(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136221
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ブレ補正装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20240927BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20240927BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240927BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B17/55
H04N23/50
H04N23/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047258
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 卓朗
(72)【発明者】
【氏名】粟津 亘平
【テーマコード(参考)】
2H104
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H104CC06
2K005CA02
2K005CA24
2K005CA32
2K005CA44
2K005CA53
5C122EA41
5C122GE11
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】 可動部の動きをメカニカルに抑制し、可動部の熱を効率的に放熱することができるブレ補正装置及び撮像装置を提供すること。
【解決手段】 ブレ補正装置100は、撮像素子16を保持する可動部101と、撮像素子16の光軸に交差する平面内で可動部を移動可能に支持する固定部111と、固定部111に接続された第1部材の第1領域を、可動部の第2部材に押圧して、可動部101の動きを抑制するロック機構201と、を有し、押圧により、第2部材から第1領域を介し、第1部材の第1領域とは異なる第2領域から固定部111へ可動部101の熱が伝導される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を保持する可動部と、
前記撮像素子の光軸に交差する平面内で前記可動部を移動可能に支持する固定部と、
前記固定部に接続された第1部材の第1領域を、前記可動部の第2部材に押圧して、前記可動部の動きを抑制するロック機構と、を有し、
前記押圧により、前記第2部材から前記第1領域を介し、前記第1部材の前記第1領域とは異なる第2領域から前記固定部へ前記可動部の熱が伝導される、
ブレ補正装置。
【請求項2】
前記第1領域および前記第2領域は、それぞれ前記第1部材の端部の領域である、請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項3】
前記可動部の熱は、前記撮像素子の作動によって発生する熱である、請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項4】
前記第1部材は、弾性変形可能な部材であり、
前記ロック機構が作動した場合には、前記第1部材は弾性変形して前記第2部材を押圧する請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記光軸に交差する平面に沿って移動可能な斜面を有する操作部材を含み、
前記第1部材は、前記斜面を摺動する凸部を有し、
前記凸部が前記斜面を摺動して前記第1部材を押し上げて、前記第1領域が前記第2部材を押圧する請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項6】
前記凸部は、前記光軸に沿った方向に突出する請求項5に記載のブレ補正装置。
【請求項7】
前記操作部材は、モータと複数の歯車とで構成される駆動部により移動させられ、
前記複数の歯車の一部は、ウォーム歯車で構成される請求項5又は6に記載のブレ補正装置。
【請求項8】
前記ロック機構は、前記可動部を規定位置でロックする、請求項1記載のブレ補正装置。
【請求項9】
前記規定位置は、光学部材の軸と前記光軸とを合わせた状態で、前記第2部材を押圧する位置である請求項8に記載のブレ補正装置。
【請求項10】
前記可動部は、前記固定部側に付勢され、前記固定部との間に少なくとも3つのボールを、ボール受け面を介して把持し、
前記第2部材が押圧された場合の前記第2部材に作用する力の重心は、前記ボール受け面で形成される三角形の領域内に位置する請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項11】
前記第1領域には、表面に複数の凹凸形状を有する弾性部材が配置され、前記第2部材の押圧は前記弾性部材を介して行われる請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項12】
前記第2部材の前記第1領域と接触する領域には、表面に複数の凹凸形状を有する弾性部材が配置され、前記第2部材の押圧は前記弾性部材を介して行われる請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項13】
前記第1領域の少なくとも一部には、放熱ゲルが配置される請求項1に記載のブレ補正装置。
【請求項14】
請求項1に記載のブレ補正装置を搭載する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレ補正装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮像素子(イメージセンサ)に手ブレ等に起因したブレを抑制するブレ補正装置を取り付けたカメラ(撮像装置)の技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、撮像素子を保持し、光軸に対して垂直な方向に移動可能な可動部と、前面側プレートと背面側プレートとから構成される固定部とで構成されるブレ補正装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の技術にかかる一つの実施形態は、可動部の動きをメカニカルに抑制し、可動部の熱を効率的に放熱することができるブレ補正装置及び撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様であるブレ補正装置は、撮像素子を保持する可動部と、撮像素子の光軸に交差する平面内で可動部を移動可能に支持する固定部と、固定部に接続された第1部材の第1領域を、可動部の第2部材に押圧して、可動部の動きを抑制するロック機構と、を有し、押圧により、第2部材から第1領域を介し、第1部材の第1領域とは異なる第2領域から固定部へ可動部の熱が伝導される。
【0007】
本発明の第2の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第1の態様において、第1領域及び第2領域は、それぞれ第1部材の端部の領域である。
【0008】
本発明の第3の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第1の態様において、可動部の熱は、撮像素子の作動によって発生する熱である。
【0009】
本発明の第4の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第1の態様において、第1部材は、弾性変形可能な部材であり、ロック機構が作動した場合には、第1部材は弾性変形して第2部材を押圧する。
【0010】
本発明の第5の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第1の態様において、ロック機構は、光軸に交差する平面に沿って移動可能な斜面を有する操作部材を含み、第1部材は、斜面を摺動する凸部を有し、凸部が斜面を摺動して第1部材を押し上げて、第1領域が第2部材を押圧する。
【0011】
本発明の第6の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第5の態様において、凸部は、光軸に沿った方向に突出する。
【0012】
本発明の第7の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第5の態様又は第6の態様において、操作部材は、モータと複数の歯車とで構成される駆動部により移動させられ、複数の歯車の一部は、ウォーム歯車で構成される。
【0013】
本発明の第8の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第1の態様において、ロック機構は、可動部を規定位置でロックする。
【0014】
本発明の第9の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第8の態様において、規定位置は、光学部材の軸と光軸とを合わせた状態で、第2部材を押圧する位置である。
【0015】
本発明の第10の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第1の態様において、可動部は、固定部側に付勢され、固定部との間に少なくとも3つのボールを、ボール受け面を介して把持し、第2部材が押圧された場合の第2部材に作用する力の重心は、ボール受け面で形成される三角形の領域内に位置する。
【0016】
本発明の第11の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第1の態様において、第1領域には、表面に複数の凹凸形状を有する弾性部材が配置され、第2部材の押圧は弾性部材を介して行われる。
【0017】
本発明の第12の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第1の態様において、第2部材の第1領域と接触する領域には、表面に複数の凹凸形状を有する弾性部材が配置され、第2部材の押圧は弾性部材を介して行われる。
【0018】
本発明の第13の態様であるブレ補正装置は、好ましくは第1の態様において、第1領域の少なくとも一部には、放熱ゲルが配置される。
【0019】
本発明の第14の態様である撮像装置は、好ましくは第1の態様のブレ補正装置を搭載する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図2は、撮像装置の内部構成の実施形態を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、ロック駆動部及びロック操作部に関して説明する図である。
【
図7】
図7は、ロック駆動部及びロック操作部に関して説明する図である。
【
図9】
図9は、
図8のS-Sでの断面図の一部を示す図である。
【
図14】
図14は、ブレ補正装置において形成される放熱経路に関して説明する図である。
【
図15】
図15は、ブレ補正装置の放熱経路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面にしたがって本発明にかかるブレ補正装置及び撮像装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0022】
<撮像装置>
先ず、撮像装置10に関して説明する。本開示の撮像装置10は、手ブレなどのブレにより、得られる画像における像ブレを抑制するブレ補正装置100を搭載する。なお、ブレ補正装置100は、ボディ内手ブレ補正タイプ(BIS:Body image Stabilization)である。
【0023】
図1は、本発明のブレ補正装置100を搭載する撮像装置10の内部の概略図である。
【0024】
撮像装置10は、レンズ交換式のカメラであり、撮像装置本体2にアダプタ6を介して、撮影レンズ装置12を装着する。撮影レンズ装置12は、絞り8、レンズ群12A及び12Bを備える。光軸Lを有する撮影レンズ装置12は、被写体1で反射した光を結像させる。撮像装置本体2は接眼部4を備え、撮影者は、被写体1を撮影する場合には、接眼部4に接眼して被写体1の撮影を行う。
【0025】
撮像素子16は、撮像装置本体2の光軸Lに垂直に交わる2つの方向(X方向とY方向)とで構成される平面(X-Y平面)に沿って受光面(撮像面)が配置されている。撮像素子16は、ブレ補正装置100に保持されている。また、ブレ補正装置100に含まれる駆動部58が制御部40に制御されることにより、ブレ補正機能が実現される。また、ブレ補正装置100は、ロック機構201を有しており、例えば撮像装置10の電源がOFFの場合にはロック機構201が作動し、撮像素子16の移動を抑制する。これにより、電源OFFにしての撮像装置10の輸送時に可動部101の移動による衝撃が抑制され、信頼性を向上することができる。また、ロック機構201は、撮像素子16を保持する可動部101(
図5)を規定位置でロックする。ここで、規定位置とは、光学部材の軸と撮像素子の光軸を合わせた位置を意味する。光学部材の軸とは、レンズ群12A及び12Bの内径における中心軸又はアダプタ6(ボディマウントリング)の中心軸のことである。また、撮像素子16の光軸とは、撮像素子16の受光面の中心軸のことである。したがって、ロック機構201は、ロック状態の場合には、撮像素子16の中心軸と光学部材の軸とを合わせた位置で可動部101をロックする。これにより、ライブビュー画像を再生している間にロック機構201をロック状態にすることにより、撮像素子16を中心(規定位置)に保持するためのボイスコイルモータの電力を削減することができ、バッテリー消費を低減することができる。ロック機構201の制御は、制御部40で行われる。なお、制御部40は、FPC135(Flexible printed circuits:フレキシブルプリント回路基板)(
図4参照)により撮像素子16、駆動部58に接続されており、電気的な信号を送受信している。
【0026】
図2は、撮像装置10の内部構成の実施形態を示すブロック図である。この撮像装置10は、撮像した画像をメモリカード54に記録するもので、装置全体の動作は、制御部40(中央処理装置:CPU:Central Processing Unit)によって統括制御される。
【0027】
撮像装置10には、シャッタボタン、電源/モードスイッチ、モードダイヤル、十字操作ボタン、等の操作部38が設けられている。この操作部38からの信号(指令)は制御部40に入力され、制御部40は入力信号に基づいて撮像装置10の各回路を制御し、撮像素子16の駆動制御、レンズ駆動制御、絞り駆動制御、撮像動作制御、画像処理制御、画像データの記録/再生制御、及び、画像モニタ30の表示制御などを行う。
【0028】
撮影レンズ装置12を通過した光束は、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型のカラーイメージセンサである撮像素子16に結像される。なお、撮像素子16は、CMOS型に限らず、CCD(Charge Coupled Device)型、又は有機撮像素子など他の形式のイメージセンサが用いられてもよい。
【0029】
撮像素子16は、多数の受光素子(例えばフォトダイオード)が2次元配列されており、各受光素子の受光面に結像された被写体像は、その入射光量に応じた量の信号電圧(又は電荷)に変換(光電変換)され、撮像素子16内のA/D(Analog/Digital)変換器を介してデジタル信号に変換されて出力される。
【0030】
動画又は静止画の撮影時に撮像素子16から読み出された画像信号(画像データ)は、画像入力コントローラ22を介してメモリ(SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory))48に一時的に記憶される。
【0031】
また、フラッシュメモリ(Flash Memory)47は、カメラ制御プログラム、画像処理等に使用する各種のパラメータが記憶されている。
【0032】
ブレセンサ66は、撮像装置10の姿勢情報及び姿勢変化情報を検出する。ブレセンサ66は、例えばジャイロセンサで構成される。ブレセンサ66は、縦方向の手ブレ量と横方向の手ブレ量を検出するために例えば2つのジャイロセンサで構成され、検出された手ブレ量(角速度)は制御部40に入力される。また、ブレセンサ66は、後で説明するホールセンサ166a~166c(例えば
図17)を含む。制御部40は、ホールセンサ166a~166cにより、可動部101の移動量を取得して、その移動量に応じて駆動部58を制御する。すなわち、制御部40は、駆動部58を制御して、手ブレに応じた被写体像の移動をキャンセルするように撮像素子16を移動させる。これにより、ブレ補正装置100におけるブレ補正が行われる。
【0033】
駆動部58は、制御部40からの電気信号(駆動信号)により可動部101を移動させるアクチュエータにより構成される。アクチュエータの具体例として、ボイスコイルモータ(Voice Coil Motor)が挙げられる。駆動部58は、制御部40から入力される電気信号に応じて、可動部101を光軸Lに対して垂直なX-Y平面で移動させる。
【0034】
ロック機構201は、制御部40で制御され、ロック状態とアンロック状態とが切り替えられる。ロック状態の場合には、ブレ補正装置100の可動部101(
図3)の動きが抑制され、アンロック状態の場合には、可動部101は自在に動くことが可能となる。
【0035】
画像処理部24は、動画又は静止画の撮影時に画像入力コントローラ22を介して取得され、メモリ48に一時的に記憶された未処理の画像データを読み出す。画像処理部24は、読み出した画像データに対してオフセット処理、画素補間処理(位相差検出用画素、欠陥画素等の補間処理)、ホワイトバランス補正、感度補正を含むゲインコントロール処理、ガンマ補正処理、同時化処理(「デモザイク処理」ともいう)、輝度及び色差信号生成処理、輪郭強調処理、及び色補正等を行う。画像処理部24により処理された画像データであって、ライブビュー画像として処理された画像データは、VRAM(Video RAM Random access memory)50に入力される。
【0036】
VRAM50から読み出された画像データは、ビデオエンコーダ28においてエンコーディングされ、カメラ背面に設けられている画像モニタ30に出力される。これにより、被写体像を示すライブビュー画像が画像モニタ30に表示される。
【0037】
画像処理部24により処理された画像データであって、記録用の静止画又は動画として処理された画像データ(輝度データ(Y)及び色差データ(Cb),(Cr))は、再びメモリ48に記憶される。
【0038】
圧縮伸張処理部26は、静止画又は動画の記録時に、画像処理部24により処理され、メモリ48に格納された輝度データ(Y)及び色差データ(Cb),(Cr)に対して圧縮処理を施す。圧縮された圧縮画像データは、メディアコントローラ52を介してメモリカード54に記録される。
【0039】
また、圧縮伸張処理部26は、再生モード時にメディアコントローラ52を介してメモリカード54から得た圧縮画像データに対して伸張処理を施す。メディアコントローラ52は、メモリカード54に対する圧縮画像データの記録及び読み出しなどを行う。
【0040】
上記実施形態において、各種の処理を実行する処理部(制御部40等)(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0041】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0042】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0043】
<ブレ補正装置>
次に、ブレ補正装置100に関して説明をする。
【0044】
図3及び
図4は、ブレ補正装置100の斜視図である。
図3は正面斜視図であり、
図4は背面斜視図である。なお、以下の説明では、正面とは、プラスZ軸側(被写体側)から見た面であり、背面とはマイナスZ軸側(撮影者側)から見た面である。また、Z軸は光軸L(
図1及び
図2参照)に平行である。
【0045】
ブレ補正装置100は、撮像装置本体2に固定される固定部111、撮像素子16を保持する可動部101、及び可動部101の移動をメカニカルに抑制するロック機構201で構成される。
【0046】
固定部111は、対向ヨーク103及びベースプレート105から構成される。ベースプレート105と対向ヨーク103とは、光軸L方向に対向し離間して配置される。ベースプレート105と対向ヨーク103との間には、可動部101が配置されている。固定部111は、可動部101を撮像素子16の光軸Lに交差する平面(例えばX-Y平面)内で移動可能に支持する。
【0047】
ロック機構201は、メカニカルな方法で可動部101の移動を抑制する。ロック機構201は、固定部111を構成するベースプレート105の背面に取り付けられている。
【0048】
ロック機構201は、ロック駆動部121、ロック操作部159(
図6及び
図7参照)、及び接触部163(
図10参照)で構成される。
【0049】
ロック駆動部121は、DCモータ131と複数の歯車で構成される。
【0050】
DCモータ131は、アクチュエータの具体例であり、ロック機構201の駆動力源である。複数の歯車は、DCモータ131の駆動力をロック操作部159に伝える。
【0051】
本例のロック機構201では、ねじ歯車(ウォーム:ウォーム歯車)127、第1歯車123、及び第2歯車125で構成される複数の歯車で、ロック駆動部121の一部が構成される。なお、ロック駆動部121を構成する複数の歯車は本例の態様に限定されない。複数の歯車は、DCモータ131の駆動力をロック操作部159に伝えることができれば様々な態様を採用することができる。
【0052】
ロック操作部159は、ロックレバー(操作部材)151及び位置検出センサ155で構成される(
図6及び
図7参照)。
【0053】
接触部163は、固定部放熱板金(第1部材)185及び可動部放熱板金(第2部材)177で構成される(
図10参照)。
【0054】
可動部101は、撮像素子16を保持する。また、可動部101は、固定部111により支持され、X-Y平面を自在に移動可能である。
【0055】
【0056】
可動部101は、可動部枠部材171を有する。可動部枠部材171は、撮像素子16、及びコイル173a~173cを保持する。コイル173a~173cは、固定部111のベースプレート105に配置されるマグネット(不図示)と共にボイスコイルモータを構成する。ボイスコイルモータは、駆動部58(
図1)の具体例の一つである。また、コイル173a~173cの内側には、位置検出用のホール素子166a~166c(
図17も参照)と温度センサ68として機能するサーミスタ168a~168c(
図17も参照)が配置される。なお、
図5では、コイル173bのホール素子166bとサーミスタ168bのみ示し、コイル173aのホール素子166aとサーミスタ168a、及びコイル173cのホール素子166cとサーミスタ168cは省略されている。ブレ補正装置100において、撮像素子16、及びコイル173a~173cは、作動している間は発熱源となる。そこで、ブレ補正装置100のロック機構201は、可動部101の移動を抑制している間は、この可動部101の熱を固定部111へ放熱する放熱経路Qを形成する(
図14参照)。なお、ロック機構201に形成される放熱経路Qに関しては、後で説明をする。
【0057】
可動部枠部材171は、柱状の突起部179を上部(Y軸プラス側)に有する。突起部179は、ベースプレート105の開口105a(
図6及び
図7参照)を貫通し、ベースプレート105を挟むように、ベースプレート105の背面側で可動部放熱板金177を保持する。また、可動部枠部材171は、ボール受け面175a~175cを備える。ボール受け面175a~175cは、固定部111のベースプレート105との間で3つのボール(不図示)を把持する。また、可動部枠部材171は、ベースプレート105に対して、マグネット(不図示)による吸着力又はバネ(不図示)による弾性力によって付勢される。そして、可動部枠部材171とベースプレート105との間で3つのボールが転動することにより、可動部枠部材171は、X-Y平面を移動することが可能となる。
【0058】
<ロック機構>
次に、ロック機構201に関して、詳しい説明を行う。ロック機構201は、「1.ロック駆動部121及びロック操作部159の動作」、「2.接触部163の動作」、「3.放熱経路の形成」の順に説明する。
【0059】
1.ロック駆動部及びロック操作部の動作
ロック駆動部121は、DCモータ131と複数の歯車で構成され、DCモータ131の駆動力をロック操作部159に伝える。ロック操作部159は、ロックレバー151及び位置検出センサ155で構成され、接触部163で固定部放熱板金185と可動部放熱板金177との接触/非接触の切り替え操作を行う。
【0060】
図6及び
図7は、ロック駆動部121及びロック操作部159に関して説明する図である。
図6及び
図7は、ブレ補正装置100の背面図であり、ベースプレート105の背面に設けられたロック駆動部121及びロック操作部159が示されている。なお、
図6に示した場合は、ロックレバー151は右端(マイナスX側)に移動しており、アンロック状態である。一方、
図7に示した場合は、ロックレバー151は左端(プラスX側)に移動しており、可動部101のロック状態である。
【0061】
DCモータ131の先端に設けられたねじ歯車127は、DCモータ131により正回転又は逆回転させられる。このDCモータ131の正回転又は逆回転により、ロック機構201のロック状態とアンロック状態との切り替えが行われる。
【0062】
第1歯車123は、2段歯車であり、1段目(大径歯車)に斜歯歯車(ウォームホイール)123aである。斜歯歯車123aはねじ歯車127と噛み合い、斜歯歯車123a及びねじ歯車127はウォームギアを形成している。ここで、以下に説明するように、ロックレバー151の駆動はウォームギアを介して行われるため、ロック状態とアンロック状態の切り替え動作終了後は、ロック状態又はアンロック状態は自己保持される。
【0063】
また、第1歯車123の2段目(小径歯車)の歯車123bは、第2歯車の1段目(大径歯車)の歯車125aと噛み合っている。また、第2歯車の2段目(小径歯車:ピニオン)の歯車(不図示)は、ロックレバー151に形成されるラック151aと噛み合っている。これにより、第2歯車の2段目(小径歯車:ピニオン)の歯車とラック151aとは、ラックアンドピニオンを形成し、第2歯車125の回転力をロックレバー151のX軸に平行な直線の動きに変換する。これにより、ロックレバー151は、DCモータ131の順回転及び逆回転に応じて、X軸のプラス方向(アンロック状態:
図6)及びX軸のマイナス方向(ロック状態:
図7)に移動することができる。なお、ロック操作部159には、位置検出センサ155が設けられており、ロックレバー151に形成され、ロックレバー151と共に移動する目印部157の位置を位置検出センサ155で検出することにより、ロックレバー151の位置が検出される。
【0064】
また、ロックレバー151には、Z軸マイナス側に上がる斜面で構成される楔形状部153が形成されている。楔形状部153は、ロックレバー151が移動することにより、合わせて移動する。この楔形状部153は、固定部放熱板金185を光軸Lの撮影者側に押し上げて可動部放熱板金177に接触させる。なお、ロック状態の場合には、固定部放熱板金185とロックレバー151とで摩擦保持を行うため、ロックレバー151は樹脂成形部品などで構成することが望ましい。これは、ロックレバー151を金属で構成した場合には、ロックレバー151と固定部放熱板金185の接触は金属同士の接触となり、摩擦力の低下、摺動による発塵、などの問題が生じる可能性があるからである。
【0065】
2.接触部の動作
接触部163は、固定部放熱板金185及び可動部放熱板金177で構成され、可動部101の移動を、固定部放熱板金185と可動部放熱板金177とが接触することにより抑制する。
【0066】
図8及び
図9は、接触部163に関して説明する図である。
図8は、ブレ補正装置100の背面図であり、
図9は、
図8のS-Sでの断面図の一部を示す図である。なお、
図9では固定部放熱板金185とロックレバー151の楔形状部153との接触部分を主に示し、他の部分の図示は省略されている。
【0067】
図9に示すように、ロックレバー151は、ベースプレート105に摺動面151bを介して接している。したがって、ロックレバー151は、ベースプレート105の表面を少ない摩擦で摺動することができる。ロックレバー151の摺動面151bとは反対の面には、楔形状部153が設けられている。ロックレバー151は、ラック151a(
図7参照)を介して得られる駆動力により、光軸Lと直交する方向(X軸)に移動する。ロック状態にする場合には、ロックレバー151は、矢印N方向に移動し、楔形状部153も矢印N方向に移動する。固定部放熱板金185には、楔形状部153に対応するように、楔形状部153に向かって光軸L(Z軸)に沿って突出する凸部185aが設けられている。凸部185aは、楔形状部153の斜面を摺動する。楔形状部153が矢印N方向に移動すると、固定部放熱板金185に設けられた凸部185aが楔形状部153を滑り上がり、固定部放熱板金185が矢印Mの方向に押し上げられる。このように、固定部放熱板金185が矢印Mの方向に押し上げられることにより、固定部放熱板金185が可動部放熱板金177を押圧し(
図11参照)、可動部101の移動が抑制される。
【0068】
次に、固定部放熱板金185による可動部放熱板金177の押圧に関して詳しく説明を行う。
【0069】
図10は、
図8の領域Dの拡大斜視図である。また、
図11は、
図10におけるT-T断面を示す図である。
図11(A)は、アンロック状態を示す図であり、
図11(B)はロック状態を示す図である。
【0070】
固定部放熱板金185は、可動部枠部材171の突起部179が貫通する開口105aを有する(
図6及び
図7参照)。また、固定部放熱板金185の開口105aの周辺には摩擦保持の機能を有するシート部材183が貼られている。
図11(A)に示すアンロック状態では、可動部放熱板金177とシート部材183には十分なクリアランスが確保されており、可動部101が自由に移動することが可能であり、ブレ補正を行うことができる。一方、
図11(B)に示すロック状態では、固定部放熱板金185がロックレバー151の楔形状部153に押し上げられるため、固定部放熱板金185は、シート部材183を介して可動部放熱板金177を押圧する。ここで、シート部材183に関して説明する。可動部放熱板金177は可動部101と締結されているため、可動部101の自重や加速度変化による慣性力に応じた力が作用する。ロック状態ではシート部材183と可動部放熱板金177の摩擦力によって保持されるため、シート部材183は、表面の摩擦力が大きい素材を使用するのが望ましい。一方、ロック精度はシート部材183のせん断変形によって低下するため、シート部材183は横弾性係数が高い材料を使用するのが望ましく、また厚みが薄いほうが望ましい。
【0071】
本例のシート部材183は、厚み0.2mmで、ゴム素材を使用しており、形状追従性を高めるために表面に複数のドット状の微細形状を設けている。これにより、可動部101の保持力を向上させている。シート部材183は、固定部放熱板金185と可動部放熱板金177と接触衝撃を吸収する観点より、弾性部材で構成されることが望ましい。また、シート部材183は、固定部放熱板金185と可動部放熱板金177とが接触している場合の形状追従性の観点より、表面に複数の凹凸形状又はドット状の微細形状を有していることが望ましい。なお、説明した例では、固定部放熱板金185側にシート部材183を配置する例について説明したが、この例に限定されない。例えば、可動部放熱板金177の固定部放熱板金185と接触する領域に、シート部材183を配置してもよい。
【0072】
ロック状態とアンロック状態との切り替えは、制御部40(
図2参照)からの制御信号で行われる。ロック状態とする具体例の一つは、撮像装置10の電源が切られた場合には、ロック機構201を作動しロック状態とする。また例えば、撮像装置10に設けられたユーザーインターフェイスでの操作を検出した場合には、ロック機構201を作動しロック状態とする。また例えば、ブレセンサ66(
図2参照)を構成する加速度センサで加速度を検出し、三脚での撮影と制御部40で判定された場合には、ロック機構201を作動しロック状態とする。
【0073】
このように、ブレ補正装置100においては、固定部放熱板金185が可動部放熱板金177を押圧することにより、可動部101の動きが抑制される。また、可動部放熱板金177と固定部放熱板金185とが接触する領域に、シート部材183を配置することにより、より摩擦を保持することができ、可動部101のロック機能を向上させることができる。
【0074】
3.放熱経路の形成
次に、放熱経路の形成に関して説明する。固定部放熱板金185が可動部放熱板金177を押圧している場合には、可動部101の熱を固定部111に伝える放熱経路Qが形成される。
【0075】
図12は、接触部163での熱伝導に関して説明する図であり、
図10におけるU-U断面を示す図である。
図12(A)は、接触部163でのアンロック状態を示す図であり、
図12(B)は接触部163でのロック状態への遷移を示す図である。
【0076】
固定部放熱板金185にはクッション191が配置されており、クッション191は、固定部放熱板金185と可動部放熱板金177とが接触する場合の衝撃を吸収する。クッション191は、固定部放熱板金185の凹部に配置され、上部からグラファイトシート181が貼られており弾性的に固定部放熱板金185に付勢されている。
【0077】
図12(A)に示すように、グラファイトシート181はクッション191の高さ分凸形状となっているが、アンロック状態ではグラファイトシート181と可動部放熱板金177は接触しない。一方、
図12(B)に示すように、ロック状態への遷移段階では、可動部放熱板金177の他の部分に比べて先にクッション191に対応する部分が可動部放熱板金177に接触する。ここで、クッション191は、弾性的に可動部放熱板金177の形状に追従するため、グラファイトシート181と可動部放熱板金177の接触面積を増やすことができる。これにより、可動部放熱板金177とグラファイトシート181との熱抵抗を下げることができ、より効率的に可動部101の熱を固定部111に放熱することができる。
【0078】
ここで前述したように、クッション191が設けられているグラファイトシート181の接触部163は他の部分よりも可動部放熱板金177側に凸となっている。これにより、ロック保持力以上の力が可動部101に作用し、保持位置からずれた場合のグラファイトシート181の破損を防ぐことができる。なお、実用上グラファイトシート181は発塵対策として薄いPETフイルムで密閉する必要があり、可動部放熱板金177のエッジと接触することを避ける必要がある。
【0079】
図13は、接触部163の構成の変形例を示す図である。
【0080】
図13(A)は、クッション191の取り付け位置に関する変形例を示す図である。
図12で説明した例では、クッション191を固定部放熱板金185の凹部に配置した。しかしながら、クッション191は、
図13(A)に示すように可動部放熱板金177に配置してもよい。この場合には、グラファイトシート181も可動部放熱板金177側に設ける。具体的には、可動部放熱板金177の固定部放熱板金185と接触する側にクッション191を設ける。そして、クッション191と可動部放熱板金177とを包むようにグラファイトシート181を配置する。
【0081】
図13(B)は、クッション191の代わりに放熱ゲル193を配置した変形例を示す図である。図示するように、クッション191の代わりに放熱ゲル193を配置することにより、可動部放熱板金177の熱を効率的に吸熱することができる。なお、放熱ゲル193は、耐久性が低く繰り返しの可動部放熱板金177への接触で表面の接触面が劣化するため、保護フイルム195で覆うなど対策を行うことが望ましい。
【0082】
図14は、ブレ補正装置100において形成される放熱経路Qに関して説明する図である。
【0083】
図14では、ロックレバー151に押し上げられた固定部放熱板金185の形状を点線Pで示している。固定部放熱板金185は、弾性変形可能な部材で構成されており、点線Pで示す形状のように、ロックレバー151に押し上げられる。凸部185aは、板金固定部187から離れて設けられているので、固定部放熱板金185の端部である第1領域185bは、弾性変形によって撮像面(X-Y平面)に対して略垂直方向に変位することができる。すなわち、固定部放熱板金185の第1領域185bは、撮像面に対して略垂直方向に変位して、可動部放熱板金177を押圧する。このように、固定部放熱板金185の第1領域185bが可動部放熱板金177を押圧することにより、可動部101の移動を抑制することができる。また、固定部放熱板金185が可動部放熱板金177に接触している場合には、可動部放熱板金177と固定部放熱板金185とが大きな面積(第1領域185b)で接触している。これにより、可動部放熱板金177の熱を固定部放熱板金185へ効率的に伝えることができる。また、固定部放熱板金185は、端部の第2領域185cで固定されているので、効率的に固定部放熱板金185の熱をベースプレート105に伝えることができる。
【0084】
ここで、従来のブレ補正機能を有する撮像装置では、可動部を移動させてブレ補正を行うため、可動部から固定部への放熱を行う場合、薄いグラファイトシートで長い経路を放熱する必要あり、熱抵抗が高くなってしまう。そのため、高フレームレートでの動画撮影や長時間撮影など撮像装置に負荷がかかる条件では撮像素子の放熱が追いつかず、連続記録時間が制限されていた。また、従来のブレ補正機能を有する撮像装置では、放熱経路に複数の可動部位が含まれており、放熱効率が良くなかった。
【0085】
しかしながら、上述した本開示のブレ補正装置100の放熱経路Qは、接触部163は放熱板金で構成され、また、接触部163のみ可動部位であり、他の部分は固定部位である。したがって、より高い熱伝導を有し効率的に、可動部101の放熱を行うことができる。したがって、ブレ補正装置100を搭載する撮像装置10では、連続撮影の合間に、ロック機能を作動させることにより、次の撮影に備えて撮像素子16を効率的に放熱する事ができる。
【0086】
図15は、ブレ補正装置100の放熱経路Qを説明する図である。
【0087】
ブレ補正装置100においては、撮像素子16及びコイル173(コイル173a~173cを代表してコイル173と記載する)が発熱源となる。これらの熱は、可動部枠部材171、可動部放熱板金177と伝わる。
【0088】
ロック機構201が作動し、固定部放熱板金185が可動部放熱板金177を押圧する。これにより、可動部放熱板金177と固定部放熱板金185とが接触し熱経路が形成され、可動部放熱板金177の熱は、グラファイトシート181を介して固定部放熱板金185に伝わり、固定部111のベースプレート105に伝わる。ベースプレート105は、撮像装置本体2に取り付けられており、ベースプレート105の熱も撮像装置本体2に伝わる。このように、ブレ補正装置100の放熱経路Qでは、接触部163は放熱板金で構成され、また、接触部163のみ可動部位であり、他の部分は固定部位であるので、撮像素子16やコイル173で発生した熱を効率良く撮像装置本体2に放熱することができる。
【0089】
以上で説明したように、ブレ補正装置100は、固定部放熱板金185により可動部放熱板金177を押圧する場合には、放熱経路Qが形成される。これにより、撮像素子16やコイル173を発熱源とした熱を可動部101から固定部111へ放熱することができる。
【0090】
<突起部の配置>
次に、可動部枠部材171に形成される突起部179に関して説明する。
【0091】
図16及び
図17は、ボール受け面175a~175cと突起部179に関して、説明する図である。
図16は、可動部101の背面斜視図であり、
図17は、可動部101の背面図である。
【0092】
突起部179は、
図5で示しように先端に可動部放熱板金177を備えている(
図16及び
図17では可動部放熱板金177は不図示)。可動部放熱板金177は、ロック状態の場合には、Z軸のマイナス方向に固定部放熱板金185により押圧される。したがって、突起部179は、Z軸のマイナス方向(固定部111のベースプレート105側)に引き込まれることになる。この突起部179の引き込み力の合力(Fa+Fb)の重心Fg(
図17)はボール受け面175a~175cで作られる三角形の内部にある必要がある(
図17参照)。
【0093】
ここで、ロック時の可動部101の保持力はシート部材183の摩擦係数と引き込み力の積によって決まるため、引き込み力(Fa+Fb)は大きい方が望ましい。一方、この引込力は可動部枠部材171を変形させる力となるため、突起部179は極力ボール受け面に近い位置に配置するのが望ましい。
【0094】
ロック時可動部はボール受け面175a~175cへの押付力(図ではFcで示す)と引き込み力(Fa+Fb)で釣り合っている状態で、可動部枠部材171には曲げ応力が発生する。許容される可動部枠部材171の変形量は数μmと非常に小さいため、ロック保持力を上げるためにも曲げモーメントが抑えられる位置に配置するのが望ましい。
【0095】
また、ボディ内手ブレ補正(BIS)の可動部101はX方向、Y方向の並進、Z軸(光軸L)回りの回転の3自由度ある。X、Y方向の規制は一点の接触で規制できるがZ軸回りの回転を規制するために2つの突起部179の間隔は、離したほうが光軸Lの周りの負荷(偶力)に対して保持力を高めることができる。
【0096】
本例では突起部179を2本形成した場合について説明したが、上記要件を満たせば任意の本数(例えば1~3本)で支持することができる。
【0097】
<付記>
前述した本開示には、以下の態様の発明を含むことを付記する。
【0098】
(態様1)
撮像素子を保持する可動部と、
前記撮像素子の光軸に交差する平面内で前記可動部を移動可能に支持する固定部と、
前記固定部に接続された第1部材の第1領域を、前記可動部の第2部材に押圧して、前記可動部の動きを抑制するロック機構と、を有し、
前記押圧により、前記第2部材から前記第1領域を介し、前記第1部材の前記第1領域とは異なる第2領域から前記固定部へ前記可動部の熱が伝導される、
ブレ補正装置。
【0099】
(態様2)
前記第1領域および前記第2領域は、それぞれ前記第1部材の端部の領域である、態様1に記載のブレ補正装置。
【0100】
(態様3)
前記可動部の熱は、前記撮像素子の作動によって発生する熱である、態様1又は2に記載のブレ補正装置。
【0101】
(態様4)
前記第1部材は、弾性変形可能な部材であり、
前記ロック機構が作動した場合には、前記第1部材は弾性変形して前記第2部材を押圧する態様1から3のいずれか1つに記載のブレ補正装置。
【0102】
(態様5)
前記ロック機構は、前記光軸に交差する平面に沿って移動可能な斜面を有する操作部材を含み、
前記第1部材は、前記斜面を摺動する凸部を有し、
前記凸部が前記斜面を摺動して前記第1部材を押し上げて、前記第1領域が前記第2部材を押圧する態様1から4のいずれか1つに記載のブレ補正装置。
【0103】
(態様6)
前記凸部は、前記光軸に沿った方向に突出する態様5に記載のブレ補正装置。
【0104】
(態様7)
前記操作部材は、モータと複数の歯車とで構成される駆動部により移動させられ、
前記複数の歯車の一部は、ウォーム歯車で構成される態様5又は6に記載のブレ補正装置。
【0105】
(態様8)
前記ロック機構は、前記可動部を規定位置でロックする、態様1から7のいずれか1つに記載のブレ補正装置。
【0106】
(態様9)
前記規定位置は、光学部材の軸と前記光軸とを合わせた状態で、前記第2部材を押圧する位置である態様8に記載のブレ補正装置。
【0107】
(態様10)
前記可動部は、前記固定部側に付勢され、前記固定部との間に少なくとも3つのボールを、ボール受け面を介して把持し、
前記第2部材が押圧された場合の前記第2部材に作用する力の重心は、前記ボール受け面で形成される三角形の領域内に位置する態様1から9のいずれか1つに記載のブレ補正装置。
【0108】
(態様11)
前記第1領域には、表面に複数の凹凸形状を有する弾性部材が配置され、前記第2部材の押圧は前記弾性部材を介して行われる態様1から10のいずれか1つに記載のブレ補正装置。
【0109】
(態様12)
前記第2部材の前記第1領域と接触する領域には、表面に複数の凹凸形状を有する弾性部材が配置され、前記第2部材の押圧は前記弾性部材を介して行われる態様1から11のいずれか1つに記載のブレ補正装置。
【0110】
(態様13)
前記第1領域の少なくとも一部には、放熱ゲルが配置される態様1から12のいずれか1つに記載のブレ補正装置。
【0111】
(態様14)
態様1から13のいずれか1つに記載のブレ補正装置を搭載する撮像装置。
【0112】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0113】
2 :撮像装置本体
10 :撮像装置
16 :撮像素子
100 :ブレ補正装置
101 :可動部
103 :対向ヨーク
105 :ベースプレート
105a :開口
111 :固定部
121 :ロック駆動部
131 :DCモータ
135 :FPC
151 :ロックレバー
153 :楔形状部
159 :ロック操作部
163 :接触部
171 :可動部枠部材
177 :可動部放熱板金
179 :突起部
181 :グラファイトシート
183 :シート部材
185 :固定部放熱板金
185a :凸部
185b :第1領域
185c :第2領域
187 :板金固定部
191 :クッション
201 :ロック機構