(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136130
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電力制御装置、画像形成装置、電力制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G03G21/00 398
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047118
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊昌
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270KA46
2H270LA01
2H270LD05
2H270LD14
2H270MG07
2H270MG09
2H270MH05
2H270ND14
2H270ZB01
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
(57)【要約】
【課題】印刷開始時の電力が変動する分を、初回の印刷動作時の電力検出結果で求めた線形式で補正して定着配分電力を決定し、実際の印刷動作で最大電力を超えないようにすることができる電力制御装置、画像形成装置、電力制御方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】本発明は、電源から供給されるAC電力から変換されかつ制御基板に供給されるDC電力を検出する電力検出部と、画像形成装置において初回の印刷動作が行われる場合、予め設定される制御周期毎に、印刷動作の開始から前記DC電力が安定するまでの当該DC電力の変動量を算出する算出部と、前記画像形成装置において初回の印刷動作以降の印刷動作が行われる場合に、前記DC電力に対して前記制御周期毎の前記変動量の平均を加算した電力に基づいて、前記画像形成装置が有する定着装置に対する次の前記制御周期の前記AC電力の配分を決定する制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給されるAC電力から変換されかつ制御基板に供給されるDC電力を検出する電力検出部と、
画像形成装置において初回の印刷動作が行われる場合、予め設定される制御周期毎に、印刷動作の開始から前記DC電力が安定するまでの当該DC電力の変動量を算出する算出部と、
前記画像形成装置において初回の印刷動作以降の印刷動作が行われる場合に、前記DC電力に対して前記制御周期毎の前記変動量の平均を加算した電力に基づいて、前記画像形成装置が有する定着装置に対する次の前記制御周期の前記AC電力の配分を決定する制御部と、
を備える電力制御装置。
【請求項2】
前記算出部により算出される前記制御周期毎の前記変動量を記憶する記憶部をさらに備える、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記変動量が所定の電力変動量以内になった場合に、印刷動作開始から前記DC電力が安定したと判断する、請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記DC電力が、前回の前記制御周期における前記DC電力よりも下がった場合に、印刷動作開始から前記DC電力が安定したと判断する、請求項1または2に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記算出部は、印刷動作開始時の電力消費パターンが異なる印刷条件毎に、前記変動量を算出する、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記算出部は、予め設定される期間毎に前記変動量を算出し直す、請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電力制御装置を有する画像形成装置。
【請求項8】
電力制御装置で実行される電力制御方法であって、
電源から供給されるAC電力から変換されかつ制御基板に供給されるDC電力を検出する工程と、
画像形成装置において初回の印刷動作が行われる場合、予め設定される制御周期毎に、印刷動作の開始から前記DC電力が安定するまでの当該DC電力の変動量を算出する工程と、
前記画像形成装置において初回の印刷動作以降の印刷動作が行われる場合に、前記DC電力に対して前記制御周期毎の前記変動量の平均を加算した電力に基づいて、前記画像形成装置が有する定着装置に対する次の前記制御周期の前記AC電力の配分を決定する工程と、
を含む電力制御方法。
【請求項9】
電源から供給されるAC電力から変換されかつ制御基板に供給されるDC電力の検出結果を取得し、画像形成装置において初回の印刷動作が行われる場合、予め設定される制御周期毎に、印刷動作の開始から前記DC電力が安定するまでの当該DC電力の変動量を算出する算出部と、
前記画像形成装置において初回の印刷動作以降の印刷動作が行われる場合に、前記DC電力に対して前記制御周期毎の前記変動量の平均を加算した電力に基づいて、前記画像形成装置が有する定着装置に対する次の前記制御周期の前記AC電力の配分を決定する制御部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御装置、画像形成装置、電力制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、印刷動作等の機器動作時の二次側のDC電力を検出してAC系統(一次側)で消費するAC電力(定着配分電力等)を抑制し、設備側の定格電流、機器の定格電流または定格電力を超えないようにする電力制御技術が開発されている。しかし、この電力制御技術では、機器動作を検出して定着配分電力を抑制するために、予め格納済みの機器動作状態毎のDC電力を使用しており、機器動作状態内でのDC電力の変動に合わせて電力を抑制できないため、過剰に定着配分電力を抑制してしまっている。
【0003】
そこで、特許文献1,2では、定着側に効率よく電力を供給することが目的で、二次側のDC電力を検出して、その検出結果に応じて定着配分電力を決める技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、二次側のDC電力の安定時期では問題ないが、二次側のDC電力が変動する(例えば、二次側のDC電力が時間経過とともに増加する)印刷開始時での検出から定着配分電力決定までのタイムラグが考慮されておらず、DC電力の検出結果で定着配分電力を決めると、実際の動作としては最大電力を超えてしまうタイミングが発生する場合がある。また、特許文献2記載の技術では、印刷期間中の定着配分電力を最大化する手段しか記載されておらず、給紙開始から印刷開始までの期間に関しては、過剰に定着配分電力を抑制している。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印刷開始時の電力が変動する分を、初回の印刷動作時の電力検出結果で求めた線形式で補正して定着配分電力を決定し、実際の印刷動作で最大電力を超えないようにすることができる電力制御装置、画像形成装置、電力制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電源から供給されるAC電力から変換されかつ制御基板に供給されるDC電力を検出する電力検出部と、画像形成装置において初回の印刷動作が行われる場合、予め設定される制御周期毎に、印刷動作の開始から前記DC電力が安定するまでの当該DC電力の変動量を算出する算出部と、前記画像形成装置において初回の印刷動作以降の印刷動作が行われる場合に、前記DC電力に対して前記制御周期毎の前記変動量の平均を加算した電力に基づいて、前記画像形成装置が有する定着装置に対する次の前記制御周期の前記AC電力の配分を決定する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷開始時の電力が変動する分を、初回の印刷動作時の電力検出結果で求めた線形式で補正して定着配分電力を決定し、実際の印刷動作で最大電力を超えないようにすることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の回路構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置における定着配分電力の決定処理の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置における定着配分電力の決定処理の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置における定着配分電力の決定処理の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置におけるDC電力の変動量の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置における定着配分電力の決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態にかかる画像形成装置におけるDC電力の変動量の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第3の実施の形態にかかる画像形成装置におけるDC電力の変動量の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、電力制御装置、画像形成装置、電力制御方法、およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の構成の一例を示す図である。本実施の形態にかかる画像形成装置1は、
図1に示すように、デジタル複合機等であり、複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能等を有している。本実施の形態にかかる画像形成装置1は、操作部のアプリケーション切り替えキーにより、複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能となっている。そして、画像形成装置1は、複写機能の選択時には複写モードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0011】
次に、本実施の形態にかかる画像形成装置1での画像形成の流れを、複写モードを例に挙げて、
図1を用いて簡単に説明する。複写モードでは、原稿束がADF(Automatic Document Feeder)2により、順に、画像読み取り装置3に給送され、画像読み取り装置3により、画像情報が読み取られる。そして、その読み取られた画像情報は、画像処理手段を介して書き込み手段としての書き込みユニット4により光情報に変換される。感光体ドラム6は、帯電器により一様に帯電された後に、書き込みユニット4からの光情報で露光されて静電潜像が形成される。この感光体ドラム6上の静電潜像は、現像装置7により現像されてトナー像となる。このトナー像は、給紙ユニットから搬送ベルト8に給紙された転写紙に対して当該搬送ベルト8から転写される。その後、転写紙は、定着装置9によりトナー像が定着され、排出される。
【0012】
図2は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の回路構成の一例を示す図である。本実施の形態にかかる画像形成装置1の回路構成は、
図2に示すように、一次側と、二次側と、に分けられる。一次側には、電源101、PSU(Power Supply Unit)102、および定着装置9が設けられる。二次側には、制御基板201が設けられる。
【0013】
PSU102には、電力検出回路104、定着制御回路105、AC-DC変換部106、DC-DC変換部107等が実装される。制御基板201には、CPU(Central Processing Unit)201a、ROM(Read Only Memory)201b、およびRAM(Random Access Memory)201c等が実装される。
【0014】
AC-DC変換部106は、電源101から供給されるAC電力をDC電力に変換して制御基板201に供給する。DC-DC変換部107は、AC-DC変換部106によりAC電力から変換されるDC電力の電圧を変換して制御基板201に供給する。定着制御回路105は、PSU102上等に実装され、制御基板201が有するCPU201aからの信号に応じて、定着装置9への通電または非通電を切り替える。
【0015】
電力検出回路104は、制御基板201に供給されるDC電力を検出する電力検出部の一例である。本実施の形態では、電力検出回路104は、電流検出回路104b、および電圧検出回路104aを有し、PSU102上に実装される。電流検出回路104bは、画像形成装置1の動作時における消費電流を検出する。電圧検出回路104aは、電源環境(電源101)の電源電圧Va,Vcを検出する。電力検出回路104は、画像形成装置1の動作時における消費電力(DC電力)を検出する。
【0016】
検出された電源電圧Va,Vc、消費電流、および消費電力は、制御基板201上のCPU201aで、A/D変換され、ROM201b、RAM201c等に格納される。また、ROM201bおよびRAM201cには、画像形成装置1の初回の印刷動作時に検出される消費電力、電源電圧Va,Vc、検出電流、予め備えた電力情報等も格納されている。
【0017】
CPU201aは、定着器103の制御開始のタイミングに合わせて、ROM201bおよびRAM201cに格納した、画像形成装置1の初回の印刷動作時の消費電力を基に、定着制御回路105へのON/OFF信号を制御し、定着器103への通電のパターンを変化させる。
【0018】
具体的には、CPU201aは、算出部202、および制御部203を有する。算出部202は、電力検出回路104によるDC電力の検出結果を取得する。また、算出部202は、画像形成装置1において初回の印刷動作が行われる場合、予め設定される制御周期(定着制御周期時間)毎に、印刷動作の開始からDC電力が安定するまでの当該DC電力の変動量を算出する算出部の一例である。そして、算出部202は、定着制御周期時間毎に算出した変動量をRAM201c等の記憶部に保存する。本実施の形態では、算出部202は、DC電力の変動量が規定の電力変動量(所定の電力変動量の一例)以内となった場合に、印刷動作の開始からDC電力が安定したと判断しても良い。
【0019】
また、本実施の形態では、算出部202は、印刷動作開始時の電力消費パターンが異なる印刷モード毎に、変動量を算出しても良い。これにより、印刷モードおよび画像形成装置1の構成で変わる印刷動作開始時の電力消費パターンに合わせ、複数の変動量を算出しかつ記録して、電力消費パターンに応じて定着配分電力を制御することができる。ここで、印刷モードは、例えば、印刷条件、DF読取、排紙先等の組合せであっても良い。そして、算出部202は、下記の表1に示すように、算出した変動量または当該変動量の保存先と、印刷モードと、を対応付けてRAM201c等の記憶部に保存しても良い。
【表1】
【0020】
制御部203は、画像形成装置1において初回の印刷動作以降の印刷動作が行われる場合に、DC電力に対して定着制御周期時間毎の変動量の平均を加算した電力に基づいて、定着装置9に対する次の定着制御周期時間のAC電力の配分を決定する制御部の一例である。これにより、印刷開始時のDC電力が変動する(時間経過とともに増加する)分を、初回の印刷動作時のDC電力の検出結果で求めた線形式で補正して、定着装置9に対するAC電力(定着配分電力)を決定することにより、実際の印刷動作で最大電力を超えないようにすることができる。
【0021】
図3~5は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置における定着配分電力の決定処理の一例を説明するための図である。
図3~5において、縦軸は、電力を表し、横軸は、印刷動作開始からの経過時間を表す。
【0022】
従来、
図3に示すように、画像形成装置において、印刷動作等の機器動作時の二次側のDC電力を検出してAC系統(一次側)で消費するAC電力を抑制し、設備側の定格電流、機器の定格電流または定格電力を超えないようにする電力制御技術が開発されている。しかし、この電力制御技術では、機器動作を検出して定着配分電力を抑制するために、予め格納済みの機器動作状態(例えば、印刷中)毎のDC電力(例えば、300W)を使用しており、機器動作状態内でのDC電力の変動に合わせて電力を抑制できないため、過剰に定着配分電力(例えば、1200W)を抑制してしまっている。
【0023】
そこで、
図4に示すように、定着側に効率よくAC電力を供給することを目的として、二次側のDC電力を検出して、その検出結果に応じて定着配分電力を決める技術も開発されている。しかし、この技術では、二次側のDC電力の安定時期では問題ないが、二次側のDC電力が変動する(例えば、二次側のDC電力が時間経過とともに増加する)印刷開始時での検出から定着配分電力決定までのタイムラグが考慮されておらず、DC電力の検出結果で定着配分電力を決めると、実際の動作としては最大電力を超えてしまうタイミングが発生する場合がある。
【0024】
これに対して、本実施の形態にかかる画像形成装置1では、制御部203は、線形的にDC電力が増加する期間(すなわち、印刷動作開始からDC電力が安定するまでの期間)においては、予め、DC電力の検出結果で求めた定着制御周期時間毎の変動量を、DC電力にプラスする。例えば、制御部203は、
図5に示すように、定着制御周期時間AのDC電力の検出結果(例えば、185W)に対して、その10秒後の定着制御周期時間Bのタイミングでは、変動量の35Wをプラスした220Wに基づいて、定着装置9に対してAC電力を開放するため、定着制御周期時間BでDC電力が220Wになっていても、最大電力をオーバーすることを防止できる。
【0025】
図6は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置におけるDC電力の変動量の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。画像形成装置1におけるジョブ(印刷動作)が開始されると(ステップS601)、算出部202は、印刷動作の印刷条件、DF読取、排紙先等を含む印刷モードを選択する(ステップS602)。
【0026】
次に、算出部202は、選択した印刷モードにおけるDC電力の変動量Wfaが保存されているか否か、すなわち、Wfa=0か否かを判断する(ステップS603)。選択した印刷モードにおける変動量Wfaが保存されている場合(ステップS603:No)、算出部202は、変動量の算出処理を終了する。
【0027】
選択した印刷モードにおける変動量Wfaが保存されていない場合(ステップS603:Yes)、定着装置8等の駆動モータの動作が開始すると(ステップS604)、算出部202は、タイマカウントを開始する(ステップS605)。次いで、算出部202は、タイマカウントのカウント値が定着制御周期時間を経過したか否かを判断する(ステップS606)。カウント値が定着制御周期時間を経過していない場合(ステップS606:No)、算出部202は、ステップS605に戻る。
【0028】
カウント値が定着制御周期時間を経過した場合(ステップS606:Yes)、電力検出回路104は、制御基板201に供給されるDC電力(電力値Wx)を検出する(ステップS607)。次に、算出部202は、選択された印刷モードにおける初回のDC電力の検出か否かを判断する(ステップS608)。初回のDC電力の検出の場合(ステップS608:Yes)、算出部202は、ステップS605に戻り、タイマカウントを継続する。
【0029】
一方、初回のDC電力の検出ではない場合(ステップS608:No)、算出部202は、算出部202は、前回の電力値Wxからの電力値Wx+1の変動量Wfを算出する(ステップS609)。さらに、算出部202は、選択した印刷モードにおいて算出した変動量Wfを加算して変動量Wfsを算出する(ステップS610)。また、算出部202は、変動量Wfの加算回数Kxをカウントアップする(ステップS611)。
【0030】
次に、算出部202は、変動量Wfが規定の電力変動量Wr以下であるか否かを判断する(ステップS612)。変動量Wfが規定の電力変動量Wrより大きい場合(ステップS612:No)、算出部202は、制御基板201に供給されるDC電力が安定していないと判断して、ステップS605に戻り、タイマカウントを継続する。
【0031】
変動量Wfが規定の電力変動量Wr以下である場合(ステップS612:Yes)、算出部202は、制御基板201に供給されるDC電力が安定したと判断して、変動量Wfsを加算回数Kxで除算して、DC電力が安定するまでの変動量Wfaを算出する(ステップS613)。そして、算出部202は、選択した印刷モードと、算出した変動量Wfaと、を対応付けてRAM201c等の記憶部に保存する(ステップS614)。
【0032】
図7は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置における定着配分電力の決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。画像形成装置1におけるジョブ(印刷動作)が開始されると(ステップS701)、算出部202は、印刷動作の印刷条件、DF読取、排紙先等を含む印刷モードを選択する(ステップS702)。
【0033】
次に、駆動モータの動作が開始すると(ステップS703)、算出部202は、タイマカウントを開始する(ステップS704)。次いで、算出部202は、タイマカウントのカウント値が定着制御周期時間を経過したか否かを判断する(ステップS705)。カウント値が定着制御周期時間を経過していない場合(ステップS705:No)、算出部202は、ステップS704に戻る。
【0034】
カウント値が定着制御周期時間を経過した場合(ステップS705:Yes)、電力検出回路104は、制御基板201に供給されるDC電力(電力値Wx)を検出する(ステップS706)。次に、算出部202は、選択された印刷モードにおける初回のDC電力の検出か否かを判断する(ステップS707)。初回のDC電力の検出の場合(ステップS707:Yes)、算出部202は、ステップS704に戻り、タイマカウントを継続する。
【0035】
一方、初回のDC電力の検出ではない場合(ステップS707:No)、算出部202は、RAM201c等の記憶部に印刷モードと対応付けられる変動量Wfaを、検出したDC電力Wxに加算した電力Wを算出する(ステップS708)。さらに、制御部203は、最大電力製品規格値から、算出した電力Wを減算して、定着配分電力を決定する(ステップS709)。また、算出部202は、加算回数Kcをカウントダウンする(ステップS710)。
【0036】
次に、算出部202は、加算回数Kcが0か否かを判断する(ステップS711)。加算回数Kcが0でない場合(ステップS711:No)、算出部202は、ステップS704に戻る。一方、加算回数Kcが0である場合(ステップS711:Yes)、算出部202は、タイマカウントを開始する(ステップS712)。次いで、算出部202は、タイマカウントのカウント値が定着制御周期時間を経過したか否かを判断する(ステップS713)。カウント値が定着制御周期時間を経過した場合(ステップS713:Yes)、電力検出回路104は、制御基板201に供給されるDC電力(電力値Wx)を検出する(ステップS714)。
【0037】
次に、制御部203は、最大電力製品規格値から、検出した電力値Wxを減算して定着配分電力を決定する(ステップS715)。次に、算出部202は、ジョブが終了したか否かを判断する(ステップS716)。ジョブが終了していない場合(ステップS716:No)、算出部202は、ステップS712に戻る。一方、ジョブが終了している場合(ステップS716:Yes)、算出部202は、定着配分電力の決定処理を終了する。
【0038】
このように、第1の実施の形態にかかる画像形成装置1によれば、印刷開始時のDC電力が変動する(時間経過とともに増加する)分を、初回の印刷動作時のDC電力の検出結果で求めた線形式で補正して、定着装置9に対するAC電力(定着配分電力)を決定することにより、実際の印刷動作で最大電力を超えないようにすることができる。
【0039】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、制御基板に供給されるDC電力が、前回の定着制御周期時間におけるDC電力よりも下がった場合に、印刷動作開始からDC電力が安定したと判断する例である。以下の説明では、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0040】
本実施の形態では、算出部202は、制御基板201に供給されるDC電力が、前回の定着制御周期時間におけるDC電力よりも下がった場合に、印刷動作開始からDC電力が安定したと判断する。
【0041】
図8は、第2の実施の形態にかかる画像形成装置におけるDC電力の変動量の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。本実施の形態では、加算回数K
xをカウントアップした後、算出部202は、電力検出回路104により検出した電力値W
x+1が、前回の電力値W
x以下であるか否かを判断する(ステップS801)。
【0042】
そして、電力値Wx+1が電力値Wx以下でない場合(ステップS801:No)、算出部202は、制御基板20に供給されるDC電力が安定していないと判断して、ステップS605に戻る。一方、電力値Wx+1が電力値Wx以下の場合(ステップS801:Yes)、算出部202は、制御基板20に供給されるDC電力が安定したと判断して、ステップS613に進む。
【0043】
このように、第2の実施の形態にかかる画像形成装置1によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、予め設定される時間毎に、印刷動作開始からDC電力が安定するまでのDC電力の変動量を算出し直す例である。以下の説明では、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0045】
本実施の形態では、算出部202は、予め設定される時間毎に、印刷動作開始からDC電力が安定するまでのDC電力の変動量を算出し直す。これにより、経時で負荷変動が増減した場合に、その機器状態に合わせて定着配分電力を決めることができる。例えば、経時で負荷が増加すればその時でも最大電力を超えないように定着配分電力を決めることができ、経時で負荷が減少すれば変動に合わせて最適な定着配分電力を決めることができる。
【0046】
図9は、第3の実施の形態にかかる画像形成装置におけるDC電力の変動量の算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。本実施の形態では、選択した印刷モードにおける変動量Wf
aが保存されている場合(ステップS603:No)、算出部202は、選択した印刷モードにおける初回の印刷動作(または、選択した印刷モードにおける最後の印刷動作)から予め設定される時間Tが経過したか否かを判断する(ステップS901)。
【0047】
選択した印刷モードにおける初回の印刷動作から予め設定される時間Tが経過していない場合(ステップS901:No)、算出部202は、変動量Wfaを算出し直さずに、DC電力の変動量の算出処理を終了する。一方、選択した印刷モードにおける初回の印刷動作から予め設定される時間Tが経過している場合(ステップS901:Yes)、算出部202は、ステップS604に進む。
【0048】
このように、第3の実施の形態にかかる画像形成装置1によれば、経時で負荷変動が増減した場合に、その機器状態に合わせて定着配分電力を決めることができる。例えば、経時で負荷が増加すればその時でも最大電力を超えないように定着配分電力を決めることができ、経時で負荷が減少すれば変動に合わせて最適な定着配分電力を決めることができる。
【0049】
なお、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、ROM201b等に予め組み込まれて提供される。本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。
【0050】
さらに、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0051】
本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、上述した各部(算出部202、制御部203)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU201a等のプロセッサの一例が上記ROM201bからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、算出部202、制御部203が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0052】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置1を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【0053】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 電源から供給されるAC電力から変換されかつ制御基板に供給されるDC電力を検出する電力検出部と、
画像形成装置において初回の印刷動作が行われる場合、予め設定される制御周期毎に、印刷動作の開始から前記DC電力が安定するまでの当該DC電力の変動量を算出する算出部と、
前記画像形成装置において初回の印刷動作以降の印刷動作が行われる場合に、前記DC電力に対して前記制御周期毎の前記変動量の平均を加算した電力に基づいて、前記画像形成装置が有する定着装置に対する次の前記制御周期の前記AC電力の配分を決定する制御部と、
を備える電力制御装置。
<2> 前記算出部により算出される前記制御周期毎の前記変動量を記憶する記憶部をさらに備える、<1>に記載の電力制御装置。
<3> 前記算出部は、前記変動量が所定の電力変動量以内になった場合に、印刷動作開始から前記DC電力が安定したと判断する、<1>または<2>に記載の電力制御装置。
<4> 前記算出部は、前記DC電力が、前回の前記制御周期における前記DC電力よりも下がった場合に、印刷動作開始から前記DC電力が安定したと判断する、<1>または<2>に記載の電力制御装置。
<5> 前記算出部は、印刷動作開始時の電力消費パターンが異なる印刷条件毎に、前記変動量を算出する、<1>から<4>のいずれか一項に記載の電力制御装置。
<6> 前記算出部は、予め設定される期間毎に前記変動量を算出し直す、<1>から<5>のいずれか一項に記載の電力制御装置。
<7> <1>から<6>のいずれか一項に記載の電力制御装置を有する画像形成装置。
<8> 電力制御装置で実行される電力制御方法であって、
電源から供給されるAC電力から変換されかつ制御基板に供給されるDC電力を検出する工程と、
画像形成装置において初回の印刷動作が行われる場合、予め設定される制御周期毎に、印刷動作の開始から前記DC電力が安定するまでの当該DC電力の変動量を算出する工程と、
前記画像形成装置において初回の印刷動作以降の印刷動作が行われる場合に、前記DC電力に対して前記制御周期毎の前記変動量の平均を加算した電力に基づいて、前記画像形成装置が有する定着装置に対する次の前記制御周期の前記AC電力の配分を決定する工程と、
を含む電力制御方法。
<9> 電源から供給されるAC電力から変換されかつ制御基板に供給されるDC電力の検出結果を取得し、画像形成装置において初回の印刷動作が行われる場合、予め設定される制御周期毎に、印刷動作の開始から前記DC電力が安定するまでの当該DC電力の変動量を算出する算出部と、
前記画像形成装置において初回の印刷動作以降の印刷動作が行われる場合に、前記DC電力に対して前記制御周期毎の前記変動量の平均を加算した電力に基づいて、前記画像形成装置が有する定着装置に対する次の前記制御周期の前記AC電力の配分を決定する制御部と、
して機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0054】
1 画像形成装置
9 定着装置
101 電源
102 PSU
104 電力検出回路
104a 電圧検出回路
104b 電流検出回路
105 定着制御回路
106 AC-DC変換部
107 DC-DC変換部
201 制御基板
201a CPU
201b ROM
201c RAM
202 算出部
203 制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2019-159237号公報
【特許文献2】特開2020-016866号公報