(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135847
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046731
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】醒井 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】塩寺 広太
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
(72)【発明者】
【氏名】加幡 利幸
(72)【発明者】
【氏名】西川 知幸
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 有信
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA42
2H033BA04
2H033BA11
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB08
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033CA07
2H033CA30
2H033CA45
(57)【要約】
【課題】微粒子の排出を抑制する。
【解決手段】回転可能に保持される回転体21と、回転体21を加熱する加熱源23と、回転体21の長手方向両端部を支持する回転体支持部材10と、回転体21内に付着する液状又は半固体状の潤滑性を有する物質を備え、回転体支持部材10が、前記回転体21の内部に連通し回転体21の長手方向Xにおいて回転体支持部材10を貫通する第一開口部27dを有する加熱装置20であって、加熱装置20は、回転体21の長手方向Xから見て開口部27dの全体を覆うように配置されるカバー部材40を備え、カバー部材40は、回転体21の内部とカバー部材40の外部とを連通する第二開口部40dを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に保持される回転体と、
前記回転体を加熱する加熱源と、
前記回転体の長手方向両端部を支持する回転体支持部材と、
前記回転体内に付着する液状又は半固体状の潤滑性を有する物質を備え、
前記回転体支持部材が、前記回転体の内部に連通し前記回転体の長手方向において前記回転体支持部材を貫通する第一開口部を有する加熱装置であって、
前記回転体の長手方向から見て前記第一開口部の全体を覆うように配置されるカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記回転体の内部と前記カバー部材の外部とを連通する第二開口部を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記回転体の長手方向から見て前記第二開口部は、前記第一開口部とは異なる位置に配置される請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第二開口部は、前記回転体の長手方向において前記第一開口部とは間隔をあけて配置される請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第二開口部は、前記第一開口部よりも下方に配置される請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第二開口部の開口面積は、前記カバー部材の内部空間表面積の25%以下である請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記カバー部材の内部空間体積は、8cm3以上である請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記第二開口部は、前記加熱源に接続される導電線を通す開口部である請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記加熱源を支持する加熱源支持部材である請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の加熱装置を用いて未定着画像を担持する記録媒体を加熱し、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の加熱装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置の一例として、用紙などの記録媒体を加熱して記録媒体上の未定着画像を記録媒体に定着させる定着装置が知られている。
【0003】
このような定着装置においては、ベルトなどの回転体が回転する際の摺動抵抗を低減するため、一般的にオイルあるいはグリースなどの潤滑性を有する物質(以下、「潤滑剤」という。)が回転体の内面に塗布されている。なお、潤滑性を有する物質とは、部品と部品の間に介在することにより、それら部品間の摩擦抵抗を減少させる物質のことを指す。
【0004】
海外、特に欧州において、環境への関心が非常に高く、電子写真プロセスを用いた複写機、複合機、プリンタなどの画像形成装置においても、画像形成時に発生する揮発性有機化合物(VOC)、オゾン、ダスト、微粒子などに対する様々な認定基準が存在する。例えば、ドイツ政府の研究機関においては、「ブルーエンジェルマーク」というエコラベル制度があり、認証を受けた製品及びサービスにのみラベルの使用が認められる。
【0005】
「ブルーエンジェルマーク」の認証を受けていない製品であっても、販売ができなくなるわけではないが、認証を受けていないことは、環境へ配慮されていない製品と受け取られることが多く、特に公官庁において、その傾向が強い。そのため、「ブルーエンジェルマーク」の認証があるかないかでは、製品の販売に大きな影響を与えてしまう。
【0006】
「ブルーエンジェルマーク」の認証には、様々な試験をクリアする必要があるが、特に微粒子の試験が非常に厳しい。具体的には、画像形成装置から発生する5.6nm以上560nm以下の微粒子を粒子計測器FMPS(Fast Mobility Particle Sizer)で計測した際に得られる微粒子の数が、3.5×1011個/10分より少ないことが求められる。この場合の微粒子の数は、微粒子を形成する物質の種類及び状態、例えば、無機物/有機物の区別はなく、固体/液体(ミスト)の区別もない。あくまでも微粒子の大きさと数のみが関係する。将来的には、さらに厳しい基準値になることが予想されている。
【0007】
微粒子は、画像形成装置を構成する様々な部材から発生するとされているが、定着装置のみを起動させることで、微粒子の発生量が大幅に上昇することから、定着装置が微粒子の主な発生原因であることが分かっている。実際、前述の潤滑剤を高温に加熱すると、微粒子が検出されるため、潤滑剤は微粒子の発生源の一つである。潤滑剤を高温に加熱することで、潤滑剤の極一部の成分が高温のガスとして揮発した後、そのガスが冷却されて凝結し、微粒子となると考えられている。潤滑剤を高温環境に晒さないようにし、画像形成装置からの微粒子の発生を抑制することが求められている。
【0008】
例えば、特許文献1(特開2015-7756号公報)においては、回転体の内側に冷却部を設け、冷却部によって回転体内の潤滑剤気化成分をその沸点温度以下に冷却して固化させることにより、回転体内からの潤滑剤気化成分の排出を抑制する技術が提案されている。
【0009】
ところで、定着装置においては、回転体内に配置される加熱源を外部の電源に対して電気的に接続するなどの目的で、回転体を支持する回転体支持部材に、回転体の内外を連通させる開口部が設けられている。このため、回転体内において微粒子が発生すると、開口部を通して微粒子が外部へ排出されることになる。
【0010】
上記特許文献1においては、回転体内の潤滑剤気化成分を冷却する技術について提案されているが、回転体内において微粒子が発生した場合に、その微粒子が回転体支持部材の開口部を通して外部へ排出されることに対する対策は提案されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、回転体内において微粒子が発生した場合に、外部への微粒子の排出を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、回転可能に保持される回転体と、前記回転体を加熱する加熱源と、前記回転体の長手方向両端部を支持する回転体支持部材と、前記回転体内に付着する液状又は半固体状の潤滑性を有する物質を備え、前記回転体支持部材が、前記回転体の内部に連通し前記回転体の長手方向において前記回転体支持部材を貫通する第一開口部を有する加熱装置であって、前記回転体の長手方向から見て前記第一開口部の全体を覆うように配置されるカバー部材を備え、前記カバー部材は、前記回転体の内部と前記カバー部材の外部とを連通する第二開口部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微粒子の排出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る定着装置の中央部断面図である。
【
図5】本実施形態に係る定着装置の長手方向一端部側の構造を示す断面図である。
【
図6】
図5に示される定着装置を同図の左側から見た側面図である。
【
図7】本実施形態に係る定着装置が備えるカバー部材の斜視図である。
【
図8】比較例に係る定着装置と本発明の実施形態に係る定着装置のそれぞれにおいて、外部へ排出されるFP/UFPの個数を測定した試験結果を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る定着装置の長手方向一端部側の構造を示す断面図である。
【
図10】
図9に示される定着装置を同図の左側から見た側面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る定着装置の長手方向一端部側の構造を示す断面図である。
【
図12】
図11に示される定着装置を同図の左側から見た側面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る定着装置の長手方向一端部側の構造を示す断面図である。
【
図14】
図14に示される定着装置を同図の左側から見た側面図である。
【
図15】ブラケットと側板との間に形成される隙間を示す斜視図である。
【
図17】カバー部材の他の変形例を示す斜視図である。
【
図18】カバー部材のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【
図19】
図18に示されるカバー部材が取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図20】
図18に示されるカバー部材が取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図21】本発明を適用可能な他の定着装置の構成を示す断面図である。
【
図23】本発明を適用可能なさらに別の定着装置の構成を示す断面図である。
【
図25】本発明を適用可能なさらに別の定着装置の構成を示す断面図である。
【
図27】本発明を適用可能なさらに別の定着装置の構成を示す断面図である。
【
図28】
図27に示される定着装置を定着ベルトの長手方向に沿って切断した断面図である。
【
図29】本発明を適用可能なさらに別の定着装置の構成を示す断面図である。
【
図31】本発明を適用可能なさらに別の定着装置の構成を示す断面図である。
【
図32】
図31に示される加圧ローラの保持構造を示す断面図である。
【
図33】本発明を適用可能なさらに別の定着装置の構成を示す断面図である。
【
図35】本発明を適用可能なさらに別の定着装置の構成を示す断面図である。
【
図37】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図38】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図39】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図40】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図41】上記実施形態とは異なる画像形成装置の構成を示す図である。
【
図44】
図42に示されるヒータ及びニップ形成部材の斜視図である。
【
図45】
図42に示されるヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図46】
図41に示される定着装置が備える温度センサとサーモスタットの配置を示す図である。
【
図48】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図49】
図48に示されるヒータ、第一高熱伝導部材、ニップ形成部材の斜視図である。
【
図50】第一高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
【
図51】第一高熱伝導部材の配置の他の例を示すヒータの平面図である。
【
図52】第一高熱伝導部材の配置のさらに別の例を示すヒータの平面図である。
【
図53】拡大分割領域を示すヒータの平面図である。
【
図54】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図55】
図54に示されるヒータ、第一高熱伝導部材、第二高熱伝導部材、ニップ形成部材の斜視図である。
【
図56】第一高熱伝導部材及び第二高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
【
図57】第一高熱伝導部材及び第二高熱伝導部材の配置の他の例を示すヒータの平面図である。
【
図58】第二高熱伝導部材の配置のさらに別の例を示すヒータの平面図である。
【
図59】上記実施形態とは異なる定着装置の構成を示す図である。
【
図60】グラフェンの原子結晶構造を示す図である。
【
図61】グラファイトの原子結晶構造を示す図である。
【
図62】乾燥装置を備えるインクジェット式画像形成装置の一形態を示す図である。
【
図64】ラミネート処理装置を備える画像形成装置の一形態を示す図である。
【
図65】比較例に係る定着装置の長手方向一端部側の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、用紙などのシート状の記録媒体に画像を形成する画像形成部200と、記録媒体に画像を定着させる定着部300と、記録媒体を画像形成部200へ供給する記録媒体供給部400と、記録媒体を装置外へ排出する記録媒体排出部500を備えている。
【0018】
画像形成部200には、作像ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkと、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkが備える感光体2に静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体に画像を転写する転写装置8が設けられている。
【0019】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色のトナー(現像剤)を収容している以外、基本的に同じ構成である。具体的に、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電部材3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面を清掃するクリーニング部材5を備えている。
【0020】
転写装置8は、中間転写ベルト11と、一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13を備えている。中間転写ベルト11は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ12が中間転写ベルト11を介して各感光体2に接触することにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0021】
定着部300においては、画像が転写された記録媒体を加熱する加熱装置としての定着装置20が設けられている。定着装置20は、記録媒体上の画像を加熱する定着ベルト21と、定着ベルト21に接触してニップ部(定着ニップ)を形成する加圧ローラ22などを備えている。
【0022】
記録媒体供給部400には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15が設けられている。以下、「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0023】
記録媒体排出部500には、用紙Pを画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙Pを載置する排紙トレイ18が設けられている。
【0024】
次に、
図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0025】
画像形成装置100において印刷動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2及び転写装置8の中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が、回転を開始し、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触することにより静止し、用紙Pに転写される画像が形成されるまで用紙Pの搬送が一旦停止される。
【0026】
各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、まず、帯電部材3によって、感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が、各感光体2の表面(帯電面)を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4がトナーを供給し、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、各プロセスユニット1Y,1M,1C,1Bkのいずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つのプロセスユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることもできる。また、中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後は、クリーニング部材5によって各感光体2上の残留トナーなどが除去される。
【0027】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。その後、用紙Pは、定着装置20へと搬送され、定着ベルト21と加圧ローラ22によって用紙P上のトナー画像が加熱及び加圧され、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、記録媒体排出部500へ搬送され、排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出される。これにより、一連の印刷動作が終了する。
【0028】
続いて、
図2及び
図3に基づき、本実施形態に係る定着装置20の基本構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る定着装置20を、定着ベルト21の長手方向中央部Xm(
図3参照)において切断した中央部断面図、
図3は、本実施形態に係る定着装置20の斜視図である。なお、以下の説明中における定着ベルト21の「長手方向」とは、定着ベルトの回転方向に対して直交し、かつ、定着ベルトの外周面に沿った方向を意味する。すなわち、「長手方向」は、
図3中の矢印Xにて示される方向であり、加圧ローラ22の回転軸方向、あるいは定着ベルト21と加圧ローラ22との間(ニップ部)を通過する用紙の幅方向(用紙搬送方向とは交差する方向)と平行な方向でもある。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態に係る定着装置20は、定着ベルト21及び加圧ローラ22のほか、ヒータ23と、ヒータホルダ24と、ステー25と、温度センサ26などを備えている。
【0030】
定着ベルト21は、用紙Pの未定着トナー担持面に接触して未定着トナー(未定着画像)を用紙Pに定着させる回転体(第一回転体又は定着部材)である。
【0031】
具体的に、定着ベルト21は、内周面側から外周面側に向かって順に、基材、弾性層、離型層などを有する無端状のベルトにより構成される。基材は、例えば、層厚が30~50μmであって、ニッケル、ステンレスなどの金属材料、あるいはポリイミドなどの樹脂材料により形成される。弾性層は、層厚が100~300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料により形成される。定着ベルト21が弾性層を有していることにより、ニップ部における定着ベルト21の表面に微小な凹凸が形成されなくなるため、用紙P上のトナー画像に熱が均一に伝わりやすくなる。離型層は、層厚が10~50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルフォン)などの材料により形成される。定着ベルト21が、離型層を有していることにより、トナー(トナー画像)に対する離型性(剥離性)が確保される。また、定着ベルト21は、小型化及び低熱容量化のため、その全体の厚さが1mm以下、直径が30mm以下であることが好ましい。
【0032】
定着ベルト21は、その長手方向Xにおいて、一対の回転体保持部材であるベルト保持部材27(
図3参照)によって回転可能に保持される。なお、ここでいう定着ベルト21の「長手方向両端部」、及び以下の説明中における定着ベルト21の「長手方向端部」は、定着ベルト21の長手方向の最も端の端縁のみを意味する場合に限らない。「長手方向両端部」及び「長手方向端部」には、定着ベルト21の長手方向の最も端の端縁のほか、定着ベルト21を長手方向に三等分した場合の端縁から三分の一の長さの範囲内における任意の位置も含まれる。従って、ベルト保持部材27は、定着ベルト21の長手方向の最も端の端縁を含む領域(長手方向端部)を保持する場合のほか、定着ベルト21の端縁を含まない領域(長手方向端部)を保持する場合であってもよい。
【0033】
具体的に、ベルト保持部材27は、定着ベルト21の長手方向端部内に挿入される断面C字状の挿入部27aと、挿入部27aよりも大きい外径に形成された規制部27bと、後述の側板に固定される固定部27cを有している。規制部27bは、少なくとも定着ベルト21の外径よりも大きく形成されており、定着ベルト21に長手方向Xの寄り(長手方向への移動)が生じた場合にその寄りを規制する。一方、挿入部27aは、定着ベルト21の内径以下の大きさに形成され、定着ベルト21の長手方向端部内に挿入されることにより、定着ベルト21を内側から回転可能に保持する部分である。
【0034】
加圧ローラ22は、定着ベルト21の外周面に対向して配置される回転体(第二回転体又は対向部材)であると共に、定着ベルト21の外周面に加圧される加圧部材でもある。加圧ローラ22は、定着ベルト21の外周面に接触し、定着ベルト21との間において用紙Pを通過させるニップ部Nを形成する。
【0035】
具体的に、加圧ローラ22は、中実の鉄製芯材と、この芯材の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層により構成される。芯材は、中空の部材であってもよい。弾性層は、シリコーンゴム、又は発泡性シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴムなどにより形成される。離型層は、PFA又はPTFEなどのフッ素樹脂により形成される。
【0036】
ヒータ23は、定着ベルト21を加熱する加熱源である。本実施形態においては、加熱源として、抵抗発熱体31を有する面状又は板状のヒータ23が用いられている。ヒータ23は、定着ベルト21の内周面に接触するように配置されている。このため、ヒータ23が通電により抵抗発熱体31が発熱すると、その熱が定着ベルト21の内周面に対して伝達され、定着ベルト21が加熱される。
【0037】
ヒータホルダ24は、定着ベルト21内においてヒータ23(加熱源)を保持する加熱源保持部材である。ヒータホルダ24は、ヒータ23の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料により構成される。例えば、ヒータホルダ24の材料として、LCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂を用いた場合は、ヒータ23からヒータホルダ24への伝熱が抑制されるため、効率的に定着ベルト21を加熱することができる。また、本実施形態においては、ヒータホルダ24が、定着ベルト21をガイドするガイド部28を有している。ガイド部28は、定着ベルト21の内周面に沿って円弧状又は凸曲面状に形成されるガイド面を有し、定着ベルト21が回転すると、定着ベルト21がガイド面に対して摺動することにより案内される。ガイド部28は、ヒータホルダ24と一体でなく、別体で構成されてもよい。
【0038】
ステー25は、ヒータホルダ24を補強する補強部材である。ステー25が、ヒータホルダ24の加圧ローラ22側とは反対側の面を支持することにより、加圧ローラ22の加圧力によるヒータホルダ24及びヒータ23の撓み(特に定着ベルト21の長手方向に渡る撓み)が抑制される。これにより、均一な幅のニップ部Nが得られるようになる。ステー25の材料としては、剛性を確保するため、SUS又はSECCなどの鉄系金属材料が好ましい。
【0039】
温度センサ26は、ヒータ23に接触し、ヒータ23の温度を検知する温度検知部材である。本実施形態においては、温度センサ26が、ヒータ23のニップ部N側とは反対側の面に接触するように配置されている。なお、温度センサ26は、ヒータ23に対して接触する接触式の温度センサに限らず、ヒータ23に対して接触しないように配置される非接触式の温度センサであってもよい。温度センサ26としては、例えば、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ又はNCセンサなどの公知の温度センサを用いることが可能である。
【0040】
図4は、本実施形態に係るヒータ23の平面図である。
【0041】
図4に示されるように、本実施形態に係るヒータ23は、板状の基材30と、基材30上に設けられる複数の抵抗発熱体31と、複数の抵抗発熱体31を被覆する絶縁層32と、給電線34を介して複数の抵抗発熱体31に接続される一対の電極部33を有している。
【0042】
基材30は、
図4における横方向へ伸びる長手状の板材により構成される。また、基材30は、その長手方向が定着ベルト21の長手方向X(
図3参照)となるように配置される。基材30の材料としては、耐熱性及び絶縁性に優れるアルミナ又は窒化アルミニウムなどのセラミック、ガラス、マイカなどの非金属材料が好ましい。また、基材30と抵抗発熱体31との間に別途絶縁層を介在させることにより、基材30の材料として、金属材料などの導電材料を用いることもできる。金属材料としては、例えば、アルミニウム又はステンレスなどが低コストである点において好ましい。また、ヒータ23の均熱性を向上させ、画像品位を高めるために、基材30を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料により構成してもよい。
【0043】
複数の抵抗発熱体31は、通電により発熱する発熱部として機能する部分であり、基材30の長手方向に渡って互いに間隔をあけて配置されている。互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、抵抗発熱体31間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。ただし、抵抗発熱体31同士の隙間が大きすぎると、その隙間の部分において温度低下が生じやすくなるため、長手方向に渡る温度ムラを抑制する観点から、5mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。各抵抗発熱体31は、例えば、銀パラジウム(AgPd)及びガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷などにより基材30に塗工し、その後、基材30を焼成することによって形成される。また、抵抗発熱体31の材料として、銀合金(AgPt)又は酸化ルテニウム(RuO2)などの抵抗材料を用いてもよい。
【0044】
各抵抗発熱体31は、給電線34を介して一対の電極部33に対して接続されている。本実施形態においては、一対の電極部33が、基材30の長手方向両端部に設けられ、各電極部33に対して各抵抗発熱体31が電気的に並列に接続されている。各電極部33に対して給電部材としてのコネクタが接続されると、電源部から各抵抗発熱体31へ給電可能な状態となる。
【0045】
抵抗発熱体31及び給電線34は、これらの絶縁性と耐久性を確保するため、絶縁層32によって覆われている。一方、電極部33は、コネクタが接続されるため、絶縁層32によって覆われておらず、露出している。絶縁層32は、例えば、耐熱性ガラスなどにより構成される。本実施形態においては、抵抗発熱体31、電極部33、給電線34及び絶縁層32が、基材30の定着ベルト21側(ニップ部N側)の面に設けられているが(
図2参照)、反対に、基材30のヒータホルダ24側の面に設けられてもよい。その場合、抵抗発熱体31の熱が基材30を介して定着ベルト21に伝達されるため、基材30は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが好ましい。
【0046】
定着ベルト21を加熱する加熱源は、本実施形態のような面状又は板状のヒータ23のほか、ハロゲンヒータ、カーボンヒータ又はセラミックヒータなどの輻射熱式のヒータ、あるいは電磁誘導加熱方式の加熱源であってもよい。
【0047】
本実施形態に係る定着装置20は、次のように動作する。
【0048】
印刷動作が開始されると、加圧ローラ22が
図2中の矢印方向へ回転駆動し、これに伴って定着ベルト21が従動回転する。また、通電によりヒータ23が発熱し、ヒータ23によって定着ベルト21が加熱される。このとき、温度センサ26によってヒータ23の温度が検知され、検知された温度に基づいてヒータ23の発熱量が制御されることにより、定着ベルト21の温度が所定の定着温度(画像定着可能な温度)に維持される。そして、未定着画像を担持する用紙Pが、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(ニップ部N)へ搬送されると、定着ベルト21と加圧ローラ22によって用紙Pが加熱及び加圧される。これにより、用紙P上の画像が用紙Pに定着される。
【0049】
ところで、本実施形態に係る定着装置20においては、定着ベルト21が回転すると、定着ベルト21がヒータ23及びヒータホルダ24(ガイド部28)に対して摺動するため、定着ベルト21とヒータ23との間、及び、定着ベルト21とヒータホルダ24との間において摺動抵抗が発生する。このときの摺動抵抗を低減するため、一般的に、定着ベルト21の内周面には、シリコーンオイル、シリコーングリース、フッ素オイル、フッ素グリースなどの潤滑剤が塗布され、このような潤滑剤が定着ベルト21とヒータ23の間、及び定着ベルト21とヒータホルダ24との間に介在するようにしている。
【0050】
また、上記のように、定着ベルト21が一対のベルト保持部材27によって保持される構成においては、定着ベルト21の回転により、定着ベルト21とベルト保持部材27との間においても摺動抵抗が生じる。このため、各ベルト保持部材27と定着ベルト21との間においても、上記と同じような潤滑剤を介在させている。
【0051】
しかしながら、このような潤滑剤が用いられる定着装置20においては、ヒータ23が発熱すると、その熱により定着ベルト21内の潤滑剤が温度上昇することにより、潤滑剤から微粒子が発生する虞がある。詳しくは、定着ベルト21内の潤滑剤が温度上昇すると、潤滑剤の低分子の一部の成分が揮発し、揮発した成分が大気で冷やされて凝集することにより、微粒子が発生する。なお、ここでいう「微粒子」、及び、以下の説明中における「微粒子」は、いずれも、ブルーエンジェルの微粒子基準に準拠した装置及び条件により測定される微粒子及び超微粒子(以下、「FP/UFP」という。)であって、粒径が5.6nm以上560nm以下の粒子を意味する。
【0052】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、製品から放出されるFP/UFPの発生を抑制する対策が望まれており、画像形成装置においてもFP/UFPの発生が少ない製品の開発が求められている。
【0053】
しかしながら、
図65に示されるように、断面C字状又は筒状に形成されるベルト保持部材27によって定着ベルト21の長手方向両端部が保持される構成においては、定着ベルト21の内部空間と外部空間とがベルト保持部材27の内側に形成される開口部27dを介して連通しているため、定着ベルト21内の潤滑剤からFP/UFPが発生すると、図中の矢印にて示されるように、FP/UFPがベルト保持部材27の開口部27dを通して外部へ排出される。
【0054】
そこで、本発明の実施形態においては、FP/UFPの外部への排出を抑制すべく、次のような対策を講じている。以下、
図5~
図7に基づき、本発明の実施形態の構成について説明する。
【0055】
図5は、上記本発明の実施形態に係る定着装置20の長手方向一端部側の構造を示す断面図である。
図6は、
図5に示される定着装置20を同図の左側から見た側面図であり、
図7は、本実施形態に係る定着装置20が備えるカバー部材40の斜視図である。
【0056】
図5及び
図6に示されるように、本実施形態に係る定着装置20においては、ベルト保持部材27を支持する支持部材としての側板29が設けられている。すなわち、本実施形態において、定着ベルト21はベルト保持部材27を介して側板29によって支持され、ベルト保持部材27及び側板29は、定着ベルトの長手方向端部を回転可能に支持する回転体支持部材10として機能する。本実施形態においては、ベルト保持部材27及び側板29が別体に構成されているが、これらが一体に構成されていてもよい。
【0057】
ベルト保持部材27は、断面C字状又は筒状に形成されているため、ベルト保持部材27の内側には、定着ベルト21の長手方向Xにおいてベルト保持部材27を貫通するように開口部27dが設けられている。このため、定着ベルト21の内部空間は、ベルト保持部材27の開口部27dを通して外側へ開口している。
【0058】
ここで、本実施形態に係る定着装置20においては、定着ベルト21内のFP/UFPが外部に排出されるのを抑制するため、ベルト保持部材27の開口部27dを覆うカバー部材40を設けている。
図5に示されるように、カバー部材40は、側板29よりも定着ベルト21の長手方向Xにおける外側に配置され、開口部27dを外側から覆っている。
図5においては、定着ベルト21の長手方向一端部側に配置されるカバー部材40が示されているが、カバー部材40は、
図5に示される一端部側とは反対側にも配置される。
【0059】
続いて、
図7に基づき、本実施形態に係るカバー部材40の構成について説明する。
【0060】
図7に示されるように、カバー部材40は、矩形の開口部40aを有する箱状の部材により構成されている。カバー部材40は、開口部40aと対向するように配置される底壁部41と、底壁部41とは交差又は直交する向きに配置される4つの側壁部42~45を有している。底壁部41及び各側壁部42~45は、隙間なく連結されており、一体のカバー部材40を構成している。
【0061】
また、カバー部材40は、側板29の外側の面(定着ベルト21の長手方向Xにおける外側の面)に取り付けられる取付部46を有している。取付部46は、4つの側壁部42~45のうちの1つの側壁部45から突出するように設けられている。取付部46には、固定部材としてのネジを挿通させる孔部46aが設けられており、この孔部46aにネジを挿通し、そのネジを側板29に締結することにより、カバー部材40が側板29の外側の面に対して取り付けられる。
【0062】
図5及び
図6に示されるように、カバー部材40が側板29に取り付けられた状態においては、カバー部材40の開口部40aが、側板29側を向き、定着ベルト21の長手方向Xから見て(
図6参照)、カバー部材40がベルト保持部材27の開口部27dの全体を覆うように(開口部27dの開口領域全体に対して重なるように)配置される。
【0063】
また、
図5及び
図6に示されるように、カバー部材40が側板29に取り付けられた状態においては、カバー部材40の底壁部41が、定着ベルト21の長手方向Xにおいて開口部27dと対向するように配置され、各側壁部42~45が、開口部27dの周囲を囲むように配置される。すなわち、カバー部材40は、定着ベルト21の長手方向Xにおいて開口部27dと対向する第一壁部(底壁部41)と、定着ベルト21の長手方向Xにおいて第一壁部(底壁部41)よりも開口部27dに近い位置に配置されると共に、定着ベルト21の長手方向Xから見て任意の一方向Y(
図6参照)において開口部27dを挟むように対向する第二壁部及び第三壁部(側壁部42,43)と、定着ベルト21の長手方向Xにおいて第一壁部(底壁部41)よりも開口部27dに近い位置に配置されると共に、定着ベルト21の長手方向Xから見て第二壁部及び第三壁部(側壁部42,43)が対向する方向Yとは直交する方向Z(
図6参照)において開口部27dを挟むように対向する第四壁部及び第五壁部(側壁部44,45)を有している。また、本実施形態においては、定着ベルト21の長手方向Xから見て、第二壁部~第五壁部(側壁部42~45)が、開口部27dの周囲を連続して囲むように連結されている(
図6参照)。
【0064】
このように、本実施形態においては、カバー部材40によって開口部27dの全体が覆われているため、定着ベルト21内の潤滑剤が温度上昇してFP/UFPが発生したとしても、FP/UFPが開口部27dを通って外部に排出されるのが抑制される。すなわち、定着ベルト21内において発生したFP/UFPがベルト保持部材27の開口部27dを通って外側へ移動しても、カバー部材40によってFP/UFPの移動が規制されるため、外部へのFP/UFPの排出が抑制される。
【0065】
ところで、本実施形態のように、FP/UFPの排出を抑制するために、開口部27dの全体を覆うカバー部材40を設けると、FP/UFPのほか、定着ベルト21内の熱気も外部へ排出されにくくなる。このため、連続印刷すると、定着ベルト21内の温度が上昇し、ヒータ23が断線したり、部材が劣化したりするなどの問題が生じる虞がある。
【0066】
そのため、本実施形態においては、カバー部材40に、上記ベルト保持部材27の開口部27d(以下、「第一開口部」という。)とは別の第二開口部40dを設けている。第二開口部40dは、カバー部材40を定着ベルト21の長手方向Xにおいて貫通する孔である。このため、第二開口部40dを通して定着ベルト21の内部とカバー部材40の外部とが連通している。
【0067】
このように、本実施形態においては、定着ベルト21の内部とカバー部材40の外部とを連通させる第二開口部40dが設けられているので、この第二開口部40dを通して定着ベルト21内の熱気を外部へ排出することができる。詳しくは、定着ベルト21内の熱気は、ベルト保持部材27の第一開口部27dを通過し、さらに、カバー部材40の第二開口部40dを通過することにより外部へ排出される。また、第二開口部40d及び第一開口部27dを通して外部の空気を定着ベルト21内へ流入させることも可能である。これにより、定着ベルト21内の空気を外部の空気と入れ替えることができるため、定着ベルト21内の温度上昇を抑制でき、定着ベルト21内の温度上昇に伴うヒータ23の断線及び部材の劣化などの問題の発生を回避できるようになる。
【0068】
上記のように、本実施形態においては、カバー部材40に第二開口部40dが設けられていることにより、定着ベルト21内の通気性を向上させることができる。一方で、第二開口部40dから定着ベルト21内のFP/UFPが外部へ排出される可能性がある。
【0069】
そのため、本実施形態においては、第二開口部40dを、定着ベルト21の長手方向Xにおいて第一開口部27dとは間隔をあけた位置に配置している。第二開口部40dが第一開口部27dとは間隔をあけて配置されていることにより、第一開口部27dを通過したFP/UFPが第二開口部40dを通過しにくくなる。このため、FP/UFPがカバー部材40内において滞留しやすくなり、FP/UFPの凝集を促進させることができる。FP/UFPの凝集が促進されると、粒径が大きくなり、FP/UFPの個数が減少することに加え、FP/UFPがカバー部材40の内面に付着するため、結果的に外部に排出されるFP/UFPの個数を減少させることができる。
【0070】
また、カバー部材40内におけるFP/UFPの凝集をより促進させるため、第二開口部40dは、定着ベルト21の長手方向Xから見て(
図6参照)、第一開口部27dとは異なる位置(第一開口部27dに対して重ならない位置)に配置されることが好ましい。これにより、第一開口部27dを通過したFP/UFPが第二開口部40dから外部へ排出されにくくなると共に、FP/UFPがカバー部材40内において滞留しやすくなるので、FP/UFPの凝集をより効果的に促進させることができる。
【0071】
ここで、第二開口部40dが第一開口部27dとは異なる位置に配置される場合としては、定着ベルト21の長手方向Xから見て、第二開口部40dの全体が第一開口部27dとは異なる位置に配置される場合のほか、第二開口部40dの一部のみが第一開口部27dとは異なる位置に配置される場合も含まれる。第二開口部40dからのFP/UFPの排出を効果的に抑制するには、
図6に示されるように、第二開口部40dの全体が第一開口部27dとは異なる位置に配置されることが好ましいが、第二開口部40dの一部のみが第一開口部27dとは異なる位置に配置されてもよい。その場合、第二開口部40dの一部は、第一開口部27dに対して重なるように配置されるが、そのような場合であっても、FP/UFPが第二開口部40dを通過しにくくなるので、FP/UFPの凝集を促進させ、外部へ排出されるFP/UFPの量を減らすことができる。また、第二開口部40dは、1つである場合に限らず、異なる位置に複数設けられていてもよい。
【0072】
また、FP/UFPは、定着ベルト21内の熱気と一緒に排出されるため、熱気の上昇気流によってFP/UFPは上方へ移動する傾向にある。そのため、
図6に示されるように、第二開口部40dは、第一開口部27dよりも下方に配置されることが好ましい。第二開口部40dが第一開口部27dよりも下方にあることにより、第二開口部40dからのFP/UFPの排出を効果的に抑制できると共に、カバー部材40内におけるFP/UFPの凝集促進を期待できる。
【0073】
また、通気性を確保しつつ外部へのFP/UFPの排出を効果的に抑制するには、第二開口部40dの開口面積が大きくなり過ぎないようにすることが好ましい。具体的には、下記式(1)に示されるように、第二開口部40dの開口面積S2は、カバー部材40の内部空間表面積S1の25%以下であることが好ましい。
【0074】
(数1)
S2/S1≦0.25・・・式(1)
【0075】
ここで、上記「カバー部材40の内部空間表面積S1」は、カバー部材40の内面の総面積だけではなく、第二開口部40dの開口面積S2も含む内部空間全体の表面積を意味する。従って、
図7に示されるカバー部材40の内部空間の横幅(内寸)をL1、縦幅(内寸)をL2、高さ(内寸)をL3とすると、本実施形態におけるカバー部材40の内部空間表面積S1は、下記式(2)により表される。
【0076】
(数2)
S1=L1×L2+L1×L3×2+L2×L3×2・・・式(2)
【0077】
上記のように、第二開口部40dの開口面積S2をカバー部材40の内部空間表面積S1の25%以下とすることにより、第二開口部40dを通してFP/UFPが排出されにくくなる。一方、第二開口部40dの開口面積S2がカバー部材40の内部空間表面積S1の25%よりも大きい場合は(S2/S1>0.25)、第二開口部40dを通してFP/UFPが外部へ排出されやすくなるため、カバー部材40内におけるFP/UFPの滞留時間が短くなる。従って、上記式(1)のように、第二開口部40dの開口面積S2をカバー部材40の内部空間表面積S1の25%以下とすることにより(S2/S1≦0.25)、カバー部材40内におけるFP/UFPの滞留時間を長く確保できるようになるので、FP/UFPの凝集を促進させることができ、外部へのFP/UFPの排出量を効果的に減らすことができる。
【0078】
また、カバー部材40内におけるFP/UFPの凝集をより効果的に促進させるには、カバー部材40の内部空間が大きい方が好ましい。具体的には、下記式(3)に示されるように、カバー部材40の内部空間体積V1を8cm3以上とすることが好ましい。本実施形態におけるカバー部材40の内部空間体積V1は、上記各内寸L1、L2、L3を用いて下記式(4)により表される。
【0079】
(数3)
V1≧8[cm3]・・・式(3)
【0080】
(数4)
V1=L1×L2×L3・・・式(4)
【0081】
このように、カバー部材40の内部空間体積V1を8cm3以上とすることにより、カバー部材40内におけるFP/UFPの凝集がより一層促進されるため、第二開口部40dから外部へ排出されるFP/UFPの量をさらに減らすことができる。
【0082】
また、本実施形態に係る構成によれば、カバー部材40を側板29の外側(定着ベルト21の長手方向Xにおける外側)に取り付けるだけで、定着ベルト21内の通気性を確保しつつ、FP/UFPの排出を抑制できる。このため、大幅な設計変更を伴うことなく、簡単な部品の追加によりFP/UFPの排出量が少ない定着装置及び画像形成装置を提供できるようになる。
【0083】
カバー部材40は、定着ベルト21内の熱気に曝されるため、耐熱性を有する材料により構成されることが好ましい。カバー部材40の材料としては、樹脂又は金属、あるいは樹脂と金属の組み合わせなどを用いることができる。
【0084】
図8は、
図65に示される比較例に係る定着装置と、上記本発明の実施形態に係る定着装置のそれぞれにおいて、外部へ排出されるFP/UFPの個数を測定した試験結果を示す図である。
【0085】
本試験においては、比較例に係る定着装置と本発明の実施形態に係る定着装置を別々に搭載する2台の画像形成装置を用意した。そして、各画像形成装置を試験室(容積2.18m3のチャンバー)内に設置し、用紙を10分間連続通紙して白紙の状態で出力した。このとき、装置外に排出されるFP/UFPの個数を、測定装置(高速応答型パーティクルサイザーFMPS : Fast Mobility Particle Sizer)を用いて測定した。
【0086】
ここで、FP/UFPの測定時間を連続通紙10分間としたのは、市場における画像形成装置の使用態様が数分以内の連続プリントであることがほとんどであり、5分以上の連続プリントを行うことは稀だからである。また、用紙を白紙の状態で出力したのは、トナー中のワックスなどから生じるFP/UFPが、測定対象に含まれないようにするためである。用紙を白紙で出力した点以外は、ブルーエンジェルのFP/UFP(微粒子)基準に準拠した装置及び条件により測定した。
【0087】
図8に示されるように、比較例に係る定着装置においては、連続通紙10分間に排出されるFP/UFPの個数がA×10
11[個/10分]であった。これに対して、本発明の実施形態に係る定着装置においては、連続通紙10分間に排出されるFP/UFPの個数が0.54×A×10
11[個/10分]であり、比較例に比べてFP/UFPの排出量が少なくなった。この試験結果から、本発明の実施形態によれば、FP/UFPの排出を抑制できることが確認できた。
【0088】
続いて、上記実施形態(第1実施形態)とは異なる他の実施形態について説明する。以下、主に上記実施形態とは異なる部分について説明し、同じ部分については適宜説明を省略する。
【0089】
図9及び
図10は、本発明の第2実施形態に係る定着装置20の構成を示す図である。
【0090】
図9及び
図10に示される第2実施形態においては、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ38が用いられている。ハロゲンヒータ38は、定着ベルト21内に配置されており、定着ベルト21の内周面に対して赤外線光を照射して加熱する非接触式の加熱源である。また、ハロゲンヒータ38の長手方向の両端部は、側板29に設けられる開口部29aを挿通して側板29の外側へ露出し、側板29の外側に固定される加熱源支持部材としてのブラケット39によって支持されている。
【0091】
このように、第2実施形態においては、ハロゲンヒータ38の長手方向端部を側板29の外側へ露出させるための開口部29aが設けられているので、この開口部29aを通して定着ベルト21の内部空間が外側へ開口している。そのため、本実施形態においては、開口部29aから外部へのFP/UFPの排出を抑制するため、ブラケット39よりも定着ベルト21の長手方向Xにおける外側にカバー部材40を配置し、このカバー部材40によって開口部29aの全体を覆っている。これにより、本実施形態においても、上記第1実施形態と同じように、定着ベルト21内から外部へのFP/UFPの排出を抑制することができる。
【0092】
ここで、第2実施形態においては、定着ベルト21の内部空間が、側板29の開口部29aのほか、ベルト保持部材27の開口部27dを通って外側へ開口する。このため、定着ベルト21を支持する回転体支持部材10の開口部としては、側板29の開口部29aのほか、ベルト保持部材27の開口部27dも含まれる。すなわち、本実施形態において、回転体支持部材10は、異なる位置に配置される異なる大きさの2つの開口部29a,27dを有しているが、本発明においてカバー部材40によって覆われる開口部(第一開口部)は、カバー部材40が対向する面に形成される開口部を意味する。すなわち、本実施形態において、カバー部材40が対向する面は側板29の外側の面であるので、その外側の面に形成される開口部29aの全体がカバー部材40によって覆われていればよい。また、本実施形態とは反対に、カバー部材40を側板29よりも内側に配置し、カバー部材40によって側板29の内側の面に形成される開口部29aの全体を覆ってもよい。
【0093】
また、本実施形態においても、カバー部材40が、上記側板29の開口部29a(以下、「第一開口部」という。)とは別の第二開口部40dを有している。このため、定着ベルト21内の通気性を確保でき、定着ベルト21内の温度上昇を抑制できる。
【0094】
また、本実施形態のように、第二開口部40dが、第一開口部29aとは間隔をあけた位置に配置され、さらに、定着ベルト21の長手方向Xから見て(
図10参照)、第一開口部29aとは異なる位置に配置されることにより、FP/UFPが第二開口部40dを通して排出されにくくなるので、FP/UFPの凝集をより効果的に促進させることができる。また、FP/UFPは上方へ移動しやすいことから、
図9及び
図10に示されるように、第二開口部40dは、第一開口部29aよりも下方に配置されることが好ましい。
【0095】
図11及び
図12は、本発明の第3実施形態に係る定着装置20の構成を示す図である。
【0096】
図11及び
図12に示される第3実施形態においては、カバー部材40に設けられる第二開口部40dが、ハロゲンヒータ38から伸びるハーネス37を通す開口部として用いられている。それ以外は、
図9及び
図10に示される上記第2実施形態の構成と同じである。
【0097】
ハーネス37は、ハロゲンヒータ38を外部電源に対して電気的に接続するための導電線であり、第二開口部40dを通って外部へ露出し、外部電源に接続される。このように、カバー部材40に設けられる第二開口部40dを、ハーネス37を通す開口部として用いてもよい。
【0098】
また、本実施形態のような構成は、加熱源がハロゲンヒータ38である構成のほか、上記第1実施形態のような抵抗発熱体31を有する面状のヒータ23を備える構成にも適用可能である。すなわち、面状のヒータ23に接続されるハーネス、あるいは、定着ベルト21内に配置される温度センサのハーネスなどがある場合は、これらのハーネスを通す開口部として第二開口部40dを用いてもよい。
【0099】
図13及び
図14は、本発明の第4実施形態に係る定着装置20の構成を示す図である。
【0100】
図13及び
図14に示される第4実施形態においては、ハロゲンヒータ38を支持するブラケット39を、カバー部材40として用いている。この場合、
図14に示されるように、カバー部材40としてのブラケット39は、定着ベルト21の長手方向Xから見て、側板29の開口部29aの全体を覆うように(開口部29aの開口領域全体に対して重なるように)配置される。
【0101】
このように、本実施形態においては、ブラケット39によって開口部29aの全体が覆われているため、定着ベルト21内において発生したFP/UFPが開口部29aを通って外側へ移動しても、ブラケット39によってFP/UFPの移動を規制することができる。また、ブラケット39によってFP/UFPの移動が規制されることにより、FP/UFPがブラケット39と側板29との間において滞留するため、FP/UFPの凝集が促進される。これにより、FP/UFPの個数が減少すると共に、FP/UFPがブラケット39の内面に付着して、外部へ排出されるFP/UFPの量を低減できる。また、ブラケット39がカバー部材40として機能することにより、専用のカバー部材40を別途設ける必要が無く、装置の簡素化及び小型化を図ることもできる。
【0102】
また、本実施形態において、ブラケット39と側板29との間には、隙間(
図13参照)が設けられているので、この隙間が定着ベルト21内の通気性を確保する上記第二開口部40dとして機能する。
【0103】
図15に示されるように、本実施形態に係るブラケット39は、ハロゲンヒータ38の長手方向端部を保持する矩形の保持板部39aと、保持板部39aの一辺からL字形に屈曲するように設けられる屈曲部39bとを有し、屈曲部39bを介して側板29に取り付けられている。このため、保持板部39aの外郭を形成する4つの辺のうち、屈曲部39bが設けられる一辺を除く3つの辺の箇所(
図15における二点鎖線にて囲まれる領域)において、隙間(第二開口部40d)が形成されている。従って、本実施形態においては、これら3つの辺の箇所において形成される隙間を介して定着ベルト21内の熱気が外部へ排出されると共に、外部の空気が定着ベルト21内へ流入する。
【0104】
このように、本実施形態においては、ブラケット39と側板29との間の隙間が、定着ベルト21内の通気性を確保するための第二開口部40dとして機能するため、定着ベルト21内の温度上昇を抑制することができる。
【0105】
ただし、ブラケット39と側板29との間の隙間(第二開口部40d)は、大きすぎると、隙間を通してFP/UFPが外部へ排出されやすくなるため、隙間の開口面積S2は上記式(1)の関係を満たす大きさに設定されることが好ましい。すなわち、ブラケット39と側板29との間の隙間の開口面積S2は、カバー部材40であるブラケット39の内部空間表面積S1の25%以下であることが好ましい。
【0106】
ここで、上記「ブラケット39の内部空間表面積S1」は、ブラケット39の内面の総面積だけではなく、ブラケット39と側板29との間に形成される隙間の開口面積S2も含む内部空間全体の表面積を意味する。従って、本実施形態においては、
図15に示される保持板部39aの横幅をL1、保持板部39aの縦幅をL2、側板29から保持板部39aまでの高さをL3とすると、ブラケット39の内部空間表面積は、下記式(5)により表される。
【0107】
(数5)
S1=L1×L2+L1×L3×2+L2×L3×2・・・式(5)
【0108】
また、上記隙間の開口面積S2は、保持板部39aの各寸法L1、L2、L3を用いて下記式(6)により表される。
【0109】
(数6)
S2=L1×L3+L2×L3×2・・・式(6)
【0110】
上記のように、ブラケット39と側板29との間に形成される隙間の開口面積S2をブラケット39の内部空間表面積S1の25%以下とすることにより、隙間を通してFP/UFPがより排出されにくくなるので、外部へ排出されるFP/UFPの量をより効果的に減らすことができる。
【0111】
また、FP/UFPの凝集をより効果的に促進させるため、ブラケット39の内部空間は大きい方が好ましい。具体的には、上記式(3)に示されるように、カバー部材40であるブラケット39の内部空間体積V1を8cm3以上とすることが好ましい。本実施形態におけるブラケット39の内部空間体積V1は、上記各寸法L1、L2、L3を用いて下記式(7)により表される。
【0112】
(数7)
V1=L1×L2×L3・・・式(7)
【0113】
このように、ブラケット39の内部空間体積V1を8cm3以上とすることにより、ブラケット39内におけるFP/UFPの凝集がより一層促進されるため、外部へ排出されるFP/UFPの量をさらに減らすことができる。
【0114】
続いて、本発明に係るカバー部材40の変形例について説明する。
【0115】
図5~
図7に示される上記第1実施形態においては、カバー部材40を構成する4つの側壁部42~45(第二壁部~第五壁部)のいずれもが、側板29に対して隙間なく接触するように配置されているが、4つの側壁部42~45のうち、いずれか1つ又は複数が、側板29に対して接触しないように配置されてもよい。
【0116】
例えば、
図16に示される例のように、カバー部材40の下部の側壁部43を側板29に対して接触しないように配置し、その側壁部43と側板29との間に隙間(図の斜線部)を形成してもよい。この場合、側壁部43と側板29との間の隙間が、定着ベルト21内の通気性を確保するための第二開口部40dとして機能する。
【0117】
また、
図17に示される例のように、カバー部材40は、一部材ではなく、複数の部材により構成されてもよい。この場合、カバー部材40は、ハロゲンヒータ38を支持するブラケット39と、側板29に設けられる3つの突片部29b,29c,29dによって構成されている。すなわち、ブラケット39によって、カバー部材40の底壁部41と1つの側壁部43が構成され、側板29に設けられる3つの突片部29b,29c,29dによって、カバー部材40の残りの3つの側壁部42,44,45が構成されている。
【0118】
ブラケット39及び各突片部29b,29c,29dは、互いに連結されておらず、それぞれの間に隙間があり、この隙間を通して定着ベルト21内の熱気を外部へ排出できると共に、外部から定着ベルト21内へ空気を流入させることができる。すなわち、ブラケット39と各突片部29b,29c,29dとの間の隙間は、定着ベルト21内の通気性を確保するための第二開口部40dとして機能する。
【0119】
また、
図18に示される例のように、カバー部材40は、箱状(立方体又は直方体)である場合に限らず、半球状であってもよい。
【0120】
この場合も、カバー部材40が側板29に取り付けられた状態においては、
図19及び
図20に示されるように、カバー部材40が、定着ベルト21の長手方向Xにおいて開口部29aと対向する第一壁部(底壁部41)と、定着ベルト21の長手方向Xから見て任意の一方向Y(
図20参照)において開口部29aを挟むように対向する第二壁部及び第三壁部(側壁部42,43)と、定着ベルト21の長手方向Xから見て第二壁部及び第三壁部(側壁部42,43)が対向する方向Yとは直交する方向Z(
図20参照)において開口部29aを挟むように対向する第四壁部及び第五壁部(側壁部44,45)を有する。
【0121】
また、カバー部材40の形状は、上記のような半球状のほか、楕円状、その他の曲面形状であってもよいし、曲面と平面とを含む形状であってもよい。
【0122】
以上のように、本発明によれば、カバー部材によって回転体支持部材の第一開口部の全体を覆うことにより、第一開口部からのFP/UFPの排出を抑制できる。また、本発明においては、カバー部材が、回転体の内部とカバー部材の外部とを連通する第二開口部を有するため、回転体内の通気性を確保でき、回転体内の温度上昇を抑制することが可能である。これにより、回転体内の温度上昇に伴う部品の破損及び劣化を回避しつつ、FP/UFPの排出量を低減でき、環境に配慮した定着装置及び画像形成装置を提供できるようになる。
【0123】
上記実施形態に係る説明においては、FP/UFPが発生する物質として、シリコーンオイル、シリコーングリース、フッ素オイル、フッ素グリースを例に挙げたが、これら以外の液状又は半固体状の潤滑性物質(潤滑性を有する物質)が用いられてもよい。なお、ここでいう潤滑性物質(潤滑性を有する物質)とは、部品と部品の間に介在し、これら部品間の摩擦抵抗を減少させる物質のことを指す。シリコーンオイル、シリコーングリース、フッ素オイル、フッ素グリース以外の液状又は半固体状の潤滑性物質が用いられる場合であっても、本発明によれば、斯かる潤滑性物質から生じるFP/UFPの排出を抑制することが可能である。
【0124】
また、本発明は、上記のような構成の定着装置に限らず、種々の構成の定着装置にも適用可能である。以下に、本発明を適用可能な定着装置の構成をいくつか例示する。
【0125】
図21及び
図22に示される定着装置130は、第一回転体としての定着ベルト131と、第二回転体としての加圧ローラ132と、加熱源としてのヒータ133と、加熱源保持部材としてのヒータホルダ134と、補強部材としての加圧ステー135と、回転体保持部材としてのフランジ137(
図22参照)と、温度検知部材としてのサーミスタ138を備えている。
【0126】
図21及び
図22に示される定着ベルト131、加圧ローラ132、ヒータ133、ヒータホルダ134、加圧ステー135、フランジ137の機能及び構成は、上記
図2に示される定着ベルト21、加圧ローラ22、ヒータホルダ24、ステー25、ベルト保持部材27と基本的に同じである。なお、フランジ137は、上記ベルト保持部材27と同じように、定着ベルト131内に挿入される挿入部としてのバックアップ部137aと、定着ベルト131の長手方向の移動を規制する規制部としてのフランジ部137bとを有している。この場合、各フランジ137は、バネなどの付勢部材によって定着ベルト131の各端部に向かって付勢されることにより、定着ベルト131内に挿入された状態で保持される。
【0127】
サーミスタ138は、加圧ステー135に設けられており、定着ベルト131の内周面に接触してその内周面の温度を検知する接触式の温度検知部材である。この場合、サーミスタ138によって検知された定着ベルト131の温度に基づいてヒータ133の発熱量が制御されることにより、定着ベルト131の温度が所定の定着温度(画像定着可能な温度)となるように制御される。
【0128】
次に、
図23及び
図24に示される定着装置50は、上記
図21及び
図22に示される定着装置130と同じように、セラミックヒータ(ヒータ53)を備える定着装置である。具体的に、
図23及び
図24に示される定着装置50は、第一回転体としての定着ベルト51と、第二回転体としての加圧部材52と、加熱源としてのヒータ53と、加熱源保持部材としてのヒータホルダ54と、補強部材55と、回転体保持部材としてのベルト保持部57(
図24参照)と、温度検知部材としての感熱体58(
図24参照)と、カバー部材59(
図24参照)を備えている。
【0129】
図23及び
図24に示される定着ベルト51、加圧部材52、ヒータ53、ヒータホルダ54、補強部材55、ベルト保持部57のそれぞれの機能及び構成は、上記
図21及び
図22に示される定着ベルト131、加圧ローラ132、ヒータ133、ヒータホルダ134、加圧ステー135、フランジ137と基本的に同じである。
【0130】
感熱体58は、ヒータホルダ54のヒータ53を保持する面とは反対側に設けられ、ヒータホルダ54を介してヒータ53の温度を検知する。感熱体58の検知温度に基づいてヒータ53の発熱が制御されることにより、定着ベルト51が所定の定着温度に維持される。
【0131】
カバー部材59は、耐熱樹脂製の箱状の部材である。カバー部材59が、定着ベルト51内において感熱体58を介してヒータホルダ54と対向するように配置されることにより、対応する感熱体58がカバー部材59によって覆われている。
【0132】
続いて、
図25及び
図26に示される定着装置60は、加熱源としてハロゲンヒータ(ヒータ63)を備える定着装置である。具体的に、
図25及び
図26に示される定着装置60は、第一回転体としての定着ベルト61と、第二回転体としての加圧ローラ62と、加熱源としてのヒータ63と、ニップ形成部材64と、補強部材としての支持部65と、反射部材としての反射板66と、回転体保持部材としての保持枠67(
図26参照)と、摺動部材としてのリング68(
図26参照)を備えている。
【0133】
図25及び
図26に示される定着ベルト61、加圧ローラ62、保持枠67のそれぞれの機能及び構成は、
図2に示される定着ベルト21、加圧ローラ22、ベルト保持部材27と基本的に同じである。
【0134】
ヒータ63は、ハロゲンヒータであり、定着ベルト61の内側に配置されている。ヒータ63から赤外線光が放射されると、赤外線光が定着ベルト61の内周面に照射され、定着ベルト61が加熱される。
【0135】
ニップ形成部材64は、定着ベルト61の内側に配置され、加圧ローラ62の加圧力を受けて定着ベルト61と加圧ローラ62との間にニップ部Nを形成する部材である。ニップ形成部材64の加圧ローラ62側とは反対側の面は、支持部65によって支持されている。このため、加圧ローラ62の加圧によるニップ形成部材64の撓みが抑制され、均一な幅のニップ部Nが得られる。また、ニップ形成部材64は、金属製のベースパッド640と、ベースパッド640と定着ベルト61の内周面との間に介在するフッ素樹脂製の摺動シート641を有している。このように、ベースパッド640とベルト61との間に摺動シート641が介在していることにより、ベースパッド640に対する定着ベルト61の摺動抵抗が低減される。
【0136】
反射板66は、定着ベルト61の内側においてヒータ63と対向するように配置されている。このため、ヒータ63から赤外線光が照射されると、一部の赤外線光が反射板66によって定着ベルト61の内周面へ反射される。これにより、定着ベルト61は、ヒータ63から直接照射される赤外線光に加え、反射板66によって反射される赤外線光によって加熱される。
【0137】
リング68は、定着ベルト61内に挿入される保持枠67の挿入部としての筒状部67aの外周面に装着され、定着ベルト61の長手方向端縁と保持枠67の規制部としての固定プレート67bとの間に介在する。定着ベルト61が回転すると、定着ベルト61と一緒にリング68が連れ回りする、あるいは、定着ベルト61が低摩擦性のリング68に対して摺動することにより、定着ベルト61と保持枠67との間において生じる摺動抵抗が低減される。
【0138】
続いて、
図27及び
図28に示される定着装置70は、第一回転体としての定着ベルト71と、第二回転体としての加圧ローラ72と、加熱源としてのハロゲンヒータ73と、ニップ形成部材74と、反射部材76と、回転体保持部材としてのベルト支持部材77(
図28参照)と、温度検知部材としての温度センサ78と、ガイド部材79を備えている。
【0139】
図27及び
図28に示される定着ベルト71、加圧ローラ72、ベルト支持部材77は、
図2に示される定着ベルト21、加圧ローラ22、ベルト保持部材27と基本的に同じ機能を有する。
【0140】
温度センサ78は、定着ベルト71の外周面に対して非接触に配置され、定着ベルト71の温度(外周面近傍の雰囲気温度)を検知する非接触式の温度検知部材である。
【0141】
ニップ形成部材74は、定着ベルト71の内側に配置され、加圧ローラ72との間に定着ベルト71を挟んで、ニップ部Nを形成する。
【0142】
反射部材76は、定着ベルト71の内側において、ハロゲンヒータ73の周囲を囲むように断面U字状に形成されている。また、反射部材76のハロゲンヒータ73と対向する内側の面76aは、反射率の高い反射面となっている。このため、ハロゲンヒータ73から赤外線光が放射されると、赤外線が反射部材76の反射面76aによってニップ形成部材74へ反射される。従って、ニップ形成部材74は、ハロゲンヒータ73から直接照射される赤外線光と、反射部材76によってニップ形成部材74へ反射される赤外線光によって加熱される。そして、ニップ形成部材74の熱が、ニップ部Nにおいて定着ベルト71へ伝達されることにより、定着ベルト71が加熱される。すなわち、ニップ形成部材74は、ニップ部Nを形成するほか、ニップ部Nにおいて定着ベルト71へ熱を伝達する伝熱部材としても機能する。斯かる機能が得られるように、ニップ形成部材74は、熱伝導率の良い銅又はアルミニウムなどの金属材料によって構成されている。
【0143】
また、反射部材76は、ニップ形成部材74を支持して補強する補強部材(ステー)としての機能も兼ねる。反射部材76が、定着ベルト71の長手方向に渡ってニップ形成部材74を支持することにより、ニップ形成部材74の撓みが抑制され、定着ベルト71と加圧ローラ72との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。また、補強部材としての機能を確保するため、反射部材76は、SUS、SECCなどの剛性の高い金属材料により構成されることが好ましい。
【0144】
ガイド部材79は、定着ベルト71の内側に配置され、回転する定着ベルト71を内側からガイドする部材である。ガイド部材79は、定着ベルト71の内周面に沿って湾曲するガイド面79aを有しており、定着ベルト71がこのガイド面79aに沿ってガイドされることにより、定着ベルト71が大きな変形を伴うことなく円滑に回転する。
【0145】
続いて、
図29及び
図30に示される定着装置80は、加熱源としてセラミックヒータ(ヒータ83)を備える定着装置である。具体的に、
図29及び
図30に示される定着装置80は、第一回転体としての定着ベルト81と、第二回転体としての加圧ローラ82と、加熱源としてのヒータ83と、加熱源保持部材としての保持部材84と、補強部材としてのステー85と、回転体保持部材としての円弧状ガイド87(
図30参照)と、熱伝達部材である熱拡散部材88と、断熱部材としての保熱板89を備えている。
【0146】
図29及び
図30に示される定着ベルト81、加圧ローラ82、ヒータ83、保持部材84、ステー85、円弧状ガイド87の機能及び構成は、
図2に示される定着ベルト21、加圧ローラ22、ヒータホルダ24、ステー25、ベルト保持部材27と基本的に同じである。なお、保持部材84は、ヒータ83のほか、熱拡散部材88と保熱板89を重ねた状態で保持する。
【0147】
熱拡散部材88は、ステンレス、アルミニウム合金、鉄などの金属材料により構成されている。熱拡散部材88は、定着ベルト81の内周面に接触するように配置されており、ヒータ83から生じる熱を定着ベルト81へ伝達すると共に、定着ベルト81を介して加圧ローラ82に接触し、ニップ部Nを形成する。また、ヒータ83と熱拡散部材88との間に熱伝導グリースが塗布されており、ヒータ83から熱拡散部材88への熱伝達効率を向上させている。一方、保熱板89は、ヒータ83の熱が保持部材84とステー85に伝達されるのを抑制するため、ヒータ83の熱拡散部材88側の面とは反対側に配置されている。
【0148】
定着ベルト81が回転すると、熱拡散部材88に対して定着ベルト81が摺動するため、定着ベルト81と熱拡散部材88との間には摺動性を向上させる潤滑剤が塗布されている。また、定着ベルト81に対して接触する熱拡散部材88の摺動面には、低摩擦で耐摩耗性を有するガラスコーティング又は硬質クロムメッキなどの表面層が形成されている。
【0149】
続いて、
図31及び
図32に示される定着装置90は、第一回転体としての無端状のベルト91と、加熱部材としての加熱ローラ96と、加熱源としてのヒータ93と、第二回転体としての加圧ローラ92と、ニップ形成部材94と、補強部材としての支持部材95と、ガイド部材98と、潤滑剤供給部材としての潤滑剤塗布部材99と、軸受97(
図32参照)を備えている。
【0150】
図31に示されるように、ベルト91は、加熱ローラ96とニップ形成部材94とガイド部材98に巻きかけられている。
図32に示されるように、加熱ローラ96は、その軸方向(長手方向)両端部の外周面に配置される一対の軸受97によって回転可能に保持される。また、加熱ローラ96は、バネなどの付勢部材によってニップ形成部材94に対して離れる方向に付勢されている。これにより、ベルト91には所定の張力が付与され、この状態で、加圧ローラ92が回転駆動すると、ベルト91が従動回転する。
【0151】
ニップ形成部材94は、押圧部材940と、押圧部材940とベルト91の内周面との間に介在する低摩擦性の摺動シート941を有している。押圧部材940が支持部材95によって支持されていることにより、押圧部材940が加圧ローラ92の加圧力を受け、ニップ部Nが形成される。
【0152】
ヒータ93は、ハロゲンヒータなどであり、加熱ローラ96内に配置されている。ヒータ93が発熱すると、加熱ローラ96が加熱され、加熱ローラ96の熱がベルト91へ伝達される。
【0153】
潤滑剤塗布部材99は、ベルト91の内周面に接触し、ベルト91の内周面に対して摺動性を向上させる潤滑剤を供給する。ベルト91の内周面に供給された潤滑剤は、ベルト91の回転に伴って、ガイド部材98とベルト91との間、及びニップ形成部材94とベルト91との間に介在し、ベルト91が円滑に回転できるようになる。
【0154】
続いて、
図33及び
図34に示される定着装置110は、第一回転体としての定着ベルト111と、定着ローラ116と、第二回転体としての加圧ローラ112と、加熱源としてのヒータ113と、ニップ形成部材としての加圧パッド114と、ガイド部材115と、補強部材としての支持部材117と、温度検知部材としての温度センサ118と、熱伝達部材119と、回転体保持部材としてのベルト保持部材122(
図34参照)を備えている。
【0155】
定着ベルト111は、定着ローラ116と、加圧パッド114と、ガイド部材115と、熱伝達部材119に巻きかけられている。加圧パッド114と対向する位置において、加圧ローラ112が定着ベルト111の外周面に圧接されている。このため、加圧ローラ112が回転駆動すると、これに伴って定着ローラ116は従動回転する。
【0156】
ヒータ113は、セラミックヒータなどの面状又は板状のヒータであり、熱伝達部材119に設けられている。熱伝達部材119は、ヒータ113と定着ベルト111の間に介在し、ヒータ113の熱を定着ベルト111へ伝達する部材である。また、熱伝達部材119は、支持部材117に取り付けられたバネ120によって定着ベルト111の内周面に接触するように付勢されている。
【0157】
加圧パッド114は、支持部材117に取り付けられた別のバネ121によって定着ベルト111の内周面に接触するように付勢されている。これにより、加圧パッド114は、定着ベルト111を介して加圧ローラ112に圧接され、定着ベルト111と加圧ローラ112との間にニップ部Nが形成される。
【0158】
ガイド部材115は、支持部材117に取り付けられて支持されている。また、ガイド部材115には、温度センサ118が取り付けられており、温度センサ118によって定着ベルト111の温度が検知される。
【0159】
続いて、
図35及び
図36に示される定着装置140は、第一回転体としての定着ベルト141と、第二回転体としての加圧ローラ142と、加熱源としてのヒータ143と、ニップ形成部材144と、補強部材としてのステー145と、反射部材としてのリフレクタ146を備えている。ニップ形成部材144は、メタルサポータ147と、均熱パッド148を有している。
【0160】
定着ベルト141は、所定の内径を有し、用紙Pの幅よりも長い幅を有する無端状ベルトである。定着ベルト141は、可撓性を有する材料で形成され、例えば、基材層と、基材層の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層と、を有している。
【0161】
基材層は、SUSやNiなどの金属により形成されている。弾性層は、シリコーンゴムなどにより形成される。離型層は、PFAチューブなどにより形成される。定着ベルト141の長手方向両端部は、回転体支持部材としての定着ハウジングに回転可能に支持されている。
【0162】
定着ベルト141の長手方向中空部の下部には、ステー145が貫通している。ステー145は、定着ベルト141の長手方向Xの長さよりも長く、上面が開口したチャンネル状の部材である。ステー145の長手方向両端部は、定着ハウジングに支持されている。ステー145の底板には、定着ベルト141の長手方向Xに所定の間隔をあけて配置される3つの位置決め孔145a(
図35参照)が形成されている。ステー145の上面には、リフレクタ146が支持されている。
【0163】
ヒータ143(例えばハロゲンヒータ)は、定着ベルト141の長手方向Xの長さと同等の長さを有している。ヒータ143は、定着ベルト141の中空部の上部(ステー145の上方)に配置されて、長手方向両端部が定着ハウジングに支持されている。
【0164】
ヒータ143は、定着ベルト141の内周面(主に上側の半周よりもやや狭い部分)に輻射熱(赤外線光など)を放射し、定着ベルト141を加熱する。ヒータ143から下方に放射された輻射熱は、リフレクタ146によって定着ベルト141の内周面に反射される。ヒータ143は制御部により制御される。
【0165】
加圧ローラ142は、芯金と、芯金の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層と、を有している。弾性層は、シリコーンゴムなどにより形成される。離型層は、PFAチューブなどにより形成される。
【0166】
加圧ローラ142は、定着ベルト141の下方に配置されて、定着ハウジングに支持されている。加圧ローラ142は、定着ベルト141の外周面に接触して、加圧ローラ142と定着ベルト141との間にニップ部Nを形成する。加圧ローラ142は、例えばモータに接続されて回転駆動される。モータは、例えば制御部により制御される。加圧ローラ142が
図35における反時計回りに回転すると、定着ベルト141は、加圧ローラ142に従動して加圧ローラ142の回転方向とは反対の時計回りに回転する。このとき、用紙Pがニップ部Nへ進入すると、回転する定着ベルト141と加圧ローラ142とによって用紙Pが搬送され、用紙Pがニップ部Nを通過する。
【0167】
メタルサポータ147は、定着ベルト141の長手方向Xに長い扁平な略直方体状の部材であり、例えば金属材料で形成されている。メタルサポータ147の上面には、複数個(18個)の突起147aと、複数本(7本)の固定ピン147bと、複数本(3本)の位置決めピン147cと、が所定の位置に立設されている。
【0168】
均熱パッド148は、メタルサポータ147の幅と等しい幅で、メタルサポータ147に一周巻き付け可能な長さを有する長方形のシート状の部材であり、一例として、PTFE繊維とPPS繊維を編み込んで形成されている。
【0169】
均熱パッド148は、メタルサポータ147に一周巻き付けられて、両端部がメタルサポータ147の上面に重ねられている。両端部には、それぞれ、メタルサポータ147の突起147aと固定ピン147bと位置決めピン147cとがそれぞれ嵌合可能な開口部148aと固定孔148bと位置決め孔148cとが開けられている。
【0170】
ニップ形成部材144は、メタルサポータ147の位置決めピン147cが、ステー145の位置決め孔145aに嵌め込まれることで、ステー145に位置決めされている。
【0171】
均熱パッド148には潤滑剤(オイル、グリース)を付与してもよい。この場合、均熱パッド148は、定着ベルト141の内周面に潤滑剤を介して接触する。
【0172】
上記のような本発明を適用し得る定着装置においても、定着ベルトなどの回転体の内側に相対的に摺動する摺動部材が配置されているため、これらの間で生じる摺動抵抗を低減するため潤滑剤が用いられる。従って、回転体が加熱され、その内部に配置される潤滑剤が温度上昇すると、潤滑剤からFP/UFPが発生し、回転体を支持する回転体支持部材の開口部からFP/UFPが排出される虞がある。そのため、これらの定着装置においても本発明を適用し、回転体支持部材の開口部をカバー部材によって覆うことにより、上記実施形態に係る定着装置と同じように、外部へのFP/UFPの排出を抑制できるようになる。
【0173】
また、本発明は、前述の定着装置のほか、
図37~
図40に示されるような定着装置にも適用可能である。以下、
図37~
図40に示される各定着装置の構成について説明する。
【0174】
図37に示される定着装置20は、上記
図2に示される定着装置20と比べて、ヒータ23の温度を検知する温度センサ26の位置が異なる。それ以外の部分は、同じ構成である。
図37に示される定着装置20においては、通紙方向におけるニップ部Nの中央Mよりも通紙方向上流側(ニップ入口側)に配置されている。一方、
図2に示される定着装置20においては、温度センサ26が、ニップ部Nの中央Mに配置されている。
図37に示されるように、温度センサ26がニップ部Nの中央M1よりも通紙方向上流側に配置されている場合は、温度センサ26によってニップ入口側の温度を精度良く検知できる。ニップ入口側においては、ニップ部Nに進入する用紙Pによって定着ベルト21の熱が特に奪われやすい領域であるため、温度センサ26によってニップ入口側の温度を精度良く検知することにより、画像の定着性を確保でき、定着オフセット(トナー画像を十分に加熱できない状態)の発生を効果的に抑制できる。
【0175】
次に、
図38に示される実施形態においては、ヒータ23によって定着ベルト21を加熱する加熱用のニップ部N1と、用紙Pを通過させる定着用のニップ部N2が、それぞれ別の位置に形成されている。具体的に、本実施形態においては、定着ベルト21の内側に、ヒータ23のほかニップ形成部材150が配置され、ヒータ23とニップ形成部材150に対してそれぞれ加圧ローラ151,152が定着ベルト21の外側から押し当てられている。これより、ヒータ23と一方の加圧ローラ151との間において加熱用のニップ部N1が形成され、ニップ形成部材150と他方の加圧ローラ152との間において定着用のニップ部N2が形成されている。この場合、加熱用のニップ部N1において定着ベルト21が加熱され、定着用のニップ部N2において定着ベルト21の熱が用紙Pへ付与されることにより、未定着画像が用紙Pに定着される。
【0176】
続いて、
図39に示される定着装置20は、上記
図38に示される定着装置において、ヒータ23側の加圧ローラ151が省略され、ヒータ23が定着ベルト21の曲率に合わせて円弧状に形成された例である。それ以外は、
図38に示される構成と同じである。この場合、ヒータ23が円弧状に形成されていることにより、定着ベルト21とヒータ23とのベルト回転方向の接触長さを確保し、定着ベルト21を効率良く加熱できる。
【0177】
続いて、
図40に示される定着装置20は、一対のベルト161,162の間に、ローラ163が配置された例である。この例においては、
図40における左側のベルト161内にヒータ23が配置され、右側のベルト162内にニップ形成部材153が配置されている。ヒータ23が左側のベルト161を介してローラ163に接触することにより、加熱用のニップ部N1が形成され、ニップ形成部材153が右側のベルト162を介してローラ163に接触することにより、定着用のニップ部N2が形成されている。
【0178】
上記のような
図37~
図40に示される各定着装置においても、本発明を適用することにより、上記実施形態に係る定着装置と同じように、外部へのFP/UFPの排出を抑制できるようになる。
【0179】
また、本発明に係る画像形成装置は、
図1に示されるカラー画像形成装置に限らず、
図41に示されるような構成の画像形成装置にも適用可能である。以下、本発明を適用可能な他の実施形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
【0180】
図41に示される画像形成装置100は、感光体ドラムなどから成る画像形成手段170と、一対のタイミングローラ171などから成る用紙搬送部と、給紙装置172と、定着装置173と、排紙装置174と、読取部175を備えている。給紙装置172は複数の給紙トレイを備え、それぞれの給紙トレイが異なるサイズの用紙を収容する。
【0181】
読取部175は原稿Qの画像を読み取る。読取部175は、読み取った画像から画像データを生成する。給紙装置172は、複数の用紙Pを収容し、搬送路へ用紙Pを送り出す。タイミングローラ171は搬送路上の用紙Pを画像形成手段170へ搬送する。
【0182】
画像形成手段170は、用紙Pにトナー画像を形成する。具体的に、画像形成手段170は、感光体ドラムと、帯電ローラと、露光装置と、現像装置と、補給装置と、転写ローラと、クリーニング装置と、除電装置を含む。定着装置173は、トナー画像を加熱及び加圧して、用紙Pにトナー画像を定着させる。トナー画像の定着された用紙Pは、搬送ローラなどにより排紙装置174へ搬送される。排紙装置174は、画像形成装置100の外部に用紙Pを排出する。
【0183】
次に、
図42に基づき、本実施形態に係る定着装置173について説明する。なお、
図42に示される構成において、
図2に示される上記実施形態の定着装置20と共通する構成の部分については、同一の符号を付すことによりその説明を省略する。
【0184】
図42に示されるように、定着装置173は、定着ベルト21と、加圧ローラ22と、ヒータ23と、ヒータホルダ24と、ステー25と、温度センサ26などを備えている。
【0185】
定着ベルト21と加圧ローラ22との間にニップ部Nが形成される。ニップ部Nのニップ幅は10mm、定着装置173の線速は240mm/sである。
【0186】
定着ベルト21は、ポリイミドの基体と離型層とを備え、弾性層を有していない。離型層は、例えばフッ素樹脂から成る耐熱性のフィルム材によって形成される。定着ベルト21の外径は約24mmである。
【0187】
加圧ローラ22は、芯金と弾性層と離型層とを含む。加圧ローラ22の外径は24~30mmであり、弾性層の厚みは3~4mmである。
【0188】
ヒータ23は、基材と、断熱層と、抵抗発熱体などを含む導体層と、絶縁層とを含み、全体の厚みが1mmに設定される。また、ヒータ23の用紙搬送方向の幅は13mmである。
【0189】
図43に示されるように、ヒータ23の導体層は、複数の抵抗発熱体31と、給電線34と、電極部33A~33Cを備えている。複数の抵抗発熱体31は、ヒータ23の長手方向(矢印X方向)に互いに間隔をあけて配置されている。ここで、各抵抗発熱体31同士の間の部分を、「分割領域」と称すると、
図43の拡大図に示されるように、各抵抗発熱体31の間は、それぞれ分割領域Bが形成されている(
図43においては、拡大図の範囲のみで分割領域Bを図示しているが、実際は全ての抵抗発熱体31同士の間に分割領域Bが設けられている)。また、
図43において、矢印Y方向は、ヒータ23の長手方向Xに交差又は直交する方向(長手交差方向)で、基材30の厚み方向と異なる方向である。また、矢印Y方向は、複数の抵抗発熱体31の配列方向に交差する方向(配列交差方向)、又は、基材30の抵抗発熱体31が設けられた面に沿う方向でヒータ23の短手方向、あるいは、定着装置に通紙される用紙の搬送方向と同じ方向でもある。
【0190】
また、複数の抵抗発熱体31により、中央の発熱部35Bと、これとは独立して発熱可能な両端側の発熱部35A,35Cが構成されている。例えば、3つの電極部33A~33Cのうち、
図43の左端の電極部33Aと中央の電極部33Bに通電すると、両端側の発熱部35A,35Cが発熱する。また、両端の電極部33A,33Cに通電すると、中央の発熱部35Bが発熱する。例えば、小サイズ用紙に定着動作を行う場合は、中央の発熱部35Bのみを発熱させ、大サイズ用紙に定着動作を行う場合は、全ての発熱部35A~35Cを発熱させることにより、用紙のサイズに応じた加熱が可能である。
【0191】
また、
図44に示されるように、本実施形態に係るヒータホルダ24は、ヒータ23を収容して保持する凹部24aを有している。凹部24aは、ヒータホルダ24のヒータ23側に形成されている。また、凹部24aは、ヒータ23とほぼ同じサイズの矩形(長方形)に形成された面(底面)24fと、その面24fの外郭を形成する4つの辺に沿って面24fと交差するように設けられた4つの壁部(側面)24b,24c,24d,24eにより構成されている。なお、
図44において、右側の壁部24eは、図示省略されている。また、ヒータ23の長手方向X(抵抗発熱体31の配列方向)に対して交差する一対(左右)の壁部24d,24eのうち、一方の壁部を省略し、凹部24aがヒータ23の長手方向の一端部において開口するように構成してもよい。
【0192】
図45に示されるように、本実施形態に係るヒータ23及びヒータホルダ24は、コネクタ36によって保持される。コネクタ36は、樹脂製(例えばLCP)のハウジングと、ハウジング内に設けられた複数のコンタクト端子などを有している。
【0193】
コネクタ36は、ヒータ23及びヒータホルダ24に対して、ヒータ23の長手方向X(抵抗発熱体31の配列方向)とは交差する方向に取り付けられる(
図45のコネクタ36からの矢印方向参照)。また、コネクタ36は、ヒータ23の長手方向X(抵抗発熱体31の配列方向)におけるいずれか一方の端部側であって、加圧ローラ22の駆動モータが設けられる側とは反対側において、ヒータ23及びヒータホルダ24に取り付けられる。なお、コネクタ36のヒータホルダ24に対する取り付け時に、コネクタ36とヒータホルダ24のうちの一方に設けられた凸部が、他方に設けられた凹部に係合し、凸部が凹部内を相対移動する構成としてもよい。
【0194】
コネクタ36が取り付けられた状態においては、ヒータ23とヒータホルダ24がその表側と裏側からコネクタ36によって挟まれるようにして保持される。この状態において、各コンタクト端子がヒータ23の各電極部に接触(圧接)されることにより、コネクタ36を介して各抵抗発熱体31と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から各抵抗発熱体31へ電力が供給可能な状態となる。
【0195】
また、
図45に示されるフランジ48は、定着ベルト21の長手方向における両端部に設けられ、定着ベルト21の両端部を内側から保持するベルト保持部材である。フランジ48は、ステー25の両端に挿入され、定着装置のフレーム部材である一対の側板に固定される。
【0196】
図46は、本実施形態に係る温度センサ26と、通電遮断部材であるサーモスタット19の配置を示す図である。
【0197】
図46に示されるように、本実施形態に係る温度センサ26は、定着ベルト21の長手方向Xにおける中央部Xm側と端部側のそれぞれの内周面に対向するように配置されている。また、これらの温度センサ26のうちいずれか一方は、ヒータ23の抵抗発熱体同士間の上記分割領域B(
図43参照)に対応する位置に配置される。
【0198】
また、定着ベルト21の中央部Xm側と端部側においては、通電遮断部材としてのサーモスタット19が定着ベルト21の内周面に対向するように配置されている。各サーモスタット19は、定着ベルト21の内周面の温度又は内周面近傍の雰囲気温度を検知する。サーモスタット19によって検知された温度があらかじめ設定された閾値を超えた場合は、ヒータ23への通電が遮断される。
【0199】
また、
図46及び
図47に示されるように、定着ベルト21の両端部を保持するフランジ48には、スライド溝48aが設けられている。スライド溝48aは、定着ベルト21の加圧ローラ22に対する接離方向に延在する。スライド溝48aには定着装置の筐体の係合部が係合する。この係合部がスライド溝48a内を相対移動することにより、定着ベルト21は加圧ローラ22に対する接離方向へ移動可能に構成されている。
【0200】
また、本発明は、次のような構成の定着装置にも適用可能である。
【0201】
図48は、本発明を適用可能な別の定着装置の概略構成図である。
【0202】
図48に示される定着装置20は、第一回転体あるいは定着部材としての定着ベルト21と、第二回転体あるいは加圧部材としての加圧ローラ22と、加熱源としてのヒータ23と、加熱源保持部材としてのヒータホルダ24と、補強部材としてのステー25と、温度検知部材としての温度センサ(サーミスタ)26と、均熱部材(熱移動補助部材)である第一高熱伝導部材181を備えている。定着ベルト21は、無端状のベルトから成る。加圧ローラ22は、定着ベルト21の外周面に接触して、定着ベルト21との間にニップ部Nを形成する。ヒータ23は、定着ベルト21を加熱する。ヒータホルダ24は、ヒータ23及び第一高熱伝導部材181を保持する。ステー25は、ヒータホルダ24を支持する。温度センサ26は、第一高熱伝導部材181の温度を検知する。なお、
図48の紙面に直交する方向は、定着ベルト21、加圧ローラ22、ヒータ23、ヒータホルダ24、ステー25、第一高熱伝導部材181の長手方向であり、以下、この方向を単に長手方向と呼ぶ。また、この長手方向は搬送される用紙の幅方向、定着ベルト21の長手方向、そして、加圧ローラ22の軸方向でもある。
【0203】
ここで、
図48に示されるヒータ23は、上記
図43に示されるヒータと同じように、複数の抵抗発熱体31が、ヒータ23の長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。しかしながら、複数の抵抗発熱体31が互いに間隔をあけて配置される構成においては、抵抗発熱体31同士の間隔である分割領域Bにおけるヒータ23の温度が、抵抗発熱体31が配置される部分に比べて低くなる傾向にある。このため、分割領域Bにおいては、定着ベルト21の温度も低くなり、定着ベルト21の温度が長手方向に渡って不均一になる虞がある。
【0204】
そのため、
図48に示されるヒータ23においては、分割領域Bにおける温度落ち込みを抑制して、定着ベルト21の長手方向の温度ムラを抑制するために、上記第一高熱伝導部材181を設けている。以下、第一高熱伝導部材181についてより詳細に説明する。
【0205】
図48に示されように、第一高熱伝導部材181は、図の左右方向において、ヒータ23とステー25との間に配置され、特にヒータ23とヒータホルダ24との間に挟まれる。つまり、第一高熱伝導部材181の一方の面は、ヒータ23の基材30の裏面に当接し、第一高熱伝導部材181の他方の面(一方の面とは反対側の面)は、ヒータホルダ24に当接している。
【0206】
ステー25は、ヒータ23などの厚み方向に延在する二つの垂直部25aの当接面25a1をヒータホルダ24に当接させ、ヒータホルダ24、第一高熱伝導部材181、ヒータ23を支持する。長手交差方向(
図48の上下方向)において、当接面25a1は抵抗発熱体31が設けられる範囲よりも外側に設けられる。これにより、ヒータ23からステー25への伝熱を抑制でき、ヒータ23が定着ベルト21を効率よく加熱できる。
【0207】
図49に示されるように、第一高熱伝導部材181は、一定の厚みを有する板状の部材であり、例えば、その厚みが0.3mm、長手方向の長さが222mm、長手交差方向の幅が10mmに設定される。この例においては、第一高熱伝導部材181が単一の板材により構成されるが、複数の部材からなってもよい。なお、
図49においては、
図48に記載のガイド部28が省略されている。
【0208】
第一高熱伝導部材181は、ヒータホルダ24の凹部24aに嵌め込まれ、その上からヒータ23が取り付けられることで、ヒータホルダ24とヒータ23とに挟み込まれて保持される。この例においては、第一高熱伝導部材181の長手方向の幅がヒータ23の長手方向の幅と略同じに設定されている。第一高熱伝導部材181及びヒータ23は、凹部24aの長手方向と交差する方向に配置される両側壁(長手方向規制部)24d,24eによって、長手方向の移動が規制される。このように、第一高熱伝導部材181の定着装置内における長手方向の位置ずれが規制されることにより、長手方向の狙いの範囲に対して熱伝導効率を向上させることができる。また、第一高熱伝導部材181及びヒータ23は、凹部24aの長手方向に配置される両側壁(配列交差方向規制部)24b,24cによって、長手交差方向の移動が規制される。
【0209】
第一高熱伝導部材181が配置される長手方向(矢印X方向)の範囲は、
図49に示される範囲に限らない。例えば、
図50に示されるように、抵抗発熱体31が配置される長手方向の範囲のみに第一高熱伝導部材181が配置されてもよい(
図50におけるハッチング部参照)。
【0210】
また、
図51に示される例のように、複数配置される第一高熱伝導部材181の一部を、長手方向(矢印X方向)の間隔(分割領域)Bに対応する位置の全域のみに配置してもよい。なお、
図51においては、便宜上、抵抗発熱体31と第一高熱伝導部材181が
図51の上下方向にずらして示されているが、両者は長手交差方向(矢印Y方向)のほぼ同じ位置に配置される。また、第一高熱伝導部材181は、抵抗発熱体31の長手交差方向(矢印Y方向)の一部に渡って配置されてもよいし、
図52に示される例のように、第一高熱伝導部材181が抵抗発熱体31の長手交差方向(矢印Y方向)の全体に渡って配置されていてもよい。さらに、
図52に示されるように、第一高熱伝導部材181を、長手方向の間隔Bに対応する位置に加えて、その間隔Bを間にはさむ両側の抵抗発熱体31にまたがって配置することもできる。この「第一高熱伝導部材181を両側の抵抗発熱体31にまたがって配置する」とは、第一高熱伝導部材181が両側の抵抗発熱体31と長手方向の位置が少なくとも一部重なることを意味する。また、第一高熱伝導部材181は、ヒータ23の全ての間隔Bに対応する位置に配置されてもよいし、
図52に示される例のように、一部の間隔B(この場合1箇所)に対応する位置だけ配置されてもよい。ここで、「第一高熱伝導部材181が間隔Bに対応する位置に配置される」とは、間隔Bと第一高熱伝導部材181の少なくとも一部が長手方向において重なることを意味する。
【0211】
加圧ローラ22の加圧力により、第一高熱伝導部材181はヒータ23とヒータホルダ24との間に挟み込まれてこれらの部材に密着する。第一高熱伝導部材181がヒータ23に接触することにより、ヒータ23の長手方向の熱伝導効率が向上する。そして、第一高熱伝導部材181が、長手方向において、ヒータ23の間隔Bに対応する位置に配置されることにより、間隔Bにおける熱伝導効率を向上させることができ、間隔Bへ伝達される熱量を増やし、間隔Bにおける温度を上昇させることができる。これにより、ヒータ23の長手方向の温度ムラを抑制でき、定着ベルト21の長手方向の温度ムラを抑制できる。その結果、用紙に定着される画像の定着ムラ及び光沢ムラを抑制できる。また、間隔Bにおいて十分な定着性能を確保するために、ヒータ23の発熱量を多くする必要が無くなり、定着装置の省エネ化を実現できる。特に、抵抗発熱体31が配置される長手方向全域に渡って第一高熱伝導部材181が配置される場合は、ヒータ23による主な加熱領域(つまり、通紙される用紙の画像形成領域)全域において、ヒータ23の伝熱効率を向上させ、ヒータ23ひいては定着ベルト21の長手方向の温度ムラを抑制できる。
【0212】
さらに、第一高熱伝導部材181とPTC特性を有する抵抗発熱体31との組み合わせにより、小サイズ用紙通紙時の非通紙領域による過昇温をより効果的に抑制できる。このPTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。すなわち、抵抗発熱体31がPTC特性を有していることにより、非通紙領域における抵抗発熱体31の発熱量を効果的に抑制できると共に、第一高熱伝導部材181によって、温度が上昇した非通紙領域の熱量を通紙領域へ効率的に伝達できるので、これらの相乗効果により非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。
【0213】
また、間隔Bの周辺においても、間隔Bの発熱量が小さいことによりヒータ23の温度が低くなるため、第一高熱伝導部材181を配置することが好ましい。例えば、
図53に示される間隔Bの周辺の領域を含む拡大分割領域Cに対応する位置に、第一高熱伝導部材181を配置することにより、間隔B及びその周辺における長手方向の熱伝達効率を向上させ、ヒータ23の長手方向の温度ムラをより効果的に抑制できる。また、第一高熱伝導部材181が、全ての抵抗発熱体31が配置される領域の長手方向全体に渡って配置されている場合は、ヒータ23(定着ベルト21)の長手方向の温度ムラをより確実に抑制できる。
【0214】
【0215】
図54に示される定着装置20は、ヒータホルダ24と第一高熱伝導部材181との間に第二高熱伝導部材182を有している。第二高熱伝導部材182は、ヒータホルダ24、ステー25、第一高熱伝導部材181などの部材の積層方向(
図54における左右方向)において、第一高熱伝導部材181と異なる位置に設けられる。より詳しくは、第二高熱伝導部材182は、第一高熱伝導部材181に重ね合わせされて設けられる。また、本実施形態においては、上記
図48に示される例と同じように、温度センサ(サーミスタ)26が設けられているが、
図54は、温度センサ26が配置されていない断面を示している。
【0216】
第二高熱伝導部材182は、基材30よりも熱伝導率の高い部材、例えばグラフェン又はグラファイトにより構成される。この例においては、第二高熱伝導部材182が、厚み1mmのグラファイトシートにより構成される。また、第二高熱伝導部材182は、アルミニウム、銅、銀などの板材により構成されてもよい。
【0217】
図55に示されるように、第二高熱伝導部材182は、ヒータホルダ24の凹部24aに複数配置され、各第二高熱伝導部材182同士の間には長手方向の間隔が介在している。ヒータホルダ24の第二高熱伝導部材182が設けられる部分には、その他の部分よりも一段深い窪みが形成されている。第二高熱伝導部材182は、長手方向の両側において、ヒータホルダ24との間に隙間が設けられている。これにより、第二高熱伝導部材182からヒータホルダ24への伝熱が抑制され、ヒータ23によって定着ベルト21が効率的に加熱される。なお、
図55においては、
図54に記載のガイド部28が省略されている。
【0218】
図56に示されるように、第二高熱伝導部材182(ハッチング部参照)は、長手方向(矢印X方向)において、間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に配置されている。特に、この例においては、第二高熱伝導部材182が、間隔B全域に渡って配置されている。なお、
図56(及び後述の
図58)においては、第一高熱伝導部材181が、全ての抵抗発熱体31が配置される領域の長手方向全体に渡って配置されている場合を示しているが、第一高熱伝導部材181の配置範囲はこれに限らない。
【0219】
この例のように、第一高熱伝導部材181に加えて、長手方向の間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に第二高熱伝導部材182が配置されていることにより、間隔Bにおける長手方向の熱伝達効率をより一層向上させ、ヒータ23の長手方向の温度ムラをより効果的に抑制できる。また、最も好ましくは、
図57に示されるように、一部の第一高熱伝導部材181及び第二高熱伝導部材182を、間隔Bに対応する位置でその全域にのみに設ける。これにより、間隔Bに対応する位置において、その他の領域と比較して特に熱伝達効率を向上させることができる。なお、
図57においては、便宜上、抵抗発熱体56と第一高熱伝導部材181及び第二高熱伝導部材182が、図の上下方向にそれぞれずらして示されているが、これらは長手交差方向(矢印Y方向)のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第一高熱伝導部材181及び第二高熱伝導部材182は、抵抗発熱体31の長手交差方向の一部に配置されていてもよいし、長手交差方向の全体を覆うようにして配置されていてもよい。
【0220】
また、第一高熱伝導部材181及び第二高熱伝導部材182の両方が上記グラフェンシートにより構成されてもよい。この場合、グラフェンの面に沿う所定の方向、つまり、厚み方向ではなく長手方向に熱伝導率の高い第一高熱伝導部材181及び第二高熱伝導部材182を形成できる。このため、ヒータ23及び定着ベルト21の長手方向の温度ムラを効果的に抑制できる。
【0221】
グラフェンは薄片状の粉体である。グラフェンは、
図60に示されるように、炭素原子の平面状の六角形格子構造から成る。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。また、グラフェンシートは、炭素の単一層に不純物を含んでいてもよいし、フラーレン構造を有するものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成して成る化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0222】
グラフェンシートは、人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法により作製され得る。
【0223】
グラフェンシートには市販品を用いることができる。グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいは後述するグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0224】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、
図61に示されるように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。つまり、第一高熱伝導部材181あるいは第二高熱伝導部材182をグラファイトにより構成することにより、第一高熱伝導部材181あるいは第二高熱伝導部材182における長手方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、ヒータホルダ24への伝熱を抑制できる。従って、ヒータ23の長手方向の温度ムラを効率よく抑制するとともに、ヒータホルダ24側へ流出する熱を最小限に抑えることができる。また第一高熱伝導部材181あるいは第二高熱伝導部材182をグラファイトにより構成することにより、700度程度まで酸化しない優れた耐熱性を第一高熱伝導部材181あるいは第二高熱伝導部材182に持たせることができる。
【0225】
グラファイトシートの物性や寸法は、第一高熱伝導部材181あるいは第二高熱伝導部材182に求められる機能に応じて適宜変更できる。例えば、高純度のグラファイトあるいは単結晶グラファイトを用いる、あるいは、グラファイトシートの厚みを大きくすることにより、その熱伝導の異方性を高めることができる。また、定着装置を高速化するために、厚みの小さいグラファイトシートを用いて定着装置の熱容量を小さくしてもよい。また、ニップ部N及びヒータ23の幅が大きい場合には、それに合わせて第一高熱伝導部材181あるいは第二高熱伝導部材182の長手方向の幅を大きくしてもよい。
【0226】
機械的強度を高める観点から、グラファイトシートの層数は11以上であることが好ましい。また、グラファイトシートは部分的に単層と多層の部分とを含んでいてもよい。
【0227】
第二高熱伝導部材182は、長手方向において、間隔B(さらに拡大分割領域C)に対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に設けられればよく、
図56の配置に限らない。例えば、
図58に示される例のように、第二高熱伝導部材182Aは、長手交差方向(矢印Y方向)において、基材30よりも長手交差方向の両側へ飛び出して設けられていてもよい。また、第二高熱伝導部材182Bは、長手交差方向において、抵抗発熱体31が設けられる範囲に設けられていてもよい。また、第二高熱伝導部材182Cは、間隔Bの一部に設けられていてもよい。
【0228】
また、
図59に示される別の例においては、第一高熱伝導部材181とヒータホルダ24との間に厚み方向(
図59における左右方向)の隙間が設けられている。つまり、ヒータ23、第一高熱伝導部材181、及び第二高熱伝導部材182が配置されるヒータホルダ24の凹部24a(
図55参照)の一部の領域に、断熱層としての逃げ部24gが設けられている。逃げ部24gは、第二高熱伝導部材182(
図59においては図示省略)が設けられる部分以外の長手方向の一部の領域に設けられる。また、逃げ部24gは、ヒータホルダ24の凹部24aの深さをその他の部分よりも深くすることにより形成されている。これにより、ヒータホルダ24と第一高熱伝導部材181との接触面積を最小限にとどめることができるので、第一高熱伝導部材181からヒータホルダ24への伝熱が抑制され、ヒータ23によって定着ベルト21を効率的に加熱できるようになる。なお、長手方向の第二高熱伝導部材182が設けられる断面においては、上記
図54に示される実施形態のように、第二高熱伝導部材182がヒータホルダ24に当接する。
【0229】
また、この例においては、逃げ部24gが、長手交差方向(
図59における上下方向)において、抵抗発熱体31が設けられた範囲全域に渡って設けられている。これにより、第一高熱伝導部材181からヒータホルダ24への伝熱が効果的に抑制され、ヒータ23による定着ベルト21の加熱効率が向上する。なお、断熱層として、逃げ部24gのように空間を設ける構成の他、ヒータホルダ24よりも熱伝導率の低い断熱部材を設ける構成であってもよい。
【0230】
また、この例においては、第二高熱伝導部材182を第一高熱伝導部材181とは異なる部材として設けたが、これに限らない。例えば、第一高熱伝導部材181の間隔Bに対応する部分を、その他の部分よりも厚みを大きくすることにより、第一高熱伝導部材181が第二高熱伝導部材182の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0231】
以上、本発明を適用可能な他の定着装置及び画像形成装置の構成について説明したが、斯かる構成の定着装置及び画像形成装置においても本発明を適用することにより、上記実施形態と同様の効果を得られる。すなわち、本発明を適用することにより、外部へのFP/UFPの排出を抑制でき、FP/UFPの排出量が少なく、環境に配慮した画像形成装置を提供できるようになる。
【0232】
また、本発明は、上記のような電子写真方式の画像形成装置が備える定着装置に適用される場合に限らない。例えば、本発明は、インクジェット方式の画像形成装置に搭載され、用紙に塗布されたインクなどの液体を乾燥させる乾燥装置など、定着装置以外の加熱装置に対しても適用可能である。
【0233】
図62に、乾燥装置を備えるインクジェット式画像形成装置の一例を示す。
【0234】
図62に示されるインクジェット式画像形成装置2000は、画像読取装置202と、画像形成部203と、シート供給装置204と、乾燥装置206と、シート排出部207を備えている。また、インクジェット式画像形成装置2000の横には、シート揃え装置3000が配置されている。
【0235】
このインクジェット式画像形成装置2000においては、印刷動作開始の指示があると、シート供給装置204から記録媒体としての用紙などのシートが給送される。シートが画像形成部203に搬送されると、画像読取装置202によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づき画像形成部203の液体吐出ヘッド214からシートにインクが吐出され、シート上に画像が形成される。
【0236】
画像が形成されたシートは、乾燥装置206を通過する搬送路222か、乾燥装置206を通過しない搬送路223かへ、選択的に案内される。シートが乾燥装置206へ案内された場合は、乾燥装置206によってシート上のインクの乾燥が促進され、シートがシート排出部207かシート揃え装置3000へ案内される。一方、シートが乾燥装置206を通過しない搬送路223へ案内された場合は、そのままシートがシート排出部207かシート揃え装置3000へ案内される。また、シートがシート揃え装置3000に案内された場合は、シートが揃えて載置される。
【0237】
図63は、上記インクジェット式画像形成装置2000に搭載される乾燥装置206の構成を示す図である。
【0238】
図63に示されるように、乾燥装置206は、第一回転体としての加熱ベルト291と、第二回転体としての加熱ローラ292と、加熱ベルト291を加熱する加熱源としての第一ヒータ293と、加熱ローラ292を加熱する加熱源としての第二ヒータ294と、ニップ形成部材295と、補強部材としてのステー296と、反射部材297と、加熱ベルト291を回転可能に保持する回転体保持部材としてのベルト保持部材298を備えている。
【0239】
ニップ形成部材295は、加熱ベルト291を介して加熱ローラ292の外周面に接触し、加熱ベルト291と加熱ローラ292との間にニップ部Nを形成する。
図63に示されるように、画像(インクI)を担持するシート250が乾燥装置206のニップ部Nへ搬送されると、図中の矢印方向へ回転する加熱ベルト291と加熱ローラ292によってシート250が搬送されながら加熱される。これにより、シート250上のインクIの乾燥が促進される。
【0240】
上記のようなインクジェット式画像形成装置2000に搭載される乾燥装置206においては、加熱ベルト291の長手方向両端部が一対のベルト保持部材298によって回転可能に保持されるため、ベルト保持部材298と加熱ベルト291との間には摺動抵抗を低減するための潤滑剤が用いられる。従って、加熱ベルト291が加熱され、ベルト保持部材298が温度上昇すると、ベルト保持部材298に付着する潤滑剤からFP/UFPが発生する虞がある。このため、このような乾燥装置206においても、本発明を適用し、加熱ベルト291を支持する回転体支持部材(ベルト保持部材298)の開口部をカバー部材によって覆うことにより、加熱ベルト291から外部へのFP/UFPの排出を抑制できるようになる。
【0241】
また、
図64に、本発明を適用可能なラミネート処理装置を備える画像形成装置の構成を示す。
【0242】
図64に示される画像形成装置4000は、ラミネート処理装置401のほか、複数の作像ユニット411C,411M,411Y,411Bk、露光装置412及び転写装置413を有する画像形成部402と、定着装置403と、記録媒体供給部としての給紙部404を備えている。
【0243】
ラミネート処理装置401は、2枚のシート間に用紙が挿入された状態でこれらを加熱及び加圧して用紙にシートを熱圧着する加熱装置である。具体的に、ラミネート処理装置401は、シート450を供給するシート供給部420と、シート供給部420から供給されたシートを2枚のシートに剥離するシート剥離部430と、剥離された2枚のシート間に用紙が挿入された状態で用紙とシートを加熱及び加圧しながら搬送する回転体としての熱加圧ローラ440を備えている。熱加圧ローラ440は、ヒータなどの加熱源によって加熱される。また、熱加圧ローラ44は、長手方向両端部が一対の軸受などの回転体保持部材によって回転可能に保持されている。
【0244】
記録媒体としての用紙Pが、給紙部404から画像形成部402に供給されると、画像形成部402において用紙Pに画像が形成される。そして、用紙Pは、定着装置403へ搬送され、画像の定着処理が行われる。ここでの画像形成動作及び定着処理の動作は、上記実施形態のものと基本的に同じであるので説明を省略する。
【0245】
定着処理が行われた用紙Pは、ラミネート処理装置401へ搬送され、剥離された2枚のシート間に挿入される。そして、用紙Pは2枚のシートに挟まれた状態で熱加圧ローラ440によって加熱及び加圧され、シートと用紙Pが熱圧着されて装置外に排出される。
【0246】
ここで、熱加圧ローラ440は、ヒータなどの加熱源によって加熱されるため、熱加圧ローラ440内に潤滑剤があると、その潤滑剤が温度上昇してFP/UFPが発生する虞がある。そのため、このような熱加圧ローラ440を備えるラミネート処理装置401においても本発明を適用し、熱加圧ローラ440を支持する回転体支持部材の開口部をカバー部材によって覆うことにより、熱加圧ローラ440から外部へのFP/UFPの排出を抑制できるようになる。
【0247】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備える加熱装置、定着装置、画像形成装置が含まれる。
【0248】
[第1の構成]
第1の構成は、回転可能に保持される回転体と、前記回転体を加熱する加熱源と、前記回転体の長手方向両端部を支持する回転体支持部材と、前記回転体内に付着する液状又は半固体状の潤滑性を有する物質を備え、前記回転体支持部材が、前記回転体の内部に連通し前記回転体の長手方向において前記回転体支持部材を貫通する第一開口部を有する加熱装置であって、前記回転体の長手方向から見て前記第一開口部の全体を覆うように配置されるカバー部材を備え、前記カバー部材は、前記回転体の内部と前記カバー部材の外部とを連通する第二開口部を有する加熱装置である。
【0249】
[第2の構成]
第2の構成は、前記第1の構成において、前記回転体の長手方向から見て前記第二開口部は、前記第一開口部とは異なる位置に配置される加熱装置である。
【0250】
[第3の構成]
第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記第二開口部は、前記回転体の長手方向において前記第一開口部とは間隔をあけて配置される加熱装置である。
【0251】
[第4の構成]
第4の構成は、前記第1から第3のいずれか1つの構成において、前記第二開口部は、前記第一開口部よりも下方に配置される加熱装置である。
【0252】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第1から第4のいずれか1つの構成において、前記第二開口部の開口面積は、前記カバー部材の内部空間表面積の25%以下である加熱装置である。
【0253】
[第6の構成]
第6の構成は、前記第1から第5のいずれか1つの構成において、前記カバー部材の内部空間体積は、8cm3以上である加熱装置である。
【0254】
[第7の構成]
第7の構成は、前記第1から第6のいずれか1つの構成において、前記第二開口部は、前記加熱源に接続される導電線を通す開口部である加熱装置である。
【0255】
[第8の構成]
第8の構成は、前記第1から第7のいずれか1つの構成において、前記カバー部材は、前記加熱源を支持する加熱源支持部材である加熱装置である。
【0256】
[第9の構成]
第9の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成の加熱装置を用いて未定着画像を担持する記録媒体を加熱し、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させる定着装置である。
【0257】
[第10の構成]
第10の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成の加熱装置、又は、前記第9の構成の定着装置を備える画像形成装置である。
【符号の説明】
【0258】
10 回転体支持部材
20 定着装置(加熱装置)
21 定着ベルト(第一回転体)
22 加圧ローラ(第二回転体)
23 ヒータ(加熱源)
27 ベルト保持部材(回転体保持部材)
27d 第一開口部
29 側板(支持部材)
29a 第一開口部
37 ハーネス(導電線)
39 ブラケット(加熱源支持部材)
40 カバー部材
40d 第二開口部
100 画像形成装置
N ニップ部
P 用紙(記録媒体)
X 長手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0259】