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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136318
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/78 301P
H01L29/78 653C
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
H01L29/78 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047402
(22)【出願日】2023-03-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、2019年度「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050/パワーデバイスの技術革新」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100125298
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 伸
(72)【発明者】
【氏名】松本 翼
(72)【発明者】
【氏名】徳田 規夫
(72)【発明者】
【氏名】猪熊 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宙光
(72)【発明者】
【氏名】小倉 政彦
(72)【発明者】
【氏名】牧野 俊晴
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA25
5F140AA30
5F140AC22
5F140BA01
5F140BA02
5F140BA03
5F140BA04
5F140BA05
5F140BA06
5F140BB13
5F140BC11
5F140BD05
5F140BD11
5F140BE09
5F140BE10
5F140BF05
5F140BF06
5F140BF07
5F140BF10
5F140BF43
5F140BG27
5F140BG28
5F140BH18
5F140BH30
5F140BJ05
5F140BJ06
5F140BJ07
5F140BJ10
5F140BJ30
5F140BK28
5F140BK30
(57)【要約】
【課題】低オン抵抗と高耐圧との両方が実現可能とされ、かつ、高電圧動作が安定化された半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明の半導体装置10は、第1導電型の第1半導体層11と、第1半導体層11と接するように配され、第2導電型の半導体部とされるソース部12と、前記ソース部とオーミック接触して配されるソース電極15と、第1半導体層11上にゲート絶縁膜17を介して配され、印加電場により第1半導体層11におけるゲート絶縁膜17との接触面近傍の領域に反転層19を形成可能なゲート電極18と、反転層19と接するように配される第1導電型の第2半導体層13と、反転層19から離間されるとともに、第2導電型の半導体部として第2半導体層13とpn接合を形成するように第2半導体層13と接して配されるドレイン部14と、ドレイン部14とオーミック接触して配されるドレイン電極16とを有する。
【選択図】図3(b)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型及びn型のいずれかの導電型とされる第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層と接するように配され、前記導電型が前記第1導電型と異なる第2導電型の半導体部とされるソース部と、
前記ソース部とオーミック接触して配されるソース電極と、
前記第1半導体層のいずれかの面上にゲート絶縁膜を介して配され、印加電場により前記第1半導体層における前記ゲート絶縁膜との接触面近傍の領域に反転層を形成可能なゲート電極と、
前記反転層と接するように配される前記第1導電型の第2半導体層と、
前記反転層から離間されるとともに、前記第2導電型の半導体部として前記第2半導体層とpn接合を形成するように前記第2半導体層と接して配されるドレイン部と、
前記ドレイン部とオーミック接触して配されるドレイン電極と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
反転層-ドレイン部間の最短距離である距離Ldgが、下記式(1)の条件を満たす請求項1に記載の半導体装置。
【数1】
ただし、前記式(1)中、εは、第2半導体層の誘電率を示し、φbiは、前記第2半導体層と前記ドレイン部との間に生じるビルトインポテンシャルを示し、qは、電子電荷を示し、Nは、前記第2半導体層における不純物濃度を示し、Naは、前記ドレイン部における不純物濃度を示す。
【請求項3】
第2半導体層における不純物濃度が、第1半導体層における不純物濃度よりも1桁以上低い請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1半導体層と第2半導体層とが一の層として同一の半導体材料及び不純物濃度で形成される請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
ソース部及びドレイン部における不純物濃度が、第1半導体層における不純物濃度よりも1桁以上高い請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項6】
ソース部が第1半導体層の一の面から前記一の面と反対側の面側に向けて埋設される層及び前記一の面上に積層される層のいずれかとして形成され、
ゲート電極が前記第1半導体層の前記一の面上にゲート絶縁膜を介して配され、
第2半導体層が前記ゲート電極及び反転層を挟んで前記ソース部と対向する位置に前記第1半導体層の前記一の面から前記一の面と反対側の面側に向けて埋設される層及び前記一の面上に積層される層のいずれかとして形成され、
ドレイン部が前記第2半導体層を挟んで前記反転層と対向する位置に前記第1半導体層の前記一の面から前記一の面と反対側の面側に向けて埋設される層及び前記第2半導体層上に積層される層のいずれかとして形成される請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
ソース部が一の面上にソース電極が配される層として形成され、
第1半導体層が前記層の前記一の面と反対側の面上に積層されるとともに前記層との積層面から前記積層面と反対側の面まで通される貫通孔を持つように形成され、
前記第1半導体層の前記反対側の面上に第2半導体層とドレイン部とがこの順で配され、
ゲート電極が前記第1半導体層及び前記層との接触面がゲート絶縁膜で被覆された状態で前記貫通孔内に配される請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
第1半導体層、第2半導体層、ドレイン部及びソース部の少なくともいずれかがシリコンより大きなバンドギャップを持つワイドギャップ半導体形成材料で形成される請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項9】
ワイドギャップ半導体形成材料がダイヤモンドである請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
ソース部及びドレイン部がダイヤモンドで形成され、ホッピング伝導性を有する請求項9に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSFET構造に類した構造を有する高耐圧向けの半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、大電力向けのスイッチング素子として低オン抵抗で高耐圧のIGBTが利用されている。
しかしながら、前記IGBTは、少数キャリアが伝導に関与するバイポーラ動作の素子であるため、スイッチング速度がユニポーラ動作の素子に劣る問題がある。
【0003】
一方、MOSFETに代表されるユニポーラ動作の素子としては、オン抵抗と耐圧との関係がトレードオフの関係にあり、低オン抵抗を求めると耐圧が低下し、高耐圧を求めるとオン抵抗が高くなる問題がある(非特許文献1~3参照)。従来のMOSFET素子が有するこの問題は、耐圧向上のために形成するドリフト層の高いドリフト抵抗に由来する。なお、ここでいう耐圧とは、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧を意味する。
【0004】
こうした問題を解決するため、本発明者らは、前記ドリフト層を持たない新たな動作原理で動作する半導体装置を開発した(特許文献1参照)。以下、この半導体装置について図面を参照しつつ、具体的に説明する。
図1(a),(b)に示すように、従来の半導体装置100は、p型及びn型のいずれかの導電型とされる第1導電型(図示の例ではn型)の第1半導体層101と、第1半導体層101と接するように配され、前記導電型が前記第1導電型と異なる第2導電型(図示の例ではp型)の半導体部とされるソース部102と、ソース部102とオーミック接触して配されるソース電極105と、第1半導体層101上にゲート絶縁膜107を介して配され、印加電場により第1半導体層101におけるゲート絶縁膜107との接触面近傍の領域に反転層109を形成可能なゲート電極108と、反転層109と接するように配される第1導電型の第2半導体層103と、反転層109から離間されるとともに第2半導体層103とショットキー接触して配されるドレイン電極106と、を有し、従来のMOSFET素子が有する前記ドリフト層を持たずに構成される。なお、図1(a)は、従来の半導体装置100の構成を示す断面説明図であり、図1(b)は、ゲート電圧の印加により反転層109を形成した状態を示す断面説明図である。
【0005】
このように構成される従来の半導体装置100では、図2(a)に示すように、オフ時において、ドレイン電極106と第2半導体層103とのショットキー接合により第1空乏層が形成され、また、ソース部102と第1半導体層101とのpn接合により、第1半導体層101に第2空乏層が形成される。これら第1,2空乏層同士は、接しておらず、第1半導体層101の中性領域によって隔離されて存在する。
即ち、ゲート電極108に電圧が印加されていない状態の場合、前記中性領域によって形成される下向きのバンドのたわみによって、ソース部102における正孔(図中、「+」で示す)の移動がブロックされ、電流が流れないオフ状態となる。仮に、ドレイン電極106に順方向電圧が印加されたとしても、ソース部102のp層の価電子帯に存在する正孔が第1半導体層101のn層に流れ込み、電子(図中、「-」で示す)と再結合して消滅する。よって、ソース部102における正孔は、ドレイン電極106に到達することができず、結果として、第1半導体層101は、多数キャリアである正孔に対して絶縁体として作用する。
【0006】
一方、ゲート電極108に電圧を印加してオン状態とすると、図2(b)に示すように、第1半導体層101層におけるゲート絶縁層107の直下位置に反転層109が形成され、前記中性領域が消失する。この時、ドレイン電極106に順方向電圧が印加されると、ソース部102の価電子帯に存在する正孔が反転層109を介して第2半導体層103に流れ込み、第2半導体層103の内部電界により、ドレイン電極106に到達する。つまり、ドレイン電流が流れる。
【0007】
以上の原理により、従来の半導体装置100では、従来のMOSFET素子と同等の動作が実現される一方で、前記ドリフト層を持たないことから、前記ドリフト抵抗から解放された高耐圧向けの素子構造が適用可能とされる。つまり、オン抵抗と耐圧との関係がトレードオフの関係にあることを打破して、低オン抵抗と高耐圧との両方を実現可能とされる。
なお、図2(a)は、熱平衡状態に置かれた半導体装置100におけるドレイン電極106-ソース電極105間のオフ時のエネルギーバンド図を示す図であり、図2(b)は、熱平衡状態に置かれた半導体装置100におけるドレイン電極106-ソース電極105間のオン時のエネルギーバンド図を示す図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2021/210547号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S.M.Sze, "Physics of Semiconductor Devices", Wiley, 3rd Edition (2007).
【非特許文献2】“次世代パワー半導体―省エネルギー社会に向けたデバイス開発の最前線”,エヌ・ティー・エス,ISBN-10: 4860432622, (2009).
【非特許文献3】荒井和雄,吉田貞史,“SiC素子の基礎と応用”,(2003),オーム社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術における前記諸問題を解決し、低オン抵抗と高耐圧との両方が実現可能とされ、かつ、高電圧動作が安定化された半導体装置を提供することを課題とする。
【0011】
本発明者らは、引き続き、従来の半導体装置100のデバイス性能を検討していたところ、幾つかの製造サンプルにおいて、高電圧動作が不安定となり、期待した耐圧特性が得られない事象に遭遇した。
そのため、高電圧動作が不安定となる原因について検討した結果、順方向電圧を印加した際、ショットキー接触性の第2半導体層103とドレイン電極106との界面において最も大きな電界が作用するため、夾雑物等でショットキー障壁が低くなるなどの不具合が存在すると、オフ状態であるにも関わらず、意図しないリーク電流が流れ易く、高電圧動作が不安定となることが分かった。
【0012】
本発明者らは、更に、この問題に対して鋭意検討を行い、次の知見を得た。
即ち、第2半導体層103とドレイン電極106との間に、第2半導体層103とpn接合を形成する前記第2導電型の半導体部(ドレイン部)を配すると、最も大きな電界が作用するポイントが第2半導体層103とドレイン電極106との界面から半導体ボディの内部にシフトし、延いては、意図しないリーク電流を低減させることができる。即ち、低オン抵抗と高耐圧とを両立させながら、不具合があっても高電圧動作が安定化され易い新たな半導体装置を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
<1> p型及びn型のいずれかの導電型とされる第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層と接するように配され、前記導電型が前記第1導電型と異なる第2導電型の半導体部とされるソース部と、前記ソース部とオーミック接触して配されるソース電極と、前記第1半導体層のいずれかの面上にゲート絶縁膜を介して配され、印加電場により前記第1半導体層における前記ゲート絶縁膜との接触面近傍の領域に反転層を形成可能なゲート電極と、前記反転層と接するように配される前記第1導電型の第2半導体層と、前記反転層から離間されるとともに、前記第2導電型の半導体部として前記第2半導体層とpn接合を形成するように前記第2半導体層と接して配されるドレイン部と、前記ドレイン部とオーミック接触して配されるドレイン電極と、を有することを特徴とする半導体装置。
<2> 反転層-ドレイン部間の最短距離である距離Ldgが、下記式(1)の条件を満たす前記<1>に記載の半導体装置。
【数1】
ただし、前記式(1)中、εは、第2半導体層の誘電率を示し、φbiは、前記第2半導体層と前記ドレイン部との間に生じるビルトインポテンシャルを示し、qは、電子電荷を示し、Nは、前記第2半導体層における不純物濃度を示し、Naは、前記ドレイン部における不純物濃度を示す。
<3> 第2半導体層における不純物濃度が、第1半導体層における不純物濃度よりも1桁以上低い前記<1>又は<2>に記載の半導体装置。
<4> 第1半導体層と第2半導体層とが一の層として同一の半導体材料及び不純物濃度で形成される前記<1>から<3>のいずれかに記載の半導体装置。
<5> ソース部及びドレイン部における不純物濃度が、第1半導体層における不純物濃度よりも1桁以上高い前記<1>から<4>のいずれかに記載の半導体装置。
<6> ソース部が第1半導体層の一の面から前記一の面と反対側の面側に向けて埋設される層及び前記一の面上に積層される層のいずれかとして形成され、ゲート電極が前記第1半導体層の前記一の面上にゲート絶縁膜を介して配され、第2半導体層が前記ゲート電極及び反転層を挟んで前記ソース部と対向する位置に前記第1半導体層の前記一の面から前記一の面と反対側の面側に向けて埋設される層及び前記一の面上に積層される層のいずれかとして形成され、ドレイン部が前記第2半導体層を挟んで前記反転層と対向する位置に前記第1半導体層の前記一の面から前記一の面と反対側の面側に向けて埋設される層及び少なくとも一部が前記第2半導体層上に積層される層のいずれかとして形成される前記<1>から<5>のいずれかに記載の半導体装置。
<7> ソース部が一の面上にソース電極が配される層として形成され、第1半導体層が前記層の前記一の面と反対側の面上に積層されるとともに前記層との積層面から前記積層面と反対側の面まで通される貫通孔を持つように形成され、前記第1半導体層の前記反対側の面上に第2半導体層とドレイン部とがこの順で配され、ゲート電極が前記第1半導体層及び前記層との接触面がゲート絶縁膜で被覆された状態で前記貫通孔内に配される前記<1>から<5>のいずれかに記載の半導体装置。
<8> 第1半導体層、第2半導体層、ドレイン部及びソース部の少なくともいずれかがシリコンより大きなバンドギャップを持つワイドギャップ半導体形成材料で形成される前記<1>から<7>のいずれかに記載の半導体装置。
<9> ワイドギャップ半導体形成材料がダイヤモンドである前記<8>に記載の半導体装置。
<10> ソース部及びドレイン部がダイヤモンドで形成され、ホッピング伝導性を有する前記<9>に記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来技術における前記諸問題を解決することができ、低オン抵抗と高耐圧との両方が実現可能とされ、かつ、高電圧動作が安定化された半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1(a)】従来の半導体装置の構成を示す断面説明図である。
図1(b)】従来の半導体装置において、ゲート電圧の印加により反転層を形成した状態を示す断面説明図である。
図2(a)】従来の半導体装置のオフ時におけるドレイン電極-ソース電極間のエネルギーバンド図を示す図である。
図2(b)】従来の半導体装置のオン時におけるドレイン電極-ソース電極間のエネルギーバンド図を示す図である。
図3(a)】第1実施形態に係る半導体装置のオフ時の状態を示す断面図である。
図3(b)】第1実施形態に係る半導体装置のオン時の状態を示す断面図である。
図4(a)】熱平衡状態に置かれた第1実施形態に係る半導体装置のオフ時におけるドレイン部-ソース部間のエネルギーバンド図を示す図である。
図4(b)】熱平衡状態に置かれた第1実施形態に係る半導体装置において、ゲート電圧が印加されて反転層が形成された状態、かつ、ドレイン電圧が印加されていない状態のドレイン部-ソース部間のエネルギーバンド図を示す図である。
図4(c)】熱平衡状態に置かれた第1実施形態に係る半導体装置のオン時におけるドレイン部-ソース部間のエネルギーバンド図を示す図である。
図5(a)】第2実施形態に係る半導体装置のオフ時の状態を示す断面図である。
図5(b)】第2実施形態に係る半導体装置のオン時の状態を示す断面図である。
図6】熱平衡状態に置かれた第2実施形態に係る半導体装置のオフ時におけるドレイン部-ソース部間のエネルギーバンド図を示す図である。
図7(a)】熱平衡状態に置かれた第1実施形態に係る半導体装置のオフ時において、順方向電圧が印加された状態のドレイン部-ソース部間のエネルギーバンド図を示す図である。
図7(b)】熱平衡状態に置かれた第2実施形態に係る半導体装置のオフ時において、順方向電圧が印加された状態のドレイン部-ソース部間のエネルギーバンド図を示す図である。
図8】第3実施形態に係る半導体装置の構成を説明する断面説明図である。
図9】第4実施形態に係る半導体装置の構成を説明する断面説明図である。
図10】実施例1に係る半導体装置のドレイン電流-ドレイン電圧特性を示す図である。
図11】実施例2に係る半導体装置のドレイン電流-ドレイン電圧特性を示す図である。
図12(a)】実施例2に係る半導体装置を上面から撮像した光学顕微鏡像を示す図である。
図12(b)】図12(a)のAで矢視した枠内の拡大図である。
図13】抵抗測定用の構造(図12(a)のBで矢視した部分の構造)における電流-電圧特性を示す図である。
図14】実施例3に係る半導体装置のドレイン電流-ドレイン電圧特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(半導体装置)
本発明の半導体装置は、第1半導体層、ソース部、ソース電極、第2半導体層、ドレイン部、ドレイン電極、ゲート絶縁膜及びゲート電極を有して構成される。
前記半導体装置では、ドリフト層を有する従来のMOSFET素子と異なり、ドリフト層を介することなく前記ドレイン部が反転層から離間されて配され、異なる動作原理で動作する。また、前記半導体装置では、前記ドリフト層を有しない従来の半導体装置100(図1(a),(b)参照)と異なり、前記ドレイン部を有し、高電圧動作が安定化される。
以下では、先に前記半導体装置の各部について説明し、次いで前記半導体装置の動作原理を実施形態の具体的な例示とともに図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
<第1半導体層>
前記第1半導体層は、p型及びn型のいずれかの導電型とされる第1導電型の半導体層とされる。前記第1半導体層としては、p型不純物物質及びn型不純物物質のいずれかの不純物物質を導入することで、前記導電型とされる。
前記p型不純物物質としては、特に制限はなく公知のものが適用でき、代表的には、ボロンが挙げられる。また、前記n型不純物物質としても、特に制限はなく公知のものが適用でき、代表的には、リン又は窒素が挙げられる。
前記第1半導体層における不純物濃度としては、特に制限はないが、1×1011cm-3~1×1018cm-3程度が好ましい。
【0018】
前記第1半導体層の形成材料としては、特に制限はなく、シリコン、ゲルマニウムを含む公知の半導体材料を挙げることができるが、パワーデバイスへの応用の観点から、前記シリコンよりも大きなバンドギャップを持つワイドギャップ半導体形成材料が好ましい。即ち、前記半導体装置では、オン抵抗がドリフト抵抗の影響を受けず、専ら耐圧を考慮して前記半導体材料を選択することができることから、前記ワイドギャップ半導体によるパワーデバイスへの応用が好適となる。
前記ワイドギャップ半導体形成材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、窒化アルミニウム(AlN)、ダイヤモンド等を挙げることができるが、中でも、広いバンドギャップに加え、融点、熱伝導率、耐絶縁破壊性、キャリア速度限界、硬度・弾性定数、化学的安定性及び耐放射線性にも優れるダイヤモンドが好ましい。
【0019】
前記第1半導体層としては、特に制限はなく、公知の半導体基板等から構成されていてもよい。
また、前記第1半導体層の形成方法としては、特に制限はなく、形成材料に応じて公知の形成方法から適宜選択することができる。なお、前記第1半導体層が前記ダイヤモンドである場合には、特開2018-006572号公報に記載のプラズマ気相堆積法によりダイヤモンド基板上に形成する方法が好ましい。
なお、前記第1半導体層に後述の貫通孔を形成する場合、前記貫通孔の形成方法としては、特に制限はなく、公知のリソグラフィ加工法が挙げられる。
【0020】
<ソース部>
前記ソース部は、前記第1半導体層と接するように配され、前記導電型が前記第1導電型と異なる第2導電型の半導体部とされる。
前記ソース部の形成材料としては、前記第1半導体層の形成材料と同様の形成材料を挙げることができる。また、前記ソース部における前記不純物物質としては、前記第1半導体層と逆の極性のものを用いることができる。
前記ソース部における不純物濃度としては、特に制限はないが、前記第1半導体層における不純物濃度よりも1桁以上高いことが好ましく、具体的には、1×1019cm-3~1×1022cm-3程度が好ましい。前記ソース部における不純物濃度を前記第1半導体層よりも高くすると、前記ソース部における低抵抗化を図ることができる。
【0021】
前記ソース部の形成方法としては、特に制限はなく、形成材料に応じて公知の形成方法から適宜選択することができる。
代表的な形成方法としては、公知のイオン注入法を挙げることができる。即ち、前記ソース部としては、公知のソース領域と同様、前記第1半導体層の一の面から前記一の面と反対側の面側に向けて埋設される層として形成することができる。
また、イオン注入法が適用しづらい形成材料(前記ダイヤモンド等)で形成される場合には、前記第1半導体層の前記一の面上に積層される層として形成してもよく、この場合、特開2018-006572号公報に記載のプラズマ気相堆積法、リソグラフィ加工法により形成することができる。
また、前記ソース部としては、形成材料によらず、前記半導体装置の素子構造に応じて層状の形状をとり得る。
また、前記ソース部としては、前記ダイヤモンドで形成される場合、前記ソース部を低抵抗化する観点から、ホッピング伝導性又は金属伝導性を有することが好ましい。前記ホッピング伝導性は、前記ダイヤモンドで形成される前記ソース部における不純物濃度を1×1019cm-3以上とすることで発現する。また、前記金属伝導性は、前記ダイヤモンドで形成される前記ソース部における不純物濃度を3×1020cm-3以上とすることで発現する。
【0022】
<ソース電極>
前記ソース電極は、前記ソース部とオーミック接触して配される。
前記ソース電極の形成材料としては、特に制限はなく、チタン、アルミニウム、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、白金、金、これら元素を含む合金、これら元素の炭化物、窒化物及び珪化物等の公知の電極材料を挙げることができる。前記ソース部が前記ダイヤモンドで形成される場合には、チタン、白金、金及びこれら金属の積層体が好ましい。
前記ソース電極の形成方法としては、特に制限はなく、公知の真空蒸着法、CVD法、ALD法等が挙げられる。
なお、前記ソース部を前記ダイヤモンドで形成する場合における前記ソース部及び前記ソース電極の形成方法としては、公知の形成方法から適宜選択することができ、例えば、特許第6341477号公報に記載の方法等を挙げることができる。
【0023】
<ゲート電極>
前記ゲート電極は、前記第1半導体層のいずれかの面上にゲート絶縁膜を介して配され、印加電場により前記第1半導体層における前記ゲート絶縁膜との接触面近傍の領域に反転層を形成可能とされる。
【0024】
前記ゲート絶縁膜の形成材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SiO、HfO、Al、ZrO等の公知の形成材料が挙げられる。特に、前記第1半導体層が前記ダイヤモンドで形成される場合には、Alが好ましい。Alを用いると、前記ダイヤモンドとの間で欠陥準位である界面準位密度を低減させ、前記第1半導体層に対し前記反転層を好適に誘起させることができる(例えば、特開2018-006572号公報、下記参考文献1参照)。
また、前記ゲート絶縁膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形成材料を用いた、ALD法、スパッタリング法、CVD法等が挙げられる。
参考文献1: T.Matsumoto et.al., "Inversion channel diamond metal oxide-semiconductor field-effect transistor with normally off characteristics", Scientific Reports, 6, 31585 (2016).
【0025】
前記ゲート電極の形成材料としては、特に制限はなく、チタン、アルミニウム、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、白金、金、これら元素を含む合金、これら元素の炭化物、窒化物及び珪化物等の公知の電極材料挙げられる。
また、前記ゲート電極の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法、CVD法が挙げられる。
【0026】
<第2半導体層>
前記第2半導体層は、前記反転層と接するように配される前記第1導電型の半導体層とされる。
前記第2半導体層の形成材料としては、前記第1半導体層の形成材料と同様の形成材料を挙げることができる。
【0027】
前記第2半導体層における不純物濃度としては、特に制限はなく、前記第1半導体層と同様、1×1011cm-3~1×1018cm-3程度の範囲から選択されるが、前記第1半導体層の不純物濃度と同じであるか、又は、前記第1半導体層の不純物濃度よりも1桁以上低いことが好ましい。
【0028】
前記第2半導体層は、同一導電型の前記第1半導体層から独立して不純物濃度を設定可能な層であるが、前記第2半導体層における不純物濃度を前記第1半導体層の不純物濃度と同じとする場合、前記第1半導体層と前記第2半導体層とを同一の形成材料から形成される一の層として、これらの層を構成することができる。このような構成とすると、前記第1半導体層自身が前記第2半導体層を兼ね、前記第2半導体層を前記第1半導体層と別の半導体層として形成する製造工程を省略することができる。
【0029】
一方、前記第2半導体層における不純物濃度を前記第1半導体層の不純物濃度よりも1桁以上低い関係とする場合、これ以外の場合と比べて、前記半導体装置をより一層、高耐圧化させることができる。この点については、後述の第2実施形態に係る半導体装置についての図面を用いた説明とともに詳述する。
なお、前記第2半導体層を前記第1半導体層と別の半導体層として形成する場合の形成方法としては、特に制限はなく、公知の半導体層の形成方法、公知のリソグラフィ加工法を適用することができる。
【0030】
<ドレイン部>
前記ドレイン部は、前記反転層から離間されるとともに、前記第2導電型の半導体部として前記第2半導体層とpn接合するように前記第2半導体層と接して配される。
前記ドレイン部は、導電型が前記ソース部と同じ半導体部であり、前記ソース部について説明した事項を適用して構成することができる。
【0031】
前記第2半導体層と前記ドレイン電極との間に新たに前記ドレイン部を配することで、従来の半導体装置100(図1(a),(b)参照)において、順方向電圧の印加時に最も大きな電界が作用するポイントが、ショットキー接触性の第2半導体層103とドレイン電極106との界面から半導体ボディの内部(前記ドレイン部と前記第2半導体層との界面)にシフトする。
その結果、ショットキー障壁が低くなるなどの不具合が存在する場合であっても、意図しないリーク電流を低減させることができ、延いては、高電圧動作を安定化させ、前記半導体装置をより一層、高耐圧化させることができる。
【0032】
<ドレイン電極>
前記ドレイン電極は、前記ドレイン部とオーミック接触して配される電極である。
【0033】
前記ドレイン電極の形成材料としては、特に制限はなく、前記ソース電極と同様に、チタン、アルミニウム、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、白金、金、これら元素を含む合金、これら元素の炭化物、窒化物及び珪化物等の公知の電極材料を挙げることができる。前記ソース部が前記ダイヤモンドで形成される場合には、チタン、白金、金及びこれら金属の積層体が好ましい。
また、前記ドレイン電極の形成方法としては、特に制限はなく、前記ソース電極と同様に、公知の真空蒸着法、CVD法、ALD法等が挙げられる。
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の技術的思想は、これら実施形態に限定されるものではなく、ワイドギャップ半導体等で形成されるユニポーラ動作のトランジスタ等に広く適用することができる。
【0035】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る半導体装置を図3(a),(b)に示す。この第1実施形態に係る半導体装置は、平面型のMOSFET素子に類する構成例を示すものである。なお、図3(a)は、第1実施形態に係る半導体装置のオフ時の状態を示す断面図であり、図3(b)は、第1実施形態に係る半導体装置のオン時の状態を示す断面図である。
【0036】
図3(a),(b)に示すように半導体装置10は、導電型がn型の第1半導体層11と、第1半導体層11と接するように配され、導電型がp型のソース部12と、ソース部12とオーミック接触して配されるソース電極15と、第1半導体層11の一の面上にゲート絶縁膜17を介して配されるゲート電極18と、導電型がn型の第2半導体層13と、導電型がp+型のドレイン部14と、ドレイン部14上に配されるドレイン電極16とを有する。
【0037】
ソース部12は、第1半導体層11の前記一の面から前記一の面と反対側の面側に向けて埋設される層として形成され、不純物濃度が第1半導体層11よりも高く設定され(p層)、ソース電極15とのオーミック接触が得られるように形成される。また、ソース部12は、反転層19と接触可能な位置に形成される。
一方、ドレイン部14は、ゲート電極18直下の第1半導体層11に形成される反転層19(図3(b)参照)から離間されて配される。なお、図中の「Ldg」は、反転層19-ドレイン部14間の最短距離を示し、ドレイン部14は、第2半導体層13を介して反転層19から距離Ldgだけ離間されている。
第2半導体層13は、第1半導体層11自身の一領域とされ、一の層として第1半導体層11と同一の半導体材料及び不純物濃度で形成される。この第2半導体層13としては、ゲート電極18直下の第1半導体層11に形成される反転層19からドレイン部14に至る最短経路上の領域を主領域とした第1半導体層11の一領域が相当し、pn接合を形成するように、この領域がドレイン部14と接する構成とされる(図3(b)参照)。
【0038】
図1(a),(b)と図3(a),(b)との比較から理解されるように、半導体装置10では、第2半導体層13とドレイン電極16との間に新たにドレイン部14が配される点で従来の半導体装置100と相違する。
この相違に基づき、半導体装置10では、順方向電圧の印加時に最も大きな電界が作用するポイントを半導体ボディの内部にシフトさせ、高電圧動作を安定化させることができる。
以下、半導体装置10の動作原理について図4(a)~(c)を参照しつつ説明する。
【0039】
図4(a)は、熱平衡状態に置かれた第1実施形態に係る半導体装置10のオフ時におけるドレイン部14-ソース部12間のエネルギーバンド図を示す図である。
該図に示す通り、オフ時には、ドレイン部14と第2半導体層13(第1半導体層11)とのpn接合により第2半導体層13(第1半導体層11)に第1空乏層が形成され、また、ソース部12と第1半導体層11とのpn接合により第1半導体層11に第2空乏層が形成される。これら第1,2空乏層同士は、接しておらず、中性領域及び第1,第2空乏層が及ばない第1半導体層11及び第2半導体層13の領域によって隔離されて存在する。
ゲート電極18に電圧が印加されていない状態の場合、前記中性領域及び前記第1,第2空乏層が及ばない第1半導体層11及び第2半導体層13の前記領域によって形成される下向きのバンドのたわみによって、ソース部12における正孔(図中、「+」で示す)の移動がブロックされ、電流が流れないオフ状態となる。仮に、ドレイン電極16に順方向電圧が印加されたとしても、ソース部12のp層の価電子帯に存在する正孔が第1半導体層11のn層に流れ込み、電子(図中、「-」で示す)と再結合して消滅する。
よって、ソース部12における正孔は、ドレイン電極16に到達することができず、結果として、第1半導体層11は、多数キャリアである正孔に対して絶縁体として作用する。
【0040】
図4(b)は、熱平衡状態に置かれた第1実施形態に係る半導体装置10において、ゲート電圧を印加して反転層19が形成された状態、かつ、ドレイン電圧が印加されていない状態のドレイン部14-ソース部12間のエネルギーバンド図を示す図である。
該図に示すように、ゲート電極18に電圧を印加すると、第1半導体層11層におけるゲート絶縁層17の直下位置に反転層19が形成され、前記中性領域を含む下向きにたわむバンドを形成する一部の領域が消失する。
しかしながら、p型に反転しないn型の第2半導体層13によって形成される下向きのバンドのたわみによって、ソース部12における正孔の移動がブロックされる。
【0041】
図4(c)は、熱平衡状態に置かれた第1実施形態に係る半導体装置10のオン時におけるドレイン部14-ソース部12間のエネルギーバンド図を示す図である。
該図に示す通り、ゲート電極18に電圧を印加して反転層19が形成された状態で、ドレイン電極16に順方向電圧が印加されると、第2半導体層13によって形成される下向きのバンドがなくなる。つまり、前記第1空乏層が反転層19に到達して完全に空乏化され、前記第1空乏層の形成領域である第2半導体層13が正孔に対して良導体となる。
その結果、ソース部12の価電子帯に存在する正孔が反転層19及び第2半導体層13を介してドレイン部14に流れ込み、ドレイン電極16に到達する。つまり、ドレイン電流が流れる。
【0042】
なお、反転層19-ドレイン部16間の最短距離である距離Ldgが長い場合、前記第1空乏層が反転層19に到達しにくく、ドレイン電流が前記第1空乏層と反転層19との間に介在される中間層(前記第1空乏層と反転層19との間の半導体領域)の影響を受けて流れにくくなることがある。
よって、反転層19-ドレイン部16間の最短距離である距離Ldgとしては、オン時に前記中間層を生じさせないように設定されることが好ましく、具体的には、下記式(1)を満足するように設定されることが好ましい。
【0043】
【数2】
ただし、前記式(1)中、εは、第2半導体層13の誘電率を示し、φbiは、第2半導体層13とドレイン部14との間に生じるビルトインポテンシャルを示し、qは、電子電荷を示し、Nは、第2半導体層13における不純物濃度を示し、Naは、ドレイン部14における不純物濃度を示す。
【0044】
以上のように、第1実施形態に係る半導体装置10では、従来のMOSFET素子におけるドリフト層を有さず、オン抵抗がドリフト抵抗フリーとされる。
また、第1実施形態に係る半導体装置10では、従来の半導体装置100(図1(a),(b)と異なり、前記第1空乏層を介したドレイン電流の制御がpn接合を基端とする位置で行われ、順方向電圧の印加時に最も大きな電界が作用するポイントが半導体ボディの内部にシフトされる。
よって、第1実施形態に係る半導体装置10では、低オン抵抗と高耐圧との両方が実現可能とされ、かつ、高電圧動作を安定化させることも可能とされる。
【0045】
なお、pチャネル型動作の半導体装置10の素子構成を変更して、nチャネル型動作させるためには、第1半導体層11及び第2半導体層13の導電型をn型からp型に変更するとともに、ソース部12及びドレイン部14の導電型をp型からn型に変更してn型の半導体層とし、印加する電圧の極性をpチャネル型動作に対して逆転させる。こうして構成されるnチャネル型動作の半導体装置では、多数キャリアが正孔から電子になること以外は、図4(a)~(c)を用いて説明した動作原理と共通した動作原理により、動作可能とされる。
【0046】
また、図4(a)~(c)を用いて説明した動作原理は、前記第1半導体層及び前記第2半導体層の伝導不純物のエネルギー準位(ドナー準位、アクセプタ準位)が前記半導体装置の動作温度に対応する熱励起エネルギーよりも充分深い位置にある半導体材料(例えば、ダイヤモンド)で形成される前記半導体装置に適用可能であるが、室温で浅い不純物準位を有する半導体材料(例えば、シリコン)で形成される前記半導体装置に対しても、前記熱励起エネルギーが充分低くなる低温で動作させることで適用可能とされる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る半導体装置を図5(a),(b)に示す。この第2実施形態に係る半導体装置は、平面型のMOSFET素子に類する構成例を示すものである。
【0048】
図5(a),(b)に示すように、第2実施形態に係る半導体装置20は、導電型がn型の第1半導体層21と、第1半導体層21と接するように配され、導電型がp型のソース部22と、ソース部22とオーミック接触して配されるソース電極25と、第1半導体層21の一の面上にゲート絶縁膜27を介して配され、印加電場により第1半導体層21におけるゲート絶縁膜27との接触面近傍の領域に反転層29を形成可能なゲート電極28と、導電型がn型の第2半導体層23と、導電型がp型のドレイン部24と、ドレイン部24上に配されるドレイン電極26とを有する。
【0049】
第2実施形態に係る半導体装置20では、第1実施形態に係る半導体装置10(図3(a),(b)参照)と異なり、第1半導体層21と独立した不純物濃度を有する層として、第2半導体層23が第1半導体層21よりも不純物濃度が1桁以上低い層として構成される。これ以外については、第1実施形態に係る半導体装置10(図3(a),(b)参照)について説明した事項を適用して構成される。
【0050】
第2半導体層23の不純物濃度を第1半導体層21よりも低くする利点について、図面を参照しつつ、以下に説明する。
図6は、熱平衡状態に置かれた第2実施形態に係る半導体装置20のオフ時におけるドレイン部24-ソース部22間のエネルギーバンド図を示す図である。
図4(a)との比較から理解されるように、半導体装置20では、第2半導体層23の不純物濃度が第1半導体層21よりも低くなる関係を満たすように第1半導体層21の不純物濃度を比較的高くすることで、ソース部22側におけるn型領域の多くが中性領域化される。
【0051】
この意図的に設定した中性領域の増加は、図7(a)と図7(b)との比較から理解されるように、半導体装置20をより一層、高耐圧化させることに寄与する。
ここで、図7(a)は、熱平衡状態に置かれた第1実施形態に係る半導体装置10のオフ時において、順方向電圧が印加された状態のドレイン部-ソース部間のエネルギーバンド図を示す図であり、図7(b)は、第2実施形態に係る半導体装置20についてのそれである。
半導体装置10,20ともに、順方向電圧を大きくするにつれて、前記第1空乏層がpn接合から前記中性領域に向けて伸びる挙動を示すが、図7(a)に示すように、半導体装置10では、前記中性領域の幅が狭いため、前記第1空乏層が前記中性領域を圧し潰すようにソース部12まで伸び易い。
一方、図7(b)に示すように、第2半導体層23の不純物濃度を第1半導体層21よりも低くした半導体装置20では、前記中性領域の幅が広く、また、第1半導体層21の不純物濃度が高くなるため、前記第1空乏層の伸びが鈍化され、正孔に対して絶縁体として作用する前記中性領域が潰されにくい。
前記第1空乏層が前記中性領域を圧し潰すようにソース部12まで伸びると、リーク電流として意図しない大電流が流れ、耐圧限界を迎える。
よって、第2半導体層23の不純物濃度を第1半導体層21よりも低くする半導体装置20では、半導体装置10と比較して、より一層高耐圧化させることができる。
なお、半導体装置20では、pチャネル型動作として説明を行ったが、半導体装置20におけるp型とn型との関係を反対としてnチャネル型動作の半導体装置とすることもできる。
【0052】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る半導体装置を図8に示す。この第3実施形態に係る半導体装置は、縦型のMOSFET素子に類する構成例を示すものである。
【0053】
図8に示すように、第3実施形態に係る半導体装置30は、導電型がn型の第1半導体層31と、第1半導体層31と接するように配され、導電型がp型のソース半導体層として形成されるソース部32と、ソース部32とオーミック接触して配されるソース電極35と、第1半導体層31の一の面上にゲート絶縁膜37を介して配されるゲート電極38と、導電型がn型の第2半導体層33a,bと、導電型がp型のドレイン部34a,bと、ドレイン部34a,b上に配されるドレイン電極36a,bとを有する。
第2半導体層33a,bは、第1半導体層31自身の一領域とされ、一の層として第1半導体層31と同一の半導体材料及び不純物濃度で形成される。この第2半導体層33a,bとしては、第1半導体層31におけるゲート絶縁膜37との接触面近傍に形成される反転層39aからドレイン部34aに至る最短経路上の領域を主領域とした第1半導体層31の一領域と、同じく反転層39bからドレイン部34bに至る最短経路上の領域を主領域とした第1半導体層31の別領域とが相当し、pn接合を形成するように、これらの領域とドレイン部34a,bとが接する構成とされる。
【0054】
半導体装置30では、ソース部32が一の面上にソース電極35が配される層として形成され、第1半導体層31がソース部32の前記一の面と反対側の面上に積層されるとともにソース部32との積層面から前記積層面と反対側の面まで通される貫通孔を持つように形成される。
また、第1半導体層31の前記反対側の面上にドレイン部34a,34bが配される。本例では、前述の通り、第1半導体層31自身が第2半導体層33a(33b)を兼ね、第2半導体層33a(33b)が反転層39a(39b)からドレイン部34a(34b)に至る最短経路上の領域を主領域とした第1半導体層31の領域に相当することから、実質的に反転層39a(39b)の上端位置における第1半導体層31上に第2半導体層33a(33b)とドレイン部34a(34b)とドレイン電極36a(36b)とがこの順で配された構成とされる。
また、ゲート電極38が第1半導体層31及びソース部32との接触面がゲート絶縁膜37で被覆された状態で前記貫通孔内に配される。
【0055】
このように構成される本発明の第3実施形態に係る半導体装置30においても、p型の領域とn型の領域との位置関係が縦方向に置き換わるだけで、第1実施形態に係る半導体装置10について図4(a)~(c)を用いて説明した動作原理を適用することができることから、高電圧動作が安定化された前記ドリフト抵抗フリーの高耐圧向け半導体装置とすることができる。
なお、半導体装置30では、pチャネル型動作として説明を行ったが、半導体装置30におけるp型とn型との関係を反対としてnチャネル型動作の半導体装置とすることもできる。
また、半導体装置30は、ソース部32を下側に配し、ドレイン部34a,bを上側に配する構成としたが、上下関係を変更した変形例も与える。即ち、この変形例では、ソース部32及びソース電極の位置に前記ドレイン部及び前記ドレイン電極を配し、ドレイン部34a,b及びドレイン電極36a,bの位置に前記ソース部及び前記ソース電極を配して構成される。また、前記変形例では、第1半導体層31及び第2半導体層33a,bの形成領域を変更することで、前記ソース部が直接、反転層39a,bと接するように変更し、かつ、前記ドレイン部が前記第2半導体層を介して反転層39a,bと接するように変更して構成される。
【0056】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る半導体装置を図9に示す。この第4実施形態に係る半導体装置は、ダイヤモンド半導体を用いて形成された平面型のMOSFET素子に類する構成例を示すものである。
【0057】
図9に示すように、第4実施形態に係る半導体装置40は、第1導電型の第1半導体層41と、第1半導体層41と接するように配される第2導電型のソース部42と、ソース部42とオーミック接触して配されるソース電極45と、第1半導体層41の一の面上にゲート絶縁膜47を介して配されるゲート電極48と、第1導電型の第2半導体層43と、第2導電型のドレイン部44と、ドレイン部44上に配されるドレイン電極46とを有する。
【0058】
第2半導体層43は、第1半導体層41自身の一領域とされ、一の層として第1半導体層41と同一の半導体材料及び不純物濃度で形成される。この第2半導体層43としては、ゲート電極48直下の第1半導体層41に形成される反転層49からドレイン部44に至る最短経路上の領域を主領域とした第1半導体層41の一領域が相当し、pn接合を形成するように、この領域とドレイン部44とが接する構成とされる。
【0059】
半導体装置40では、第1半導体層41(第2半導体層43を含む)及びソース部42が前記ダイヤモンドで形成される半導体層(ダイヤモンド半導体層)で構成される。
また、半導体装置40では、ソース部42及びドレイン部44が埋設層として形成される半導体装置10(図3(a),(b)参照)と異なり、第1半導体層41の面上に積層される層として構成される。この層として形成されるソース部42及びドレイン部44は、プラズマ気相堆積法、リソグラフィ加工法等の公知の方法により形成することができる。
これ以外は、半導体装置10(図3(a),(b)参照)について説明した事項を適用することができる。
【0060】
以上の第1実施形態~第4実施形態に係る各半導体装置は、本発明の概要を説明するための例示であり、本発明の効果を妨げない限り、これらの例に適宜変更を加えることができる。
また、以下では、本発明の実施例を説明するが、本発明の技術的思想は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例0061】
(実施例1)
以下に示す製造方法により、半導体形成材料として前記ダイヤモンドを用いて、実施例1に係る半導体装置を製造した。この実施例1に係る半導体装置は、図9に示す半導体装置40の構成に準じて製造される。
先ず、微傾斜のオフ角でオフされ、主面が{111}面とされる窒素ドープされたn型ダイヤモンド基板(ロシア国立超硬および新炭素材料技術研究所(TISNCM)製、Ib型基板)を用意し、この基板の上に前記第1半導体層をマイクロ波プラズマ化学気相堆積装置(セキテクノトロン株式会社/現:コーンズテクノロジー株式会社製、AX5010-1-S)で形成した。具体的な前記第1半導体層の形成条件は、次の通りとした。即ち、水素ガス、メタンガス及びn型の導電性を付与するホスフィンガスを原料とし、前記水素ガスの流量を996sccm、前記メタンガスの流量を4sccm、前記ホスフィンの水素希釈ガス(前記ホスフィンの含有率;1,000ppm)の流量を1sccmとして前記マイクロ波プラズマ化学気相堆積装置内にそれぞれ導入し、前記マイクロ波プラズマ化学気相堆積装置のプラズマ投入電力を3,600W、圧力条件を150Torr及び成膜時間を1時間とする成長条件で形成した。なお、前記第1半導体層中のリン濃度は、2×1015cm-3程度であった。
【0062】
次に、金属マスクを用いた選択成長法により、前記第1半導体層の表面(主面が{111}面とされる面)上にp型半導体層としての前記ソース部及び前記ドレイン部をそれぞれ形成した。以下、具体的に説明する。
【0063】
先ず、前記第1半導体層の表面を硫酸及び硝酸の混合液で煮沸処理することで洗浄し、スピンコートによりレジスト材を前記第1半導体層上に塗布し、マスクを用いてレジストパターンを形成した。現像後、金属マスク材(金及びチタンの積層体)を前記レジストパターンが形成された前記第1半導体層上から蒸着し、その後、前記レジストパターンをリフトオフ工程により除去し、前記第1半導体層上に金属マスクパターンを形成した。
【0064】
次に、前記金属マスクパターンが形成された前記第1半導体層をマイクロ波プラズマ化学気相堆積装置に(セキテクノトロン株式会社/現:コーンズテクノロジー株式会社製、AX5010-1-S)導入し、前記第1半導体層の面上における前記金属マスクパターンが形成されていない2つの領域に前記ソース部及び前記ドレイン部をそれぞれ成長させて形成した。
成長条件は、水素ガス、メタンガス及びp型の導電性を付与するトリメチルボロンガスを原料とし、前記水素ガスの流量を399sccm、前記メタンガスの流量を0.8sccm、前記トリメチルボロンの水素希釈ガス(前記トリメチルボロンの含有率;1体積%)の流量を0.8sccmとして前記マイクロ波プラズマ化学気相堆積装置内にそれぞれ導入し、前記マイクロ波プラズマ化学気相堆積装置の成膜条件としてプラズマ投入電力を1,200W、圧力を50Torr及び成膜時間を0.16時間とする条件とした。
以上により形成された前記ソース部及び前記ドレイン部におけるホウ素濃度は、1×1021cm-3程度であった。
次いで、前記ソース部及び前記ドレイン部が形成された前記第1半導体層に対し、酸洗浄を行い、前記金属マスクパターンを除去した。
【0065】
次に、この状態の前記第1半導体層に対し、加水雰囲気中で500℃、1時間加熱処理することで、前記第1半導体層の{111}面から外方に出る1本の炭素原子の未結合手にOH基を結合させ、前記第1半導体層の最表面に位置する炭素原子に対し、OH基による終端処理を施した。前記終端処理は、チューブタイプの電気炉(光洋サーモシステム社製、小型チューブ炉)を用いて行い、前記加水雰囲気は、超純水を高純度窒素ガスでバブリングすることで行った。
【0066】
次に、原子層堆積装置(PICOSUN社製、R150)を用いて、前記第1半導体層の表面上に前記ゲート絶縁膜としてAl絶縁膜を形成した。なお、前記原子層堆積装置における前記ゲート絶縁膜の形成条件としては、成膜温度を300℃とし、厚みを50nmとした。
このゲート絶縁膜の形成時において、前記終端処理により前記炭素原子に結合させたOH基におけるHと、前記ゲート絶縁膜(前記Al絶縁膜)におけるAlとが入れ替わる形となり、前記炭素原子とゲート絶縁膜との間で安定的な結合が形成される。これにより、欠陥が少ない状態で前記第1半導体層の表面上にゲート絶縁膜が形成されることとなる。
【0067】
次に、スピンコートによりレジスト材を前記Al絶縁膜上に塗布し、マスクを用いて、次工程で形成される前記ソース電極及び前記ドレイン電極の各形成領域を覆わない態様のレジストパターンを形成した。現像後、希釈したバファードフッ酸溶液に含浸して、前記レジストパターンで覆われていない位置のゲート絶縁膜を除去し、その後、レジスト除去液に含浸し、余分なレジストの除去を行った。
これにより、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の各形成領域が露出された状態とされるとともに、前記第1半導体層上が前記ゲート絶縁膜で覆われた状態とされる。
【0068】
次に、こうした状態の前記第1半導体層に対し、スピンコートによりレジスト材を塗布し、マスクを用いて前記ソース電極及び前記ドレイン電極の各形成領域、並びに、前記ゲート絶縁膜上の前記ゲート電極形成領域を覆わない態様のレジストパターンを形成した。現像後、真空蒸着装置(エイコーエンジニアリング社製、電子ビーム蒸着器)を用いて、金(100nm)/白金(30nm)/チタン(30nm)の積層電極を蒸着し、その後、前記レジストパターンをリフトオフにより除去した。
これにより、前記積層電極による前記ソース電極、前記ドレイン電極及び前記ゲート電極が形成されるが各形成領域上に形成される。
ここで、前記ゲート電極は、前記マスクによる形成位置の調整に基づき、前記ドレイン部と前記ゲート電極との間の距離で設定されるLdgを5μmとする条件で形成した。
以上により、実施例1に係る半導体装置を製造した。
【0069】
<特性>
次に、実施例1に係る半導体装置のMOSFET動作を確認した。
半導体パラメータアナライザ装置(KEITHLEY社製、4200-SCS)を使用して、実施例1に係る半導体装置のデバイス特性を測定した結果を図10に示す。該図10は、横軸に前記ソース電極-前記ドレイン電極間のドレイン電圧をとり、縦軸に前記ソース電極-前記ドレイン電極間を流れるドレイン電流をとり、前記ゲート電極に印加する電圧Vを-3V刻みで0V~-15Vまで変えたときのドレイン電流-ドレイン電圧特性を示している。
図10に示すように、ノーマリーオフの状態から前記ゲート電圧Vの値を(負の方向に)大きくするとドレイン電流が流れる特性が確認され、実施例1に係る半導体装置は、MOSFET動作が可能とされる。
また、ドレイン電流が流れる条件であるドレイン電圧の立ち上がり電圧としては、10V程度であることが確認される。
【0070】
(実施例2)
サイズの異なるマスクを用いて前記ドレイン部と前記ゲート電極との間の距離で設定されるLdgを5μmから10μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る半導体装置を製造した。
【0071】
<特性>
次に、実施例2に係る半導体装置のMOSFET動作を確認した。
前記半導体パラメータアナライザ装置を使用して測定した、実施例2に係る半導体装置のデバイス特性の測定結果を図11に示す。該図11は、横軸に前記ソース電極-前記ドレイン電極間のドレイン電圧をとり、縦軸に前記ソース電極-前記ドレイン電極間を流れるドレイン電流をとり、前記ゲート電極に印加する電圧Vを-3V刻みで0V~-12Vまで変えたときのドレイン電流-ドレイン電圧特性を示している。
図11に示すように、ノーマリーオフの状態から前記ゲート電圧Vの値を(負の方向に)大きくするとドレイン電流が流れる特性が確認され、実施例2に係る半導体装置においても、MOSFET動作が可能とされる。
ただし、ドレイン電流が流れる条件であるドレイン電圧の立ち上がり電圧が20V程度に増加し、ドレイン電流の電流値も減少することが確認される。これは、ドレイン電流の経路において何らかの中間層が形成されたものと考えられる。
【0072】
そこで、前記中間層が材質とサイズに応じて抵抗(ドリフト抵抗)が定まるドリフト層に類するものかを次のように検証した。
先ず、実施例2に係る半導体装置を上面から撮影した光学顕微鏡像を図12(a)に示す。上記に説明した実施例2に係る半導体装置の構造部分は、矢印Aで示した枠内に形成された構造であり、この枠内の拡大図を図12(b)に示す。
当該図12(a)に示すように、製造した半導体装置では、特性の検証用に実施例2に係る半導体装置の構造部分以外の構造を有する。矢印Bで示す構造は、一定の間隔(Lgap)で対向する2つの前記積層電極(金(100nm)/白金(30nm)/チタン(30nm))を前記第1半導体層上に配した抵抗測定用の構造を有する。
【0073】
前記抵抗測定用の構造(図12(a)のBで矢視した部分の構造)における電圧-電流特性を図13に示す。なお、この構造におけるLgapは、10μmである。
図13に示す当該構造のオーミック特性から、前記第1半導体層自身で構成される前記第2半導体層の抵抗値(n型ダイヤモンド層自身の抵抗値)は、1013Ω以上であることが確認される。
一方、図11に示すドレイン電流-ドレイン電圧特性においては、このような高抵抗が確認されることはなく、n型ダイヤモンド層自身の抵抗値よりも極めて低い抵抗値であることが確認される。
図11が示す、立ち上がりのドレイン電圧が増加し、ドレイン電流が減少する結果は、前記ドレイン部及び前記第2半導体層間のpn接合から前記反転層側に伸びる空乏層が前記反転層に到達しない状態で電流が流れることに由来すると考えられる。前記中間層は、こうした前記空乏層と前記反転層との間の半導体領域と考えられ、実施例2に係る半導体装置は、前記ドリフト層に類する抵抗を与えないものと結論付けられる。
【0074】
(実施例3)
サイズの異なるマスクを用いて前記ドレイン部と前記ゲート電極との間の距離で設定されるLdgを5μmから15μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る半導体装置を製造した。
【0075】
<特性>
次に、実施例3に係る半導体装置のMOSFET動作を確認した。
前記半導体パラメータアナライザ装置を使用して測定した、実施例3に係る半導体装置のデバイス特性の測定結果を図14に示す。該図14は、横軸に前記ソース電極-前記ドレイン電極間のドレイン電圧をとり、縦軸に前記ソース電極-前記ドレイン電極間を流れるドレイン電流をとり、前記ゲート電極に印加する電圧Vを-3V刻みで0V~-15Vまで変えたときのドレイン電流-ドレイン電圧特性を示している。
図14に示すように、ノーマリーオフの状態から前記ゲート電圧Vの値を(負の方向に)大きくするとドレイン電流が流れる特性が確認され、実施例3に係る半導体装置においても、MOSFET動作が可能とされる。なお、図示の範囲外となるが、電圧Vを印加しない状態(0V)でドレイン電圧を-200Vまで大きくしても、素子破壊が生じなかった。
ただし、立ち上がりのドレイン電圧が30V程度に増加し、ドレイン電流の電流値も減少することが確認される。これは、実施例2における検証結果とも符号し、前記中間層が形成されたことが原因と考えられる。
また、実施例1~3に係る各半導体装置の比較を通じて確認される、Ldgを長くすると立ち上がりのドレイン電圧が増加し、ドレイン電流の電流値も減少する傾向から、Ldg長さに応じて前記中間層のサイズも大きくなることが想定される。
よって、Ldgとしては、前記中間層が生じないように前記式(1)を満足するようにLdgを設計する必要がある。この観点から、Ldgの長さとしては、短いことが好適であり、具体的には、5μm以下が好ましく、1μm以下であることが特に好ましいといえる。
【符号の説明】
【0076】
10,20,30,40,100 半導体装置
11,21,31,41,101 第1半導体層
12,22,32,42,102 ソース部
14,24,34a,34b,44 ドレイン部
15,25,35,45,105 ソース電極
16,26,36a,36b,46,106 ドレイン電極
17,27,37,47,107 ゲート絶縁膜
18,28,38,48,108 ゲート電極
19,29,39a,39b,49,109 反転層

図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7(a)】
図7(b)】
図8
図9
図10
図11
図12(a)】
図12(b)】
図13
図14