(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135639
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】生体磁気計測装置、生体磁気計測システム、情報処理装置、生体磁気計測方法、及び生体磁気計測プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/242 20210101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B5/242
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046426
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(71)【出願人】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 泰士
(72)【発明者】
【氏名】川端 茂▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】横田 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】大谷 泰
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA10
4C127GG07
4C127GG15
4C127HH13
4C127HH16
(57)【要約】
【課題】計測対象の生体部位にかかわらず、計測された磁場データから精度よく電流分布を推定することのできる生体磁気計測技術を提供する。
【解決手段】生体磁気計測装置は、生体磁気検出器と、前記生体磁気検出器で検知された磁場データから、生体内の信号源の深さを推定する第1の信号源推定部と、前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する領域設定部と、前記対象領域の中の前記電流分布を推定する第2の信号源推定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体磁気検出器と、
前記生体磁気検出器で検知された磁場データから、生体内の信号源の深さを推定する第1の信号源推定部と、
前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する領域設定部と、
前記対象領域の中の前記電流分布を推定する第2の信号源推定部と、
を備える生体磁気計測装置。
【請求項2】
前記第1の信号源推定部は、前記磁場データに三次元の位置推定を行う空間フィルタ法又はダイポール推定法を適用して前記信号源の前記深さを推定し、
前記第2の信号源推定部は、前記磁場データに二次元の位置推定を行う空間フィルタ法を適用して前記対象領域の中の前記電流分布を推定する、
請求項1に記載の生体磁気計測装置。
【請求項3】
前記信号源の深さを推定するための対象空間を指定する対象空間入力部、
を有する請求項1に記載の生体磁気計測装置。
【請求項4】
前記対象空間入力部は、計測部位の形態画像に基づいて、電流の流れうる領域を前記対象空間として指定可能なことを特徴とする
請求項3に記載の生体磁気計測装置。
【請求項5】
前記第1の信号源推定部は、前記信号源の深さを推定するための対象空間を設定し、前記対象空間の中の局所的なピークを前記信号源の深さとして推定し、
前記領域設定部は、前記局所的なピークを含む平面又は曲面を前記対象領域として設定する、
請求項1に記載の生体磁気計測装置。
【請求項6】
前記第1の信号源推定部は、前記局所的なピークを含み生体の形状に沿った曲面を前記対象領域として設定する、
請求項5に記載の生体磁気計測装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の生体磁気計測装置と、
前記対象領域の中で推定された前記電流分布を表示する表示装置と、
を有する生体磁気計測システム。
【請求項8】
前記表示装置は、前記電流分布を計測部位の形態画像に重畳して表示する、
請求項7に記載の生体磁気計測システム。
【請求項9】
入力された磁場データから、生体内の信号源の深さを推定する第1の信号源推定部と、
前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する領域設定部と、
設定された前記対象領域の中で前記電流分布を推定する第2の信号源推定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項10】
プロセッサで、入力された磁場データから生体内の信号源の深さを推定し、
プロセッサで、前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定し、
プロセッサで、設定された前記対象領域の中で前記電流分布を推定する、
生体磁気計測方法。
【請求項11】
プロセッサに、
入力された磁場データから生体内の信号源の深さを推定する手順と、
前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する手順と、
設定された前記対象領域の中で前記電流分布を推定する手順と、
を実行させる生体磁気計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体磁気計測装置、生体磁気計測システム、情報処理装置、生体磁気計測方法、及び生体磁気計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
脊磁計による生体磁気計測では、センサアレイで得られた磁場データから、空間フィルタ法などの推定アルゴリズムを用いて生体内の電流分布を推定し、神経機能を評価する。磁場信号は、磁場源とセンサの間の距離によって大きく変化するため、事前情報として神経の位置情報を取得し、得られた位置情報を推定アルゴリズムに与える必要がある。脊髄の神経活動により発生した電流とセンサとの位置関係を特定するために、単純X線像を用いる方法(たとえば、特許文献1参照)、超音波(エコー)を用いる方法(たとえば、特許文献2)などが知られている。
【0003】
神経や筋肉はX線画像に写らないため、X線画像から例えば神経の位置情報を取得する方法は、脊髄のように骨と神経の位置関係が一意に決まる場合にのみ適用可能である。脊髄以外の生体部位の磁気計測の場合、X線画像からセンサと神経の位置関係を正確に取得することができず、神経活動や筋収縮に由来する電流強度を正確に推定できない。たとえば、末梢神経などを計測対象とする場合、骨と神経の位置関係が一意に決まらないので、超音波(エコー)を用いて神経画像を取得している。超音波(エコー)で位置関係を特定する方法は、準備や手法が煩雑であり臨床への応用が難しい。超音波(エコー)は神経を測定対象とする場合に適用可能であるが、筋肉を測定対象とした場合、筋肉内のどの部位で電気活動が発生するかは超音波(エコー)画像からは捉えられない。そのため、筋肉を対象とする計測に超音波(エコー)を適用できない。
【0004】
X線画像から脊髄を含む二次元ソーススペースを抽出し、抽出した二次元ソーススペースを電流分布の再構成面とする手法(たとえば、非特許文献1参照)や、アダプティブビームフォーマーを用いた信号源の三次元再構成(たとえば、非特許文献2参照)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体磁気計測で、神経や筋肉の電気活動により生じる電流分布を二次元面内で推定する際、電流強度はセンサと二次元面との位置関係に大きく依存する。具体的には、センサで得られる電流強度は、センサから磁場源までの距離の二乗に反比例する。そのため、何らかの方法で二次元面の位置を正確に定義する必要がある。X線画像から二次元面を抽出する手法は、上述のように、脊髄など骨格と神経の位置関係が明確である部位を対象とした場合の計測にしか適用できない。
【0006】
本発明は、計測対象の生体部位にかかわらず、計測された磁場データから精度よく電流分布を推定することのできる生体磁気計測技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態において、生体磁気計測装置は、
生体磁気検出器と、
前記生体磁気検出器で検知された磁場データから、生体内の信号源の深さを推定する第1の信号源推定部と、
前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する領域設定部と、
前記対象領域の中の前記電流分布を推定する第2の信号源推定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
生体磁気計測において、計測対象の生体部位にかかわらず、計測された磁場データから精度よく電流分布を推定することのできる生体磁気計測技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の生体磁気計測システムの模式図である。
【
図2】情報処理装置の信号源推定部の機能ブロック図である。
【
図3】実施形態の生体磁気計測方法のフローチャートである。
【
図4】信号源(点電流)を含むファントムから得られた磁場データを示す図である。
【
図5】
図4の磁場データに基づく信号源の深さ推定を示す図である。
【
図6】
図5の深さ推定に基づく二次元の関心対象領域の設定を示す図である。
【
図7】第1実施例でファントムを用い空間フィルタ法を適用した信号源の深さ推定結果を示す図である。
【
図8】第1実施例でダイポール推定法を適用した信号源の深さ推定結果を示す図である。
【
図9】
図7の深さ推定結果に基づいて設定した二次元の関心対象領域内に電流分布を再構成した図である。
【
図10】比較として、三次元再構成結果を直接XY面に投影した電流分布を示す図である。
【
図11】第2実施例で生体磁気計測を健常者に適用する実験セットアップ図である。
【
図12】
図11のセットアップで得られた磁場データの三次元再構成結果をYZ面に投影した図である。
【
図13】
図12の深さ推定結果に基づいて設定された関心対象領域内での二次元再構成結果を健常者の計測部に重畳した図である。
【
図14】比較として、三次元再構成結果を直接、健常者の計測部位に重畳した図である。
【
図15】第3実施例で生体磁気計測を神経磁界に適用したときの深さ推定結果を複数の時間点にわたって示す図である。
【
図16】
図15の深さ推定結果に基づいて設定された関心対象領域内での神経活動電流分布を複数の時間点で示す図である。
【
図17】各脊椎レベルでの電流波形を示す図である。
【
図18】第4実施例で十分な大きさの関心対象空間を設定したときの深さ推定結果を示す図である。
【
図19】比較として、関心対象空間の大きさが不十分なときの深さ推定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態では、計測対象となる生体部位に関係なく、得られた磁場データから、生体内の磁場源の分布を、二次元面内に精度よく再構成する。これを実現するために、磁場データから、まず信号源の深さを推定する。推定された信号源の深さに基づいて、電流分布または強度分布を推定する二次元の関心対象領域(平面または曲面)を設定し、この関心対象領域内で電流または強度の分布を推定する。関心対象領域内での電流分布の推定を、信号源の二次元再構成と呼んでもよい。
【0011】
磁場データからまず信号源の深さを推定し、推定された深さに基づいて特定した二次元の関心対象領域内で電流分布を推定することで、信号源の位置を直接、三次元的に推定する三次元再構成法と比較して、推定精度が向上する。磁場データから直接三次元的に信号源の位置を推定する三次元再構成法では、計測対象となる生体部位によっては、位置推定アルゴリズムに事前に与えられる情報(生体内の計測部位の位置情報等)が少ないため、信号源を二次元面内に精度よく再構成できない場合がある。実施形態では、磁場データから直接三次元的に信号源の位置を推定する三次元再構成法よりも精度よく、二次元面内の電流分布を推定する構成と手法を提供する。
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。下記で述べる実施形態は、発明の技術思想を具体化するための例示であり、本発明を下記の構成や数値に限定するものではない。添付の図面中、同一の機能を有する構成要素には、同一符号を付して、重複する記載を省略する場合がある。異なる実施形態や構成例の間での部分的な置換または組み合わせは可能である。各図面が示す各部材の大きさ、位置関係等は、発明の理解を容易にするために誇張して描かれている場合がある。
【0013】
<生体磁気計測装置の基本構成>
図1は、実施形態の生体磁気計測システム1の模式図である。生体磁気計測システム1は、生体磁気計測装置20と、表示装置40を含む。生体磁気計測装置20は、生体磁気検出器12と、情報処理装置30を含む。生体磁気検出器12は、磁気センサアレイ121を有する。磁気センサアレイ121は、被検体10の生体内の神経活動、筋肉活動などにより生じた信号(電流)から発生する生体磁場を、生体の皮膚表面で検出する。
【0014】
磁気センサアレイ121を構成する磁気センサとして、超電導量子干渉計(SQUID:Superconducting Quantum Interference Device)、磁気抵抗(MR:Magneto Resistive)センサ、磁気インピーダンス(MI:Magneto-Impedance)センサ、常温磁気センサとして知られる光ポンピング原子磁気センサ(OPAM:Optically Pumped Atomic Magnetometer)などを利用することができる。磁気センサアレイ121は、温度調整機能を有する断熱容器内に固定されていてもよい。特に、SQUIDセンサを利用する場合、磁気センサアレイ121はクライオスタットと呼ばれる断熱容器内に収められて極低温に冷却される。室温での使用が可能な磁気センサを用いる場合は、磁気センサアレイ121は適切なケースまたはシートに収納されていてもよい。生体磁気検出器12は、磁場変動の影響を最小限にするために、測定空間内で位置が固定されていてもよい。
【0015】
生体磁気検出器12で検知された磁場データは、情報処理装置30に入力される。情報処理装置30は、プロセッサ31と、メモリ32と、入出力インタフェース33と、ユーザインタフェース34を有する。メモリ32は、ROM、RAM等の主記憶装置と、ソリッドステートドライブ(SSD;Solid State Drive)等の補助記憶装置とを含む。磁気データは、入出力インタフェース33により、生体磁気検出器12から情報処理装置30に入力されて、磁場データとしてメモリ32に保存される。あるいは、生体磁気検出器12と情報処理装置30の間にデータロガーを接続して、データロガーに蓄積された磁気信号を磁場データとして情報処理装置30に入力することでもよい。
【0016】
プロセッサ31は、得られた磁場データに基づいて、信号源の深さを推定する。信号源の深さは空間フィルタ法、ダイポール推定法など、適切な手法で推定され得る。深さ推定のアルゴリズムは、例えば、メモリ32内に保存される。プロセッサ31は、推定された信号源の深さに基づいて、関心対象領域となる二次元面を設定し、関心対象領域内の信号源(電流)の分布を推定する。関心対象領域となる二次元面は、平面であっても曲面であってもよく、また、ユーザインタフェース34を介して、二次元面をどのような面に設定するかを設定可能とする構成としてもよい。
【0017】
関心対象領域内で推定された電流分布は、表示装置40に出力され、表示される。表示装置40は、情報処理装置30とは別のモニタディスプレイであってもよいし、情報処理装置30と一体的に設けられていてもよい。
【0018】
図2は、情報処理装置30の信号源推定部310の機能ブロック図である。信号源推定部310の機能は、プロセッサ31により実現され得る。信号源推定部310は、第1の信号源推定部311と、領域設定部312と、第2の信号源推定部313を有する。生体磁気検出器12で得られた磁場データは、第1の信号源推定部311に入力される。磁場データは生体磁気検出器12から直接入力されたものであってもよいし、メモリ32から読み出された磁場データであってもよい。あるいはデータロガー等の別のデバイスを介して、取得された磁場データであってもよい。
【0019】
第1の信号源推定部311は、磁気センサアレイ121の各センサで取得された磁場データから、信号源の深さを推定する。信号源の深さをダイポール推定法で推定する場合、信号源を等価電流ダイポールと仮定し、その位置と向き、及びダイポールのモーメントの大きさを推定する。ダイポール推定法は、互いに距離が離れた少数の局所的な神経活動が予想される場合は有効である。ダイポール推定法を適用する前提が保証できない場合は、空間フィルタ法が有効である。
【0020】
空間フィルタ法を用いる場合、三次元の位置推定が可能なAGRENS(array-gain recursive null steering)法と呼ばれる位置推定アルゴリズムを用いてもよいし、重みづけされた最小二乗法による空間フィルタを用いてもよい。後者の場合、磁気センサアレイ121で二次元的に観測された磁界(皮膚表面に対して垂直なZ方向の磁界)の分布から、生体内の関心対象空間の各ボクセル内の電流密度を、重みづけされた最小二乗法等により推定する。電流密度の最も高いボクセル位置を、信号源の深さとして特定してもよい。
【0021】
第1の信号源推定部311により、磁気センサアレイ121で得られた磁気データから信号源の深さが推定されると、領域設定部312は、推定された深さに基づいて、二次元面の関心対象領域を設定する。関心対象領域となる二次元面は、平面であっても曲面であってもよい。たとえば、領域設定部312は、最も強く推定された深さのボクセル点もしくはローカルピークを含む平面または曲面を二次元面として設定する。最も強く推定されたボクセル点もしくはローカルピークの深さと同じ深さの平面を二次元の関心対象領域として設定してもよいし、最も強く推定された深さのボクセル点を含み、かつ生体表面の形状に沿った曲面を二次元面の関心対象領域として特定してもよい。第1の信号源推定部311による深さの推定結果に複数のローカルピークが含まれる場合は、ローカルピークの一部をつないで決定される面を、関心対象領域の二次元面に設定してもよい。ここでのローカルピークとは、三次元の関心対象領域内で、局所的に周辺のボクセルより大きな強度を持つボクセル点のことを言う。
【0022】
第2の信号源推定部313は、領域設定部312によって設定された関心対象領域の面内の電流分布を推定する。関心対象領域の面内の電流分布は、二次元の信号位置推定を行う空間フィルタ法で推定可能である。関心対象領域内で推定された電流分布は、たとえば表示装置40に出力されて表示される。
【0023】
生体磁気計測装置20で用いられる情報処理装置30は、生体磁気検出器12で検知された磁場データから生体内の信号源の深さを推定する第1の信号源推定部311と、信号源の深さの推定結果に基づいて、生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する領域設定部312と、設定された対象領域の面内の電流分布を推定する第2の信号源推定部313を有する。これにより、信号源の深さを推定し、推定した深さに基づいて設定した二次元面内で、生体内の電流分布を精度よく推定することができる。
【0024】
<生体磁気計測方法>
図3は、実施形態の生体磁気計測方法のフローチャートである。この生体磁気計測方法は、情報処理装置30のプロセッサ31により実行される。まず、生体磁気検出器12で得られた磁場データから、信号源の深さを推定する(S11)。信号源の深さは、上述のように、空間フィルタ法、ダイポール推定法等で特定できる。
【0025】
次に、推定された信号源の深さに基づいて、関心対象領域の二次元面(平面または曲面)を設定する(S12)。最も強く推定された深さと同じ深さの平面を関心対象領域として設定してもよいし、最も強く推定された深さのボクセル点を含み、かつ生体の表面形状に沿った曲面を関心対象領域として設定してもよい。
【0026】
次に、設定された関心対象領域内での信号源(電流)の位置と強さを、空間フィルタ法等により推定する(S13)。実施形態の生体磁気計測方法では、生体内の電流分布がマッピングされる二次元面が、信号源の深さに基づいて適切に設定されているので、生体内の電流分布を二次元面内で精度よく再構成することができる。
【0027】
信号源推定部310の動作をプログラムで実現する場合は、情報処理装置30に、生体磁気計測プログラムをインストールし、入力された磁場データに対して、信号源の推定処理を行わせる。この場合、生体磁気計測プログラムは情報処理装置30のプロセッサ31に、
(a)入力された磁場データから生体内の信号源の深さを推定する第1の信号源推定手順と、
(b)信号源の深さの推定結果に基づいて、生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する手順と、
(c)設定された対象領域内の電流分布を推定する手順と、
を実行させる。
【0028】
後述するように、三次元位置推定により直接推定されたXY面内の電流分布をそのまま用いると、計測対象の部位によっては、生体内で発生した信号の電流分布を二次元面内に正確に再構成できない場合がある。これに対し、実施形態の生体磁気計測方法またはプログラムでは、磁場データから推定した深さに基づいて関心対象領域を二次元の面として設定する。設定された関心対象領域内で信号源の位置を二次元的に推定することで、生体内の計測部位の正確な位置を知ることが困難な場合でも、生体内の電流分布を二次元面内に精度良く再構成できる。
【0029】
図4は、疑似的に生体磁場を模した磁場信号を発生する装置であるファントムを磁気センサアレイ121に近接させて配置し、ファントムから発せられる磁場を計測して得られた磁場データの一例を示す。ここで用いるファントムは、内部の「点電流」から生じる磁場信号と似た信号を発生する装置である。横軸方向でみて左側の薄い等磁力線が磁場の湧き出し、右側の濃い等磁力線が吸い込みである。各矢印は、各位置における磁場ベクトルのXY成分を示す。この磁場データに対して、上述した生体磁気計測方法を適用する。
【0030】
図5は、
図4の磁場データに基づく信号源の深さ推定を示す。横軸はZ方向の位置、縦軸はY方向の位置である。横軸の0mmの位置が、磁気センサアレイ121の設置位置であり、マイナス側がファントムの設置されている方向への深さ方向である。ファントム内の「点電流」の位置をクロスマークで示し、電流の流れる方向を矢印で示す。この矢印の方向に対して、
図4に示したように時計回り(右回り)の磁場が発生し、発生した磁場が、生体磁気検出器12で検知される。
【0031】
点電流(信号源)を取り囲む三次元の関心対象空間Tsが設定される。
図4の磁場データに対し、空間フィルタ法等を適用して、三次元的に信号源の位置を推定する。三次元的な推定アルゴリズムの適用により、関心対象空間Ts内の信号源の位置が推定される。ここでは深さ方向、すなわちZ方向の位置に着目する。最も強く推定されたZ方向の位置を信号源の深さとして決定してもよい。複数のローカルピークが得られたときは、複数の推定結果を信号源の深さとして出力してもよい。また、複数のローカルビークの深さの平均値を信号源の深さとしてもよい。あるいは、ローカルピークの深さ±10%の範囲を信号源の深さとしてもよい。10%(1/10)以内のずれを許容しても、81%以上の信号強度が得られる。磁場信号の減衰量は20%以内であり、アルゴリズムの持つ誤差としては臨床的に許容できる。
【0032】
図6は、二次元の関心対象領域Tpの設定を示す。
図5で推定された深さに基づいて、関心対象領域Tpを設定する。
図6では、設定した二次元の関心対象領域Tpに、磁気センサアレイ121の各センサ122-iの配列を投影または重畳している。推定された信号源の深さに基づいて、面内の電流分布の推定に適した平面または曲面が設定される。計測対象の部位に応じて、推定された深さと同じ深さの平面でもよいし、推定された深さを含み、生体表面の形状に沿った曲面でもよい。複数のローカルピークが得られた場合は複数のローカルピークを含む平面または曲面であってもよい。関心対象領域Tpを設定することで、生体内の電流分布を二次元面内に精度良く再構成することができる。
【0033】
<第1実施例>
図7は、ファントムを用いて推定した信号源の深さの推定結果を示す。磁気センサアレイ121で得られた磁場データとして、
図4の磁場データを用いる。磁場データに、空間フィルタを適用して信号源の位置を三次元的に推定した結果をYZ面に投影した図を、等電流線図で示す。空間フィルタとして、信号源の位置を三次元的に推定するAGRENSフィルタを用いる。等電流線図の中心の黒丸が、YZ面内での信号源の推定位置である。クロスマークは、ファイントム内に設置された真の信号源の位置である。信号源の推定位置は、Y方向では若干の誤差があるものの、深さ方向では、真の信号源の位置とよく一致している。関心対象空間Tsの三次元再構成により、信号源の深さは精度よく推定されることが確認された。この深さ情報を用いて、二次元の関心対象領域を新たに設定する。
【0034】
図8は、ダイポール推定法を用いた信号源の深さの推定結果を示す。磁気センサアレイ121で得られた磁場データとして、
図4の磁場データを用いる。太線のクロスマークがダイポール推定法によって推定された信号源の深さを示す。該クロスマークから引かれた線分が電流のベクトルを示している。比較としてファントム内に設置された真の信号源の位置を細い実線のクロスマークで示す。深さ推定結果の真の信号源からのずれはわずかであり、電流のベクトルの方向は一致している。ダイポール推定法で推定された深さ情報を用いて、二次元の関心対象領域を新たに設定してもよい。
【0035】
図9は、
図7で推定した深さに基づいて設定した関心対象領域のXY面内の電流分布を示す。XY面内の電流分布の推定結果は、等電流線で表されている。等電流線の中心の黒丸の位置が、XY面内の信号源の位置である。XY面内の信号源の位置は、UGRENSフィルタにより、新たに推定されている。UGRENS法は、関心対象領域が二次元面であることを前提として、位置と、その強度を推定する。したがって、面内の電流分布を表す等電流線図を得ることができる。クロスマークは、ファントム内に設置された真の信号源の面内位置である。信号源の深さの推定結果に基づいて新たに設定されたXY面内で、信号源の位置の推定結果と、真の信号源の位置とがよく一致している。
【0036】
図10は、比較例として、信号源の三次元再構成結果を直接XY面に投影した図を示す。
図7、8、及び9と同様に、
図4の磁場データを用い、空間フィルタとしてAGRENSフィルタを用いる。濃淡の薄い領域は強く推定された領域、濃い領域は弱く推定された箇所である。AGRENSフィルタは、三次元空間を解析対象とする場合、三次元空間内の信号源の分布を直接求められるが、得られる値は磁場換算値であり、各部位の強度を相対的にしか示さない。濃淡の薄い領域の中心の黒丸は、三次元再構成により直接推定された信号源のXY面内位置である。白のクロスマークはファントム内に設置された真の信号源のXY面内位置である。この方法では、XY面内での信号源の推定位置が、真の推定位置からX方向、Y方向ともにずれている。
【0037】
AGRENS法は、三次元空間内の信号源の分布を求める手法として、Z方向の位置だけでなく、X方向とY方向の座標位置も推定可能である。しかし、三次元空間を対象とした推定結果そのものを用いると、X方向とY方向に推定誤差が生じ、推定精度が十分でないことがわかる。
【0038】
これに対し、
図7、及び
図9に示す第1実施例の方法によると、推定精度の高い深さ方向での最強点の位置に基づいて、新たにXY面に関心対象領域を設定し、二次元面を対象として空間フィルタ法で電流分布を推定する。これにより、推定された信号源の面内位置と、真の信号源の面内位置とがよく合致し、生体内の信号源の位置と強度を、二次元面上に精度よく再構成することができる。
【0039】
<第2実施例>
図11は、第2実施例の生体磁気計測を健常者に適用する実験セットアップ図である。第2実施例では、ヒトの手掌の短母指外転筋(APB:Abductor Pollicis Brevis muscle)の内部の信号源の推定に、生体磁気計測方法を適用する。APBは親指の付け根の筋肉であり、親指の付け根に位置するMP関節の屈曲と、親指の付け根と手首の間にあるCM関節の掌側外転をつかさどる。
【0040】
磁気センサアレイ121の上に掌を置いた状態で、電極により手の関節を刺激して、APBの活動を誘発し、APBの筋活動で生じた電流から発生した磁場を、磁気センサアレイ121で測定する。磁気センサアレイ121は、実際は掌の下側に設置されているが、各センサの位置を示すために、実験セットアップの画像にセンサ位置を重畳している。この実験セットアップで、磁気センサアレイ121と被験者の掌の表皮との間の距離は、25.0mmである。
【0041】
図12は、
図11のセットアップで得られた磁場データの三次元再構成結果をYZ面に投影した図である。横軸で0mmの位置は、磁気センサアレイ121の設置面である。被験者の手の内部でAPBが存在すると予想される位置を含むように、関心対象空間を設定する。関心対象空間内の信号源の位置を、AGRENS法など、三次元的な位置推定を行う空間フィルタ法により推定する。最も強く推定された位置を黒丸で示す。Z=-30mmの位置が、最も強く推定された深さ方向の位置である。
【0042】
図13は、
図12の深さ推定結果に基づいて新たに設定された関心対象領域内での二次元再構成結果を、健常者の計測部位に重畳した図である。親指の付け根のAPBの位置に強い電流密度が推定されている。
【0043】
結果の妥当性を確認するため、APBと被験者の掌の表皮との間の距離を、超音波画像により計測したところ、表皮から2.5mm~15.0mmの位置にAPBが存在することが確認できた。磁気センサアレイ121と被験者の掌の表皮までの距離は25.0mmとわかっているので、磁気センサアレイ121からAPBまでの距離は27.5mmから40.0mmの間であることがわかる。
図12でZ=-30mmと推定された信号源の深さは、APBの内部に位置し、この深さを含む二次元元面内で推定された電流分布が、等電流線図で示されている。実施形態の生体磁気計測方法は、筋磁の計測に対しても十分な推定精度を持つことがわかる。
【0044】
図14は、比較として、
図12の空間フィルタ法による三次元推定で得られたXY面内の推定結果をそのまま、健常者の計測部位に重畳した図である。XY面内で最も強く推定された位置を黒点で示す。電極により健常者の手の関節を刺激した場合、磁気センサアレイ121で得られる磁場信号自体がある程度の強度をもつことから、三次元構成結果から直接推定されたXY面内の電流位置は、比較的正確である。XY面内での信号源の推定位置だけをみると、
図13の推定結果と同じに見えるが、得られている値は磁場換算値であり、体内を流れる電流とは直感的に結びつかない。これに対し、
図13では新たに設定された関心対象領域内で電流分布が精度良く推定されている。
【0045】
このように、実施形態の生体磁気計測方法は健常者の筋磁の測定にも適用可能である。実施形態の2段階の推定による生体磁気計測は、抹消神経などの微弱な信号に基づく磁場を計測する場合や、超音波で位置関係を取得できない筋磁の測定に、特に効果的である。超音波(エコー)画像やX線画像で取得した位置情報を用いなくても、空間フィルタ法などの位置推定アルゴリズムで、推定精度の高いZ方向(深さ方向)で信号源の位置を特定し、信号源の深さの推定結果基づいて、二次元的な電流分布を推定するための関心対象領域を設定する。設定した関心対象領域で電流分布を推定することで、生体内の電流の分布を、二次元面内に精度よく再構成することができる。
【0046】
<第3実施例>
図15は、生体磁気計測を神経磁界に適用したときの深さ推定結果を、複数の時間点にわたって示す。第3実施形態では、神経活動に由来する磁場データに上述した生体磁気計測法を適用する。腰椎を計測部位として、磁場データを取得する。
【0047】
磁気センサアレイ121の上に腰部が載るように被験者を仰向けに寝かせ、膝関節を刺激して腰部の神経電気活動を誘発し、発生した磁場を生体磁気計測装置20で計測する。関心対象空間として、導体(電流)が存在するであろうと考えられる三次元空間を広く設定する。関心対象空間は、X線画像や超音波画像などで得られる形態情報に基づいて決定されてもよい。設定された関心対象空間内の信号源の位置を、空間フィルタ法(AGRENS法)により、刺激後の複数の時間点にわたって推定する。各時間点で得られた推定結果をYZ面に投影する。
図15の(A)、(B)、及び(C)で、推定された最大強度点を星印で示す。
【0048】
図15の(A)は刺激から9.50ms後、(B)は刺激から10.00ms後、(C)は刺激から10.50ms後の推定結果である。時間の経過とともに、脊柱管内で最大強度点が移動しており、形態学的情報と矛盾ないことがわかる。
図15では、実施例の手法の正確さを示すために、推定結果のYZ面への投影をX線形態画像に重畳しているが、実施例の手法は、X線の撮像は不要である。
【0049】
図16は、
図15の深さ推定結果に基づいて設定された関心対象領域内での神経活動電流分布を複数の時間点で示す。
図16では、
図15の星印で示される最大強度点を通るように曲面(関心対象領域)を定義し、この曲面内に信号源を二次元再構成している。
図16(A)、(B)、及び(C)で、中央の縦線と直交する各線に付けられた番号は、腰椎を含む椎体の位置(レベル)を示す。関心対象領域への二次元再構成結果においても、時間の経過とともに神経活動で発生した電流が脊髄に沿って伝搬していることがわかる。
【0050】
図16でも、関心対象領域への二次元再構成の正確さを示すために、推定結果をX線形態画像に重畳しているが、実施形態の生体磁場計測法にX線の撮像は不要である。実施例の生体磁気計測方法では、磁場データから推定された信号源の深さに基づいて関心対象領域を設定できるからである。
【0051】
図17は、
図16の(C)の時間点における各脊椎レベルでの電流波形を示す。最も強い信号活動電流がレベル6の椎体に存在することがわかる。実施例の方法で、X線撮像を用いた従来法と比べて遜色のない結果が得られることが確認される。X撮像を用いた従来法では、X線画像から曲面を設定して二次元再構成するが、骨と神経の位置関係が決まらない生体部位の計測には適用できない。これに対し、実施形態の方法は、脊髄以外の神経活動を評価する場合にも、電流分布を精度良く推定できる。
【0052】
<第4実施例>
第4実施例では、三次元の関心対象空間Ts(
図5参照)の設定について検討する。三次元空間の位置を(x,y,z)で表す。位置(0,0,-25mm)に、方向(1,0,0)の信号源(
図5、
図6での「点電流」)を置き、導体中に一様に拡がる電流を想定し、磁気センサアレイ121で計測される磁場を発生する。磁気センサアレイ121で得られた磁場データに対し、空間フィルタ法(AGRENS法)を適用し、信号源の深さを推定する。推定で得られた最強点の位置と、設定した信号源の位置(0,0,-25mm)を比較する。
【0053】
図18は、第4実施例で十分な大きさの関心対象空間を設定したときの深さ推定結果を示す。
図19は、比較として、関心対象空間の大きさが不十分なときの深さ推定結果を示す。
図17では、計測部位の形態画像に基づいて、x方向に-80mmから+80mmの範囲を設定し、z方向に18mmから100mmの範囲を設定し、電流が流れ得る空間を広くカバーするように関心対象空間を設定する。この関心対象空間で信号源を空間フィルタ法で推定した結果、信号源の深さ、すなわちz座標の値は-25mmとなり、信号源の深さが正確に推定される。
【0054】
図19の比較例では、x方向に-40mmから+40mmの範囲を設定し、z方向に15mmから50mmの範囲を設定し、
図17と比較して空間サイズが小さい。この関心対象空間に同じ空間フィルタ法で推定した結果、信号源の深さ、すなわちz座標の値は-23mmと推定され、実際に設定した信号源の深さからずれている。
【0055】
このことから、信号源の深さを推定するための関心対象空間は、電流が存在し得る位置を範囲に含むべく可能な限り広く設定するのが望ましい。信号源の深さ推定は、二次元の関心対象領域の設定の基礎になるため、できるだけ正確に推定されるのが望ましいからである。
【0056】
以上、特定の実施例に基づいて生体磁気計測技術について説明したが、本発明は上述した構成例と手法に限定されない。実施形態の生体磁気計測は、上腕や下肢の筋磁の計測にも適用できる。SQUIDを用いた磁気センサアレイ121による生体磁気計測に限定されず、室温で生体磁気計測が可能な磁気センサから生体磁場データを取得してもよい。
【0057】
情報処理装置30の第1の信号源推定部311は、信号源の深さを推定するための関心対象空間Tsを、計測対象の形態情報に基づいて設定してもよい。あるいは、ユーザがユーザインタフェース34を介して、関心対象空間Tsを指定する情報を入力してもよい。ユーザインタフェース34を介して入力された関心対象空間Tsを指定する情報は、第1の信号源推定部311に設定されてもよいし、メモリ32に保存されて第1の信号源推定部311が処理の際に参照する構成としてもよい。領域設定部312で設定される二次元の関心対象領域も、ユーザインタフェース34を介して入力されてもよい。この場合、ユーザインタフェース34は、対象領域入力部として機能する。いずれの場合も、生体磁場データから信号源の深さを推定し、信号源の深さの推定結果に基づいて、生体内の電流分布を推定するための二次元の関心対象領域を設定することで、生体内の電流分布を精度良く推定できる。また、信号源の深さを推定するための関心対象空間Tsを適切に設定することで、信号源の深さの推定精度が向上する。
【0058】
上記の開示に対し、以下の付記を提示する。
(付記1)
生体磁気検出器と、
前記生体磁気検出器で検知された磁場データから、生体内の信号源の深さを推定する第1の信号源推定部と、
前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する領域設定部と、
前記対象領域の中の前記電流分布を推定する第2の信号源推定部と、
を備える生体磁気計測装置。
(付記2)
前記第1の信号源推定部は、前記磁場データに三次元の位置推定を行う空間フィルタ法又はダイポール推定法を適用して前記信号源の前記深さを推定し、
前記第2の信号源推定部は、前記磁場データに二次元の位置推定を行う空間フィルタ法を適用して前記対象領域の中の前記電流分布を推定する、
付記1に記載の生体磁気計測装置。
(付記3)
前記信号源の深さを推定するための対象空間を指定する対象空間入力部、
を有する付記1または2に記載の生体磁気計測装置。
(付記4)
前記対象空間入力部は、計測部位の形態画像に基づいて、電流の流れうる領域を前記対象空間として指定可能なことを特徴とする、
付記3に記載の生体磁気計測装置。
(付記5)
前記第1の信号源推定部は、前記信号源の深さを推定するための対象空間を設定し、前記対象空間の中の局所的なピークを前記信号源の深さとして推定し、
前記領域設定部は、前記局所的なピークを含む平面又は曲面を前記対象領域として設定する、
付記1または2に記載の生体磁気計測装置。
(付記6)
前記第1の信号源推定部は、前記局所的なピークを含み生体の形状に沿った曲面を前記対象領域として設定する、
付記5に記載の生体磁気計測装置。
(付記7)
付記1から6のいずれかに記載の生体磁気計測装置と、
前記対象領域の中で推定された前記電流分布を表示する表示装置と、
を有する生体磁気計測システム。
(付記8)
前記表示装置は、前記電流分布を計測部位の形態画像に重畳して表示する、
付記7に記載の生体磁気計測システム。
(付記9)
入力された磁場データから、生体内の信号源の深さを推定する第1の信号源推定部と、
前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する領域設定部と、
設定された前記対象領域の中で前記電流分布を推定する第2の信号源推定部と、
を備える情報処理装置。
(付記10)
プロセッサで、入力された磁場データから生体内の信号源の深さを推定し、
プロセッサで、前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定し、
プロセッサで、設定された前記対象領域の中で前記電流分布を推定する、
生体磁気計測方法。
(付記11)
プロセッサに、
入力された磁場データから生体内の信号源の深さを推定する手順と、
前記信号源の深さの推定結果に基づいて、前記生体内の電流分布を推定するための二次元の対象領域を設定する手順と、
設定された前記対象領域の中で前記電流分布を推定する手順と、
を実行させる生体磁気計測プログラム。
【符号の説明】
【0059】
1 生体磁気計測システム
12 生体磁気検出器
121 磁気センサアレイ
20 生体磁気計測装置
30 情報処理装置
31 プロセッサ
32 メモリ
40 表示装置
310 信号源推定部
311 第1の信号源推定部
312 領域設定部
313 第2の信号源推定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特許第4834076号公報
【特許文献2】特開2021-146121号公報
【非特許文献】
【0061】
【非特許文献1】Dual signal subspace projection (DSSP): s novel algorithm for removing large interference in biomagnetic measurements, K. Sekihara, et a;., J. Neural Eng., 2016
【非特許文献2】アダプティブビームフォーマーを用いた信号源の再構成、関原謙介、日本生体磁気論文誌、2004