λ/2である。
【0027】
第1反射鏡102の高屈折率層及び低屈折率層は、熱抵抗値の高い三種類以上の元素を含む化合物半導体層であることが好ましい。第1反射鏡102の高屈折率層及び低屈折率層のすべての層が、三種類以上の元素を含む化合物半導体層であってもよいし、高屈折率層及び低屈折率層のうちの一部の層が、二種類の元素を含む化合物半導体層であってもよい。
【0028】
ここで、「三種類以上の元素を含む化合物半導体層」とは、三種類以上の元素を含む混晶半導体の層である。三種類以上の元素を含む化合物半導体層として、AlGaN系の化合物半導体、InGaN系の化合物半導体、AlGaAs系の化合物半導体、GaAsP系の化合物半導体、AlInGaN系の化合物半導体、AlInGaP系の化合物半導体等の半導体層が挙げられる。
【0029】
「二種類の元素を含む化合物半導体層」とは、二種類の元素を含む混晶半導体の層である。二種類の元素を含む化合物半導体層として、AlN系の化合物半導体、InN系の化合物半導体、AlP系の化合物半導体、GaP系の化合物半導体、InP系の化合物半導体、AlAs系の化合物半導体、GaAs系の化合物半導体、InAs系の化合物半導体等の半導体層が挙げられる。
【0030】
第1反射鏡102の高屈折率層及び低屈折率層のうち、第1スペーサ層103に隣接する1ペアの少なくとも一方の層は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層であることが好ましい。第1スペーサ層103の高屈折率層及び低屈折率層のうち、活性層104に最も近い1ペアの少なくとも一方の層を三種類以上の元素を含む化合物半導体層とすることで、活性層104で生じた熱が外部に散逸することを、より効果的に防止できる。なお、第1反射鏡102については、別途
図2を参照して、詳述する。
【0031】
第1スペーサ層103は、第1導電型を有する半導体層である。例えば、第1スペーサ層103は、二種類の元素を含む化合物半導体層や、三種類以上の元素を含む化合物半導体層から構成される。第1導電型は、n型又はp型である。
【0032】
第1実施形態の第1スペーサ層103は、SiやGe等のドナー不純物がドーピングされたn型の半導体層である。第1スペーサ層103は、例えば、n型のGaN層であるが、これに限定されない。
【0033】
第1スペーサ層103は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層を含むことが好ましい。活性層104に隣接する第1スペーサ層103が、三種類以上の元素を含む化合物半導体層を含むことで、活性層104で生じた熱が外部に散逸することを、より効果的に防止できる。
【0034】
第1スペーサ層103の厚みを変化することで、共振器領域100Cの光学的厚さが調整される。活性層104で生じた熱が外部に散逸することを防ぐため、第1スペーサ層103の厚さは、400nm以下とすることが好ましい。第1実施形態の第1スペーサ層103の厚さは、約250nmである。
【0035】
活性層104は、例えば、第1スペーサ層103又は第2スペーサ層105から注入されたキャリアを閉じ込めて発光する。活性層104として、例えば、高い発光効率を得るために、InGaN層とGaN層とを交互に積層した多重量子井戸層、又は互いに組成の異なる2種のInGaN層を交互に積層した多重量子井戸層を用いることが好ましい。
【0036】
第2スペーサ層105は、第1スペーサ層103とは反対の導電型である第2導電型を有する半導体層である。第2スペーサ層105は、二種類の元素を含む化合物半導体層や、三種類以上の元素を含む化合物半導体層から構成される。
【0037】
第1実施形態の第2スペーサ層105は、Mg等のアクセプタ不純物がドーピングされたp型の半導体層である。第2スペーサ層105は、例えば、p型のGaN層と、p型のAlGaN層とが積層された積層構造を有するが、これに限定されない。
【0038】
第2スペーサ層105は、電流狭窄層170を含む。電流狭窄層170は、導電領域171と、絶縁領域172とを含む。導電領域171は、絶縁領域172により囲まれている。導電領域171は、第2スペーサ層105と同じ第2導電型を有する半導体層であってよい。また、絶縁領域172は、SiO2等の誘電体層や、導電領域171と同じ半導体を選択酸化させた層であってよい。電流狭窄層170によって、活性層104中で電流が流れる領域が限定される。
【0039】
第2反射鏡107は、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された多層膜反射鏡である。高屈折率層は、例えば、Ta2O5等の誘電体層である。また、低屈折率層は、例えば、SiO2等の誘電体層である。ただし、高屈折率層及び低屈折率層は、二種類の元素を含む化合物半導体層や、三種類以上の元素を含む化合物半導体層であってもよい。1周期の高屈折率層及び低屈折率層の光学的厚さは、第2反射鏡107での反射光の波長をλとしたとき、例えば、λ/2である。
【0040】
第1電極108は、例えば、Ti層とAu層を有する。ただし、第1電極108の構成は、これに限定されない。第2電極109は、例えば、Ti層とAl層を有する。ただし、第2電極109の構成は、これに限定されない。
【0041】
<第1反射鏡の構成>
次に、
図2を参照して、第1反射鏡102の構成を詳細に説明する。
図2は、第1実施形態に係る第1反射鏡102の構成の詳細を示す断面模式図である。
【0042】
第1反射鏡102は、低屈折率層102Aと、高屈折率層102Bとを有し、低屈折率層102A及び高屈折率層102Bが交互に積層されている。低屈折率層102Aは第1屈折率を備え、高屈折率層102Bは第1屈折率よりも高い第2屈折率を備える。
【0043】
低屈折率層102Aは、ともに熱抵抗値の高い三種類以上の元素を含む化合物半導体層である、AlxGayIn(1-x-y)N層102A1と、InzGa(1-z)N層102A2とを含む多層構造を有する。高屈折率層102Bは、InwGa(1-w)N層である。高屈折率層102Bを構成するInwGa(1-w)N層を「InwGa(1-w)N層102B」という場合がある。
【0044】
ここで、AlxGayIn(1-x-y)N層102A1におけるInの組成比を規定するxは、0.9以下である。InzGa(1-z)N層102A2におけるGaの組成比を規定するzは、0より大きく、0.01以下である。InwGa(1-w)N層102BにおけるGaの組成比を規定するwは、0より大きい。
【0045】
低屈折率層102Aには、AlxGayIn(1-x-y)N層102A1と、GaN基板101との格子不整合による引張歪が生じ得る。これに対して、InwGa(1-w)N層102Bには、圧縮歪が生じ得る。AlxGayIn(1-x-y)N層102A1及びInwGa(1-w)N層102Bそれぞれの歪の量を考慮せずに、第1反射鏡102を形成した場合、内部にクラックやピット等の欠陥が発生する。その結果、第1反射鏡102の反射率が低下するおそれがある。そのため、AlxGayIn(1-x-y)N層102A1の歪と総膜厚の積と、InwGa(1-w)N層102Bの歪と総膜厚の積が、おおよそ等しくなることが好ましい。ただし、それぞれの層の歪の量を等しくすることは、実際的に困難なため、AlxGayIn(1-x-y)N層102A1の歪と総膜厚の積と、InwGa(1-w)N層102Bの歪と総膜厚の積の比は、0.8~1.2の範囲内に収まるように制御することが好ましい。より好ましくは、AlxGayIn(1-x-y)N層102A1の歪と総膜厚の積と、InwGa(1-w)N層102Bの歪と総膜厚の積の比は、0.9~1.1である。
【0046】
低屈折率層102Aと高屈折率層102Bの光学的厚さの和をλ/2にした上で、低屈折率層102Aと高屈折率層102Bのそれぞれの光学的厚さを、λ/4より増減させてもよい。特に、高屈折率層102Bをλ/4より厚くし、低屈折率層102Aをλ/4より薄くすると、高屈折率層(InwGa(1-w)N層)102Bの厚さを減らして、低屈折率層102AのAlxGayIn(1-x-y)N層102A1の厚さを増やすことができる。これにより、低屈折率層102Aと高屈折率層102Bとの実効的な屈折率差が大きくなる。その結果、第1反射鏡102の反射率をより高めることができる。このように、低屈折率層102Aと高屈折率層102Bの厚さを変化させることで、それぞれの層の歪に起因する欠陥の発生を防止できると共に、反射率を高めることができる。
【0047】
低屈折率層102Aの一例として、In0.005Ga0.995N(10nm)/Al0.6Ga0.4N(10.5nm)/In0.005Ga0.995N(2nm)/Al0.6Ga0.4N(10.5nm)/In0.005Ga0.995N(8.5nm)の多層構造が挙げられる。また、高屈折率層102Bの一例として、In0.09Ga0.91N(49.2nm)が挙げられる。
【0048】
第1反射鏡102における低屈折率層102Aと高屈折率層102Bのペアの数は、例えば、55.5ペアである。この場合、第1反射鏡102の反射率は、例えば、450nmの波長帯の光に対して、99.5%以上となる。また、第1反射鏡102の熱抵抗値は、0.07mK/Wとなる。ただし、低屈折率層102A及び高屈折率層102Bの構成やペアの数は、これに限定されない。
【0049】
<活性層の温度に関するシミュレーション>
次に、
図3を参照して、第1反射鏡102及び活性層104の間の面直方向における距離を変化させた際の活性層104の温度変化の一例を説明する。また、第1反射鏡102の熱抵抗値を変化させた際の活性層104の温度変化の一例について説明する。
【0050】
図3は、第1反射鏡102及び活性層104の間の面直方向における距離を変化させた際の活性層104の温度変化に関するシミュレーション結果を示すグラフである。
図3のグラフにおいて、第1反射鏡102及び活性層104の間の面直方向における距離をX軸に示し、活性層104の温度をY軸に示す。各結果を計算する際、光出力の値を一定としている。
【0051】
第1反射鏡102及び活性層104の間の面直方向における距離を、単に、「第1反射鏡102及び活性層104の間の距離」という。第1実施形態の場合、第1反射鏡102及び活性層104の間の距離は、第1スペーサ層103の厚みに対応する。
【0052】
図3において、〇印のプロット点で示す第1シミュレーション121Sは、熱抵抗値が0.0372mK/Wの第1反射鏡102を有する面発光レーザ1のシミュレーション結果である。△印のプロットで示す第2シミュレーション122Sは、熱抵抗値が0.0704mK/Wの第1反射鏡102を有する面発光レーザ1のシミュレーション結果である。□印のプロットで示す第3シミュレーション123Sは、熱抵抗値が0.5mK/W以上の第1反射鏡102を有する面発光レーザ1のシミュレーション結果である。
【0053】
第1シミュレーション121S及び第2シミュレーション122Sで用いた第1反射鏡102は、ともに、三種類以上の元素を含む化合物半導体層で構成される。これに対して、第3シミュレーション123Sで用いた第1反射鏡102は、誘電体層で構成される。
【0054】
ところで、活性層104は、例えば、発光の際に発熱する。そのときの温度上昇の度合いによって、面発光レーザ1の発振閾値電流が上昇し、光出力が飽和する。すなわち、活性層104の温度を高めることで、光出力を低減させることが可能となる。面発光レーザ1を通信や照明等の用途に使用する場合、発振閾値電流の低減を図る必要がある。すなわち、これらの用途の光源として、活性層104の温度上昇は好ましくない。これに対して、第1実施形態に係る面発光レーザ1では、活性層104の温度上昇を利用して、光出力を低減させる。換言すれば、通信や照明等の光源に対して求められる要望と相対する観点から、面発光レーザ1の発光特性を制御する。光出力を低減することで、アイセーフな光源を提供できる。
【0055】
図3に示すように、第1反射鏡102の熱抵抗値が最も小さい第1シミュレーション121Sにおいて、活性層104の温度上昇が最も低く、第1反射鏡102の熱抵抗値の上昇に伴い、活性層104の温度が上昇した。
【0056】
第1シミュレーション121S、第2シミュレーション122S、及び第3シミュレーション123Sのそれぞれにおいて、第1反射鏡102及び活性層104の間の距離の減少に従い、活性層104の温度が上昇した。特に、第1反射鏡102及び活性層104の間の距離が、500nm以下の場合、活性層104の温度が顕著に上昇した。これは、第1反射鏡102の熱抵抗値の上昇によって、第1反射鏡102及び第1スペーサ層103を介した放熱が抑制され、活性層104に熱が滞留しやすい状況が生じたためと考えられる。
【0057】
第1反射鏡102及び活性層104の間の距離を500nm以下とすることで、活性層104の温度を高め、より効果的に光出力を低減することができる。さらに効果的に光出力を低減させるため、第1反射鏡102及び活性層104の間の距離を400nm以下とすることが好ましく、第1反射鏡102及び活性層104の間の距離を250nm以下とすることがさらに好ましい。これに対して、光出力が低下しすぎることを防止する観点や、歩留まりの低下を防止する観点等から、第1反射鏡102及び活性層104の間の距離を100nm以上とすることが好ましい。
【0058】
<素子抵抗に関するシミュレーション>
次に、
図4を参照して、第1スペーサ層103の厚さを変化させた際の面発光レーザ1における素子抵抗の変化の一例を説明する。
【0059】
図4は、第1スペーサ層103の厚さを変化させた際の面発光レーザ1における素子抵抗の変化に関するシミュレーション結果を示すグラフである。
図4のグラフにおいて、第1スペーサ層103の厚さをX軸に示し、素子抵抗をY軸に示す。
【0060】
面発光レーザ1がイントラキャビティ構造を備える場合、活性層104より下側の第1スペーサ層103の内部で、メサ構造150のエッチングを終端させる。メサ構造150を形成する際のエッチングにおいて、製造誤差を予め考慮し、第1スペーサ層103の表面より若干深く削るためである。他方で、第2電極109と第1スペーサ層103との接合位置は、メサ構造150の外周部であるため、第1スペーサ層103が薄くなるに従い、素子抵抗が上昇する。このことから、第1スペーサ層103の厚さを、数百nm以上確保する必要がある。
【0061】
図4に示すように、第1スペーサ層103の厚さが、1μm以上であれば素子抵抗が十分に低い。これに対して、第1スペーサ層103の厚さが、400nm以下の場合、素子抵抗が、150Ωを超えた。このため、第1スペーサ層103の厚みを400nm以下とすることは、一般的な電気的特性としては、好ましくない。
【0062】
しかしながら、面発光レーザ1に関しては、光出力の低減を図るため、発光に必要な電流値は、発振閾値電流をわずかに超えるものであればよい。そのため、素子抵抗が高くても、発振閾値電流は、素子の破損等につながるような極めて大きなものでなければ、ある程度高くても許容される。また、素子抵抗が高いほうが、微小電流を制御しやすい。さらに、素子抵抗が高いことで、万が一、面発光レーザ1に大電流が流れても、ジュール熱によって、活性層104の温度上昇が起こり得る。その結果、光出力のさらなる低減が図られる。さらに、第1スペーサ層103が薄くなることで、共振器領域100Cの共振器長が短くなり、単一の縦モードの光出力が得られる。さらに、共振器領域100Cでの光閉じ込め係数が向上する。
【0063】
<製造方法>
次に、第1実施形態に係る面発光レーザ1の製造方法を説明する。
【0064】
まず、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)装置を用いて基板101上に第1反射鏡102、第1スペーサ層103、活性層104及び第2スペーサ層105を形成する。次に、熱処理により、例えば、第1スペーサ層103、第2スペーサ層105に含まれる不純物を活性化させる。例えば熱処理では基板101を加熱する。
【0065】
次に、フォトリソグラフィー及びドライエッチングを用いて、面直方向で第1スペーサ層103の一部が残存するように、第2スペーサ層105と、活性層104と、第1スペーサ層103の一部とにメサ構造を形成する。
【0066】
次に、フォトリソグラフィー及びドライエッチングを用いて、第2スペーサ層105の周縁部を、20nm程度の深さで除去する。そして、ドライエッチングで用いたマスクを使ってセルフアラインでSiO2層を絶縁領域172として形成する。SiO2層は、例えば電子線(Electron Beam:EB)蒸着により形成できる。このようにして、電流狭窄層170が形成される。
【0067】
次に、電流狭窄層170の上に透明導電層106を形成すると共に、透明導電層106の上に第1電極108を形成し、第1スペーサ層103の上に第2電極109を形成する。
【0068】
次に、透明導電層106の上に第2反射鏡107を形成する。まず、位相調整用のTa2O5層を形成し、その後に、λ/4の光学的厚さでSiO2層とTa2O5層と交互に積層する。
【0069】
このようにして、第1実施形態に係る面発光レーザ1を製造する。
【0070】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主として第1反射鏡の構成の点で第1実施形態と相違する。
図5は、第2実施形態に係る面発光レーザ1Aを示す断面模式図である。
図6は、第2実施形態に係る第1反射鏡202の構成の詳細を示す断面模式図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成部に関しては、同一符号を付すなどして、適宜説明を省略する。
【0071】
図5に示すように、第2実施形態に係る面発光レーザ1Aは、基板101と、第1反射鏡202と、第1スペーサ層103と、活性層104と、第2スペーサ層105と、透明導電層106と、第2反射鏡107と、第1電極108と、第2電極109と、を有する。第2スペーサ層105は、例えば、p型のAlGaN層を含む。第2スペーサ層105におけるp型のAlGaN層は、電子ブロック層として機能する。
【0072】
図6に示すように、第1反射鏡202は、低屈折率層202Aと高屈折率層202Bとが交互に積層された多層膜反射鏡である。第1反射鏡202において、低屈折率層202Aとして、熱抵抗値の高い三種類以上の元素を含む化合物半導体層が用いられる。例えば、低屈折率層202Aは、AlInN層である。ただし、これに限定されない。
【0073】
これに対して、高屈折率層202Bとして、二種類の元素を含む化合物半導体層が用いられる。例えば、高屈折率層202Bは、GaNである。ただし、これに限定されない。
【0074】
このように、低屈折率層202A又は高屈折率層202Bが、二種類の元素を含む化合物半導体層であっても、第1反射鏡202の熱抵抗値は、0.07mK/Wとなる。これにより、活性層104で生じた熱が外部に散逸することを、効果的に防止できる。
【0075】
低屈折率層202Aに二種類の元素を含む化合物半導体層が用いられ、高屈折率層202Bに三種類以上の元素を含む化合物半導体層が用いられてもよい。ただし、例えば、活性層104で生じた熱が外部に散逸することを防止する観点から、活性層104に近い低屈折率層202Aに三種類以上の元素を含む化合物半導体層を用いることが好ましい。
【0076】
低屈折率層202Aと高屈折率層202Bのペアのうち、第1スペーサ層103に隣接するペアの低屈折率層202A及び高屈折率層202Bの一方は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層であることが好ましい。また、第1スペーサ層103に隣接するペアの低屈折率層202A及び高屈折率層202Bの双方は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層であることがより好ましい。
【0077】
低屈折率層202Aと高屈折率層202Bのペアのうち、第1スペーサ層103に隣接するペア以外のペアにおいて、低屈折率層202A及び高屈折率層202Bの双方が、二種類の元素を含む化合物半導体層であってもよい。
【0078】
第2実施形態の面発光レーザ1Aは、第1実施形態の面発光レーザ1と同様の方法で製造することができる。そのため、第2実施形態の面発光レーザ1Aの製造方法に関する詳細な説明を省略する。
【0079】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主として第1スペーサ層の構成の点で第1実施形態及び第2実施形態と相違する。
図7は、第3実施形態に係る面発光レーザ1Bを示す断面模式図である。なお、第3実施形態において、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成部に関しては、同一符号を付すなどして、適宜説明を省略する。
【0080】
図7に示すように、第1スペーサ層303は、低熱抵抗層303Aと高熱抵抗層303Bを含む複数層で構成される。低熱抵抗層303Aは、例えば、第1反射鏡102の上に設けられる。低熱抵抗層303Aは、二種類の元素を含む化合物半導体層であってよい。例えば、低熱抵抗層303Aは、GaNである。
【0081】
これに対して、高熱抵抗層303Bは、例えば、活性層104の下に設けられる。高熱抵抗層303Bは、三種類以上の元素を含む化合物半導体層であってよい。例えば、高熱抵抗層303Bは、InGaNである。
【0082】
低熱抵抗層303Aが、活性層104側に配置され、高熱抵抗層303Bが、第1反射鏡102側に配置されてもよい。ただし、活性層104で生じた熱が外部に散逸することを防ぐ観点から、
図7に示すように、高熱抵抗層303Bが、活性層104側に配置されることが好ましい。
【0083】
このように、第1スペーサ層303が、熱抵抗値の高い三種類以上の元素を含む化合物半導体層を含むことで、活性層104で生じた熱が外部に散逸することを防ぐことができる。これにより、面発光レーザ1Bの発振閾値電流が上昇し、光出力を低減することができる。
【0084】
第3実施形態の面発光レーザ1Bは、第1実施形態の面発光レーザ1及び第2実施形態の面発光レーザ1Aと同様の方法で製造することができる。そのため、第3実施形態の面発光レーザ1Bの製造方法に関する詳細な説明を省略する。
【0085】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る投影装置を、
図8を参照して説明する。
図8は、第4実施形態に係る投影装置1000の構成の一例を説明する図である。投影装置1000は、レーザ光を走査して画像を描画することができる。
【0086】
図8に示すように、投影装置1000は、光源1001と、光走査部1002とを備えている。光源1001は、第1~第3実施形態に係る面発光レーザを、1又は2以上備えている。
【0087】
光源1001に含まれる面発光レーザが1つの場合には、投影装置1000は単色の画像を対象物1003に投影する。光源1001に含まれる面発光レーザが2以上の場合には、投影装置1000は、各面発光レーザの光軸を同軸上に揃えて出射面から出射し、面発光レーザ毎に発振波長を変えることで、複数の色の画像を対象物1003に投影できる。
【0088】
光走査部1002は光源1001から出射されたレーザ光を走査し対象物1003へ投影するための素子を含む。このような素子として、2軸方向に可動するMEMS(micro electro mechanical systems)ミラーや1軸方向に可動するMEMSミラーを2個組み合わせた素子等を用いることができる。光走査部1002は、光源1001から出射されたレーザ光の進行方向を調整する光学素子の一例である。
【0089】
画像の生成の際には、光走査部1002の走査に合わせて、レーザ光の強度を変調して対象物1003上にレーザ光を照射する。このようにして、対象物1003上に直接画像を生成することができる。
【0090】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係るヘッドマウントディスプレイを、
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は、第5実施形態に係るヘッドマウントディスプレイ60の構成の一例を説明する斜視図である。
図10はヘッドマウントディスプレイ60の構成の一例を説明する断面図である。
【0091】
ヘッドマウントディスプレイ60は、人間の頭部に装着可能な頭部装着型の表示装置の一例であり、例えば眼鏡に類する形状とすることができる。なお、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mount Display)を以降ではHMDと省略して表記する。
【0092】
図9において、HMD60は、左右に1組ずつ略対称に設けられたフロント60a及びテンプル60bにより構成されている。フロント60aは、例えば、導光板61により構成することができ、光学系や制御装置等は、テンプル60bに内蔵することができる。
【0093】
図10は、HMD60の構成を部分的に示している。なお、
図10では、左眼用の構成を例示しているが、HMD60は右眼用としても同様の構成を備えている。
【0094】
HMD60は、制御装置11と、光源ユニット530と、光量調整部507と、反射面14を有する可動装置13と、導光板61と、ハーフミラー62とを備えている。HMD60は表示装置の一例である。
【0095】
光源ユニット530は、赤色レーザ光源、緑色レーザ光源及び青色レーザ光源と、複数のコリメートレンズと、複数のダイクロイックミラーとを、光学ハウジングによってユニット化したものである。光源ユニット530において、赤色レーザ光源、緑色レーザ光源及び青色レーザ光源からの三色のレーザ光は、合成部となるダイクロイックミラーで合成される。光源ユニット530からは、合成された平行光が発せられる。光源ユニット530は光源装置の一例である。
【0096】
赤色レーザ光源は、第1~第3実施形態に係る面発光レーザを1又は2以上備え、赤色のレーザ光を照射する。緑色レーザ光源は、第1~第3実施形態に係る面発光レーザを1又は2以上備え、緑色のレーザ光を照射する。青色レーザ光源は、第1~第3実施形態に係る面発光レーザを1又は2以上備え、青色のレーザ光を照射する。
【0097】
光源ユニット530からの光は、光量調整部507により光量調整された後、可動装置13に入射する。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面14をXY方向に可動し、光源ユニット530からの光を二次元走査する。可動装置13の駆動制御は、赤色レーザ光源、緑色レーザ光源及び青色レーザ光源の発光タイミングに同期して行われる。
【0098】
可動装置13による走査光は、導光板61に入射する。導光板61は、走査光を内壁面で反射させながらハーフミラー62に導光する。導光板61は、走査光の波長に対して透過性を有する樹脂等により形成されている。
【0099】
ハーフミラー62は、導光板61からの光をHMD60の背面側に反射し、HMD60の装着者63の眼の方向に出射する。ハーフミラー62は、例えば、自由曲面形状を有している。走査光による画像は、ハーフミラー62での反射により、装着者63の網膜に結像する。或いは、ハーフミラー62での反射と眼球における水晶体のレンズ効果とにより、装着者63の網膜に結像する。またハーフミラー62での反射により、画像は空間歪が補正される。装着者63は、XY方向に走査される光で形成される画像を視認することができる。
【0100】
ハーフミラー62が用いられているため、装着者63には、外界からの光による像と走査光による画像が重畳して視認される。ハーフミラー62に代えてミラーを設けることで、外界からの光をなくし、走査光による画像のみを視認できる構成にしてもよい。
【0101】
本実施形態では、光源に端面発光型レーザを用いた場合と比べて、NDフィルター等の部品点数が減り消費電力も少ない小型で軽量なHMDが実現できる。
【0102】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る人の瞳孔応答を利用したバイオメトリック認証装置を、
図11を参照して説明する。
図11は、本実施形態に係るバイオメトリック認証装置の構成の一例を説明する図である。バイオメトリック認証装置20は、光源21と、光走査部22と、第1の光学素子23と、第2の光学素子24と、撮像素子25と、制御装置27とを備える。光源21は、第1~第3実施形態に係る面発光レーザを1又は2以上備え、光源21から出射された光は、光走査部22に入射する。光走査部22は、制御装置27からの信号に基づき、反射面を可動し、光源21からの光を走査する。光走査部22による走査光は、第1の光学素子23と第2の光学素子24を経て瞳26へ照射される。瞳26へ照射した光の強度で瞳孔の大きさを制御して、虹彩情報を撮像素子25で取得する。そして、制御装置27が撮像素子25の出力に基づき、人(生体)の瞳26の情報を取得する。バイオメトリック認証装置20は生体情報取得装置の一例であり、光源21は光源装置の一例であり、撮像素子25は受光装置の一例であり、制御装置27は情報取得部の一例である。
【0103】
例えば、第1の光学素子23は、光走査部22で走査された光を第2の光学素子24へ導波させる導波路であり、第2の光学素子24は、第1の光学素子23から出射された光を瞳26へ経路を変えるためのミラーである。本実施形態では二つの光学素子に分けて記載したが、走査された光を瞳26へ出射する光学素子であれば他の手法を用いることもできる。
【0104】
光源21は複数の素子を備えることができ、例えば、赤、青、緑、赤外の4波長のレーザが同軸上に出射されるように実装されたモジュールである。青や緑の波長は、瞳孔反応が他の波長より敏感であるため、瞳孔をより狭めて精細な虹彩情報を得ることができる。また、多波長を用いることで、虹彩の波長ごとの生体情報が得られ、認証精度がより高くなる。
【0105】
第1~第3実施形態に係る面発光レーザを用いることで、光出力を弱くするためのフィルターが不要でアイセーフかつ高精度なバイオメトリック認証装置20が実現できる。
【0106】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0107】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 活性層と、該活性層を挟む、第1半導体層と、第2半導体層と、を含む共振器領域と、
前記共振器領域を挟む、第1反射鏡と、第2反射鏡と、
を備え、
前記第1反射鏡は、複数の半導体層が積層された多層膜反射鏡であり、
前記活性層と前記第1反射鏡の間の距離は、400nm以下であり、
前記第1反射鏡における、前記複数の半導体層の少なくとも一層は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層である、面発光レーザ。
<2> 活性層と、該活性層を挟む、第1半導体層と、第2半導体層と、を含む共振器領域と、
前記共振器領域を挟む、第1反射鏡と、第2反射鏡と、
を備え、
前記第1反射鏡は、複数の半導体層が積層された多層膜反射鏡であり、
前記活性層と前記第1反射鏡の間の距離は、400nm以下であり、
前記第1反射鏡の熱抵抗値は、0.07mK/W以上である、面発光レーザ。
<3> 前記複数の半導体層の少なくとも1層は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層である、前記<2>に記載の面発光レーザ。
<4> 前記複数の半導体層は、第1屈折率を有する低屈折率層と、前記第1屈折率より高い屈折率である第2屈折率を有する高屈折率層と、を含む半導体層のペアを複数含み、
前記複数のペアの少なくとも1つのペアを構成する低屈折率層及び高屈折率層は、ともに三種類以上の元素を含む化合物半導体層である、前記<1>~前記<3>のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
<5> 前記少なくとも1つのペアは、前記共振器領域に隣接する、前記<4>に記載の面発光レーザ。
<6> 前記複数の半導体層は、第1屈折率を有する低屈折率層と、前記第1屈折率より高い屈折率である第2屈折率を有する高屈折率層と、を含む半導体層のペアを複数含み、
前記複数のペアの少なくとも1つのペアを構成する低屈折率層及び高屈折率層の一方は、三種類以上の元素を含む化合物半導体層であり、他方は、二種類の元素を含む化合物半導体層である、前記<1>~前記<3>のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
<7> 前記少なくとも1つのペアは、前記共振器領域に隣接する、前記<6>に記載の面発光レーザ。
<8> 前記第1半導体層は、低熱抵抗層と、前記低熱抵抗層より高い熱抵抗値を有する高熱抵抗層を含む、前記<1>~前記<7>のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
<9> 前記高熱抵抗層は、前記低熱抵抗層より、前記活性層に近い側に配置される、前記<8>に記載の面発光レーザ。
<10> 前記<1>~前記<9>のいずれか1つに記載の面発光レーザを備えることを特徴とする光源装置。
<11> 前記<1>~前記<9>のいずれか1つに記載の面発光レーザを備えることを特徴とする表示装置。
<12> 前記<1>~前記<9>のいずれか1つに記載の面発光レーザを備えることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。
<13> 生体に光を照射する光源装置と、
前記生体からの反射光を受光する受光装置と、
前記受光装置の出力に基づき前記生体の情報を取得する情報取得部と、
を有し、
前記光源装置は、前記<1>~前記<9>のいずれか1つに記載の面発光レーザを備えることを特徴とする生体情報取得装置。
【符号の説明】
【0108】
1、1A、1B 面発光レーザ
101 基板
102、202 第1反射鏡
102A、202A 低屈折率層
102B、202B 高屈折率層
103、303 第1スペーサ層
303A 低熱抵抗層
303B 高熱抵抗層
104 活性層
105 第2スペーサ層
106 透明導電層
107 第2反射鏡
108 第1電極
109 第2電極
100C 共振器領域
150 メサ構造
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2019-153779号公報
【特許文献2】特許第6129051号公報