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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135678
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240927BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20240927BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240927BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20240927BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 X
B28D5/00 A
B23K26/53
B23K26/08 D
B23K26/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046480
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】北原 信康
(72)【発明者】
【氏名】里 百合子
【テーマコード(参考)】
3C069
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
3C069AA03
3C069BA08
3C069BB04
3C069CA05
3C069CB05
3C069EA04
4E168AE01
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA13
4E168DA24
4E168DA45
4E168DA46
4E168EA06
4E168JA12
4E168JA13
5F063AA07
5F063BA07
5F063CB02
5F063CB03
5F063CB07
5F063CB29
5F063DD27
5F063DD29
5F063DD68
5F063EE21
(57)【要約】
【課題】表面に膜が設けられているウェーハを分割してチップを製造する際に、ウェーハから膜が剥離する可能性を低く抑えることができるチップの製造方法を提供する。
【解決手段】
レーザービームを照射することにより、表面を含むウェーハの線状の第1領域を変質させて、第1領域にクラック誘導層を形成するクラック誘導層形成ステップと、レーザービームを照射することにより、クラック誘導層よりも表面から離れたウェーハの内部の線状の第2領域を変質させて該第2領域に変質層を形成するとともに、変質層からクラック誘導層へと向かって伸長する第1クラックと、膜の内部へと向かって伸長する第2クラックと、を形成するクラック形成ステップと、ウェーハに外力を付与してウェーハを膜とともに分割予定ラインに沿って分割することにより、複数の該チップを得る分割ステップと、を含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に膜が設けられているウェーハを分割予定ラインに沿って膜とともに分割することにより複数のチップを製造するチップの製造方法であって、
該ウェーハ及び該膜の一方又は両方を透過する波長のレーザービームを集光させながら該分割予定ラインに照射することにより、該表面を含む該ウェーハの線状の第1領域を変質させて、該第1領域にクラック誘導層を形成するクラック誘導層形成ステップと、
該クラック誘導層形成ステップの後に、該ウェーハを透過する波長のレーザービームを集光させながら該分割予定ラインに照射することにより、該クラック誘導層よりも該表面から離れた該ウェーハの内部の線状の第2領域を変質させて、該第2領域に変質層を形成するとともに、該変質層から該クラック誘導層へと向かって伸長する第1クラックと、該膜の内部へと向かって伸長する第2クラックと、を形成するクラック形成ステップと、
該クラック形成ステップの後に、該ウェーハに外力を付与して該ウェーハを該膜とともに該分割予定ラインに沿って分割することにより、複数の該チップを得る分割ステップと、を含む、チップの製造方法。
【請求項2】
該クラック誘導層形成ステップでは、該分割予定ラインの幅の方向に離れた2つの線状の該第1領域のそれぞれを変質させて、2つの該クラック誘導層を形成し、
該クラック形成ステップでは、2つの該クラック誘導層よりも該表面から離れた該ウェーハの内部の線状の該第2領域を変質させて、該第2領域に変質層を形成するとともに、該変質層から2つの該クラック誘導層へと向かって伸長し2つの該クラック誘導層の間の領域に達する該第1クラックと、該膜の内部へと向かって伸長する該第2クラックと、を形成する請求項1に記載のチップの製造方法。
【請求項3】
該クラック誘導層形成ステップでは、
該膜を透過し該ウェーハに吸収される波長のレーザービームを集光させながら該膜側から該分割予定ラインに照射する請求項1又は請求項2に記載のチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを搭載した半導体チップは、例えば、結晶性のシリコン等でなる1枚のウェーハの表面に複数個の半導体デバイスを形成し、このウェーハを分割予定ラインに沿って個々の半導体デバイスに分割することで製造される。このような半導体チップの製造方法の例として、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された方法では、ウェーハを透過する波長のレーザービームをウェーハの内部に集光させるように分割予定ラインに沿って照射することにより、分割予定ラインに沿う改質層(変質層)と、改質層から伸長するクラックと、がウェーハ内部に形成される。改質層とクラックとが形成された後、ウェーハに外力を付与することにより、ウェーハは、分割予定ラインに沿って分割される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-192370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体チップとなるウェーハの表面には、半導体デバイスを構成する結晶性の低い酸化膜や窒化膜等の膜が設けられていることがある。このような膜が表面に設けられているウェーハの内部にレーザービームにより改質層を形成すると、結晶性の高いウェーハの内部では、原子の配列方向に沿って改質層からクラックを伸長させることが可能である。
【0006】
一方で、結晶性の低い酸化膜や窒化膜等の膜の内部では、ウェーハと同じように所定の方向に沿ってクラックを伸長させることが困難である。このため、ウェーハとその表面に設けられた膜とでクラックの伸長方向が必ずしも整合せず、膜がウェーハの表面に対して斜めに割れて、ウェーハから剥離する可能性があった。
【0007】
よって、本発明の目的は、表面に膜が設けられているウェーハを分割してチップを製造する際に、ウェーハから膜が剥離する可能性を低く抑えることができるチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、表面に膜が設けられているウェーハを分割予定ラインに沿って膜とともに分割することにより複数のチップを製造するチップの製造方法であって、該ウェーハ及び該膜の一方又は両方を透過する波長のレーザービームを集光させながら該分割予定ラインに照射することにより、該表面を含む該ウェーハの線状の第1領域を変質させて、該第1領域にクラック誘導層を形成するクラック誘導層形成ステップと、該クラック誘導層形成ステップの後に、該ウェーハを透過する波長のレーザービームを集光させながら該分割予定ラインに照射することにより、該クラック誘導層よりも該表面から離れた該ウェーハの内部の線状の第2領域を変質させて、該第2領域に変質層を形成するとともに、該変質層から該クラック誘導層へと向かって伸長する第1クラックと、該膜の内部へと向かって伸長する第2クラックと、を形成するクラック形成ステップと、該クラック形成ステップの後に、該ウェーハに外力を付与して該ウェーハを該膜とともに該分割予定ラインに沿って分割することにより、複数の該チップを得る分割ステップと、を含む、チップの製造方法が提供される。
【0009】
好ましくは、該クラック誘導層形成ステップでは、該分割予定ラインの幅の方向に離れた2つの線状の該第1領域のそれぞれを変質させて、2つの該クラック誘導層を形成し、該クラック形成ステップでは、2つの該クラック誘導層よりも該表面から離れた該ウェーハの内部の線状の該第2領域を変質させて、該第2領域に変質層を形成するとともに、該変質層から2つの該クラック誘導層へと向かって伸長し2つの該クラック誘導層の間の領域に達する該第1クラックと、該膜の内部へと向かって伸長する該第2クラックと、を形成する。
【0010】
好ましくは、該クラック誘導層形成ステップでは、該膜を透過し該ウェーハに吸収される波長のレーザービームを集光させながら該膜側から該分割予定ラインに照射する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面に係るチップの製造方法は、分割予定ラインに沿って表面を含むウェーハの線状の第1領域を変質させて、第1領域にクラック誘導層を形成するクラック誘導層形成ステップを含むので、クラック誘導層形成ステップの次のクラック形成ステップにおいてウェーハの内部に変質層を形成すると、この変質層からクラック誘導層へと向かって伸長する第1クラックが形成される。
【0012】
そして、ウェーハの表面に設けられた膜には、クラック誘導層を介して第1クラックが作用し、この第1クラックが伸長する方向に第2クラックが伸長する。つまり、ウェーハの内部に形成される第1クラックと、ウェーハの表面に設けられた膜に形成される第2クラックと、が概ね同じ方向に伸長し、膜が斜めに割れ難くなるので、膜が斜めに割れることに起因してウェーハから膜が剥離する可能性を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係るウェーハを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係るウェーハを模式的に示す上面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るウェーハを模式的に示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係るチップの製造方法により得られるチップを模式的に示す上面図である。
図5図5は、第1実施形態に係るチップの製造方法を示すフロー図である。
図6図6は、第1実施形態に係るチップの製造方法で使用されるレーザー照射装置を模式的に示す図である。
図7図7は、第1実施形態のチップの製造方法に係るクラック誘導層形成ステップの実行時のウェーハ及び膜を模式的に示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態のチップの製造方法に係るクラック形成ステップの実行時のウェーハ及び膜を模式的に示す断面図である。
図9図9は、クラック誘導層を形成せずにクラックが形成される場合のウェーハ及び膜を模式的に示す断面図である。
図10図10は、第1実施形態に係るチップの製造方法で使用される拡張装置を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、第1実施形態に係るチップの製造方法で使用される拡張装置、ウェーハ及び膜を模式的に示す断面図である。
図12図12は、第1実施形態に係るチップの製造方法で使用される拡張装置、ウェーハ及び膜を模式的に示す断面図である。
図13図13は、第2実施形態に係るチップの製造方法で使用されるレーザー照射装置を模式的に示す図である。
図14図14は、第2実施形態のチップの製造方法に係るクラック誘導層形成ステップの実行時のウェーハ及び膜を模式的に示す断面図である。
図15図15は、第2実施形態に係るクラック形成ステップの実行時のウェーハ及び膜を模式的に示す断面図である。
図16図16は、第3実施形態に係るクラック誘導層形成ステップの実行時のウェーハ及び膜を模式的に示す断面図である。
図17図17は、第4実施形態に係るクラック形成ステップの実行時のウェーハ及び膜を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図1から図4では、互いに直交する第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3を用いて、ウェーハの方向を便宜的に表す。
【0015】
図1は、本実施形態に係るウェーハ2を模式的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態に係るウェーハ2を模式的に示す上面図であり、図3は、本実施形態に係るウェーハ2を模式的に示す断面図である。図1から図3に示されるように、本実施形態に係るウェーハ2は、例えば、結晶性のシリコン等の材料により円盤状に形成され、その表面2a側には、一又は複数の膜4が設けられている。
【0016】
例えば、この膜4の上方(ウェーハ2とは反対側)には、複数の半導体デバイス6を構成する電極が設けられている。すなわち、膜4は、ウェーハ2の表面2a側の部分とともに、半導体デバイス6を構成している。なお、ウェーハ2の形状は円盤状に限られず、矩形状等、その他の形状であっても良い。
【0017】
図2に示されるように、ウェーハ2の表面2aに対して平行な第1方向D1に沿って並ぶ複数個の半導体デバイス6の列のうちの隣り合う2つの列の間の領域は、分割予定ライン8を構成している。同様に、ウェーハ2の表面2aに対して平行で第1方向D1に対して垂直な第2方向D2に沿って並ぶ複数個の半導体デバイス6の列のうちの隣り合う2つの列の間の領域は、分割予定ライン8を構成している。
【0018】
図2では、図面の見やすさ等を考慮して、第1方向D1に沿う1本の分割予定ライン8に相当する領域のみが破線で示されているが、全ての半導体デバイス6の列のうちの隣り合う任意の2つの列の間の領域は、いずれも分割予定ライン8を構成している。そして、ウェーハ2の表面2a側の部分は、第1方向D1及び第2方向D2に沿って設けられたこれらの分割予定ライン8により、半導体デバイス6ごとに区切られている。
【0019】
図3に示されるように、ウェーハ2の表面2a側には、例えば、2つの膜4が設けられる。図3では、ウェーハ2の表面2aに酸化膜4aが設けられており、この酸化膜4aに窒化膜4bが重ねられている。酸化膜4aは、例えば、酸化シリコン膜等であり、CVD(Chemical Vapor Deposition)法や熱酸化により形成される。窒化膜4bは、例えば、窒化シリコン膜等であり、CVD法により形成される。
【0020】
これらの成膜方法で形成される酸化膜4a及び窒化膜4bの結晶性は、結晶性のシリコン等で形成されるウェーハ2の結晶性よりも低い。なお、ウェーハ2の厚さは、例えば、80μmであり、酸化膜4a及び窒化膜4bの厚さは、例えば、2μmである。ただし、ウェーハ2の構成、組成及び厚さ等、並びに膜4の構成、組成及び厚さ等は、チップの仕様に応じて適宜変更され得る。
【0021】
図4は、第1実施形態に係るチップの製造方法により得られるチップを模式的に示す上面図である。図4に示されるように、図1から図3に示されたウェーハ2を分割予定ライン8に沿って膜4とともに分割することにより、それぞれが半導体デバイス6を含む複数のチップ10が得られる。
【0022】
図5は、第1実施形態に係るチップの製造方法を示すフロー図である。図5に示されるように、本実施形態に係るチップの製造方法は、クラック誘導層形成ステップS1と、クラック形成ステップS2と、分割ステップS3とを含む。以下、クラック誘導層形成ステップS1、クラック形成ステップS2、及び分割ステップS3の各ステップについて、図面を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態に係るチップの製造方法では、まず、クラック誘導層形成ステップS1が実行される。このクラック誘導層形成ステップS1では、ウェーハ2に対してレーザービームを照射してウェーハ2を部分的に変質させることにより、このウェーハ2に分割予定ライン8に沿う直線状のクラック誘導層12が形成される。図6は、ウェーハ2に対してレーザービーム28を照射できるように構成されたレーザー照射装置20を模式的に示す図である。
【0024】
図6に示されるように、レーザー照射装置20は、レーザー発振器22を備える。このレーザー発振器22は、レーザー発振に適したNd:YAG等のレーザー媒質を含み、例えば、ウェーハ2を透過する波長のパルス状のレーザービーム28を生成することができる。
【0025】
レーザービーム28が進行する方向に沿ってレーザー発振器22の下流側の位置には、例えば、ミラー等の反射器24が配置されている。レーザー発振器22で生成されたレーザービーム28は、この反射器24により反射され、その進行する方向が下向き(Z軸に沿う向き)に変えられる。
【0026】
反射器24の下部には、更に下方の集光点にレーザービーム28を集光させることができるレンズ等の集光器26が配置されている。また、集光器26の下方には、ウェーハ2を保持することができる保持テーブル62が配置されている。反射器24で反射されたレーザービーム28は、この集光器26を通じて、保持テーブル62により保持されたウェーハ2に照射される。
【0027】
なお、保持テーブル62は、例えば、モータ等を含む回転機構とボールねじ式の移動機構とに支持されており、回転機構が発生する力によりZ軸の周りに回転し、移動機構が発生する力によりX軸及びY軸に沿って移動する。ウェーハ2を保持している保持テーブル62を移動機構によりX軸及びY軸に沿って移動させると、ウェーハ2と集光器26の集光点とが、X軸及びY軸に沿って相対的に移動する。
【0028】
図7は、第1実施形態のチップの製造方法に係るクラック誘導層形成ステップS1の実行時のウェーハ2及び膜4を示す断面図である。クラック誘導層形成ステップS1では、まず、ウェーハ2の裏面2b側が上方に露出するように、ウェーハ2の表面2a側が保持テーブル62により保持される。すなわち、図7に示される膜4の上面側が保持テーブル62により保持される。次に、加工の対象である分割予定ライン8がX軸に対して平行になるように、回転機構が保持テーブル62を回転させる。
【0029】
また、対象の分割予定ライン8の延長線に沿って集光器26の集光点が配置されるように、移動機構が保持テーブル62をY軸に沿って移動させる。その後、例えば、レーザー発振器22がウェーハ2を透過する波長のレーザービーム28を生成しながら、移動機構が保持テーブル62をX軸に沿って移動させる。なお、集光点の高さは、レーザービーム28がウェーハ2の表面2aを含む領域に集光するように、あらかじめ調整される。
【0030】
これにより、図7に示されるように、レーザービーム28は、ウェーハ2の表面2aを含む領域に集光するように、ウェーハ2の裏面2b側から入射し、X軸に対して平行な直線状の第1領域50に沿って照射される。そして、ウェーハ2の線状の第1領域50がレーザービーム28により変質し、この第1領域50にクラック誘導層12が形成される。
【0031】
レーザービーム28が対象の1本の分割予定ライン8に沿って照射された後には、移動機構が保持テーブル62をY軸に沿って矢印の方向に移動させる。これにより、集光器26の集光点が隣の分割予定ライン8の延長線と重なる位置に移動する。そして、同様の動作が繰り返されることにより、レーザービーム28が隣の分割予定ライン8に沿って照射され、隣の分割予定ライン8にも同様のクラック誘導層12が形成される。
【0032】
上述の動作は、例えば、全ての分割予定ライン8に沿ってクラック誘導層12が形成されるまで繰り返される。なお、図7では、実線で描かれているレーザービーム28によりクラック誘導層12が形成される様子が示されており、それよりも前のタイミングで照射されたレーザービーム28が、破線で描かれている。
【0033】
例えば、レーザービーム28の波長は、1064nm~2000nm、パルス幅は、10ps~40ns、出力は、0.01W~1W、繰り返し周波数は、10kHz~500kHz、集光レンズのNA(Numerical Aperture)は、0.3、ウェーハ2の送り速度は、10mm/s~2000mm/s、にそれぞれ設定される。出力は、レーザービーム28の波長帯やパルス幅等に応じて適宜調整され、送り速度は、周波数等に応じて適宜調整される。例えば、波長は、1064nm、パルス幅は、40ns、出力は、0.1W、周波数は、80kHz、送り速度は、500mm/sに設定される。ただし、レーザービーム28を照射する際の条件等は、ウェーハ2の第1領域50にクラック誘導層12が適切に形成される範囲内で変更され得る。
【0034】
上述したクラック誘導層形成ステップS1の後に、クラック形成ステップS2が実行される。このクラック形成ステップS2では、ウェーハ2に対してレーザービーム56を照射してウェーハ2を部分的に変質させることにより、このウェーハ2に分割予定ライン8に沿う直線状の変質層(改質層)が形成される。図8は、第1実施形態のチップの製造方法に係るクラック形成ステップS2の実行時のウェーハ2及び膜4を模式的に示す断面図である。
【0035】
なお、本実施形態では、このクラック形成ステップS2においても、クラック誘導層形成ステップS1で使用されたレーザー照射装置20が使用される。ただし、クラック形成ステップS2において、クラック誘導層形成ステップS1で使用されたレーザー照射装置20とは別のレーザー照射装置が使用されてもよい。
【0036】
図8に示されるように、クラック形成ステップS2では、まず、加工の対象である分割予定ライン8がX軸に対して平行になるように、回転機構が保持テーブル62を回転させる。なお、クラック誘導層形成ステップS1から引き続いて、ウェーハ2の表面2a側が保持テーブル62により保持されており、ウェーハ2の裏面2b側は、上方に露出している。
【0037】
また、対象の分割予定ライン8の延長線に沿って集光器26の集光点が配置されるように、移動機構が保持テーブル62をY軸に沿って移動させる。その後、例えば、レーザー発振器22がウェーハ2を透過する波長のレーザービーム56を生成しながら、移動機構が保持テーブル62をX軸に沿って移動させる。なお、集光点の高さは、レーザービーム56がウェーハ2のクラック誘導層12よりも表面2aから離れた領域に集光するように、あらかじめ調整される。
【0038】
これにより、図8に示されるように、レーザービーム56は、ウェーハ2のクラック誘導層12よりも表面2aから離れた領域に集光するように、ウェーハ2の裏面2b側から入射し、X軸に対して平行な直線状の第2領域52に沿って照射される。そして、ウェーハ2の線状の第2領域52がレーザービーム56により変質し、この第2領域52に変質層14が形成される。
【0039】
レーザービーム56が対象の1本の分割予定ライン8に沿って照射された後には、移動機構が保持テーブル62をY軸に沿って矢印の方向に移動させる。これにより、集光器26の集光点が隣の分割予定ライン8の延長線と重なる位置に移動する。そして、同様の動作が繰り返されることにより、レーザービーム56が隣の分割予定ライン8に沿って照射され、隣の分割予定ライン8にも同様の変質層14が形成される。
【0040】
上述の動作は、例えば、全ての分割予定ライン8に沿って変質層14が形成されるまで繰り返される。なお、図8では、実線で描かれているレーザービーム56により変質層14が形成される様子が示されており、それよりも前のタイミングで照射されたレーザービーム56が、破線で描かれている。
【0041】
クラック形成ステップS2で使用されるレーザービーム56は、例えば、クラック誘導層形成ステップS1で使用されるレーザービーム28とは異なる条件で生成される。このため、本実施形態のクラック形成ステップS2では、クラック誘導層形成ステップS1で使用されるレーザー照射装置20とは異なるレーザー照射装置が使用される。ただし、クラック形成ステップS2で使用されるレーザー照射装置の基本的な構造は、クラック誘導層形成ステップS1で使用されるレーザー照射装置20の構造と同様で良い。
【0042】
例えば、レーザービーム56の波長は、1064nm~2000nm、パルス幅は、10ps~40ns、出力は、0.1~10W、繰り返し周波数は、10kHz~500kHz、集光レンズのNA(Numerical Aperture)は、0.7、ウェーハ2の送り速度は、10mm/s~2000mm/sにそれぞれ設定される。出力は、レーザービーム28の波長帯やパルス幅等に応じて適宜調整され、送り速度は、周波数等に応じて適宜調整される。例えば、波長は、1064nm、パルス幅は、40ns、出力は、0.4W、周波数は、80kHz、送り速度は、500mm/sに設定される。ただし、レーザービーム56を照射する際の条件等は、ウェーハ2の第2領域52に変質層14が適切に形成される範囲内で変更され得る。
【0043】
上述のように、ウェーハ2は結晶性のある材料で構成されている。よって、クラック形成ステップS2において、ウェーハ2に変質層14を形成すると、この結晶の構造に合わせて、変質層14からクラックが伸長する。本実施形態では、変質層14からクラック誘導層12へと向かって伸長するクラック(第1クラック)16と、変質層14からウェーハ2の裏面2b側(ウェーハ2の表面2a側と反対側の面)に向かって伸長するクラック(第3クラック)54と、が形成される。
【0044】
本実施形態では、ウェーハ2の表面2aを含む領域にクラック誘導層12が形成されており、このクラック誘導層12は、膜4と接触している。そのため、ウェーハ2の表面2aに設けられた膜4には、クラック誘導層12を介してクラック(第1クラック)16が作用し、この第1クラック16が伸長する方向にクラック(第2クラック)18が伸長する。詳細なメカニズムは不明であるが、ウェーハ2の表面2aを含む領域にクラック誘導層12が形成されることにより、このクラック誘導層12と膜4との界面での結合の状態が変化し、第2クラック18の伸長する方向が第1クラック16の影響を受けやすくなるためと推察される。
【0045】
このように、本実施形態では、あらかじめクラック誘導層12を形成しておくことにより、ウェーハ2の内部に形成される第1クラック16と、ウェーハ2の表面に設けられた膜4に形成される第2クラック18と、が概ね同じ方向に伸長する。その結果、膜4が斜めに割れ難くなるので、膜が斜めに割れることに起因してウェーハ2から膜が剥離する可能性を低く抑えることができる。すなわち、ウェーハ2の表面2aを含む領域に形成されるクラック誘導層12は、膜4に形成される第2クラック18の伸長方向を、ウェーハ2の内部に形成される第1クラック16の伸長方向とほぼ同じ方向に誘導する機能を有する。
【0046】
レーザービーム56が1本の分割予定ライン8に沿って照射された後、保持テーブル62がウェーハ2を分割予定ライン8に垂直な方向(図5のX軸方向、図8中の矢印の方向)に移動する。そして、レーザービーム56が隣の分割予定ライン8に沿って同様に照射されることにより、ウェーハ2の線状の第2領域52が変質されて、第2領域52に変質層14が形成される。
【0047】
図9は、クラック誘導層12を形成せずにクラックが形成される場合のウェーハ2及び膜4を模式的に示す断面図である。ウェーハ2に比べて結晶性の低い膜4の内部では、ウェーハ2に形成されるクラックと同じ方向にクラックを伸長させることが困難である。このため、ウェーハ2にクラック誘導層12を形成しない場合には、図9に示されるように、ウェーハ2とその表面2aに設けられた膜4とでクラックの伸長する方向が必ずしも整合せず、膜4がウェーハ2の表面2aに対して斜めに割れて、ウェーハ2から剥離する可能性がある。
【0048】
これに対して、本実施形態では、ウェーハ2の表面2aを含む第1領域50に設けられたクラック誘導層12により、第1クラック16が伸長する方向に沿って膜4にクラックを伸長させることができる。これにより、膜4がウェーハ2の表面2aに対して斜めに割れてウェーハ2から剥離する可能性を低く抑えることができる。
【0049】
上述したクラック形成ステップS2の後に、分割ステップS3が実行される。分割ステップS3では、ウェーハ2に外力が付与されることにより、ウェーハ2が分割予定ライン8に沿って複数のチップ10に分割される。分割ステップS3は、例えば、ウェーハ2を伸張性(拡張性)のある樹脂製のエキスパンドテープ58に貼付し、このエキスパンドテープ58を拡張することによって実施される。
【0050】
エキスパンドテープ58の拡張には、例えば、エキスパンドテープ58に力学的な力を付与してエキスパンドテープ58を拡張することができるアアクチュエータが用いられる。図10は、第1実施形態に係るチップ10の製造方法で使用される拡張装置30を模式的に示す斜視図である。図11及び図12は、第1実施形態に係るチップ10の製造方法で使用される拡張装置30、ウェーハ2及び膜4を模式的に示す断面図である。
【0051】
図11はウェーハ2の分割前の状態を示し、図12は、ウェーハ2の分割後の状態を示している。拡張装置30は、エキスパンドテープ58を引っ張って拡張し、ウェーハ2を第1クラック16、第2クラック18及び第3クラック54に沿って分断する。なお、本実施形態では、拡張装置30がウェーハ2及びエキスパンドテープ58を保持できるように、ウェーハ2を囲む環状のフレーム48がエキスパンドテープ58の周縁部に固定される。
【0052】
拡張装置30は、例えば、円盤状のベース32を備える。ベース32の上面には、ウェーハ2よりも直径が大きい円筒状のドラム34と、このドラム34を囲む4組のエアアクチュエータ(エアシリンダ)36と、が配置されている。各エアアクチュエータ36は、ベース32の上面に固定されたシリンダ38を含む。シリンダ38は、例えば、ドラム34の外周に沿って等間隔(等角度間隔)に配置されている。
【0053】
各シリンダ38には、ピストン(不図示)が上下に移動できるように挿入されている。シリンダ38に挿入されたビストンは、エア供給路(不図示)を通じてシリンダ38に供給されるエアにより上下に移動する。各ピストンの上端部には、ロッド40の下端部が連結されている。ロッド40の上端部には、上述したフレーム48を支持することができる環状の支持台42が固定されている。
【0054】
そのため、各エアアクチュエータ36のシリンダ38にエアを供給し、ピストン及びロッド40を上下に移動させると、支持台42が上下に移動する。具体的には、支持台42は、ドラム34の上端の高さと支持台42の上面の高さとが概ね一致する第1位置と、支持台42の上面の高さがドラム34の上端の高さよりも低くなる第2位置と、の間で上下に移動することができる。
【0055】
支持台42の外周部には、複数のクランプ44が固定されている。複数のクランプ44は、支持台42の周方向に沿って概ね等間隔(等角度間隔)に配置されており、支持台42上に配置されるフレーム48を把持して固定する。支持台42の上にフレーム48を配置し、複数のクランプ44でフレーム48を固定することにより、フレーム48がフレーム保持ユニット46によって保持される。
【0056】
分割ステップS3では、まず、支持台42が第1位置に位置づけられる。すなわち、ドラム34の上端の高さと支持台42の上面の高さとが概ね一致するように、支持台42の高さが調節される。次に、エキスパンドテープ58を介してウェーハ2を支持した状態のフレーム48が支持台42上に配置される。このとき、ウェーハ2は、平面視でドラム34の外周よりも内側に配置される。
【0057】
その後、支持台42上に配置されたフレーム48が複数のクランプ44で固定される。これにより、ウェーハ2がエキスパンドテープ58及びフレーム48を介してフレーム保持ユニット46によって保持される。
【0058】
次に、エアアクチュエータ36により支持台42が引き下げられ、第2位置に位置づけられる。これにより、フレーム48が下側に移動し、ドラム34の上端に接触しているエキスパンドテープ58が、半径方向で外側に引っ張られるように拡張される。その結果、ウェーハ2には、ウェーハ2の半径方向で外側に向かう外力が付与される。
【0059】
図11及び図12に示されるように。エキスパンドテープ58の拡張によってウェーハ2に外力が付与されると、ウェーハ2は第1クラック16及び第3クラック54に沿って分割され、また、膜4は第2クラック18に沿って分割される。これにより、複数のチップ10が得られる。なお、ウェーハ2及び膜4の分割後、各チップ10は、例えばコレット(不図示)によってピックアップされ、所定の基板(配線基板等)に実装される。
【0060】
図13は、第2実施形態のチップ10の製造方法で使用されるレーザー照射装置70を模式的に示す図である。本実施形態では、クラック誘導層形成ステップS1において、分岐部60を設けたレーザー照射装置70を用いてクラック誘導層12が形成される。レーザー照射装置70の基本的な構造は、第1実施形態のチップ10の製造方法で使用されるレーザー照射装置20の構造と同様で良い。
【0061】
レーザー照射装置70の分岐部60は、レーザー発振器22で生成されたレーザービーム28を、Y軸に沿って2つのレーザービーム68に分岐する。分岐部60として、例えば、1/2波長板とウォラストンプリズムとを組み合わせたものが用いられる。ウォラストンプリズムは、例えば、入射するレーザービーム28を互いに直交する方向に偏光した2つ直線偏光のレーザービーム68に分離する。
【0062】
図14は、第2実施形態のチップ10の製造方法に係るクラック誘導層形成ステップS1の実行時のウェーハ2及び膜4を模式的に示す断面図であり、図15は、第2実施形態のチップ10の製造方法に係るクラック形成ステップ時のウェーハ2及び膜4を模式的に示す断面図である。第2実施形態では、図14に示されるように、クラック誘導層形成ステップS1において、1本の分割予定ライン8の幅の方向に離れた2つの線状の第1領域50のそれぞれに、クラック誘導層12が形成される。
【0063】
そして、クラック形成ステップS2において、変質層14が形成されると、変質層14から2つのクラック誘導層12の間へと向かって伸長し、2つのクラック誘導層12の間の領域に達する第1クラック16が形成される。また、膜4にウェーハ2に形成される第1クラック16が作用し、2つのクラック誘導層12の間から膜4の内部に向かって、第1クラック16の伸長方向とほぼ同じ方向に第2クラック18が伸長する。したがって、第2実施形態では、膜4中の第2クラック18の伸長起点が、2つのクラック誘導層12の間に発生するように制御される。
【0064】
第2実施形態に係るチップ10の製造方法のクラック形成ステップS2及び分割ステップS3は、第1実施形態に係るチップ10の製造方法と同様である。
【0065】
図16は、第3実施形態のチップ10の製造方法に係るクラック誘導層形成ステップS1の実行時のウェーハ2及び膜4を示す断面図である。図16に示されるように、第3実施形態では、レーザービーム64が、ウェーハ2の表面2a側から入射する。レーザービーム64の波長として、膜4を透過し、ウェーハ2に吸収される波長が選択される。
【0066】
例えば、レーザービーム64の波長は、355~800nm、パルス幅は、10ps~40ns、出力は、0.01W~0.1W、周波数は、10kHz~500kHz、送り速度は、10mm/s~2000mm/sに設定される。出力は、レーザービーム28の波長帯やパルス幅等に応じて適宜調整され、送り速度は、周波数等に応じて適宜調整される。例えば、波長は、355nm、パルス幅は、10ps、出力は、0.01W、周波数は、500kHz、送り速度は、50mm/sに設定される。出力は、レーザービーム64の波長帯やパルス幅等に応じて適宜調整され、送り速度は、周波数等に応じて適宜調整される。
【0067】
第3実施形態のチップ10の製造方法で使用されるレーザー照射装置の基本的な構造は、第1実施形態のチップ10の製造方法で使用されるレーザー照射装置20の構造と同様で良い。ただし、レーザー照射装置のレーザー発振器は、膜4を透過し、ウェーハ2に吸収される波長のレーザービーム64を生成できるように構成される必要がある。
【0068】
本実施形態では、レーザービーム64がウェーハ2に吸収されるので、レーザービーム64が集光される集光点の位置の精密な調整が不要となり、クラック誘導層形成ステップS1においてクラック誘導層12が容易且つ適切に形成される。第3実施形態に係るチップ10の製造方法のクラック形成ステップS2及び分割ステップS3は、第1実施形態に係るチップ10の製造方法と同様である。
【0069】
図17は、第4実施形態のチップ10の製造方法に係るクラック形成ステップS2の実行時のウェーハ2及び膜4を示す断面図である。図17に示されるように、第4実施形態では、レーザービーム66が、ウェーハ2の表面2a側から入射する。レーザービーム66の波長として、ウェーハ2及び膜4を透過する波長が選択される。
【0070】
例えば、レーザービーム66の波長は、1064nm~2000nm、パルス幅は、10ps~40ns、出力は、0.1~10W、繰り返し周波数は、10kHz~500kHz、集光レンズのNA(Numerical Aperture)は、0.7、ウェーハ2の送り速度は、10mm/s~2000mm/sにそれぞれ設定される。出力は、レーザービーム28の波長帯やパルス幅等に応じて適宜調整され、送り速度は、周波数等に応じて適宜調整される。例えば、波長は、1064nm、パルス幅は、40ns、出力は、0.4W、周波数は、80kHz、送り速度は、500mm/sに設定される。ただし、レーザービーム56を照射する際の条件等は、ウェーハ2の第2領域52に変質層14が適切に形成される範囲内で変更され得る。
【0071】
分割予定ライン(ストリート)が狭かったり、レーザービームを透過させる領域にレーザービーム66を吸収又は反射してしまう層があり、レーザービームがウェーハから入射するとクラック誘導層を形成するためのエネルギーが十分に得られない等の事情がある場合は、本実施形態のようにレーザービーム66がウェーハ2の表面2a側から入射する態様が有効である。
【0072】
したがって、第4実施形態のチップ10の製造方法で使用されるレーザー照射装置の基本的な構造は、第1実施形態のチップ10の製造方法で使用されるレーザー照射装置20の構造と同様で良い。第4実施形態に係るチップ10の製造方法のクラック誘導層形成ステップS1及び分割ステップS3は、第1実施形態及び第3実施形態と同様である。
【0073】
なお、第3実施形態のチップ10の製造方法に係るクラック誘導層形成ステップS1では、レーザービーム64がウェーハ2の表面2a側から入射しているが、第3実施形態のチップ10の製造方法に係るクラック形成ステップS2では、レーザービームがウェーハ2の表面2a側から入射しても良いし、ウェーハ2の裏面2b側から入射しても良い。
【0074】
同様に、第4実施形態のチップ10の製造方法に係るクラック形成ステップS2では、レーザービーム66がウェーハ2の表面2a側から入射しているが、第4実施形態のチップ10の製造方法に係るクラック誘導層形成ステップS1では、レーザービームがウェーハ2の表面2a側から入射しても良いし、ウェーハ2の裏面2b側から入射しても良い。
【0075】
その他、上述した実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施され得る。
【符号の説明】
【0076】
2 :ウェーハ
2a :表面
4 :膜
4a :酸化膜
4b :窒化膜
6 :半導体デバイス
8 :分割予定ライン
10 :半導体チップ
12 :クラック誘導層
14 :変質層(改質層)
16 :第1クラック
18 :第2クラック
20 :レーザー照射装置
22 :レーザー発振器
24 :反射器
26 :集光器
28 :レーザービーム
30 :拡張装置(分割装置)
32 :ベース
34 :ドラム
36 :エアアクチュエータ
38 :シリンダ
40 :ロッド
42 :支持台
44 :クランプ
46 :フレーム保持ユニット
48 :フレーム
50 :第1領域
52 :第2領域
54 :第3クラック
56 :レーザービーム
58 :エキスパンドテープ
60 :分岐部
62 :保持テーブル
64 :レーザービーム
66 :レーザービーム
68 :レーザービーム
70 :レーザー照射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17