(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135967
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両制御システム、及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240927BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20240927BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20240927BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W30/095
B60W50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046899
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 雄悟
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 倫明
(72)【発明者】
【氏名】李 亦楊
(72)【発明者】
【氏名】長島 正明
(72)【発明者】
【氏名】谷田 公二
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 健司
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA32
3D241BB31
3D241CE03
3D241CE04
3D241CE05
3D241DD03Z
3D241DD13Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】交差点の右折又は左折を行う対象車両の走行を制御する際には、対象車両の利用者が違和感を抱くことを抑制して、利用者の快適な移動をサポートする。
【解決手段】車両制御システム10aは、対向車両1bの交差点到達予測時間から対象車両1aの進行方向切替予測時間を減じた余裕時間が所定の判定時間以上であるときに、対象車両1aによる進行方向切替の実行が可能と判断する進行方向切替判断部25と、前記交差点到達予測時間が所定時間未満である範囲での前記判定時間を、前記交差点到達予測時間が前記所定時間以上である範囲での前記判定時間よりも短い時間に設定する判定時間設定部26と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両が、交差点内を、対向車線を横切って曲がることにより進行方向を切り替える進行方向切替を実行しようとする進行方向切替移行状態であることを認識する進行方向切替移行状態認識部と、
前記進行方向切替移行状態認識部により、前記対象車両が前記進行方向切替移行状態であることが認識されている状況で、前記対向車線を前記交差点に向かって直進する対向車両を認識する直進対向車両認識部と、
前記対象車両による前記進行方向切替の実行に要する予測時間である進行方向切替予測時間を認識する進行方向切替予測時間認識部と、
前記対向車両が前記交差点に到達するまでの予測時間である交差点到達予測時間を認識する交差点到達予測時間認識部と、
前記交差点到達予測時間から前記進行方向切替予測時間を減じた余裕時間が所定の判定時間以上であるときに、前記対象車両による前記進行方向切替の実行が可能と判断する進行方向切替判断部と、
前記交差点到達予測時間が所定時間未満である範囲での前記判定時間を、前記交差点到達予測時間が前記所定時間以上である範囲での前記判定時間よりも短い時間に設定する判定時間設定部と、
を備える車両制御システム。
【請求項2】
前記対象車両の利用者の属性を認識する利用者属性認識部を備え、
前記判定時間設定部は、前記利用者の属性に基づいて前記判定時間を補正する
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記交差点の通行状況を認識する交差点通行状況認識部を備え、
前記判定時間設定部は、前記交差点の通行状況に基づいて前記判定時間を補正する
請求項1又は請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
コンピュータにより実行される車両制御方法であって、
対象車両が、交差点内を、対向車線を横切って曲がることにより進行方向を切り替える進行方向切替を実行しようとする進行方向切替移行状態であることを認識する進行方向切替移行状態認識ステップと、
前記進行方向切替移行状態認識ステップにより、前記対象車両が前記進行方向切替移行状態であることが認識されている状況で、前記対向車線を前記交差点に向かって直進する対向車両を認識する直進対向車両認識ステップと、
前記対象車両による前記進行方向切替の実行に要する予測時間である進行方向切替予測時間を認識する進行方向切替予測時間認識ステップと、
前記対向車両が前記交差点に到達するまでの予測時間である交差点到達予測時間を認識する交差点到達予測時間認識ステップと、
前記交差点到達予測時間から前記進行方向切替予測時間を減じた余裕時間が所定の判定時間以上であるときに、前記対象車両による前記進行方向切替の実行が可能と判断する進行方向切替判断ステップと、
前記交差点到達予測時間が所定時間未満である範囲での前記判定時間を、前記交差点到達予測時間が前記所定時間以上である範囲での前記判定時間よりも短い時間に設定する判定時間設定ステップと、
を含む車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム、及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。例えば、特許文献1は、交差点における自車両の軌跡と他車両の軌跡との交点に基づいて、他車両に関する運転支援を行う運転支援装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転支援技術においては、特に交差点で対向車線を横切って進行方向を切り替える(左側通行の場合は右折、右側通行の場合は左折)対象車両について、交差点を直進する対向車両の進行状況を判断して、適切なタイミングで右折又は左折が行われるように、車両制御を行う必要がある。このように、交差点の右折又は左折を行う対象車両の走行を制御する際には、対象車両の利用者(搭乗者)が違和感を抱くことを抑制して、利用者の快適な移動をサポートすることが課題となる。
また、従来の技術では、対象車両と対向車両の走行軌跡の交錯点を算出する際に、右折又は左折の制御を行う対象車両側の演算においては、何通りもの右折パス(経路)又は左折パスを算出し、各パスを算出するごとに対向車両の接近状況を認識して対向車両の到来パスを予測計算して、対象車両と対向車両が交錯するまでの時間と交錯する位置を算出する必要があり、このような繰り返しの処理に演算時間がかかっていた。
本願は上記課題の解決のため、交差点の右折又は左折を行う対象車両の走行を制御する際に、対象車両の利用者が違和感を抱くことを抑制することができる車両制御システム、及び車両制御方法を提供することを目的としたものである。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、対象車両が、交差点内を、対向車線を横切って曲がることにより進行方向を切り替える進行方向切替を実行しようとする進行方向切替移行状態であることを認識する進行方向切替移行状態認識部と、前記進行方向切替移行状態認識部により、前記対象車両が前記進行方向切替移行状態であることが認識されている状況で、前記対向車線を前記交差点に向かって直進する対向車両を認識する直進対向車両認識部と、前記対象車両による前記進行方向切替の実行に要する予測時間である進行方向切替予測時間を認識する進行方向切替予測時間認識部と、前記対向車両が前記交差点に到達するまでの予測時間である交差点到達予測時間を認識する交差点到達予測時間認識部と、前記交差点到達予測時間から前記進行方向切替予測時間を減じた余裕時間が所定の判定時間以上であるときに、前記対象車両による前記進行方向切替の実行が可能と判断する進行方向切替判断部と、前記交差点到達予測時間が所定時間未満である範囲での前記判定時間を、前記交差点到達予測時間が前記所定時間以上である範囲での前記判定時間よりも短い時間に設定する判定時間設定部と、を備える車両制御システムが挙げられる。
【0006】
上記車両制御システムにおいて、前記対象車両の利用者の属性を認識する利用者属性認識部を備え、前記判定時間設定部は、前記利用者の属性に基づいて前記判定時間を補正する構成としてもよい。
【0007】
上記車両制御システムにおいて、前記交差点の通行状況を認識する交差点通行状況認識部を備え、前記判定時間設定部は、前記交差点の通行状況に基づいて前記判定時間を補正する構成としてもよい。
【0008】
上記目的を達成するための第2態様として、コンピュータにより実行される車両制御方法であって、対象車両が、交差点内を、対向車線を横切って曲がることにより進行方向を切り替える進行方向切替を実行しようとする進行方向切替移行状態であることを認識する進行方向切替移行状態認識ステップと、前記進行方向切替移行状態認識ステップにより、前記対象車両が前記進行方向切替移行状態であることが認識されている状況で、前記対向車線を前記交差点に向かって直進する対向車両を認識する直進対向車両認識ステップと、前記対象車両による前記進行方向切替の実行に要する予測時間である進行方向切替予測時間を認識する進行方向切替予測時間認識ステップと、前記対向車両が前記交差点に到達するまでの予測時間である交差点到達予測時間を認識する交差点到達予測時間認識ステップと、前記交差点到達予測時間から前記進行方向切替予測時間を減じた余裕時間が所定の判定時間以上であるときに、前記対象車両による前記進行方向切替の実行が可能と判断する進行方向切替判断ステップと、前記交差点到達予測時間が所定時間未満である範囲での前記判定時間を、前記交差点到達予測時間が前記所定時間以上である範囲での前記判定時間よりも短い時間に設定する判定時間設定ステップと、を含む車両制御方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
上記車両制御システム及び車両制御方法によれば、交差点の右折又は左折を行う対象車両の走行を制御する際に、対象車両の利用者が違和感を抱くことを抑制することができる。また、上記車両制御システム及び車両制御方法によれば、交差点における対象車両と対向車両の位置関係を算出するだけで済むので、交差点における対象車両の右折又は左折の可否を判断するための演算処理に要する時間を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、車両制御システムによる対象車両の制御態様の説明図である。
【
図3】
図3は、対象車両の右折に対応した制御処理のフローチャートである。
【
図4】
図4は、右折可否の判定時間の設定態様の説明図である。
【
図5】
図5は、対象車両の進行歩行切替予測時間及び対向車両の交差点到達予測時間の変化に応じた判定時間の設定態様の説明図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態における車両制御システムの構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.車両制御システムによる対象車両の制御の態様]
図1を参照して、本実施の形態の車両制御システム10aは、対象車両1aに搭載されて、対象車両1aの作動を制御する。
【0012】
対象車両1aは、通信ネットワーク200(
図2参照)を介して通信を行う通信ユニット40a、対象車両1aの前方を撮影するフロントカメラ41a、及び対象車両1aの前方に存在する物体の位置を検出するフロントレーダー42aを備えている。車両制御システム10aは、フロントカメラ41aにより撮影される対象車両1aの前方画像と、フロントレーダー42aにより検出される対象車両1aの前方の物体の位置とに基づいて、対象車両1aの作動を制御する。
【0013】
対象車両1aの作動の制御は、対象車両1aが自動運転車両であるときは自動運転の制御であり、対象車両1aが運転アシスト機能を有する車両であるときには、運転者に対する運転操作をアシストする制御である。以下では、対象車両1aが交差点Isを右折する際に、車両制御システム10aにより実行される制御処理について説明する。
【0014】
図1では、交差点Isに向かって対向車線を直進する対向車両1bが、車両制御システム10aにより認識される。対向車両1bも、対象車両1aと同様に、車両制御システム10b、通信ユニット40b、フロントカメラ41b、及びフロントレーダー42bを備えている。車両制御システム10aは、対象車両1aが交差点Isを右折する際に要する予測時間である進行方向切替予測時間Tcと、対向車両1bが交差点Isに到達するまでの予測時間である交差点到達予測時間Trとを認識する。
【0015】
そして、車両制御システム10aは、交差点到達予測時間Trから進行方向切替予測時間Tcを減じた余裕時間ΔT(=Tr-Tc)に基づいて、対象車両1aによる交差点Isの右折の可否を判断する。なお、本実施の形態では、左側通行の道路を例に説明しているため、交差点での右折が、本開示の対向車線を横切って曲がることにより進行方向を切り替える進行方向切替に相当する。右側通行の道路である場合は、交差点での左折が、本開示の対向車線を横切って曲がることにより進行方向を切り替える進行方向切替に相当する。右側通行である場合の左折に対応した車両制御システム10aによる制御処理は、左側通行である場合の右折に対応した制御処理と同様である。
【0016】
[2.車両制御システムの構成]
図2を参照して、対象車両1aに備えられた車両制御システム10aの構成について説明する。車両制御システム10aは、上述した通信ユニット40a、フロントカメラ41a、及びフロントレーダー42aと接続され、フロントカメラ41aの撮影画像とフロントレーダー42aの検出信号が車両制御システム10aに入力される。
【0017】
さらに、車両制御システム10aは、速度センサ43、ディスプレイ44、スピーカー45、及びナビゲーション装置50と接続され、速度センサ43による対象車両1aの走行速度の検出信号が入力される。また、車両制御システム10aから出力される制御信号により、ディスプレイ44の画面表示と、スピーカー45からの音出力がされる。ナビゲーション装置50は、複数の航法衛星から地上に向けて送信される電波を受信することにより自車両1の位置を検出するGNSS(Global Navigation Satellite System)センサ51と、地図データ52を備えて、目的地へのルート案内等を実行する。
【0018】
車両制御システム10aは、ナビゲーション装置50とのデータ通信により、対象車両1aの位置、対象車両1aの目的地、対象車両1aが走行している道路の形状等を認識する。車両制御システム10aは、通信ユニット40aにより、通信ネットワーク200を介して車両支援サーバー100、対向車両1b等との間で通信を行う。なお、車両制御システム10aが、通信ネットワーク200を介さずに、対向車両1bとの間で直接通信を行うようにしてもよい。
【0019】
車両支援サーバー100は、対象車両1aを含む複数の車両の利用者に関する情報が、利用者ごとに記録される利用者DB(データベース)101が備えられている。利用者に関する情報には、利用者の性格(短気、温厚等)、運転特性(発進が遅れがち、急発進が多い等)、年齢(高齢、若年等)等の利用者の属性が含まれる。さらに、車両支援サーバー100には、定点カメラ150の撮影画像、各車両から送信される車両使用情報等に基づいて認識される交差点Isの通行状況の情報が記録される通行状況DB102が備えられている。
【0020】
車両制御システム10aは、プロセッサ20、メモリ30等を有する制御ユニットである。メモリ30には、車両制御システム10aの制御用のプログラム31が保存されている。プログラム31は、プログラム31が記録された記録媒体(光ディスク、フラッシュメモリ等)から車両制御システム10aに読み込んでメモリ30に保存されてもよく、車両支援サーバー100等の外部のシステムから車両制御システム10aにダウンロードしてメモリ30に保存されてもよい。
【0021】
プロセッサ20は、プログラム31を読み込んで実行することにより、進行方向切替移行状態認識部21、直進対向車両認識部22、進行方向切替予測時間認識部23、交差点到達予測時間認識部24、進行方向切替判断部25、判定時間設定部26、利用者属性認識部27、及び交差点通行状況認識部28として機能する。
【0022】
進行方向切替移行状態認識部21により実行される処理は、本開示の車両制御方法における進行方向切替移行状態認識ステップに相当し、直進対向車両認識部22により実行される処理は、本開示の車両制御方法における直進対向車両認識ステップに相当する。進行方向切替予測時間認識部23により実行される処理は、本開示の車両制御方法における進行方向切替予測時間認識ステップに相当し、交差点到達予測時間認識部24により実行される処理は、本開示の車両制御方法における交差点到達予測時間認識ステップに相当する。進行方向切替判断部25により実行される処理は、本開示の車両制御方法における進行方向切替判断ステップに相当し、判定時間設定部26により実行される処理は、本開示の車両制御方法における判定時間設定ステップに相当する。
【0023】
進行方向切替移行状態認識部21は、GNSSセンサ51により検出される対象車両1aの現在位置と地図データ52とにより認識される対象車両1aが走行している道路の位置、ナビゲーション装置50で設定されている対象車両1aの目的地、対象車両1aのウィンカースイッチの操作状況等に基づいて、対象車両1aが、
図1に示したように、交差点Isを右折しようとする右折移行状態(本開示の進行方向切替移行状態に相当)であることを認識する。
【0024】
直進対向車両認識部22は、
図1に示したように、対象車両1aが交差点Isで右折移行状態であるときに、フロントカメラ41aの撮影画像に基づいて、対向車線151を直進して交差点Isに向かって走行している対向車両1bを認識する。なお、対向車両1bから送信される対向車両1bの車両使用情報を、車両支援サーバー100を介して、或いは対向車両1bから直接受信することにより、交差点Isに向かって対向車線151を走行している対向車両1bを認識してもよい。
【0025】
進行方向切替予測時間認識部23は、地図データ52に記録されている交差点Isの大きさの情報に基づいて、対象車両1aが交差点Isを右折する際に要する予測時間である進行方向切替予測時間Tcを認識する。交差点到達予測時間認識部24は、対向車両1bが交差点Isに到達するまでの予測時間である交差点到達予測時間Trを、例えば、以下の第1認識手法又は第2認識手法によって認識する。
【0026】
第1認識手法…フロントカメラ41aの撮影画像から認識される対向車両1bの位置の変化を、対向車両1bの画像又はフロントレーダー42aの検出信号により認識することによって、交差点到達予測時間Trを認識する。
第2認識手法…対向車両1bから送信される車両使用情報(対向車両1bの位置と走行速度を含む)を、車両支援サーバー100を介して、或いは対向車両1bから直接受信することによって、交差点到達予測時間Trを認識する。
【0027】
進行方向切替判断部25は、対象車両1aが交差点Isを右折することが可能なタイミングであるか否かを、交差点到達予測時間Trから進行方向切替予測時間Tcを減じた余裕時間ΔT(=Tr-Tc)が判定時間Td以上であるか否かによって判断する。判定時間設定部26は、
図4に示したように、交差点到達予測時間Trが所定時間Tth未満である範囲W1では判定時間TdをTd1に設定し、交差点到達予測時間Trが所定時間Tth以上である範囲W2では判定時間Tdを、Td1よりも長いTd2に設定する。
【0028】
図5は、縦軸を交差点到達予測時間Trに設定し、横軸を進行方向切替予測時間Tcに設定して、余裕時間ΔT=0のラインL1に対する余裕時間ΔT=判定時間TdのラインL2を示したグラフである。
図5のグラフでは、交差点到達予測時間Trが所定時間Tth未満である範囲では、判定時間Tdが比較的短いTd1に設定され、これにより、対向車両1bが交差点Isに近づいてきていることから、速やかに右折を行いたいと考える対象車両1aの利用者の心理状態に適合するように、利用者が違和感を抱くことを抑制して、進行方向切替判断部25による右折の可否の判断がなされることが期待できる。また、交差点到達予測時間Trが所定時間Tth以上の範囲では、判定時間が比較的長いTd2に設定され、これにより、対向車両1bがまだ交差点Isから離れている状態であることから、余裕をもって右折を行うとする対象車両1aの搭乗者の心理状態に適合するように、利用者が違和感を抱くことを抑制して、進行方向切替判断部25による右折の可否の判断がなされることが期待される。
【0029】
利用者属性認識部27は、通信ユニット40aにより通信ネットワーク200を介して車両支援サーバー100と通信を行うことにより、利用者DB101にアクセスして、対象車両1aの利用者の属性を認識する。交差点通行状況認識部28は、通信ユニット40aにより通信ネットワーク200を介して車両支援サーバー100と通信を行うことにより、通行状況DB102にアクセスして、交差点Isの通行状況を認識する。
【0030】
判定時間設定部26は、利用者属性認識部27により認識される対象車両1aの利用者の属性、及び交差点通行状況認識部28により認識される交差点Isの通行状況に基づいて、判定時間Tdを補正する。判定時間設定部26は、例えば、利用者の属性から、利用者が高齢であって、発進が遅れがちであることを認識した場合には、発進が適切であると認識される利用者よりも、判定時間Tdを長くする補正を行う。
【0031】
また、判定時間設定部26は、交差点Isの通行状況から、例えば、
図1に示したように、対象車両1aが右折しようとする前方の道路を横断しようとする歩行者Pが認識される場合には、歩行者Pが認識されない場合よりも、判定時間Tdを長くする補正を行う。また、判定時間設定部26は、交差点Isにおける車両の通行量が多く、対象車両1aの右折が他車両により妨げられる可能性がある場合には、交差点Isにおける通行量が少ない場合よりも、判定時間を長くする補正を行う。
【0032】
[3.対象車両の右折に対応した制御処理]
図3に示したフローチャートに従って、車両制御システム10aにより実行される対象車両1aの右折に対応した制御処理の手順について説明する。
【0033】
図3のステップS1で、進行方向切替移行状態認識部21は、対象車両1aが交差点Isで右折移行状態となったことを認識したときに、ステップS2に処理を進める。ステップS2で、直進対向車両認識部22は、対向車線151を交差点Isに向かって直進してくる対向車両1bの有無を判断する。そして、直進対向車両認識部22は、対向車両1bを認識したときはステップS3に処理を進め、対向車両1bを認識しなかったときにはステップS8に処理を進める。
【0034】
ステップS3で、交差点到達予測時間認識部24は、上述したように、対向車両1bについて交差点到達予測時間Trを認識する。続くステップS4で、判定時間設定部26は、交差点到達予測時間Trが所定時間Tth以上であるか否かを判断する。そして、
図4を参照して上述したように、判定時間設定部26は、交差点到達予測時間Trが所定時間Tth以上であるときは、ステップS20に処理を進めてTd2を判定時間Tdに設定し、ステップS6に処理を進める。一方、交差点到達予測時間Trが所定時間Tth未満であるときには、判定時間設定部26は、ステップS5に処理を進めて、Td1(<Td2)を判定時間Tdに設定する。
【0035】
判定時間設定部26は、ステップS5,S20で判定時間Tdを設定する際に、上述したように、利用者属性認識部27により認識される対象車両1aの利用者の属性、及び交差点通行状況認識部28により認識される交差点Isの状況に基づいて、判定時間Tdを補正する。
【0036】
ステップS20で、進行方向切替予測時間認識部23は、対象車両1aについて、上述したように、進行方向切替予測時間Tcを認識する。続くステップS7で、進行方向切替判断部25は、交差点到達予測時間Trから進行方向切替予測時間Tcを減じた余裕時間ΔTが、判定時間Td以上であるか否かを判断する。
【0037】
そして、進行方向切替判断部25は、余裕時間ΔTが判定時間Td以上であるときはステップS8に処理を進め、余裕時間ΔTが判定時間Td未満であるときにはステップS30に処理を進める。ステップS8で、進行方向切替判断部25は、右折可と判断し、ディスプレイ44に右折が可能なタイミングであることを報知する画面を表示すると共に、スピーカー45から右折が可能なタイミングであることを報知する音声を出力する。これらの報知に従って、対象車両1aが運転アシスト機能を有する車両である場合は、対象車両1aの運転者は、ステアリング操作等を行って右折をする。また、対象車両1aが自動運転車両である場合には、車両制御システム10aの制御により、対象車両1aの右折走行が実行される。
【0038】
また、ステップS30で、進行方向切替判断部25は、右折不可と判断して、ディスプレイ44に待機を報知する画面を表示すると共に、スピーカー45から待機を報知する音声を出力する。これらの報知に従って、対象車両1aが運転アシスト機能を有する車両である場合は、対象車両1aの運転者は右折を行わずに待機する。また、対象車両1aが自動運転車両である場合には、車両制御システム10aの制御により、対象車両1aが停止状態に維持される。
【0039】
[4.他の実施形態]
上記実施形態では、
図1、
図2に示したように、対象車両1aに車両制御システム10aを備えた構成を例示したが、
図5に示したように、車両制御システム110を、車両支援サーバー100に備えた構成としてもよい。
図5の例では、車両制御システム110は、プロセッサ120、メモリ130等を備え、プロセッサ120は、メモリ130に保存された車両制御システム110の制御用のプログラム131を読み込んで実行することにより、進行方向切替移行状態認識部121、直進対向車両認識部122、進行方向切替予測時間認識部123、交差点到達予測時間認識部124、進行方向切替判断部125、判定時間設定部126、利用者属性認識部127、及び交差点通行状況認識部128として機能する。
【0040】
図6の車両制御システム110では、対象車両1aから送信される車両使用情報Cdiaと、対向車両1bから送信される車両使用情報Cdibが、通信ネットワーク200を介して、車両制御システム110により受信される。車両使用情報Cdiaには、対象車両1aの現在位置、走行速度、目的地等が含まれる。同様に、車両使用情報Cdibには、対向車両1bの現在位置、走行速度、目的地等が含まれる。
【0041】
進行方向切替移行状態認識部121は、対象車両1aの車両使用情報Cdiaに基づいて、対象車両1aが交差点Isで右折移行状態となっていることを認識する。進行方向切替予測時間認識部123は、地図データ132に基づいて、進行方向切替予測時間Tcを認識する。また、直進対向車両認識部122は、対向車両1bの車両使用情報Cdibに基づいて、対向車線151を直進して交差点Isに近づく対向車両1bを認識する。交差点到達予測時間認識部124は、車両使用情報Cdibに基づいて、交差点到達予測時間Trを認識する。
【0042】
進行方向切替判断部125による処理は、上述した進行方向切替判断部25と同様であり、判定時間設定部126による処理は、上述した判定時間設定部26と同様である。利用者属性認識部127による処理は、上述した利用者属性認識部27と同様であり、交差点通行状況認識部128による処理は、上述した交差点通行状況認識部28と同様である。進行方向切替判断部125は、対象車両1aによる交差点Isの右折の可否の判断結果を示す制御情報Ctiを対象車両1aに送信し、対象車両1aにおいては、制御情報Ctiに応じて、上述した
図3のステップS8,S30と同様の報知と制御が行われる。
【0043】
また、交差点Isに設置された定点カメラ150による撮影画像Imgから認識される対象車両1aと対向車両1bの画像に基づいて、進行方向切替移行状態認識部121による対象車両1aが交差点Isで右折移行状態となっていることの認識、直進対向車両認識部122による対向車線151を直進して交差点Isに近づく対向車両1bの認識、及び交差点到達予測時間認識部124による交差点到達予測時間Trの認識を行うようにしてもよい。
【0044】
上記実施形態では、
図4に示しように、判定時間Tdを2段階(Td1,Td2)に切り替えたが、3段階以上に切り替えてもよい。或いは、交差点到達予測時間Trに比例して判定時間Tdが長くなるように設定してもよい。
【0045】
上記実施形態において、利用者属性認識部27と交差点通行状況認識部28を備えて、判定時間設定部26が、利用者属性と交差点の通行状況に基づいて判定時間Tdを補正するようにした。他の構成として、利用者属性認識部27と交差点通行状況認識部28のうちのいずれか一方のみを備える構成としてもよく、或いは利用者属性認識部27と交差点通行状況認識部28を省略した構成としてもよい。
【0046】
[5.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0047】
(構成1)対象車両が、交差点内を、対向車線を横切って曲がることにより進行方向を切り替える進行方向切替を実行しようとする進行方向切替移行状態であることを認識する進行方向切替移行状態認識部と、前記進行方向切替移行状態認識部により、前記対象車両が前記進行方向切替移行状態であることが認識されている状況で、前記対向車線を前記交差点に向かって直進する対向車両を認識する直進対向車両認識部と、前記対象車両による前記進行方向切替の実行に要する予測時間である進行方向切替予測時間を認識する進行方向切替予測時間認識部と、前記対向車両が前記交差点に到達するまでの予測時間である交差点到達予測時間を認識する交差点到達予測時間認識部と、前記交差点到達予測時間から前記進行方向切替予測時間を減じた余裕時間が所定の判定時間以上であるときに、前記対象車両による前記進行方向切替の実行が可能と判断する進行方向切替判断部と、前記交差点到達予測時間が所定時間未満である範囲での前記判定時間を、前記交差点到達予測時間が前記所定時間以上である範囲での前記判定時間よりも短い時間に設定する判定時間設定部と、を備える車両制御システム。
構成1の車両制御システムによれば、交差点に向かって直進してくる対向車両がいる状況で、対向車線を横切って曲がろうとする対象車両の利用者(運転アシスト機能付きの車両においては、特に運転者)が抱く心理状態に応じて、対象車両による進行方向切替の可否の判定時間が設定される。すなわち、対向車両の交差点到達予測時間が長く、進行方向切替について余裕が感じられるときは判定時間が長く設定され、対向車両の交差点到達予測時間が短く、進行方向切替を速やかに行う必要があると感じられるときには判定時間が短く設定される。これにより、交差点内を進行方向切替を行って走行する対象車両に対する制御を、対象車両の利用者が違和感を抱くことを抑制して行うことができる。
【0048】
(構成2)前記対象車両の利用者の属性を認識する利用者属性認識部を備え、前記判定時間設定部は、前記利用者の属性に基づいて前記判定時間を補正する構成1に記載の車両制御システム。
構成2の車両制御システムによれば、個々の搭乗者の属性(性格、運転性向、年齢等)に基づいて判定時間を補正することにより、対象車両が交差点内を進行方向切替を行って走行する際に、対象車両の利用者が違和感を抱くことを抑制する効果を高めることができる。
【0049】
(構成3)前記交差点の通行状況を認識する交差点通行状況認識部を備え、前記判定時間設定部は、前記交差点の通行状況に基づいて前記判定時間を補正する構成1又は構成2に記載の車両制御システム。
構成3の車両制御システムによれば、交差点の通行状況(混雑の度合、交差点を横断する歩行者の有無、対象車両の前方の視界を遮る大型車両の有無等)に基づいて判定時間を補正することにより、対象車両による進行方向切替の可否の判断をより適切に行うことができる。
【0050】
(構成4)コンピュータにより実行される車両制御方法であって、対象車両が、交差点内を、対向車線を横切って曲がることにより進行方向を切り替える進行方向切替を実行しようとする進行方向切替移行状態であることを認識する進行方向切替移行状態認識ステップと、前記進行方向切替移行状態認識ステップにより、前記対象車両が前記進行方向切替移行状態であることが認識されている状況で、前記対向車線を前記交差点に向かって直進する対向車両を認識する直進対向車両認識ステップと、前記対象車両による前記進行方向切替の実行に要する予測時間である進行方向切替予測時間を認識する進行方向切替予測時間認識ステップと、前記対向車両が前記交差点に到達するまでの予測時間である交差点到達予測時間を認識する交差点到達予測時間認識ステップと、前記交差点到達予測時間から前記進行方向切替予測時間を減じた余裕時間が所定の判定時間以上であるときに、前記対象車両による前記進行方向切替の実行が可能と判断する進行方向切替判断ステップと、前記交差点到達予測時間が所定時間未満である範囲での前記判定時間を、前記交差点到達予測時間が前記所定時間以上である範囲での前記判定時間よりも短い時間に設定する判定時間設定ステップと、を含む車両制御方法。
構成4の車両制御方法をコンピュータにより実行することによって、構成1の車両制御システムと同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1a…対象車両、1b…対向車両、10a,10b…車両制御システム、20…プロセッサ、21…進行方向切替移行状態認識部、22…直進対向車両認識部、23…進行方向切替予測時間認識部、24…交差点到達予測時間認識部、25…進行方向切替判断部、26…判定時間設定部、27…利用者属性認識部、28…交差点通行状況認識部、30…メモリ、31…プログラム、40a,40b…通信ユニット、41a,41b…フロントカメラ、42a,42b…フロントレーダー、43…速度センサ、44…ディスプレイ、45…スピーカー、50…ナビゲーション装置、51…GNSSセンサ、52…地図データ、100…車両支援サーバー、101…利用者DB、102…通行状況DB、110…車両制御システム、120…プロセッサ、121…進行方向切替移行状態認識部、122…直進対向車両認識部、123…進行方向切替予測時間認識部、124…交差点到達予測時間認識部、125…進行方向切替判断部、126…判定時間設定部、127…利用者属性認識部、128…交差点通行状況認識部、130…メモリ、131…プログラム、132…地図データ、150…定点カメラ、200…通信ネットワーク。