(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024135976
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20240927BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C23C16/40
C23C16/50
H01L21/31 C
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046912
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】酒井 宗一朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA14
4K030BA29
4K030BA42
4K030BA44
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4K030JA05
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4K030KA30
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5F058BF37
5F058BG01
5F058BG02
5F058BG03
(57)【要約】
【課題】成膜処理において成膜レートを向上させる技術を提供する。
【解決手段】一つの例示的実施形態において、シリコン酸化膜を形成する成膜方法が提供される。この成膜方法は、(a)、(b)、及び(c)の各工程を備え、(a)の工程、(b)の工程、(c)の工程を、この順に繰り返す。(a)の工程は、基板が収容された処理容器内にクロロシラン系ガスを供給し、基板にクロロシラン系ガスによる反応物を形成する。(b)の工程は、処理容器内に還元剤を供給して、反応物に含まれる塩素を除去し水素化する。(c)の工程は、処理容器内に酸化剤を供給して反応物と反応させ、基板にシリコン酸化膜を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン酸化膜を形成する成膜方法であって、
(a)基板が収容された処理容器内にクロロシラン系ガスを供給し、該基板に該クロロシラン系ガスによる反応物を形成する工程と、
(b)前記処理容器内に還元剤を供給して、前記反応物に含まれる塩素を除去し水素化する工程と、
(c)前記処理容器内に酸化剤を供給して前記反応物と反応させ、前記基板にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を備え、
前記(a)の工程、前記(b)の工程、前記(c)の工程を、この順に繰り返す、
成膜方法。
【請求項2】
前記クロロシラン系ガスは、ペンタクロロジシラン含有ガスである、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記クロロシラン系ガスは、SinHxClyで表され、n=2又は3、及びx<y、の条件を満たすガスである、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記(b)の工程は、
前記処理容器内で水素プラズマを生成して前記還元剤として水素活性種を前記反応物と反応させ、該反応物に含まれる塩素を除去し水素化する、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記(c)の工程では、前記(b)の工程において前記水素プラズマの生成が終了した直後に、前記酸化剤を供給する、
請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記(a)の工程、前記(b)の工程、前記(c)の工程を、この順に一つの前記処理容器内で連続して複数回繰り返す、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記(b)の工程において、前記還元剤は、前記処理容器内に配置された前記基板の上面又は側面から供給される、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記(a)の工程において、前記処理容器内の圧力は、0.3~10Torrの範囲内である、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記(b)の工程において、前記処理容器内の圧力は、10Torr未満の範囲内である、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記(b)の工程において、N2ガスを希釈ガスとして用いる場合に、前記還元剤を含むガスと前記処理容器内に供給される全ガスとの流量比は0.8より大きい範囲内にある、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記酸化剤は、O3又はプラズマO2である、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記(c)の工程において、前記酸化剤がO3の場合に前記処理容器内の圧力は0.1~10Torrの範囲内であり、該酸化剤がプラズマO2の場合に該処理容器内の圧力は0.80Torr未満の範囲内である、
請求項11に記載の成膜方法。
【請求項13】
処理容器と、
前記処理容器内に供給するガスを供給するように構成されたガス供給部と、
前記処理容器内に供給された前記ガスをプラズマ化する高周波電力を供給するように構成された高周波電源と、
前記処理容器内のガスを排気するように構成された排気部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)基板が収容された処理容器内にクロロシラン系ガスを供給し、該基板に該クロロシラン系ガスによる反応物を形成する工程と、
(b)前記処理容器内に還元剤を供給して、前記反応物に含まれる塩素を除去し水素化する工程と、
(c)前記処理容器内に酸化剤を供給して前記反応物と反応させ、前記基板にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を備え、
前記(a)の工程、前記(b)の工程、前記(c)の工程を、この順に前記処理容器内で連続して複数回繰り返す処理を実行するように構成されている、
成膜装置。
【請求項14】
前記クロロシラン系ガスは、ペンタクロロジシラン含有ガスである、
請求項13に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記クロロシラン系ガスは、SinHxClyで表され、n=2又は3、及びx<y、の条件を満たすガスである、
請求項13に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記(b)の工程は、
前記処理容器内で水素プラズマを生成して前記還元剤として水素活性種を前記反応物と反応させ、該反応物に含まれる塩素を除去し水素化する、
請求項13又は14に記載の成膜装置。
【請求項17】
前記(c)の工程では、前記(b)の工程において前記水素プラズマの生成が終了した直後に、前記酸化剤を供給する、
請求項16に記載の成膜装置。
【請求項18】
前記(a)の工程、前記(b)の工程、前記(c)の工程を、この順に一つの前記処理容器内で連続して複数回繰り返す、
請求項13又は14に記載の成膜装置。
【請求項19】
前記(b)の工程において、前記還元剤は、前記処理容器内に配置された前記基板の上面又は側面から供給される、
請求項13又は14に記載の成膜装置。
【請求項20】
前記酸化剤としてO3又はプラズマO2を供給する、
請求項13又は14に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、成膜方法及び成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板等の基板に対する処理としてプラズマ処理が多用されており、半導体基板に対する成膜処理等はプラズマを用いた成膜装置によって行われ得る。特許文献1~3等には、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜の形成に係る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-351689号公報
【特許文献2】特開2006-278497号公報
【特許文献3】特開2019-194353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、成膜処理において成膜レートを向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、シリコン酸化膜を形成する成膜方法が提供される。この成膜方法は(a)、(b)、及び(c)の各工程を備え、(a)の工程、(b)の工程、(c)の工程を、この順に繰り返す。(a)の工程は、基板が収容された処理容器内にクロロシラン系ガスを供給し、基板にクロロシラン系ガスによる反応物を形成する。(b)の工程は、処理容器内に還元剤を供給して、反応物に含まれる塩素を除去し水素化する。(c)の工程は、処理容器内に酸化剤を供給して反応物と反応させ、基板にシリコン酸化膜を形成する。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、成膜処理において成膜レートを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係る成膜方法を示す図である。
【
図2】一つの例示的実施形態に係る成膜装置を示す図である。
【
図3】一つの例示的実施形態に係る他の成膜装置を示す図である。
【
図4】
図1に例示する成膜方法の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、シリコン酸化膜を形成する成膜方法が提供される。この成膜方法は、(a)、(b)、及び(c)の各工程を備え、(a)の工程、(b)の工程、(c)の工程を、この順に繰り返す。(a)の工程は、基板が収容された処理容器内にクロロシラン系ガスを供給し、基板にクロロシラン系ガスによる反応物を形成する。(b)の工程は、処理容器内に還元剤を供給して、反応物に含まれる塩素を除去し水素化する。(c)の工程は、処理容器内に酸化剤を供給して反応物と反応させ、基板にシリコン酸化膜を形成する。
【0010】
一つの例示的実施形態において、成膜装置が提供される。この成膜装置は、処理容器と、ガス供給部と、高周波電源と、排気部と、制御部とを備える。ガス供給部は、処理容器内に供給するガスを供給するように構成されている。高周波電源は、処理容器内に供給されたガスをプラズマ化する高周波電力を供給するように構成されている。排気部は、処理容器内のガスを排気するように構成されている。制御部は、(a)の工程、(b)の工程、及び(c)の工程を備え、(a)の工程、(b)の工程、(c)の工程を、この順に処理容器内で連続して複数回繰り返す処理を実行するように構成されている。(a)の工程は、基板が収容された処理容器内にクロロシラン系ガスを供給し、基板にクロロシラン系ガスによる反応物を形成する。(b)の工程は、処理容器内に還元剤を供給して、反応物に含まれる塩素を除去し水素化する。(c)の工程は、処理容器内に酸化剤を供給して反応物と反応させ、基板にシリコン酸化膜を形成する。
【0011】
上記の成膜方法及び成膜装置によれば、塩素及びケイ素を含有するクロロシラン系のプリカーサにプラズマ化したH2の還元剤を用いて還元処理を行い、プリカーサから塩素を離脱させケイ素側の結合種を未結合又は不安定なSi-H結合を形成する。このような還元処理によって、後に実行される酸化処理における反応性が向上し、よって成膜レートが向上し得る。また、塩素及びケイ素を含有するプリカーサを用いたALDプロセスによる成膜において、高温条件や強い酸化剤を用いることなく、成膜が可能となり得る。
【0012】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0013】
図1に、一実施形態に係る成膜方法MTのフローチャートが例示されている。成膜方法MTは、例えば、
図2に示すバッチ式の成膜装置A1、
図3に示す成膜装置B10等の成膜装置を用いて実行され得る。
【0014】
一つの例示的実施形態に係る成膜方法を実行し得る成膜装置の構成を説明する。
図2には、一つの例示的実施形態に係る成膜装置が示されている。
図2に示す成膜装置A1は、長手方向が垂直方向に向けられた、有天井で略円筒状を備えている。処理容器A2は、耐熱性及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0015】
処理容器A2の一側方には、処理容器A2内のガスを排気するように構成された排気部A3が配置されている。排気部A3は、処理容器A2内のガスを排気するように構成されている。排気部A3は、処理容器A2に沿って上方に延びるように形成され、処理容器A2の側壁に設けられた図示しない開口を介して処理容器A2と連通する。排気部A3の上端は、処理容器A2の上部に配置された排気口A4に接続されている。排気口A4には図示しない排気管が接続され、この排気管には図示しないバルブや真空ポンプなどの圧力調整機構が設けられている。この圧力調整機構により、処理容器A2内のガスが、開口、排気部A3、排気口A4を介して、排気管に排気され、処理容器A2内が所望の圧力(真空度)に制御され得る。
【0016】
処理容器A2の下方には、蓋体A5が配置されている。蓋体A5は、耐熱性及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。蓋体A5は、図示しないボートエレベータ等により上下動可能に構成されている。このボートエレベータ等により蓋体A5が上昇すると、処理容器A2の下方側(炉口部分)が閉鎖される。このボートエレベータ等により蓋体A5が下降すると、処理容器A2の下方側(炉口部分)が開口される。
【0017】
蓋体A5の上には、基板ボートA6が載置されている。基板ボートA6は、例えば、石英により形成されている。基板ボートA6は、複数枚の基板Wが垂直方向に所定の間隔をおいて収容され得るように構成されている。
【0018】
処理容器A2の炉口部分から処理容器A2内の温度が低下することを防止する保温筒や、基板Wを収容する基板ボートA6を回転可能に載置する回転テーブルを蓋体A5の上部に設けてもよく、この保温筒、回転テーブルの上に基板ボートA6を載置してもよい。この場合、基板ボートA6に収容された基板Wを均一な温度に制御しやすくなる。
【0019】
処理容器A2の周囲には、処理容器A2を取り囲むように昇温用ヒータA7が設けられている。昇温用ヒータA7は、例えば抵抗発熱体により形成され得る。昇温用ヒータA7により処理容器A2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、処理容器A2の内部に収容された基板Wが所定の温度に加熱され得る。
【0020】
処理容器A2の下端近傍の側面には、ガス供給管A8が挿通されている。ガス供給管A8は、図示しないマスフローコントローラ(MFC)を介して、ガス供給部A14に接続されている。ガス供給部A14は、ガス供給管A8及びプラズマ発生部A10を介して、処理容器A2内に供給するガス、すなわち原料ガス、還元剤ガス、酸化剤ガス、希釈ガス、パージガスを供給するように構成されている。
【0021】
原料ガスは、クロロシラン系ガスである。このクロロシラン系ガスは、SinHxClyで表され、n=2又は3、及びx<y、の条件を満たすガスであり得る。このクロロシラン系ガスの原料ガスは、例えば1,1,1,2,2-ペンタクロロジシラン(pentachlorodisilane:PCDS、Cl5HSi2)含有ガス(以下、PCDSガスという)であり得る。PCDSガスは、例えばヘキサクロロジシラン(Hexachlorodisilane:HCDS、Si2Cl6)含有ガス(以下、HCDSガスという)等と比較して低温での反応性が高く(高反応性)、蒸気圧(大流量性)も高いので優位性を有している。
【0022】
還元剤ガスは、還元剤を含むガスであり、例えば還元剤としてのH2を含むH2ガスであり得る。酸化剤ガスは、酸化剤を生成するガス又は酸化剤を含むガスであり、例えばO2を含み酸化剤としてのプラズマO2を生成するO2ガス、又はO2ガスに換えて酸化剤としてのO3を含むO3ガスであり得る。希釈ガスは、例えばArガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。パージガスは、例えばArガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。
【0023】
プラズマ発生部A10においてプラズマ処理が行われるガスは酸化剤ガス(O2ガス)及びH2ガスであり、プラズマ発生部A10においてプラズマ処理が行われないガスは原料ガス、希釈ガス、及びパージガスである。酸化剤ガスとしてO2ガスに換えてO3ガスが用いられる場合には、酸化剤ガスとしてのO3ガスはプラズマ発生部A10においてプラズマ処理されない。このため、プラズマ処理を行うガスの供給にはプラズマ発生部A10に接続されたガス供給管A8が用いられ、プラズマ処理を行わないガスの供給にはプラズマ発生部A10を介さずに処理容器A2に直接接続された別のガス供給管が用いられる構成でもよい。プラズマ処理を行わないガスの供給に用いられプラズマ発生部A10を介さずに処理容器A2に接続された上記の別のガス供給管も、ガス供給管A8と同様にガス供給部A14に接続されている。
【0024】
処理容器A2の他側方、すなわち、排気部A3が配置されている処理容器A2の一側方の反対側には、プラズマ発生部A10が設けられている。プラズマ発生部A10は、酸素や水素を供給するガス供給管A8と、一対の電極A11等を備えている。ガス供給管A8は、一対の電極A11間に酸素や水素を供給できるように、例えば一対の電極A11間に、配置されている。一対の電極A11は、高周波電源A15、整流器A16等に接続されている。
【0025】
成膜装置A1は、高周波電源A15から整合器を介して一対の電極A11間に高周波電力が印加されることにより、一対の電極A11間に供給されるO2ガス、H2ガスをプラズマ処理する。高周波電源A15は、処理容器A2内に供給されたガスをプラズマ化する高周波電力を提供するように構成されている。このプラズマ処理によって、PE-O2ガス、PE-H2ガス(PE:Plasma Enhanced)が生成される。PE-O2ガス、PE-H2ガスはそれぞれ、O2ガス、H2ガスそれぞれのプラズマ化によって反応性が向上したガスフローである。
【0026】
処理容器A2内には、図示しない温度センサ及び圧力計が配置され得る。温度センサは、例えば熱電対からなり、処理容器A2内の温度を測定するように構成されている。圧力計は、処理容器A2内の気圧を測定するように構成されている。
【0027】
成膜装置A1は、制御部A12を備えている。制御部A12は、成膜装置A1の各部の動作を制御するように構成されている。制御部A12は、成膜装置B10の各部の動作を制御することによって、
図1に示す一つの例示的実施形態に係る成膜方法のフローチャートを実行し得る。
【0028】
制御部A12は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。CPUは、RAM等の記憶領域に格納されたレシピに従って、所望の処理を実行するように構成されている。レシピには、プロセス条件に対する成膜装置A1の制御情報が設定されている。制御情報は、例えばガス流量、圧力、温度、プロセス時間であってよい。なお、レシピ及び制御部A12が使用するプログラムは、例えばハードディスク、半導体メモリに記憶されてもよい。また、レシピ等は、CD-ROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で所定の位置にセットされ、読み出されるようにしてもよい。
【0029】
一つの例示的実施形態に係る成膜方法を実行し得る他の成膜装置の構成を説明する。
図3には、一つの例示的実施形態に係る他の成膜装置が示されている。
図3に示す成膜装置B10は、処理容器B1、基板支持部B2、シャワーヘッドB3、排気部B4、ガス供給部B5、及び制御部B6を有する。
【0030】
処理容器B1は、アルミニウム等の金属によって構成され、略円筒状を有する。処理容器B1の側壁には基板Wを搬入又は搬出するように構成された搬入出口B11が設けられ、搬入出口B11はゲートバルブB12によって開閉可能に構成されている。処理容器B1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクトB13が設けられている。排気ダクトB13には、その内周面に沿ってスリットB13aが設けられている。排気ダクトB13の外壁には、排気口B13bが設けられている。排気ダクトB13の上面には、処理容器B1の上部開口を塞ぐように天壁B14が設けられている。天壁B14と排気ダクトB13の間はシールリングB15で気密にシールされている。
【0031】
基板支持部B2は、処理容器B1内で基板Wを水平に支持するように構成されている。基板支持部B2は、基板Wに対応した大きさの円板状をなしており、支持部材B23に支持されている。基板支持部B2は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル基合金等の金属材料で構成されている。基板支持部B2の内部には、基板Wを加熱するように構成されたヒータB21が埋め込まれている。ヒータB21は、ヒータ電源(図示せず)からの給電によって発熱するように構成されている。ヒータB21の出力が制御されることによって、基板Wが所定の温度に制御され得る。基板支持部B2には、基板載置面の外周領域、及び基板支持部B2の側面を覆うように、酸化アルミニウム(アルミナ)等のセラミックスからなるカバー部材B22が設けられている。
【0032】
支持部材B23は、基板支持部B2の底面中央から処理容器B1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器B1の下方に延びている。支持部材B23の下端は、昇降機構B24に接続されている。昇降機構B24によって、基板支持部B2は、支持部材B23を介して、
図2に示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示す基板の搬送が可能な搬送位置との間で昇降可能に構成されている。支持部材B23の処理容器B1の下方には、鍔部B25が取り付けられている。処理容器B1の底面と鍔部B25の間には、ベローズB26が設けられている。ベローズB26は、処理容器B1内の雰囲気を外気から区画し、基板支持部B2の昇降動作にともなって伸縮するように構成されている。
【0033】
処理容器B1の底面近傍には、昇降板B27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)の支持ピンB27が設けられている。支持ピンB27は、処理容器B1の下方に設けられた支持ピン昇降機構B28により昇降板B27aを介して昇降可能に構成されている。支持ピンB27は、搬送位置にある基板支持部B2に設けられた貫通孔B2aに挿通されて基板支持部B2の上面に対して突没可能に構成されている。このように支持ピンB27を昇降させることにより、搬送機構(図示せず)と基板支持部B2との間で基板Wの受け渡しが行われ得る。
【0034】
シャワーヘッドB3は、処理容器B1内に処理ガスをシャワー状に供給するように構成されている。シャワーヘッドB3は、金属製であり、基板支持部B2に対向するように設けられており、基板支持部B2とほぼ同じ直径を有する。シャワーヘッドB3は、処理容器B1の天壁B14に固定された本体部B31と、本体部B31の下に接続されたシャワープレートB32とを有する。本体部B31とシャワープレートB32との間には、ガス拡散空間B33が設けられている。ガス拡散空間B33には、本体部B31及び処理容器B1の天壁B14の中央を貫通するようにガス導入孔B36が設けられている。シャワープレートB32の周縁部には下方に突出する環状突起部B34が設けられている。シャワープレートB32の環状突起部B34の内側の平坦面には、ガス吐出孔B35が設けられている。
【0035】
基板支持部B2が処理位置に存在している状態では、シャワープレートB32と基板支持部B2との間に処理空間B37が提供され、環状突起部B34と基板支持部B2のカバー部材B22の上面とが近接して環状隙間B38が提供される。
【0036】
排気部B4は、処理容器B1内のガスを排気するように構成されている。排気部B4は、排気ダクトB13の排気口B13bに接続された排気配管B41と、排気配管B41に接続された排気機構B42とを有する。排気機構B42は、真空ポンプ、圧力制御バルブ等を有する。処理に際しては、処理容器B1内のガスは、スリットB13aを介して排気ダクトB13に至り、排気ダクトB13から排気配管B41を通って排気部B4の排気機構B42により外部に排気される。
【0037】
高周波電源B61は、整合器B62を介してシャワーヘッドB3に所定の高周波のRF電力を印加するように構成されている。高周波電源B61は、処理容器A2内に供給されたガスをプラズマ化する高周波電力を提供するように構成されている。整合器B62は、高周波のRF電力に対するインピーダンス制御を行うように構成されている。
【0038】
ガス供給部B5は、ガス導入孔B36に接続されている。ガス供給部B5は、処理容器A2内(特にシャワーヘッドB3内)に供給するガス、すなわち原料ガス、還元剤ガス、酸化剤ガス、希釈ガス、パージガスを供給するように構成されている。
【0039】
ガス供給部B5は、ガス供給源G1~G3、G7,G8、ガス供給ラインL1~L3、L7~L9、マスフローコントローラM1~M3、M7、M8、及び、開閉弁V1~V3、V7、V8を有する。
【0040】
ガス供給源G1は、原料ガスを供給するように構成されている。ガス供給源G1によって供給される原料ガスは、クロロシラン系ガスであり、例えばPCDSガスであり得る。ガス供給源G2は、酸化剤ガスを供給するように構成されている。ガス供給源G2によって供給される酸化剤ガスは、例えばO2ガス、O3ガスであり得る。ガス供給源G3は、希釈ガスを供給するように構成されている。ガス供給源G3によって供給される希釈ガスは、例えばArガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。
【0041】
ガス供給源G7は、還元剤ガスを供給するように構成されている。ガス供給源G7によって供給される還元剤ガスは、例えばH2ガスであり得る。ガス供給源G8は、パージガスを供給するように構成されている。ガス供給源G8によって供給されるパージガスは、例えばArガス等の希ガスや,N2ガスであり得る。
【0042】
ガス供給ラインL1は、ガス供給源G1から延びており、ガス供給ラインL9に接続されている。ガス供給ラインL9は、ガス導入孔B36に接続されている。ガス供給ラインL1には、ガス供給源G1側から順に、マスフローコントローラM1及び開閉弁V1が設けられている。マスフローコントローラM1は、ガス供給ラインL1を流れる原料ガスの流量を制御するように構成されている。開閉弁V1は、ALDプロセスにおいて、ガス供給ラインL9側への原料ガスの供給及び停止を切り替えるように構成されている。
【0043】
ガス供給ラインL2は、ガス供給源G2から延びており、ガス供給ラインL9に接続されている。ガス供給ラインL2には、ガス供給源G2側から順に、マスフローコントローラM2、オゾン発生器OZ、及び開閉弁V2が設けられている。マスフローコントローラM2は、ガス供給ラインL2を流れる酸化剤ガスの流量を制御するように構成されている。オゾン発生器OZは、ガス供給源G2から供給される酸化剤ガスがO2ガスの場合、ガス供給源G2から供給されるO2ガスからO3を生成し、O3濃度を制御するように構成されている。オゾン発生器OZは、O3を生成しない場合には、ガス供給源G2から供給される酸化剤ガス(例えばO2ガス)のみを通過させるように構成されている。開閉弁V2は、ALDプロセスにおいて、ガス供給ラインL9側への酸化剤ガスの供給及び停止を切り替えるように構成されている。
【0044】
ガス供給ラインL3は、ガス供給源G3から延びており、ガス供給ラインL9に接続されている。ガス供給源G3は、ALDプロセスにおいて、ガス供給ラインL3を介してガス供給ラインL9側に希釈ガスを常時供給するように構成されている。ガス供給源G3から供給される希釈ガスは、ガス供給源G1から供給される原料ガス等の希釈ガスとして機能するとともに、パージガスとしての機能も有する。ガス供給ラインL3には、ガス供給源G3側から順に、マスフローコントローラM3及び開閉弁V3が設けられている。マスフローコントローラM3は、ガス供給ラインL3を流れる希釈ガスの流量を制御するように構成されている。開閉弁V3は、ALDプロセスにおいて、ガス供給ラインL9側への希釈ガスの供給及び停止を切り替えるように構成されている。
【0045】
ガス供給ラインL7は、ガス供給源G7から延びており、ガス供給ラインL9に接続されている。ガス供給ラインL7には、ガス供給源G7側から順に、マスフローコントローラM7及び開閉弁V7が設けられている。マスフローコントローラM7は、ガス供給ラインL7を流れる還元剤ガスの流量を制御するように構成されている。開閉弁V7は、ALDプロセスにおいて、ガス供給ラインL9側への還元剤ガスの供給及び停止を切り替えるように構成されている。
【0046】
ガス供給ラインL8は、ガス供給源G8から延びており、ガス供給ラインL9に接続されている。ガス供給源G8は、ALDプロセスにおいて、ガス供給ラインL8を介してガス供給ラインL9側にパージガスを常時供給するように構成されている。ガス供給ラインL8には、ガス供給源G8側から順に、マスフローコントローラM8及び開閉弁V8が設けられている。マスフローコントローラM8は、ガス供給ラインL8を流れるパージガスの流量を制御するように構成されている。開閉弁V8は、ALDプロセスにおいて、ガス供給ラインL9側へのパージガスの供給及び停止を切り替えるように構成されている。
【0047】
成膜装置B10は、制御部B6を備えている。制御部B6は、成膜装置B10の各部の動作を制御するように構成されている。制御部B6は、成膜装置B10の各部の動作を制御することによって、
図1に示す一つの例示的実施形態に係る成膜方法のフローチャートを実行し得る。制御部B6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。CPUは、RAM等の記憶領域に格納されたレシピに従って、所望の処理を実行するように構成されている。レシピには、プロセス条件に対する成膜装置B10の制御情報が設定されている。制御情報は、例えばガス流量、圧力、温度、プロセス時間であってよい。なお、レシピ及び制御部B6が使用するプログラムは、例えばハードディスク、半導体メモリに記憶されてもよい。また、レシピ等は、CD-ROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で所定の位置にセットされ、読み出されるようにしてもよい。
【0048】
図1に戻って説明する。
図1に示す成膜方法MTは、
図2に示す成膜装置A1の制御部A12、
図3に示す成膜装置B10の制御部B6のそれぞれによって、成膜装置A1の各部、成膜装置B10の各部のそれぞれを制御することによって実行され得る。以下では、説明簡略化のため、
図2に示す成膜装置A1が成膜方法MTを実行する場合を一例として成膜方法MTについて説明するが、
図3に示す成膜装置B10が成膜方法MTを実行する場合も同様である。
【0049】
成膜方法MTは、ALD(Atomic Layer Deposition)プロセスを用いて基板Wの表面にシリコン酸化膜をコンフォーマルに形成する方法の一例である。成膜方法MTは、シーケンスSQ及び工程ST8を備える。シーケンスSQは、工程ST1~ST7を含む。シーケンスSQは、一つの処理容器A2内で実行される。
【0050】
工程ST1では、基板Wが収容された処理容器A2内に原料ガスとしてクロロシラン系ガスを供給し、基板Wにクロロシラン系ガスによる反応物を形成する。反応物は、プリカーサとして基板Wの表面に形成され得る。
【0051】
クロロシラン系ガスは、塩素(Cl)及びケイ素(Si)を含有するガスであり、例えばPCDSガスであり得る。工程ST1において、原料ガス(例えばPCDSガス)の流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.01~3.00slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では0.01~0.10slmの範囲内であり得る。工程ST1において、原料ガスの供給時間は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば2~30秒の範囲内であり、特に成膜装置A1では5~20秒の範囲内であり得る。工程ST1において、処理容器A2内の気圧は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.3~10Torrの範囲内であり、特に成膜装置A1では1~5Torrの範囲内であり得る。
【0052】
工程ST1では、希釈ガスが処理容器A2内に供給され得る。工程ST1において、希釈ガスの流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.3~10slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では0.5~20slmの範囲内であり得る。工程ST1において供給される希釈ガスは、例えばArガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。
【0053】
工程ST1に続き工程ST2が実行される。工程ST2では、パージガスを用いて、処理容器A2内のガスをパージする。工程ST2において、パージガスの供給時間は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~30秒の範囲内であり、特に成膜装置A1では4~10秒の範囲内であり得る。工程ST2において、パージガスの流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~15slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では3~10slmの範囲内であり得る。工程ST2において、処理容器A2内の気圧は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.1~10Torrの範囲内であり、成膜装置A1では特に0.1~1.0Torrの範囲内であり得る。工程ST2において供給されるパージガスは、Arガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。
【0054】
工程ST2に続き工程ST3が実行される。工程ST3では、パージガスを用いて、処理容器A2内を真空処理する。工程ST3において、パージガスの供給時間は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~15秒の範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば4~7秒の範囲内であり得る。工程ST3において、パージガスの流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.1~5.0slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば0.5~2.0slmの範囲内であり得る。工程ST3において、処理容器A2内の気圧は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば5Torr未満の範囲内であり、成膜装置A1では例えば1Torr未満の範囲内であり得る。工程ST3において供給されるパージガスは、Arガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。
【0055】
工程ST3に続き工程ST4が実行される。工程ST4では、処理容器A2内に還元剤を供給して、プリカーサに含まれる塩素を除去し水素化する。より具体的に工程ST4では、処理容器A2内に還元剤ガスとしてH2ガスを供給しプラズマ化して水素プラズマを生成する。そして、工程ST4では、還元剤として水素プラズマに含まれる水素活性種を処理容器A2内に供給してプリカーサに反応させ、プリカーサに含まれる塩素を除去し水素化する。工程ST4において、還元剤は、処理容器A2内に配置された基板Wの上面又は側面から供給され得る。
【0056】
工程ST4において、還元剤ガス(例えばH2ガス)の流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.5~5.0slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では1.0~3.0slmの範囲内であり得る。工程ST4において、還元剤ガスの供給時間は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~60秒の範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば20~50秒の範囲内であり得る。工程ST4において、処理容器A2内の気圧は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば10Torr未満の範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば0.5Torr未満の範囲内であり得る。
【0057】
工程ST4では、希釈ガスが処理容器A2内に供給され得る。工程ST4において、希釈ガスの流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.5~3.0slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば1.0~3.0slmの範囲内であり得る。工程ST4において供給される希釈ガスは、例えばArガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。希釈ガスがN2ガスであり、還元剤ガスとこの還元剤ガスを含む全ガスとの流量比(=還元剤ガス流量/全ガス流量)が0.8より大きい場合、ケイ素の窒化、ケイ素からの塩素脱離及び水素化が短時間で進行し、表面が次工程の反応に対してより活性となり得る。
【0058】
工程ST4に続き工程ST5が実行される。工程ST5では、処理容器A2内に酸化剤を供給して工程ST4で水素化されたプリカーサと反応させ、基板Wにシリコン酸化膜を形成する。工程ST5では、工程ST4において水素プラズマの生成が終了した直後に、酸化剤を供給する。より具体的に工程ST5では、例えば、酸化剤として、O3又はプラズマO2(以下、PE-O2という)を供給する。O3は、プラズマ化することなく、酸化剤として用いられる。PE-O2は、処理容器A2内に酸化剤ガスとしてO2ガスを供給しプラズマ化することによって、酸化剤として生成される。
【0059】
O3ガスが酸化剤ガスとして供給される工程ST5において、酸化剤ガスの流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~20slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば5~15slmの範囲内であり得る。工程ST5において、酸化剤ガスの供給時間は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~30秒の範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば10~20秒の範囲内であり得る。工程ST5において、処理容器A2内の気圧は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.1~10Torrの範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば0.1~2.0Torrの範囲内であり得る。
【0060】
O2ガスが酸化剤ガスとして供給される工程ST5において、酸化剤ガスの流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.1~10slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば1~5slmの範囲内であり得る。工程ST5において、酸化剤ガスの供給時間は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~30秒の範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば10~20秒の範囲内であり得る。工程ST5において、処理容器A2内の気圧は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば10Torr未満の範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば0.5Torr未満の範囲内であり得る。
【0061】
工程ST5では、希釈ガスが処理容器A2内に供給され得る。酸化剤ガスがO3ガス及びO2ガスの何れであっても、工程ST5において、希釈ガスの流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.5~5slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば0.5~3slmの範囲内であり得る。工程ST5において、希釈ガスは、例えばArガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。酸化剤ガスと酸化剤ガスを含む全ガスとの流量比(=酸化剤ガス流量/全ガス流量比)は例えば0.8未満であり、特に成膜装置A1では例えば0.9未満であり得る。
【0062】
工程ST5に続き工程ST6が実行される。工程ST6では、パージガスを用いて、処理容器A2内のガスをパージする。工程ST6において、パージガスの供給時間は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~30秒の範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば4~10秒の範囲内であり得る。工程ST6において、パージガスの流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~15slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば3~10slmの範囲内であり得る。工程ST6において、処理容器A2内の気圧は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.1~10Torrの範囲内であり、特に成膜装置A1では0.1~1.0Torrの範囲内であり得る。工程ST6において供給されるパージガスは、Arガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。
【0063】
工程ST6に続き工程ST7が実行される。工程ST7では、パージガスを用いて、処理容器A2内を真空処理する。工程ST7において、パージガスの供給時間は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば1~15秒の範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば4~7秒の範囲内であり得る。工程ST7において、パージガスの流量は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば0.1~5.0slmの範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば0.5~2.0slmの範囲内であり得る。工程ST7において、処理容器A2内の気圧は、成膜装置A1(更に成膜装置B10)では例えば5Torr未満の範囲内であり、特に成膜装置A1では例えば1Torr未満の範囲内であり得る。工程ST7において供給されるパージガスは、Arガス等の希ガスや、N2ガスであり得る。
【0064】
シーケンスSQに続き工程ST8が実行される。工程ST8では、シーケンスSQを更に繰り返すか否か、換言すれば、シーケンスSQの実行回数が予め設定された規定回数(2回以上)に達したか否か、が判定される。シーケンスSQを更に繰り返す、換言すれば、シーケンスSQが規定回数に達していない、と工程ST8において判定された場合(工程ST8:NO)、シーケンスSQが再度実行される。シーケンスSQを終了する、換言すれば、シーケンスSQの実行回数が規定回数に達した、と工程ST8において判定された場合(工程ST8:YES)、シーケンスSQは終了される。このように、工程ST1、工程ST4、工程ST5は、この順に一つの処理容器A2内で連続して複数回繰り返される。
【0065】
図4は、一つの例示的実施形態に係る成膜方法によって奏され得る効果を説明するための図である。
図4の縦軸は、成膜レート(Growth Per Cycle:GPC)を表している。
図4に示す結果は、シーケンスSQを150回連続して行った場合に得られたものである。
図4では、工程ST5で用いられるO
3、PE-O
2それぞれの酸化剤毎に、工程ST4において還元処理が行われた場合(PE-H
2)及び還元処理が行われなかった場合(without PE-H
2)の成膜レートが比較されている。
図4では、更に、基板W上に形成されたパターンの表面(Top)、側面(CTR)、底面(BTM)の成膜レートが、比較されている。
【0066】
図4に示されているように、工程ST5において酸化剤としてO
3が用いられる場合、工程ST4において還元処理が行われた場合の方が、還元処理が行われたかった場合よりも、成膜レートは概ね3倍以上高い。更に、工程ST5において酸化剤としてPE-O
2が用いられる場合、工程ST4において還元処理が行われた場合の方が、還元処理が行われたかった場合よりも、成膜レートは概ね5倍以上高い。
【0067】
以上説明したように、塩素及びケイ素を含有するクロロシラン系のプリカーサ、特にPCDSのプリカーサにPE-H2の還元剤を用いて還元処理を行い、プリカーサから塩素を離脱させケイ素側の結合種を未結合又は不安定なSi-H結合を形成する。このような還元処理によって、後に実行される酸化処理における反応性が向上し、よって成膜レートが向上し得る。また、塩素及びケイ素を含有するプリカーサを用いたALDプロセスによる成膜において、高温条件や強い酸化剤を用いることなく、成膜が可能となり得る。
【0068】
また、一つの例示的実施形態に係る成膜方法MTで用いられるPCDSガスは、HCDSガス等と比較して、より蒸気圧が高く(大流量)、より低温での反応が可能(高反応性)である。特に、酸化剤としてO3を用いたSiO2膜の形成において形成温度が比較的低温の摂氏500度程度の場合、原料ガスにHCDSガスを用いてSiO2膜を形成することは困難であるがPCDSガスを用いたSiO2膜の形成は可能である。
【0069】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0070】
ここで、本開示に含まれる種々の例示的実施形態を、以下の[E1]~[E20]に記載する。
【0071】
[E1]
シリコン酸化膜を形成する成膜方法であって、
(a)基板が収容された処理容器内にクロロシラン系ガスを供給し、該基板に該クロロシラン系ガスによる反応物を形成する工程と、
(b)前記処理容器内に還元剤を供給して、前記反応物に含まれる塩素を除去し水素化する工程と、
(c)前記処理容器内に酸化剤を供給して前記反応物と反応させ、前記基板にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を備え、
前記(a)の工程、前記(b)の工程、前記(c)の工程を、この順に繰り返す、
成膜方法。
【0072】
[E2]
前記クロロシラン系ガスは、ペンタクロロジシラン含有ガスである、
上記[E1]に記載の成膜方法。
【0073】
[E3]
前記クロロシラン系ガスは、SinHxClyで表され、n=2又は3、及びx<y、の条件を満たすガスである、
上記[E1]に記載の成膜方法。
【0074】
[E4]
前記(b)の工程は、
前記処理容器内で水素プラズマを生成して前記還元剤として水素活性種を前記反応物と反応させ、該反応物に含まれる塩素を除去し水素化する、
上記[E1]又は[E2]に記載の成膜方法。
【0075】
[E5]
前記(c)の工程では、前記(b)の工程において前記水素プラズマの生成が終了した直後に、前記酸化剤を供給する、
上記[E4]に記載の成膜方法。
【0076】
[E6]
前記(a)の工程、前記(b)の工程、前記(c)の工程を、この順に一つの前記処理容器内で連続して複数回繰り返す、
上記[E1]~[E5]の何れか一項に記載の成膜方法。
【0077】
[E7]
前記(b)の工程において、前記還元剤は、前記処理容器内に配置された前記基板の上面又は側面から供給される、
上記[E1]~[E6]の何れか一項に記載の成膜方法。
【0078】
[E8]
前記(a)の工程において、前記処理容器内の圧力は、0.3~10Torrの範囲内である、
上記[E1]~[E7]の何れか一項に記載の成膜方法。
【0079】
[E9]
前記(b)の工程において、前記処理容器内の圧力は、10Torr未満の範囲内である、
上記[E1]~[E8]の何れか一項に記載の成膜方法。
【0080】
[E10]
前記(b)の工程において、N2ガスを希釈ガスとして用いる場合に、前記還元剤を含むガスと前記処理容器内に供給される全ガスとの流量比は0.8より大きい範囲内にある、
上記[E1]~[E9]の何れか一項に記載の成膜方法。
【0081】
[E11]
前記酸化剤は、O3又はプラズマO2である、
上記[E1]~[E10]の何れか一項に記載の成膜方法。
【0082】
[E12]
前記(c)の工程において、前記酸化剤がO3の場合に前記処理容器内の圧力は0.1~10Torrの範囲内であり、該酸化剤がプラズマO2の場合に該処理容器内の圧力は0.80Torr未満の範囲内である、
上記[E11]に記載の成膜方法。
【0083】
[E13]
処理容器と、
前記処理容器内に供給するガスを供給するように構成されたガス供給部と、
前記処理容器内に供給された前記ガスをプラズマ化する高周波電力を供給するように構成された高周波電源と、
前記処理容器内のガスを排気するように構成された排気部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)基板が収容された処理容器内にクロロシラン系ガスを供給し、該基板に該クロロシラン系ガスによる反応物を形成する工程と、
(b)前記処理容器内に還元剤を供給して、前記反応物に含まれる塩素を除去し水素化する工程と、
(c)前記処理容器内に酸化剤を供給して前記反応物と反応させ、前記基板にシリコン酸化膜を形成する工程と、
を備え、
前記(a)の工程、前記(b)の工程、前記(c)の工程を、この順に前記処理容器内で連続して複数回繰り返す処理を実行するように構成されている、
成膜装置。
【0084】
[E14]
前記クロロシラン系ガスは、ペンタクロロジシラン含有ガスである、
上記[E13]に記載の成膜装置。
【0085】
[E15]
前記クロロシラン系ガスは、SinHxClyで表され、n=2又は3、及びx<y、の条件を満たすガスである、
上記[E13]に記載の成膜装置。
【0086】
[E16]
前記(b)の工程は、
前記処理容器内で水素プラズマを生成して前記還元剤として水素活性種を前記反応物と反応させ、該反応物に含まれる塩素を除去し水素化する、
上記[E13]又は[E14]に記載の成膜装置。
【0087】
[E17]
前記(c)の工程では、前記(b)の工程において前記水素プラズマの生成が終了した直後に、前記酸化剤を供給する、
上記[E16]に記載の成膜装置。
【0088】
[E18]
前記(a)の工程、前記(b)の工程、前記(c)の工程を、この順に一つの前記処理容器内で連続して複数回繰り返す、
上記[E13]~[E17]の何れか一項に記載の成膜装置。
【0089】
[E19]
前記(b)の工程において、前記還元剤は、前記処理容器内に配置された前記基板の上面又は側面から供給される、
上記[E13]~[E18]の何れか一項に記載の成膜装置。
【0090】
[E20]
前記酸化剤としてO3又はプラズマO2を供給する、
上記[E11]~[E19]の何れか一項に記載の成膜装置。
【0091】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0092】
MT…成膜方法、A2、B1…処理容器、A1、B10…成膜装置、A14、B5…ガス供給部、A15、B61…高周波電源、A3、B4…排気部、A12、B6…制御部。