(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013586
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】推定装置、プログラムおよび推定方法
(51)【国際特許分類】
G01C 5/00 20060101AFI20240125BHJP
G01C 11/00 20060101ALI20240125BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240125BHJP
G01C 7/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G01C5/00
G01C11/00
G01C15/00 103A
G01C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115781
(22)【出願日】2022-07-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産学共同(育成型)「畦畔管理のためのデータ活用型農作業支援アプリの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕太
(57)【要約】
【課題】地表面の形状を簡易な処理で把握する。
【解決手段】推定装置(100)は、第1赤外線画像(Ii1)および第2可視光画像(Iv2)を取得する情報取得部(101)と、温度値(T)を特定する温度値特定部(104)と、第2対象DSM(3)を生成するモデル生成部(102)と、標高変化量(ΔE)を算出する変化量算出部(103)と、第1相関関係に基づき第2標高値を推定する標高値推定部(105)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面および地物について、仮想的に格子状に分割して得られる複数の単位空間のそれぞれを仮想グリッドとし、複数の仮想グリッドのうちの任意の仮想グリッドを注目グリッドとすることで、前記地表面の形状を推定する推定装置であって、
推定対象の地表面である対象地表面および前記地物が撮像された赤外線画像と、光が前記対象地表面および前記地物により反射された反射光の光情報と、を取得する情報取得部と、
前記赤外線画像を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第1グリッドにおける温度値を特定する温度値特定部と、
前記光情報を用いて、前記対象地表面と前記地物の表面とで構成される表層面の3次元モデルとして数値表層モデルを生成するモデル生成部と、
前記数値表層モデルを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第2グリッドにおける標高値である第1標高値から第1基準値を差し引いた値を、前記第2グリッドにおける標高の変化量とする変化量算出部と、
前記第2グリッドにおける標高の変化量と前記第1グリッドにおける温度値との相関関係を第1相関関係として特定するとともに、前記対象地表面の3次元モデルである数値標高モデルを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第3グリッドにおける標高値を、前記第1相関関係に基づき第2標高値として推定する標高値推定部と、を備えた推定装置。
【請求項2】
前記標高値推定部は、
前記第1相関関係を示す式である第1関係式を算出し、
前記第1標高値から、前記第1関係式に前記温度値を代入して得られた前記変化量を差し引いた値を、前記第2標高値とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記モデル生成部は、
前記数値表層モデルの基礎となる前記表層面の3次元点群データを構成する複数の点のうち、標高値が第2基準値以上の点を抽出するフィルタリングを実行し、
前記フィルタリングにより抽出された点が除かれた3次元点群データから前記数値表層モデルを生成する請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記第2グリッドにおける日射量を推定日射量として推定する日射量推定部と、
基準量と前記推定日射量との差分を算出する差分算出部と、をさらに備え、
前記温度値特定部は、前記差分を用いて、前記第1グリッドにおける温度値を補正し、
前記標高値推定部は、前記第1グリッドにおける補正後の温度値を、前記第1グリッドにおける温度値とみなして、前記第1相関関係を特定する請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
前記温度値特定部は、
前記第1グリッドにおける温度値を補正するための補正値を算出し、
前記第2グリッドにおける前記差分と前記第1グリッドにおける前記補正値との相関関係である第2相関関係を示す式を、第2関係式として算出し、
前記温度値に、前記第2関係式に前記差分を代入して得られた前記補正値を加算した値を、前記補正後の温度値とする請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記情報取得部、前記温度値特定部、前記モデル生成部、前記変化量算出部および前記標高値推定部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項7】
地表面および地物について、仮想的に格子状に分割して得られる複数の単位空間のそれぞれを仮想グリッドとし、複数の仮想グリッドのうちの任意の仮想グリッドを注目グリッドとすることで、前記地表面の形状を推定する推定方法であって、
推定対象の地表面である対象地表面および前記地物が撮像された赤外線画像と、光が前記対象地表面および前記地物により反射された反射光の光情報と、を取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップにて取得した前記赤外線画像を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第1グリッドにおける温度値を特定する温度値特定ステップと、
前記情報取得ステップにて取得した前記光情報を用いて、前記対象地表面と前記地物の表面とで構成される表層面の3次元モデルとして数値表層モデルを生成するモデル生成ステップと、
前記モデル生成ステップにて生成した前記数値表層モデルを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第2グリッドにおける標高値である第1標高値から第1基準値を差し引いた値を、前記第2グリッドにおける標高の変化量とする変化量算出ステップと、
前記変化量算出ステップにて算出した前記第2グリッドにおける標高の変化量と、前記第1グリッドにおける温度値との相関関係を第1相関関係として特定するとともに、前記対象地表面の3次元モデルである数値標高モデルを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第3グリッドにおける標高値を、前記第1相関関係に基づき第2標高値として推定する標高値推定ステップと、を含む推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値標高モデルを構成する複数のグリッドのそれぞれにおける標高値を推定する推定装置、プログラムおよび推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、土地の地形測量に関する種々の技術が研究開発されている。代表的なものとしては、土地の地形を示す3次元点群データを取得し、この3次元点群データをグリッド化して3次元モデルを生成する技術が挙げられる。3次元点群データは、水平方向の位置を表すXおよびY座標データ、ならびに標高を表すZ座標データで構成される。
【0003】
ところで、3次元モデルの対象となった土地に地物が含まれる場合、この3次元モデルは地物の形状を含んだDSM(Digital Surface Model;数値表層モデル)となる。地物は、例えば建物および橋等の人口構造物、ならびに樹木等の植生であり、地表面を遮蔽する物体である。この場合において、土地の地形から地物の形状を除去した形状、つまり地表面の形状を把握したいときは、DSMにフィルタリング処理を施してDEM(Digital Elevation Model;数値標高モデル)を生成する。フィルタリング処理は、DSMから地物部分の計測データを除去する処理である。DEMは、地表面の形状を表す3次元モデルである。
【0004】
フィルタリング処理によってDEMを生成する技術として、例えば特許文献1には、画像生成モデルが出力したフィルタリング済画像データからフィルタリング済標高メッシュデータを生成する情報処理装置等が開示されている。フィルタリング済標高メッシュデータは、DEMに相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された情報処理装置等を用いてフィルタリング済標高メッシュデータを生成する場合、画像生成モデルが使用可能なレベルの精度のフィルタリング済画像データを出力するようになるまで、機械学習を継続する必要がある。そのため、フィルタリング処理を行わないDSMの生成に比べて、フィルタリング済標高メッシュデータの生成には手間と時間が掛かる。また、この機械学習に必要な学習用データの選定には、他の方法によるフィルタリング処理で要求される熟練度と同レベルの高い熟練度が要求される。これらのことから、特許文献1に開示された情報処理装置等には、地表面の形状を簡単に把握することができないという問題がある。
【0007】
本発明の一態様は、地表面の形状を簡易な処理で把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定装置は、地表面および地物について、仮想的に格子状に分割して得られる複数の単位空間のそれぞれを仮想グリッドとし、複数の仮想グリッドのうちの任意の仮想グリッドを注目グリッドとすることで、前記地表面の形状を推定する推定装置であって、推定対象の地表面である対象地表面および前記地物が撮像された赤外線画像と、光が前記対象地表面および前記地物により反射された反射光の光情報と、を取得する情報取得部と、前記赤外線画像を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第1グリッドにおける温度値を特定する温度値特定部と、前記光情報を用いて、前記対象地表面と前記地物の表面とで構成される表層面の3次元モデルとして数値表層モデルを生成するモデル生成部と、前記数値表層モデルを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第2グリッドにおける標高値である第1標高値から第1基準値を差し引いた値を、前記第2グリッドにおける標高の変化量とする変化量算出部と、前記第2グリッドにおける標高の変化量と前記第1グリッドにおける温度値との相関関係を第1相関関係として特定するとともに、前記対象地表面の3次元モデルである数値標高モデルを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第3グリッドにおける標高値を、前記第1相関関係に基づき第2標高値として推定する標高値推定部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る推定装置は、前記標高値推定部は、前記第1相関関係を示す式である第1関係式を算出し、前記第1標高値から、前記第1関係式に前記温度値を代入して得られた前記変化量を差し引いた値を、前記第2標高値としてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る推定装置は、前記モデル生成部は、前記数値表層モデルの基礎となる前記表層面の3次元点群データを構成する複数の点のうち、標高値が第2基準値以上の点を抽出するフィルタリングを実行し、前記フィルタリングにより抽出された点が除かれた3次元点群データから前記数値表層モデルを生成してもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る推定装置は、前記第2グリッドにおける日射量を推定日射量として推定する日射量推定部と、基準量と前記推定日射量との差分を算出する差分算出部と、をさらに備え、前記温度値特定部は、前記差分を用いて、前記第1グリッドにおける温度値を補正し、前記標高値推定部は、前記第1グリッドにおける補正後の温度値を、前記第1グリッドにおける温度値とみなして、前記第1相関関係を特定してもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る推定装置は、前記温度値特定部は、前記第1グリッドにおける温度値を補正するための補正値を算出し、前記第2グリッドにおける前記差分と前記第1グリッドにおける前記補正値との相関関係である第2相関関係を示す式を、第2関係式として算出し、前記温度値に、前記第2関係式に前記差分を代入して得られた前記補正値を加算した値を、前記補正後の温度値としてもよい。
【0013】
本発明の一態様に係るプログラムは、前記推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記情報取得部、前記温度値特定部、前記モデル生成部、前記変化量算出部および前記標高値推定部としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0014】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推定方法は、地表面および地物について、仮想的に格子状に分割して得られる複数の単位空間のそれぞれを仮想グリッドとし、複数の仮想グリッドのうちの任意の仮想グリッドを注目グリッドとすることで、前記地表面の形状を推定する推定方法であって、推定対象の地表面である対象地表面および前記地物が撮像された赤外線画像と、光が前記対象地表面および前記地物により反射された反射光の光情報と、を取得する情報取得ステップと、前記情報取得ステップにて取得した前記赤外線画像を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第1グリッドにおける温度値を特定する温度値特定ステップと、前記情報取得ステップにて取得した前記光情報を用いて、前記対象地表面と前記地物の表面とで構成される表層面の3次元モデルとして数値表層モデルを生成するモデル生成ステップと、前記モデル生成ステップにて生成した前記数値表層モデルを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第2グリッドにおける標高値である第1標高値から第1基準値を差し引いた値を、前記第2グリッドにおける標高の変化量とする変化量算出ステップと、前記変化量算出ステップにて算出した前記第2グリッドにおける標高の変化量と、前記第1グリッドにおける温度値との相関関係を第1相関関係として特定するとともに、前記対象地表面の3次元モデルである数値標高モデルを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうち、前記注目グリッドに対応する第3グリッドにおける標高値を、前記第1相関関係に基づき第2標高値として推定する標高値推定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、地表面の形状を簡易な処理で把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1~第3実施形態に係る情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】注目グリッドの一例を示す図面代用写真である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る推定方法の一例を示すフロー図である。
【
図4】符号401は、第1可視光画像の一例を示す図である。符号402は、第2可視光画像の一例を示す図である。
【
図5】標高変化量が重畳表示された第2対象DSMの一例を示す図面代用写真である。
【
図6】第1赤外線画像の一例を示す図面代用写真である。
【
図7】第1グリッドにおける温度値と、当該第1グリッドに対応する第2グリッドにおける標高変化量と、の相関関係の一例を示す箱ひげ図である。
【
図9】第1関係式を用いて得られた標高変化量が重畳表示された第2対象DSMの一例を示す図面代用写真である。
【
図10】符号1001は、フィルタリング前の基礎3次元点群データの一例を示す図面代用写真である。符号1002は、フィルタリング後の基礎3次元点群データの一例を示す図面代用写真である。
【
図11】第2赤外線画像の一例を示す図面代用写真である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る推定方法の一例を示すフロー図である。
【
図13】第1グリッドにおける温度値と、当該第1グリッドに対応する第2グリッドにおける基礎推定日射量の平均値と、の相関関係を示すグラフの一例である。
【
図14】推定日射量が重畳表示された第2対象DSMの一例を示す図面代用写真である。
【
図15】差分が重畳表示された第2対象DSMの一例を示す図面代用写真である。
【
図16】平均損失日射量と損失温度値との相関関係を示すグラフの一例である。
【
図17】補正値が重畳表示された第2赤外線画像の一例を示す図面代用写真である。
【
図18】補正後の温度値が重畳表示された第2赤外線画像の一例を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1~第3実施形態について、
図1~
図18を参照しつつ詳細に説明する。第1~第3実施形態では、本発明の一態様に係る推定装置の推定対象となる土地として、圃場を例に挙げて説明する。なお、推定対象となる土地は圃場に限定されず、山林、牧場、市街地、工業団地等の種々の土地が推定対象となる。
【0018】
〔第1実施形態〕
<情報処理装置の構成>
図1および
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置1の構成について説明する。情報処理装置1は、各種情報の処理を実行可能な装置である。情報処理装置1は、例えばタブレット端末であってもよいし、スマートフォンであってもよい。あるいは、情報処理装置1は、据え置き型のパーソナルコンピュータであってもよい。
図1に示すように、情報処理装置1は、入力部11、表示部12、記憶部13、通信部14および制御部15を備えている。
【0019】
入力部11は、各種操作を受け付けるインターフェースである。例えば、情報処理装置1が据え置き型のパーソナルコンピュータの場合、キーボードおよびマウスが入力部11となる。表示部12は、各種情報を表示する出力部である。例えば、情報処理装置1が据え置き型のパーソナルコンピュータの場合、モニタが表示部12となる。また例えば、情報処理装置1がスマートフォンまたはタブレット端末の場合、情報処理装置1は入力部11と表示部12とが一体化したタッチパネルを備えていてもよい。
【0020】
記憶部13は、情報処理装置1が使用する各種情報を記憶する。記憶部13および後述の記憶部22としては、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクが挙げられる。通信部14は、情報処理装置1が後述の飛行体2、あるいは他の情報処理装置(不図示)との間で各種情報の送受信を行うための部である。制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)であり、情報処理装置1の各部を統括して制御する。また、制御部15は、情報処理装置1が具備する各種機能を実現するための処理を実行する。
図1に示すように、制御部15は推定装置100を備えている。
【0021】
推定装置100は、対象地表面の形状を推定する装置である。対象地表面は、推定装置100の推定対象となる地表面である。ここで、本明細書における「地表面」は、地物が全くなく土または砂が全体に亘って露出している面、および舗装面のみを指す概念ではない。一部または全部が地物で被覆されていても、地物における基準面(東京湾の平均海面)からの高さが、当該地物の直下の地表面における標高と同じとみなされる程度に低ければ、当該地物の表面も本明細書における「地表面」の一部または全部とする。
【0022】
第1~第3実施形態では、特定の圃場における畦畔の傾斜面を対象地表面とし、地物として植生が対象地表面を覆っているものとする。また、第1および第2実施形態では、対象地表面と地物としての植生とで構成される土地を対象土地LT(
図4の符号401における赤枠で囲まれたポリゴン等参照)とする。第3実施形態では、対象地表面と地物としての植生とで構成される土地を対象土地LT´(
図11における黒枠で囲まれたポリゴン等参照)とする。以下、対象土地LTおよびLT´を「対象土地」と総称する。
【0023】
推定装置100は、複数の仮想グリッドのうちの任意の仮想グリッドを注目グリッドとすることで、対象地表面の形状を推定する。以下、
図2を用いて、注目グリッドについて説明する。例えば、
図2における黒枠で囲まれた土地LS(以下、「参照土地LS」)の地表面の形状を推定対象とする場合、推定装置100は参照土地LSを仮想的に格子状に分割する。
【0024】
なお、
図2に示す分割の間隔、言い換えればグリッドサイズはあくまで一例である。推定装置100は、対象土地の大きさ、後述の撮像部21が有している可視光カメラおよび赤外線カメラの各性能(解像度、分解能)、対象土地とこれらのカメラとの間の距離等に応じて、グリッドサイズを任意に変更できる。このことは、後述の第1~第3グリッドについても同様である。
【0025】
次に、推定装置100は、参照土地LSを仮想的に格子状に分割して得られる複数の単位空間のそれぞれを、仮想グリッドGK´とする。そして、推定装置100は、参照土地LSを構成する複数の仮想グリッドGK´の中から任意の仮想グリッドGK´を抽出して、注目グリッドGT´とする。このような、参照土地LSから注目グリッドGT´を得る方法は、対象土地にも妥当する。
【0026】
なお、
図2は参照土地LSを平面視で撮像した写真を示すものであるため、
図2では仮想グリッドGK´および注目グリッドGT´が2次元(緯度および経度)で表されている。しかしながら、仮想グリッドGK´および注目グリッドGT´は、実際には標高を含む3次元の概念である。
【0027】
推定装置100は、例えば、情報処理装置1内において制御部15の外部に備えられてもよいし、飛行体2に備えられていてもよい。あるいは、推定装置100は、他の情報処理装置に備えられてもよい。
【0028】
図1に示すように、推定装置100は、情報取得部101、モデル生成部102、変化量算出部103、温度値特定部104および標高値推定部105を有している。
【0029】
情報取得部101は、対象土地が撮像された赤外線画像(
図6参照)と、光が対象土地により反射された反射光の光情報と、を取得する。第1~第3実施形態では、光情報として、対象土地が撮像された可視光画像(
図4参照)を例に挙げて説明する。
【0030】
なお、光情報は、レーザスキャナがレーザ光を対象土地に放射してから当該レーザ光の反射光が戻ってくるまでの時間差から得られる、レーザスキャナと表層面との間の距離であってもよい。表層面は、対象土地の表面、言い換えれば対象地表面と植生の表面とで構成される面である。あるいは、光情報は、赤外線が対象土地により反射された反射光の光情報であってもよい。
【0031】
モデル生成部102は、可視光画像を用いて対象DSM(
図5等参照)を生成する。対象DSMは、表層面の3次元モデルとして生成される数値表層モデルである。モデル生成部102による対象DSMの生成処理の詳細については後述する。
【0032】
変化量算出部103は、第2グリッドにおける標高の変化量(
図5等参照;以下、「標高変化量」)を算出する。第2グリッド(
図5参照)は、対象DSMを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうちの、対象土地における注目グリッドに対応するグリッドである。
【0033】
具体的には、変化量算出部103は、第2グリッドにおける標高値である第1標高値から第1基準値を差し引いた値を、当該第2グリッドにおける標高変化量とする。ここで、「第2グリッドにおける標高値」とは、対象DSMの基礎となる表層面の3次元点群データを構成する複数の点のうちの、任意の第2グリッドに集約され変換される点群について、当該点群における各標高値を平均した値を指す。第1基準値の詳細については後述する。
【0034】
温度値特定部104は、第1グリッドにおける温度値(
図6等参照)を特定する。第1グリッド(
図6参照)は、赤外線画像を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうちの、対象土地における注目グリッドに対応するグリッドである。ここで、「第1グリッドにおける温度値」とは、赤外線画像の基礎となる表層面の3次元点群データを構成する複数の点のうちの、任意の第1グリッドに集約され変換される点群について、当該点群における各温度値を平均した値を指す。
【0035】
標高値推定部105は、標高変化量と温度値との相関関係を第1相関関係として特定する。また、標高値推定部105は、第3グリッド(不図示)における標高値を、特定した第1相関関係に基づき第2標高値として推定する。第3グリッドは、対象DEM(不図示)を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうちの、対象土地における注目グリッドに対応するグリッドである。対象DEMは、対象地表面の3次元モデルとして生成される数値標高モデルである。
【0036】
<飛行体の構成>
図1を参照して、本発明の第1~第3実施形態に係る飛行体2の構成について説明する。飛行体2は、ドローン、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)等、無人で自律飛行可能な飛行体であり、可視光画像および赤外線画像を撮像する。飛行体2は、例えば飛行機、ヘリコプター等の有人飛行体であってもよい。
図1に示すように、飛行体2は、撮像部21、記憶部22、通信部23および制御部24を備えている。
【0037】
撮像部21は、可視光カメラおよび赤外線カメラ(ともに不図示)を有し、可視光画像と赤外線画像とを同時に、または同期して撮像する。記憶部22は、撮像部21が撮像した各種画像を記録してもよい。通信部23は、飛行体2が情報処理装置1、あるいは他の情報処理装置との間で各種情報の送受信を行うための部である。飛行体2は、通信部23を介して、撮像部21が撮像した可視光画像および赤外線画像を情報処理装置1に送信する。制御部24は、制御部15と同様、例えばCPUまたはGPUであり、飛行体2の各部を統括して制御する。また、制御部24は、飛行体2が具備する各種機能を実現するための処理を実行する。
【0038】
なお、可視光画像および赤外線画像の撮像主体は飛行体2に限定されない。例えば、対象地表面上および地物の表面上を移動可能な何らかの移動体が撮像部21および通信部23を備えている場合において、当該移動体が可視光画像および赤外線画像の少なくとも一方を撮像してもよい。この場合、前述の移動体が、通信部23を介して、撮像した画像を情報処理装置1に送信してもよい。前述の移動体としては、撮像部21を備えたカメラが取り付けられたバギー、トラクター、草刈機等が挙げられる。
【0039】
<情報処理装置の主要処理>
図3~
図9を参照して、情報処理装置1の主要処理について説明する。前提として、飛行体2が、
図4の符号401に示す第1可視光画像Iv1および
図4の符号402に示す第2可視光画像Iv2、ならびに第1赤外線画像Ii1(
図6参照)を情報処理装置1に送信したものとする。
【0040】
第1可視光画像Iv1(光情報)は、任意の時点である第1時点において飛行体2が撮像した対象土地LTの可視光画像である。第2可視光画像Iv2(光情報)は、第1時点よりも後の時点である第2時点において飛行体2が撮像した対象土地LTの可視光画像である。第1赤外線画像Ii1は、第2時点において飛行体2が撮像した対象土地LTの赤外線画像である。
【0041】
第1および第2実施形態では、対象土地LTを草刈りした直後の時点を第1時点とする。したがって、第2時点では、第1時点に比べて対象土地LTの植生が伸びている。つまり、第2時点では、第1時点に比べて表層面の少なくとも一部における標高値が大きくなっている。
【0042】
まず、
図3に示すフローチャートのS501(情報取得ステップ)では、情報取得部101が、通信部14を介して、第1および第2可視光画像Iv1およびIv2ならびに第1赤外線画像Ii1を取得する。そして、情報取得部101は、取得した第1および第2可視光画像Iv1およびIv2をモデル生成部102に送信する。また、情報取得部101は、取得した第1赤外線画像Ii1を温度値特定部104に送信する。なお、第1可視光画像Iv1が記憶部13に予め記憶されていてもよく、この場合、情報取得部101は第1可視光画像Iv1を記憶部13から取得する。
【0043】
次に、S502(モデル生成ステップ)では、モデル生成部102が、取得した第1可視光画像Iv1を用いて第1対象DSM(不図示)を生成する。また、モデル生成部102は、取得した第2可視光画像Iv2を用いて第2対象DSM3(
図5参照)を生成する。第1および第2実施形態に係る第1対象DSMは、第1時点における対象土地LTの表層面の3次元モデルとして生成される数値表層モデルである。第2対象DSM3は、第2時点における対象土地LTの表層面の3次元モデルとして生成される数値表層モデルである。
【0044】
第1および第2実施形態では、モデル生成部102は、SfM-MVS(Structure From Motion - Multi-View stereo)処理によって生成された3次元点群データを基礎にして、第1対象DSMおよび第2対象DSM3を生成する。SfM-MVS処理は、対象物体の表面形状の3次元点群データを作成するための公知の処理であり、SfM処理の実行後にMVS処理が実行される。以下、第2対象DSM3の生成を例に挙げて説明する。
【0045】
モデル生成部102は、SfM処理によって、第2可視光画像Iv2の被写体である対象土地LTの特徴点から、撮像時における撮像部21の位置を算出するとともに低密度の3次元点群データを生成する。次に、モデル生成部102は、MVS処理によって、SfM処理で算出した撮像部21の位置を基に低密度の3次元点群データを高密度化し、第2対象DSM3の基礎となる表層面の3次元点群データ(以下、「基礎3次元点群データ」)を生成する。
【0046】
そして、モデル生成部102は、基礎3次元点群データを第2対象DSM3に変換する。具体的には、モデル生成部102は、基礎3次元点群データを、ユーザが予め設定したグリッドサイズで格子状に分割する。グリッドサイズの設定値は、記憶部13に予め記憶されていてもよいし、入力部11が受け付けた入力操作によって設定されてもよい。
【0047】
そして、モデル生成部102は、分割によって得られたすべてのグリッドについて、グリッド内の点群の各標高値を統計処理(あるいは平均してもよい)し、得られた平均値をグリッドにおける標高値とする。この一連の処理によって基礎3次元点群データを構成する複数の点の各標高値がグリッドに集約されることで、基礎3次元点群データが第2対象DSM3に変換される。
【0048】
なお、SfM-MVS処理による第1対象DSMおよび第2対象DSM3の生成はあくまで一例であり、モデル生成部102は、SfM-MVS処理以外の公知の処理によって第1対象DSMおよび第2対象DSM3を生成してもよい。前述の公知の処理としては、デジタルステレオ図化機を用いた手作業での生成処理、衛星画像を用いた生成処理が挙げられる。
【0049】
そして、モデル生成部102は、生成した第1対象DSMおよび第2対象DSM3のそれぞれを変化量算出部103に送信する。また、モデル生成部102は、生成した第2対象DSM3を標高値推定部105にも送信する。
【0050】
次に、S503(変化量算出ステップ)では、変化量算出部103が、取得した第1対象DSMおよび第2対象DSM3を用いて標高変化量ΔEを算出する。標高変化量ΔEは、第2対象DSM3を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうちの、注目グリッドGTに対応する第2グリッドG2における標高変化量である。注目グリッドGTは、対象土地LTにおける注目グリッドである。変化量算出部103は、第2対象DSM3を構成する複数のグリッドのそれぞれについて、当該グリッドを第2グリッドG2とした場合における標高変化量ΔEを算出する。
【0051】
具体的には、変化量算出部103は、第2グリッドG2における第1標高値から第1基準値を差し引いた値を、当該第2グリッドG2における標高変化量ΔEとする。第1および第2実施形態では、第1対象DSMを格子状に分割して得られる複数のグリッドのうちの、注目グリッドGTに対応する第2グリッドにおける標高値を、第1基準値とする。つまり、第1対象DSMを構成する複数のグリッドのそれぞれについて、第1基準値が存在することになる。変化量算出部103は、第1対象DSMを格子状に分割することで第1基準値を取得する。
【0052】
なお、第1基準値を予め求めておき、記憶部13に記憶させておいてもよい。この場合、変化量算出部103は第1基準値を記憶部13から取得する。あるいは、第1対象DSMの構成単位であるグリッドにおける標高値と異なる値を、第1基準値としてもよい。例えば、対象DEMの構成単位であるグリッドにおける標高値を、第1基準値としてもよい。
【0053】
そして、変化量算出部103は、算出した標高変化量ΔEを標高値推定部105に送信する。また、第1および第2実施形態では、入力部11がユーザ操作を受け付けることにより、変化量算出部103が、第2対象DSM3および算出した標高変化量ΔEを表示部12に送信する。そして、表示部12は、
図5に示すように、画像化した標高変化量ΔEを重畳表示させた第2対象DSM3を表示する。
【0054】
次に、S504(温度値特定ステップ)では、温度値特定部104が、取得した第1赤外線画像Ii1から第1グリッドG1における温度値Tを特定する。第1グリッドG1は、第1赤外線画像Ii1を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうちの、注目グリッドGTに対応するグリッドである。温度値特定部104は、第1赤外線画像Ii1を構成する複数のグリッドのそれぞれについて、当該グリッドを第1グリッドG1とした場合における温度値Tを特定する。
【0055】
そして、温度値特定部104は、特定した温度値Tを標高値推定部105に送信する。また、第1および第2実施形態では、入力部11がユーザ操作を受け付けることにより、温度値特定部104が、第1赤外線画像Ii1にSfM-MVS処理を施す。この処理によって、
図6に示すように、画像化した温度値Tが重畳表示された第1赤外線画像Ii1が生成される。温度値特定部104は、SfM-MVS処理後の第1赤外線画像Ii1を表示部12に送信し、表示部12は、SfM-MVS処理後の第1赤外線画像Ii1を表示する。
【0056】
なお、温度値特定部104が温度値Tを特定する特定処理の順番は、
図3に示すフローチャートの例に限定されない。例えば、温度値特定部104は、S501とS502との間のタイミングで特定処理を行ってもよいし、S502と同時のタイミングで特定処理を行ってもよい。あるいは、温度値特定部104は、S502とS503との間のタイミングで特定処理を行ってもよい。
【0057】
次に、S505(標高値推定ステップ)では、標高値推定部105が、第1相関関係として標高変化量ΔEと温度値Tとの相関関係を特定する。第1~第3実施形態では、標高値推定部105は、第1相関関係を示す式である第1関係式を算出することで、第1相関関係を特定する。
【0058】
具体的には、標高値推定部105は、第1グリッドG1における温度値Tと、当該第1グリッドG1に対応する第2グリッドG2における標高変化量ΔEと、の相関関係を示す、
図7のような箱ひげ図を生成する。そして、標高値推定部105は、生成した箱ひげ図を用いて
図8に示すグラフを生成する。
図8に示すグラフは、第1グリッドG1における温度値Tと、同じ温度値T毎の標高変化量ΔEの中央値(以下、「中央値」と略記)と、の相関関係を示すものである。そして、標高値推定部105は、生成したグラフを用いて、当該グラフにプロットされた各点の分布傾向を近似した近似式を算出する。この近似式が、第1関係式に相当する。
【0059】
下記の式(1)は、第1関係式の一例であり、標高変化量ΔEが
図5に示す算出結果になり、かつ、温度値Tが
図6に示す特定結果になった場合に得られる式である。下記の式(1)において、xは温度値T[℃]であり、yは中央値[m]である。
【0060】
(数1)
y=23.459e-0.173x ・・・(1)
次に、S506(標高値推定ステップ)では、標高値推定部105が、算出した第1関係式を用いて第3グリッドにおける第2標高値を推定する。この場合の第3グリッドは、第2対象DEM(不図示)を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうちの、注目グリッドGTに対応するグリッドを指す。第2対象DEMは、第2時点における対象地表面の3次元モデルとして生成される数値標高モデルである。
【0061】
具体的には、標高値推定部105は、第1関係式に第1グリッドG1における温度値Tを代入して、当該第1グリッドG1に対応する第2グリッドG2における中央値を算出する。ここで、標高値推定部105は、算出した中央値を前述の第2グリッドG2における標高変化量ΔEとみなす。そして、標高値推定部105は、前述の第2グリッドG2における第1標高値から、算出した中央値(つまり標高変化量ΔE)を差し引いて得られた値を、当該第2グリッドに対応する第3グリッドにおける第2標高値とする。
【0062】
第1および第2実施形態では、入力部11がユーザ操作を受け付けることにより、標高値推定部105が、第2対象DSM3および第1関係式から算出した標高変化量ΔEを表示部12に送信する。そして、表示部12は、
図9に示すように、画像化した標高変化量ΔEを重畳表示させた第2対象DSM3を表示する。S506の処理の終了によって、情報処理装置1が実行する主要処理がすべて終了する。
【0063】
<変形例>
標高値推定部105による第2標高値の推定において、第1関係式を用いることは必須ではない。標高値推定部105は、例えば、第1関係式の替わりに第1推定モデルを用いて第2標高値を推定してもよい。
【0064】
第1推定モデルは、第1基礎データセットを教師データとする機械学習によって構築された学習済みモデルであり、温度値が入力データとなり、標高変化量が出力データとなる。機械学習の方法に特段の限定はなく、畳み込みニューラルネットワーク等の公知の方法を採用することができる。第1基礎データセットは、過去温度値と過去標高変化量とで構成されるデータセットである。過去温度値は、第1時点よりも前の時点での、赤外線画像を構成する複数の第1グリッドのそれぞれにおける温度値である。過去標高変化量は、前述した複数の第1グリッドのそれぞれに対応する第2グリッドにおける標高変化量であり、変化量算出部103によって算出された標高変化量である。
【0065】
この場合、標高値推定部105は、第1グリッドG1における温度値Tを第1推定モデルに入力することにより、当該第1グリッドG1に対応する第2グリッドG2における標高変化量ΔEを第1推定モデルから取得する。そして、標高値推定部105は、第2グリッドG2における第1標高値から、取得した標高変化量ΔEを差し引いて得られた値を、当該第2グリッドに対応する第3グリッドにおける第2標高値とする。
【0066】
<小括>
情報処理装置1は、推定装置100の標高値推定部105が、第1相関関係を特定して第2標高値を推定する。これにより、対象DSMを生成することなく、第3グリッドにおける第2標高値と同様の値を得ることができる。よって、地表面の形状を簡易な処理で把握できる。
【0067】
また、情報処理装置1によれば、第2グリッドにおける第1標高値から、第1関係式に第1グリッドにおける温度値を代入して得られた標高変化量を差し引くことにより、第3グリッドにおける第2標高値と同様の値を得ることができる。これにより、すべての注目グリッドGTに対して第1関係式を一律に適用するだけで、すべての第3グリッドにおける第2標高値を推定できる。よって、地表面の形状をより簡単に把握できる。
【0068】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、第1実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。このことは、後掲の第3実施形態についても同様である。
【0069】
<情報処理装置の特徴的構成>
図1および
図10を参照して、本発明の第2実施形態に係る情報処理装置1aの特徴的構成について説明する。
図1に示すように、情報処理装置1aは、推定装置100に替えて、モデル生成部102aを有する推定装置200を備えている。この点において、情報処理装置1aは本発明の第1実施形態に係る情報処理装置1と異なる。
【0070】
モデル生成部102aは、基礎3次元点群データに対してフィルタリングを施す。フィルタリングは、基礎3次元点群データを構成する複数の点の中から、標高値が第2基準値以上の点を抽出する処理である。第2基準値は、ユーザが任意に設定可能な標高値であり、記憶部13に予め記憶されていてもよいし、入力部11がユーザ操作を受け付けることによって設定されてもよい。
【0071】
基礎3次元点群データの中から多年草に相当する点群を抽出したい場合であれば、第2基準値を例えば50~300[cm]に設定することが考えられる。基礎3次元点群データの中から樹木に相当する点群を抽出したい場合であれば、第2基準値を例えば300[cm]以上に設定することが考えられる。
【0072】
また、モデル生成部102aは、基礎3次元点群データからフィルタリングによって抽出された点を除去することにより、新たな3次元点群データ(以下、「処理後3次元点群データ」)を生成する。そして、モデル生成部102aは、処理後3次元点群データから対象DSMを生成する。
【0073】
例えば、基礎3次元点群データが
図10の符号1001に示す基礎3次元点群データPであり、第2基準値を300[cm]に設定した場合、モデル生成部102aは、フィルタリングによって基礎3次元点群データPの中から樹木に相当する点群PG(同図中の黄色破線で囲まれた部分)を抽出する。そして、モデル生成部102aは、基礎3次元点群データPからフィルタリングによって抽出された樹木に相当する点群PGを除去して、
図10の符号1002に示す処理後3次元点群データP´を生成する。
【0074】
なお、モデル生成部102aは、基礎3次元点群データを構成する複数の点のそれぞれにおける標高値以外の値を基準にして、フィルタリングの対象となる点群を抽出してもよい。例えば、モデル生成部102aは、互いに隣り合う2点の間の傾き値を基準にして、フィルタリングの対象となる点群を抽出してもよい。この場合、第2基準値はユーザが任意に設定可能な傾き値となる。
【0075】
傾き値は、互いに隣り合う2点を結ぶ直線距離と、当該2点間の水平方向の直線距離と、の成す角度の値である。互いに隣り合う2点間の水平方向の直線距離は、基礎3次元点群データに含まれるどの2点(互いに隣り合っていることが前提)を抽出してもすべて同じ距離になる。したがって、傾き値は、実質的には互いに隣り合う2点における標高値の差分の値によって決まる。
【0076】
<小括>
標高値が所定値以上の注目グリッドGTが多数存在すると、赤外線画像から得られる複数のグリッドの温度値が一定値に収束(飽和)してしまい、第1相関関係を精度高く特定することが困難になる。
【0077】
その点、情報処理装置1aは、モデル生成部102aが、フィルタリングによって基礎3次元点群データから第1相関関係の特定精度を低くする要因を除去する。よって、第1相関関係を精度高く特定でき、地表面の形状を正確に把握できる。
【0078】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態について、以下に説明する。
図1に示すように、本発明の第3実施形態に係る情報処理装置1bは、推定装置100および200に替えて推定装置300を備えている。この点において、情報処理装置1bは、本発明の第1および第2実施形態に係る情報処理装置1および1aと異なる。
【0079】
<推定装置の特徴的構成>
図1を参照して、本発明の第3実施形態に係る推定装置300の特徴的構成について説明する。推定装置100および200と異なり、推定装置300は、
図1に示すように、日射量推定部106、差分算出部107、温度値特定部104aおよび標高値推定部105aを有している。なお、情報取得部101、モデル生成部102および変化量算出部103を有している点において、推定装置300は推定装置100と同じである。
【0080】
日射量推定部106は、第2グリッドにおける日射量を推定日射量(
図12参照)として推定する。ここで、「第2グリッドにおける日射量」とは、対象DSMの基礎となる表層面の3次元点群データを構成する複数の点のうちの、任意の第2グリッドに集約され変換される点群について、当該点群における各日射量を平均した値を指す。また、本明細書における「日射量」は、飛行体2が可視光画像を撮像した時間帯において注目グリッドに照射可能な最大の日射量のことであり、対象土地の緯度、時期(季節)等から規定される太陽軌道に基づいて算出される。
【0081】
差分算出部107は、基準量と推定日射量との差分を算出する。基準量は、ユーザが任意に設定可能な日射量であり、記憶部13に予め記憶させておいてもよいし、入力部11がユーザ操作を受け付けることによって設定されてもよい。基準量の詳細については後述する。
【0082】
温度値特定部104aは、差分算出部107が算出した差分を用いて、特定した温度値を補正する。温度値特定部104aにおけるその他の機能は、温度値特定部104と同様である。標高値推定部105aは、温度値特定部104aが補正した補正後の温度値を第1グリッドにおける温度値とみなして、第1相関関係を特定(具体的には第1関係式を算出)する。標高値推定部105aにおけるその他の機能は、標高値推定部105と同様である。
【0083】
<情報処理装置の主要処理>
図11~
図18を参照して、情報処理装置1bの主要処理について説明する。前提として、飛行体2が、第3可視光画像および第4可視光画像Iv4、ならびに第2赤外線画像Ii2を情報処理装置1に送信したものとする。
【0084】
第3可視光画像(不図示;光情報)は、任意の時点である第3時点において飛行体2が撮像した対象土地LT´の可視光画像である。第4可視光画像Iv4(光情報)は、第1時点よりも後の時点である第4時点において飛行体2が撮像した対象土地LT´の可視光画像である。
【0085】
第2赤外線画像Ii2(赤外線画像)は、第4時点において飛行体2が撮像した対象土地LT´の赤外線画像である。本実施形態では、第2赤外線画像Ii2は、各第1グリッドG1´における温度値T´がSfM-MVS処理によって画像化され、第2赤外線画像Ii2における対象土地LT´の画像部分に重畳表示された状態になっている(
図11参照)。このSfM-MVS処理は、飛行体2において実行されるが、例えば温度値特定部104aにおいて実行されてもよい。
【0086】
本実施形態では、対象土地LT´を草刈りした直後の時点を第3時点とする。したがって、第4時点では、第3時点に比べて対象土地LT´の植生が伸びている。つまり、第4時点では、第3時点に比べて表層面の少なくとも一部における標高値が大きくなっている。
【0087】
まず、
図12に示すフローチャートのS601~S604の各処理内容は、
図3に示すフローチャートのS501~S504の各処理内容と同じである。但し、S601では、情報取得部101が、取得した第2赤外線画像Ii2を日射量推定部106にも送信する。
【0088】
また、S602では、モデル生成部102が、第1対象DSM(不図示)および第2対象DSM31を生成する。そして、モデル生成部102は、生成した第2対象DSM31を日射量推定部106にも送信する。本実施形態に係る第1対象DSMは、第3時点における対象土地LT´の表層面の3次元モデルとして生成される数値表層モデルである。第2対象DSM31(
図14等参照)は、第4時点における対象土地LT´の表層面の3次元モデルとして生成される数値表層モデルである。
【0089】
次に、S605では、日射量推定部106が、取得した第2赤外線画像Ii2および第2対象DSM31を用いて、第2グリッドG2´における推定日射量SEを推定する。第2グリッドG2´(
図14参照)は、第2対象DSM31を格子状に分割して得られる複数のグリッドのうちの、注目グリッドGT´´に対応するグリッドである。注目グリッドGT´´は、対象土地LT´における注目グリッドである。
【0090】
本実施形態では、日射量推定部106は、第2対象DSM31を構成する複数の第2グリッドG2´のそれぞれについて、まず基礎推定日射量SE´を推定し、当該基礎推定日射量SE´を用いて推定日射量SEを推定する。
【0091】
基礎推定日射量SE´も、推定日射量SEと同様、第2グリッドG2´における日射量の推定量である。日射量推定部106による基礎推定日射量SE´の推定方法に特段の限定はなく、種々の公知の方法を採用できる。公知の推定方法については、文献「Fu, P., and P.M. Rich. 2000. The Solar Analyst 1.0 Manual.Helios Environmental Modeling Institute(HEMI), USA」、文献「Rich, P.M., R.Dubayah, W.A.Hetrick, and S.C.Saving. 1994. Using Viewshed Models to Calculate Intercepted Solar Radiation:Applications in Ecology. American Society for Photogrammetry and Remote Sensing Technical Papers, pp 524-529.」等を参照されたい。
【0092】
そして、日射量推定部106は、第2赤外線画像Ii2を構成する複数の第1グリッドG1´の中から、温度値T´が同じになる第1グリッドG1´を抽出する。日射量推定部106は、温度値T´が同じになる第1グリッドG1´の集合(以下、「基準集合」)に対応する第2グリッドG2´の集合(以下、「対応集合」)毎に、基礎推定日射量SE´の平均値Raveを算出する。
【0093】
そして、日射量推定部106は、温度値T´と平均値R
aveとの相関関係を示す、
図13のようなグラフを生成する。日射量推定部106は、生成したグラフを用いて、当該グラフにプロットされた各点の分布傾向を近似した近似式を第1基礎近似式として算出する。下記の式(2)は、第1基礎近似式の一例である。下記の式(2)において、T´は第1グリッドG1´における温度値[℃]であり、R
aveは基礎推定日射量SE´の平均値[Wh/m
2]である。下記の式(2)の各係数(58.121、-74.501)は、対象土地LT´の反射率(アルベド)、推定環境等によって変化し得る値である。
【0094】
(数2)
Rave=58.12ln(T´)-74.501 ・・・(2)
そして、日射量推定部106は、第1基礎近似式に温度値T´を代入して得られる平均値Raveを、当該温度値T´が格納されている第1グリッドG1´に対応する第2グリッドG´における、推定日射量SEとする。つまり、日射量推定部106は、推定日射量SEを算出するため推定式として第1基礎近似式を用いる。
【0095】
下記の式(3)は、推定式の一例であり、上記の式(2)で表される第1基礎近似式を推定式とした場合の例である。下記の式(3)において、Riはi番目の第2グリッドG2´における推定日射量SE[Wh/m2]であり、Tiはi番目の第2グリッドG2´に対応する第1グリッドG1´における温度値T´[℃]である。「i」は、1から第2グリッドG2´の総数までの任意の自然数である。
【0096】
(数3)
Ri=58.12ln(Ti)-74.501 ・・・(3)
このように、日射量推定部106は、第1グリッドG1´における温度値T´を推定式に代入して得られた値を推定日射量SEとすることにより、当該推定日射量SEを推定する。そして、日射量推定部106は、推定した推定日射量SEを差分算出部107に送信する。
【0097】
本実施形態では、入力部11がユーザ操作を受け付けることにより、日射量推定部106が、第2対象DSM31および推定した推定日射量SEを表示部12に送信する。そして、表示部12は、
図14に示すように、画像化した推定日射量SEを重畳表示させた第2対象DSM31を表示する。
【0098】
次に、S606では、差分算出部107が、取得した推定日射量SEを用いて、第2グリッドG2´における基準量と推定日射量SEとの差分ΔSを算出する。差分算出部107は、すべての第2グリッドG2´に対して同じ基準量を適用する。本実施形態では、差分算出部107が、日射量推定部106により算出されたすべての平均値R
aveの中で最も値が大きいものを日射量推定部106から取得して、基準量とする。例えば、温度値T´と平均値R
aveとの相関関係が
図13に示すグラフのようになった場合、基準量は約84[Wh/m
2]となる。
【0099】
そして、差分算出部107は、算出した差分ΔSを温度値特定部104aに送信する。また、本実施形態では、入力部11がユーザ操作を受け付けることにより、差分算出部107が、第2対象DSM31および算出した差分ΔSを表示部12に送信する。そして、表示部12は、
図15に示すように、画像化した差分ΔSを重畳表示させた第2対象DSM31を表示する。
【0100】
次に、S607では、温度値特定部104aが、取得した差分ΔSを用いて第1グリッドG1´における温度値T´を補正する。
【0101】
ここで、対象土地LT´において、樹木等のような光の照射を遮る地物が存在せず、かつ、対象地表面となる植生の表面が略均一の標高値であるときに、対象地表面における日射量分布および温度値分布のそれぞれが略均一になると仮定する。この場合、平均値Raveの最大値(つまり基準量)から任意の平均値Raveを差し引いた値は、任意の対応集合における平均損失日射量Rlに等しくなる(以下、「第1関係」)。
【0102】
平均損失日射量Rlは、対応集合に属するすべての第2グリッドG2´における損失日射量を平均した値である。損失日射量は、任意の注目グリッドGT´´に存在する地物の影響によって、当該任意の注目グリッドGT´´が損失した日射量である。この場合の「任意の注目グリッドGT´´」とは、対応集合に属する任意の第2グリッドG2´に対応する注目グリッドGT´´のことを指す。
【0103】
また、平均値Raveが最大になるときの温度値T´から任意の基準集合における温度値T´を差し引いた値は、任意の基準集合における損失温度値Tlに等しくなる(以下、「第2関係」)。損失温度値Tlは、任意の注目グリッドGT´´に存在する地物の影響によって、当該任意の注目グリッドGT´´が損失した温度値である。この場合の「任意の注目グリッドGT´´」とは、基準集合に属する任意の第1グリッドG1´に対応する注目グリッドGT´´のことを指す。
【0104】
本実施形態では、温度値特定部104aが、前述の仮定を前提にした上で、第1および第2関係を用いて温度値T´を補正する。以下、温度値T´と平均値R
aveとの相関関係が
図13に示すグラフのようになる場合を例に挙げて説明する。
【0105】
まず、温度値特定部104aは、第1関係を用いて、対応集合毎に平均損失日射量R
lを算出する。また、温度値特定部104aは、第2関係を用いて、基準集合毎に損失温度値T
lを算出する。温度値特定部104aは、算出結果に基づいて、平均損失日射量R
lと損失温度値T
lとの相関関係を示す、
図16のようなグラフを生成する。
【0106】
そして、温度値特定部104aは、生成したグラフを用いて、当該グラフにプロットされた各点の分布傾向を近似した近似式を第2基礎近似式として算出する。下記の式(4)は、温度値T´と平均値R
aveとの相関関係が
図13に示すグラフのようになる場合における、第2基礎近似式の例である。下記の式(4)において、T
lは基準集合における損失温度値[℃]であり、R
lは対応集合における平均損失日射量[Wh/m
2]である。
【0107】
(数4)
Tl=-0.0022Rl
2+0.3Rl+0.2502 ・・・(4)
そして、温度値特定部104aは、第1関係を参照して、平均値Raveの最大値(つまり基準量)から任意の第2グリッドG2´´における推定日射量SEを差し引いた値が、当該任意の第2グリッドG2´における損失日射量になるものと推定する。即ち、温度値特定部104aは、差分ΔSが損失日射量に相当するものと推定する(以下、「第1推定」)。
【0108】
また、温度値特定部104aは、第2関係を参照して、平均値Raveが最大になるときの温度値T´から任意の第1グリッドG1´における温度値T´を差し引いた値が、当該任意の第1グリッドG1´における損失温度値になるものと推定する(以下、「第2推定」)。「第1グリッドG1´における損失温度値」は、当該第1グリッドG1´が属する基準集合における損失温度値Tlと同じであり、以下「第1グリッドG1´における損失温度値Tl」と表記する。
【0109】
この第2推定を言い換えれば、第1グリッドG1´における温度値T´に損失温度値Tlを加えることで、平均値Raveが最大になるときの温度値T´、つまり第1グリッドG1´に対応する注目グリッドGT´´に存在する地物の影響を除去した温度値T´が得られることが推定される。このことから、温度値特定部104aは、第1グリッドG1´における損失温度値Tlを、当該第1グリッドG1´における温度値T´を補正するための補正値cTiとする。
【0110】
そして、温度値特定部104aは、第1および第2推定に基づいて、第2基礎近似式を、第2グリッドG2´における損失日射量(つまり差分ΔS)と、当該第2グリッドG2´に対応する第1グリッドG1´における補正値cTiと、の相関関係を示す式とみなす。つまり、温度値特定部104aは、補正値cTiを算出するための式として第2基礎近似式を用いる。以下、前述の相関関係を「第2相関関係」と称し、第2相関関係を示す式を「第2関係式」と称する。
【0111】
以上のことから、平均損失日射量R
lと損失温度値T
lとの相関関係を示す
図16のグラフは、第2グリッドG2´における差分ΔSと、当該第2グリッドG2´に対応する第1グリッドG1´における補正値cT
iと、の第2相関関係を示すグラフに読み替えられる。
【0112】
下記の式(5)は、第2関係式の一例であり、上記の式(4)で表される第2基礎近似式を第2関係式に置き換えた場合の例である。下記の式(5)において、lRiはi番目の第2グリッドG2´における差分ΔS[Wh/m2]であり、cTiはi番目の第2グリッドG2´に対応する第1グリッドG1´における補正値[℃]である。「i」は、1から第2グリッドG2´の総数までの任意の自然数である。
【0113】
(数5)
cTi=-0.0022lRi
2+0.3lRi+0.2502 ・・・(5)
そして、温度値特定部104aは、第2グリッドG2´における差分ΔSを第2関係式に代入して得られた補正値cTiを、当該第2グリッドG2´に対応する第1グリッドG1´における温度値T´に加算する。温度値特定部104aは、この加算によって得られた値を、第1グリッドG1´における補正後の温度値T´´とする。
【0114】
そして、温度値特定部104aは、補正後の温度値T´´を標高値推定部105aに送信する。また、本実施形態では、入力部11がユーザ操作を受け付けることにより、温度値特定部104aが、画像化した補正値cT
iを重畳表示させ第2赤外線画像Ii2を生成する。温度値特定部104aは、重畳表示後の第2赤外線画像Ii2を表示部12に送信し、表示部12は、
図17に示すように、重畳表示後の第2赤外線画像Ii2を表示する。さらに、本実施形態では、入力部11がユーザ操作を受け付けることにより、温度値特定部104aが、画像化した補正後の温度値T´´を重畳表示させた第2赤外線画像Ii2を生成する。温度値特定部104aは、重畳表示後の第2赤外線画像Ii2を表示部12に送信し、表示部12は、
図18に示すように、重畳表示後の第2赤外線画像Ii2を表示する。
【0115】
次に、S608では、標高値推定部105aが、第1相関関係として標高変化量ΔEと補正後の温度値T´´との相関関係を特定する。つまり、標高値推定部105aは、1グリッドG1´における補正後の温度値T´´を、当該第1グリッドG1´における温度値T´とみなして、第1相関関係を特定する。S608における他の処理内容は、S505の処理内容と同様である。
【0116】
次に、S609の処理内容は、S506の処理内容と同じである。S609の処理の終了によって、情報処理装置1bが実行する主要処理がすべて終了する。
【0117】
<変形例>
温度値特定部104aによる温度値T´の補正において、第2関係式を用いることは必須ではない。温度値特定部104aは、例えば、第2関係式の替わりに第2推定モデルを用いて温度値T´を補正してもよい。
【0118】
第2推定モデルは、第2基礎データセットを教師データとする機械学習によって構築された学習済みモデルであり、差分(損失日射量)が入力データとなり、補正値(損失温度値)が出力データとなる。機械学習の方法に特段の限定はなく、畳み込みニューラルネットワーク等の公知の方法を採用することができる。第2基礎データセットは、過去差分と過去補正値とで構成されるデータセットである。過去差分は、第1時点よりも前の時点での、対象DSMを構成する複数の第2グリッドのそれぞれにおける差分である。過去補正値は、前述した複数の第2グリッドのそれぞれに対応する第1グリッドにおける補正値であり、温度値特定部104aによって算出された損失温度値に相当する。
【0119】
この場合、温度値特定部104aは、第2グリッドG2´における差分ΔSを第2推定モデルに入力することにより、当該第2グリッドG2´に対応する第1グリッドG1´における補正値cTiを第2推定モデルから取得する。そして、温度値特定部104aは、第2推定モデルから得られた補正値cTiを第1グリッドG1´における温度値T´に加算する。温度値特定部104aは、この加算によって得られた値を、第1グリッドG1´における補正後の温度値T´´とする。
【0120】
<小括>
第2赤外線画像Ii2が撮像された時期および時間帯、情報取得部101の情報取得対象となる地表面および地物の周辺環境等によっては、地表面および地物の各場所に応じて受ける日射量にバラつきが生じる。このバラつきは、温度値特定部104aが特定する第1グリッドG1´における温度値T´に地物の影響が反映されない原因となり、ひいては、標高値推定部105aが地物の影響を正確に反映した状態の第1相関関係を特定できなくなる。
【0121】
その点、情報処理装置1bは、標高値推定部105aが、第1グリッドG1´における補正後の温度値T´´を当該第1グリッドG1´における温度値T´とみなして、第1相関関係を特定する。これにより、日射量のバラつきが第1相関関係の特定精度に与える悪影響を排除して、地物の影響を正確に反映した状態の第1相関関係を特定することができる。よって、地表面の形状を簡単な処理で正確に把握できる。
【0122】
前記構成によれば、第1グリッドG1´における温度値T´に、第2関係式に第2グリッドG2´における差分ΔSを代入して得られた補正値cTiを加算することで、第1グリッドG1´における温度値T´を補正できる。よって、地物の影響を正確に反映した状態の第1相関関係を特定できることから、地表面の形状を簡単な処理で正確に把握できる。
【0123】
〔ソフトウェアによる実現例〕
推定装置100~300(以下、「装置」と略記)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部15に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0124】
この場合、前記装置は、前記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置とにより前記プログラムを実行することで、前記の各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0125】
前記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、前記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、前記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して前記装置に供給されてもよい。
【0126】
また、前記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、前記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより前記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0127】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
3、31 第2対象DSM(数値表層モデル)
100、200、300 推定装置
101 情報取得部
102、102a モデル生成部
103 変化量算出部
104、104a 温度値特定部
105、105a 標高値推定部
106 日射量推定部
107 差分算出部
G1、G1´ 第1グリッド
G2、G2´ 第2グリッド
GK´ 仮想グリッド
GT、GT´、GT´´ 注目グリッド
Ii1 第1赤外線画像(赤外線画像)
Ii2 第2赤外線画像(赤外線画像)
Iv1 第1可視光画像(光情報)
Iv2 第2可視光画像(光情報)
Iv4 第4可視光画像(光情報)
P 基礎3次元点群データ(数値表層モデルの基礎となる表層面の3次元点群データ)
PG 点群(フィルタリングにより抽出された点)
P´ 処理後3次元点群データ(フィルタリングにより抽出された点が除かれた3次元点群データ)
SE 推定日射量
T、T´ 温度値
T´´ 補正後の温度値
ΔE 標高変化量(第2グリッドにおける標高の変化量)
ΔS 差分