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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136095
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】配線構造体
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20240927BHJP
   H01B 11/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047070
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中村 優斗
(72)【発明者】
【氏名】澤田 由香
(72)【発明者】
【氏名】笠原 甫
【テーマコード(参考)】
5G311
【Fターム(参考)】
5G311CA05
5G311CB01
5G311CC01
5G311CC02
(57)【要約】
【課題】差動伝送線路を構成する第1通信用導体と第2通信用導体との間隔を小さくすることを可能し、差動伝送線路の特性インピーダンスの調整を容易に行うことができ、高い摺動屈曲性を実現することができる配線構造体を提供する。
【解決手段】差動伝送線路を構成する第1通信用導体11および第2通信用導体21を備える配線構造体1であって、第1通信用導体11を有する第1フラットケーブル10と、第2通信用導体21を有し、第1フラットケーブル10に積層される第2フラットケーブル20と、を備え、第1通信用導体11および第2通信用導体21は、それぞれ、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の幅方向における積層方向に並ぶ位置に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を備える配線構造体であって、
前記第1通信用導体を有する第1フラットケーブルと、
前記第2通信用導体を有し、前記第1フラットケーブルに積層される第2フラットケーブルと、を備え、
前記第1通信用導体および前記第2通信用導体は、それぞれ、前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルの幅方向における積層方向に並ぶ位置に配置される
配線構造体。
【請求項2】
前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルは、それぞれ、他の導電回路を構成する他の導体を有している
請求項1に記載の配線構造体。
【請求項3】
前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルは、前記第1通信用導体および前記第2通信用導体に対して幅方向に間隔をおいて配置されるグランド用導体を有する
請求項1に記載の配線構造体。
【請求項4】
前記第1フラットケーブルと前記第2フラットケーブルとの間に設けられ、前記第1通信用導体と前記第2通信用導体との間隔を調整する間隔調整ケーブルを備えた
請求項1に記載の配線構造体。
【請求項5】
前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルの積層方向の外側の一方または両方に積層され、前記第1通信用導体または前記第2通信用導体を積層方向の外側から覆う幅寸法のシールド導体を有するシールドケーブルを備えた
請求項1に記載の配線構造体。
【請求項6】
前記第1フラットケーブルと前記第2フラットケーブルとの間に設けられ、前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルの積層状態を保持する保持剤を備えた
請求項1に記載の配線構造体。
【請求項7】
互いに積層された前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルを外周側から覆うケーブルカバーを備えた
請求項1に記載の配線構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信信号を伝送する配線構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の配線構造体としては、電力や電気信号を伝送するための複数の導体が幅方向に並べて配置されているフラットケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の配線構造体は、通信信号を伝送するための高速伝送線路(例えば、差動伝送線路)を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を、1つのフラットケーブルの幅方向に並べて配置している。
【0004】
高速通信伝送(例えば、差動伝送)で用いられる通信信号は、伝送線路における特性インピーダンスが変化する部分において波形が乱れ、通信性能が低下する可能性がある。このため、第1通信用導体および第2通信用導体は、通信性能の低下を抑制するために、全長にわたって特性インピーダンスが所定の大きさとなるように調整されている。尚、差動信号には、低電圧で低振幅な信号を利用して高速伝送を行うLVDS(Low Voltage Differential Signaling)、CAN、CAN FD、CAN XL、Ethernet(100Base-T1)等がある。差動信号は、一般に100Mbps以下の通信速度であるが、必要に応じて100Mbpsよりも高速な通信速度であってもよい。
【0005】
第1通信用導体および第2通信用導体の特性インピーダンスは、第1通信用導体および第2通信用導体の断面積、第1通信用導体と第2通信用導体との間隔、絶縁層の厚み等の組み合わせによって調整可能である。特に、第1通信用導体と第2通信用導体との間隔は、特性インピーダンスを調整するために、小さく設定することが要求される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-200747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、1つのフラットケーブルに幅方向に並べて配置される第1通信用導体および第2通信用導体は、プリント基板に配線される導体の間隔と比較して、第1通信用導体と第2通信用導体との間隔を高精度に小さく設定することに加工上の限界があり、特性インピーダンスの調整を行うことは容易ではない。また、一枚のフラットケーブルに複数の通信用導体を積層してしまうと厚くなり、摺動屈曲性(滑り動作性)が劣ってしまう。
【0008】
本発明の目的とするところは、差動伝送線路を構成する第1通信用導体と第2通信用導体との間隔を小さくすることを可能し、差動伝送線路の特性インピーダンスの調整を容易に行うことができ、高い摺動屈曲性を実現することができる配線構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る配線構造体は、差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を備える配線構造体であって、前記第1通信用導体を有する第1フラットケーブルと、前記第2通信用導体を有し、前記第1フラットケーブルに積層される第2フラットケーブルと、を備え、前記第1通信用導体および前記第2通信用導体は、それぞれ、前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルの幅方向における積層方向に並ぶ位置に配置される。
【0010】
また、本発明に係る配線構造体は、前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルが、それぞれ、他の導電回路を構成する他の導体を有している、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る配線構造体は、前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルが、前記第1通信用導体および前記第2通信用導体に対して幅方向に間隔をおいて配置されるグランド用導体を有する、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る配線構造体は、前記第1フラットケーブルと前記第2フラットケーブルとの間に設けられ、前記第1通信用導体と前記第2通信用導体との間隔を調整する間隔調整ケーブルを備える、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る配線構造体は、前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルの積層方向の外側の一方または両方に積層され、前記第1通信用導体または前記第2通信用導体を積層方向の外側から覆う幅寸法のシールド導体を有するシールドケーブルを備える、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る配線構造体は、前記第1フラットケーブルと前記第2フラットケーブルとの間に設けられ、前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルの積層状態を保持する保持剤を備える、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る配線構造体は、互いに積層された前記第1フラットケーブルおよび前記第2フラットケーブルを外周側から覆うケーブルカバーを備える、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一のフラットケーブルの幅方向に差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を配置する場合と比較して、第1通信用導体と第2通信用導体との間隔を小さくすることが可能となるので、第1通信用導体と第2通信用導体との結合を密にすることができ、第1通信用導体および第2通信用導体の特性インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となり、通信性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る第1通信用導体および第2通信用導体の特性インピーダンスの調整について説明する断面図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る第1通信用導体と第2通信用導体の位置関係を示す断面図である。
図7図7は、本発明の第3実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図8図8は、本発明の第4実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図9図9は、本発明の第4実施形態に係る第1通信用導体および第2通信用導体の断面形状の例を示す図である。
図10図10は、本発明の第5実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図11図11は、本発明の第6実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図12図12は、本発明の第6実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図13図13は、本発明の第7実施形態に係る配線構造体の断面図である。
図14図14は、本発明の第8実施形態に係る配線構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1および図2は、本発明の第1実施形態を示すものである。図1は配線構造体の断面図であり、図2は第1通信用導体および第2通信用導体の特性インピーダンスの調整について説明する断面図である。
【0019】
本発明の配線構造体1は、例えば、車両において、車両本体側のステアリングコラムと、ステアリングホイール側のステアリングシャフトとの連結部分に設けられる回転コネクタとしてのステアリングロールコネクタ、車両本体側とスライドドアとの連結部分に設けられるスライドドアハーネス、車両本体側とスライドシートとの連結部分に設けられるスライドシートハーネスなどの可動部分、または、ECUの内部や、ECUとECUとの接続などの静止部分に適用されるものである。配線構造体1は、一の機器と他の機器との間で電気信号を伝送するための通信回路の一部を構成している。ここで、通信回路は、例えば、低電圧で低振幅な信号を利用して高速伝送を行うLVDS(Low Voltage Differential Signaling)の差動信号を伝送する。差動信号は、一般に100Mbpd以下の通信速度であるが、必要に応じて100Mbpsよりも高速な通信速度であってもよい。
【0020】
配線構造体1は、図1に示すように、第1通信用導体11を有する第1フラットケーブル10と、第2通信用導体21を有し、第1フラットケーブル10に積層される第2フラットケーブル20と、を備えている。
【0021】
第1フラットケーブル10は、第1通信用導体11を絶縁体12で覆うことによって帯状に形成されている。また、第2フラットケーブル20は、第2通信用導体21を絶縁体22で覆うことによって帯状に形成されている。第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20は、それぞれ、同一の幅寸法を有し、互いに積層された状態で、第1通信用導体11および第2通信用導体21が積層方向に並ぶ配置となる。
【0022】
第1通信用導体11および第2通信用導体21は、それぞれ、タフピッチ銅等の高い導電性を有する部材からなる。第1通信用導体11および第2通信用導体21は、それぞれ、タフピッチ銅以外に、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、または、メッキ加工を施した金属などを用いることが可能である。第1通信用導体11および第2通信用導体21は、それぞれ、電気伝導率が、10×10S/m以上であることが好ましい。
【0023】
第1通信用導体11および第2通信用導体21は、それぞれ、横断面が例えば、幅寸法が0.8mm、厚さ寸法が35μmの矩形状に形成されている。
【0024】
絶縁体12,22は、それぞれ、比誘電率が例えば3.4の樹脂製の部材からなる。
【0025】
ここで、第1通信用導体11および第2通信用導体21からなる差動伝送線路の目標の特性インピーダンスは、例えば、100±10Ωである。特性インピーダンスは、図2に示すように、第1通信用導体11および第2通信用導体21の幅寸法wおよび厚さ寸法t、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔s、第1通信用導体11および第2通信用導体21を覆う絶縁体の厚さh、絶縁体の比誘電率によって決まる。
【0026】
例えば、絶縁体12,22の比誘電率が3.4、第1通信用導体11および第2通信用導体21の幅寸法wが0.1mmの場合には、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔sを0.087mmとすることが好ましい。また、例えば、絶縁体12,22の比誘電率が3.4、第1通信用導体11および第2通信用導体21の幅寸法wが0.5mmの場合には、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔sを0.40mmとすることが好ましい。さらに、例えば、絶縁体12,22の比誘電率が3.4、第1通信用導体11および第2通信用導体21の幅寸法wが0.8mmの場合には、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔sを0.70mmとすることが好ましい。
【0027】
以上のように構成された配線構造体1は、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20を互いに積層した状態で、一の機器と他の機器とを接続することによって一の機器と他の機器との間に通信回路が構成される。配線構造体1には、第1通信用導体11および第2通信用導体21からなる差動伝送線路が構成される。
【0028】
このように、本実施形態の配線構造体によれば、差動伝送線路を構成する第1通信用導体11および第2通信用導体21を備える配線構造体1であって、第1通信用導体11を有する第1フラットケーブル10と、第2通信用導体21を有し、第1フラットケーブル10に積層される第2フラットケーブル20と、を備え、第1通信用導体11および第2通信用導体21は、それぞれ、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の幅方向における積層方向に並ぶ位置に配置される。
【0029】
これにより、一のフラットケーブルの幅方向に差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を配置する場合と比較して、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を小さくすることが可能となるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との結合を密にすることができ、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となり、通信性能を向上させることが可能となる。
【0030】
<第2実施形態>
図3乃至図6は、本発明の第2実施形態を示すものである。図3乃至図5は配線構造体の断面図であり、図6は第1通信用導体と第2通信用導体の位置関係を示す断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0031】
本実施形態の配線構造体1は、図3乃至図5に示すように、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20が、一の機器と他の機器との間で電力や電気信号を伝送する他の導体13,23を有している。
【0032】
図3では、第1通信用導体11が、第1フラットケーブル10の幅方向中央部に配置され、第1通信用導体11の幅方向両側のそれぞれに3本の他の導体13が配置されている。また、第2通信用導体21が、第2フラットケーブル20の幅方向中央部に配置され、第2通信用導体21の幅方向両側のそれぞれに3本の他の導体23が配置されている。
【0033】
図4では、第1通信用導体11が、第1フラットケーブル10の幅方向一端側(右側)に配置され、第1通信用導体11の他端側に6本の他の導体13が配置されている。また、第2通信用導体21が、第2フラットケーブル20の幅方向一端側(右側)に配置され、第2通信用導体21の他端側に6本の他の導体23が配置されている。
【0034】
図5では、第1通信用導体11が、第1フラットケーブル10の幅方向中央部よりも幅方向一端側(右側)に配置され、第1通信用導体11の一端側に2本の他の導体23、他端側に4本の他の導体13が配置されている。また、第2通信用導体21が、第2フラットケーブル20の幅方向中央部よりも幅方向一端側(右側)に配置され、第2通信用導体21の一端側に2本の他の導体23、他端側に4本の他の導体23が配置されている。
【0035】
即ち、第1通信用導体11および第2通信用導体21は、それぞれ、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の幅方向における積層方向に並ぶ位置に配置されている。
【0036】
第1通信用導体11および第2通信用導体21は、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層方向に完全に重なることが好ましいが、図6に示すように、互いに積層された第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の幅方向にわずかな位置ずれが生じることが考えられる。第1通信用導体11と第2通信用導体21は、互いの距離が他の導体13,23との距離よりも小さければよく、図6に示す距離aが距離bよりも小さい、ことが好ましい。
【0037】
このように、本実施形態の配線構造体によれば、第1実施形態と同様に、一のフラットケーブルの幅方向に差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を配置する場合と比較して、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を小さくすることが可能となるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との結合を密にすることができ、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となり、通信性能を向上させることが可能となる。
【0038】
また、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20は、それぞれ、他の導電回路を構成する他の導体13,23を有している、ことが好ましい。
【0039】
これにより、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20からなる配線構造体1によって、差動伝送線路以外の複数の用途の導電回路を一体に構成することが可能となり、省スペース化を図ることが可能となる。
【0040】
<第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態を示すものであって、配線構造体の断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0041】
本実施形態の配線構造体1は、第1フラットケーブル10が、第1通信用導体11の幅方向両側において、第1通信用導体11に対して幅方向に間隔をおいて配置される一対のグランド用導体14を有している。また、第2フラットケーブル20が、第2通信用導体21の幅方向両側において、第2通信用導体21に対して幅方向に間隔を置いて配置される一対のグランド用導体24を有している。
【0042】
以上のように構成された配線構造体1において、第1フラットケーブル10における第1通信用導体11の幅方向両側のそれぞれには、グランド用導体14が配置され、第2フラットケーブル20における第2通信用導体の幅方向両側のそれぞれには、グランド用導体24が配置されている。これにより、グランド用導体14,24が、外来ノイズの影響を遮断するシールドとして機能するため、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。また、第1通信用導体11および第2通信用導体21は、第1通信用導体11とグランド用導体14との間隔、第2通信用導体21とグランド用導体24との間隔を調整することによって、特性インピーダンスの調整が可能となる。
【0043】
このように、本実施形態の配線構造体によれば、第1実施形態と同様に、一のフラットケーブルの幅方向に差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を配置する場合と比較して、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を小さくすることが可能となるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との結合を密にすることができ、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となり、通信性能を向上させることが可能となる。
【0044】
また、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20は、第1通信用導体11および第2通信用導体21に対して幅方向に間隔をおいて配置されるグランド用導体14,24を有する、ことが好ましい。
【0045】
これにより、第1通信用導体11および第2通信用導体21に対する他の導体13,23の電磁波等の外来ノイズの影響を遮断するとともに、第1通信用導体11および第2通信用導体21とグランド用導体14,24との距離の調整によって第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスを調整することが可能となる。
【0046】
尚、第3実施形態では、第1通信用導体11および第2通信用導体21の幅方向両側にグランド用導体14,24を配置したものを示したが、これに限られるものではない。グランド用導体14,24は、少なくとも、第1通信用導体11および第2通信用導体21の幅方向一方に配置されていればよく、配置された方向からの外来ノイズの影響を遮断することが可能である。
【0047】
<第4実施形態>
図8および図9は、本発明の第4実施形態を示すものである。図8は配線構造体の断面図であり、図9は第1通信用導体および第2通信用導体の断面形状の例を示す図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0048】
本実施形態の配線構造体1を構成する第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20は、図8に示すように、第1通信用導体11、第2通信用導体21およびその他の導体13,23が、横断面形状が丸形に形成された所謂リボンケーブルである。第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20は、積層方向の両面が平面状に形成されている、ことが好ましい。
【0049】
第1通信用導体11、第2通信用導体21およびその他の導体13,23は、図9(a)に示すように、横断面形状が矩形状であってもよいし、図9(b)に示すように、横断面形状が円形状であってもよいし、図9(c)に示すように、細い導線を撚り合わせた撚線であってもよい。また、第1通信用導体11および第2通信用導体21は、それぞれ、導体抵抗が同程度であれば、互いに異なる横断面形状であってもよい。
【0050】
このように、本実施形態の配線構造体によれば、第1実施形態と同様に、一のフラットケーブルの幅方向に差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を配置する場合と比較して、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を小さくすることが可能となるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との結合を密にすることができ、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となり、通信性能を向上させることが可能となる。
【0051】
<第5実施形態>
図10は、本発明の第5実施形態を示すものであり、配線構造体の断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0052】
本実施形態の配線構造体1は、第1フラットケーブル10と第2フラットケーブル20との間に設けられ、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を調整する間隔調整ケーブル30を備えている。
【0053】
間隔調整ケーブル30は、例えば、PET等の絶縁材料からなり、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20と別体として形成してもよいし、第1フラットケーブル10または第2フラットケーブル20と一体に形成してもよいし、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20と一体に形成してもよい。
【0054】
以上のように構成された配線構造体1において、第1フラットケーブル10と第2フラットケーブル20との間に間隔調整ケーブル30を配置することによって、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔が調整される。第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を調整することにより、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの調整が可能となる。
【0055】
このように、本実施形態の配線構造体によれば、第1実施形態と同様に、一のフラットケーブルの幅方向に差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を配置する場合と比較して、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を小さくすることが可能となるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との結合を密にすることができ、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となり、通信性能を向上させることが可能となる。
【0056】
また、第1フラットケーブル10と第2フラットケーブル20との間に設けられ、第1通信用導体11と前記第2通信用導体21との間隔を調整する間隔調整ケーブル30を備えている、ことが好ましい。
【0057】
これにより、第1実施形態のように、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を小さくできるように第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20を構成した場合であっても、間隔調整ケーブル30を配置することにより、必要に応じて特性インピーダンスを調整することができ、通信性能を向上させることが可能となる。
【0058】
<第6実施形態>
図11および図12は、本発明の第6実施形態を示すものであり、配線構造体の断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0059】
本実施形態の配線構造体1は、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層方向の外側に積層され、シールドケーブル40を備えている。図11は、シールドケーブル40が、第2フラットケーブル20の積層方向の外側のみに配置されている。図12は、シールドケーブル40が、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層方向の両方の外側に配置されている。
【0060】
シールドケーブル40は、第1通信用導体11または第2通信用導体21を積層方向の外側から覆う幅寸法のシールド導体41を有している。
【0061】
シールド導体41は、他の用途の電力または電気信号を伝送するための導電回路として利用してもよい。
【0062】
シールドケーブル40は、配置された方向からの外来ノイズの影響を遮断することが可能であり、必要に応じて第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層方向の一方または両方に配置される。
【0063】
以上のように構成された複数の配線構造体1において、図11に示すように、第2フラットケーブル20の積層方向の外側には、第2通信用導体21を覆うシールド導体41を有するシールドケーブル40が配置されている。また、図12に示すように、互いに積層された第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層方向の両方の外側には、第1通信用導体11または第2通信用導体21を覆うシールド導体41を有するシールドケーブル40が配置されている。これにより、シールド導体41が、他の導体からの電磁波等の外来ノイズの影響を遮断するため、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。また、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20のそれぞれの積層方向の外側の表面に外来ノイズの影響を遮断するためのシールドフィルムを貼付する必要がない。このため、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20は、厚さ方向の大型化が抑制され、柔軟性および耐久性が向上する。
【0064】
このように、本実施形態の配線構造体によれば、第1実施形態と同様に、一のフラットケーブルの幅方向に差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を配置する場合と比較して、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を小さくすることが可能となるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との結合を密にすることができ、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となり、通信性能を向上させることが可能となる。
【0065】
また、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層方向の外側の一方または両方に積層され、第1通信用導体11または第2通信用導体21を積層方向の外側から覆う幅寸法のシールド導体41を有するシールドケーブル40を備える、ことが好ましい。
【0066】
これにより、第1通信用導体11および第2通信用導体21に対する他の導体の電磁波等の外来ノイズの影響を遮断することによって、特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。また、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20のそれぞれの積層方向の外側の表面に外来ノイズの影響を遮断するためのシールドフィルムを貼付する必要がないため、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の厚さ方向の大型化を抑制し、柔軟性及び耐久性を向上させることが可能となる。
【0067】
尚、第6実施形態では、互いに積層された第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層方向の外側に、第1通信用導体11または第2通信用導体21を覆うシールド導体41を有するシールドケーブル40を配置したものを示した。第6実施形態における第1フラットケーブル10とシールドケーブル40との間、および、第2フラットケーブル20とシールドケーブル40との間に、前記第5実施形態に示す間隔調整ケーブル30を配置することによって、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスを調整することが可能となる。
【0068】
<第7実施形態>
図13は、本発明の第7実施形態を示すものであり、配線構造体の断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0069】
本実施形態の配線構造体1は、互いに積層される第1フラットケーブル10と第2フラットケーブル20との間に、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層状態を保持するための保持剤としてのグリス50を塗布している。
【0070】
グリス50は、潤滑油に増稠剤を添加することによって粘度を高めたものであり、第1フラットケーブル10と第2フラットケーブル20とが対向する面の全体に亘って設けられている。
【0071】
以上のように構成された配線構造体1は、ステアリングロールコネクタ、スライドドアハーネス、または、スライドシートハーネスに用いた場合に、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20が繰り返し曲げられることにより、第1フラットケーブル10に対して第2フラットケーブル20が位置ずれを生じる可能性がある。しかし、第1フラットケーブル10と第2フラットケーブル20との間には、グリス50が介在しているため、第1フラットケーブル10と第2フラットケーブル20の対向する面同士が張り付いた状態となり、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層状態が保持される。
【0072】
このように、本実施形態の配線構造体によれば、第1実施形態と同様に、一のフラットケーブルの幅方向に差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を配置する場合と比較して、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を小さくすることが可能となるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との結合を密にすることができ、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となり、通信性能を向上させることが可能となる。
【0073】
また、第1フラットケーブル10と第2フラットケーブル20との間に設けられ、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層状態を保持する保持剤としてのグリス50を備える、ことが好ましい。
【0074】
これにより、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20のそれぞれに繰り返し曲げられた場合においても、グリス50によって第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層状態が保持されるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との位置関係を保持して、特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。
【0075】
<第8実施形態>
図14は、本発明の第8実施形態を示すものであり、配線構造体の断面図である。尚、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0076】
本実施形態の配線構造体1は、互いに積層された第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20を外周側から覆うケーブルカバー60を備えている。
【0077】
ケーブルカバー60は、例えば、樹脂製のコルゲートチューブからなり、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20を一体とすることによって、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層状態を保持する。
【0078】
以上のように構成された配線構造体1は、ステアリングロールコネクタ、スライドドアハーネス、または、スライドシートハーネスに用いた場合に、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20が繰り返し曲げられることにより、第1フラットケーブル10に対して第2フラットケーブル20が位置ずれを生じる可能性がある。しかし、第1フラットケーブル10と第2フラットケーブル20は、ケーブルカバー60によって覆われているため、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層状態が保持される。
【0079】
このように、本実施形態の配線構造体によれば、第1実施形態と同様に、一のフラットケーブルの幅方向に差動伝送線路を構成する第1通信用導体および第2通信用導体を配置する場合と比較して、第1通信用導体11と第2通信用導体21との間隔を小さくすることが可能となるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との結合を密にすることができ、第1通信用導体11および第2通信用導体21の特性インピーダンスの調整を容易に行うことが可能となり、通信性能を向上させることが可能となる。
【0080】
また、互いに積層された第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20を外周側から覆うケーブルカバー60を備えている、ことが好ましい。
【0081】
これにより、第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20のそれぞれに繰り返し曲げられた場合においても、ケーブルカバー60によって第1フラットケーブル10および第2フラットケーブル20の積層状態が保持されるので、第1通信用導体11と第2通信用導体21との位置関係を保持して、特性インピーダンスの変動を抑制することが可能となる。
【0082】
尚、前記実施形態では、配線構造体1が適用される例として、車両におけるステアリングロールコネクタ、スライドドアハーネス、または、スライドシートハーネスを示したが、これに限られるものでない。本発明の配線構造体は、車両に限られることなく、一の機器と他の機器との間で高速通信を行う必要がある装置に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 配線構造体
10 第1フラットケーブル
11 第1通信用導体
13 他の導体
14 グランド用導体
20 第2フラットケーブル
21 第2通信用導体
23 他の導体
24 グランド用導体
30 間隔調整ケーブル
40 シールドケーブル
50 グリス
60 ケーブルカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14