(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136335
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】粉末オイルペースト
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240927BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240927BHJP
A23L 23/10 20160101ALI20240927BHJP
【FI】
A23L27/00 A
A23D9/00 504
A23L27/00 C
A23L23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047423
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】邵 聡
【テーマコード(参考)】
4B026
4B036
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DC03
4B026DG01
4B026DG12
4B026DG20
4B026DK03
4B026DK10
4B026DL10
4B026DP01
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4B026DX08
4B036LC01
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4B036LE01
4B036LF01
4B036LF03
4B036LH04
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4B036LH10
4B036LH13
4B036LH14
4B036LK03
4B036LP06
4B036LP19
4B047LB09
4B047LE06
4B047LF02
4B047LF08
4B047LG03
4B047LG10
4B047LG15
4B047LG23
4B047LG36
4B047LG64
4B047LP02
4B047LP14
(57)【要約】
【課題】即席麺等の即席食品において、より幅広く応用可能な低水分で保存性に優れた新たなスープ形態を開発することを課題とする。
【解決手段】原料として、植物油脂又は動物油脂、結晶物、粉末調味料、ショートニング及び乳化剤の複合的な構成としてこれを攪拌することによって粉末オイルペーストを調製する。
本発明により得られる粉末オイルペーストは、常温においても長期保存が可能であり種々の食品等に利用することができる。また、本発明の粉末オイルペーストは種々の所定の風味(味)を付与することが可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料成分として植物油脂及び/又は動物油脂、結晶物、粉末調味料、ショートニング及び乳化剤を含有し、当該原料成分を攪拌することによって調製する粉末オイルペーストの製造方法。
【請求項2】
前記攪拌工程において微粒化処理することを含む特徴とする請求項1に記載の粉末オイルペーストの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により得られる粉末オイルペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存性に優れた乳化オイルペーストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
即席麺等の即席食品等においては、液体スープ、粉末スープ、オイル等の種々の形態のスープやオイルが利用される。
一方、上記のうち液体スープの場合、微生物制御が必須のため、この制御のために塩や糖、酸味料を使用することが必要となり、これが問題となる場合があった。
特に、スープ量が多く要求されるカルボナーラソースのようなスープでは、味のバランスで食塩の量、酸味料の量などが必要となり、この分のスープ量が増えてしまうため、味付けのために必要なスープについて、本来必要なスープ量よりも少ないスープ量しかスープパックに収納できないという問題が生じる場合があった。このため、このようなタイプの液体スープは実際にはあまり製造されないという状況が生じていた。
【0003】
このように、低塩、低甘又は低酸が好ましい風味においては、従来まで液体スープの形態でのスープでは十分に表現が可能でない場合もあった。
次に、粉末スープの場合は、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を表現する構成として良いが、流動性がないため、混ぜにくいという問題があった。
加えて、オイルは流動性があるが、香りがメインで五味を表現する構成としては難しいという問題があった。
そこで、このような状況の下、上記の種々の問題に対応するためには従来までとは異なるスープ形態が開発されることが必要となることが想定される。
例えば、従来までとは異なるタイプのスープ形態については、例えば、以下の先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
一方、上記の先行技術は、とろみスープ用ベースの製造方法に関するものであって、とろみスープという特定のスープの製造方法に関する技術であり、幅広い利用は困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、より幅広く応用可能な低水分で保存性に優れた新たなスープ形態を開発することを課題とした。
本発明者らは、当初、粉末スープとオイルを混合する方向で種々の検討を行った。しかし、混合するだけであるとザラザラとした粒子感を呈してしまうため、これを攪拌工程を加えることでなめらかな食感、流動性がある状態とすることができることを見出した。
その一方、攪拌だけであると乳化が不安定のためこの点を改善するために、乳化剤各種の検討を行った。そして、さらに安定させるためショートニングの使用により乳化の安定化を実現できることを見出した。
具体的には、原料として、オイルの部分として、植物油脂及び/又は動物油脂と、粉末スープの部分として結晶物及び各種の粉末調味料、そしてこれにショートニング、乳化剤を加えた複合的な構成として、当該原料成分を攪拌することによって調製したものが、オイルの部分と粉末スープの部分を含有しながら、保存性と風味に優れた粉末オイルペーストとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本願第一の発明は、
“原料成分として植物油脂及び/又は動物油脂、結晶物及び各種粉末調味料、ショートニング及び乳化剤を含有し、当該原料成分を攪拌することによって調製する粉末オイルペーストの製造方法。”、である。
【0007】
次に、本願発明においては、請求項1に記載の製造方法においてさらに微粒化処理を施すことが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
“前記攪拌工程において微粒化処理することを含む特徴とする請求項1に記載の粉末オイルペーストの製造方法。”、である。
【0008】
次に、本願発明においては、請求項1又は2に記載の製造方法より得られる粉末オイルペースト自体も意図している。
すなわち、本願第三の発明は、
“請求項1又は2に記載の製造方法により得られる粉末オイルペースト。”、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粉末オイルペーストは常温で長期保存が可能であり、良好な食感を有する。また、液状物のため、調理時に混ぜやすい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願発明の内容を説明する。
本願第一の発明は、“原料成分として植物油脂及び/又は動物油脂、結晶物、粉末調味料、ショートニング及び乳化剤を含有し、当該原料成分を攪拌することによって調製する粉末オイルペーストの製造方法。”、である。
【0011】
─植物油脂及び/又は動物油脂─
本発明にいう植物油脂とは、植物の種子や果実から採った油をいう。植物油脂については特に限定されないが、例えば、具体例として、米白絞油(米白油)、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、パーム油、コーン油、ピーナッツ油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油(紅花油)、ごま油等が挙げられる。また、これらのうち、特にパーム油やキャノーラ油が好ましい。
【0012】
さらに、パーム油については、パーム核油やパームオレイン、パームステアリン等の分別油を使用することができる。また、これらの植物油脂は複数を混合したものであってもよいことは勿論である。
本発明においては、その用途に応じて種々の植物油脂を利用することができる。
【0013】
次に、本発明においては動物油脂も利用することができる。動物油脂についても特に種類は限定されないが、例えば、牛脂、ラード、豚脂、鶏脂、魚油等が挙げられる。また、動物油脂を利用する態様については上記の植物油脂と同様である。さらに、植物油脂と動物油脂を混合した油脂を利用してもよいことは勿論である。
本発明における原料中の植物油脂及び動物油脂の総含有量としては、原料100重量部あたり、概ね10~50重量%程度である。また、好ましくは15重量%~35重量%である。
通常のオイルと粉末調味料の二包化タイプの場合、植物油脂及び動物油脂がオイルの部分を構成する。
【0014】
─結晶物─
本発明の粉末オイルペーストにおいては、種々の結晶物を添加する。当該結晶物については味、風味付与、賦形剤等の役割のために利用する。
ここで、上記記載における結晶物とは、主に結晶状態の固体状の種々の塩類、アミノ酸又は糖類又はこれらの組合せをいう。例えば、グルタミン酸ナトリウム、マルトース、グルコース、ショ糖、乳糖、グルコース、塩化ナトリウム等が挙げられる。また、当該結晶物を微粒子状としたものを利用することが好ましい。
尚、通常のオイルと粉末スープの二包化タイプの場合、粉末スープの部分を構成する。
【0015】
─粉末調味料─
本発明においては粉末調味料を使用する。本発明おける粉末調味料とは、種々の調味料を粉末化したものである。具体的には核酸(イノシン酸、グアニル酸等)、粉末醤油、粉末味噌、天然調味料(酵母エキス、タンパク加水分解物、アサリ調味料、ホタテ調味料等)、畜肉エキス(ビーフ、ポーク、チキン等)、魚介エキス(アサリ、ホタテ、イワシ、タイ、サバ、トビウオ、他の白身魚等)、野菜エキス(昆布、白菜、ニンニク、キャベツ、オニオン、モヤシ等)、クリーミングパウダー、香辛料(シナモン、ショウガ、オレガノ、クミン、ホワイトペパー、ブラックペパー、ガーリック、唐辛子、ナツメグ、ハッカ、ネギ、ローズマリー、五香粉、チリパウダー、柚子胡椒等)、その他の各種パウダー類が例として挙げられる。また、賦形剤として糖類や一部に乳化剤を含む場合もある。
尚、粉末調味料が同時に上述の結晶物にも該当する場合があることは勿論である。また、通常のオイルと粉末スープの二包化タイプの場合、粉末スープの部分を構成する。
【0016】
─オイルの部分及び粉末スープの部分の配合割合─
上述の植物油脂又は動物油脂を含むオイルの部分と、結晶物及び粉末調味料を含む粉末スープの部分の配合割合は特に限定されるものではない。但し、一般的にはオイル部分の重量割合に対して、粉末スープの部分の重量割合が、1~4.5倍程度の割合である。また、好ましくは1.5倍~3.5倍程度である。
尚、上述のオイルの部分については、香料等の他の成分を含む場合があることは勿論である。また、粉末スープの部分については、澱粉等の他の成分を含む場合があることは勿論である。
【0017】
─ショートニング─
本発明においてはショートニングを利用する。本発明にいうショートニングとは、主に植物油脂を原料として、常温で半固形状の油脂をいう。
本発明におけるショートニングは、本発明の粉末オイルペーストにおいて流動性を付与することが可能となる。
本発明におけるショートニングの好ましい含有量としては、特に限定されるものではないが、原料配合100重量部に含まれるショートニングの重量%として、6~20重量%程度が一般的である。また、好ましくは、8~15重量%程度である。
尚、ショートニングについては微量の乳化剤を含んでいる場合もあることは勿論である。
【0018】
─乳化剤─
本発明においては乳化剤を使用することが必要となる。ここで本発明における乳化剤とは、水分と油脂を混合し、分散させる効果を有する。乳化のタイプにおいては、W/O型とO/W型があるが、本発明においてはW/O型の形態となる。
乳化剤の好ましい含有量としては、特に限定されるものではないが、原料配合100重量部あたり含まれる乳化剤の割合として、0.3~10重量%程度が一般的である。また、好ましくは、1~5重量%程度である。
【0019】
一般的には、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明においては種々の乳化剤を利用することができるが、ショ糖脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルが有効な乳化剤として挙げられる。
【0020】
また、本発明においては乳化剤のHLB(Hydrophilic Lipophilic Balance)(水と油の親和度を示す尺度、数値は0~20までの値をとり、0:親油性 ⇔ 20:親水性となる)
本発明においては、概ね7以下が好ましい。また、より好ましくは2~5程度である。
本発明においては上記のショートニングと乳化剤の両方を使用することで乳化の安定化を図ることができる。
【0021】
─その他の成分─
〇風味付与素材
本発明においては各種の風味付与のため風味付与素材を添加することができる。ここで、風味付与素材とは本発明の粉末オイルペーストに特徴的な風味・味を付与するための成分をいう。当該風味付与素材は、種々の食品成分、エキス分又は調味料であってもよいし、これらと香料を含めたものも可能である。
また風味については、チーズ、カレー、トマト、畜肉系風味(ビール、チキン、ポーク等)、魚介(シーフード)、とんこつ、醤油、みそ等の様々な風味を付与することが可能である。
【0022】
本発明における風味付与素材については、エキス又は風味付与のための原料素材を加工・加熱を施したものを利用してもよい。また、これらの原料素材を組み合わせてもよい。さらに当該原料素材に澱粉、デキストリン等の糖類や塩類、酸化防止剤等の種々の食品添加物を加えたものを利用してもよい。
尚、本風味付与素材については、同時に上述の粉末調味料や結晶物にも該当する場合が多い。また、動物油脂又は植物油脂に風味付けとして利用する場合も多い。
【0023】
〇澱粉、デキストリン、増粘剤及び粉乳
本発明において、澱粉又はデキストリンを添加することも好ましい。澱粉又はデキストリンを添加することで固形分の含有量を増やすことができ、本発明の粉末オイルペーストにおける油脂の分離状態を抑制することができる。
尚、澱粉又はデキストリンは風味付与素材の一部として利用する場合がある。また、各種の増粘剤や粉乳を利用することも可能である。
【0024】
〇色素
本発明の風味付与剤に色味を付与するために種々の色素を利用することができる。カロチノイド、フラボノイド、ポルフィリン等の種々の色素を利用することができる。具体的には、赤系色素として紅麹色素やパプリカ色素が例として挙げられる。また、黄色系色素としては、カロチン色素やカラメル色素が例として挙げられる。さらに黒色系色素としては、カラメル色素が例として挙げられる。尚、天然物原料由来の色素の他、合成色素も利用可能である。
【0025】
〇香料
本発明においては、他に香料を添加することができる。香料を利用することで特定の風味を付与したり、素材の有する風味を増強することもできる。本発明については合成香料、天然香料のいずれも利用することができる。例えば、ジアセチル、アセトイン、アセトアルデヒド、メチルケトン等が例示として挙げられる。
さらに、付与したい風味に応じて様々な天然及び合成香料を使用することができる。これらの香料は植物油脂又は動物油脂に添加する場合が多い。
【0026】
〇糖類
本発明においては、種々の糖類を含有させることができる。例えば、単糖類としては例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等、二糖類としては、ショ糖、果糖、乳糖等、多糖類としては、デキストリンや各種ガム類、増粘剤等が挙げられる。
【0027】
〇アミノ酸・タンパク質
本発明においては、種々のアミノ酸を含有させることができる。また、各種タンパク質を含有させることができる。例えば、カゼインや蛋白分解物を利用することができる。
尚、本アミノ酸・タンパク質が同時に上述の粉末調味料や結晶物にも該当する場合が多い。
【0028】
〇エキス類
本発明においては、植物エキス、畜肉エキス等の種々のエキスを含有させることができる。尚、本エキス類を乾燥されたものを利用する場合が多く、これらが同時に上述の粉末調味料にも該当する場合があることは勿論である。
【0029】
〇無機塩類
本発明においては、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、各種リン酸塩等の各種無機塩類を含有させることができる。尚、本無機塩類が同時に上述の粉末調味料や結晶物にも該当する場合があることは勿論である。
【0030】
〇食品添加物
本発明においては、甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、酸味料、調味料、強化剤等の種々の食品添加物を含有させることができる。
【0031】
〇その他
その他各種の素材を添加することができる。その種類は特に限定されない。
【0032】
─本発明の粉末オイルペースの用途─
本発明の粉末オイルペーストは、即席麺(即席袋麺、カップ麺)、チルド麺、冷凍麺、カップライス等の各種の加工食品に広く利用することが可能である。
【0033】
─攪拌工程─
本発明の粉末オイルペーストを製造する際には粉末の粒子を細かくする微粒化工程を経ることが好ましい。具体的には、原料の攪拌工程には種々の攪拌機を利用することが好ましい。特に、当該攪拌機が食品原料を微粒子に細かく破砕・粉砕するタイプが好ましい。
具体的には、コミトロール(登録商標)、マスクロイダー(登録商標)、ホモミクサー、Vitamix (登録商標)等が挙げられる。その他として、コロイドミル、電動ミル、ミクロマイスター等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
攪拌の方法について、攪拌機の違いとして、Vitamix (登録商標)、ホモミクサー、コミトロール(登録商標)の3種類を用いて検討した結果としては、結論はいずれも油中の固形物の粒子がより細かくなり安定な粉末オイルペースト(微粒粉末オイルペースト)まで処理することができた。
【0034】
但し、Vitamix (登録商標)では攪拌自体は問題ないが、稀に温まることにより風味が変わってしまう場合がある。次に、滑らかさに関して、ホモミクサーよりコミトロールの方が好ましい。
簡易に粒度分布の測定を実施した結果、ホモミクサーはコミトロールに比べるとやや大きな粒が残り、粒度にばらつきが多くみられる傾向がある。コミトロールは、粒度はかなり細かくなりばらつきもない傾向である。
本発明において攪拌に利用できる機器のうち、Vitamix、ホモミクサー、コミトロールを選択した場合の名称と機器の特徴及び回転速度について以下の表1に示す。
【0035】
【0036】
─水分含量─
本発明の粉末オイルペースとの水分含量は概ね5重量%以下が好ましい。
【0037】
─本発明の粉末オイルペーストの用途─
本発明の粉末オイルペーストは種々の食品、特に即席麺(袋麺、カップ麺)、即席カップライス、チルド麺、冷凍麺、生麺等の添付のスープパック(濃縮タイプ、ストレートタイプ)等として好適に利用することができる。
また、特に、低塩、低甘、低酸の添付スープ系統の商品(例えば、生クリーム、クリーマー、サワークリーム)や添付量の多い添付ソース系統の商品(例えば、カルボナーラ、チーズソースやカレー)で好適に利用することができる。
【実施例0038】
以下の本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
<試験例1>(各構成の必須性)
油脂、ショートニング、乳化剤、結晶物、粉末調味料を利用して攪拌し、粉末オイルペーストを製造する場合において、各構成の必要性について調べた。
【0040】
[試験区1―1]
(1)粉末オイルペーストの調製(ちゃんぽん風味)
表2に記載するように、使用する原料資材として、
・油脂(ラード、植物油脂)23.3重量%
・ショートニング 11.4重量%
・乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル 品名:リョートシュガーエステルS-370)2.4重量%
・粉末調味料(クリーミングパウダー、アサリ調味料、チキン調味料等)12.2重量%
・結晶物(乳糖、精製塩、MSG等)50.7重量%
、を混合して、コミトロール(アーシェル社製)(細かい刃の隙間に食品原料が入り込み原料を細かくするような装置)によって12000回転・10分行うことによって、粉末オイルペーストを調製した。上記の配合組成について表2に示す。また、調製後の粉末オイルペーストを12.8gをプラスチック製の軟包材の包装パックに充填して一包とした。
また、当該粉末オイルペーストの水分は、測定の結果、1.3重量%であった。また、水分活性は0.39であった。
【0041】
【0042】
(2)官能評価
当該得られた粉末オイルペーストについて、その乳化程度、風味の各項目について官能評価した。
官能評価は、試験区1-1~1-3の配合より得られた包装パックから内容物の粉末オイルペーストを丼に取り出し、熱湯430gを注いで、10秒間箸で攪拌して溶解させたスープを喫食した。また、官能評価は熟練の技術者5名で行い、その乳化状態及び風味について以下の評価基準で上記の粉末オイルペーストを溶解させたスープを利用して行った。
・乳化状態:最良(よく乳化する)◎、良好〇、やや良◇、やや悪△、悪(乳化しない)×の5段階で評価した。
・風味:最良(風味が強い)◎、良好〇、やや良◇、やや悪△、悪(風味が弱い)×の5段階で評価した。で評価した。評価結果を表2に示す。
【0043】
[試験区1-2]
試験区1-1の原料のうち、ショートニングを抜いたものとした。その他は試験区1-1と同様とした。
[試験区1-3]
試験区1-1の原料のうち、乳化剤を抜いたものとした。その他は試験区1-1と同様とした。
試験区1―1~1-3の比較によりショートニング、乳化剤(シュガーエステル)のいずれの構成の一つが抜けても本発明の目的とする乳化状態、風味のいずれも備えた粉末オイルペーストとすることは困難であった。各構成が有機・一体的に本発明を構成していることを示す結果と考えられる。
【0044】
<試験例2>(乳化剤の検討)
使用する乳化剤を検討した。試験例1の試験区1―1の配合における乳化剤について、以下の各乳化剤に置き換えて乳化剤の種類を変えた場合の効果について調べた。
当該得られた粉末オイルペーストについて、その乳化状態、風味の各項目について評価した。評価は試験例1の場合と同様とした。
評価結果を表3に示す。
【0045】
【0046】
試験例2の結果として、HLBが概ね11以下の乳化剤を使用することが好ましいことが分かった。さらに概ね7以下の乳化剤を使用することがより好ましいことが分かった。また、シュガーエステル(ショ糖脂肪酸エステル)が好ましいことが分かった。
ここでショ糖脂肪酸エステルはショ糖と植物起源の脂肪酸をエステル結合させて得られる界面活性剤であり、ショ糖1分子中に全部8個の水酸基があり、結合させる脂肪酸の種類と数を変化させることにより、幅広い性質・機能を持たせている。その内、今回の検証で、最も優位に効いているのが、リョートーシュガーエステルS-370と考えられた。本乳化剤はHLB=3であり、ショ糖とステアリン酸メチルエステルを反応し製造されている。
【0047】
<試験例3>(乳化剤とショートニングの混合)
乳化剤とショートニングの含量比について乳化状態と風味の点を試験するとともに、撹拌の方法について検討した。
試験例1の試験区1の配合において、ショートニング及び乳化剤の含有量を変更させた場合の粉末オイルペーストについて、当該粉末オイルペーストを熱湯に溶解させたスープを利用して、その乳化状態、風味を比較した。評価基準は試験例1の場合と同様とした。
評価結果を表4に示す。
【0048】
【0049】
結果として、乳化剤のみの添加だと乳化しないことが分かった。一方、ショートニングのみで量を多く配合しても乳化しなかったことが観察された。両方を添加することが必要であり、ショートニングについては5重量%以上、乳化剤については、1重量%以上の範囲となると好適であることが分かった。
また、乳化剤2重量%以上で、ショートニング7重量%以上又は13重量%以上がより好ましい。さらに、最も好ましくは、乳化剤3重量%以上で、ショートニング7重量%以上又は13重量%以上であることがわかった。
【0050】
[試験例4]保存テスト
本発明における製造方法により製造した粉末オイルペーストが保存性を有するかどうかを確認した。原料配合としては、試験例1の試験区1の配合にするとともに、撹拌については、コミトロール(アーシェル社、1700タイプ)を利用した。
得られた粉末オイルペーストをパック包材として、ON15//VMPET12//ON15//LLDPEのパックに収容し密封して、低温度帯として、0℃の冷蔵庫に8週間保存するともに、加速劣化試験として高温度帯:温度40℃、湿度75%で8週間保存した。尚、温度40℃、湿度75%の条件では、当該条件での一週間の保存が常温保存での1.5カ月に相当すると考えられる。
【0051】
評価は、乳化の壊れ、風味の変化の2点について行い、評価は熟練の技術者5名で行い。各粉末オイルペーストに熱湯430gを注いで、10秒間箸で攪拌して溶解させたスープを利用して以下の評価基準で行った。
・乳化の壊れ:良好(コントロールと変わらない)◎、良好〇、やや悪い△、悪い(コントロールより大幅に乳化が壊れている)×の4段階で評価した。
・風味の変化:良好(風味変化無し)◎、良好〇、やや悪い△、悪い(風味変化有り)×の4段階で評価した。
40℃(湿度90%)の恒温機での評価結果を表5に、0℃冷蔵庫での評価結果を表6に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
結果として、本発明の製造方法で得られる粉末オイルペーストは、良好な保存性を有することが分かった。
【0055】
<試験例5>(本願方法と従来の比較)
本発明の粉末オイルペーストについて数種の風味について調製するとともに、当該風味において従来までの二包化の場合と比較した。
【0056】
[試験区5-1](ちゃんぽん風味の本願の場合)
試験区1―1の配合と同一である。これを一包の粉末オイルペーストとしたものを準備した。尚、粉末オイルペーストの内容量は12.8gとした。
【0057】
[試験区5-2](ちゃんぽん風味の従来の場合)
試験区5-1(試験区1-1と同一)の粉末オイルペーストについて、これのオイル部分(植物油脂及び動物油脂)と粉末スープ部分(結晶物及び粉末調味料)の二包(オイルパック及び粉末スープパック)として、試験5-1と同様の風味としたものを調製した。 尚、オイルパックの内容量は8.1g、粉末スープパックの内容量は2.9gとした。
【0058】
─官能評価─
試験区5-1については、一包としたものを丼に押出し、熱湯430gを注いで10秒間箸で攪拌して調製した。試験区5-2については、二包としたものの両方を一つの丼に押出し、熱湯430gを注いで10秒間箸で攪拌して調製した。
両者を乳化状態及び風味について官能評価した。評価基準は試験例1の場合と同様とした。二包の場合でも良好であるが、試験区5-1(本願の場合)はさらに良くなることを見出した。結果を表7に示す。
【0059】
【表7】
結果として、乳化状態、風味の両方について、試験区5-2の従来の二包の場合でも良好であるが、試験区5-1(本願の場合)はさらに乳化状態及び風味ともに良くなることを見出した。さらに、本願の粉末オイルペーストは液状であるため調理時に混ぜやすく、一包化が可能なため包材のコスト面、環境面で有利である。
【0060】
[試験区5-3](豚キムチ風味の本願の場合)
使用する原料資材として、
・油脂(ラード、植物油脂)29.1重量%
・ショートニング11.4重量%
・乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル 品名:リョートシュガーエステルS-370)2.4重量%
・粉末調味料(クリーミングパウダー、酵母エキス等)23.6重量%
・結晶物(MSG、精製塩等)33.5重量%
、を混合して、コミトロール(アーシェル社製)(細かい刃の隙間に食品原料が入り込み原料を細かくするような装置)によって12000回転・10分行うことによって、粉末オイルペーストを調製した。上記の配合組成について表2に示す。また、調製後の粉末オイルペースト10.8gをプラスチック製の軟包材の包装パックに充填して一包とした。
また、当該粉末オイルペーストの水分は、測定の結果、2.4重量%であった。また、水分活性は0.41であった。
【0061】
[試験区5-4] (豚キムチ風味の従来の場合)
試験区5-3(ブタキムチ味)の粉末オイルペーストについて、これのオイル部分(ラード、植物油脂)と粉末スープ部分(結晶物及び粉末調味料)の二包(オイルパック及び粉末スープパック)として、試験5-1と同様の風味としたものを調製した。
尚、オイルパックの内容量は3.0g、粉末スープパックの内容量は6.2gとした。
【0062】
─官能評価─
試験区5-3については、一包としたものを丼に押出し、熱湯450gを注いで10秒間箸で攪拌して調製した。試験区5-4については、二包としたものの両方を一つの丼に押出し、熱湯450gを注いで10秒間箸で攪拌して調製した。
両者を乳化状態及び風味について官能評価した。評価基準は試験例1の場合と同様とした。結果を表8に示す。
【0063】
【表8】
結果として、試験区5-4の従来の二包の場合でも良好であるが、試験区5-3(本願の場合)はさらに、乳化状態及び風味ともに良くなることを見出した。
【0064】
[試験区5-5](とんこつ風味の本願の場合)
使用する原料資材として、
・油脂(ラード、豚油)20.0重量%
・ショートニング11.4重量%
・乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル 品名:リョートシュガーエステルS-370)2.4重量%
・粉末調味料(ポークパウダー、クリーミングパウダー、酵母エキス、粉末しょうゆ等)34.4重量%
・結晶物(乳糖、精製塩、MSG等)31.8重量%
、を混合して、コミトロール(アーシェル社製)(細かい刃の隙間に食品原料が入り込み原料を細かくするような装置)によって12000回転・10分行うことによって、粉末オイルペーストを調製した。上記の配合組成について表2に示す。また、調製後の粉末オイルペースト17.8gをプラスチック製の軟包材の包装パックに充填して一包とした。
また、当該粉末オイルペーストの水分は、測定の結果、2.2重量%であった。また、水分活性は0.36であった。
【0065】
[試験区5-6](とんこつ風味の従来の場合)
試験区5-1(試験区1-1と同一)の粉末オイルペーストについて、これのオイル部分(植物油脂及び動物油脂)と粉末スープ部分(結晶物及び粉末調味料)の二包(オイルパック及び粉末スープパック)として、試験5-1と同様の風味としたものを調製した。 尚、オイルパックの内容量は3.5g、粉末スープパックの内容量は11.8gとした。
【0066】
─官能評価─
試験区5-5については、一包としたものを丼に押出し、熱湯370gを注いで10秒間箸で攪拌して調製した。試験区5-6については、二包としたものの両方を一つの丼に押出し、熱湯370gを注いで10秒間箸で攪拌して調製した。
両者を乳化状態及び風味について官能評価した。評価基準は試験例1の場合と同様とした。結果を表9に示す。
【0067】
【表9】
結果として、試験区5-6の従来の二包の場合でも良好であるが、試験区5-5(本願の場合)はさらに乳化状態及び風味ともに良くなることを見出した。