IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136216
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H05K9/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047253
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】達川 永吾
(72)【発明者】
【氏名】浅ヶ谷 菖一
【テーマコード(参考)】
5E321
【Fターム(参考)】
5E321AA14
5E321AA32
5E321GG09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】部品数を抑えて車両におけるノイズを低減させる電気接続箱を提供する。
【解決手段】電気接続箱1Aは、導電性を有し、車両に配置される筐体11Aと、筐体に設けられ、電力が入力される入力部31と、筐体11Aに設けられ、電力を出力する出力部32と、入力部31と出力部32とを接続する線路(第1電線21及び第2電線22)と、を有し、線路22のインダクタンス成分と、前記線路と筐体11Aとの間のキャパシタンス成分により共振回路が形成され、前記共振回路の共振周波数を含む抑制帯域に前記車両におけるノイズの周波数が含まれるように前記線路が筐体11A内に配索されている。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し、車両に配置される筐体と、
前記筐体に設けられ、電力が入力される入力部と、
前記筐体に設けられ、電力を出力する出力部と、
前記入力部と前記出力部とを接続する線路と、
を有し、
前記線路のインダクタンス成分と、前記線路と前記筐体との間のキャパシタンス成分により共振回路が形成され、
前記共振回路の共振周波数を含む抑制帯域に前記車両におけるノイズの周波数が含まれるように前記線路が前記筐体内に配索されている
電気接続箱。
【請求項2】
前記線路は、前記筐体の底面からの距離が一定に配索されている
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記線路がループ状に配索されている
請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記共振回路のインダクタンス成分は、前記筐体に配置された基板が有する抵抗器と前記線路とを接続する電線により形成されるインダクタンス成分を含む
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記線路は、前記入力部と前記出力部とを接続した状態で自重により変形しない剛性を備えている
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記線路と前記筐体に接して絶縁性を有する樹脂層を前記線路と前記筐体との間に有し、
前記キャパシタンス成分は、前記樹脂層により形成されるキャパシタンス成分である
請求項5に記載の電気接続箱。
【請求項7】
前記共振回路のキャパシタンス成分は、前記線路と前記筐体との間に配置された樹脂成型品により形成されるキャパシタンス成分を含む
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項8】
前記線路は、導体を絶縁被覆した電線であり、
前記キャパシタンス成分は、前記電線と前記筐体との間に形成されるキャパシタンス成分である
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項9】
前記共振回路のキャパシタンス成分は、前記線路と前記筐体との間に配置され前記入力部に電力を供給する電源の状態を監視する監視装置により形成されるキャパシタンス成分を含む
請求項1に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるノイズを低減する発明として、例えば特許文献1、2に開示された発明がある。特許文献1に開示された車載電源装置は、ノイズ発生源を含むDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータの出力に負荷を接続可能な1つ以上の出力端子と、DC/DCコンバータの出力におけるインピーダンスに影響を与える1つ以上のコンデンサを収容する調整ユニットと、調整ユニットを着脱自在に支持するユニット支持部とを備えている。この発明では、接続される負荷のインピーダンスに応じて調整ユニットを交換することにより、インピーダンスに対応してノイズを抑制することができる。
【0003】
特許文献2に開示された共振ノイズ緩和構造は、接地された導電性を有する筐体に収容された電気機器に対してシールド被覆を有する外部配線がコネクタを介して接続される。コネクタは、筐体に形成された開口から筐体内に挿入され、導電性を有するフランジを介して筐体に固定され、シールド被覆は、フランジを介して筐体に接続される。この筐体内では、外部配線と、外部配線に接続されたコネクタ端子を含む伝送路に沿って間隔を空けて対向させた接地導体が開口の位置まで設けられている。外部配線の先端は、コネクタ端子が圧着されており、このコネクタ端子は、電気機器に接続されている内部配線に接続された内部端子に接続される。内部配線から内部端子、コネクタ端子及び外部配線に至る伝送線路の特性インピーダンスは、接地電位の外部導体である筐体あるいは接地導体によって、伝送方向に沿って均一又は緩やかに変化するものとなる。これにより、伝送線路の伝送方向におけるノイズ電流の反射が抑制され、内部端子に達した電磁波エネルギは効率よくコネクタ端子まで伝わり、共振ノイズが大幅に緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7116028号公報
【特許文献2】特許第6556515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明は、接続される負荷のインピーダンスに対応するために複数のユニットを準備する必要があり、ノイズ対策のための部品数が増え、調整ユニットを交換する手間やコストがかかる。特許文献2に開示された発明では、接続する外部配線の全てに接地導体を設ける必要があり、ノイズ対策のための部品数が多くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、部品数を抑えて車両におけるノイズを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、導電性を有し、車両に配置される筐体と、前記筐体に設けられ、電力が入力される入力部と、前記筐体に設けられ、電力を出力する出力部と、前記入力部と前記出力部とを接続する線路と、を有し、前記線路のインダクタンス成分と、前記線路と前記筐体との間のキャパシタンス成分により共振回路が形成され、前記共振回路の共振周波数を含む抑制帯域に前記車両におけるノイズの周波数が含まれるように前記線路が前記筐体内に配索されている。
【0008】
本発明の一態様に係る電気接続箱は、前記線路は、前記筐体の底面からの距離が一定に配索されている構成であってもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る電気接続箱は、前記線路がループ状に配索されている構成であってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る電気接続箱においては、前記共振回路のインダクタンス成分は、前記筐体に配置された基板が有する抵抗器と前記線路とを接続する電線により形成されるインダクタンス成分を含む構成であってもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る電気接続箱においては、前記線路は、前記入力部と前記出力部とを接続した状態で自重により変形しない剛性を備えている構成であってもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る電気接続箱は、前記線路と前記筐体に接して絶縁性を有する樹脂層を前記線路と前記筐体との間に有し、前記キャパシタンス成分は、前記樹脂層により形成されるキャパシタンス成分である構成であってもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る電気接続箱においては、前記共振回路のキャパシタンス成分は、前記線路と前記筐体との間に配置された樹脂成型品により形成されるキャパシタンス成分を含む構成であってもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る電気接続箱においては、前記線路は、導体を絶縁被覆した電線であり、前記キャパシタンス成分は、前記電線と前記筐体との間に形成されるキャパシタンス成分である構成であってもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る電気接続箱においては、前記共振回路のキャパシタンス成分は、前記線路と前記筐体との間に配置され前記入力部に電力を供給する電源の状態を監視する監視装置により形成されるキャパシタンス成分を含む構成であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品数を抑えて車両におけるノイズを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、第1実施形態に係る電気接続箱の模式図である。
図1B図1Bは、図1AのA-A線断面図である。
図2図2は、第1電線の断面図である。
図3A図3Aは、ノイズレベルとノイズ周波数との関係を示す図である。
図3B図3Bは、ノイズレベルとノイズ周波数との関係を示す図である。
図4A図4Aは、第2実施形態に係る電気接続箱の模式図である。
図4B図4Bは、図4AのB-B線断面図である。
図5図5は、ノイズレベルとノイズ周波数との関係を示す図である。
図6A図6Aは、第3実施形態に係る電気接続箱の模式図である。
図6B図6Bは、図6AのC-C線断面図である。
図7図7は、ノイズレベルとノイズ周波数との関係を示す図である。
図8A図8Aは、第4実施形態に係る電気接続箱の模式図である。
図8B図8Bは、図8AのD-D線断面図である。
図9図9は、ノイズレベルとノイズ周波数との関係を示す図である。
図10A図10Aは、第5実施形態に係る電気接続箱の模式図である。
図10B図10Bは、図10AのE-E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、図中で適宜X軸、Y軸、及びZ軸の直交座標系を示し、これにより方向を説明する。直交座標系で示される空間においてX成分が増加する方向を+X方向といい、X成分が減少する方向を-X方向という。同様に、Y、Z成分についても、+Y方向、-Y方向、+Z方向、-Z方向と定義する。
【0019】
[第1実施形態]
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電気接続箱1Aを+Z方向から見た模式図であり、図1Bは、図1AのA-A線断面図である。なお、図1Bでは、断面のハッチングを省略している。電気接続箱1Aは、車両に搭載された二次電池から負荷への電力供給を中継する電気接続箱である。電気接続箱1Aは、例えばエンジンをアシストする電動モータを備えるハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、電動モータのみで走行する電気自動車などに設けられる。なお、電気接続箱1Aは、エンジンのみで駆動される車両に設けられていてもよい。
【0020】
電気接続箱1Aは、筐体11A、筐体11Aに取り付けられたコネクタ31、32、筐体11A内に配索された第1電線21、及び第2電線22を備えている。筐体11Aは、導電性を有する金属製の筐体であり、中空の箱型の形状に形成されている。筐体11Aは、車両のボディBに電気的且つ機械的に接続するための接地部12を下端に備えている。接地部12は、ボルトが貫通する孔を有しており、ボルト及びナットによりボディBに固定される。なお、図1A、及び図1Bでは図示を省略しているが、筐体11Aの+Z方向側は、図示省略した蓋により塞がれる。
【0021】
コネクタ31、32は、例えば所謂PN(Positive Negative)コネクタである。コネクタ31は、筐体11Aの-X方向側に下端から所定の高さの位置に取付けられている。入力部の一例であるコネクタ31は、例えば車両に搭載された二次電池が供給する電力を分配する他の電気接続箱へ図示省略したケーブルによって電気的に接続される。コネクタ32は、筐体11Aの+X方向側にコネクタ31と同じ高さの位置に取付けられている。出力部の一例であるコネクタ32は、例えば電動モータを駆動するためのインバータへ図示省略したケーブルによって電気的に接続される。
【0022】
図2は、第1電線21の断面図である。第1電線21は、導体21aと絶縁被覆21bで構成されている。導体21aは、導電性を有し、径方向に沿った断面が円形状の複数の素線210を撚って形成されている。絶縁被覆21bは、絶縁性を有する合成樹脂であり、導体21aの外周を被覆している。なお、第2電線22は、第1電線21と同じ構成であるため、その説明を省略する。第1電線21及び第2電線22は、本発明に係る線路の一例である。
【0023】
第1電線21は、コネクタ31とコネクタ32に接続され、コネクタ31側においては、コネクタ31が備える端子であって、ケーブルを介して二次電池の正極に電気的に接続される端子に接続されている。第2電線22は、コネクタ31とコネクタ32に接続され、コネクタ31側においては、コネクタ31が備える端子であって、ケーブルを介して二次電池の負極に電気的に接続される端子に接続されている。なお、第1電線21及び第2電線22は、コネクタ31とコネクタ32の間を並列で直線状に接続し、筐体11A内で筐体11Aの底面からの距離が一定で筐体11Aの底面に平行となっている。
【0024】
電気接続箱1Aにおいては、図1Bに示すように、第1電線21及び第2電線22でインダクタンス成分L1が形成され、第1電線21及び第2電線22と筐体11Aとの間でキャパシタンス成分C1が形成されることにより、LC並列共振によるフィルタが形成される。このフィルタの共振周波数は、インダクタンス成分L1とキャパシタンス成分C1により定まる。第1電線21及び第2電線22のX軸方向の長さ(d1)によりインダクタンス成分L1が定まり、筐体11Aの底面から第1電線21及び第2電線22までの距離(d2)によりキャパシタンス成分C1が定まることから、第1電線21及び第2電線22のX軸方向の長さと、筐体11Aの底面から第1電線21及び第2電線22までのZ軸方向の距離を変えることにより共振周波数を調整し、共振周波数を含む周波数帯域である抑制帯域に含まれる周波数のノイズを低減することができる。抑制帯域とは、共振周波数を含む周波数帯域であって、ノイズレベルが共振周波数のノイズレベルから所定範囲のレベルとなる周波数帯域である。抑制帯域の範囲は、例えば±5MHz~±50MHz範囲であり、この範囲は、インダクタンス成分L1とキャパシタンス成分C1による共振回路のQ値により異なる。LC並列共振によるフィルタは共振回路の一例であり、この共振回路の共振周波数を車両において低減したいノイズの周波数となるようにしてもよい。
【0025】
図3Aは、電気接続箱1Aのd1を157mmとし、d2を150mmとしたときのノイズレベルとノイズ周波数との関係を示したグラフであり、図3Bは、電気接続箱1Aのd1を357mmとし、d2を150mmとしたときのノイズレベルとノイズ周波数との関係を示したグラフである。図3Aにおいては、共振点の670MHzの前後にてノイズレベルが低下している。即ち、670MHzを含む周波数帯域のノイズを低減させることができる。これに対し、d1を357mmとした電気接続箱1Aでは、d1が長くなることによりインダクタンス成分L1が大きくなるため、共振周波数が下がり、図3Bに示すように、共振点の264MHzの前後にてノイズレベルが低下している。即ち、d1を変えただけで、低減されるノイズの周波数帯が変わり、264MHzを含む周波数帯域のノイズを低減させることができる。
【0026】
なお、例えば、第1電線21及び第2電線22と筐体11Aとの間の空気の比透磁率を1、比誘電率を1、d2を250mm、第1電線21及び第2電線22において筐体11Aに対向する面積を長さ1mmあたり10mmとした場合を想定すると、例えば、車両の二次電池へのワイヤレス給電によるノイズ、電源電圧の変動によるノイズ、インバータが発するノイズなど、ノイズの周波数が100Hz~10MHzの範囲内である場合、第2電線22の長さを770mm以上とし、インダクタンス成分L1とキャパシタンス成分C1の積を2.5×10-6~2.5×10-16とすると、これらのノイズを低減させることができる。また、車両の補機用のブラシ付きモータのノイズ、点火ノイズ、車両に搭載された無線機器が発するノイズなど、ノイズの周波数が10MHz~100MHzの範囲内である場合、第1電線21及び第2電線22の長さを170mm以上とし、インダクタンス成分L1とキャパシタンス成分C1の積を2.5×10-16~2.5×10-18とすると、これらのノイズを低減させることができる。また、車両の制御のために車両に搭載されるマイクロコンピュータのクロックによるノイズや、車両に搭載された無線機器が発するノイズなど、ノイズの周波数が100MHz~1GHzの範囲内である場合、第1電線21及び第2電線22の長さを31mm以上とし、インダクタンス成分L1とキャパシタンス成分C1の積を2.5×10-18~2.5×10-20とすると、これらのノイズを低減させることができる。
【0027】
このように、本実施形態によれば、インダクタンス成分L1とキャパシタンス成分C1で構成される共振回路において、特定の周波数のノイズに対応してd1とd2を調整することにより、共振周波数をノイズの周波数に合わせて車両内のノイズを低減させることができる。また、本実施形態によれば、電気部品を用いたフィルタ回路やフェライトなどのノイズ対策用の回路や部品を用いることなく、配索に用いる部品だけで車両内のノイズを低減させることができる。
【0028】
[第2実施形態]
図4Aは、本発明の第2実施形態に係る電気接続箱1Bを+Z方向から見た模式図であり、図4Bは、図4AのB-B線断面図である。なお、以下の説明においては、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。電気接続箱1Bは、筐体11B、筐体11Bに取り付けられたコネクタ31、32、第1バスバー23A、及び第2バスバー24Aを備えている。
【0029】
筐体11Bは、導電性を有する金属製の筐体であり、中空の箱型の形状に形成されている。筐体11Bは、車両のボディBに電気的且つ機械的に接続するための接地部12を下端に備えている。なお、図4A、及び図4Bでは図示を省略しているが、筐体11Bの+Z方向側は、図示省略した蓋により塞がれる。
【0030】
第1バスバー23A、及び第2バスバー24Aは、導電性を有する金属の板材を曲げ加工してループ状に形成されており、Y軸方向に沿った部分をX軸方向の両端に有している。第1バスバー23Aは、コネクタ31とコネクタ32に接続され、コネクタ31側においては、コネクタ31が備える端子であって、ケーブルを介して二次電池の正極に電気的に接続される端子に接続されている。第2バスバー24Aは、コネクタ31とコネクタ32に接続され、コネクタ31側においては、コネクタ31が備える端子であって、ケーブルを介して二次電池の負極に電気的に接続される端子に接続されている。第1バスバー23A、及び第2バスバー24Aは、本発明に係る線路の一例である。第1バスバー23A、及び第2バスバー24Aは、コネクタ31及びコネクタ32に接続された状態で自重によって変形しない剛性を備えている。
【0031】
電気接続箱1Bにおいては、図4Bに示すように、第1バスバー23A及び第2バスバー24Aでインダクタンス成分L2が形成され、第1バスバー23A及び第2バスバー24Aと筐体11Bとの間でキャパシタンス成分C2が形成されることにより、LC並列共振によるフィルタが形成される。このフィルタの共振周波数は、インダクタンス成分L2とキャパシタンス成分C2により定まる。コネクタ31とコネクタ32とを接続する導体を電線に替えてバスバーとすることで、インダクタンス成分L2及びキャパシタンス成分C2を大きくし、共振周波数を低くすることができ、低い周波数のノイズレベルを低減させることができる。
【0032】
図5は、電気接続箱1Bを用いた場合のノイズレベルとノイズ周波数との関係を示したグラフである。電線に替えてバスバーを用いることで電線よりインダクタンス成分とキャパシタンス成分が大きくなるため、共振周波数が低くなり、図5においては、第1実施形態より低い共振点の110MHzにてノイズレベルが低下している。
【0033】
また、電気接続箱1Bにおいては、第1バスバー23A及び第2バスバー24Aの長さによりインダクタンス成分L2が定まり、筐体11Bの底面から第1バスバー23A及び第2バスバー24Aまでの距離によりキャパシタンス成分C2が定まることから、第1バスバー23Aの長さと、筐体11Bの底面から第1バスバー23Aまでの距離を変えることにより共振周波数を調整し、共振周波数を車両内で低減させたいノイズの周波数に合わせることにより、車両内のノイズを低減させることができる。
【0034】
[第3実施形態]
図6Aは、本発明の第3実施形態に係る電気接続箱1Cを+Z方向から見た模式図であり、図6Bは、図6AのC-C線断面図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。電気接続箱1Cは、筐体11C、筐体11Cに取り付けられたコネクタ31、32、33、第1バスバー23B、23C、第2バスバー24B、24C、樹脂成型品41、監視装置51、第1調整部81、及び第2調整部91、92を備えている。
【0035】
筐体11Cは、導電性を有する金属製の筐体であり、中空の箱型の形状に形成されている。筐体11Cは、車両のボディBに電気的且つ機械的に接続するための接地部12を下端に備えている。なお、図6A、及び図6Bでは図示を省略しているが、筐体11Cの+Z方向側は、図示省略した蓋により塞がれる。
【0036】
コネクタ31は、筐体11Cの-Y方向側に下端から所定の高さの位置に設けられている。コネクタ31は、例えば車両に搭載された二次電池が供給する電力を分配する他の電気接続箱へ図示省略したケーブルによって電気的に接続される。コネクタ32は、筐体11Cの-Y方向側にコネクタ31と同じ高さの位置に設けられている。コネクタ32は、例えば電動モータを駆動するためのインバータへ図示省略したケーブルによって電気的に接続される。コネクタ33は、筐体11Cの-Y方向側にコネクタ31と同じ高さの位置に設けられている。コネクタ33は、例えば二次電池を充電する充電器からの電力を中継する他の電気接続箱へ図示省略したケーブルによって電気的に接続される。
【0037】
第1バスバー23B及び第2バスバー24Bは、導電性を有する帯状の金属の板材を曲げ加工して形成されている。第1バスバー23Bは、コネクタ31、コネクタ32、及び第1リレー61に接続され、コネクタ31側においては、コネクタ31が備える端子であって、ケーブルを介して二次電池の正極に電気的に接続される端子に接続されている。第2バスバー24Bは、コネクタ31、コネクタ32、及び第2リレー62に接続され、コネクタ32側においては、コネクタ32が備える端子であって、ケーブルを介して二次電池の負極に電気的に接続される端子に接続されている。
【0038】
第1バスバー23Cは、導電性を有する帯状の金属の板材である。第1バスバー23Cは、第1リレー61とコネクタ33に接続されている。第2バスバー24Cは、導電性を有する金属の板材である。第2バスバー24Cは、第2リレー62とコネクタ33に接続されている。
【0039】
第1リレー61は、所謂電磁リレーであり、第1バスバー23Bと第1バスバー23Cとが電気的に接続された状態と未接続な状態とを外部からの信号により切り替える。第2リレー62は、所謂電磁リレーであり、第2バスバー24Bと第2バスバー24Cとが電気的に接続された状態と未接続な状態とを外部からの信号により切り替える。
【0040】
樹脂成型品41は、第1バスバー23B、23C、第2バスバー24B、24C、第1リレー61、及び第2リレー62を保持するものであり、例えば絶縁性を有する合成樹脂で形成されている。樹脂成型品41は、第1バスバー23B、23Cの-Z方向側の面、及び第2バスバー24B、24Cの-Z方向側の面に接して第1バスバー23B、23C、及び第2バスバー24B、24Cを保持する。樹脂成型品41の-Z方向側の面は、監視装置51の+Z方向側の面に接しており、樹脂成型品41は監視装置51により支持される。
【0041】
監視装置51は、車両に搭載された二次電池の状態を監視する装置である。監視装置51は、金属製の筐体の内部に二次電池の状態を監視する回路を有している。監視装置51は、-Z方向側の面を第2調整部91、92により支持されている。第2調整部91、92は、監視装置51を支持し、監視装置51の-Z方向側に空間を確保するものである。第2調整部91、92は、金属製で中空の箱型に形成されており、第1調整部81と監視装置51との間に配置されている。第1調整部81は、例えば金属製であり、中空の箱型の形状に形成されている。第1調整部81は、第2調整部91、92と筐体11Cとの間に設けられ、監視装置51及び樹脂成型品41の+Z方向の位置を調整する。
【0042】
電気接続箱1Cにおいては、図6Bに示すように、第1バスバー23B及び第2バスバー24Bによりインダクタンス成分L3が形成される。また、電気接続箱1Cにおいては、図6Bに示すように、第1バスバー23B及び第2バスバー24Bと監視装置51との間でキャパシタンス成分C3が形成され、監視装置51と筐体11Cとの間でキャパシタンス成分C4が形成される。また、電気接続箱1Cにおいては、電磁リレーである第1リレー61及び第2リレー62が備える磁性体がインダクタンス成分L4として機能し、第1バスバー23C及び第2バスバー24Cと筐体11Cとの間でキャパシタンス成分C5が形成される。
【0043】
前述のインダクタンス成分L3、L4、及びキャパシタンス成分C3、C4、C5によりフィルタが形成される。第1バスバー23B及び第2バスバー24Bの長さによりインダクタンス成分L3が定まり、第1バスバー23C及び第2バスバー24Cの長さと第1リレー61及び第2リレー62が備える磁性体によりインダクタンス成分L4が定まる。また、第1バスバー23B、及び第2バスバー24Bから監視装置51までの距離によりキャパシタンス成分C3が定まり、監視装置51と筐体11Cの底面までの距離によりキャパシタンス成分C4が定まり、第1バスバー23C、及び第2バスバー24Cと筐体11Cの底面までの距離によりキャパシタンス成分C5が定まる。よって、これらの長さ及び距離を変えることによりフィルタの共振周波数を調整し、共振周波数と同じ周波数のノイズを低減することができる。なお、第3実施形態で形成されるインダクタンス成分は、Q値の低減にも寄与する。
【0044】
図7は、電気接続箱1Cを用いた場合のノイズレベルとノイズ周波数との関係を示したグラフである。第1バスバー23B、23Cの長さ、第2バスバー24B、24Cの長さ、バスバーから筐体11Cの底面までの距離、バスバーから監視装置51までの距離、監視装置51から筐体11Cの底面までの距離により、インダクタンス成分とキャパシタンス成分が大きくなるため、共振周波数が低くなり、図7においては、第1実施形態より低い共振点の197MHzにてノイズレベルが低下している。
【0045】
[第4実施形態]
図8Aは、本発明の第4実施形態に係る電気接続箱1Dを+Z方向から見た模式図であり、図8Bは、図8AのD-D線断面図である。なお、第3実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
電気接続箱1Dは、第3実施形態の電気接続箱1Cに対して、電流センサ71、第3電線72、基板73、コネクタ74を備えている点で相違する。電流センサ71は、第1バスバー23Bを流れる電流の電流値を測定するセンサである。基板73は、抵抗器であるチップ抵抗を有する基板であり、筐体11Cの内面に取り付けられている。チップ抵抗の抵抗値は、例えば数十Ω~数kΩである。第3電線72は、電流センサ71の筐体と基板73が有するチップ抵抗とを接続し、電流センサ71の筐体とコネクタ74とを接続する電線である。コネクタ74は、第3電線72を監視装置51の筐体に接続する。
【0047】
電気接続箱1Dにおいては、図8Bに示すように、電流センサ71によってインダクタンス成分L5が形成され、第3電線72によってインダクタンス成分L6が形成される。また、電流センサ71と監視装置51との間でキャパシタンス成分C6が形成され、電流センサ71より-Z方向で監視装置51と筐体11Cの底面との間でキャパシタンス成分C7が形成される。また、第3電線72と監視装置51との間でキャパシタンス成分C8が形成され、第3電線72より-Z方向で監視装置51と筐体11Cの底面との間でキャパシタンス成分C9が形成される。また、第3電線72と基板73との間で抵抗成分R1が形成される。前述のインダクタンス成分L5、L6、キャパシタンス成分C6、C7、C8、C9、及び抵抗成分R1により、共振回路が形成される。
【0048】
第3電線72の長さを変えることによりインダクタンス成分を変え、電流センサ71及び第3電線72から監視装置51までの距離と、監視装置51から筐体11Cの底面までの距離を変えてキャパシタンス成分を変えることにより、共振周波数を調整し、共振周波数と同じ周波数のノイズを低減することができる。
【0049】
[第5実施形態]
図10Aは、本発明の第5実施形態に係る電気接続箱1Eを+Z方向から見た模式図であり、図10Bは、図10AのE-E線断面図である。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0050】
電気接続箱1Eは、筐体11Aに替えて筐体11Eを備えている。筐体11Eは、Z軸方向の高さが筐体11Aより低くなっている。筐体11Eは、導電性を有する金属製の筐体であり、中空の箱型の形状に形成されている。筐体11Eは、車両のボディBに電気的且つ機械的に接続するための接地部12を下端に備えている。なお、図10A、及び図10Bでは図示を省略しているが、筐体11Eの+Z方向側は、図示省略した蓋により塞がれる。
【0051】
また、電気接続箱1Eは、第1電線21に替えて第1バスバー23Dを有し、第2電線22に替えて第2バスバー24Dを有している。第1バスバー23Dは、コネクタ31とコネクタ32に接続され、コネクタ31側においては、コネクタ31が備える端子であって、ケーブルを介して二次電池の正極に電気的に接続される端子に接続されている。第2バスバー24Dは、コネクタ31とコネクタ32に接続され、コネクタ31側においては、コネクタ31が備える端子であって、ケーブルを介して二次電池の負極に電気的に接続される端子に接続されている。
【0052】
また、電気接続箱1Eは、第1バスバー23D及び第2バスバー24に接する樹脂層101を有している。樹脂層101は、絶縁性を有する板状の合成樹脂であり、+Z方向側の面が第1バスバー23D、および第2バスバー24Dの-Z方向側の面に接している。樹脂層101の-Z方向側の面は、筐体11Aの底部の+Z方向側の面に接している。
【0053】
電気接続箱1Eにおいては、第1バスバー23D及び第2バスバー24Dでインダクタンス成分が形成され、第1バスバー23D及び第2バスバー24Dと筐体11Aとの間でキャパシタンス成分が形成されることにより、LC並列共振によるフィルタが形成される。電気接続箱1Eでは、第1バスバー23D、及び第2バスバー24Dと、筐体11Aとの間に合成樹脂で形成された樹脂層101があるため、キャパシタンス成分が大きくなり、共振周波数を下げて低い周波数のノイズレベルを低減させることができる。
【0054】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0055】
本発明においては、第1電線21と第2電線22は、複数の素線210を撚って形成された導体21aを備えているが、導体21aに替えて単線の導体を用いてもよい。この単線の導体は、コネクタ31とコネクタ32に接続されている状態で自重により変形しない剛性を備えているのが好ましい。
【0056】
本発明においては、第1実施形態から第5実施形態に係る電気接続箱は、インターロックに係る電線とコネクタとを備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1A、1B、1C、1D、1E 電気接続箱
11A、11B、11C、11E 筐体
12 接地部
21 第1電線
22 第2電線
23A、23B、23C、23D 第1バスバー
24A、24B、24C、24D 第2バスバー
31、32、33 コネクタ
41 樹脂成型品
51 監視装置
61 第1リレー
62 第2リレー
71 電流センサ
72 第3電線
73 基板
81 第1調整部
91、92 第2調整部
101 樹脂層
L1~L6 インダクタンス成分
C1~C9 キャパシタンス成分
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B