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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135654
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】フィルム及びその応用
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20240927BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65D65/02 E
C08L91/00
C08K5/098
C08L23/02
C08L23/04
C08L23/08
C08L23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046447
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】角前 洋介
(72)【発明者】
【氏名】富岡 和志
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】岩島 英樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086AD24
3E086BA02
3E086BA04
3E086BB01
3E086BB22
3E086BB41
3E086BB51
3E086CA01
3E086DA06
4J002AE002
4J002BB011
4J002BB021
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB071
4J002BB081
4J002BB111
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB151
4J002BB231
4J002BP021
4J002EG006
4J002EG016
4J002EG056
4J002EG066
4J002EG076
4J002FD022
4J002FD186
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】本発明は、優れた抗菌性と良外観を兼ね備えたフィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)、有機系抗菌剤(B)及び油脂(C)を含むフィルムであって、フィルムに含まれる有機系抗菌剤(B)の平均粒子径が20μm以下である、フィルムに関する。また、本発明は該フィルムを含む食品包装材に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)、有機系抗菌剤(B)及び油脂(C)を含むフィルムであって、
前記フィルムに含まれる有機系抗菌剤(B)の平均粒子径が20μm以下である、フィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(A)の融点が180℃以下であるか、もしくはガラス転移温度が180℃以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィン系樹脂である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
前記有機系抗菌剤(B)が有機酸塩類である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記有機酸塩類が、ソルビン酸塩類、デヒドロ酢酸塩類、プロピオン酸塩類、酢酸塩類及び安息香酸塩類よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記有機系抗菌剤(B)の含有量が前記フィルムの全質量に対して、0.1~30質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項8】
前記油脂(C)が硬化油である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項9】
前記油脂(C)が極度硬化油である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記油脂(C)の含有量が前記フィルムの全質量に対して、0.01~10質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項11】
JIS K7127(1999)に準拠して測定される、少なくとも1方向の引張破断伸度が300%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項12】
食品包装用である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルムを含む食品包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性と良外観を兼ね備えたフィルム及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食糧問題として食品ロス(フードロス)がある。食品ロスは、食品が腐敗し廃棄処分されることでも生じるが、消費期限や賞味期限を経過した食品が廃棄処分されることでも生じる。食品ロスでは、本来食べることができた食品が食べられずに廃棄されることが問題となっており、このような問題を解決すべく、食品の消費期限や賞味期限を延長する手段として抗菌性フィルムが開発されてきた。また、環境保全意識の高まりとともに、製品の薄膜化や使用原料の削減、リサイクル性の改善なども検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1にはデヒドロ酢酸又はデヒドロ酢酸Naを0.5~5.0%添加した熱可塑性樹脂の抗菌性シートが開示されている。ここでは、抗菌剤としてデヒドロ酢酸又はデヒドロ酢酸Naを用いることにより、抗菌効果を発揮するシートを得ることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-267451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される抗菌性シートは、抗菌剤としてデヒドロ酢酸又はデヒドロ酢酸Naを使用しているが、デヒドロ酢酸を使用した場合、150℃以上で分解が始まるため樹脂成形の際に、抗菌剤が分解してしまうという問題があった。また、デヒドロ酢酸Naを使用した場合、所望の抗菌性を得るために、抗菌剤の使用量を多くすると異物が発生し、フィルム外観が損なわれるという問題があった。フィルムに異物(抗菌性粒子の凝集物等)が発生した場合、これら異物が起点となってフィルムが破断する場合があり、フィルム製膜において問題となる。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、優れた抗菌性と良外観を兼ね備えたフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の具体的な態様の例を以下に示す。
[1] 熱可塑性樹脂(A)、有機系抗菌剤(B)及び油脂(C)を含むフィルムであって、フィルムに含まれる有機系抗菌剤(B)の平均粒子径が20μm以下である、フィルム。
[2] 熱可塑性樹脂(A)の融点が180℃以下であるか、もしくはガラス転移温度が180℃以下である、[1]に記載のフィルム。
[3] 熱可塑性樹脂(A)がポリオレフィン系樹脂である、[1]又は[2]に記載のフィルム。
[4] ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種である、[3]に記載のフィルム。
[5] 有機系抗菌剤(B)が有機酸塩類である、[1]~[4]のいずれかに記載のフィルム。
[6] 有機酸塩類が、ソルビン酸塩類、デヒドロ酢酸塩類、プロピオン酸塩類、酢酸塩類及び安息香酸塩類よりなる群から選択される少なくとも1種である、[5]に記載のフィルム。
[7] 有機系抗菌剤(B)の含有量がフィルムの全質量に対して、0.1~30質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載のフィルム。
[8] 油脂(C)が硬化油である、[1]~[7]のいずれかに記載のフィルム。
[9] 油脂(C)が極度硬化油である、[1]~[8]のいずれかに記載のフィルム。
[10] 油脂(C)の含有量がフィルムの全質量に対して、0.01~10質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載のフィルム。
[11] JIS K7127(1999)に準拠して測定される、少なくとも1方向の引張破断伸度が300%以上である、[1]~[10]のいずれかに記載のフィルム。
[12] 食品包装用である、[1]~[11]のいずれかに記載のフィルム。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載のフィルムを含む食品包装材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた抗菌性と良外観を兼ね備えたフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明について説明する。ただし、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。なお、以下の説明において使用される「フィルム」と「シート」は明確に区別されるものではなく、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0010】
[抗菌性フィルム]
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂(A)、有機系抗菌剤(B)及び油脂(C)を含む。本発明において、フィルムに含まれる有機系抗菌剤(B)の平均粒子径は20μm以下である。本発明のフィルム(以下、「本フィルム」ともいう)は有機系抗菌剤(B)に加えて、油脂(C)を含有することにより、抗菌性と良好な外観を両立させることができる。本フィルムは、優れた抗菌性を発揮するフィルムであるため、抗菌性フィルムと呼ぶこともある。
【0011】
また、本フィルムは、高い引張破断伸度を有する。フィルムに異物(抗菌性粒子の凝集物等)が発生した場合、これら異物が起点となってフィルムが破断する場合があるが、本発明においては、有機系抗菌剤(B)として、平均粒子径が20μm以下である有機系抗菌剤を用い、さらに、有機系抗菌剤(B)に加えて、油脂(C)を含有することにより、異物(抗菌性粒子の凝集物等)の発生を抑制することができるため、高い引張破断伸度を達成することができる。
【0012】
以上のように、本フィルムにおいては、特定の有機系抗菌剤と油脂を組み合わせて用い、熱可塑性樹脂と複合化することで、抗菌性と良外観、高い引張破断伸度を兼ね備えた抗菌性フィルムを作製することができる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0013】
<熱可塑性樹脂(A)>
本フィルムは、熱可塑性樹脂(A)を含む。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合系樹脂等を挙げることができる。中でも、熱可塑性樹脂(A)は、ヒートシール性を有する樹脂であることが好ましい。本明細書では、ヒートシール性を有する樹脂として、例えば、融点が180℃以下であるか、もしくはガラス転移温度が180℃以下の樹脂を好ましく例示できる。ヒートシール性を有する樹脂が融点を有する場合、その融点は、170℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましい。また、ヒートシール性を有する樹脂がガラス転移温度を有する場合、そのガラス転移温度は、150℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、100℃以下が特に好ましい。融点やガラス転移温度を上記範囲とすることでより低温でのヒートシールが可能となりヒートシール性が向上する。熱可塑性樹脂(A)としてヒートシール性を有する樹脂を用いることにより、例えば、食品包装用の用途などに好ましく用いられる。
【0014】
本実施形態では、熱可塑性樹脂(A)はポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、特に制限はないが、例えばエチレンやプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン又は1-デセン等のα-オレフィンを構成単位として含む重合体を挙げることができる。ポリオレフィン系樹脂は、上記モノマー1種のみを構成単位とした単独重合体であってもよく、上記モノマー2種以上を構成単位とした共重合体や、上記以外の他の共重合性モノマーを構成単位として含む共重合体であってもよい。なお、共重合体は、上記モノマーを主たる構成単位として含むものである。
【0015】
中でも、外観や引張破断伸度、汎用性、経済性等の点から、ポリオレフィン系樹脂は、エチレンを主たるモノマー成分としたポリエチレン系樹脂、プロピレンを主たるモノマー成分としたポリプロピレン系樹脂であることが好ましく、ポリエチレン系樹脂であることが特に好ましい。ここで、主たるモノマー成分とは、ポリオレフィン系樹脂中で50質量%以上100質量%以下を占める構成単位となるモノマー成分のことをいう。本実施形態においては、ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
本実施形態のフィルムにおける熱可塑性樹脂(A)の含有量はフィルムの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、75質量%以上であることが一層好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。また、熱可塑性樹脂(A)の含有量はフィルムの全質量に対して、99質量%以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂(A)の含有量を上記範囲内とすることにより、異物(抗菌性粒子の凝集物等)の発生を抑制することができるため、良外観と高い引張破断伸度が得られやすくなる。
【0017】
(ポリエチレン系樹脂)
ポリエチレン系樹脂は、エチレンを主たるモノマー成分とした樹脂であれば特に限定されず、例えば低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。また、ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体であってもよく、エチレンを主たるモノマー成分とし、他の共重合性モノマー成分との共重合体であってもよい。共重合体としては、例えばエチレンを主たるモノマー成分とし、他の共重合性モノマー成分のなかから選ばれる一種または二種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体、あるいは、それらの混合組成物等が挙げられる。また、ポリエチレン系樹脂は、単独で用いてもよいし、共重合性モノマー成分やその組成、物性等の異なる2種類以上を併用してもよい。
【0018】
他の共重合性モノマー成分(コモノマー)としては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等の炭素数3~10のα-オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステルおよびそのアイオノマー、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂に含まれる共重合性モノマーに由来する構成単位の割合は特に限定されないが、通常30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。ポリエチレン系樹脂に共重合性モノマー成分が含まれることでフィルムの柔軟性や透明性を高めることができる。
【0019】
中でも、ポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体又はアイオノマー樹脂であることが好ましく、線状低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)であることがより好ましく、線状低密度ポリエチレンであることが特に好ましい。
【0020】
線状低密度ポリエチレンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンからなる群より選択される少なくとも1つのα-オレフィンをコモノマーとした線状低密度ポリエチレンが好ましい。コモノマー成分の割合は特に限定されないが、通常30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。線状低密度ポリエチレンにコモノマー成分が含まれることでフィルムの柔軟性や透明性を高めることができる。
【0021】
ポリエチレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、オレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法を採用することができる。例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法が挙げられる。
【0022】
ポリエチレン系樹脂の融点は、70~130℃であることが好ましく、80~120℃であることがより好ましい。ポリエチレン系樹脂の融点がこの範囲であれば、フィルムの引張強度(例えば、引張破断強度は引張破断伸度)や寸法安定性を向上できる傾向がある。
ここで、ポリエチレン系樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂約10mgを加熱速度10℃/分で-50℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で-50℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温したときに測定されたサーモグラムから求めた結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。
【0023】
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常0.1~20g/10分以上であることが好ましく、0.5~18g/10分であることがより好ましく、1~15g/10分であることがさらに好ましい。MFRが0.1g/10分以上であれば、押出加工性が安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚みムラや力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。
ここで、MFRはJIS K7210-1(2014)に準拠して測定される値であり、その測定条件は190℃、2.16kg荷重である。
【0024】
ポリエチレン系樹脂の密度は、0.880~0.980g/cmであることが好ましく、0.890~0.960g/cmであることがより好ましく、0.900~0.940g/cmであることが特に好ましい。密度が0.880~0.980g/cmの範囲であれば、透明性と強度、粘着性、柔軟性のバランスに優れるため好ましい。ここで、密度はJIS K6922-1(2018)に準拠して測定される値である。
【0025】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主たるモノマー成分とした樹脂であれば特に限定されず、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレンを主たるモノマー成分とし、他の共重合性モノマー成分との共重合体であってもよい。共重合体としては、例えばプロピレンを主たるモノマー成分とし、他の共重合性モノマー成分のなかから選ばれる一種または二種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体、あるいは、それらの混合組成物等が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂は、単独で用いてもよいし、共重合性モノマー成分やその組成、物性等の異なる2種類以上を併用してもよい。
【0026】
他の共重合性モノマー成分(コモノマー)としては、例えばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等の炭素数2~20のα-オレフィン、ジビニルベンゼン、1,4-シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、エチレングリコール、無水マレイン酸、スチレン、環状オレフィン等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂に含まれる共重合性モノマーに由来する構成単位の割合は特に限定されないが、通常30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂に共重合性モノマー成分が含まれることでフィルムの柔軟性や透明性を高めることができる。
【0027】
また、ポリプロピレン系樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、また、グラフト共重合体であってもよい。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、オレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法を採用することができる。例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法が挙げられる。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂の融点は、70~170℃であることが好ましく、80~160℃であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂の融点がこの範囲であれば、フィルムの柔軟性と強度、耐熱性のバランスが良好となり好ましい。
ここで、ポリプロピレン系樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂約10mgを加熱速度10℃/分で-50℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で-50℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温したときに測定されたサーモグラムから求めた結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常0.2~20g/10分以上であることが好ましく、0.5~18g/10分であることがより好ましく、1~15g/10分であることがさらに好ましい。MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚みムラや力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。
ここで、MFRはJIS K7210-1(2014)に準拠して測定される値であり、その測定条件は230℃、2.16kg荷重である。
【0031】
<有機系抗菌剤(B)>
本フィルムは、有機系抗菌剤(B)を含む。本フィルムにおいて有機系抗菌剤(B)はフィルム中に均一に分散している。例えば、フィルムを厚み方向に3分割した場合、各部位における有機系抗菌剤(B)の含有量は略均一である。なお、本明細書において、「有機系抗菌剤(B)の含有量は略均一である」とは、各部位における有機系抗菌剤(B)の含有量に10質量%以上の差異がないことをいう。
【0032】
本フィルムに含まれる全有機系抗菌剤(B)の平均粒子径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましく、8μm以下であることが一層好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。また、有機系抗菌剤(B)の平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましい。本フィルムに含まれる全有機系抗菌剤(B)の平均粒子径を上記範囲内とすることにより、抗菌剤がフィルム表面に露出しやすく良好な抗菌性が得られるとともに、異物(ブツ)によるフィルムの欠陥を少なくすることができ、引張破断伸度を高め、外観性を良化する効果が得られる。本明細書における平均粒子径は、レーザー回折式粒度測定装置(シーラス社製 CILAS 1190)を用いて粒子径を測定し、算術平均値を算出したものである。
【0033】
本フィルムに含まれる全有機系抗菌剤(B)のD90粒子径は、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましく、2μm以下であることが特に好ましい。また、有機系抗菌剤(B)のD90粒子径は0.3μm以上であることが好ましい。本フィルムに含まれる全有機系抗菌剤(B)のD90粒子径を上記範囲内とすることにより、抗菌剤がフィルム表面に露出しやすく良好な抗菌性が得られるとともに、異物(ブツ)によるフィルムの欠陥を少なくすることができ、引張破断伸度を高め、外観性を良化する効果が得られる。本明細書におけるD90粒子径は、レーザー回折式粒度測定装置(シーラス社製 CILAS 1190)を用いて粒子径を測定し、JIS Z 8825(2013)に準してD90粒子径を算出したものである。
【0034】
本フィルムに含まれる全有機系抗菌剤(B)のD50粒子径は、0.05~1μmであることが好ましく、0.08~0.8μmであることがより好ましく、0.1~0.5μmであることがさらに好ましい。D50粒子径が上記範囲内であれば、引張破断伸度や外観性を損なうことなく抗菌性を付与することができる。本明細書におけるD50粒子径はレーザー回折式粒度測定装置(シーラス社製 CILAS 1190)を用いて粒子径を測定し、JIS Z 8825(2013)に準してD50粒子径を算出したものである。
【0035】
本フィルムに含まれる全有機系抗菌剤(B)のD10粒子径は、0.01~0.2μmであることが好ましく、0.02~0.1μmであることがより好ましい。D10粒子径が上記範囲内であれば、引張破断伸度や外観性を損なうことなく抗菌性を付与しやすくなる。本明細書におけるD10粒子径はレーザー回折式粒度測定装置(シーラス社製 CILAS 1190)を用いて粒子径を測定し、JIS Z 8825(2013)に準してD10粒子径を算出したものである。
【0036】
本フィルムに含まれる有機系抗菌剤(B)の最大径は50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。また、有機系抗菌剤(B)の最大径は0.5μm以上であることが好ましい。有機系抗菌剤(B)の最大径を上記範囲内とすることにより、抗菌剤がフィルム表面に露出しやすく良好な抗菌性が得られるとともに、異物(ブツ)によるフィルムの欠陥を少なくすることができ、引張破断伸度を高め、外観性を良化する効果が得られやすくなる。
【0037】
有機系抗菌剤(B)の粒子径を上記範囲にコントロールする方法として、各種の粉砕方法を用いてもよい。粉砕方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、アトライター、振動ミル、遊星ミル、回転ミル、石臼等による回転摩砕などが挙げられる。これらの粉砕は乾式であっても湿式であっても良く、目的の粒子径が得られるように粉砕時の温度を極低温から高温まで適宜調節して行うことができる。また、これらの粉砕工程は、複数の粉砕方式を組み合わせてもよく、段階的に粉砕してもよく、必要に応じて分級してもよい。これらの中でも、ビーズミルやジェットミル、石臼等による回転摩砕が生産性や粉砕性の観点から好ましい。
【0038】
本発明で用いる有機系抗菌剤(B)は、平均粒子径が上記範囲範囲内となり、かつ有機系の抗菌剤であれば特に限定することなく使用できる。例えば、安息香酸、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの上記モノカルボン酸の塩類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸、それらの塩類;乳酸、グルコン酸、グリコール酸、グリセリン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酪酸、タルトロン酸、サリチル酸、(m-、p-)ヒドロキシ安息香酸、12-ヒドロキシドデカン酸、12-ヒドロキシイソ酪酸、(o-、m-、p-)ヒドロキシフェニル酢酸、4-ヒドロキシフタル酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ酸、それらの塩類等の有機酸系抗菌剤;グリシン等のアミノ酸系抗菌剤;ヘキサデシルピリジニウムクロライド、ジイソブチルフェノキシジメチルベンゾイルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、塩化ドファニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ドミフェン等の第4級アンモニウム塩系抗菌剤;アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の界面活性剤系抗菌剤;ジヨードメチル-p-トリスルホン、ポリビニルピロリドンヨーダイド等のハロゲン系抗菌剤、過酢酸等の過酸化物系抗菌剤;ラウリル酸グリセリル、ヒドロキシ安息香酸エチル等のエステル系抗菌剤;ホルムアルデヒド等のアルデヒド系抗菌剤;クレゾール、o-フェニルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、エタノール、エチル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、メチル-2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、イソプロピル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、3-メトキシ-5-メチルフェニル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、エチル-2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、エチル-3-ホルミル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、イソプロピル-3-ホルミル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、3-ヒドロキシ-5-メチルフェニル-2,4-ジヒドロキシ-6-メチルベンゾエート、3-メチル-4イソプロピルフェノール、3-ヒドロキシ-5-メチルフェニル-2-ジヒドロキシ-4-メトキシ-6-メチルベンゾエート、3-メトキシ-5-メチルフェニル-2-ヒドロキシ-4-メトキシ-6-メチルベンゾエート、3-クロロ-2,6-ジヒドロキシ-4-メチルベンゾエート等のフェノール・アルコール系抗菌剤が挙げられる。これら有機系抗菌剤は一種のみ含有していてもよく、2種類以上含有していてもよい。
【0039】
有機系抗菌剤は、熱安定性や熱可塑性樹脂との相溶性、取扱がしやすいことから、特に有機系抗菌剤の中でも塩類の型を有する有機酸塩類であることが好ましい。さらに、生物への安全性、入手のしやすさ、コスト等の観点から、有機酸塩類は、ソルビン酸塩類、デヒドロ酢酸塩類、プロピオン酸塩類、酢酸塩類及び安息香酸塩類よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これら、ソルビン酸塩類、デヒドロ酢酸塩類、プロピオン酸塩類、酢酸塩類、安息香酸塩類は厚生労働省が定める食品添加物公定書に記載されており、食品包装などの用途で使用する際の安全性の観点から好ましく用いられる。
【0040】
本実施形態のフィルムにおける有機系抗菌剤(B)の含有量はフィルムの全質量に対して、0.1~30質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることがより好ましく、1~15質量%であることが特に好ましい。有機系抗菌剤(B)の含有量を上記範囲内とすることで、フィルムにより優れた抗菌性を付与することができる。
【0041】
<油脂(C)>
本フィルムは、油脂(C)を含む。本発明で用いる油脂は熱可塑性樹脂の中に抗菌剤を均一に分散させる効果があり、フィルムの外観を向上させることができる。油脂とは脂肪酸とグリセリンのエステル化合物を指し、例えば、植物油脂、動物油脂、これらを硬化処理した油脂を挙げることができる。具体的に、植物油脂としては菜種油、大豆油、米油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまし油、ヒマワリ油、オリーブ油等を挙げることができる。動物油脂としては、鶏油、豚脂、牛脂、乳脂、羊脂、馬脂、魚油を挙げることができる。硬化処理した油脂としては、菜種硬化油、菜種極度硬化油、大豆硬化油、大豆極度硬化油、米硬化油、米極度硬化油、パーム硬化油、パーム極度硬化油、パーム核硬化油、ヤシ硬化油、コーン硬化油、綿実硬化油、ひまし硬化油、ヒマワリ硬化油、オリーブ硬化油、鶏脂硬化油、鶏脂極度硬化油、豚脂硬化油、豚脂極度硬化油、牛脂硬化油、牛脂極度硬化油、魚油硬化油、魚油極度硬化油等が挙げられる。これら油脂の中でも、取扱性や耐熱性の観点から硬化油または極度硬化油を用いることが好ましく、極度硬化油を用いることがより好ましい。その中でも、流通量の多さ、価格、耐熱性の高さから大豆極度硬化油、菜種極度硬化油、米極度硬化油、パーム極度硬化油を用いることが特に好ましい。これらの油脂は、1種類のみで用いても、2種類以上を混合して利用しても良い。
【0042】
ここで、油脂の硬化処理とは、油脂に水素付加を行う処理であり、通常の油脂に含まれる不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に変性する処理である。極度硬化油は、飽和脂肪酸の割合が多いため、熱可塑性樹脂との親和性が高く、有機系抗菌剤を効果的に分散させることができる。
【0043】
油脂(C)は、15℃において固体であることが好ましい。このような油脂(C)を用いることにより、フィルム製造の際の油脂(C)のハンドリング性を高めることができ、フィルムの生産効率を高めることができる。また、固体の油脂(C)を用いることにより、熱可塑性樹脂の中に抗菌剤をより均一に分散させる効果を発揮することができるため、フィルムの外観をより効果的に向上させることができる。15℃において固体の油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、鶏油、豚脂、牛脂、乳脂、羊脂、馬脂、菜種硬化油、菜種極度硬化油、大豆硬化油、大豆極度硬化油、米硬化油、米極度硬化油、パーム硬化油、パーム極度硬化油、パーム核硬化油、ヤシ硬化油、コーン硬化油、綿実硬化油、ひまし硬化油、ヒマワリ硬化油、オリーブ硬化油、鶏脂硬化油、鶏脂極度硬化油、豚脂硬化油、豚脂極度硬化油、牛脂硬化油、牛脂極度硬化油、魚油硬化油、魚油極度硬化油が挙げられる。
【0044】
本実施形態のフィルムにおける油脂(C)の含有量はフィルムの全質量に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、0.02~8質量%であることがより好ましく、0.03~5質量%であることが特に好ましい。油脂(C)の含有量を上記範囲内とすることで、抗菌剤によってできる異物(ブツ)の発生を低減することができ、フィルムの外観を良好にできる。また、異物(ブツ)の発生を低減できることで、フィルムの引張破断伸度の低下を抑制できる。また、油脂(C)の含有量を上記上限値以下とすることにより、油脂がフィルムからブリードして白濁することを抑制することができ、油脂(C)の含有量を上記下限値以上とすることにより、抗菌剤を分散させる効果を高め異物(ブツ)の発生を低減することができる。
【0045】
油脂(C)の使用量を少なくして有機系抗菌剤の分散性の効果を向上させるために、油脂(C)を有機系抗菌剤(B)の粒子表面に被覆させて使用してもよい。油脂(C)を有機系抗菌剤(B)の粒子表面に被覆させて使用する場合は、あらかじめ有機系抗菌剤(B)の粒子に油脂(C)を被覆させる工程を設けることが好ましい。有機系抗菌剤(B)の粒子に油脂(C)を被覆させる方法としては、特に限定はされないが、有機系抗菌剤(B)の粒子を撹拌しながら、油脂(C)を融点以上に加熱する方法や、溶剤に溶解させて液状にした油脂を有機系抗菌剤(B)の粒子に満遍なくスプレー塗布する方法、有機系抗菌剤(B)の粒子を融点以上に加熱して液体状にした油脂(C)や溶剤に油脂(C)を溶解させて液体状にしたものの中に投入して撹拌しながら、冷却または溶剤を除去する方法などが挙げられる。
【0046】
<任意成分>
本フィルムは、上述した成分に加えて、任意成分をさらに含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、着色剤、無機充填材、有機充填材、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤(スリップ剤)、耐ブロッキング剤、加水分解防止剤、可塑剤、難燃剤、防曇剤、粘着剤等が挙げられる。なお、これらの任意成分は、フィルムを構成する樹脂と一緒に直接配合してもよいし、予め樹脂と任意成分を配合したマスターバッチを作製してからフィルムを形成することとしてもよい。なお、本フィルムは2種以上の任意成分を適宜組み合わせて含んでいてもよい。なお、任意成分の含有量は、フィルムの全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
また、本フィルムは、任意成分として糖アルコールを含んでいてもよい。糖アルコールとしては、炭素数3のグリセロール;単糖類を還元して得られる、エリスリトール、トレイトールなどの炭素数4の糖アルコール;リビトール、アラビトール、キシリトールなどの炭素数5の糖アルコール;グルシトール、マンニトール、イジトール、タリトール、ガラクチトールなどの炭素数6の糖アルコールなど、鎖状の糖アルコールが挙げられる。また、イノシトール等のシクリトール類に代表される、環状糖アルコールが挙げられる。また、二糖類を還元して得られるマルチトール、ラクチトール、イソマルツロース還元物などの二糖アルコール糖が挙げられる。
【0048】
本フィルムは、任意成分として有機酸を含んでもよい。有機酸としては、例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸;乳酸、グルコン酸、グリコール酸、グリセリン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酪酸、タルトロン酸、サリチル酸、(m-、p-)ヒドロキシ安息香酸、12-ヒドロキシドデカン酸、12-ヒドロキシイソ酪酸、(o-、m-、p-)ヒドロキシフェニル酢酸、4-ヒドロキシフタル酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ酸や、フィチン酸等のイノシトールリン酸等が挙げられる。
【0049】
(積層フィルム)
本フィルムは、単層フィルムであってもよく、その他の樹脂層を積層した積層フィルムであってもよい。積層フィルムにおいて、熱可塑性樹脂(A)、有機系抗菌剤(B)及び油脂(C)を含む層を「層A」とし、これ以外の構成の樹脂層を「層B」とした場合、積層フィルムは、層A/層Bの2層構成であってもよく、層A/層B/層Aや、層B/層A/層B構成等の多層構成であってもよい。また、積層フィルムが、層Aおよび層Bと、さらに、その他の樹脂層C(以下「層C」と称する)を有する場合は、層A/層B/層Cの3層構成、層A/層B/層C/層B/層A等の3種5層構成であってもよい。さらに、積層フィルムが、層A~Cと、その他の樹脂層D(以下、「層D」と称する)を有する場合は、層A/層B/層C/層Dの4層構成、層A/層B/層C/層D/層C/層B/層A等の4種7層構成であってもよい。なお、積層フィルムにおいて、層数や層の順番、層A以外のその他の層の種類や数に制限はないが、フィルムの表面及び/又は裏面に層Aを備えることが好ましい。なお、積層フィルムは、層Aを複数層積層した構成であってもよい。積層フィルムが食品包装用に用いられる場合、熱可塑性樹脂(A)、有機系抗菌剤(B)及び油脂(C)を含む層Aが積層フィルムの表面であって最内層(食品と接する側の層)に配されることが好ましい。
【0050】
積層フィルムの構成の具体例としては、熱可塑性樹脂(A)、有機系抗菌剤(B)及び糖アルコール(C)を含む層、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレン)などの基材層と、ガスバリア性を有するポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などのガスバリア層の少なくとも3層を有する積層フィルムなどを挙げることができる。この場合、熱可塑性樹脂(A)、有機系抗菌剤(B)及び糖アルコール(C)を含む層は、積層フィルムの一方の表面層(最内層)に配されることが好ましい。
【0051】
本フィルムが積層フィルムである場合、他の樹脂層としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレン)、ポリメチルペンテン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレン等を含む層を例示することができる。他の樹脂層は、求められる機能に応じて設けられてもよく、例えば、他の樹脂層を設けることで、ガスバリア性や、耐熱性、防湿性を付与することができる。また、積層フィルムはアルミニウムや鉄等の金属を含む層を有していてもよい。
【0052】
積層フィルムとする場合は、常法に従い製造すればよい。中でも、複数の押出機を用いて積層ダイにより共押出する方法が好ましい。
【0053】
(フィルムの製造方法)
本フィルムは、公知の方法で製造することができる。例えば、本フィルムは、インフレーション法、押出Tダイ法等を用いることにより製造することができる。具体的には、熱可塑性樹脂(A)、有機系抗菌剤(B)及び油脂(C)を溶融混練し、溶融状態の樹脂組成物をフィルム状(シート状)に成形することで本フィルムを製造することができる。本フィルムは、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。
【0054】
本フィルムが積層フィルムである場合、各層を形成する樹脂組成物を用いて、上述した公知の方法を採用することで積層フィルムを製造することができる。また、予め採取したフィルムをラミネーション法等で積層することで積層フィルムを製造してもよい。中でも、フィルムの層数が多い場合でも製膜工程は変わらない点や厚み制御が比較的容易である点で、共押出Tダイ法を用いることが好ましい。
【0055】
本フィルムの製造工程は、得られたフィルムをロール状に巻回する工程を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態は、本フィルムをロール状に巻回してなる巻回体(フィルムロール)に関するものであってもよい。フィルムを巻回する際には、フィルムを芯(コア)に巻き取ることが好ましい。芯(コア)は、フィルムの幅と同等以上の幅を有しているものを用いることが好ましい。
【0056】
<フィルムの物性>
本フィルムは、下記の物性を有することが好ましい。
【0057】
(引張破断強度)
本フィルムにおいて、JIS K7127(1999)に準拠して測定される、少なくとも1方向の引張破断強度は、3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましく、7MPa以上であることがさらに好ましく、9MPa以上であることが特に好ましい。また、引張破断強度の上限値は特に限定されるものではないが、100MPa以下であることが好ましい。引張破断強度は、JIS K7127(1999)に準拠して、引張試験機を用いて、測定方向の長さ50mm、幅10mmの試験片を用いて、測定温度23±2℃、チャック間距離20mm、試験速度200mm/分の条件で測定した値である。
【0058】
より具体的には、本フィルムにおいて、JIS K7127(1999)に準拠して測定される、MDの引張破断強度は、3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましく、7MPa以上であることがさらに好ましく、9MPa以上であることが特に好ましい。また、MDの引張破断強度の上限値は特に限定されるものではないが、100MPa以下であることが好ましい。
また、JIS K7127(1999)に準拠して測定される、TDの引張破断強度は、3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましく、7MPa以上であることがさらに好ましく、9MPa以上であることが特に好ましい。また、TDの引張破断強度の上限値は特に限定されるものではないが、100MPa以下であることが好ましい。
なお、本実施形態では、MD又はTDの一方の引張破断強度が上記範囲内であることが好ましいが、MD及びTDの両方の引張破断強度が上記範囲内であることが特に好ましい。
【0059】
(引張破断伸度)
本フィルムにおいて、JIS K7127(1999)に準拠して測定される、少なくとも1方向の引張破断伸度は、300%以上であることが好ましく、310%以上であることがより好ましく、320%以上であることがさらに好ましい。また、引張破断伸度の上限値は特に限定されるものではないが、2000%以下であることが好ましい。引張破断伸度は、JIS K7127(1999)に準拠して、引張試験機を用いて、測定方向の長さ50mm、幅10mmの試験片を用いて、測定温度23±2℃、チャック間距離20mm、試験速度200mm/分の条件で測定した値である。
【0060】
より具体的には、本フィルムにおいて、JIS K7127(1999)に準拠して測定される、MDの引張破断伸度は、300%以上であることが好ましく、310%以上であることがより好ましく、320%以上であることがさらに好ましい。また、MDの引張破断伸度の上限値は特に限定されるものではないが、2000%以下であることが好ましい。
また、JIS K7127(1999)に準拠して測定される、TDの引張破断伸度は、300%以上であることが好ましく、310%以上であることがより好ましく、320%以上であることがさらに好ましい。また、TDの引張破断伸度の上限値は特に限定されるものではないが、2000%以下であることが好ましい。
なお、本実施形態では、MD又はTDの一方の引張破断伸度が上記範囲内であることが好ましいが、MD及びTDの両方の引張破断伸度が上記範囲内であることが特に好ましい。
【0061】
(全光線透過率)
本フィルムにおいては、抗菌剤の分散性が高く、異物(ブツ)の発生が抑制されているため、本フィルムは高い透明性を有している。具体的に、JIS K7361-1(1997)に準拠して測定される本フィルムの全光線透過率は、50%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率は高いほど好ましいため、上限は特に限定されないが、例えば、100%以下であり、98%以下であってもよく、95%以下であってもよい。全光線透過率を上記範囲内とすることにより、包装用フィルムなどに利用した際に内容物の視認性を高めることができる。
なお、全光線透過率は、JIS K7361-1(1997)に準拠したヘイズメーターを用い、測定点数n=5で測定し、その算術平均値を求めたものである。
【0062】
(ヘイズ)
JIS K7136(2000)に準拠して測定される本フィルムのヘイズは、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。また、ヘイズの下限値は特に限定されるものではなく、0%であってもよい。ヘイズを上記範囲内とすることにより、包装用フィルムなどに利用した際に内容物の視認性を高めることができる。
なお、ヘイズは、JIS K7136(2000)に準拠したヘイズメーターを用い、測定点数n=5で測定し、その算術平均値を求めたものである。
【0063】
(異物(ブツ)の面積率)
本フィルムは、抗菌剤等に由来する異物(ブツ)の発生が少なく外観性に優れている。フィルムの外観は、例えば、フィルム中の異物(ブツ)が占める面積率を算出することで評価することができる。フィルム中に発生する異物(ブツ)の面積率はデジタルマイクロスコープを用いて測定することができる。具体的には、リング照明で反射視野を観察し、観察像の輝度のヒストグラムからブツの輝度範囲を抽出しブツの面積とする。そして、ブツの面積率は、ブツの面積を観察面積で除算して百分率で算出する。
異物(ブツ)の面積率は、小さいほど好ましく、1.00%以下であることが好ましく、0.80%以下であることがさらに好ましく、0.50%以下であることが特に好ましい。
【0064】
(抗菌性能)
本フィルムは、優れた抗菌性を発揮する。例えば、フィルムの抗菌性は以下の方法で評価することができる。具体的には、JIS Z2801(2012)に記載の抗菌性試験において、試験に用いる菌をパン酵母菌(ドライイースト)に変更して抗菌性試験を行う。試験用培地には、SDA(サブローデキストロース寒天)培地を用い、菌液はパン酵母菌0.1gをPSB(リン酸緩衝生理食塩水)9mlに加えてよく撹拌した後、さらに10の6乗倍に希釈して、100CFU/mL程度になるように調製する。次いで、5cm×5cmの大きさに切り出したフィルムに、菌液を0.2mL滴下した後、4cm×4cmのカバーフィルムを被せ、菌液をフィルムに密着させ、減菌シャーレに入れ、恒温恒湿槽にて35±1℃、相対湿度90%にて24時間培養する。その後、SDA培地上に評価用フィルム上の菌液を展開し、白金耳で培地全体にまんべんなく塗り拡げ、恒温恒湿槽にて35±1℃、相対湿度90%にて72時間培養し、培養後の生菌数を測定する。生菌数は9×10未満であることが好ましく、5×10未満であることがより好ましく、3×10未満であることがさらに好ましい。
【0065】
(厚み)
本フィルムの厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、本フィルムの厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。本フィルムの厚みを上記範囲内とすることにより、フィルム製造時の加工性やハンドリング性をより効果的に高めることができる。
【0066】
(剥離強度)
本フィルムを蓋材として底材(トレー)とヒートシールし密閉後、蓋材開封時のイージーピール強度は、試験片が15mm幅、23℃のとき、1.0N/mm~20.0N/mmが好ましい。イージーピール強度を上記下限以上とすることにより、包装体の密封性を保つことができる。また、イージーピール強度を上記上限値以下とすることにより、易開封性を高めることができる。
【0067】
<用途>
本フィルムは、種々の用途に用いることができ、食品包装用、錠剤等の医薬品の包装用、注射器、注射針等の医療器具の包装用、ガーゼ、マスク等の衛生材等の包装用に好適に用いられる。中でも、本フィルムは、食品包装用として用いることが好ましい。また、本実施形態は食品包装材に関するものであってもよい。本フィルムを食品包装用として用いる場合、例えば、本フィルムを袋状に成形し、食品を内包した後に、本フィルムを熱溶着(ヒートシール)することで、包装体を得ることができる。
【0068】
本フィルムは、蓋材として用いることもできる。この場合、例えば、ガラス製や樹脂製の容器に本フィルム(蓋材)を熱溶着(ヒートシール)することで、容器を密閉して包装体を得ることができる。容器としては、カップやトレーなどを挙げることができる。
【実施例0069】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、フィルムおよびその材料についての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向(MD)、その直角方向を横方向又は幅方向(TD)と呼ぶ。
【0070】
[評価方法]
(1)厚み
JIS K7130(1999)に準拠して、スタンドタイプ定圧厚さ測定器にて無作為に10点測定し、その平均値をフィルムの厚みとした。
【0071】
(2)引張強度及び引張破断伸度
JIS K7127(1999)に準じた方法により、フィルムのMD及びTDの引張破断強度及び引張破断伸度をそれぞれ測定した。測定条件は、引張速度200mm/分、雰囲気温度23℃とした。測定装置は、引張試験機(製品名:オートグラフAG-X、株式会社島津製作所製)を用いた。試験片には、フィルムから測定方向の長さ50mm、幅10mmの長方形に切り出したものを用いた。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離20mmでチャックし、クロスヘッドスピード200mm/分で引っ張り、MD及びTDの引張強度及び引張伸度をそれぞれ3回測定し、その平均値を求めた。
【0072】
(3)ブツの面積率
フィルム中に発生する異物(ブツ)の面積率を、デジタルマイクロスコープを用いて算出した。まず、リング照明で反射視野を観察し、観察像の輝度のヒストグラムから異物(ブツ)の輝度範囲を抽出し異物(ブツ)の面積とした。異物(ブツ)の面積率は、異物(ブツ)の面積を観察面積で除算して百分率で算出した。
【0073】
(4)透明性(全光線透過率)
JIS K7361-1(1997)に記載の光線透過率測定方法により、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-7000II)を用いてフィルムの全光線透過率を測定した。
【0074】
(5)透明性(ヘイズ)
JIS K7136(2000)に記載のヘイズの測定方法により、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-7000II)を用いてフィルムのヘイズを測定した。
【0075】
(6)簡易抗菌性能試験
抗菌性能は、試験に用いる菌をパン酵母菌に変更したこと以外は、JIS Z2801(2012)に記載の抗菌性試験に準拠して行った。
供試菌としてパン酵母菌(ドライイースト)を準備し、試験用培地として、SDA(サブローデキストロース寒天)培地を準備した。菌液はパン酵母菌0.1gをPSB(リン酸緩衝生理食塩水)9mlに加えてよく撹拌した後、さらに10の6乗倍に希釈して、100CFU/mL程度になるように調製した。
各実施例及び比較例により得られたフィルムを5cm×5cmの大きさに切り出し、評価用フィルムとした。各評価用フィルムの一方の表面上に、上記の調製した菌液を0.2mL滴下した後、4cm×4cmのカバーフィルムを被せ、菌液を評価用フィルムに密着させ、減菌シャーレに入れ、恒温恒湿槽にて35±1℃、相対湿度90%にて24時間培養した。次いで、SDA培地上に評価用フィルム上の菌液を展開し、白金耳で培地全体にまんべんなく塗り拡げ、恒温恒湿槽にて35±1℃、相対湿度90%にて72時間培養した。その後、培養後の生菌数を測定した。測定された生菌数について、以下の評価基準に従って簡易抗菌性を評価した。
A:生菌数が0~5×10未満
B:生菌数が5×10以上9×10未満
C:生菌数が9×10以上
【0076】
(7)粒子径
有機系抗菌剤(B)の粒子径はレーザー回折式粒度測定装置(シーラス社製 CILAS 1190)で測定し、JIS Z 8825(2013)に準してD90、D50,D10粒子径をそれぞれ評価した。測定された粒子径分布の最大値を最大粒子径、算術平均したものを平均粒子径とした。
【0077】
(有機系抗菌剤)
実施例及び比較例では以下の有機系抗菌剤を使用した。
・抗菌剤B1:平均粒子径が0.22μm、D90粒子径が0.42μm、D50粒子径が0.17μm、D10粒子径が0.04μmのデヒドロ酢酸Na
・抗菌剤B2:平均粒子径が1.6μm、D90粒子径が6.06μm、D50粒子径が0.24μm、D10粒子径が0.05μmのデヒドロ酢酸Na
・抗菌剤B3:平均粒子径が68.75μm、D90粒子径が151μm、D50粒子径が52.4μm、D10粒子径が0.33μmのデヒドロ酢酸Na
【0078】
[実施例1]
有機系抗菌剤として抗菌剤B1を用いた。抗菌剤B1 400gを60℃に加熱したピッコロミキサーで攪拌しながら、大豆極度硬化油4gと60℃に加熱したヘキサン30gを混合した液を上から滴下して、大豆極度硬化油で被覆された被覆抗菌剤を作製した。その後、ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン系樹脂(線状低密度ポリエチレン、エチレン/1-ブテン=93/7(質量比)、密度0.924g/cm3、MFR2.0g/10分、融点123℃)と、上記の被覆抗菌剤を質量比が、96質量%、4質量%となるようにドライブレンドし、卓上溶融混練機を用いて温度200℃で5分間、溶融混練した。その後、卓上の製膜機に溶融混練した樹脂組成物を投入し、厚み30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2]
ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン系樹脂(線状低密度ポリエチレン、エチレン/1-ブテン=93/7(質量比)、密度0.924g/cm3、MFR2.0g/10分、融点123℃)、有機系抗菌剤として抗菌剤B1、油脂として大豆極度硬化油を用いて各質量比が95質量%、4質量%、1質量%となるようにドライブレンドし、卓上溶融混練機を用いて温度200℃で5分間、溶融混練した。その後、卓上の製膜機に溶融混練した樹脂組成物を投入し、厚み40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0080】
[実施例3]
ポリオレフィン系樹脂、有機系抗菌剤(抗菌剤B1)、油脂の質量比を93.5質量%、4質量%、2.5質量%に変更した以外は実施例2と同様にフィルムを作製し、厚み30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0081】
[実施例4]
ポリオレフィン系樹脂、有機系抗菌剤(抗菌剤B2)、油脂の質量比を93.5質量%、4質量%、2.5質量%に変更した以外は実施例2と同様にフィルムを作製し、厚み40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0082】
[比較例1]
油脂を用いずに、ポリエチレン系樹脂と有機系抗菌剤(抗菌剤B1)の質量比、96質量%、4質量%に変更した以外は実施例2と同様にフィルムを作製し、厚み30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0083】
[比較例2]
有機系抗菌剤に抗菌剤B2を用い、ポリエチレン系樹脂と有機系抗菌剤の質量比を96質量%、4質量%に変更した以外は実施例2と同様にフィルムを作製し、厚み40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0084】
[比較例3]
有機系抗菌剤に抗菌剤B3を用い、ポリエチレン系樹脂と有機系抗菌剤の質量比を96質量%、4質量%に変更した以外は実施例2と同様にフィルムを作製し、厚み40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0085】
[比較例4]
ポリエチレン系樹脂と有機系抗菌剤(抗菌剤B3)の質量比を98質量%、2質量%に変更した以外は比較例3と同様にフィルムを作製し、厚み40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0086】
[比較例5]
有機系抗菌剤に抗菌剤B3を用いた以外は実施例1と同様に油脂被覆有機系抗菌剤とフィルムを作製し、厚み40μmのフィルムを得た。
【0087】
[比較例6]
有機系抗菌剤として抗菌剤B3を用いた以外は実施例2と同様にフィルムを作製し、厚み40μmのフィルムを得た。
【0088】
[比較例7]
有機系抗菌剤として抗菌剤B1を用いた以外は比較例4と同様にフィルムを作製し、厚み40μmのフィルムを得た。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例では、異物(ブツ)の発生が抑制されており、外観に優れたフィルムが得られた。また、実施例では、抗菌性に優れたフィルムが得られた。さらに、実施例では、フィルムの引張破断伸度が大きかった。
一方、比較例では、異物(ブツ)の発生の抑制と抗菌性が両立されていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、抗菌性と良外観、高い引張破断伸度を有するため、食品包装用フィルムや保存容器、建材用途、雑貨や家電製品等の用途に好適に利用することができる。