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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135410
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B42B 5/00 20060101AFI20240927BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20240927BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B42B5/00
B65H37/04 Z
G03G15/00 432
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046070
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 正和
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 一貴
(72)【発明者】
【氏名】杉山 恵介
【テーマコード(参考)】
2H072
3F108
【Fターム(参考)】
2H072GA07
3F108GA01
3F108GB01
3F108HA02
3F108HA11
(57)【要約】
【課題】液体付与よりも前に媒体の表面にする前処理を行うことで、より多様な媒体を用いる圧着綴じの綴じ強度を向上できる媒体処理装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一枚の媒体の一部に液体付与をする液体付与部と、液体付与部において液体付与をされた少なくとも一枚の媒体を含む媒体束に所定の後処理を施す後処理手段と、を備え、液体付与部は、媒体に対し後処理が施される前の当該媒体の表面に対する処置としての表面処理を施す表面処理材と、当該表面を含む媒体に液体付与を施す液体付与部材と、を備える、媒体処理装置による。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一枚の媒体の一部に液体付与をする液体付与部と、
前記液体付与部において液体付与をされた少なくとも一枚の媒体を含む媒体束に所定の後処理を施す後処理手段と、
を備え、
前記液体付与部は、
前記媒体に対し前記後処理が施される前の当該媒体の表面に対する処置としての表面処理を施す表面処理材と、
当該表面を含む前記媒体に前記液体付与を施す液体付与部材と、
を備える、
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記液体付与部は、前記表面処理材と前記液体付与部材を含む一体物を保持し、前記媒体に対し当該一体物を接触又は離間する方向に移動させる、
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記液体付与部は、
前記表面処理材を、
前記液体付与が施される前の前記媒体に接触して前記表面処理を行うときの表面処理位置と、前記媒体の表面から離間した離間位置との間を移動可能な接離方向移動手段と、
前記表面処理材を前記記媒体に当接させながら移動させる当接移動手段と、
を有し、
当該表面処理材は、前記媒体において前記液体付与が施される領域を含む所定の範囲において、前記媒体に当接した状態で移動することにより前記表面処理を行う、
請求項1又は2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記液体付与部は、
前記表面処理を実行した後の領域に対し前記液体付与を施す、
請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記液体付与部は、
前記媒体の種別を示す媒体情報に応じて、前記表面処理の有無を選択する、
請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記液体付与部は、
前記媒体の種別を示す媒体情報に応じて、前記当接移動手段による移動回数を可変する、
請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された複数の前記媒体を加圧変形させて綴じる請求項1に記載の媒体処理装置と、
を備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の媒体を積み重ねたシート束を綴る媒体処理装置が知られている。当該媒体装置に適用される綴じ処理として、シート束に貫通させる部材(綴じ部材)を用いて綴る「針綴じ処理」や、シート束の一部を加圧して変形させることで綴る「圧着綴じ処理」などが知られている。なお、シート状の媒体としては、例えば用紙であり、シート束は用紙束である。
【0003】
用紙を重ねた用紙束を圧着綴じする部分に、予め液体を付与することで、綴じ強度を高める技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術を、例えば、グロスコート紙などのように、表面に加工が施されている用紙に適用した場合、表面加工の影響で液体が用紙に浸透しにくい状態であるから、液体付与による綴じ強度の向上を得ることが困難になる。すなわち、従来技術では、媒体の種類によっては、綴じ強度の向上を図る点において課題がある。
【0005】
本発明は、液体付与よりも前に媒体の表面にする前処理を行うことで、より多様な媒体を用いる圧着綴じの綴じ強度を向上できる媒体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、媒体処理装置に関し、少なくとも一枚の媒体の一部に液体付与をする液体付与部と、前記液体付与部において液体付与をされた少なくとも一枚の媒体を含む媒体束に所定の後処理を施す後処理手段と、を備え、前記液体付与部は、前記媒体に対し前記後処理が施される前の当該媒体の表面に対する処置としての表面処理を施す表面処理材と、当該表面を含む前記媒体に前記液体付与を施す液体付与部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体付与よりも前に媒体の表面に前処理を行うことで、より多様な媒体からなる媒体束に対して圧着綴じの綴じ強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像形成システムの全体構成を示す図。
図2】第一実施形態に係る後処理装置の内部構造を示す図。
図3】端綴じ処理部の第一例を搬送方向の上流側から見た模式図。
図4】端綴じ処理部の第一例を主走査方向の液体付与部側から見た模式図。
図5】圧着部の構成を示す模式図。
図6】端綴じ処理部の変形例を示す図。
図7】端綴じ処理部の変形例に係る液体付与圧着部を示す図。
図8】液体付与圧着部による液体付与動作及び圧着綴じ動作を示す図。
図9】針綴じ処理部を搬送方向の上流側から見た模式図。
図10】針綴じ処理部の変形例を搬送方向の上流側から見た模式図。
図11】第一実施形態に係る後処理装置の動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図。
図12】斜め綴じ処理のフローチャート
図13】斜め綴じ処理における端綴じ処理部の位置を示す図。
図14】二箇所綴じの実行中における端綴じ処理部の位置を示す図。
図15】端綴じ処理部の動作例を示す図。
図16】端綴じ処理部による表面処理と液体付与処理の動作例を示す図。
図17】端綴じ処理部の拡大図。
図18】液体付与部の拡大図。
図19】液体付与部の拡大図。
図20】表面処理を実行する液体付与圧着綴じ処理のフローチャート。
図21】表面処理部材のメンテナンス処理のフローチャート。
図22】媒体種別に基づく表面処理回数を関連づけるデータテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[画像形成システムの実施形態]
以下、本発明に係る画像形成システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成システム1の全体構成を示す図である。画像形成システム1は、媒体としての用紙Pに対して画像を形成する機能と、画像が形成された用紙P(画像が形成されていない用紙Pでも可)に対して所定の後処理を施す機能を有する。図1に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置2と、後処理装置3(媒体処理装置)とを、連携して構成される。
【0010】
画像形成装置2は、用紙Pに画像を形成し、画像を形成した用紙Pを後処理装置3に排出する機能を備える。画像形成装置2は、用紙Pが収容される用紙収容部(トレイ)と、トレイに収容された用紙Pを搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された用紙Pに画像を形成する画像形成部と、を備える。
【0011】
画像形成部は、インクを用いて画像を形成するインクジェット方式でもよいし、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式でもよい。画像形成装置2の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0012】
図1に示すように、画像形成装置2は、操作パネル110を備えている。操作パネル110は、ユーザからの入力操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。なお、報知部の具体例はディスプレイに限定されず、LEDランプやスピーカ等でもよい。又、後処理装置3に上記と同様の操作パネル110を備えるようにしてもよい。
【0013】
[後処理装置3の第一例]
図2は、本実施形態に係る後処理装置3の内部構造を示す図である。後処理装置3は、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pに対して所定の後処理を施す。本実施形態に係る後処理の一つは、画像が形成された複数枚の用紙Pの束(シート束)を、綴じ針を用いずに綴じる「圧着綴じ処理」としての綴じ処理である。また、本実施形態に係る後処理の他の一つは、画像が形成された複数枚の用紙Pの束(シート束)を、綴じ針を用いて綴じる「針綴じ処理」としての綴じ処理である。以下、用紙Pの束を媒体束としての「用紙束Pb」と表記する。なお、本実施形態においては、圧着綴じ処理を行う場合の液体付与処理に関する説明を主に行う。しかし、針綴じ処理に関連して行う液体付与処理も同様のものである。
【0014】
なお、本実施形態に係る「圧着綴じ処理」とは、より詳細には、用紙束Pbの一部に相当する綴じ位置に対し圧力を加えて、当該綴じ位置を変形させて(加圧変形させて)綴じる処理であって、「圧着綴じ」と称される処理である。なお、後処理装置3において実行可能な綴じ処理は、用紙束Pbの端部を綴じる端綴じ処理と、用紙束Pbの中央部を綴じる中綴じ処理を含むものとする。
【0015】
後処理装置3は、搬送ローラ対10~19(搬送部)と、切替爪20とを備える。搬送ローラ対10~19は、後処理装置3の内部において、画像形成装置2から供給された用紙Pを搬送する。より詳細には、搬送ローラ対10~13は、第一搬送路Ph1に沿って用紙Pを搬送する。また、搬送ローラ対14~15は、第二搬送路Ph2に沿って用紙Pを搬送する。さらに、搬送ローラ対16~19は、第三搬送路Ph3に沿って用紙Pを搬送する。
【0016】
第一搬送路Ph1は、画像形成装置2からの用紙Pの供給口から排出トレイ21に至る経路である。第二搬送路Ph2は、搬送ローラ対11、14の間において第一搬送路Ph1から分岐し、内部トレイ22を経由して排出トレイ26に至る経路である。第三搬送路Ph3は、搬送ローラ対11、14の間において第一搬送路Ph1から分岐し、排出トレイ30に至る経路である。
【0017】
切替爪20は、第一搬送路Ph1及び第二搬送路Ph2の分岐位置に配置されている。切替爪20は、第一搬送路Ph1を通じて用紙Pを排出トレイ21に排出する第1位置と、第一搬送路Ph1を搬送される用紙Pを第二搬送路Ph2に導く第2位置とに切り替え可能に構成されている。また、第二搬送路Ph2に進入した用紙Pの後端が搬送ローラ対11を通過したタイミングで、搬送ローラ対14を逆回転させることによって、当該用紙Mが第三搬送路Ph3に導かれる。なお、搬送時に用紙Pの位置を検知するセンサは、図2において、黒色で塗りつぶされた三角形(▲)で示している。
【0018】
後処理装置3は、排出トレイ21を備える。排出トレイ21は、第一搬送路Ph1を通じて排出された用紙Pを載置する。排出トレイ21には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、綴じ処理が施されない用紙Pが排出される。
【0019】
また、後処理装置3は、内部トレイ22(トレイ)と、エンドフェンス23と、サイドフェンス24L、24Rと、端綴じ処理部25と、針綴じ処理部155と、排出トレイ26とを備える。内部トレイ22、エンドフェンス23、サイドフェンス24L、24R、端綴じ処理部25、及び針綴じ処理部155は、第二搬送路Ph2から内部トレイ22に搬送される複数の用紙Pからなる用紙束Pbに端綴じ処理を施す。ここでいう「端綴じ処理」とは、用紙束Pbの主走査方向に平行な一辺に沿って綴じ処理を行う「平行綴じ処理」(図14参照)、用紙束Pbの角部に綴じ処理を行う「斜め綴じ処理」(図13参照)、用紙束Pbの搬送方向に平行な一辺に沿って綴じ処理を行う「垂直綴じ処理」が含まれる。斜め綴じ処理で綴じられる圧着綴じ位置は「端斜め綴じ位置」の一例であり、平行綴じ処理または垂直綴じ処理で綴じられる圧着綴じ位置は「端綴じ位置」の一例である。
【0020】
排出トレイ26には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、端綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。以下、搬送ローラ対15からエンドフェンス23に向かって用紙Pが搬送される方向を、「搬送方向」と定義する。また、「用紙(媒体)の幅」という場合は、用紙Pの厚み方向及び搬送方向に直交する方向(主走査方向)の長さ、及び用紙Pの搬送方向の長さが含まれるものとする。
【0021】
第二搬送路Ph2を経由して順番に搬送される複数の用紙Pは、載置トレイとしての内部トレイ22に一時的に載置される。エンドフェンス23は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの搬送方向の位置を揃える。サイドフェンス24L、24Rは、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える。端綴じ処理部25及び針綴じ処理部155は、エンドフェンス23及びサイドフェンス24L、24Rによって揃えられた用紙束Pbの端部を綴じる。そして、搬送ローラ対15は、端綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。
【0022】
さらに、後処理装置3は、エンドフェンス27と、中綴じ処理部28と、用紙折りブレード29と、排出トレイ30とをさらに備える。エンドフェンス27、中綴じ処理部28、及び用紙折りブレード29は、第三搬送路Ph3を搬送される複数の用紙Pにより構成される用紙束Pbに中綴じ処理を施す。排出トレイ30には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、中綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。
【0023】
エンドフェンス27は、第三搬送路Ph3を順番に搬送される複数の用紙Pの搬送方向の位置を揃える。また、エンドフェンス27は、用紙束Pbの中央を、中綴じ処理部28に対面させる綴じ位置と、用紙折りブレード29に対面させる折り位置とに移動可能に構成されている。中綴じ処理部28は、綴じ位置のエンドフェンス27によって揃えられた用紙束Pbの中央を綴じる。用紙折りブレード29は、折り位置のエンドフェンス27に載置された用紙束Pbを半分に折って、搬送ローラ対18に挟持させる。搬送ローラ対18、19は、中綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ30に排出する。
【0024】
[端綴じ処理部25の説明]
図3は、液体付与処理と圧着綴じ処理とを行う端綴じ処理部25の第一例を搬送方向の上流側から見た模式図である。図4は、端綴じ処理部25の第一例を主走査方向の液体付与部31側から見た模式図である。図3及び図4に示すように、端綴じ処理部25は、液体付与処理を実行する液体付与部31と、後処理手段の一例であって圧着綴じ処理を行う圧着部32とを備える。液体付与部31及び圧着部32は、内部トレイ22(図2参照)より搬送方向の下流側において、主走査方向に隣接して配置されている。
【0025】
液体付与部31は、第一貯液タンク43に貯留された液体を、内部トレイ22(図2参照)に載置された用紙P又は用紙束Pbに付与する。以下、液体付与部31が用紙P又は用紙束Pbに対して液体付与すること、及び当該液体付与する際の液体付与部31の動作を、「液体付与」と表記する。また、制御処理を伴う液体付与部31の液体付与動作を「液体付与処理」と表記する。
【0026】
ここで、液体付与に用いられる液体は、第一貯液タンク43に貯留されている。第一貯液タンク43に貯留されている液体とは、さらに詳しくは、化学式H2Oで表される水素と酸素の化合物の液体状態を主成分とするものである。液体状態であれば、その温度状態は問わず、いわゆる温水や熱水であってもよい。また、純水に限らず、精製水はもちろんのこと、イオン化した塩類が含まれていても良い。金属イオン含有量もいわゆる軟水から超硬水まで硬度は問わない。
【0027】
また主成分に加えて添加物が加えられていてもよい。水道水として用いられる残留塩素を含んでいてもよいし、着色剤・浸透剤・pH調整剤・フェノキシエタノールなどの防腐剤・グリセリンなどの乾燥防止剤等が添加されていることも望ましい。さらには、インクジェット方式の印刷装置で用いられるインクや、水性ペンに用いられるインクも成分として水を用いているので、これを「液体付与」として用いても良い。
【0028】
ここで具体的に挙げたものに限らず、次亜塩素酸水や消毒用に希釈したエタノール水溶液など広義の「水」であっても機能するが、圧着綴じとして機能させるためだけの用途であれば入手・管理が容易な水道水を用いればよい。又、液体としては、上記に例示したような水を主成分とする液体を用いる方が、水を主成分としていない液体を用いるよりも用紙束Pbの綴じ強度を向上させることができる。
【0029】
[液体付与部31と圧着部32の構成]
液体付与部31と圧着部32は、共に、端綴じ処理部移動モータ50の駆動力が伝達されることによって主走査方向に移動可能に構成されている。液体付与部31によって用紙P又は用紙束Pbに対して液体付与が行われる位置(液体付与位置)は、圧着部32による圧着綴じを行う予定である位置(圧着綴じ位置)に対応する。したがって、以下の説明では、液体付与位置と圧着綴じ位置には同一符号を付している。
【0030】
図3及び図4に示すように、液体付与部31は、端綴じ処理部移動モータ50の駆動力が伝達されることによって、圧着部32と共に主走査方向に移動可能に構成されている。液体付与部31は、用紙P又は用紙束Pbの載置台としての下押圧板33と、押圧手段としての上押圧板34と、液体付与部移動機構35と、液体付与機構36とを備える。液体付与部31の構成部品としての下押圧板33、上押圧板34、液体付与部移動機構35、及び液体付与機構36は、液体付与フレーム31a及びベース部材48により保持されている。
【0031】
下押圧板33及び上押圧板34は、内部トレイ22(図2参照)よりも搬送方向の下流側に配置されている。内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbは、下押圧板33にも載置される。下押圧板保持体331上に設けられている。上押圧板34は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの対面する位置において、用紙Pの厚み方向に移動可能に構成されている。すなわち、下押圧板33及び上押圧板34は、これらが対向する空間において、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbを挟みこむように、用紙P又は用紙束Pbの厚み方向において対向して配置されている。なお、以下、用紙P又は用紙束Pbの厚み方向については、単に「厚み方向」と表記する。さらに、上押圧板34には、ベースプレート40に取り付けられたジョイント46を介して保持される液体付与手段44の先端に対面する位置に、厚み方向に貫通する貫通口34aが形成されている。
【0032】
液体付与部移動機構35は、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与手段44を用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に移動させる。本実施形態に係る液体付与部移動機構35は、単一の液体付与部移動モータ37によって、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与手段44を連動させて、これらを所定の方向に移動させる。液体付与部移動機構35は、例えば、液体付与部移動モータ37と、台形ネジ38と、ナット39と、ベースプレート40と、柱状部材41a、41bと、コイルバネ42a、42bとを備える。
【0033】
液体付与部移動モータ37は、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与手段44を移動させる駆動力を発生させる。台形ネジ38は、用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に延設されると共に、液体付与フレーム31aに正逆方向に回転可能に取り付けられている。また、台形ネジ38は、プーリやベルト等を介して液体付与部移動モータ37の出力軸に接続されている。ナット39は、台形ネジ38に螺合されている。そして、液体付与部移動モータ37の駆動力が伝達されて正逆方向に台形ネジ38が回転することによってナット39が台形ネジ38上を往復移動する。
【0034】
ベースプレート40は、上押圧板34に対して離間した位置に配置されている。また、ベースプレート40は、液体付与手段44の先端部分をベースプレート40から上押圧板34に向けて突出させた状態で、液体付与手段44を保持している。さらに、ベースプレート40は、台形ネジ38に接続されて、台形ネジ38に接続されており、台形ネジ38が正逆方向に回転することによって台形ネジ38に沿って往復可能に構成されている。そして、ベースプレート40の用紙P又は用紙束Pbの厚み方向の位置は、液体付与部移動センサ40a(図11参照)によって検知される。
【0035】
柱状部材41a、41bは、液体付与手段44の先端の周囲において、ベースプレート40から上押圧板34に向かって突出している。また、柱状部材41a、41bは、ベースプレート40に対して厚み方向に相対的に移動可能に構成されている。さらに、柱状部材41a、41bは、下押圧板33側の先端部で上押圧板34を保持している。又、柱状部材41a、41bの下押圧板33と反対側の先端部には、柱状部材41a、41bがベースプレート40から外れるのを防止する抜け止めが設けられている。コイルバネ42a、42bは、ベースプレート40と上押圧板34との間において、柱状部材41a、41bに外挿されている。そして、コイルバネ42a、42bは、上押圧板34及び柱状部材41a、41bを、ベースプレート40に対して下押圧板33側に向かって付勢する。
【0036】
液体付与機構36は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbに液体付与する。より詳細には、液体付与機構36は、液体付与手段44を用紙P又は用紙束Pbに接触させることによって、用紙束Pbを構成する少なくとも1枚の用紙Pに液体付与する。液体付与機構36は、第一貯液タンク43と、液体付与手段44と、液体供給部材45と、ジョイント46とを備える。
【0037】
液体付与手段44は、液体付与部材44eと表面処理部材44fと、を組み合わせて構成されている。液体付与部材44eは、液体付与に用いる液体を保持し、液体付与において用紙P又は用紙束Pbに当接して液体を付与する部位である。表面処理部材44fは、液体付与の前に行われる表面処理において用紙P又は用紙束Pbの表面に当接し、液体付与位置に対して表面処理を行うための部位である。なお、液体付与手段44の詳細な構成は後述する。
【0038】
第一貯液タンク43は、用紙P又は用紙束Pbに供給するための液体を貯留する。第一貯液タンク43に貯留された液体の量は、第一液量検知センサ43aによって検知される。液体付与手段44は、第一貯液タンク43に貯液された液体を保持して用紙P又は用紙束Pbに当該液体を付与する。液体付与手段44は、先端を上押圧板34側に向けてベースプレート40に取り付けられている。また、液体付与手段44が備える液体付与部材44eは、吸液率の高い多孔性の材料や、毛細管現象によって液体を吸い上げることができる繊維材により構成されている。液体付与部材44eは、液体を吸い上げて保つことができる性質を有する素材であって、用紙Pに接触した状態で加えられる押圧力に応じて潰れる性質を備えるものであれば、その種類は問わない。例えば、スポンジのような発泡体でもよいし毛細管現象により液体を吸い上げることができる繊維でもよい。
【0039】
液体供給部材45は、基端が第一貯液タンク43に貯留された液体に浸漬され、先端が液体付与部材44eに接続された長尺の部材である。また、液体供給部材45は、例えば、液体付与部材44eと同様に、吸液率の高い材料で構成されている。これにより、液体供給部材45の基端から吸収された液体が液体供給部材45を伝わって液体付与手段44に供給される。尚、上述の説明では、液体付与部材44eと液体供給部材45が別個に構成されている場合について説明したが、液体付与部材44eと液体供給部材45が同様の性質をもった材料により一体的に構成されていてもよい。この場合でも、上述の説明と同様に毛細管現象によって第一貯液タンク43に貯留された液体を吸い上げることができるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0040】
保護部材45aは、液体供給部材45に外挿される長尺の筒体(例えば、チューブ)である。保護部材45aは、液体供給部材45が吸収した液体が漏れることや、蒸発することを防止するための部材である。また、液体供給部材45及び保護部材45aは、可撓性を有する材料で形成されている。ジョイント46は、液体付与手段44をベースプレート40に固定するものである。これにより、液体付与手段44は、液体付与部移動機構35によって移動されても、ベースプレート40から上押圧板34側に向けて突出すると共に、液体付与手段44の先端が上押圧板34側を向いた状態が維持される。
【0041】
さらに、端綴じ処理部25は、液体付与部回動機構55を備える。液体付与部回動機構55は、液体付与手段44を含む液体付与部31を、ベース部材48に対して回動する。液体付与部回動機構55は、ベース部材48に正逆方向に回転可能に設けられた液体付与部回動軸56と、液体付与部回動軸56に固定された駆動伝達ギヤ56aと、駆動伝達ギヤ56aと噛み合う液体付与部回動モータ57の出力ギヤ57aと、液体付与部回動モータ57を備える。
【0042】
後処理手段としての圧着部32は、用紙束Pbの液体付与部31で液体を付与された少なくとも一部分(すなわち、液体付与位置)を、凹凸状の上圧着歯32aと下圧着歯32bで挟持して加圧し変形させることによって、用紙束Pbを綴じる。以下、上圧着歯32aと下圧着歯32bによる挟持・加圧することで用紙束Pbの少なくとも一部を変形させて綴る処理及び動作を「圧着綴じ」と表記する。すなわち、圧着部32は、綴じ針などの綴じ部材を用いずに、用紙束Pbを綴じることができる。圧着部32の構成部品(上圧着歯32aと下圧着歯32b)は、圧着フレーム32cに設けられている。
【0043】
図5は、圧着部32の構成を示す模式図である。図5に示すように、圧着部32は、一対の綴じ歯(上圧着歯32aと下圧着歯32b)を備える。上圧着歯32aと下圧着歯32bは、内部トレイ22に載置された用紙束Pbを挟むことができるように、用紙束Pbの厚み方向に対向して配置されている。上圧着歯32aと下圧着歯32bの互いに対向する面は、凹部及び凸部が交互に形成された凹凸状に形成されている。また、上圧着歯32aと下圧着歯32bは、互いに噛合うように、凹部及び凸部がずれて形成されている。そして、上圧着歯32aと下圧着歯32bは、接離モータ32d(図11参照)の駆動力によって接離する。
【0044】
用紙束Pbを構成する複数の用紙Pが内部トレイ22に供給される過程では、図5(A)に示すように、上圧着歯32a及び下圧着歯32bは互いに離間している。そして、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pが内部トレイ22に載置されると、図5(B)に示すように、上圧着歯32a及び下圧着歯32bが噛み合って、用紙束Pbを厚み方向から加圧変形させる。これにより、内部トレイ22に載置された用紙束Pbが圧着綴じされる。また、圧着綴じされた用紙束Pbは、搬送ローラ対15(図2参照)によって、排出トレイ26に排出される。
【0045】
尚、圧着部32の構成としては、圧着機構を構成する上圧着歯32a及び下圧着歯32bが噛み合えばよいので、上記にて説明をした実施形態の態様に限定されるものではない。例えば、正転のみ、又は正逆転する駆動源とリンク機構を使って上圧着歯32aと下圧着歯32bの圧着及び離間動作を行うリンク機構方式の圧着機構(例えば、特許6057167号に開示されているもの)であっても良いし、駆動源の正逆方向の回転運動を直線的な往復運動に変換するねじ機構により、上圧着歯32aと下圧着歯32bの圧着(接近)及び離間動作を直線的に行う直動方式の圧着機構であってもよい。
【0046】
また、図3に示すように、圧着部32は、上圧着歯32aと下圧着歯32bが圧着フレーム32cに対して相対的に移動するための、綴じ歯スライド機構322を備える。綴じ歯スライド機構322は、圧着フレーム32cに備えられた綴じ歯スライドモータ32eと、綴じ歯スライドモータ32eの駆動力を、上圧着歯32a及び下圧着歯32bが設けられる綴じ歯部32fの主走査方向の移動に変換するための駆動伝達機構322aとを備える。尚、駆動伝達機構322aは、ラックピニオン機構あるいはクランクシャフト機構などの直動変換する機構であればよい。
【0047】
ここで綴じ歯部32fのスライド移動量は、上圧着歯32aと下圧着歯32bによる圧着痕長さと同等として、スライド移動前とスライド移動後で複数回の圧着綴じ動作を行う。すなわち、上圧着歯32aと下圧着歯32bによる圧着痕長さが10mmのとき、スライド移動量も10mmとすることで、スライド移動前の圧着動作(1打目)とスライド移動後の圧着動作(2打目)を合わせて、20mm幅の圧着痕長さを得ることができ、綴じ力が約2倍に向上する。
【0048】
さらに、圧着部32は、圧着部回動機構52を備える。圧着部回動機構52は、上圧着歯32a、下圧着歯32bを含む圧着フレーム32cを、ベース部材48に対して正逆方向に回転させる。圧着部回動機構52は、ベース部材48に支持された圧着部回転軸53と、駆動伝達機構54aと、圧着部回動モータ54を備える。
【0049】
また、図3に示すように、端綴じ処理部25は、端綴じ処理部移動機構47を備える。端綴じ処理部移動機構47は、内部トレイ22に載置された用紙Pの搬送方向の下流側の端部に沿って、端綴じ処理部25(すなわち、液体付与部31及び圧着部32)を主走査方向に移動させる。端綴じ処理部移動機構47は、例えば、ベース部材48と、案内軸49と、端綴じ処理部移動モータ50と、駆動力伝達機構51とを備える。
【0050】
液体付与部31及び圧着部32は、主走査方向に隣接させた状態でベース部材48に取り付けられている。案内軸49は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に延設されている。また、案内軸49は、ベース部材48を主走査方向に移動可能に支持している。端綴じ処理部移動モータ50は、端綴じ処理部25を移動させるための駆動力を発生させる。駆動力伝達機構51は、端綴じ処理部移動モータ50の駆動力を、プーリ51a、51bやタイミングベルト51cを介してベース部材48に伝達する。これにより、ベース部材48によって一体化された液体付与部31及び圧着部32は、案内軸49に沿って主走査方向に移動する。
【0051】
本実施形態に係る端綴じ処理部移動モータ50は、例えば、移動の度に原点位置(例えば、後述する待機位置HP)に端綴じ処理部25を戻さなくても、端綴じ処理部25を目標位置(後述する第一綴じ位置B1や第二綴じ位置B2)に停止させることができるサーボモータである。
【0052】
また、後処理装置3は、端綴じ処理部25が待機位置HP(図13図14参照)に到達したことを検知する端綴じ待機位置センサ44a(例えば、遮光型の光学センサ。図11参照。)と、端綴じ処理部移動モータ50の出力軸に取り付けられたエンコーダセンサ44b(図11参照。)と、を備えている。そして、後述するコントローラ100は、端綴じ待機位置センサ44aの検知結果に基づいて、端綴じ処理部25が待機位置HPに到達したことを検知する。また、コントローラ100は、エンコーダセンサ44bとから出力されるパルス信号をカウントすることによって、待機位置HPから移動した端綴じ処理部25の現在位置を把握する。
【0053】
但し、端綴じ処理部25を原点位置に戻さずに目標位置に停止させる具体的な方法は、前述の例に限定されない。他の例として、後処理装置3は、予め定められた目標位置に端綴じ処理部25が到達したことを検知するセンサを備えてもよい。
【0054】
すなわち、端綴じ処理部移動機構47は、液体付与部31が第一液体付与位置B1に対面する位置と、液体付与部31が第二液体付与位置B2に対面する位置との間を、待機位置HPを経由せずに、端綴じ処理部25を最短距離で移動させることができる。また、端綴じ処理部移動機構47は、圧着部32が第一綴じ位置B1に対面する位置と、圧着部32が第二綴じ位置B2に対面する位置との間を、待機位置HPを経由せずに、端綴じ処理部25を最短距離で移動させることができる。さらに、端綴じ処理部移動機構47は、液体付与部31が第一液体付与位置B1(または、第二液体付与位置B2)に対面する位置と、圧着部32が第一綴じ位置B1(または、第二綴じ位置B2)に対面する位置との間を、待機位置HPを経由せずに、端綴じ処理部25を最短距離で移動させることができる。
【0055】
[端綴じ処理部25の変形例]
次に、図6図8を参照して、後処理装置3が備える端綴じ処理部25の変形例である、後処理手段としての端綴じ処理部25´について説明する。すでに説明をした端綴じ処理部25との違いは、液体付与部31と圧着部32が一体的に構成されている点である。なお、すでに説明をした端綴じ処理部25と共通の構成要素には同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略することがある。
【0056】
図6は、端綴じ処理部25´を搬送方向の上流側から見た模式図である。図7(A)は、液体付与圧着部310の斜視図である。図7(B)は、図7(A)のA-A矢視断面図である。図7(C)は、図7(A)の上圧着歯32aを下圧着歯32bのある方向からみた平面図である。図8(A)~(C)は、液体付与圧着部310による液体付与動作及び圧着綴じ動作を示す図で、搬送方向の下流側から見た模式図である。
【0057】
図6に示すように、端綴じ処理部25´は、第一実施形態に係る端綴じ処理部25の液体付与部31と圧着部32とを一体的に構成した液体付与圧着部310を備える。液体付与圧着部310は、内部トレイ22より搬送方向の下流側に配置されている。
【0058】
液体付与圧着部310は、第一貯液タンク43に貯留された液体LQを内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbに付与する。液体付与圧着部310は、端綴じ処理部移動モータ50の駆動力が伝達されることによって、主走査方向に移動可能に構成されている。液体付与圧着部310は、上押圧板34と、上圧着歯32aと、下圧着歯32bと、液体付与圧着部移動機構350と、液体供給機構360とを備える。液体付与圧着部310の各構成部品は、液体付与フレーム31a及びベース部材48により保持されている。又、液体付与フレーム31aは、その底面に圧着部回転軸53が固定されている。圧着部回転軸53は、液体付与フレーム31aが設けられるベース部材48に回転可能に保持されている。そして、液体付与圧着部310は、圧着部回動モータ54の駆動力が圧着部回転軸53に伝達されることによって、ベース部材48´上において、圧着部回転軸53を中心として正逆方向に回転可能に構成されている。
【0059】
液体付与圧着部移動機構350は、電動シリンダ370によって、上押圧板34、ベースプレート40、及び上圧着歯32aを用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に連動して移動させる。ベースプレート40は、ジョイント46を介して上圧着歯保持部材32a1及び上圧着歯32aを保持する。又、ベースプレート40は、柱状部材41a、41bを介して上押圧板34を移動可能に保持している。そして、ベースプレート40は、連結部材401を介して電動シリンダ370のロッド371の先端に取り付けられている。
【0060】
柱状部材41a、41bは、下端で上押圧板34を保持している。又、コイルバネ42a、42bは、ベースプレート40と上押圧板34との間において、柱状部材41a、41bに外挿されている。そして、コイルバネ42a、42bは、上押圧板34及び柱状部材41a、41bを、ベースプレート40から離間する方向に向かって付勢する。
【0061】
液体供給機構360は、第一貯液タンク43と、供給ポンプ431と、液体供給部材45を備える。供給ポンプ431は、液体供給部材45を介して、図7(A)に示すように上圧着歯保持部材32a1に設けられた液溜まり部320に液体LQを供給する。液体供給部材45は、基端が供給ポンプ431に接続され、先端が液溜まり部320に接続されており、長尺かつ伸縮性のある部材で構成させる。
【0062】
上圧着歯32aは、図7(B)に示すように、上圧着歯保持部材32a1に一体的に設けられている。そして、上圧着歯保持部材32a1は、液溜まり部320と、液溜まり部320に溜められた液体LQを上圧着歯32aに供給する液体供給路321を備えている。又、上圧着歯32aの表面は、親水処理が施されており、液体供給路321から供給された液体LQが上圧着歯32aの表面に均一に行き渡るようになっている。一方、上圧着歯保持部材32a1の上圧着歯32a以外の部分は、疎水処理が施されており、液体LQが上圧着歯32aの表面に効率的に行き渡るようになっている。
【0063】
下圧着歯32bは、図6に示すように、下圧着歯保持部材32b1に一体的に設けられていると共に、下圧着歯保持部材32b1を介してベース部材48上に取り付けられている。
【0064】
次に、図8を用いて液体付与圧着部310による液体付与動作及び圧着綴じ動作について説明する。用紙Pが内部トレイ22に供給される過程では、図8(A)に示すよう、上圧着歯32aと下圧着歯32bは離間している。そして、用紙Pが内部トレイ22に載置されると、電動シリンダ370を収縮させて上圧着歯32a及び上押圧板34を用紙Pに向かって移動させる。すると、図8(B)に示すよう、上押圧板34が最初に用紙Pに当接し、その後、上圧着歯32aが上押圧板34の貫通口34aを通過して用紙Pに当接する。このとき、上圧着歯32aの表面には液体LQが行き渡っているため、上圧着歯32aを用紙Pに当接させることにより用紙Pの液体付与位置に液体が付与される。そして、液体付与位置への液体付与が完了すると、電動シリンダ370を伸長させて上圧着歯32a及び上押圧板34を用紙Pから離間する。以上説明した上圧着歯32a及び上押圧板34の用紙Pに対する接離動作が液体付与動作に相当するので、この液体付与動作を、用紙束Pbを構成する用紙Pに対して繰り返し実行する。
【0065】
その後、内部トレイ22に規定枚数の用紙Pから構成された用紙束Pbが載置されたら、電動シリンダ370を更に収縮させて上圧着歯32aを下圧着歯32bに向かって移動させる。すると、図8(C)に示すように、上圧着歯32aと下圧着歯32bとの間に用紙束Pbが挟まれた状態で、上圧着歯32aが下圧着歯32bに向かって更に移動することになり、上圧着歯32a及び下圧着歯32bにより用紙束Pbを加圧して変形させることで用紙束Pbを圧着綴じする(圧着綴じ動作)。
【0066】
[針綴じ処理部155の説明]
次に、針綴じ処理を実行する機能を備える針綴じ処理部155の詳細について説明する。図9は、針綴じ処理部155を搬送方向の上流側から見た模式図である。針綴じ処理部155は、綴じ針を用いて用紙束Pbを綴じる針綴じ手段62を備える。針綴じ手段62は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、端綴じ処理部25に対して主走査方向に離間して配置されている。
【0067】
後処理手段としての針綴じ手段62は、綴じ針を用いて用紙束Pbを綴じる、いわゆる「針綴じ処理」を行う構成を備えている。より詳細には、針綴じ手段62は、針綴じ部62aを駆動する針綴じ部駆動モータ62d(図11参照)を備えている。そして、針綴じ部62aは、針綴じ部駆動モータ62dの駆動力により針綴じ部62aに装填された綴じ針を、用紙束Pbに貫通させることによって用紙束Pbを綴じる。針綴じ手段62の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0068】
また、図9に示すように、針綴じ処理部155は、針綴じ処理部移動機構77を備える。針綴じ処理部移動機構77は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの搬送方向の下流側の端部に沿って、針綴じ処理部155を主走査方向に移動させる。針綴じ処理部移動機構77は、例えば、ベース部材78と、案内軸49と、針綴じ処理部移動モータ80と、駆動力伝達機構81とを備える。駆動力伝達機構81は、針綴じ処理部移動モータ80の駆動力を、プーリ81a、81bやタイミングベルト81cを介してベース部材78に伝達する。さらに、針綴じ手段62の構成品を保持する針綴じフレーム62bの底面には、駆動伝達ギヤ83aを備えた針綴じ手段回転軸83が固定されている。針綴じ手段回転軸83及び駆動伝達ギヤ83aは、針綴じフレーム62bが設けられるベース部材78に正逆方向に回転可能に保持されている。又、駆動伝達ギヤ83aは、針綴じ手段回動モータ82の出力ギヤ82aと噛み合っている。そして、針綴じ手段62は、針綴じ手段回動モータ82の駆動力が、出力ギヤ82a及び駆動伝達ギヤ83aを介して針綴じ手段回転軸83に伝達されることによって、ベース部材78上において、針綴じ手段回転軸83を中心として正逆方向に回転可能に構成されている。
【0069】
なお、端綴じ処理部25及び針綴じ処理部155は、共通の案内軸49に支持されている。すなわち、端綴じ処理部移動機構47及び針綴じ処理部移動機構77は、共通の案内軸49に沿って端綴じ処理部25及び針綴じ処理部155を主走査方向に移動させる。さらに、端綴じ処理部移動機構47及び針綴じ処理部移動機構77は、端綴じ処理部25、及び針綴じ処理部155をそれぞれ独立して移動することができる。
【0070】
図10は、針綴じ処理部155の変形例としての針綴じ処理部155´を示したものであり、針綴じ処理部155´を搬送方向の上流側から見た模式図である。針綴じ処理部155´は、針綴じ手段62だけではなく、第二液体付与部612を備えている点で針綴じ処理部155と相違する。図10に示すように、針綴じ処理部155´は、第二液体付与部612と、針綴じ手段62とを備える。第二液体付与部612及び針綴じ手段62は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に隣接して配置されている。
【0071】
第二液体付与部612は、第三貯液タンク73に貯留された液体を、内部トレイ22に支持された用紙P又は用紙束Pbに付与する「液体付与」を実行する。第二液体付与部612によって用紙P又は用紙束Pbに液体付与が行われる位置を含む所定の領域は、針綴じを行なう予定である綴じ位置に相当する。図10に示すように、第二液体付与部612は、第二下押圧板63と、第二上押圧板64と、第二液体付与部移動機構65と、第二液体付与機構66とを備える。第二液体付与部移動機構65は、例えば、第二液体付与部移動モータ67と、第二台形ネジ68と、第二ナット69と、第二ベースプレート70と、第二柱状部材711(711a、711b)と、第二コイルバネ721(721a、721b)とを備える。第二液体付与機構66は、第三貯液タンク73と、第二液体付与部材74と、第三液体供給部75と、第二ジョイント76とを備える。第二液体付与機構66の構成は、液体付与機構36と共通するので、再度の説明は省略する。又、針綴じ手段62の構成は、図9と同様なので詳細な説明は省略する。又、第二液体付与部612の回動機構は、図3に示した液体付与部回動機構55と共通するので再度の説明は省略する。
【0072】
図10で示した針綴じ処理部155´のように、針綴じ処理においても、用紙Pに液体付与処理を施すことで、綴じ位置をほぐして柔らかくし、綴じ針を貫通しやすくすることができる。これによって、液体付与をせずに針綴じ処理を施す場合と比較すると、用紙束Pbの一束当たりの綴じ枚数を増やすことができる。
【0073】
[後処理装置3の制御ブロック]
図11は、第一実施形態に係る後処理装置3の動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図である。図11に示すように、後処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0074】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0075】
後処理装置3は、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3の動作を制御するコントローラ100(制御部)を構成する。
【0076】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、端綴じ処理部移動モータ50、液体付与Md移動モータ50a、液体付与部移動モータ37、液体付与部回動モータ57、接離モータ32d、綴じ歯スライドモータ32e、圧着部回動モータ54、針綴じ部駆動モータ62d、針綴じ手段回動モータ82、針綴じ処理部移動モータ80、液体付与部移動センサ40a、第一液量検知センサ43a、端綴じ待機位置センサ44a、エンコーダセンサ44b、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。
【0077】
コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、端綴じ処理部移動モータ50、液体付与Md移動モータ50a、液体付与部移動モータ37、液体付与部回動モータ57、接離モータ32d、綴じ歯スライドモータ32e、圧着部回動モータ54、針綴じ部駆動モータ62d、針綴じ手段回動モータ82、針綴じ処理部移動モータ80の動作を制御する。
【0078】
また、コントローラ100は、液体付与部移動センサ40a、第一液量検知センサ43a、端綴じ待機位置センサ44a、エンコーダセンサ44bからの検知結果を取得する。なお、図11には端綴じ処理を実行する端綴じ処理部25、及び針綴じ処理部155に関する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する中綴じ処理部28に関する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0079】
[綴じ処理のフローチャート]
図12は、後処理装置3において実行可能な綴じ処理の一例としての斜め綴じ処理の流れを例示するフローチャートである。図13は、斜め綴じ処理における端綴じ処理部25(液体付与部31及び圧着部32)の位置を示す図である。又、液体付与部31によって用紙P又は用紙束Pbに液体付与が行われる位置(液体付与位置)は、圧着部32が用紙束Pbに対して圧着綴じを行う予定である綴じ位置に相当する。よって、以下において液体付与位置と綴じ位置には同一符号を付して説明する。
【0080】
コントローラ100は、例えば、画像形成装置2から綴じ処理の実行指示(以下、「綴じ処理指示」と表記する。)を取得したタイミングで、図12に示す綴じ処理を開始する。
【0081】
綴じ処理指示は、例えば、用紙Pの種類(素材や厚みなど液体の広がりに影響を与える情報)と、用紙束Pbを構成する用紙Pの数(以下、「所定枚数」と表記する。)と、綴じ処理を施すべき用紙束Pbの数(以下、「必要部数」と表記する。)と、用紙束Pbの綴じ位置と、端綴じ処理部25の綴じ姿勢とを含む。また、液体付与部31及び圧着部32は、綴じ処理の開始時点において、平行綴じ姿勢で、且つ内部トレイ22に載置された用紙Pから幅方向に外れた位置である待機位置HP(図13(A))に位置しているものとする。
【0082】
そして、斜め綴じ処理の場合は、綴じ処理指示で指示される姿勢は「斜め綴じ姿勢」であるため、コントローラ100は、液体付与部回動モータ57及び圧着部回動モータ54を駆動して、液体付与部31及び圧着部32を斜め綴じ姿勢に回転させる。尚、「斜め綴じ姿勢」である場合には、圧着部32のみを斜め綴じ姿勢に回転させ、液体付与部31は正逆方向に回転させないようにしてもよい。これにより、液体付与部31及び圧着部32を共に正逆方向に回転させる場合に比べて駆動機構を簡素化することができるので、コストダウン、装置の小型化、及び機器の故障の低減という効果を奏する。
【0083】
また、コントローラ100は、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、綴じ処理指示で指示された第一液体付与位置B1に液体付与部31が対面するよう、図13(B)に例示するように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる(S1001)。なお、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15によって最初の用紙Pが内部トレイ22に搬送される前に、ステップS1001の処理を実行する。
【0084】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を回転させることによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pを内部トレイ22に収容する(S1002)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に支持された用紙Pの主走査方向の位置を揃える。サイドフェンス24L、24Rを移動させて用紙Pの主走査方向の位置を揃える動作を「ジョギング」と称する(S1002)。
【0085】
次に、コントローラ100は、直前のステップS1002で内部トレイ22に載置された用紙Pの第一液体付与位置B1に対して、事前に調整された液体付与制御データに基づいて、第一液体付与位置B1に対面する液体付与部31に液体付与を実行させる(S1003)。すなわち、コントローラ100は、液体付与部移動モータ37を駆動して、内部トレイ22に載置された用紙Pの第一液体付与位置B1に液体付与部材44eを接触させる(図13(B))。ステップS1003における液体付与処理において、コントローラ100は、綴じ処理指示に含まれる用紙Pの種類や、綴じ位置に応じて、液体付与部材501が用紙Pに対して液体を付与する位置を調整する。また、コントローラ100は、液体付与部材501を用紙Pに押圧する量を調整する。すなわち、コントローラ100は、調整された制御データに基づいて、液体付与部移動モータ42の駆動を制御して、内部トレイ22に載置された用紙Pの第一液体付与位置B1に対する液体付与部材501の移動量を調整する。
【0086】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙の数が、綴じ処理指示で指示された所定枚数に達したか否かを判定する(S1004)。そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数に達していないと判定した場合に(S1004:No)、ステップS1002~S1003の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15によって内部トレイ22に用紙Pが搬送される度に、ステップS1002~S1003の処理を実行する。尚、液体付与部31による液体付与は、用紙束Pbを構成する複数の用紙Pの全てに行われる場合だけではなく、一部の用紙Pにのみ行ってもよい。
【0087】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数に達したと判定した場合に(S1004:Yes)、図13(C)に示すように、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、圧着部32が綴じ位置B1に対面するように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる(S1005)。
【0088】
次に、コントローラ100は、圧着部32に、内部トレイ22に載置された用紙束Pbに対して圧着綴じを実行させる(S1006)。そして、コントローラ100は、搬送ローラ対15により、圧着部32により圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する(S1007)。すなわち、コントローラ100は、接離モータ32dを駆動して、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの綴じ位置B1を、上圧着歯32a及び下圧着歯32bに挟持させる。これにより、上圧着歯32a及び下圧着歯32bの間で用紙束Pbを加圧変形させ圧着綴じを行う。この時、条件によっては綴じ歯スライドモータ32eを駆動して、圧着痕が隣接するように複数回の圧着綴じ処理を施す。また、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。
【0089】
なお、内部トレイ22に載置された用紙束Pb上において、ステップS1006で上圧着歯32aと下圧着歯32bが挟持する圧着領域(綴じ位置B1)は、ステップS1003で液体付与手段44の先端部が接触した液体付与領域(第一液体付与位置B1)に重なる。換言すれば、圧着部32は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbにおいて、液体付与部31によって液体が付与された領域を圧着綴じする。なお、上圧着歯32aと下圧着歯32bが挟持する圧着領域は、液体付与部材44eの先端部が接触した液体付与領域に完全に重なっている必要はなく、部分的に重なっている場合でも充分な綴じ強度を得ることができる。
【0090】
次に、コントローラ100は、排出された用紙束Pbの数が、綴じ処理指示で示された必要部数に達したか否かを判定する(S1008)。コントローラ100は、必要部数に達していないと判定した場合に(S1008:No)、ステップS1002以降の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、排出トレイ26に排出した用紙束Pbの数が必要部数に達するまで、ステップS1002~S1007の処理を繰り返し実行する(S1008:No)。
【0091】
そして、コントローラ100は、排出トレイ26に排出された用紙束Pbの数が、必要部数に達したと判定した場合に(S1008:Yes)、端綴じ処理部移動モータ50を駆動して、図13(D)に示すように端綴じ処理部25を待機位置HPに移動させる。また、綴じ処理指示で指示された姿勢が「斜め綴じ姿勢」であるため、コントローラ100は、液体付与部回動モータ57及び圧着部回動モータ54を駆動して、液体付与部31及び圧着部32を平行綴じ姿勢に回動させる(S1009)。これにより、液体付与部31及び圧着部32が図13(D)の待機位置HPに戻る。なお、ステップS1001、S1009において、液体付与部31及び圧着部32の主走査方向の移動動作及び正逆方向の回転の実行順序は、前述の順序に限定されず、逆順であってもよい。
【0092】
上記にて説明をした後処理装置3の動作によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0093】
上記の動作例によれば、上圧着歯32aが下圧着歯32bの姿勢に合わせて、液体付与手段44の姿勢を変化させるので、用紙P上の液体を付与する範囲を限定することができる。その結果、用紙Pに皺が生じたり、用紙Pに形成した画像に滲みが生じたり、する悪影響を防止できる。
【0094】
また、上記の動作例によれば、上圧着歯32aが下圧着歯32b及び液体付与手段44を、斜め綴じ姿勢において同一の角度だけ傾斜させると共に、平行綴じ姿勢及び斜め綴じ姿勢それぞれで搬送方向の同じ位置に配置する。このような動作によって、特別な位置合わせをせずに、液体を付与した領域内を圧着綴じすることができる。
【0095】
なお、上記の動作例では、上圧着歯32aが下圧着歯32b及び液体付与手段44が斜め綴じ姿勢の例を説明したが、上圧着歯32aが下圧着歯32b及び液体付与手段44の姿勢はこれに限定されない。他の例として、上圧着歯32aが下圧着歯32b及び液体付与手段44は、各々の先端部の長手方向を主走査方向に平行にする「平行綴じ姿勢」であってもよいし、各々の先端部の長手方向を主走査方向に直交させる第3綴じ姿勢としての「垂直綴じ姿勢」であってもよい。
【0096】
垂直綴じ姿勢は、上圧着歯32aが下圧着歯32b及び液体付与手段44それぞれが圧着部回動機構52によって、用紙Pの幅方向の端部に沿う位置まで回動した姿勢に相当する。言い変えると、形成される綴じ痕の長手方向が用紙Pの幅方向の端部に沿うように綴じ処理を行うときの、用紙P又は用紙束Pbに対する上圧着歯32aが下圧着歯32b及び液体付与手段44それぞれの姿勢をいう。そして、圧着部回動機構52は、上圧着歯32aが下圧着歯32b及び液体付与手段44を、平行綴じ姿勢及び垂直綴じ姿勢の間で、任意の角度に回動させてもよい。
【0097】
図14は、二箇所綴じの実行中における端綴じ処理部25の位置を示す図である。図13を参照して説明した処理との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。図14(A)に示すように、二箇所綴じの開始時点において、端綴じ処理部25は待機位置HPに位置しているものとする。また、第一綴じ位置B1(第一液体付与位置B1)及び第二綴じ位置B2は(第二液体付与位置B2)、主走査方向に離間した位置である。さらに、図14では、2枚の用紙Pを圧着綴じする(すなわち、N=2)場合を説明するが、用紙束Pbを構成する用紙Pの数はこれに限定されない。
【0098】
コントローラ100は、用紙束Pbを構成する一枚目の用紙P1が内部トレイ22に供給される前に、第一液体付与位置B1に液体付与部31が対面し得るように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる。次に、コントローラ100は、図14(B)に示すように、第一液体付与位置B1に対面し得る位置に液体付与部31を配置した状態で、画像形成装置2によって画像が形成された用紙P1を内部トレイ22に載置してジョギングする。
【0099】
次に、コントローラ100は、用紙P1が内部トレイ22に載置されたことに応じて、当該用紙P1の第一液体付与位置B1に対して、液体付与部31に液体付与をさせる。次に、コントローラ100は、図14(C)に示すように、用紙P1の第二液体付与位置B2に液体付与部31が対面するように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる。次に、コントローラ100は、用紙P1の第二液体付与位置B2に対して、液体付与部31に液体付与をさせる。
【0100】
次に、コントローラ100は、用紙P1の第一液体付与位置B1及び第二液体付与位置B2に液体を付与したことに応じて、図14(D)に示すように、第二液体付与位置B2に対面し得る位置に液体付与部31を配置した状態で、用紙束Pbを構成する2枚目の用紙P2を内部トレイ22に載置してジョギングを行う。
【0101】
次に、コントローラ100は、用紙P2が内部トレイ22に載置されたことに応じて、当該用紙P2の第二液体付与位置B2に対して、液体付与部31に液体付与をさせる。次に、コントローラ100は、図14(E)に示すように、用紙P2の第一液体付与位置B1に液体付与部31が対面するように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる。次に、コントローラ100は、用紙P2の第一液体付与位置B1に対して、液体付与部31に液体付与をさせる。
【0102】
すなわち、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達するまで、搬送ローラ対10、11、14、15による用紙Pの搬送と、液体付与部31による第一液体付与位置B1及び第二液体付与位置B2への液体付与とを繰り返す。このとき、コントローラ100は、B(B<N)枚目の用紙Pに対して、第一液体付与位置B1、第二液体付与位置B2の順で液体付与部31に液体付与をさせる。また、コントローラ100は、(B+1)枚目の用紙Pに対して、第二液体付与位置B2、第一液体付与位置B1の順で液体付与部31に液体付与をさせる。
【0103】
換言すれば、コントローラ100は、液体付与部31が第一液体付与位置B1及び第二液体付与位置B2に液体付与する順序を、用紙P毎に変更する。さらに、コントローラ100は、待機位置HPを経由せずに、第一液体付与位置B1及び第二液体付与位置B2の一方から他方に綴じ処理部25を最短距離で移動させる。
【0104】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達したと判定したことに応じて、図14(F)に示すように、圧着部32を第一綴じ位置B1に対面させる。次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙束の第一綴じ位置B1を圧着綴じする。次に、コントローラ100は、図14(G)に示すように、圧着部32を第二綴じ位置B2に対面させる。次に、コントローラ100は、圧着部32に、内部トレイ22に載置された用紙束Pbの第二綴じ位置B2を圧着綴じさせる。
【0105】
なお、図14の例では、液体付与部31が最後に第一液体付与位置B1に対して液体付与したので、圧着部32は、第一綴じ位置B1、第二綴じ位置B2の順に圧着綴じを行っている。一方、液体付与部31が最後に第二液体付与位置B2に対して液体付与した場合は、圧着部32は、第二綴じ位置B2、第一綴じ位置B1の順に圧着綴じを行えばよい。
【0106】
次に、コントローラ100は、第一綴じ位置B1、第二綴じ位置B2で圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。さらに、コントローラ100は、図14(H)に示すように、綴じ処理部25を待機位置HPに移動させる。
【0107】
なお、上記の実施形態では、用紙束Pbの一箇所または二箇所を圧着綴じする例を説明したが、本発明は、主走査方向に離間した用紙束Pbの三箇所以上を圧着綴じする場合にも適用可能である。この場合のコントローラ100は、三箇所以上の綴じ位置に対して、液体付与部31に液体付与させ、圧着部32に圧着綴じさせる。三箇所以上を圧着する場合でも、本発明を適用することによって圧着綴じの生産性を向上させることができる。
【0108】
但し、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pに対して、全ての綴じ位置に液体を付与する必要はない。例えば、コントローラ100は、主走査方向に離間した三箇所の綴じ位置で圧着綴じする場合において、E(E<N-2)枚目の用紙P1の三箇所の綴じ位置に液体を付与し、(E+1)枚目の用紙P2の二箇所の綴じ位置に液体を付与し、(E+2)枚目の用紙P2の一箇所の綴じ位置に液体を付与してもよい。
【0109】
[第一実施形態]
次に、本発明に係る媒体処理装置の実施形態としての後処理装置3が実行する圧着綴じ処理において実行される特定の液体付与処理の実施形態について説明する。ここでいう「特定の液体付与処理」とは、液体が浸透しにくい状態になる処理(表面加工処理)を施されている用紙Pを用いる圧着綴じ処理において実行される液体付与処理をいう。
【0110】
以下の説明において、表面加工がなされている用紙Pに対する液体付与処理について「特定液体付与処理」と記載する。なお、「液体が浸透しにくい状態になる処理が施されている用紙P」とは、一般的に「グロスコート紙」と称されるものが一例に相当する。
【0111】
図15を用いて特定液体処理を伴う圧着綴じ処理の流れを説明する。まず、図15は、一箇所に対して圧着綴じ処理を行うときの表面処理動作を含めた端綴じ処理部25の位置を説明する図である。
【0112】
まず、図15(A)に例示するように、内部トレイ22に用紙Pを受け入れる状態のとき、端綴じ処理部25は待機位置HPにある。そして、図15(B)に示すように、用紙Pの内部トレイ22への受け入れが終わると、第一液体付与位置B1に対向する位置に、液体付与部31を移動させる。
【0113】
続いて、図15(C)に示すように、まず、第一液体付与位置B1に対して特定液体付与処理の一貫としての表面処理を実行する。具体的には、第一液体付与位置B1に相当する位置を表面処理位置とし、表面処理位置に表面処理材としての表面処理部材44fを当接させた状態で、主走査方向に表面処理部材44fを移動させる。これによって、表面処理位置において用紙Pの表面に施されていた加工による塗料などの、液体付与による液体の浸透をしにくい状態にしてしまうものを表面処理部材44fによって削り取る。
【0114】
続いて、図15(D)に示すように、表面処理部材44fを用紙Pの表面に当接した状態で元の位置に戻す。この移動時にも用紙Pの表面の加工を表面処理部材44fが削り取ることができる。この動作によって、用紙Pの表面に付与されていた塗料など、液体付与による液体が用紙Pに対して影響を及ぼすことを阻害するものを除去する。その結果、液体付与により、用紙Pに対して液体が浸透しやすい状態になるから、液体付与部材44eを用紙Pに当接させることで、表面処理部材44fが当接していた位置に対して液体付与をする。
【0115】
図15(A)から図15(D)の動作を、用紙束Pbを構成する用紙Pの枚数分だけ繰り返し、所定の枚数から構成される用紙束Pbを作製する。これにって、綴じ位置に相当する液体付与位置に対して、液体付与部材44eによる液体付与より先に、表面処理部材44fによる表面処理を施してから、その後、液体付与部材44eにより液体付与を施された用紙Pによる用紙束Pbが形成される。
【0116】
続いて、表面処理部材44fが用紙Pに対して接触する表面処理位置から離れて、表面処理部材44fが用紙Pから離間した離間位置に移動する。この接触と離間の動作は、液体付与部材44e及び表面処理部材44fを用紙Pに対して押圧・離間させる駆動モータである接離方向移動手段によって実行される。
【0117】
そして、図15(E)に示すように、液体付与部材44eによる液体付与が行われた用紙Pにより構成された用紙束Pbの第一綴じ位置B1に、圧着部32を移動させて圧着綴じを実行する。
【0118】
最後に、図15(F)に示すように、用紙束Pbを排出トレイ26に向けて排出する。その後、端綴じ処理部25を待機位置HPに移動させる。
【0119】
なお、上記の動作において、図15(C)、図15(D)による表面処理及び液体付与を、用紙束Pbの全ての用紙Pに対して行うのではなく、数枚ごとに実行してもよいし、圧着部32が挟持する用紙P(底面と上面に相当する用紙P)に対してのみ実行してもよい。いずれにおいても、圧着部32が用紙束Pbを挟持して加圧したとき、圧着歯が用紙Pを変形しやすい状態になっていればよい。
【0120】
また、図15(B)から図15(E)までの動作を、第二綴じ位置B2(第二液体付与位置B2)(図14参照)に対しても行うことで、用紙束Pbに対して二箇所の圧着綴じ処理を実行するときに、特定液体付与処理を実行してもよい。
【0121】
[液体付与手段44の詳細]
次に、本実施形態に係る液体付与手段44が備える特徴的な構成及び動作について、図16を用いて説明する。図16は、液体付与手段44と、液体付与手段44を用紙Pに対して相対的に移動させる動作機構を抜き出した一部拡大図である。
【0122】
すでに説明をした図15(B)の状態、すなわち、液体付与部31を第一液体付与位置B1に対向する位置に移動させたとき、図16(A)に示すように、上押圧板34は用紙Pの表面から離間した位置にあるので、液体付与手段44は用紙Pの表面から離間した状態にある。
【0123】
続いて、図16(B)に示すように、上押圧板34が下降して用紙Pを下押圧板33に向けて押圧する。
【0124】
続いて、図16(C)に示すように、液体付与手段44を下降させて、表面処理部材44fが、用紙Pの表面に当接した状態にする。この状態が図15(B)の状態に相当する。
【0125】
続いて、図16(D)に示すように、表面処理部材44fを用紙Pに当接した状態のままで、液体付与手段44を主走査方向の一方向(図16(D)の矢印の方向)に移動させる。これによって、表面に加工処理が施されている用紙Pに対して、液体付与処理の前に行う表面整備処理を実行する。表面整備処理は、液体付与によって用紙Pに対して液体が浸透しやすい状態にするための処理である。具体的には、用紙Pの表面に液体を浸透しにくくする処理が施されている場合において、その表面を削って表面加工を除去する処理(以下「表面加工除去処理」と表記する。)である。
【0126】
続いて、図16(E)に示すように、表面処理部材44fを用紙Pに当接した状態のままで、液体付与手段44を主走査方向の他方向(図16(E)の矢印の方向)に移動させて、元の位置に戻す。これによって、用紙Pに対して表面加工除去処理が施されることにより、液体付与により用紙Pに対して液体が浸透しやすい状態になり、用紙束Pbの圧着綴じ強度を向上することが可能となる。
【0127】
続いて、図16(F)に示すように、液体付与手段44を用紙Pに対して下降させて、液体付与部材44eを、表面処理部材44fを介して間接的に用紙Pに当接することで液体付与を実行する。つまり、液体付与部材44eを、表面処理部材44fに押圧することにより、液体付与部材44eに含まれている液体が表面処理部材44fに設けられた複数の穴44fhから染み出し、その染み出した液体が用紙Pに付与される。
【0128】
[液体付与機構36の詳細構成]
図17は、液体付与手段44における特定液体付与処理を実行するための機構としての液体付与機構36の一部分を取り出した平面図である。図17は、図4におけるC面視に相当する。すでに説明をしたとおり、本実施形態に係る特定液体付与処理は、液体付与機構36により液体付与部材44eを用紙Pに対し相対的に移動させる動作を行うことで、用紙Pの表面を、液体が浸透しやすい状態になるように整備するための処理に相当する。
【0129】
図17に示すように、液体付与機構36は、液体付与手段44を支持するベースプレート40と、ベースプレート40に固定されている駆動ベルト411を備える。駆動ベルト411は、一対のプーリ412に掛け回されている。プーリ412の一方の軸には、ギヤ413が固定されている。ギヤ413は、液体付与Md移動モータ50aの出力ギヤ50a1と噛み合うようになっている。
【0130】
当接移動手段としての液体付与Md移動モータ50aの出力ギヤ50a1が正逆方向に回転すると、プーリ412が正逆方向に回転し、これによって、駆動ベルト411も正逆方向に回転する。この駆動ベルト411の正逆方向の回転により、ベースプレート40が主走査方向に往復移動する。ベースプレート40が主走査方向に往復移動することで、ベースプレート40に取り付けられている液体付与手段44も主走査方向に往復移動する。この移動時に、表面処理部材44fを用紙Pに当接させた状態にすることで、用紙Pの表面加工を削ることができる。
【0131】
なお、液体付与手段44の移動方向は、液体付与Md移動モータ50aの正逆方向の回転方向をコントローラ100が切り替えることにより制御できる。そして、液体付与手段44の移動量は、液体付与Md移動モータ50aの回転量をコントローラ100がパルス数により制御できる。
【0132】
[液体付与手段44の第一例]
次に、液体付与手段44のより詳細な構造の第一例について説明をする。図18(A)に示すように、液体付与手段44は、液体付与部材44eと表面処理部材44fによって構成される。液体付与部材44eは、多孔性の材質にて構成されている。例えば、スポンジにより構成されている。液体付与部材44eは、液体供給部材45を介して供給される液体を保持し、用紙Pに間接的に当接したときに液体付与を行う部分に相当する。
【0133】
表面処理部材44fは、用紙Pに当接した状態で主走査方向に移動することにより、用紙P表面処理を削ることができる部位である。表面処理部材44fは、用紙Pに当接する面において、用紙Pの表面を削るための複数の穴44fhを有する。この複数の穴44fhによって、表面処理部材44fの用紙当接面は、おろし金形状の如く、用紙Pの表面に接触して移動することで、表面の一部を引っ掛けて除去することができる。
【0134】
表面処理部材44fの用紙当接面には、図18(B)に示すように、複数の穴44fhが形成されている。この穴44fhは、用紙Pの表面を削ると同時に、液体付与部材44eからの液体を用紙Pに付与するときの、液体の通路を構成する。表面処理部材44fの材質は、例えば、SUS材などである。
【0135】
また、本構成例においては、表面処理部材44fには、図18(C)に示すように、長穴441が形成されている。そして、図18(D)に例示するように、表面処理部材44fの長穴441と液体付与手段44に設けられた貫通穴44hに、一方端側から長ネジ442を挿入し、液体付与手段44を貫通させた状態で、長ネジ442の他方側の端部をナット443で締結する。このように、液体付与手段44と表面処理部材44fを締結することにより、表面処理部材44fに対して、表面処理部材44fの長穴441の方向に液体付与手段44を相対的に移動可能に保持することができる。それにより、液体付与手段44が用紙Pに対して接近又は離間する方向に移動できる状態になる。また、本構成例では、液体付与部材44eと表面処理部材44fを一体物とした構成を例示しているが、これに限定されるものではない。液体付与部材44eと表面処理部材44fを別体とし、表面処理を行うモジュールと液体付与を行うモジュールを別のモジュールで構成することも可能である。
【0136】
[液体付与手段44の第二例]
次に、液体付与手段44のより詳細な構造の第二例について図19を用いて説明する。図19(A)は、図3において図示をした液体付与手段44を含む構成を例示している。図19(B)は、図19(A)のA面視の図である。図19(C)は、図19(A)のB面視の図である。図19(D)は、液体付与手段44のみの正面図である。
【0137】
図19に示すように、本例に係る液体付与手段44は、液体付与部材44eと表面処理部材44fによって構成される。液体付与部材44eは、多孔性の材質にて構成されている。例えば、スポンジにより構成されている。液体付与部材44eは、液体供給部材45を介して供給される液体を保持し、用紙Pに当接したときに液体付与を行う部分に相当する。
【0138】
表面処理部材44fは、用紙Pに当接した状態で主走査方向に移動することにより、用紙P表面処理を削ることができる部位である。表面処理部材44fは、用紙Pに当接する面において、用紙Pの表面を削るための形状を有していて、用紙当接面は、例えば不織布材などにより構成されている。不織布材である用紙当接面が用紙Pの表面に接触して移動することで、表面の一部を引っ掛けて除去することができる。
【0139】
本構成例においては、液体付与部材44eと表面処理部材44fは、接着材によって接合されている。また、本構成例では、液体付与部材44eと表面処理部材44fを一体物とした構成を例示しているが、これに限定されるものではない。液体付与部材44eと表面処理部材44fを別体とし、表面処理を行うモジュールと液体付与を行うモジュールを別のモジュールで構成することも可能である。
【0140】
[特定液体付与処理の第一実施形態]
次に、図20を用いて、特定液体付与処理を伴う圧着綴じ処理の第一実施形態について、図20のフローチャートを参照しながら説明する。
【0141】
まず、コントローラ100は、圧着綴じ処理の対象となる用紙Pの情報(媒体情報)を取得する(S1801)。このとき、端綴じ待機位置センサ44aにて検知される位置に液体付与部31と圧着部32を移動させておく。すなわち、液体付与部31と圧着部32は待機位置HPにあって、内部トレイ22に用紙Pを受け入れ可能な状態である。
【0142】
続いて、コントローラ100は、媒体情報を参照して、処理対象となる用紙Pが、表面処理を必要とするものか否かを判定する(S1802)。表面処理を必要とする用紙Pの代表例はグロスコート紙である。その他、綴じ強度の向上を図るために綴じ処理対象の用紙Pに対して液体を付与した場合に、液体の効果が綴じ強度の向上に寄与できる性質を有する用紙Pであれば、表面処理を必要とすると判定してもよい。
【0143】
表面処理が必要でない場合、すなわち、表面加工を施されている用紙Pではない場合は(S1802:NO)、表面処理を必要としない、液体付与を伴う綴じ処理を実行することになるので、コントローラ100は、図12において説明をしたフローチャートに沿って綴じ処理を実行する。
【0144】
表面処理を必要とする用紙Pであるとき(S1802:YES)、コントローラ100は、綴じ処理の対象物となる用紙Pを内部トレイ22へと受け入れて、サイドフェンス24L、24Rを移動させてジョギングさせる(S1803)。
【0145】
続いて、図15(B)にて説明したように、コントローラ100は、液体付与部31を端綴じ待機位置センサ44aから基準の規定のパルス数分だけ移動させ、表面加工除去処理を行うための第一液体付与位置B1へと移動させる(S1804)。そして、液体付与手段44を下降させて、表面処理部材44fを用紙Pに当接させる(S1805)。
【0146】
続いて、図15(C)及び(D)にて説明したように、コントローラ100は、表面処理部材44fを用紙Pの表面に当接した状態で、規定のパルス数分だけ、液体付与部31を主走査方向に往復移動をさせることにより、表面処理部材44fによる表面加工除去処理を実行させる。(S1806)。これによって、表面加工除去処理により用紙Pに施された表面加工が除去されるので、この後に、液体付与部31により実行される液体付与により用紙Pに付与される液体が、用紙束Pbの綴じ強度を向上しやすい状態(つまり、液体付与される液体が用紙Pに浸透しやすい状態)にすることができる。
【0147】
続いて、コントローラ100は、液体付与手段44をさらに下降させて、液体付与部材44eを、表面処理部材44fが表面加工除去処理した箇所に対して、表面処理部材44fを介して用紙Pに当接させることで、用紙Pに対して液体を付与する(つまり、液体付与部材44eが表面処理部材44fに押圧されることにより、液体付与部材44eに含まれている液体が、表面処理部材44fの複数の穴44fhから染み出ることにより、用紙Pに対して液体付与する)、所謂特定液体付与処理を実行させる(S1807)。特定液体付与処理は、液体付与手段44を所定の位置まで下降させ、その後、端綴じ待機位置センサ44aで検知される位置まで上昇させて、表面処理部材44fを用紙Pから離間させる位置に移動させる処理を含む。
【0148】
続いて、特定液体付与処理を施した用紙Pの枚数が、用紙束Pbを形成するための枚数(所定枚数N)に達しているか否かを判定する(S1808)。所定枚数Nに達していないと判定した場合(1808:NO)は、コントローラ100は、所定枚数Nに達するまで、ステップS1803~S1807の処理を繰り返し実行する。
【0149】
特定液体付与処理を施した用紙Pの枚数が、所定枚数Nに達していると判定した場合(1808:YES)は、図15(E)にて説明したように、コントローラ100は、圧着部32を綴じ位置B1に移動させて用紙束Pbに対して圧着綴じを実行する。その後、コントローラ100は、搬送ローラ対15に圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出させる(S1809)。
【0150】
続いて、特定液体付与処理を施した用紙束Pbの部数が、所定部数に達しているか否かを判定する(S1810)。用紙束Pbの部数が所定部数に達していないと判定した場合(1810:NO)は、コントローラ100は、用紙束Pbの部数が所定部数に達するまで、ステップS1803~S1809の処理を繰り返し実行する。
【0151】
用紙束Pbの部数が所定部数に達していると判定した場合(1810:YES)は、図15(F)にて説明したように、液体付与部31と圧着部32を待機位置(HP)に移動させて(S1811)、綴じ処理を終了する。
【0152】
なお、複数箇所に対する特定液体付与処理を伴う綴じ処理を行うときは、S1804~S1806の処理(特定液体付与処理)を、綴じ位置(液体付与位置)の分だけ繰り返して実行すればよい。
【0153】
[表面処理部材メンテナンス処理]
次に、表面処理部材44fのメンテナンス処理について図21のフローチャートを用いて説明する。以下説明する処理は、表面処理を実行する前段で適宜実行されるものとする。例えば、表面処理の必要有無を判定する処理(S1802)の後において実行する。または、表面処理(1806)を実行する前に実行する。
【0154】
まず、現在使用中となる表面処理部材44fの累積使用回数は、RAMに記憶されているものとする。また、表面処理部材44fの交換時期を判定するための交換閾値はROMに記憶されているものとする。上記にて説明をした処理実行タイミングにおいて、コントローラ100は累積使用回数と交換閾値を取得する(S1901)。
【0155】
続いてコントローラ100は、累積使用回数が交換閾値を超えているか否かを判定する(S1902)。累積使用回数が交換閾値を超えていれば(S1902:YES)、操作パネル110を介して、ユーザに対し、表面処理部材44fの交換を促す情報を報知する(S1903)。累積使用回数が交換閾値を超えていなければ(S1902:NO)、処理を継続する。
【0156】
[特定液体付与処理の第二実施形態]
次に、特定液体付与処理を伴う圧着綴じ処理の第二実施形態について説明する。表面加工除去処理の回数は、一律である必要はない。特に、媒体の種類によって、表面加工除去処理を実行するための表面処理部材44fの移動回数を可変させることで、より多様な媒体に対して、特定液体付与処理による効果を高めることができる。
【0157】
例えば、図22に例示するような表面加工除去処理回数テーブルデータD1がコントローラ100のROMに格納されているとする。すでに説明をした図20に示したフローチャートとの対応を用いて説明する。
【0158】
媒体情報を取得した後(S1801)、表面処理の必要有無を判定するまでに(S1802)、S1801で取得した媒体情報を用いて表面加工除去処理回数テーブルデータD1を参照する。
【0159】
ここで、媒体情報には、用紙Pに予め付与されている種別番号(No)が含まれているものとする。そこで、種別番号(No)に対応する表面加工除去処理回数が特定される。ここで特定された表面加工除去処理回数を用いて、表面加工除去処理(S1806)の回数を制御する。
【0160】
これによって、用紙Pの種類に適した表面加工除去処理を実行することができるので、液体付与の効果をより向上できるようになる。
【0161】
なお、上記に説明したコントローラ100による制御方法は、すでに説明のとおり、コンピュータのハードウェア資源をとコンピュータソフトウェアとしてのプログラムとの協働により実現される。すなわち、制御方法は、プログラムに基づいて、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置、及び、制御装置を協働して動作させて、コンピュータが実行する方法である。また、プログラムは、記憶装置、又は、記憶媒体等に書き込まれて配布、又は、電気通信回線等を通じて配布されてもよい。
【0162】
そして、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0163】
[本発明の態様]
本発明の内容は、例えば、以下のとおりである。
<1> 少なくとも一枚の媒体の一部に液体付与をする液体付与部と、
前記液体付与部において液体付与をされた少なくとも一枚の媒体を含む媒体束に所定の後処理を施す後処理手段と、
を備え、
前記液体付与部は、
前記媒体に対し前記後処理が施される前の当該媒体の表面に対する処置としての表面処理を施す表面処理材と、
当該表面を含む前記媒体に前記液体付与を施す液体付与部材と、
を備える、
ことを特徴とする媒体処理装置である。
<2>
前記液体付与部は、前記表面処理材と前記液体付与部材を含む一体物を保持し、前記媒体に対し当該一体物を接触又は離間する方向に移動させる、
前記<1>に記載の媒体処理装置である。
<3>
前記液体付与部は、
前記表面処理材を、
前記液体付与が施される前の前記媒体に接触して前記表面処理を行うときの表面処理位置と、前記媒体の表面から離間した離間位置との間を移動可能な接離方向移動手段と、
前記表面処理材を前記記媒体に当接させながら移動させる当接移動手段と、
を有し、
当該表面処理材は、前記媒体において前記液体付与が施される領域を含む所定の範囲において、前記媒体に当接した状態で移動することにより前記表面処理を行う、
前記<1>又は前記<2>に記載の媒体処理装置である。
<4>
前記液体付与部は、
前記表面処理を実行した後の領域に対し前記液体付与を施す、
前記<1>乃至前記<3>のいずれか一つに記載の媒体処理装置である。
<5>
前記液体付与部は、
前記媒体の種別を示す媒体情報に応じて、前記表面処理の有無を選択する、
前記<1>乃至前記<4>のいずれか一つに記載の媒体処理装置である。
<6>
前記液体付与部は、
前記媒体の種別を示す媒体情報に応じて、前記当接移動手段による移動回数を可変する、
前記<3>乃至前記<5>のいずれか一つに記載の媒体処理装置である。
<7>
前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された複数の前記媒体を加圧変形させて綴じる前記<1>乃至前記<6>のいずれか一つに記載の媒体処理装置と、
を備えることを特徴とする画像形成システムである。
【符号の説明】
【0164】
1 :画像形成システム
2 :画像形成装置
3 :後処理装置
22 :内部トレイ
25、25´:端綴じ処理部
26 :排出トレイ
31 :液体付与部
31a :液体付与フレーム
32 :圧着部
36 :液体付与機構
40a :液体付与部移動センサ
44 :液体付与手段
44a :端綴じ待機位置センサ
44e :液体付与部材
44f :表面処理部材
50 :端綴じ処理部移動モータ
50a :液体付与Md移動モータ
51 :駆動力伝達機構
52 :圧着部回動機構
53 :圧着部回転軸
54 :圧着部回動モータ
55 :液体付与部回動機構
56 :液体付与部回動軸
57 :液体付与部回動モータ
100 :コントローラ
101 :CPU
102 :RAM
103 :ROM
104 :HDD
105 :I/F
109 :共通バス
110 :操作パネル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0165】
【特許文献1】特開2020-172399号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22