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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136321
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】シート剥離装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047405
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】木▲崎▼ 清貴
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA32
5F131EC34
5F131EC63
5F131EC66
5F131EC68
5F131EC69
5F131EC77
5F131KA12
5F131KA47
5F131KA72
5F131KB05
5F131KB32
(57)【要約】
【課題】剥離テープ及び保護シートの硬さや保護シートと被着体との間の接着力にかかわらず、保護テープを被着体から安定して剥離させるシート剥離装置を提供する。
【解決手段】シート剥離装置1は、被着体Wを保持してY軸方向に移動可能な剥離テーブル41と、剥離テープTを保護シートSに接着させる圧着ユニット50と、剥離テープT又は被着体Wから剥離された保護シートSを所定軌道に沿ってそれぞれ案内する剥離ローラ31、サポートプレート33と、を備え、サポートプレート33は、保護シートSが被着体Wから剥離される剥離位置において軌道を剥離ローラ31に向けて折り返し、保護シートSの剥離中に剥離位置における軌道のY軸方向に対する角度である剥離角度を略一定に保つ。
【選択図】図27
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼付された保護シートに剥離テープを介して剥離力を付与して、前記保護シートを剥離するシート剥離装置であって、
前記被着体を保持して所定の移動方向に移動可能な搬送テーブルと、
前記剥離テープを前記保護シートに接着させる接着ユニットと、
前記剥離テープ又は前記被着体から剥離された前記保護シートを所定軌道に沿ってそれぞれ案内する第1、第2のサポート部材と、
を備え、
前記第1のサポート部材は、前記保護シートが前記被着体から剥離される剥離位置において前記軌道を前記第2のサポート部材に向けて折り返し、前記保護シートの剥離中に前記剥離位置における前記軌道の前記移動方向に対する角度である剥離角度を略一定に保つことを特徴とするシート剥離装置。
【請求項2】
前記第1のサポート部材は、前記保護シートの剥離前に、前記第2のサポート部材に対して相対的に移動して前記剥離位置における前記剥離角度を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項3】
前記第2のサポート部材は、前記第1のサポート部材に対して遠近移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項4】
前記第1のサポート部材は、前記移動方向と垂直な幅方向において前記被着体より幅広に延伸され、前記剥離位置において前記剥離テープ又は前記保護シートを折り返すサポート部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項5】
前記サポート部は、先端に上面側が漸次薄いテーパー状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のシート剥離装置。
【請求項6】
前記第2のサポート部材は、
前記搬送テーブルの移動に同期して回転して前記剥離テープ又は前記保護シートを前記軌道に沿って送る剥離ローラと、
前記剥離ローラと協働して前記剥離テープ又は前記保護シートをクランプするニップローラと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体に貼付された保護シートを剥離するシート剥離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体基板(以下、「被着体」という)の裏面を研削して薄くする工程があり、その工程では被着体の表面に粘着フィルム等から成る保護シートを貼り付けて、被着体の表面に形成されたデバイスを保護している。
【0003】
被着体に貼付された保護シートを剥離するシート剥離装置として、被着体に貼付された保護シートの端部に剥離テープを接着し、被着体を剥離テープに対して相対的に移動させることにより、剥離テープに剥離力を作用させて保護シートを被着体から剥離させる装置が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1記載の装置では、接着テープTを保持する剥がしヘッド400をテーブル203の移動方向と反対側に移動させることにより、保護シートFがウェハWから剥離される。このとき、ウェハWにかかるストレスを低減するために、剥がしヘッド400が保護シートFに可能な限り接近した状態で、剥がしヘッド400が接着テープTを引っ張るため、保護シートFは約180度折り返されるようにしてウェハWから剥離される。なお、符号は、特許文献1記載のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-16862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、接着テープTの硬さ、保護シートFの硬さ及び保護シートFとウェハWとの間の接着力等のバラつきよって、保護シートFがウェハWから剥離するときの保護シートFの折り返し具合が変化するため、保護シートFをウェハWから剥離させる剥離力が保護シートFに安定して作用しない虞があった。
【0007】
そこで、剥離テープ及び保護シートの硬さや保護シートと被着体との間の接着力にかかわらず、保護テープを被着体から安定して剥離させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るシート剥離装置は、被着体に貼付された保護シートに剥離テープを介して剥離力を付与して、前記保護シートを剥離するシート剥離装置であって、前記被着体を保持して所定の移動方向に移動可能な剥離テーブルと、前記剥離テープを前記保護シートに接着させる接着ユニットと、前記剥離テープ又は前記被着体から剥離された前記保護シートを所定軌道に沿ってそれぞれ案内する第1、第2のサポート部材と、を備え、前記第1のサポート部材は、前記保護シートが前記被着体から剥離される剥離位置において前記軌道を前記第2のサポート部材に向けて折り返し、前記保護シートの剥離中に前記剥離位置における前記軌道の前記移動方向に対する角度である剥離角度を略一定に保つ。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、第2のサポート部材が、保護シートの剥離中に剥離角度を略一定に保つことにより、保護シートを被着体から安定して剥離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るシート剥離装置を示す斜視図。
図2】テープ供給ユニットを示す斜視図。
図3】剥離アームユニットを示す斜視図。
図4】テープ巻取ユニットを示す斜視図。
図5】サポートプレートを示す平面図及び正面図。
図6】剥離テーブルユニットを示す斜視図。
図7】圧着ユニットを示す斜視図。
図8】圧着ユニットの要部を下方から視た斜視図。
図9】保護シートを剥離する手順を示すフローチャート。
図10】(a)テープ供給ユニット及び剥離アームの初期位置を示す縦断面正面図、(b)剥離アームをY軸の正方向に移動させた後に昇降機構を除くテープ供給ユニットを降下させた状態を示す縦断面正面図。
図11】剥離テープの先端が一対のクランプ部の間に位置するように、剥離アームを移動させた状態を示す縦断面正面図及び要部拡大縦断面斜視図。
図12】剥離テープの先端が一対のクランプ部に把持された状態を示す要部拡大縦断面斜視図。
図13】剥離テープサポート部材による剥離テープのクランプを解除した状態を示す縦断面斜視図。
図14】剥離アームが剥離テープを引き出した状態を示す縦断面正面図及び要部拡大縦断面斜視図。
図15】スタンプヘッドを初期高さ位置まで降下させた状態を示す縦断面正面図及び要部拡大縦断面正面図。
図16】スタンプヘッドを剥離テープ近傍まで降下させた状態を示す縦断面正面図。
図17】スタンプヘッドが剥離テープを保護シートに圧着させている状態を示す縦断面斜視図。
図18】スタンプヘッドを上昇させた状態を示す縦断面正面図及び要部拡大縦断面斜視図。
図19】剥離テープが押さえフレーム及びステージにクランプされている状態を示す縦断面斜視図。
図20】カッターが剥離テープを切断した状態を示す縦断面斜視図。
図21】押さえフレームによる剥離テープのクランプを解除した状態を示す縦断面斜視図。
図22】テープ供給ユニットを上昇させた状態を示す縦断面斜視図。
図23】剥離アーム及び剥離テーブルを剥離開始位置に移動させた状態を示す縦断面斜視図。
図24】剥離アームを上昇させて、剥離テープの上端を持ち上げた状態を示す縦断面斜視図。
図25】剥離テープが、剥離テープ及びニップローラにクランプされている状態を示す縦断面斜視図。
図26】サポートプレートを剥離テープに当たるまで移動させた状態を示す縦断面斜視図。
図27】剥離ローラ、ニップローラ及びサポートプレートの位置関係によって剥離テープの剥離角度が、鋭角、直角又は鈍角に調整された状態を示す正面図。
図28】剥離アームを移動させて、保護シートが被着体から剥がされている様子を示す縦断面斜視図。
図29】保護シートが被着体から剥がされた様子を示す縦断面斜視図。
図30】サポートプレートを用いずに、保護シートを剥離している様子を示す模式図。
図31】サポートプレートを用いて、保護シートを剥離している様子を示す模式図。
図32】剥離アームが保護シートを廃棄ボックスに投下する際の、廃棄ボックスに対する剥離アームの位置関係を示す縦断面斜視図。
図33】ニップローラ、サポートプレート及び剥離アームを待機位置まで後退させた状態を示す縦断面正面図及び要部拡大縦断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0012】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0013】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、図面は、内部構造を示す断面図ために一部を切り欠いた
【0014】
図1は、シート剥離装置1の斜視図である。シート剥離装置1は、被着体Wの裏面研削を行うにあたって被着体Wの表面を保護するために粘着された保護シートS(BGテープ)を剥離するものである。被着体Wは、例えば、シリコンウェハ等の半導体基板であるが、これに限定されるものではない。保護シートSは、例えば熱硬化樹脂等から成る。被着体Wは、保護シートSを上面側にした状態でダイシングテープDTを介してダイシングフレームDFにマウントされたものである。ダイシングテープDTは、紫外線硬化テープ等である。
【0015】
シート剥離装置1は、テープ供給ユニット10と、テープ供給ユニット10より下方に一体で設けられた剥離アームユニット20、テープ巻取ユニット30と、テープ巻取ユニット30より下方に設けられた剥離テーブルユニット40と、テープ供給ユニット10に隣り合って設けられた圧着ユニット50と、を備えている。
【0016】
テープ供給ユニット10は、帯状の剥離テープTを繰り出し可能に支持する送りローラ11と、剥離テープTに張力を作用させるとともに剥離テープTの軌道を規制するように適当な位置に配置されたガイドローラ12と、を備えている。剥離テープTは、例えば保護シートSと同種の熱硬化樹脂等から成る。
【0017】
送りローラ11及びガイドローラ12は、ベース13の側面からX軸の正方向に向けて立設されている。ベース13は、昇降機構14に支持されており、昇降機構14が起動すると、送りローラ11、ガイドローラ12及びベース13が一体となって昇降する。
【0018】
図2に示すように、送りローラ11の近傍には、残量検知センサ15が設けられている。残量検知センサ15は、送りローラ11に支持された剥離テープTの残量が一定量まで減ったことを検知する公知の光電センサ等である。
【0019】
また、ベース13の下部には、剥離テープサポート部材16が設けられている。剥離テープサポート部材16は、後述するシリンダ16aによって昇降可能に構成されており、剥離テープサポート部材16が、送りローラ11から引き出された剥離テープTの先端付近をステージ17に押し付けることにより、剥離テープTをクランプすることができる。
【0020】
また、剥離テープサポート部材16の近傍には、テープカット部19を備えている。テープカット部19は、底面で剥離テープTをステージ17に上方から押さえ付ける押さえフレーム19aと、押さえフレーム19aに押さえ付けられた剥離テープTを切断するカッター19bと、を備えている。押さえフレーム19aは、シリンダ19cによって昇降可能に構成されている。また、カッター19bは、シリンダ19dによってステージ17に形成されたレール17a上をX軸方向に進退移動可能に構成されている。
【0021】
図3(a)、(b)に示すように、剥離アームユニット20は、剥離テープTをクランプ可能な剥離アーム21を備えている。剥離アーム21は、X軸方向に伸びたベース22と、ベース22の先端に設けられた上下一対のクランプ部23、24と、を備えている。クランプ部23は、ベース22に対して固定されており、クランプ部24は、クランプ部23の上方に設けられ、ベース22に設けられたシリンダ25によってクランプ部23に対して遠近移動可能に設けられている。
【0022】
ベース22は、アクチュエータ26によってY軸及びZ軸方向に移動可能に構成されている。アクチュエータ26は、Y軸方向に延伸されたフレーム27と、フレーム27に対してY軸方向に相対的に移動可能な第1のステージ28と、第1のステージ28に対してZ軸方向に相対的に移動可能でベース22の基端を支持する第2のステージ29と、を備えている。アクチュエータ26は、例えばボールねじで駆動するスライダ等である。
【0023】
図4(a)、(b)に示すように、テープ巻取ユニット30は、第2のサポート部材としての剥離ローラ31と、ニップローラ32と、第1のサポート部材としてのサポートプレート33と、を備えている。剥離ローラ31、ニップローラ32及びサポートプレート33は、一対のサイドプレート34の間に架設されている。
【0024】
剥離ローラ31は、略水平に設けられた支持軸31aに軸支され、支持軸31aとともに一体で回転可能に構成されている。支持軸31aの一方端にはローラ側ギア31bが設けられており、ローラ側ギア31bはモータ35のモータ側ギア35aと噛み合っている。モータ35が駆動すると、モータ側ギア35aがローラ側ギア31bを回転させて、剥離ローラ31が回転する。剥離ローラ31は、保護シートSが剥離し始める位置(剥離開始位置)の略上方に配置されている。また、支持軸31aを軸支する軸受31c及びモータ35は、図示しないシリンダによりサイドプレート34に対して一体で昇降可能に構成されている。
【0025】
ニップローラ32の両端は、サイドプレート34の内周面に設けられたガイドレール34a上をスライド可能な一対の上部スライダ36に支持されている。サポートプレート33の両端は、サイドプレート34の内周面に設けられたガイドレール34b上をスライド可能な一対の下部スライダ37に支持されている。上部スライダ36及び下部スライダ37は、それぞれ独立してY軸方向に移動可能である。2枚のサイドプレート34のうちX軸の正方向に配置されたサイドプレート34には、剥離アームユニット20のフレーム27が一体化されている。
【0026】
サポートプレート33の後方には、保護シート支持部材38が連続して設けられている。保護シート支持部材38は、略平坦な天面38aを備え、側面から視て略L字状に形成されている。保護シート支持部材38は、両端が下部スライダ37に接続されており、サイドプレート34と一体で移動可能に構成されている。
【0027】
図5(a)、(b)に示すように、サポートプレート33は、薄板状に形成されており、先端側に幅狭のサポート部33aが設けられている。サポートプレート33は、例えば金属製である。サポート部33aのX軸方向に一致する幅方向の寸法は、被着体Wの直径より大きく設定されており、例えば、被着体Wの幅寸法が300mmのとき、サポート部33aの幅寸法は340mmに設定される。
【0028】
サポート部33aは、上面33b側が徐々に薄くなるようにテーパー状に形成されている。なお、図5中の符号33cは、サポートプレート33を下部スライダ37に接合する際に、図示しないネジを挿通するネジ孔である。
【0029】
図6(a)、(b)に示すように、剥離テーブルユニット40は、被着体Wを載置する剥離テーブル41を備えている。剥離テーブル41の上面には、吸着面42が設けられている。また、剥離テーブル41は、吸着面42の中心を通る垂直な回転軸回りに回転可能に構成されている。
【0030】
吸着面42は、図示しない真空源又は圧縮空気源に接続されている。真空源が起動すると、吸着面42に載置された被着体Wが吸着面42に吸着保持される。また、圧縮空気源が起動すると、被着体Wと吸着面42との吸着が解除される。
【0031】
剥離テーブル41は、スライダ43を介してY軸方向に移動可能に設けられている。なお、剥離テーブル41の移動速度は任意に変更可能であり、例えば、被着体Wを損傷することなく、保護シートSの剥離に要する時間を短縮するために、保護シートSの剥離初期では低速にし、保護シートSの剥離がある程度進行した後には高速にしても構わない。
【0032】
剥離テーブルユニット40は、スライダ43の後端側を覆うように設けられ、剥離テーブル41を収容可能なケーシング44を備えている。ケーシング44上には、テープ供給ユニット10、テープ巻取ユニット30及び圧着ユニット50等が載置されている。ケーシング44の天面には、剥離テープサポート部材16やヒートスタンプ52等が通過可能な開口44aが形成されている。
【0033】
ケーシング44は、剥離テーブル41が下方を通過する際に、剥離テーブル41に保持された被着体Wのエッジ位置を検出可能なエッジセンサ45を備えている。エッジセンサ45は、例えば公知の反射型エッジセンサである。
【0034】
図7図8に示すように、圧着ユニット50は、エアシリンダ51と、ヒートスタンプ52と、を備えている。
【0035】
エアシリンダ51は、フレーム53上に載置されたシリンダチューブ51aと、下端にヒートスタンプ52が取り付けられてシリンダチューブ51aに対して上下に進退移動可能なロッド51bと、を備えている。
【0036】
エアシリンダ51は、電空レギュレータ54から供給されるエアによって、ヒートスタンプ52を押し出すようにロッド51bが進退移動する。電空レギュレータ54がエアシリンダ51に供給するエアの圧力(設定圧)は、エアシリンダ51による所望の出力を得られえるように任意に変更可能である。
【0037】
エアシリンダ51は、複動型エアシリンダであり、ヒートスタンプ52を上昇させる方向に作用する一定圧のエアが電空レギュレータ54から常に供給されるとともに、ヒートスタンプ52を降下させる方向に作用するエアが必要に応じて設定圧が調整されて電空レギュレータ54から供給される。なお、エアシリンダ51は、バネ力と空気圧で駆動する単動型エアシリンダ等であっても構わない。
【0038】
ヒートスタンプ52は、エアシリンダ51を介してフレーム53から吊り下げられるように設けられている。ヒートスタンプ52は、図8中に破線で示すケーシング55内に収容されている。ロッド51bが上端まで退入すると、ヒートスタンプ52全体がケーシング55内に収容される。また、ロッド51bが下端まで進出すると、ヒートスタンプ52の下面を含む少なくとも一部がケーシング55外に露出する。
【0039】
ヒートスタンプ52内には、棒状のカートリッジヒーター56が埋設されている。カートリッジヒーター56は、その長手方向がヒートスタンプ52の幅方向に一致するように水平に配置されている。カートリッジヒーター56が起動することにより、ヒートスタンプ52が昇温される。
【0040】
ヒートスタンプ52の下面には、スタンプヘッド57が立設されている。スタンプヘッド57が、昇温された状態で剥離テープTに押し付けられることにより、剥離テープTと保護シートSとが熱圧着される。すなわち、ヒートスタンプ52は、剥離テープTへの投影面積全体で剥離テープTに接触するのではなく、スタンプヘッド57の略矩形状に形成された下面でのみ剥離テープTに接触する。
【0041】
圧着ユニット50は、エアシリンダ51及びヒートスタンプ52を昇降させて、ヒートスタンプ52の高さ位置を調整するヒートスタンプ送り機構58を備えている。ヒートスタンプ送り機構58のモータ58aが駆動して、Z軸方向に延伸された図示しないボールネジが回転すると、フレーム53とボールネジとを連結するスライダ58bが昇降される。これにより、ヒートスタンプ52の押圧力がエアシリンダ51の出力より大きい場合には、エアシリンダ51がヒートスタンプ52を退避させるため、ヒートスタンプ52の圧着位置の高さにかかわらず被着体Wに作用する押圧力が略一定に保たれる。
【0042】
図1に戻り、剥離テーブルユニット40の下方には、廃棄ボックス60が設けられている。廃棄ボックス60の上部に形成された開口部61は、廃棄ボックス60の上方でリリースされた剥離テープT及び保護シートSを受け入れる。開口部61の縁には、3台の廃棄検知センサ62がX軸方向に隙間を空けて設けられている。廃棄検知センサ62は、クランプ部23、24からリリースされた落下中の剥離テープT及び保護シートSを検出するものであり、例えば光学式通過センサである。
【0043】
シート剥離装置1は、被着体Wから剥離されている最中の保護シートSを検出する図示しない剥離確認センサを備えている。剥離確認センサは、例えば光学式通過センサである。
【0044】
シート剥離装置1には、その動作を制御する図示しないコントローラが設けられている。また、図示しない記憶部には、シート剥離装置1の動作に必要な各種情報が保存される。
【0045】
次に、シート剥離装置1の動作について、図面に基づいて説明する。図9は、保護シートSを剥離する手順を示す図である。
【0046】
<引き出し工程>
まず、被着体Wを図示しないロボットアーム等を用いて剥離テーブル41に搬送する(ステップ1)。吸着面42上に載置された被着体Wは、保護シートSが上方を向いた状態で吸着面42に吸着保持される。
【0047】
次に、エッジセンサ45の下方に被着体Wの周縁が位置するように、剥離テーブル41を移動させて、エッジセンサ45が、剥離テーブル41に保持された被着体Wのエッジ位置を検出する。コントローラは、エッジセンサ45が検出した被着体Wのエッジ位置に基づいて、被着体Wのエッジ位置から中心側に所定距離だけ入り込んだ位置に剥離テープTを保護シートSに圧着させる圧着位置を検出する(ステップ2)。剥離テープTの圧着位置は、記憶部に記憶される。
【0048】
次に、剥離アーム21が、剥離テープTをクランプする(ステップ3)。具体的には、まず、図10(a)に示すテープ供給ユニット10及び剥離アーム21の初期位置から、図10(b)に示すように、剥離アーム21をY軸の正方向に移動させ、続いて昇降機構14を除くテープ供給ユニット10を降下させる。
【0049】
その後、図11(a)、(b)に示すように、剥離アーム21をY軸の負方向に移動させて、剥離アーム21を剥離テープサポート部材16に近接させる。このとき、剥離テープTの先端側は、剥離テープサポート部材16とステージ17と挟持されるとともに、剥離テープTの先端は、剥離アーム21は、互いに離間した状態(アンクランプ状態)のクランプ部23、24の間に位置している。
【0050】
その後、図12に示すように、シリンダ25を起動してクランプ部24を降下させて、一対のクランプ部23、24が、剥離テープTの先端をクランプする。その後、図13に示すように、シリンダ16aを起動して剥離テープサポート部材16を上昇させて、剥離テープサポート部材16とステージ17とによる剥離テープTのクランプを解除する。
【0051】
そして、アクチュエータ26を起動して、図14(a)、(b)に示すように、剥離アーム21をY軸の正方向に移動させることで、剥離アーム21が、剥離テープTを引き出す。なお、ステージ17に形成された一対の支持片17bは、ガイドローラ12と剥離アーム21との間で剥離テープTの軌道を規制している。
【0052】
<圧着工程>
次に、剥離テープTを保護シートSに圧着する(ステップ4)。具体的には、まず、図15(a)、(b)に示すように、ヒートスタンプ送り機構58のモータ58aが正回転すると、ヒートスタンプ52が初期高さ位置に至るようにスライダ58bが降下する。このとき、初期高さ位置は、例えばスライダ58bの上限位置から130mm程度下方に設定されることが考えられる。
【0053】
このとき、エアシリンダ51には、ヒートスタンプ52を上昇させる方向に作用する約0.05Mpaのエアが電空レギュレータ54から常に供給されているのに対し、ヒートスタンプ52を降下させる方向に作用するエアは供給されておらず、ヒートスタンプ52は、上方に退避してケーシング55内に収容されている。
【0054】
次に、図16に示すように、ヒートスタンプ52が、初期高さ位置から降下すると、ヒートスタンプ52が剥離テープTにさらに接近する。ヒートスタンプ52が剥離テープTに接触する前に、電空レギュレータ54からヒートスタンプ52を降下させる方向に作用するエアがエアシリンダ51に供給され、ロッド51bが進出して、エアシリンダ51がヒートスタンプ52を下方に押し出してヒートスタンプ52の下面をケーシング55外に露出させる。また、剥離テーブル41は、ステップ1で設定された剥離テープTの圧着位置が、スタンプヘッド57の直下に位置するように移動する。
【0055】
次に、図17に示すように、ヒートスタンプ52がさらに降下すると、剥離テープTが保護シートSに押し付けられる。ヒートスタンプ52が、約180℃まで加温された状態で剥離テープTを保護シートSに所定時間押し付けることにより、剥離テープTと保護シートSとが熱圧着される。剥離テープTと保護シートSとの溶着範囲は、スタンプヘッド57の下面の形状に応じて設定される。なお、ヒートスタンプ送り機構58によるヒートスタンプ52の降下量(押し込み量)は、スタンプヘッド57の下面に対するヒートスタンプ52の初期高さ位置及び被着体Wの厚み等を考慮して予め設定される。
【0056】
なお、エアシリンダ51には、ヒートスタンプ52を上昇させる方向に作用する約0.05Mpaのエア(上昇方向のシリンダ推力:7.4N)が電空レギュレータ54から常に供給されているとともに、ヒートスタンプ52を降下させる方向に作用する約0.05~0.45Mpaのエア(降下方向のシリンダ推力:8.8~88.2N)が電空レギュレータ54から供給される。すなわち、エアシリンダ51の下向きの押圧力は、約0~0.4Mpaに設定され、エアシリンダ51の下向きの推力は、1.4~80.8Nに設定される。
【0057】
したがって、スタンプヘッド57の下面が、例えば縦25mm、横1mmの略矩形状に形成されている場合、エアシリンダ51がヒートスタンプ52を押し出す圧力は、エアシリンダ51の下向きの推力をスタンプヘッド57の表面積で除して算出され、56~3232kPaに設定される。
【0058】
ところで、スタンプヘッド57が剥離テープTを保護シートSに圧着させる位置(圧着位置)の高さは、剥離テーブル41の個体差や吸着面42の高さバラつき(上面振れ)、又はダイシングテープDT、保護シートS及び剥離テープTの厚み並びに被着体Wの厚み等に起因して一定ではなく、従来のようにスタンプヘッド57を予め定められた一定の押し込み量だけ押し込んで剥離テープTを保護シートSに圧着させる場合、圧着位置の高低によっては、被着体Wに過剰な押圧力が作用して被着体Wにダメージを与えるため、剥離テープTと保護シートSとの圧着不良が生じるおそれがある。
【0059】
しかしながら、圧着ユニット50は、エアシリンダ51がヒートスタンプ52を下方に押し出した状態で、ヒートスタンプ送り機構58がヒートスタンプ52を降下させて、スタンプヘッド57が被着体Wに押し付けられる。これにより、エアシリンダ51の出力を上回る押圧力が被着体Wに作用する場合であっても、その押圧力の反力でロッド51bが退入して、エアシリンダ51はヒートスタンプ52を上方に退避させる。すなわち、被着体Wに作用する押圧力は、スタンプヘッド57の圧着位置の高さにかかわらず略一定に保たれる。
【0060】
さらに、電空レギュレータ54が供給するエアの設定圧は、剥離テープTを保護シートSに熱圧着させる一連の工程間で異なるエアシリンダ51の出力を得られるように段階的に切り替え可能である。
【0061】
例えば、スタンプヘッド57が剥離テープTに接触するまでは、エアシリンダ51の出力が、スタンプヘッド57が剥離テープTに接触する際に剥離テープTに作用する押圧力(接触時押圧力)の上限に対応して相対的に低く設定される。接触時押圧力の上限に対応するエアシリンダ51の出力(接触時出力)は、例えば約56kPaに設定される。
【0062】
また、スタンプヘッド57が剥離テープTに接触してから剥離テープTが保護シートSに熱圧着されるまでの間において、エアシリンダ51の出力が、剥離テープTが保護シートSに圧着される際に被着体Wに作用する押圧力(圧着時押圧力)の上限に対応して相対的に高く設定される。圧着時押圧力の上限に対応するエアシリンダ51の出力(圧着時出力)は、例えば約1600kPaに設定される。
【0063】
このように、エアシリンダ51の出力を、剥離テープTを保護シートSに熱圧着させる一連の工程の進行具合に応じて段階的に切り替えて設定することにより、各工程に応じて適切な圧力管理ができ、被着体Wへのダメージを低減することができる。なお、上記で例示する各種圧力及び推力等の数値は、ダイシングテープDT、保護シートS及び剥離テープTの種類並びに被着体Wの厚み等に応じて任意に調整される。
【0064】
次に、図18(a)、(b)に示すように、電空レギュレータ54が供給するエアの設定圧を低下させてエアシリンダ51の出力を解除するとともに、ヒートスタンプ送り機構58のモータ58aが逆回転して、ヒートスタンプ52を上昇させる。
【0065】
続いて、図19に示すように、シリンダ19cを起動して、押さえフレーム19aが剥離テープTをステージ17に押さえ付けるまで降下する。押さえフレーム19aの下面が剥離テープTを押さえつけてY軸方向にテンションをかけた状態で、図20に示すように、シリンダ19dを起動して、カッター19bが押さえフレーム19aの下面に形成されたスリット19eが内に進退移動することにより、押さえフレーム19aに押さえ付けられた剥離テープTがカッター19bによって切断される。このようにして、切断された剥離テープTは、短冊状に形成されており、Y軸方向に一致する長手方向の長さが約100~150mmに設定されている。これにより、従来のような剥離テープTが保護シートSをY軸方向に横断するように引き出される場合と比べると、被着体W毎の消費量を低減することができる。なお、カッター19bによる剥離テープTの切断に前後して、シリンダ16aを起動して、剥離テープサポート部材16を降下させ、剥離テープサポート部材16の下面とステージ17で剥離テープTをクランプさせる。
【0066】
次に、図21に示すように、シリンダ19cを停止して、押さえフレーム19aが上方に退避して押さえフレーム19aによる剥離テープTのクランプを解除する。すなわち、剥離テープTの先端側は、剥離テープサポート部材16にのみクランプされる。その後、図22に示すように、昇降機構14がテープ供給ユニット10を初期位置まで上方に退避させる。
【0067】
<剥離工程>
次に、保護シートSを被着体Wから剥離する(ステップ5)。具体的には、まず、図23に示すように、剥離アーム21及び被着体Wを所定の剥離開始位置にそれぞれ移動する。続いて、図24に示すように、アクチュエータ26を起動して、剥離アーム21が上昇することにより、ニップローラ32及びサポートプレート33が剥離テープTの裏面にアクセス可能な程度に剥離テープTの上端側が持ち上げられる。
【0068】
次に、上部スライダ36を起動して、図25に示すように、ニップローラ32が、所定の待機位置からY軸の正方向に移動して剥離ローラ31に押し当てられる所定の剥離位置まで移動する。このとき、剥離テープTは、剥離ローラ31とニップローラ32とにクランプされている。このとき、ニップローラ32の移動と同様に、サポートプレート33も所定の待機位置からY軸の正方向に移動するが、サポート部33aが、剥離テープTの近傍で停止する。
【0069】
次に、下部スライダ37を起動して、図26に示すように、サポートプレート33がさらにY軸の正方向に移動して、サポート部33aが剥離テープTに接触する位置(剥離位置)まで移動する。剥離位置は、X軸方向から視て、保護シートSの剥離中に保護シートSが被着体Wから剥離される位置の僅かに上方に設定される。このようにして、剥離テープTは、剥離ローラ31、ニップローラ32及びサポート部33aの相対的な位置関係により巻き取られる際の軌道が規制され、サポート部33a及び剥離ローラ31は、剥離テープTを軌道に沿って案内する。
【0070】
また、剥離テープTがサポート部33aによってY軸方向に対して上方に折り返される際の角度(剥離角度)は、剥離ローラ31、ニップローラ32及びサポート部33aの相対的な位置関係に応じて調整可能である。
【0071】
例えば、図27(a)に示すように、サポート部33aの先端が、Y軸方向において、剥離ローラ31とニップローラ32とが剥離テープTをクランプする位置より相対的に前側に位置する場合には、剥離テープTの剥離角度が鋭角に設定される。例えば、被着体Wとの間の粘着力が比較的強い保護シートSを剥離させる場合等には、鋭角の剥離角度を保つのが好ましい。なお、サポート部33aの先端がテーパー状に形成されていることにより、剥離テープTがサポート部33aで上方に鋭角に折り返される際に剥離テープTが屈曲し易くなっている。
【0072】
また、図27(b)に示すように、サポート部33aの先端が、Y軸方向において、剥離ローラ31とニップローラ32とが剥離テープTをクランプする位置の下方に位置する場合には、剥離テープTの剥離角度が略直角に設定される。例えば、表面にバンプ(突起電極)が形成されている被着体Wから剥離テープTを剥離させる場合には、略直角の剥離角度を保つのが好ましい。保護シートSをバンプに対して略垂直に剥離させることにより、保護シートSとともにバンプが被着体Wから脱落することを抑制できる。
【0073】
また、図27(c)に示すように、サポート部33aの先端が、Y軸方向において、剥離ローラ31とニップローラ32とが剥離テープTをクランプする位置より相対的に後側に位置する場合には、剥離テープTの剥離角度が鈍角に設定される。
【0074】
さらに、剥離ローラ31の支持軸31aを昇降させることにより、剥離ローラ31とニップローラ32とが剥離テープTをクランプする位置が僅かに移動するため、剥離テープTの剥離角度を微調整することができる。
【0075】
このようにして、保護シートSの剥離中に亘って、サポートプレート33が剥離角度を略一定に保つことにより、剥離テープT及び保護シートSの硬さや保護シートSと被着体Wとの間の接着力にかかわらず、剥離テープTに一定の剥離力を安定して作用することができる。
【0076】
また、剥離ローラ31及びニップローラ32が剥離テープTをクランプする位置に対してサポート部33aが相対的に移動可能なことにより、保護シートSと被着体Wとの間の粘着力の強さや被着体Wの種類等を考慮して好適な剥離テープTの剥離角度に調整可能である。
【0077】
なお、サポート部33aから剥離ローラ31までの距離は短いほど好ましい。これにより、剥離テープTが保護シートSから脱落することを抑制でき、さらに剥離中の保護シートSの伸びを抑制して処理効率を向上させることができる。
【0078】
次に、剥離アーム21、剥離ローラ31及び剥離テーブル41が同期して駆動して、保護シートSを被着体Wから剥離する。具体的には、まず、剥離アーム21がY軸の負方向に移動し、剥離ローラ31が保護シートSをY軸の負方向に送り出すように回転するとともに、剥離テーブル41が被着体WをY軸の正方向に移動させる。これにより、剥離アーム21に引っ張られるとともに剥離ローラ31に巻き取られた剥離テープTを介して、保護シートSを被着体Wから剥離する剥離力が保護シートSに作用する。なお、保護シートSが剥離し始める際の剥離アーム21及び剥離テーブル41の移動速度は、例えば1mm/sに設定される。また、剥離ローラ31に押し当てられたニップローラ32は、剥離ローラ31との間の摩擦力により剥離ローラ31に追従して回転する。
【0079】
剥離アーム21及び被着体Wがさらに移動すると、保護シートSが被着体Wから剥離し始める。保護シートSの剥離は、スタンプヘッド57が剥離テープTと保護シートSとを熱溶着した領域において剥離力が保護シートSに作用し、図28に示すように、保護シートSが被着体Wから徐々に剥離される。剥離アーム21により引っ張られる保護シートSは、保護シート支持部材38の天面38aに支持されている。図示しない剥離確認センサは、下方を通過する保護シートSを検知するとオン信号を出力する。コントローラは、剥離確認センサがオン信号を出力すると、保護シートSの剥離が正常に行われていると判定する。
【0080】
そして、図29に示すように、剥離アーム21及び被着体Wをさらに移動させて、保護シートS全面を被着体Wから剥離させる。
【0081】
ところで、図30に示す比較例のように、サポート部33aを用いずに剥離テープTを引っ張る場合、保護シートSのうち剥離テープTに対応する中央(例えば、約50mm幅)に作用する剥離力の向きは、剥離テープTの剥離方向(Y軸の負方向)と一致するのに対し、保護シートSのうち剥離テープTに対応しない外側に作用する剥離力は、Y軸方向と一致する剥離テープTの幅方向の内側を向いて斜めに生じるため、被着体Wに保護シートSの接着材が残存したり、被着体Wにダメージを与える虞がある。また、保護シートSのうち斜め方向の剥離力が生じた部分では、しわが生じて保護シートSの厚みが局所的に変化して、剥離ローラ31とニップローラ32とが保護シートSを挟む力(ニップ力)が変動して保護シートSを安定して剥離できない虞がある。さらに、被着体Wがいわゆる先ダイシングウェハの場合、被着体Wの外周に形成された三角形状のチップが被着体Wから脱落して、被着体Wの中央側のチップ上に落下する虞がある。
【0082】
一方、図31に示すように、保護シートSを被着体Wから剥離させる際に、サポート部33aが被着体Wから剥離される保護シートSを幅方向に亘って支持することにより、保護シートSに作用する剥離力の向きが剥離テープTの剥離方向と一致する。すなわち、保護シートSに斜め方向の剥離力が生じず、サポート部33aの全幅に亘って剥離テープTの剥離方向と一致する向きの剥離力が安定して生じるため、保護シートSの接着材が被着体Wに残存することを抑制し、また被着体Wに過度なダメージを与えずに安全に保護シートSを剥離できる。また、保護シートSのしわの発生が抑制され、ニップ力が安定して保護シートSを安定して剥離することができる。さらに、被着体Wがいわゆる先ダイシングウェハである場合であっても、保護シートSがソフトに剥離されるため、被着体Wの外周に形成された三角形状のチップが被着体Wから脱落することを抑制できる。
【0083】
次に、剥離した保護シートSを廃棄ボックス60に廃棄する(ステップ6)。具体的には、図29に示すように、剥離アーム21が廃棄ボックス60の上方に位置した状態で、シリンダ25を起動して、クランプ部23、24による剥離テープTのクランプを解除することにより、保護シートSが廃棄ボックス60内に落下する。なお、クランプ部23、24が保護シートSをリリースする際に、図示しないノズルから保護シートSに向けてエア等を吐出して保護シートSのリリースを促すのが好ましい。
【0084】
剥離アーム21は、図32(a)~(c)に示すように、廃棄ボックス60内においてY軸方向に互いに離間して設定された3か所(後方、中央、前方)の何れかの停止位置で停止可能に構成されている。剥離アーム21が、廃棄ボックス60に対して相対的に異なる停止位置で保護シートSをリリースすることにより、廃棄ボックス60内で保護シートSが一カ所に堆積することを抑制し、廃棄ボックス60内の保護シートSを廃棄する頻度を少なくすることができる。また、廃棄検知センサ62が、落下中の保護シートSを検出するとオン信号を出力する。コントローラは、廃棄検知センサ62がオン信号を所定時間出力し続けると、保護シートSが開口部61に引っ掛かった等のエラーが生じたと判定する。
【0085】
その後、図33(a)、(b)に示すように、ニップローラ32及びサポートプレート33が、各剥離位置から所定の待機位置まで後退する。
【0086】
このようにして、本実施形態に係るシート剥離装置1は、被着体Wに貼付された保護シートSに剥離テープTを介して剥離力を付与して、保護シートSを剥離するシート剥離装置1であって、被着体Wを保持してY軸方向に移動可能な剥離テーブル41と、剥離テープTを保護シートSに接着させる圧着ユニット50と、剥離テープT又は被着体Wから剥離された保護シートSを所定軌道に沿ってそれぞれ案内する剥離ローラ31、サポートプレート33と、を備え、サポートプレート33は、保護シートSが被着体Wから剥離される剥離位置において軌道を剥離ローラ31に向けて折り返し、保護シートSの剥離中に剥離位置における軌道のY軸方向に対する角度である剥離角度を略一定に保つという構成とした。
【0087】
この構成によれば、保護シートSの剥離中に亘って、サポートプレート33が剥離角度を略一定に保つことにより、剥離テープT及び保護シートSの硬さや保護シートSと被着体Wとの間の接着力にかかわらず、剥離テープTに一定の剥離力を安定して作用することができる。
【0088】
また、本実施形態に係るシート剥離装置1は、サポートプレート33が、保護シートSの剥離前に、剥離ローラ31に対して相対的に移動して剥離位置における剥離角度を調整可能に構成されている構成とした。
【0089】
この構成によれば、剥離ローラ31及びニップローラ32が剥離テープTをクランプする位置に対してサポート部33aが相対的に移動することにより、保護シートSと被着体Wとの間の粘着力の強さや被着体Wの種類等を考慮して好適な剥離テープTの剥離角度に調整可能である。
【0090】
また、本実施形態に係るシート剥離装置1は、剥離ローラ31が、サポートプレート33に対して遠近移動可能に構成されている構成とした。
【0091】
この構成によれば、剥離ローラ31をサポートプレート33に対して遠近移動させることにより、剥離テープTの剥離角度を微調整することができる。
【0092】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0093】
1:シート剥離装置
10:テープ供給ユニット、11:送りローラ、12:ガイドローラ、13:ベース、14:昇降機構、15:残量検知センサ、16:剥離テープサポート部材、16a:シリンダ、17:ステージ、17a:レール、17b:支持片、19:テープカット部、19a:押さえフレーム、19b:カッター、19c:(押さえフレームの)シリンダ、19d:(カッターの)シリンダ、19e:スリット
20:剥離アームユニット、21:剥離アーム、22:ベース、23:クランプ部、24:クランプ部、25:(クランプ部の)シリンダ、26:アクチュエータ、27:フレーム、28:第1のステージ、29:第2のステージ
30:テープ巻取ユニット、31:剥離ローラ(第2のサポート部材)、31a:支持軸、31b:ローラ側ギア、31c:軸受、32:ニップローラ、33:サポートプレート(第1のサポート部材)、33a:サポート部、33b:上面、34:サイドプレート、34a:(上部スライダの)ガイドレール、34b:(下部スライダの)ガイドレール、35:モータ、35a:モータ側ギア、36:上部スライダ、37:下部スライダ、38:保護シート支持部材、38a:天面
40:剥離テーブルユニット、41:剥離テーブル(搬送テーブル)、42:吸着面、43:(剥離テーブルの)スライダ、44:ケーシング、44a:開口、45:エッジセンサ
50:圧着ユニット(接着ユニット)、51:エアシリンダ、51a:シリンダチューブ、51b:ロッド、52、:ヒートスタンプ、53:フレーム、54:電空レギュレータ、55:ケーシング、56:カートリッジヒーター、57:スタンプヘッド、58:ヒートスタンプ送り機構、58a:モータ、58b:(ヒートスタンプ送り機構の)スライダ
60:廃棄ボックス、61:開口部、62:廃棄検知センサ
DF:ダイシングフレーム
DT:ダイシングテープ
S:保護シート
T:剥離テープ
W:被着体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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