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特開2024-135713パラメータ確認装置、治療計画検証装置、治療計画装置及び放射線治療システム、並びにプログラム、パラメータ確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135713
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】パラメータ確認装置、治療計画検証装置、治療計画装置及び放射線治療システム、並びにプログラム、パラメータ確認方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046532
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】大杉 真優
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴啓
(72)【発明者】
【氏名】藤本 林太郎
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AE01
4C082AN04
4C082AN10
4C082AR02
4C082AR14
(57)【要約】
【課題】放射線治療における術者及び患者の負担を軽減することができるパラメータ確認装置、治療計画検証装置、治療計画装置及び放射線治療装置、プログラム、及びパラメータ確認方法を提供する。
【解決手段】第一治療計画のパラメータと第二治療計画のパラメータとの間で、変化してはいけない変化不可パラメータと変化してよい変化可パラメータとを識別して記憶する記憶部341と、記憶部341に記憶された複数のパラメータのうち、変化不可パラメータが第一治療計画と第二治療計画とで一致しているか否か、変化可パラメータの変化量が予め定められた規定範囲内であるか否かのうち少なくともいずれか一方を比較する比較部342と、を備える。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射対象を撮像した第一放射線撮影画像を用いて作成された第一治療計画のパラメータと、前記第一治療計画を作成した後であって放射線照射日までの間で前記照射対象を撮像した第二放射線撮影画像を用いて作成された第二治療計画のパラメータとを比較、確認するパラメータ確認装置であって、
前記第一治療計画のパラメータと前記第二治療計画のパラメータとの間で、変化してはいけない変化不可パラメータと変化してよい変化可パラメータとを識別して記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数のパラメータのうち、前記変化不可パラメータが前記第一治療計画と前記第二治療計画とで一致しているか否か、前記変化可パラメータの変化量が予め定められた規定範囲内であるか否かのうち少なくともいずれか一方を比較する比較部と、を備える
パラメータ確認装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパラメータ確認装置において、
前記比較部は、前記変化不可パラメータや前記変化可パラメータの比較結果を出力し、
前記比較部から出力された前記比較結果を表示装置に表示させる表示部を更に備える
パラメータ確認装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパラメータ確認装置において、
前記比較部は、前記変化不可パラメータが一致していないときは前記表示部に不一致警告を発令する
パラメータ確認装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパラメータ確認装置において、
前記表示部は、前記不一致警告を前記表示装置の表示画面中に他の情報と併せて表示させる
パラメータ確認装置。
【請求項5】
請求項2に記載のパラメータ確認装置において、
前記比較部は、前記変化可パラメータの前記変化量が前記規定範囲より大きいときは前記表示部に規定範囲外警告を発令する
パラメータ確認装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパラメータ確認装置において、
前記表示部は、前記規定範囲外警告を前記表示装置の表示画面中に他の情報と併せて表示させる
パラメータ確認装置。
【請求項7】
請求項1に記載のパラメータ確認装置において、
前記変化不可パラメータは、患者情報、処方線量、線量制約、治療部位、照射体位、線種、照射技術、ガントリ角度を含む照射機器設定値、の少なくともいずれか一つを含む
パラメータ確認装置。
【請求項8】
請求項1に記載のパラメータ確認装置において、
前記変化可パラメータは、CT値、輪郭形状、線量分布、治療ビームのスポット情報及びコントロールポイント情報、コリメータ位置を含む照射機器設定値の少なくともいずれか一つを含む
パラメータ確認装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のパラメータ確認装置を備える治療計画検証装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のパラメータ確認装置を備える治療計画装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のパラメータ確認装置を備える放射線治療システム。
【請求項12】
照射対象を撮像した第一放射線撮影画像を用いて作成された第一治療計画のパラメータと、前記第一治療計画を作成した後であって放射線照射日までの間で前記照射対象を撮像した第二放射線撮影画像を用いて作成された第二治療計画のパラメータとを比較、確認するプログラムであって、
前記第一治療計画のパラメータと前記第二治療計画のパラメータとの間で、変化してはいけない変化不可パラメータと変化してよい変化可パラメータとを識別する識別ステップと、
前記変化不可パラメータが前記第一治療計画と前記第二治療計画とで一致しているか否か、前記変化可パラメータの変化量が予め定められた規定範囲内であるか否かのうち少なくともいずれか一方を比較する比較ステップと、をパラメータ確認装置に実行させる
プログラム。
【請求項13】
照射対象を撮像した第一放射線撮影画像を用いて作成された第一治療計画のパラメータと、前記第一治療計画を作成した後であって放射線照射日までの間で前記照射対象を撮像した第二放射線撮影画像を用いて作成された第二治療計画のパラメータとを比較、確認する方法であって、
前記第一治療計画のパラメータと前記第二治療計画のパラメータとの間で変化してはいけない変化不可パラメータが前記第一治療計画と前記第二治療計画とで一致しているか否か、前記第一治療計画のパラメータと前記第二治療計画のパラメータとの間で変化してよい変化可パラメータの変化量が予め定められた規定範囲内であるか否かのうち少なくともいずれか一方を比較する比較工程を有する
パラメータ確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラメータ確認装置、治療計画検証装置、治療計画装置及び放射線治療システム、並びにプログラム、パラメータ確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、特にエラーの生じやすい治療計画プロセスを含む放射線治療の全プロセスにおける大量の電子データについて、これが放射線腫瘍医によって意図された真正なものであり、放射線治療システムを意図どおり動作させ、患者への線量投与を正しく完遂するものであることを保証し実践するための技術が記載さ入れている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】中島 健雄,1.プランチェックから考える放射線治療計画への注意点,日本放射線技術学会雑誌,2022,78巻,4号,p.401-411
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線治療では、個々の患者に対して処方及び治療方針を決定したのち、治療計画を作成し、治療計画に基づいて複数の日数に渡り放射線の照射を行う。
【0005】
ここで、治療計画時と実際の照射日との間には日にちが経つため、体内の構造は変化しうる。
【0006】
放射線治療のうち、アダプティブ治療(ART:Adaptive RadioTherapy、若しくはAdaptive Radiation Therapy)では、取得した患者画像に合わせて治療計画パラメータの最適化を行うことで、患者の日々の変化に治療計画を適応させ、患者負担の少ない治療が実現できる。治療計画の修正または再作成を、以後、再計画と呼ぶことがある。
【0007】
アダプティブ治療の中でも、オフラインアダプティブ治療(Offline-ART)では、計画された複数の照射日の間に患者画像の再取得、再計画及び再計画の評価を行う。オンラインアダプティブ治療(Online-ART)では、患者が治療台に寝た状態で当日の患者画像を取得し、再計画の要否を判断した後、再計画作成、計画の評価まで行う。
【0008】
再計画に関して、非特許文献1では放射線治療に関係するパラメータの整合性の担保のための手作業によるチェックリスト活用及び治療計画ソフトウェアの機能を使用した自動チェックについて記載されている。
【0009】
放射線治療においては、作成した治療計画が意図した処方及び治療方針となっているか、治療計画に使用する画像の不備が無いか及び機器の制約条件内のパラメータとなっているかを術者が確認したのちに、作成した治療計画を治療に使用する。
【0010】
これらの確認は、非特許文献1に記載されているように、チェックリスト等を作成することで術者が確認することができる。また、画像の不備や機器の制約については、治療計画ソフトウェアの機能を使用して自動で確認することも可能である。
【0011】
治療計画に共通の項目については、あらかじめ取りうる値を設定しておくことで、ソフトウェアによる自動確認が可能であるが、処方や治療方針に関するパラメータは患者ごとに異なるため、既存の手法では自動化できず、術者による確認が必要となる。
【0012】
通常の治療計画では、患者に対して1つの治療計画を作成するが、ARTにおいては複数回治療計画を作成するため、治療計画の確認回数の増加により、術者の負担が増大することが懸念される。
【0013】
本発明は、放射線治療における術者及び患者の負担を軽減することができるパラメータ確認装置、治療計画検証装置、治療計画装置及び放射線治療システム、並びにプログラム、パラメータ確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、照射対象を撮像した第一放射線撮影画像を用いて作成された第一治療計画のパラメータと、前記第一治療計画を作成した後であって放射線照射日までの間で前記照射対象を撮像した第二放射線撮影画像を用いて作成された第二治療計画のパラメータとを比較、確認するパラメータ確認装置であって、前記第一治療計画のパラメータと前記第二治療計画のパラメータとの間で、変化してはいけない変化不可パラメータと変化してよい変化可パラメータとを識別して記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された複数のパラメータのうち、前記変化不可パラメータが前記第一治療計画と前記第二治療計画とで一致しているか否か、前記変化可パラメータの変化量が予め定められた規定範囲内であるか否かのうち少なくともいずれか一方を比較する比較部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放射線治療における術者及び患者の負担を軽減することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例に係る放射線治療システムの構成の概要を示す図である。
図2】実施例に係る放射線治療システムのうち、パラメータ確認装置の構成の一例を示す図である。
図3】実施例に係る放射線治療システムのうち、パラメータ確認装置の他の構成の一例を示す図である。
図4】実施例に係る放射線治療システムのうち、パラメータ確認装置の更に他の構成の一例を示す図である。
図5】実施例に係る放射線治療システムのうち、パラメータ確認装置によるパラメータ確認結果の表示画面の一例を示す図である。
図6】実施例に係る放射線治療システムのうち、パラメータ確認装置によるパラメータ確認結果の表示画面の他の一例を示す図である。
図7】実施例に係るパラメータ確認方法の処理の流れを示すワークフローである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のパラメータ確認装置、治療計画検証装置、治療計画装置及び放射線治療システム、並びにプログラム、パラメータ確認方法の実施例について図1乃至図7を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0018】
最初に、パラメータ確認装置を備える放射線治療システムの全体構成について図1を用いて説明する。図1に放射線治療システムの概略構成を示す。
【0019】
図1に示す放射線治療システム100は、放射線照射システム2と、放射線治療支援システム3と、を有する。この放射線治療システム100は、放射線治療情報管理システム1と相互に接続される。
【0020】
放射線治療情報管理システム1は、病院などで運用されている治療計画システム(図示省略)から受信した治療計画情報及び治療実績情報を管理する。この放射線治療情報管理システム1は、治療計画情報を放射線照射システム2に送信する。放射線治療は、通常、複数回に分けて行われる。
【0021】
本実施例では、放射線治療は、複数の治療日に分けて行われる。治療計画情報は、患者情報、治療に必要な機器情報及び線量情報等のセットであり、例えば、患者Aに照射する放射線の照射領域、照射エネルギー、照射角度及び照射回数などの情報を含んでいる。
【0022】
放射線照射システム2は、放射線治療情報管理システム1からの治療計画情報に基づいて放射線を照射するシステムであり、照射装置21や制御装置22等を備える。照射装置21は患者Aを支持する治療台211と、患者Aを治療時に撮影するための放射線発生装置212及び放射線検出装置213を有する放射線撮像装置、患者に治療用の放射線を照射するための照射ノズル214Aを有する治療放射線照射装置214を備える。
【0023】
本実施例の放射線照射システム2は、オペレータBの操作により、治療台211に固定された患者Aの体内構造を放射線撮像装置(放射線発生装置212及び放射線検出装置213)によって撮影する。撮影された画像を参照して治療台211を動かし、患者Aを計画された位置に移動させる。その後、照射ノズル214Aから患者Aに治療放射線を照射する。ガントリ215は、照射ノズル214Aを患者の周りを回転させることで、照射ノズル214Aからの放射線の患者Aに対する照射角度を調整する。
【0024】
患者Aに照射される放射線は、特に限定されず、粒子線でもよいし、X線のような電磁波でもよく、様々な放射線が採用可能である。
【0025】
ここで、治療開始前にオペレータBが治療計画の作成指示を操作盤から入力すると、作成指示を受け取った治療計画装置31が患者Aの位置を含む放射線を照射する治療計画を作成する。本実施例では放射線治療支援システム3を構成する治療計画装置31が治療計画を作成する例を説明したが、病院内外に設置した別の治療計画装置が作成指示を受信して治療計画を作成してもよい。
【0026】
なお、この治療計画を、以後、第一治療計画と呼ぶことがある。治療計画装置31を操作するオペレータB(術者)は、放射線治療を行う医者であってもよいし、放射線技師等であってもよい。
【0027】
治療計画装置31は、放射線撮像装置、又は病院の別の撮影装置により撮影された患者Aの画像を用い、体内の構造を把握したうえで、治療放射線の照射方法を含む治療計画を作成する。作成された治療計画を用いて、計画された位置に患者Aを設置し、治療放射線照射装置214により放射線を照射することで、計画通りの線量が患者Aの標的に照射され、また、周辺臓器に対しては計画通りの線量に抑えることができる。
【0028】
放射線治療のフローにおいて、治療計画から複数日に渡る治療日の最終日までの間で患者体内の構造変化が生じる。
【0029】
最初に作成した治療計画を初日から最終日まで使用する従来の治療の治療計画においては、この構造変化を予め想定し、構造変化が起きたとしても標的に所望の線量が照射されるように、標的そのものよりも広い領域に対して照射するように計画する。これにより、最初に作成された治療計画通りに治療最終日まで照射しても標的に所望の線量を付与することが可能となる。
【0030】
一方で、患者体内の構造を把握し直し、それに伴って治療計画を修正または新たに作成するARTを実施すれば、構造変化を見込んだ広い範囲への照射が不要となり、周辺臓器への線量をさらに低減可能である。
【0031】
ARTには、計画された複数に渡る治療日の間に患者画像の再撮影及び再計画するOffline-ARTと、患者が治療台に寝た状態で当日の患者画像の撮影及び再計画するOnline-ARTが存在する。
【0032】
本実施例では、Online-ARTにおける実施例を説明するが、治療方法を限定するものではなく、Offline-ARTもしくはそれ以外の治療方法に適用してもよい。
【0033】
ARTでは、患者Aが治療台211に寝た状態で迅速に計画を修正することが望まれる。本実施例では、放射線撮像装置にて撮影された当日の患者Aの画像を使用し、放射線治療支援システム3によって再計画を行うことで、第二治療計画を作成する例を用いて説明する。
【0034】
第二治療計画とは、第一治療計画を作成した後であって治療当日までまたは治療中に取得した患者Aの放射線撮影画像を用いて、放射線治療支援システム3が再計画する治療計画情報である。
【0035】
第二治療計画の作成に用いる放射線撮影画像は、患者Aに放射線治療を実施する当日までに取得した患者Aの放射線撮影画像であってもよいし、治療当日に治療台211上に載せられた患者Aの放射線撮影画像であってもよい。
【0036】
放射線治療支援システム3は、治療計画装置31、治療計画検証装置32、モニタ33等を有する。
【0037】
治療計画装置31は、当日の患者Aの画像及び治療開始前に作成された治療計画を基に、再計画を行い、第二治療計画を作成する。その後、治療計画検証装置32に第二治療計画を送信する。オペレータBは、治療計画検証装置32に送信された第二治療計画と治療開始前の第一治療計画の線量情報とを比較し、治療に使用する治療計画を選択する。また、再計画と並行して治療台211の移動やガントリ215の回転などの通常治療と同様の治療準備を行ってもよい。
【0038】
ARTにおいては、治療方針及び処方は当初の治療計画と再計画で変更しないため、変化してはいけないパラメータ(以後、「変化不可パラメータ」と記載することがある)となる。また、治療準備作業及び時間削減のため、ガントリ角度などの機器設定の一部は当初の治療計画と再計画とで変更しない場合があるため、変化不可パラメータとなる場合がある。したがって、治療計画パラメータのうち、当初計画と第二治療計画とで変化不可パラメータの値が一致していることを確認する必要がある。
【0039】
また、変化しても問題ないパラメータ(以後、「変化可パラメータ」と記載することがある)には、照射対象そのものや照射対象迄の体内の経路の時間変化による線量分布などがあるが、その変化は必ずしも許容されるわけではなく、許容幅には限界があることがある。そこで、治療計画パラメータのうち、当初計画と再計画とで変化可パラメータの変化量が許容範囲内であることを確認する必要がある。
【0040】
図2乃至図4はパラメータ確認装置の構成の一例を示す図である。本実施例では、図2に示すように、再計画後の線量分布等の検証を行うための治療計画検証装置32内に、再計画でのパラメータの検証などの治療計画の確認作業を支援するためのパラメータ確認装置34を備える。
【0041】
パラメータ確認装置34は、図2に示すように治療計画検証装置32内の構成である必要は無く、例えば、図3に示すようにパラメータ確認装置34Aを治療計画装置31Aもしくは治療計画システムが備える形態や、図4に示すパラメータ確認装置34Bのように通信装置35Bを介して治療計画装置31と接続された独立のシステムの形態でもよく、特に限定されない。
【0042】
パラメータ確認装置34は照射対象を撮像した第一放射線撮影画像を用いて作成された第一治療計画のパラメータと、第一治療計画を作成した後であって放射線照射日までの間で照射対象を撮像した第二放射線撮影画像を用いて作成された第二治療計画のパラメータとを比較、確認するための装置であって、図2に示すように、記憶部341、比較部342、表示部343を有する。なお、図3に示すパラメータ確認装置34Aや図4に示すパラメータ確認装置34Bについても同様の構成であるため、詳細は省略する。
【0043】
記憶部341は、第一治療計画のパラメータと第二治療計画のパラメータとの間で、変化してはいけない変化不可パラメータと変化してよい変化可パラメータとを識別して記憶している。例えば、パラメータ確認対象となる治療計画関連ファイル、確認対象となるパラメータ、パラメータの確認方法及び規定値を記憶する。対象とする治療計画関連ファイルは、治療計画作成に使用するファイルであれば特に限定せず、放射線の照射パラメータ等が保存された治療計画ファイル、治療計画に使用する患者画像ファイル、患者画像上の臓器輪郭情報ファイルも対象とする。また、後述する、比較部342による確認結果も記憶する。
【0044】
変化不可パラメータには、患者情報、処方線量、線量制約、治療部位、照射体位、線種、照射技術、ガントリ角度を含む照射機器設定値、の少なくともいずれか一つが含まれる。これに対し、変化可パラメータには、CT値、輪郭形状、線量分布、治療ビームのスポット情報及びコントロールポイント情報、コリメータ位置を含む照射機器設定値の少なくともいずれか一つが含まれる。
【0045】
なお、変化不可パラメータのうち、ガントリ角度を含む照射機器設定値は、X線治療器のように、ガントリが露出していない治療器では変化可パラメータに分類されるため、治療に用いられる放射線の種類や照射系の構成により、変化不可パラメータと変化可パラメータとは変わることがあり、完全に固定されるわけではない。
【0046】
これら変更可パラメータと変更不可パラメータとは、製造時から固定であっても、その後の運用段階で変更できてもよいが、変更可能とする場合は、製造時から変更不可パラメータを変更可パラメータに変えることは許容せずに、変更可パラメータから変更不可パラメータへと変更することのみを可能とすることが望ましい。
【0047】
変更は、術者でもシステムを製造したメーカのサービスパーソンでもよく、運用主体の治療方針等で適宜変更できることが望ましい。
【0048】
比較部342は、記憶部341に保存された設定に基づき、記憶部341に記憶された複数のパラメータのうち、変化不可パラメータが第一治療計画と第二治療計画とで一致しているか否か、変化可パラメータの第一治療計画から第二治療計画での変化量が予め定められた規定範囲内であるか否かのうち少なくともいずれか一方の比較による確認を行う。この比較部342が、好適には変化不可パラメータが第一治療計画と第二治療計画とで一致しているか否か、変化可パラメータの変化量が予め定められた規定範囲内であるか否かのうち少なくともいずれか一方を比較する比較ステップ、比較工程の実行主体となる。
【0049】
パラメータの確認方法は、図7を参照してのちに詳述するように、そのパラメータが当初の治療計画と再計画で変化してもよいかどうかによって二つに分かれる。
【0050】
変化不可パラメータについては、第二治療計画と第一治療計画の間の比較による確認を行い、変化可パラメータについては、規定値の範囲内であるかや、第二治療計画のパラメータと規定値の比較による確認を行う。設定値との比較確認の場合は、許容される値を設定値として記憶する。パラメータの規定値はパラメータの種類によって、数値または文字列を設定できる。規定値は複数設定してもよいし、数値などの範囲を設定してもよい。また、変化不可パラメータに関しても、パラメータが規定値の範囲内であるかを確認できてもよい。
【0051】
表示部343は、記憶部341に保存された、比較部342から出力された比較結果をモニタ33等に表示するための表示制御を実行する部分である。表示方法は結果一覧を表として表示してもよいし、図やグラフ等の形式で表示してもよい。治療計画装置31もしくは治療計画検証装置32において、治療計画に関する情報をモニタ33に表示する場合は、確認結果と関連する表示領域を判定し、適切な表示領域に表示してもよい。
【0052】
次いで、図5及び図6を用いて表示例について説明する。図5及び図6はパラメータ確認装置によるパラメータ確認結果の表示画面の一例を示す図である。
【0053】
比較部342は、変化不可パラメータが一致していないときは表示部343に不一致警告を発令し、変化可パラメータの変化量が規定範囲より大きいときは表示部343に規定範囲外警告を発令する。これらの不一致警告や規定範囲外警告を受けて、表示部343は、図5図6に示すように、不一致警告をモニタ33の表示画面330中に表示させたり、規定範囲外警告をモニタ33の表示画面330中に表示させる。
【0054】
図5に示すように、モニタ33に表示される表示画面330では、「変化不可パラメータが変化していないか否かのチェック結果」が表示される変化不可パラメータ情報表示エリア331や、「変化可パラメータの変化量が規定範囲内であるか否かのチェック結果」が表示される変化可パラメータ情報表示エリア332が表示される。
【0055】
変化不可パラメータ情報表示エリア331には、例えば、「患者ID」や「ガントリ角度」等のパラメータ名と、その隣に第一治療計画のパラメータ値と第二治療計画でのパラメータ値とを比較可能なように並べて表示される。異なる値の場合はハイライト表示したり、文字色を変える等して、把握しやすいようにすることができる。
【0056】
変化可パラメータ情報表示エリア332には、変化不可パラメータ情報表示エリア331と同様に、例えば、「コントロールポイント」、「コリメータ位置」等のパラメータ名と、その隣に規定範囲(例えば、最大値と最小値、あるいは期待値)を表示して、変化量が規定範囲内かが確認できるように表示される。同様に、変化量が規定範囲外の場合はハイライト表示したり、文字色を変える等して、把握しやすいようにすることができる。
【0057】
比較結果の表示は図5のように比較結果のみを表示する形態に限られない。図6に示すように、表示部343は、不一致警告をモニタ33の表示画面330A中に他の情報と併せて表示させたり、規定範囲外警告をモニタ33の表示画面330A中に他の情報と併せて表示させることができる。
【0058】
図6に示すように、モニタ33に表示される表示画面330Aでは、患者ID等の照射対象に関する情報が表示される照射対象情報表示エリア333Aや、照射対象の周囲の重要臓器に関する情報が表示される関心領域情報表示エリア334A、治療計画や照射に関する様々な情報が表示される各種詳細情報表示エリア335A、「変化不可パラメータが変化していないか否かのチェック結果」が表示される変化不可パラメータ情報表示エリア331A、「変化可パラメータの変化量が規定範囲内であるか否かのチェック結果」が表示される変化可パラメータ情報表示エリア332Aが表示される。
【0059】
なお、他の情報と併せて表示する場合、変化不可パラメータ情報表示エリア331Aや変化可パラメータ情報表示エリア332Aを1つの表示エリアにまとめて表示してもよい。
【0060】
また、表示画面330,330Aでは、変化不可パラメータが変化している、変化可パラメータの変化量が規定範囲外である旨の警告文や警告用のポップアップなどを表示することができる。
【0061】
パラメータ表示エリア以外のエリアで表示されている変化不可パラメータが変化しているまたは、変化可パラメータの変化量が規定値外である場合も、そのパラメータをハイライト表示したり、文字色を変える等して、把握しやすいようにすることができる。
【0062】
これら再計画での線量分布の検証結果の提供とパラメータの検証結果を表示する表示画面330,330Aの表示タイミングは、線量分布の演算を平行して処理した状態でパラメータ検証結果の表示をして、その後に線量分布の検証結果を表示することができるが、これに限定されず、同時、あるいはパラメータの検証結果が問題ないと判定された後に線量分布の演算を開始する形態とすることができる。
【0063】
次に、図7のフローチャートを参照して、本実施例のパラメータ確認装置のフローの一例について説明する。図7はパラメータ確認方法の処理の流れを示すワークフローである。
【0064】
まず、オペレータBは、患者Aが治療台211上に固定されたことを確認すると、再計画を実行するための指示指令を入力部に入力する。
【0065】
入力部からの指示指令を受け取った治療計画装置31は、当日の患者画像情報を制御装置22から取得すると、治療計画装置31は、取得した患者画像及び治療開始前に作成された治療計画(第一治療計画)に基づいて、第二治療計画を作成する(ステップS0)。
【0066】
次に、治療計画検証装置32は、治療計画装置31で作成された第二治療計画を取得すると、パラメータ確認装置34は、記憶部341に保存されたパラメータ確認のための設定ファイルを読み込む(ステップS1)。パラメータ確認装置34は第二治療計画を読み込み、確認対象のパラメータの値を取得する(ステップS2)。
【0067】
比較部342は設定ファイルから取得したパラメータが変化不可パラメータと変化可パラメータとのいずれかを確認する(ステップS3)。
【0068】
ステップS3で変化不可パラメータと判定された場合は、比較部342はパラメータの値が第一治療計画と第二治療計画とで一致しているか否かを確認する(ステップS41)。パラメータ値が一致すると判定された場合は、記憶部341が判定結果を記憶する(ステップS42)。不一致と判定された場合は、記憶部341が判定結果を記憶する(ステップS43)。
【0069】
ステップS3で変化可パラメータと判定された場合は、比較部342はパラメータの値が規定値の範囲内であるか否かを確認する(ステップS51)。パラメータ値が規定値範囲内と判定された場合は、記憶部341が判定結果を記憶する(ステップS52)。規定値範囲外と判定された場合は、記憶部341が判定結果を記憶する(ステップS53)。記憶部341は判定結果に加え、第一治療計画及び第二治療計画のパラメータ値を記憶してもよい。
【0070】
パラメータ確認装置34の比較部342は、すべての対象パラメータの確認が終了したか否かを判定する(ステップS6)。未確認のパラメータがあると判定された場合は、比較部342は次の未確認パラメータの値を取得する(ステップS7)。すべての対象パラメータの確認が終了していると判定された場合は、パラメータの確認を終了する(ステップS8)。
【0071】
パラメータ確認装置34の表示部343は、対象パラメータの判定結果をモニタ33に表示する(ステップS9)。
【0072】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0073】
上述した本実施例のパラメータ確認装置34は、照射対象を撮像した第一放射線撮影画像を用いて作成された第一治療計画のパラメータと、第一治療計画を作成した後であって放射線照射日までの間で照射対象を撮像した第二放射線撮影画像を用いて作成された第二治療計画のパラメータとを比較、確認する装置であって、第一治療計画のパラメータと第二治療計画のパラメータとの間で、変化してはいけない変化不可パラメータと変化してよい変化可パラメータとを識別して記憶する記憶部341と、記憶部341に記憶された複数のパラメータのうち、変化不可パラメータが第一治療計画と第二治療計画とで一致しているか否か、変化可パラメータの変化量が予め定められた規定範囲内であるか否かのうち少なくともいずれか一方を比較する比較部342と、を備える。
【0074】
放射線治療では、治療計画後から患者に照射するまでに、作成した治療計画が治療方針に沿っているか等の健全性や妥当性を確認する必要があるが、本構成により、プランの健全性及び妥当性確認を自動化することができ、術者及び患者の負担を軽減することができる。
【0075】
また、一般的な放射線治療では、治療計画直後に照射しないため、治療計画の確認を行うのに十分な時間が確保できる。しかしながら、Online-ARTでは、患者が治療台に寝た状態で治療計画を作成するため、治療計画の確認を迅速に行う必要がある。確認が遅延すると、治療時間が増加し、患者は治療時の体勢維持のために負担が増加するが、本構成によれば治療時間が短縮され、患者の負担を軽減することができる。
【0076】
また、ARTでは、治療対象の部位や治療目的などは変化させずに再計画する。更に、Online-ARTでは、当初計画からセットアップや機器設定に関係するパラメータを変更せずに再計画することで、再度のセットアップや機器設定作業にかかる時間を削減することができる。しかしながら、そのためには一般的な放射線治療時の確認に加え、当初の治療計画からパラメータが変化していないことを確認する必要がある。既存技術によっては上述の治療計画間の整合性を確認することは困難であったが、本構成によって整合性を確認することが可能となり、セットアップや機器設定による術者の負担を増加させずにOnline-ARTの実施が可能となる。
【0077】
また、比較部342は、変化不可パラメータや変化可パラメータの比較結果を出力し、比較部342から出力された比較結果をモニタ33に表示させる表示部343を更に備えるため、術者は比較結果がどのような結果であったかを一目で確認できることから、その負担が軽減される。
【0078】
更に、比較部342は、変化不可パラメータが一致していないときは表示部343に不一致警告を、変化可パラメータの変化量が規定範囲より大きいときは表示部343に規定範囲外警告を発令することで、術者は比較結果をより分かりやすい形で把握することができる。
【0079】
また、表示部343は、不一致警告をモニタ33の表示画面330A中に他の情報と併せて、規定範囲外警告をモニタ33の表示画面330A中に他の情報と併せて表示させることにより、システムがパラメータと関連する治療計画情報と同じ表示部を適切に選択し、パラメータ確認結果を出力することで、術者による治療計画結果の妥当性判断と同時にパラメータの健全性を確認することができ、治療時間がより短縮され、術者の負担が少ない治療が可能になる。
【0080】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【0081】
本発明実施例は以下の態様であってもよい。
【0082】
(1)照射対象を撮像した第一放射線撮影画像を用いて作成された第一治療計画のパラメータと、前記第一治療計画を作成した後であって放射線照射日までの間で前記照射対象を撮像した第二放射線撮影画像を用いて作成された第二治療計画のパラメータとを比較、確認するパラメータ確認装置であって、前記第一治療計画のパラメータと前記第二治療計画のパラメータとの間で、変化してはいけない変化不可パラメータと変化してよい変化可パラメータとを識別して記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された複数のパラメータのうち、前記変化不可パラメータが前記第一治療計画と前記第二治療計画とで一致しているか否か、前記変化可パラメータの変化量が予め定められた規定範囲内であるか否かのうち少なくともいずれか一方を比較する比較部と、を備えるパラメータ確認装置。
【0083】
(2)(1)記載のパラメータ確認装置において、前記比較部は、前記変化不可パラメータや前記変化可パラメータの比較結果を出力し、前記比較部から出力された前記比較結果を表示装置に表示させる表示部を更に備える。
【0084】
(3)(1)または(2)記載のパラメータ確認装置において、前記比較部は、前記変化不可パラメータが一致していないときは前記表示部に不一致警告を発令する。
【0085】
(4)(3)に記載のパラメータ確認装置において、前記表示部は、前記不一致警告を前記表示装置の表示画面中に他の情報と併せて表示させる。
【0086】
(5)(2)乃至(4)のいずれかに記載のパラメータ確認装置において、前記比較部は、前記変化可パラメータの前記変化量が前記規定範囲より大きいときは前記表示部に規定範囲外警告を発令する。
【0087】
(6)(5)に記載のパラメータ確認装置において、前記表示部は、前記規定範囲外警告を前記表示装置の表示画面中に他の情報と併せて表示させる。
【0088】
(7)(1)乃至(6)のいずれかに記載のパラメータ確認装置において、前記変化不可パラメータは、患者情報、処方線量、線量制約、治療部位、照射体位、線種、照射技術、ガントリ角度を含む照射機器設定値、の少なくともいずれか一つを含む。
【0089】
(8)(1)乃至(7)のいずれかに記載のパラメータ確認装置において、前記変化可パラメータは、CT値、輪郭形状、線量分布、治療ビームのスポット情報及びコントロールポイント情報、コリメータ位置を含む照射機器設定値の少なくともいずれか一つを含む。
【符号の説明】
【0090】
1…放射線治療情報管理システム
2…放射線照射システム
3…放射線治療支援システム
21…照射装置
22…制御装置
31,31A…治療計画装置
32…治療計画検証装置
33…モニタ
34,34A,34B…パラメータ確認装置
35B…通信装置
100…放射線治療システム
211…治療台
212…放射線発生装置
213…放射線検出装置
214…治療放射線照射装置
214A…照射ノズル
215…ガントリ
330,330A…表示画面
331,331A…変化不可パラメータ情報表示エリア
332,332A…変化可パラメータ情報表示エリア
333A…照射対象情報表示エリア
334A…関心領域情報表示エリア
335A…種詳細情報表示エリア
341…記憶部
342…比較部
343…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7