(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135515
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、積層体、粘着フィルム、光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置及び偏光板
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20240927BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20240927BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J133/14
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046238
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】塚田 高士
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】廣神 萌美
(72)【発明者】
【氏名】客野 真人
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CB03
4J004EA05
4J004FA08
4J040DF031
4J040DF061
4J040GA05
4J040JA09
4J040JB09
4J040LA02
4J040LA06
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】生物由来材料を使用し、高い粘着力と水蒸気バリア性を発揮できる粘着剤組成物の提供。
【解決手段】アクリル共重合体を含む粘着剤組成物であって、前記アクリル共重合体はガラス転移点温度が10℃以下であり、前記アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素であり、前記アクリル共重合体は、(A)成分を含有し、前記(A)成分は、一般式(1)で表される(A1)成分を有し、前記(A)成分のモノマーの合計量に対する、前記(A1)成分の含有量は25重量部以上である、粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体を含む粘着剤組成物であって、
前記アクリル共重合体のガラス転移点温度は10℃以下であり、
前記アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素であり、
前記アクリル共重合体は、(A)成分を含有し、
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される(A1)成分を有し、
前記(A)成分のモノマーの合計量に対する、前記(A1)成分の含有量は25重量部以上である、粘着剤組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基である。R
2は、炭素数7~12の多環式炭化水素基である。R
2で表される多環式炭化水素基が、バイオマス由来のアルキル基である。)
【請求項2】
前記(A1)成分はイソボルニルアクリレートである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分は(A2)成分を有し、前記(A2)成分は、炭素数1~20のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートである、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリル共重合体は(B)成分を有し、前記(B)成分はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を有する積層体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を、樹脂フィルムの片面又は両面に備える、粘着フィルム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物により形成される、光学フィルム用粘着剤層。
【請求項8】
請求項7に記載の光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた画像表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載の光学フィルム用粘着剤層が用いられた粘着剤層付き偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、積層体、粘着フィルム、光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置及び偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油由来製品の燃焼による二酸化炭素の排出が問題視されており、石油等の化石資源系材料の使用量の低減が求められている。これに伴い、粘着剤分野においても石油由来材料に代えて生物由来材料を用いることで、石油資源の使用を節約する試みがなされている。
【0003】
例えば特許文献1は、アクリル系重合物を含む粘着シートを開示している。特許文献1に開示された粘着シートが備える粘着剤層に含まれる全炭素数の50%以上は、バイオマス由来の炭素である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているように、環境問題に配慮し、粘着剤組成物のバイオマス度をより向上させる試みがなされている。
また、例えば特定の医薬品や、有機ELディスプレイ等の電子部材の用途に使用される場合、粘着シートには高い水蒸気バリア性が求められる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、生物由来材料を使用し、高い粘着力と水蒸気バリア性を発揮できる粘着剤組成物、これを用いた積層体、粘着フィルム、光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置及び偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]アクリル共重合体を含む粘着剤組成物であって、前記アクリル共重合体のガラス転移点温度は10℃以下であり、前記アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素であり、前記アクリル共重合体は、(A)成分を含有し、前記(A)成分は、下記一般式(1)で表される(A1)成分を有し、前記(A)成分のモノマーの合計量に対する、前記(A1)成分の含有量は25重量部以上である、粘着剤組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基である。R
2は、炭素数7~12の多環式炭化水素基である。R
2で表される多環式炭化水素基が、バイオマス由来のアルキル基である。)
[2]前記(A1)成分はイソボルニルアクリレートである、[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]前記(A)成分は(A2)成分を有し、前記(A2)成分は、炭素数1~20のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートである、[1]又は[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]前記アクリル共重合体は(B)成分を有し、前記(B)成分はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
[5][1]~[4]のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を有する積層体。
[6][1]~[4]のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を、樹脂フィルムの片面又は両面に備える、粘着フィルム。
[7][1]~[4]のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成される、光学フィルム用粘着剤層。
[8][7]に記載の光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた画像表示装置。
[9][7]に記載の光学フィルム用粘着剤層が用いられた粘着剤層付き偏光板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生物由来材料を使用し、高い粘着力と水蒸気バリア性を発揮できる粘着剤組成物、これを用いた積層体、粘着フィルム、光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置及び偏光板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<粘着剤組成物>
本実施形態は、アクリル共重合体を含む粘着剤組成物である。
本実施形態において「粘着剤」とは、粘着剤組成物が溶剤に溶解した液体を意味する。
本実施形態において「粘着剤組成物」とは、室温(20℃)付近の温度領域において、柔らかい固体(粘弾性体)の状態であって、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料を意味する。
【0010】
本明細書において「高い粘着力を発揮できる粘着剤組成物」とは、複数種類の被着体に対する粘着力が、それぞれ所定の値以上である粘着剤組成物を意味する。
具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定した、アクリル板に対する粘着力が5N/25mm以上であり、ガラス板に対する粘着力が2N/25mm以上であり、ステンレス板に対する粘着力が3N/25mm以上、シクロオレフィンポリマーフィルムに対する粘着力が16N/25mm以上である粘着剤組成物を意味する。
【0011】
本明細書において「高い水蒸気バリア性を有する」とは、後述する実施例に記載の方法により測定した、水蒸気透過率が300g/(m2・day)以下であることを意味する。
【0012】
≪アクリル共重合体≫
本実施形態において、アクリル共重合体はガラス転移点温度が10℃以下である。
ガラス転移点温度は、下記に示すFOXの式によって算出する。
(FOXの式)
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・WN/TgN
Tg:アクリル共重合体のガラス転移温度
TgN:ホモポリマーのガラス転移温度
WN:モノマーの重量分率
【0013】
ガラス転移点温度が10℃以下のアクリル共重合体であることは、粘着剤組成物として機能するための基本的な性質である。
【0014】
本実施形態において、アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素である。
アクリル共重合体のバイオマス炭素比が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味する。
【0015】
化石資源系材料の使用量を削減する観点から、バイオマス炭素比は高い方が好ましい。本実施形態においては、アクリル共重合体の全炭素数の30%以上100%以下の範囲でバイオマス由来の炭素であることが好ましい。
【0016】
バイオマス度は、加速器質量分析法(AMS法)により、質量数14の炭素同位体の含有割合を測定することで測定できる。
【0017】
本実施形態において、粘着剤組成物に含まれる溶剤成分を除去し、固形分を加速器質量分析法(AMS法)により測定することで、アクリル共重合体のバイオマス度を測定できる。
【0018】
・(A)成分
アクリル共重合体は(A)成分を含有する。(A)成分は、下記一般式(1)で表される(A1)成分を有する。
【0019】
【化2】
(一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基である。R
2は、炭素数7~12の多環式炭化水素基である。R
2で表される多環式炭化水素基が、バイオマス由来のアルキル基である。)
【0020】
一般式(1)で表されるモノマーは、R1が水素原子であるアルキルアクリレートであってもよく、R1がメチル基であるアルキルメタクリレートであってもよい。
【0021】
一般式(1)中、R2は、炭素数7~12の多環式炭化水素基である。多環式炭化水素基は、環を2つ以上有する炭化水素基であり、R2としては、ノルボニル基、イソボニル基、アダマンチル基が挙げられ、なかでもイソボルニル基であることが好ましい。
【0022】
一般式(1)で表される(A1)成分は、イソボルニルアクリレートであることが好ましい。
【0023】
(A1)成分が備えるかさ高い側鎖であるR2が立体障害となり水分子の透過を阻害するため、本実施形態の粘着剤組成物を用いて形成された粘着層は、高い水蒸気バリア性を発揮する。
【0024】
・(A2)成分
(A)成分は、上記(A1)成分に加えて(A2)成分を含むことが好ましい。(A2)成分は、炭素数1~20のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートである。(A2)成分が有するアルキル基は、バイオマス由来のアルキル基であってもよく、非バイオマス由来のアルキル基であってもよい。
【0025】
(A2)成分が有するアルキル基の炭素原子数が3以上である場合、アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。また、R2は環状のアルキル基であってもよい。
【0026】
(A2)成分が有するアルキル基は、炭素数8以上のアルキル基が好ましく、炭素数が10以上のアルキル基がより好ましい。
【0027】
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、イソステアリル基、ラウリル基等が挙げられる。
【0028】
環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基が挙げられる。
【0029】
(A2)成分が有するアルキル基の炭素数が上記範囲であると、高い粘着力を発揮できる。
【0030】
アクリル共重合体は、(A1)成分と(A2)成分との共重合体であることが好ましい。
この場合には、(A1)成分と(A2)成分は、上述したアルキル(メタ)アクリレートをそれぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(A)成分のモノマーの合計量に対する、(A1)成分の含有量は、25重量部以上であり、30重量部以上がより好ましく、35重量部以上がさらに好ましい。
(A)成分のモノマーの合計量に対する、(A1)成分の含有量は、50重量部以下が好ましく、48重量部以下がより好ましく、45重量部以下がさらに好ましい。
【0032】
(A)成分のモノマーの合計量に対する、(A1)成分の含有量は、25重量部以上50重量部以下、30重量部以上48重量部以下、35重量部以上45重量部以下が挙げられる。
【0033】
(A1)成分の割合が上記下限値以上であると、(A1)成分が備えるR2の立体障害が発揮されて水分子の透過を阻害するため、高い水蒸気バリア性を発揮する粘着層が得られる。
(A1)成分の割合が上記上限値以下であると、粘着剤のガラス転移温度が高くなりすぎず、粘着剤組成物として適切な硬さを維持できる。
【0034】
・(B)成分
(B)成分は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。
【0035】
(B)成分は任意の成分であるが、(B)成分を共重合することでアクリル共重合体に架橋点を導入することができる。
(B)成分の具体例としては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、その他のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の少なくとも1種以上が挙げられる。
【0036】
また、アクリル共重合体中の(B)成分の割合は、(A)成分の全量(100重量部)に対して、10.0重量部以下が好ましく、7.5重量部以下がより好ましく、6.0重量部以下がさらに好ましく、5.0重量部以下が特に好ましく、3.0重量部以下が殊更好ましい。
また、アクリル共重合体中の(B)成分の割合は、(A)成分の全量(100重量部)に対して、0.1重量部以上であってもよく、1.0重量部以上であってもよく、1.5重量部以上であってもよい。
【0037】
また、アクリル共重合体中の(B)成分の割合は、(A)の全量(100重量部)に対して、例えば0.1重量部以上10.0重量部以下、1.0重量部以上7.5重量部以下、1.0重量部以上6.0重量部以下、1.0重量部以上5.0重量部以下、1.5重量部以上3.0重量部以下である。
【0038】
アクリル共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、例えば200000以上5000000以下が好ましく、300000以上4000000以下がより好ましく、500000以上2000000以下が特に好ましい。アクリル共重合体の重量平均分子量がこの範囲内であると、得られた粘着剤組成物は、優れた粘着力を発揮することができる。なお、本明細書において重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求められたポリスチレン換算分子量を意味する。
【0039】
アクリル共重合体が、アクリル酸エチル、(A1)成分、(A2)成分、(B)成分を有することは、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)、GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析計)、NMR(核磁気共鳴装置)等により確認できる。
【0040】
アクリル共重合体の合成は、上記のアルキル(メタ)アクリレートのモノマーを、従来公知の方法により重合開始剤の存在下でラジカル反応により重合させればよい。詳細な重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合が好ましい。
【0041】
本実施形態の粘着剤組成物は、アクリル共重合体と、必要に応じた溶剤、架橋剤、粘着付与剤、シランカップリング剤等を混合することで製造できる。
【0042】
本実施形態の粘着剤組成物が含んでいてもよい架橋剤例としては、3官能以上のイソシアネート化合物が好ましい。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類が好ましく、トリレンジイソシアネートのTMPアダクト体、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等が特に好ましい。
【0043】
<積層体>
本実施形態の積層体は、基材に粘着剤組成物を積層した、基材/粘着剤層の2層積層体である。また、基材/粘着剤層/基材をこの順で積層した3層積層体であってもよい。ここで粘着剤層とは、本実施形態の粘着剤組成物を基材に塗布し、乾燥させた後の粘着剤組成物の層を意味する。
【0044】
基材は、樹脂フィルム、ガラス板、アクリル板、金属箔等が挙げられる。
本実施形態の粘着剤組成物は、複数種類の基材に対し、高い粘着力を発揮できる。
【0045】
樹脂フィルムとしては、変性ポリイミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム、環状オレフィン樹脂フィルム、ポリフェニレンエーテル樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルム、ビスマレイミド樹脂フィルム、トリアジン樹脂フィルム、ベンゾシクロブテン樹脂フィルムからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0046】
金属箔としては、ステンレス箔、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0047】
本実施形態の積層体において、粘着剤層の厚みは、例えば1μm以上200μm以下である。基材の厚みは、例えば20μm以上200μm以下である。
【0048】
<粘着フィルム>
本実施形態の粘着フィルムは、樹脂フィルムの片面又は両面に前記本実施形態の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を備える。
【0049】
<光学フィルム用粘着剤層>
本実施形態の光学フィルム用粘着剤層は、前記本実施形態の粘着剤組成物を基材や離型フィルムに塗布した後、粘着剤組成物を架橋させることで形成することができる。架橋後の光学フィルム用粘着剤層のゲル分率は、60~90%が好ましい。
【0050】
本実施形態の光学フィルム用粘着剤層を、光学部材の層間の貼り合わせなどに用いる場合、薄い粘着剤層であることが望ましい。光学フィルム用粘着剤層の厚みは、5~25μmが好ましい。
【0051】
<画像表示装置>
本実施形態は、前記本実施形態の光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた画像表示装置である。
前記本実施形態の光学フィルム用粘着剤層は、画像表示装置のガラス板等の貼り合わせに用いることができる。
【0052】
本実施形態の画像表示装置としては、液晶表示装置(液晶パネル)、有機EL表示装置(液晶パネル)、タッチパネル、電子ペーパー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
<偏光板>
本実施形態は、前記本実施形態の光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた偏光板である。
前記本実施形態の光学フィルム用粘着剤層は、十分な透明性を有するため、偏光板の貼り合わせに好適に用いられる。
【実施例0054】
以下、実施例として、より具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
<粘着剤組成物の調製>
≪実施例1≫
(1)アクリル共重合体の製造
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に40重量部のイソボルニルアクリレート、60重量部の2エチルヘキシルアクリレート、1.0重量部の4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、アクリル共重合体溶液を得た。
【0056】
GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算による、アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分散度(Mw/Mn)を表1に記載する。
【0057】
(2)粘着剤組成物の製造
得られたアクリル共重合体100重量部に、0.3質量部の架橋剤(三井化学株式会社 タケネート(登録商標)D-101E)を加えて撹拌混合し、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0058】
(3)粘着シートの製造
この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着シートを得た。
【0059】
[バイオマス度の測定]
表1に示すバイオマス度は、以下の方法で算出した値である。
ASTM D6866に準拠して測定される加速器質量分析法(AMS法)により、質量数14の炭素同位体の含有割合を測定することで、粘着剤組成物が含むアクリル共重合体のバイオマス度を測定した。
具体的には、上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートについて、ASTM D6866に準拠して測定される加速器質量分析法(AMS法)により、質量数14の炭素同位体の含有割合を測定することで、粘着剤組成物が含むアクリル共重合体のバイオマス度を測定した。
上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートは粘着剤組成物の溶剤成分が除去された固形分に相当するため、粘着シートのバイオマス度は、粘着剤組成物が含むアクリル共重合体のバイオマス度とみなすことができる。
【0060】
[ガラス転移点温度の算出]
ガラス転移点温度は、下記に示すFOXの式によって算出した。
(FOXの式)
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・WN/TgN
Tg:アクリル共重合体のガラス転移温度
TgN:ホモポリマーのガラス転移温度
WN:モノマーの重量分率
【0061】
≪実施例2~3、比較例1~8≫
実施例1と同様の方法により、下記表1に示す実施例2~3、比較例1~8の粘着剤組成物をそれぞれ調製した。
【0062】
【0063】
表1中、各記号は以下の材料を意味する。[]内の数値は配合量(重量部)である。
IBOA:イソボルニルアクリレート
2EHA:2エチルヘキシルアクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
OCA:オクチルアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
THFA:テトラヒドロフリルアクリレート
BHA:ベヘニルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
【0064】
[粘着強度の測定1]
厚みが50μmのポリエステルフィルムの基材の片面に、上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートを転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。得られた粘着フィルムを、厚みが1mmのステンレス箔(SUS304 BA板)のアセトンで洗浄した表面に圧着ロールで貼り合せて、23℃×50%RHの雰囲気下で20分間経過させた。前記ステンレス箔の表面から粘着フィルムを剥離するときの粘着力を測定する方法として、引張試験機によって、JIS Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠して、粘着フィルムの剥離強度を測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、ステンレス箔に対する粘着フィルムの粘着剤層の粘着力(N/25mm)とした。粘着力が3N/25mm以上の場合を、ステンレス箔に対し高い粘着力を発揮していると評価した。
【0065】
[粘着強度の測定2]
厚みが50μmのポリエステルフィルムの基材の片面に、上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートを転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。得られた粘着フィルムを、厚みが2mmのアクリル板(商品名 パラグラス(登録商標))の表面に圧着ロールで貼り合せて、23℃×50%RHの雰囲気下で20分間経過させた。前記アクリル板の表面から粘着フィルムを剥離するときの粘着力を測定する方法として、引張試験機によって、JIS Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠して、粘着フィルムの剥離強度を測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、アクリル板に対する粘着フィルムの粘着剤層の粘着力(N/25mm)とした。粘着力が5N/25mm以上の場合を、アクリル板に対し高い粘着力を発揮していると評価した。
【0066】
[粘着強度の測定3]
厚みが50μmのポリエステルフィルムの基材の片面に、上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートを転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。得られた粘着フィルムを、厚みが1mmの無アルカリガラス(商品名 Eagle XG(登録商標))のアセトンで洗浄した非錫面の表面に圧着ロールで貼り合せて、23℃×50%RHの雰囲気下で20分間経過させた。ガラス板の表面から粘着フィルムを剥離するときの粘着力を測定する方法として、引張試験機によって、JIS Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠して、粘着フィルムの剥離強度を測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、ガラス板に対する粘着フィルムの粘着剤層の粘着力(N/25mm)とした。粘着力が2N/25mm以上の場合を、ガラス板に対し高い粘着力を発揮していると評価した。
【0067】
[粘着強度の測定4]
厚みが50μmのポリエステルフィルムの基材の片面に、上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートを転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。得られた粘着フィルムを、厚みが1mmのステンレス箔(SUS304 BA板)の表面に両面テープで固定した、厚みが50μmのシクロオレフィンコポリマーフィルム(商品名 ゼオノア(商標登録)ZF-16)の表面に圧着ロールで貼り合せて、23℃×50%RHの雰囲気下で20分間経過させた。シクロオレフィンコポリマーフィルムの表面から粘着フィルムを剥離するときの粘着力を測定する方法として、引張試験機によって、JIS Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠して、粘着フィルムの剥離強度を測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、シクロオレフィンコポリマーフィルムに対する粘着フィルムの粘着剤層の粘着力(N/25mm)とした。粘着力が16N/25mm以上の場合を、ガラス板に対し高い粘着力を発揮していると評価した。表2中、シクロオレフィンコポリマーフィルムを「COP」と記載する。
【0068】
[水蒸気透過率の測定]
厚さを25μmとした粘着剤層の水蒸気透過率〔g/(m2・day)〕は、JIS K7129のB法に準拠した赤外線センサ法により、株式会社日立ハイテクサイエンスのMOCON(登録商標)水蒸気透過率測定装置 PERMATRAN-W(登録商標)3/34Gを使用し、32℃×90%RH雰囲気下において24hに透過した水蒸気の量(g)から面積1m2当たりに換算して測定した。測定値が890g/(m2・day)以上となる場合は、測定装置の測定上限界値に達するため、測定値を特定せずに「890g/(m2・day)以上」とした。
【0069】
【0070】
表2に示したように、(A1)成分を所定量含むアクリル共重合体を使用した実施例1~3は、水蒸気透過率が300g/(m2・day)以下と低く、高い水蒸気バリア性を発揮することが確認できた。これは、(A1)成分が有する側鎖が立体障害により水分子の透過を抑制したためと推察できる。
【0071】
また、実施例1~3は、アクリル板、ガラス板、ステンレス箔及びシクロオレフィンポリマーフィルムの全てに対して高い粘着力を発揮していた。
【0072】
一方、(A1)成分を含まない比較例1~6、8は水蒸気透過率も高く、着力も低かった。
また、(A1)成分の含有量が(A)成分の合計量に対し25重量部未満である比較例7は、実施例1~3よりも水蒸気透過率が高く、シクロオレフィンポリマーフィルムに対する粘着力が不十分であった。