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特開2024-135812マイクロ波加熱装置、被加熱物の発熱促進方法、誘電体成型物
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  • 特開-マイクロ波加熱装置、被加熱物の発熱促進方法、誘電体成型物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135812
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】マイクロ波加熱装置、被加熱物の発熱促進方法、誘電体成型物
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/74 20060101AFI20240927BHJP
   H05B 6/64 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H05B6/74 A
H05B6/64 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046687
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】福本 和貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀越 智
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA02
3K090EA04
3K090EB19
3K090FA02
(57)【要約】
【課題】マイクロ波加熱室内に設置される被加熱物の発熱を促進することができる、マイクロ波加熱装置、マイクロ波加熱方法、および誘電体成型物を提供する。
【解決手段】マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部に接続されたマイクロ波加熱室20と、マイクロ波加熱室20内に設置される比誘電率が4以上30以下である誘電体成型物1と、を備えるマイクロ波加熱装置10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部に接続されたマイクロ波加熱室と、前記マイクロ波加熱室内に設置される比誘電率が4以上30以下である誘電体成型物と、を備えるマイクロ波加熱装置。
【請求項2】
前記マイクロ波発生部に接することなく誘電体成型物が配置される、請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項3】
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部に接続されたマイクロ波加熱室と、を備えるマイクロ波加熱装置に用いられ、前記マイクロ波加熱室内に設置される被加熱物の近傍に比誘電率が4以上30以下である誘電体成型物を配置し、前記被加熱物の発熱を促進する、被加熱物の発熱促進方法。
【請求項4】
前記マイクロ波発生部に接することなく、前記誘電体成型物を配置する、請求項3に記載の被加熱物の発熱促進方法。
【請求項5】
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部に接続されたマイクロ波加熱室と、を備えるマイクロ波加熱装置に用いられ、前記マイクロ波加熱室内に設置される被加熱物の近傍に配置され、前記被加熱物の発熱を促進する、比誘電率が4以上30以下である、誘電体成型物。
【請求項6】
前記マイクロ波発生部に接することなく配置される、請求項5に記載の誘電体成型物。
【請求項7】
前記誘電体成型物の長さは、前記マイクロ波の1波長の125%未満である、請求項6に記載の誘電体成型物。
【請求項8】
前記誘電体成型物の厚みは、前記マイクロ波の1波長の1.0%以上である、請求項6に記載の誘電体成型物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波加熱装置、被加熱物の発熱促進方法、および誘電体成型物に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波加熱装置は、加熱対象となる被加熱物にマイクロ波を照射し、吸収させることにより、被加熱物を加熱する装置である。家庭用の電子レンジをはじめとする加熱用途のマイクロ波加熱装置では、通常、ISM帯(Industrial-scientific-medicalband)と呼ばれる周波数帯域が用いられる。ISM帯は、電波漏洩に対する規制が他のバンドに比べて緩和されている。国内において、マイクロ波加熱装置では、主に2400MHzから2500MHzの周波数帯域が用いられる。2400MHzから2500MHzの周波数帯域では、周囲の空間が空気である場合、マイクロ波の波長は、およそ12cmとなる。
【0003】
マイクロ波加熱室内に放射されたマイクロ波は、マイクロ波加熱室の金属壁において多重反射して定在波を形成し、マイクロ波加熱室内の空間において、電場および磁場の振幅が大きな領域と小さな領域の分布が生じる。しかしながら、被加熱物の大きさが波長に比べて十分に小さい場合、定在波の振幅が大きな領域に被加熱物をピンポイントで設置しなければならない。そのため、特に常時、電磁界分布が変化するマルチモード型のマイクロ波加熱装置では、被加熱物を効率的に加熱することは難しい。
【0004】
特許文献1および非特許文献1では、アンテナと称される誘電体部材がマイクロ波発生部と接続されている必要がある。加えて、特許文献1では、アンテナに加えて、さらに1つの誘電体部材層が設けられている。しかしながら、特許文献1では、誘電体部材層は粒子状の形状となっており、単にマイクロ波加熱室内に誘電体板を配置することにより、被加熱物の加熱を促進することは行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6597199号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】マイクロ波加熱のための液中照射用矩形アンテナの最適設計、村井正徳、松岡秀治、山中恭二、平野隆司、山中義也、内一哲哉、高木敏行、日本AEM学会誌、Vol.24、No.4(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、マイクロ波加熱室内に設置される被加熱物の発熱を促進することができる、マイクロ波加熱装置、マイクロ波加熱方法、および誘電体成型物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部に接続されたマイクロ波加熱室と、前記マイクロ波加熱室内に設置される比誘電率が4以上30以下である誘電体成型物と、を備えるマイクロ波加熱装置。
[2]前記マイクロ波発生部に接することなく誘電体成型物が配置される、[1]に記載のマイクロ波加熱装置。
[3]マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部に接続されたマイクロ波加熱室と、を備えるマイクロ波加熱装置に用いられ、前記マイクロ波加熱室内に設置される被加熱物の近傍に比誘電率が4以上30以下である誘電体成型物を配置し、前記被加熱物の発熱を促進する、被加熱物の発熱促進方法。
[4]前記マイクロ波発生部に接することなく、前記誘電体成型物を配置する、[3]に記載の被加熱物の発熱促進方法。
[5]マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部に接続されたマイクロ波加熱室と、を備えるマイクロ波加熱装置に用いられ、前記マイクロ波加熱室内に設置される被加熱物の近傍に配置され、前記被加熱物の発熱を促進する、比誘電率が4以上30以下である、誘電体成型物。
[6]前記マイクロ波発生部に接することなく配置される、[5]に記載の誘電体成型物。
[7]前記誘電体成型物の長さは、前記マイクロ波の1波長の125%未満である、[5]または[6]のいずれかに記載の誘電体成型物。
[8]前記誘電体成型物の厚みは、前記マイクロ波の1波長の1.0%以上である、[5]~[7]のいずれかに記載の誘電体成型物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マイクロ波加熱室内に設置される被加熱物の発熱を促進することができる、マイクロ波加熱装置、マイクロ波加熱方法、および誘電体成型物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0012】
[マイクロ波加熱装置]
本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱装置は、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部に接続されたマイクロ波加熱室と、前記マイクロ波加熱室内に設置される比誘電率が4以上30以下である誘電体成型物と、を備える。マイクロ波加熱装置に用いられ、前記マイクロ波加熱室内に設置される被加熱物の近傍に配置され、前記被加熱物の発熱を促進する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱装置を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態のマイクロ波加熱装置1は、マイクロ波発生部10と、マイクロ波加熱室20と、誘電体成型物30とを備える。本実施形態のマイクロ波加熱装置1は、U字型管40と、台座50と、放射温度計60とを備えていてもよい。マイクロ波発生部10は、マイクロ波加熱室20の内部に設けられ、マイクロ波加熱室20に接続されている。
【0014】
マイクロ波加熱室20は、内部空間21を有する。マイクロ波加熱室20は、内部空間21内に収容されたU字型管30内に窒素等の不活性ガスを導入するためのガス導入口22と、内部空間21内に収容されたU字型管30内から窒素等の不活性ガスを排出するためのガス排出口23とを有する。マイクロ波加熱室20は、内部空間21内に収容されたU字型管40内に収容された被加熱物の温度を、放射温度計60によって測定するための温度測定用窓24を有する。
【0015】
U字型管40は、マイクロ波加熱室20の内部空間21内に収容され、マイクロ波加熱室20の内部空間21内に配置された台座50で下方から支持される。U字型管40の一方の開口部41は上記ガス導入口22に挿通され、U字型管40の他方の開口部42は上記ガス排出口23に挿通されている。
【0016】
U字型管40の曲管部40Aの中央部内には、被加熱物100が収容されている。U字型管40の曲管部40A内には、被加熱物100の両側から、被加熱物100を挟むようにグラスウール110が配置されている。これにより、被加熱物100は、U字型管40の曲管部40Aの中央部内に固定される。
【0017】
マイクロ波加熱装置1のマイクロ波発生部10としては、例えば、2.45GHzマルチモード型マイクロ波加熱装置を用いることができる。
【0018】
U字型管40としては、例えば、U字型石英管を用いることができる。
【0019】
台座50としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の台座を用いることができる。
【0020】
放射温度計60としては、例えば、あらかじめ黒体基準器にて校正した石英透過型放射温度計(実行波長1.95μm~2.6μm)を用いることができる。
【0021】
誘電体成型物30は、マイクロ波加熱室20内に設置される被加熱物100の近傍に配置される。詳細には、誘電体成型物30は、台座50の上面50aに設置された状態で、U字型管40を介して、被加熱物100の近傍に配置される。すなわち、誘電体成型物30は、被加熱物100に接することなく配置される。図1では、誘電体成型物30は、U字型管40を介して、被加熱物100の直下に配置されている。
【0022】
誘電体成型物30は、被加熱物100の直下に配置されていなくてもよく、図1において、被加熱物100の直下から左右に僅かにずれた(離れた)位置に配置されていてもよい。すなわち、誘電体成型物30が、マイクロ波加熱室20内に設置される被加熱物100の近傍に配置されているとは、例えば、誘電体成型物30が被加熱物100の直下、あるいは、被加熱物100の中心部を通る線(中央線)100aから10mm以下の範囲内に配置されていることを言う。
【0023】
誘電体成型物30は、マイクロ波発生部10に接することなく配置されている。マイクロ波発生部10は、マイクロ波加熱室20に接続されている。そのため、マイクロ波発生部10は、マイクロ波加熱室20を介して、誘電体成型物30にマイクロ波を照射することができる。
【0024】
マイクロ波発生部10から、マイクロ波加熱室20を介して、誘電体成型物30に照射するマイクロ波は、周波数が300MHz~300GHz、波長が0.1m~1mの電磁波である。
マイクロ波発生部による誘電体成型物30のマイクロ波加熱方式は、マルチモードである。マルチモードのマイクロ波加熱方式とは、波長より大きなサイズの金属製の筐体で構成される装置内部にマイクロ波を照射し、マイクロ波が多重反射し様々なモードとなって被加熱物に照射され加熱される方式である。
【0025】
誘電体成型物30の形状は特に限定されないが、例えば、U字型管40と台座50の間に配置するために平面視四角形状(正方形状、長方形状)、円形状(円盤状)であることが好ましい。
【0026】
誘電体成型物30の比誘電率の下限値は、4.0以上が好ましく、4.2以上がより好ましく、4.5以上がさらに好ましい。誘電体成型物30の比誘電率が前記下限値以上であると、誘電体板内を伝搬するマイクロ波の波長短縮により被加熱物へのマイクロ波吸収を促進することができる。
【0027】
誘電体成型物30の比誘電率の上限値は、30以下が好ましく、25以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。誘電体成型物30の比誘電率が前記上限値以下であると、誘電体成型物30内でのマイクロ波伝搬速度の過剰な低下を引き起こす、誘電損失によるマイクロ波エネルギーの損失を抑えることができる。
【0028】
誘電体成型物30の比誘電率は、ネットワークアナライザー(型式名:85070E DIELETRIC PROBE KIT、Agilent社製)を用いて測定することができる。ネットワークアナライザーは、300MHz~6.5GHzの範囲設定で測定を行い、空気、ゴム、水の順で校正を行った後に、各種サンプルの測定を実施し、2.45GHzでの実測値を比誘電率とする。
【0029】
誘電体成型物30の材質としては、比誘電率が上記の範囲内のものでれば特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、ステアタイト(メタ珪酸マグネシウム、MgO・SiO)、フォルステライト、マイカレックス、フルオライト、マグネシア(酸化マグネシウム)、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)、チタニア(酸化チタン)、石膏、粘板岩、緑柱石、蛍石、長石、方解石、クローム鉱石、ダイヤモンド、ルビー等が挙げられる。
【0030】
誘電体成型物30の空へき率は、下記式(1)によって求められる。
1-(見かけ密度/嵩密度) (1)
空へき率の上限は、35%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、25%以下がさらに好ましい。誘電体成型物1の空へき率が前記上限値以下であると、誘電体中の空気による比誘電率の低下が抑えられる。
また、空へき率の下限は特に限定されない。
【0031】
誘電体成型物30の長さは、前記マイクロ波の1波長の125%未満が好ましく、100%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。誘電体成型物30の長さが前記上限値未満であると、マイクロ波加熱室20内へ設置する際に、被加熱物100に対して自由度高く設置することができる。
【0032】
誘電体成型物30の長さは、前記マイクロ波の1波長の8%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。誘電体成型物30の長さが前記下限値以上であると、誘電体成形物1を通過するマイクロ波の流束が大きくなり、波長短縮による加熱が促進される。
【0033】
誘電体成型物30の厚みは、前記マイクロ波の1波長の0.8%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましい。誘電体成型物30の厚みが前記下限値以上であると、波長短縮による加熱が促進される。
【0034】
誘電体成型物30の厚みは、前記マイクロ波の1波長の20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。誘電体成型物30の厚みが前記上限値以下であると、誘電体成型物30の内部での誘電損失によるマイクロ波エネルギーの損失を抑えることができる。
【0035】
[被加熱物の発熱促進方法]
マイクロ波加熱装置1を用いた被加熱物100の加熱方法を説明する。
図1に示すように、U字型管40の曲管部40Aの中央部(最下部)内に、被加熱物100を収容し、被加熱物100の両側から、被加熱物100を挟むようにグラスウール110を配置する。これにより、U字型管40内に被加熱物100を封入する。
【0036】
被加熱物100としては、特に限定されないが、マイクロ波により加熱されるものが好ましい。例えば、炭化物、セラミック、食品、半導体材料、樹脂、化学品等が挙げられる。従来、被加熱物がマイクロ波加熱装置に対して十分に小さい場合、被加熱物の発熱を促進することは、定在波の振幅が大きな領域に被加熱物をピンポイントで設置する必要があり難しい。本実施形態のマイクロ波加熱装置1、被加熱物の発熱促進方法、および誘電体成型物を用いることで、小さな被加熱物の発熱を促進することが可能となる。
【0037】
被加熱物100の大きさは、特に限定されないが、照射するマイクロ波1波長に対して33%以下の全長となる被加熱物100に対しても、被加熱物100の発熱を促進することが可能である。さらに、照射するマイクロ波1波長に対して、25%以下、20%以下においても発熱を促進することが可能である。マイクロ波の波長に対して十分に小さく、マルチモードのマイクロ波加熱方式で加熱されにくい場合においても、誘電体成型物30の内部でのマイクロ波の波長短縮により、マイクロ波発生部10の波長を変えることなく加熱することができる。
【0038】
マイクロ波加熱装置1のマイクロ波加熱室20内に台座50を設置し、台座50の上面50aに誘電体成型物30を配置する。この際、マイクロ波加熱室20内の中央部に、誘電体成型物30を配置する。さらに、被加熱物100が誘電体成型物30に接するように、マイクロ波加熱装置1にU字型管40を固定する。
【0039】
U字型管40の一方の開口部41から、U字型管40内に窒素を流して、窒素流通下、U字型管40を静置し、U字型管40内を窒素雰囲気とする。
【0040】
窒素流通下、マイクロ波発生部から発生したマイクロ波を、U字型管40内の被加熱物100に照射する。これにより、被加熱物100を加熱する。
【0041】
被加熱物100の温度は、放射温度計60で測定される。
【0042】
本実施形態によれば、マイクロ波を誘電体成型物30に通過させることにより、マイクロ波の波長圧縮を起こし、マイクロ波の波長よりも十分に小さい被加熱物100に効率的にマイクロ波を吸収させる。その結果、汎用マルチモードマイクロ波加熱の改造や設計変更を必要とすることなく、被加熱物100の加熱を促進することができる。
【実施例0043】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
図1に示すような石英製のU字型管40(高さ300mm、曲管部40Aの幅140mm、内径12mm、肉厚1.4mm)の曲管部40Aの中央部(最下部)内に、被加熱物100として、炭化ケイ素(カーボランダム、16メッシュ、東工薬株式会社製)750mgを収容し、被加熱物100の両側から、被加熱物100を挟むようにグラスウール110を配置した。これにより、U字型管40内に被加熱物100を封入した。
マイクロ波加熱装置1(2.45GHzマルチモード型マイクロ波加熱装置、μReactor Ex、四国計測工業株式会社製)のマイクロ波加熱室20内に、PTFE製の台座50を設置し、台座50の上面50aに、誘電体成型物30として、平面視正方形状のアルミナ995板(アズワン社製、縦50mm×横50mm×厚み3mm)を配置した。この際、マイクロ波加熱室20内の中央部に、誘電体成型物30を配置した。さらに、被加熱物100が誘電体成型物1に接するように、マイクロ波加熱装置1にU字型管40を固定した。
U字型管40の一方の開口部41から、U字型管40内に窒素を流して、窒素流通下、U字型管40を静置し、U字型管40内を窒素雰囲気とした。
U字型管40内に流す窒素の流量は、50mL/minとした。
U字型管40内に窒素を流して、U字型管40を1分間静置した。
窒素流通下、マイクロ波発生部から出力400Wのマイクロ波を、U字型管40内の被加熱物100に照射した。これにより、被加熱物100を加熱した。
マイクロ波の照射を開始してから、100秒経過した時点で被加熱物100の温度を放射温度計60(石英透過型放射温度計、型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定した。温度の測定結果を表1に示す。
誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率を、ネットワークアナライザー(型式名:85070E DIELETRIC PROBE KIT、Agilent社製)を用いて測定した。誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率、誘電損率、誘電正接の測定結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
誘電体成型物30としてステアタイト板(ミスミ社製、縦50mm×横50mm×厚み3mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0046】
[実施例3]
誘電体成型物1としてマグネシア板(ニッカトー社製、縦50mm×横50mm×厚み4mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物1の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0047】
[実施例4]
誘電体成型物1としてジルコニア板(アズワン社製、縦50mm×横50mm×厚み4mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0048】
[実施例5]
誘電体成型物30としてアルミナ995板(アズワン社製、縦50mm×横50mm×厚み5mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0049】
[実施例6]
誘電体成型物30としてアルミナ995板(アズワン社製、縦50mm×横50mm×厚み1mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0050】
[実施例7]
誘電体成型物30として平面視円形状のアルミナ995板(アズワン社製、直径50mm×厚み3mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0051】
[実施例8]
誘電体成型物30としてアルミナ板(ミスミ社製、縦20mm×横20mm×厚み3mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0052】
[実施例9]
誘電体成型物30としてアルミナ板(ミスミ社製、縦30mm×横30mm×厚み3mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0053】
[実施例10]
誘電体成型物30としてアルミナ板(ミスミ社製、縦40mm×横40mm×厚み3mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0054】
[実施例11]
誘電体成型物30としてアルミナ996板(アズワン社製、縦150mm×横150mm×厚み2.5mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0055】
[実施例12]
誘電体成型物30として多孔質アルミナ板(アズワン社製、縦50mm×横50mm×厚み4mm、空へき率50%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0056】
[比較例1]
誘電体成型物30として石英板(アズワン社製、縦50mm×横50mm×厚み3mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0057】
[比較例2]
誘電体成型物30としてポリテトラフルオロエチレン板(アズワン社製、縦50mm×横50mm×厚み3mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0058】
[比較例3]
誘電体成型物30として高密度ポリエチレン板(アズワン社製、縦50mm×横50mm×厚み3mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物30の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0059】
[比較例4]
誘電体成型物1として粒子状のアルミナ(水澤化学工業社製、ネオビード GB―45、平均粒子径3.35~4.75mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、被加熱物100の温度と、誘電体成型物1の2.45GHzにおける比誘電率とを測定した。それぞれの測定結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示す結果から、実施例1~実施例12では、マイクロ波の照射を開始してから100秒後の被加熱物100の到達温度が350℃以上となることが分かった。
一方、比較例1~比較例4では、マイクロ波の照射を開始してから100秒後の被加熱物100の到達温度が300℃未満であった。
このように、実施例1~実施例12では、マイクロ波の波長よりも十分に小さい被加熱物100に効率的にマイクロ波を吸収させることにより、汎用マルチモードマイクロ波加熱の改造や設計変更を必要とすることなく、被加熱物100の加熱を促進することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の誘電体成型物は、汎用マルチモードマイクロ波加熱の改造や設計変更を必要とすることなく、被加熱物の加熱を促進することができることから、被加熱物の加熱に非常に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 マイクロ波加熱装置
10 マイクロ波発生部
20 マイクロ波加熱室
30 誘電体成型物
40 U字型管
50 台座
60 放射温度計
100 被加熱物
図1