(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135742
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 50/42 20210101AFI20240927BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240927BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M50/42
H01M50/403 D
H01M50/449
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046585
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】松村 優佑
(72)【発明者】
【氏名】植村 幸司
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正浩
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC04
5H021EE06
5H021HH01
(57)【要約】
【課題】耐熱収縮性及び耐電解液溶解性に優れたセパレータが得られるリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリルアミド、及びN-メチロール(メタ)アクリルアミドを必須原料とするアクリル重合体(A)と、水性媒体(B)とを含有するリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物であって、前記アクリル重合体(A)の単量体原料中の(メタ)アクリルアミドが90~99.5質量%であり、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが0.5~5質量%であることを特徴とするリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミド、及びN-メチロール(メタ)アクリルアミドを必須原料とするアクリル重合体(A)と、水性媒体(B)とを含有するリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物であって、前記アクリル重合体(A)の単量体原料中の(メタ)アクリルアミドが90~99.5質量%であり、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが0.5~5質量%であることを特徴とするリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アクリル重合体(A)の原料中の重合開始剤が、単量体原料100質量部に対し、0.2質量部以下である請求項1記載のリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物を含有するリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用スラリー。
【請求項4】
請求項3記載のリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用スラリーを用いて得られた耐熱層を有するリチウムイオン二次電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン多孔膜は優れた電気絶縁性、イオン透過性を示すことから、電池やコンデンサー等におけるセパレータとして広く利用されている。特に近年では、携帯機器の多機能化、軽量化に伴い、その電源として高出力密度、高容量密度のリチウムイオン二次電池が使用されており、このような電池用セパレータにも主としてポリオレフィン多孔膜が用いられている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は高い出力密度、容量密度を持つ反面、電解液に有機溶媒を用いているために短絡や過充電などの異常事態に伴う発熱によって電解液が分解し、最悪の場合には発火に至ることがある。このような事態を防ぐため、リチウムイオン二次電池にはいくつかの安全機能が組み込まれており、その中の一つに、セパレータのシャットダウン機能がある。シャットダウン機能とは電池が異常発熱を起こした際、セパレータの微多孔が熱溶融等により閉塞して電解液内のイオン伝導を抑制し、電気化学反応の進行をストップさせる機能のことである。一般にシャットダウン温度が低いほど安全性が高いとされ、ポリエチレンがセパレータの成分として用いられている理由の一つに適度なシャットダウン温度を持つという点が挙げられる。
【0004】
しかし、高いエネルギーを有する電池においては、シャットダウンにより電気化学反応の進行をストップさせても電池内の温度が上昇し続け、その結果、セパレータが熱収縮して破膜し、両極が短絡(ショート)するという問題がある。
【0005】
安全性の高い電池を製造することを目的として、熱可塑性樹脂を主成分とする第一の多孔層に、耐熱層を積層してセパレータを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、電池の高容量化が進んだ高容量電池は、異常発熱時の発熱量が大きく、より高温環境となり易い。本公報に記載されたセパレータは、耐熱層を有しない通常のセパレータに比して安全性が向上すると考えられるものの、セパレータの熱収縮を高温環境下においても抑制し、セパレータの破膜によって両極が短絡(ショート)するおそれを低減する観点からは、なお改良の余地を有するものであった。
【0007】
これに対し、単量体群100モルに対して、(メタ)アクリルアミド基含有化合物を60モル%以上、及び、ビニル基、又は(メタ)アクリロキシ基を有する二重結合含有トリヒドロキシシリル化合物を0.05~0.80モル%含む単量体群の重合物である、水溶性トリヒドロキシシリル基含有ポリ(メタ)アクリルアミドを含む、リチウムイオン電池用バインダー水溶液が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
この水溶液は、150℃におけるセパレータの熱収縮を抑制でき、基材密着性やレート特性も比較的良好なものであったが、近年さらに厳しい耐熱条件(180℃)での要求がなされており、これを達成できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3756815号
【特許文献2】特許第7027955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱収縮性及び耐電解液溶解性に優れたセパレータが得られるリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアクリル重合体、及び水性媒体を含有する水性樹脂組成物を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリルアミド、及びN-メチロール(メタ)アクリルアミドを必須原料とするアクリル重合体(A)と、水性媒体(B)とを含有するリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物であって、前記アクリル重合体(A)の単量体原料中の(メタ)アクリルアミドが90~99質量%であり、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが0.5~5質量%であることを特徴とするリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物は、耐熱収縮性及び耐電解液溶解性に優れるセパレータが得られることから、リチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層のバインダーに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物は、(メタ)アクリルアミド、及びN-メチロール(メタ)アクリルアミドを必須原料とするアクリル重合体(A)と、水性媒体(B)とを含有するリチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物であって、前記アクリル重合体(A)の単量体原料中の(メタ)アクリルアミドが90~99質量%であり、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが0.5~5質量%であるものである。
【0015】
なお、本発明において、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドとメタクリルアミドの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルとメタクリロイルの一方又は両方をいう。
【0016】
前記アクリル重合体(A)の単量体原料中の(メタ)アクリルアミドは、90~999.5質量%であるが、耐熱収縮性及び耐電解液溶解性がより向上することから、93~99.5質量%が好ましく、95~99.5質量%がより好ましい。
【0017】
前記アクリル重合体(A)の単量体原料中のN-メチロール(メタ)アクリルアミドは、0.5~5質量%であるが、耐熱収縮性及び耐電解液溶解性がより向上することから、0.5~3質量%が好ましい。
【0018】
前記アクリル重合体(A)は、(メタ)アクリルアミド、及びN-メチロール(メタ)アクリルアミドを必須原料とするが、これら以外のその他の単量体を単量体原料として使用してもよい。
【0019】
前記その他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸などのカルボキシル基を有する単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、末端に水酸基を有するラクトン変性(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシメチルアミド基を有する単量体、N-ブトキシメチルアクリルアミド等のN-アルコキシメチルアミド基を有する単量体などの窒素原子を有する単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレート;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する単量体;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレン、酢酸ビニル等のビニル単量体;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、これらの単量体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0020】
前記アクリル重合体(A)の単量体原料中の前記その他の単量体は、5質量%未満が好ましい。
【0021】
前記アクリル重合体(A)の製造方法としては、各種の方法が挙げられるが、簡便に前記アクリル重合体(A)を得られることから、水中重合法が好ましい。
【0022】
水中重合法により、前記アクリル重合体(A)を得る方法としては、例えば、前記アクリル重合体(A)の原料となる前記単量体(a1)等を、水性媒体中で、重合開始剤存在下、50~100℃の温度でラジカル重合する方法が挙げられる。
【0023】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物などが挙げられる。なお、これらの重合体開始剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0024】
前記アクリル重合体(A)の原料中の前記重合開始剤は、耐熱収縮性及び耐電解液溶解性がより向上することから、単量体100質量部に対し、0.2質量部以下が好ましく、0.02~0.18質量部が好ましく、0.05~0.15質量部がより好ましい。
【0025】
前記水性媒体(B)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、または、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみを使用することが特に好ましい。
【0026】
前記水性媒体(B)は、前記アクリル重合体(A)を水中重合法等により製造する際に使用される水性媒体をそのまま使用することが、簡便であり好ましい。
【0027】
また、必要に応じて脱溶剤工程を経ることにより、本発明の樹脂組成物中の有機溶剤量を低減することができる。
【0028】
前記方法で得られた本発明の水性樹脂組成物は、塗工作業性がより向上することから、水性樹脂組成物の全量に対して前記アクリル重合体(A)を3~30質量%の範囲で含有するものが好ましく、5~10質量%の範囲で含有するものがより好ましい。
【0029】
また、本発明の水性樹脂組成物は、塗工作業性がより向上することから、水性樹脂組成物の全量に対して前記水性媒体(B)を97~70質量%の範囲で含有するものが好ましく、95~90質量%の範囲で含有するものがより好ましい。
【0030】
本発明の水性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化剤、硬化触媒、潤滑剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤等の添加剤、pH調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、補強剤、触媒、抗菌剤、防カビ剤、防錆剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、顔料を併用することができる。
【0031】
本発明の水性樹脂組成物は、耐熱収縮性及び耐電解液溶解性に優れるセパレータが得られることから、リチウムイオン二次電池耐熱層のバインダーとして好適に用いることができる。
【0032】
本発明の水性樹脂組成物に無機充填剤を添加することで、優れた耐熱性を有する耐熱層が得られる。
【0033】
前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、焼成カオリンなどを使用することができる。これらの中でも、焼成カオリンまたはアルミナを使用することが、より一層、耐熱性に優れた耐熱層を形成するうえで好ましい。
【0034】
前記無機充填剤と本発明の水性樹脂組成物との固形分質量比が1/1,000~1/5となる範囲で使用することが、イオンを伝導可能な程度の連通孔を備えたセパレータを形成し、かつ耐熱性に優れたセパレータを形成するうえで好ましい。
【実施例0035】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0036】
(実施例1)
攪拌機、温度計および冷却器、窒素ブローを取り付けた2.0Lの反応容器中に、イオン交換水1000.0質量部を仕込み70℃まで加熱したのち、これにアクリルアミド97.0質量部、イタコン酸1.0質量部、N-メチロールアクリルアミド2.0質量部、過硫酸アンモニウム0.1質量部、及びイオン交換水200.0質量部の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了してから3時間経過後、冷却を行った。得られた水性樹脂組成物(1)の不揮発分は7.8質量%、粘度は5500mPa・sであった。
【0037】
[耐熱層スラリーの調製]
ホモディスパーで5,000回転にて撹拌しながら上記で合成した水性樹脂組成物(1)37.3質量部とイオン交換水117.3質量部にアルミナ(住友化学株式会社製「AKP-3000」)100質量部を徐々に加えた。15分間分散を行うことで耐熱層スラリー(1)を調製した。
【0038】
(実施例2)
攪拌機、温度計および冷却器、窒素ブローを取り付けた2.0Lの反応容器中に、イオン交換水1000.0質量部を仕込み70℃まで加熱したのち、これにアクリルアミド99.0質量部、N-メチロールアクリルアミド1.0質量部、過硫酸アンモニウム0.1質量部、及びイオン交換水200.0質量部の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了してから3時間経過後、冷却を行った。得られた水性樹脂組成物(2)の不揮発分は7.7質量%、粘度は3500mPa・sであった。
【0039】
[耐熱層スラリーの調製]
ホモディスパーで5,000回転にて撹拌しながら上記で合成した水性樹脂組成物(2)37.8質量部とイオン交換水116.7質量部にアルミナ(住友化学株式会社製「AKP-3000」)100質量部を徐々に加えた。15分間分散を行うことで耐熱層スラリー(2)を調製した。
【0040】
(比較例1:リチウムイオン二次電池セパレータ耐熱層用水性樹脂組成物(R1)の合成及び評価)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応装置に、イオン交換水100g、ビニルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製「KBM-1003」)0.42g(0.0028mol)、硝酸1.23g、メタノール1.00gを入れて25℃で0.5時間反応を行い、二重結合含有トリヒドロキシシリル化合物を含む均一な水溶液を得た。
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応装置に、イオン交換水1011g、50%アクリルアミド水溶液400g(2.81mol)、メタリルスルホン酸ナトリウム0.223g(0.0014mol)を入れた。次に、系内に上記で得た二重結合含有トリヒドロキシシリル化合物を加えた。その時のpHは2.2であった。窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、50℃まで昇温した。そこに2,2’-アゾビス-2-アミジノプロパン二塩酸塩(日宝化学株式会社製「NC-32」)2.0g、イオン交換水30gを投入し、80℃まで昇温し3.0時間反応を行った。不揮発分13.1%、粘度(25℃)が24,000mPa・sの水溶性トリヒドロキシシリル基含有ポリ(メタ)アクリルアミドを含有する水溶液を得た。
【0041】
[耐熱層スラリーの調製]
ホモディスパーで5,000回転にて撹拌しながら1質量%カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学株式会社性「DN-800H」)100質量部にアルミナ(住友化学株式会社製「AKP-50」)100質量部を徐々に加え、分散を行った。これらが均一混合された後、上記で合成した水性樹脂組成物(R1)68.7質量部、イオン交換水256.3質量部を添加し、均一に混合し、耐熱層スラリー(R1)を調製した。
【0042】
[耐熱層を有するセパレータの作製]
厚み12μmのポリエチレンセパレータ基材両面に上記で得た耐熱層スラリーをバーコーターにて乾燥後の膜厚が4μmとなるように塗工し、耐熱層を有するセパレータを得た。乾燥温度は60℃、乾燥時間は5分間とした。
【0043】
[耐熱収縮性の評価]
上記で作成した耐熱層を有するセパレータを5cm角に切り、厚紙に挟んだ状態で180℃温風乾燥機に1時間静置し、耐熱性試験を行った。試験後のセパレータの縦、横各々の長さを測定し、縦方向の収縮率(MD収縮率(%))及び横方向の収縮率(TD収縮率(%))を算出し、耐熱収縮性を評価した。
収縮率(%)=試験後のセパレータの長さ/試験前のセパレータの長さ×100(%)
【0044】
[耐電解液溶解性の評価]
上記で得た水性樹脂組成物から厚さ150μmの被膜を作製し、該被膜を電解液溶剤(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/エチルメチルカーボネート=40/20/40(質量比))に60℃、72時間浸漬し、その後取り出して被膜のゲル分率、被膜の膨張率(重量換算)を算出し、耐電解液溶解性を評価した。
なお、ゲル分率が高い程、耐電解液溶解性が良好であり、膨張率が低い程、耐電解液溶解性が良好である。
ゲル分率(%)=浸漬後の被膜を乾燥した後の被膜重量/浸漬前の被膜重量×100
膨張率(%)=(浸漬後の被膜重量-浸漬前の被膜重量)/浸漬前の被膜重量×100
【0045】
上記の実施例1~2及び比較例1の評価結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
本発明の水性樹脂組成物である実施例1及び2のものから得られる耐熱層は、耐熱収縮性及び耐電解液溶解性に優れることが確認された。
【0048】
一方、比較例1は、アクリル重合体(A)の単量体原料として、アクリルアミドを本発明の上限より多く使用し、N-メチロール(メタ)アクリルアミドを使用しない例であるが、得られる耐熱層の耐熱収縮性及び耐電解液溶解性が劣ることが確認された。