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特開2024-136337積層体の搬送方法およびそれを用いた接合体の製造方法並びにセラミックス回路基板の製造方法
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  • 特開-積層体の搬送方法およびそれを用いた接合体の製造方法並びにセラミックス回路基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136337
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】積層体の搬送方法およびそれを用いた接合体の製造方法並びにセラミックス回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240927BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L23/12 D
B32B15/04 B
H01L21/68 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047426
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(72)【発明者】
【氏名】谷内口 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】秋谷 英
【テーマコード(参考)】
4F100
5F131
【Fターム(参考)】
4F100AB00B
4F100AB00C
4F100AB12B
4F100AB17C
4F100AD00A
4F100AD05A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00B
4F100EJ15
4F100EJ42
4F100GB41
5F131AA03
5F131AA12
5F131AA22
5F131BA12
5F131BA18
5F131DA02
5F131DA33
5F131DA42
5F131DA62
(57)【要約】
【課題】搬送工程中の金属板の位置ズレを抑制する積層体の搬送方法を提供する。
【解決手段】実施形態にかかる積層体の搬送方法は、セラミックス基板の少なくとも一方の面に、ろう材層と金属板を積層した積層体の搬送方法であって、該積層体を搬送容器に収納する工程と、搬送容器を傾ける工程、搬送容器を搬送する工程、を有することを特徴とする。また、 搬送容器を搬送する工程は、搬送容器を傾けた状態で行うことが好ましい。また、搬送容器を傾ける工程は、搬送容器を傾ける角度は5°以上30°以下の範囲内であることが好ましい。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の少なくとも一方の面に、ろう材層と金属板を積層した積層体の搬送方法であって、
該積層体を搬送容器に収納する工程と、
搬送容器を傾ける工程、
搬送容器を搬送する工程、
を有することを特徴とする積層体の搬送方法。
【請求項2】
搬送容器を搬送する工程は、搬送容器を傾けた状態で行うことを特徴とする請求項1記載の積層体の搬送方法。
【請求項3】
該積層体を搬送容器に収納する工程は、セッターを介して複数の積層体を搬送容器に収納していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の搬送方法。
【請求項4】
搬送容器を傾ける工程は、搬送容器を傾ける角度は5°以上30°以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の搬送方法。
【請求項5】
搬送容器を傾ける工程により、セラミックス基板と金属板の少なくとも一辺は、沿面距離0mm以上0.5mm以下の範囲内になることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の搬送方法。
【請求項6】
搬送容器を傾ける工程により、セラミックス基板と金属板の少なくとも一辺は、沿面距離0mm以上0.5mm以下の範囲内になることを特徴とする請求項4に記載の積層体の搬送方法。
【請求項7】
搬送容器を傾ける工程により、セラミックス基板と金属板の少なくとも一辺は、沿面距離0mmになることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の搬送方法。
【請求項8】
搬送容器を傾ける工程により、セラミックス基板と金属板の少なくとも一辺は、沿面距離0mmになることを特徴とする請求項4に記載の積層体の搬送方法。
【請求項9】
セラミックス基板が窒化珪素基板、金属板が銅板、ろう材層が活性金属ろう材、であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体の搬送方法。
【請求項10】
セラミックス基板が窒化珪素基板、金属板が銅板、ろう材層が活性金属ろう材、であることを特徴とする請求項6に記載の積層体の搬送方法。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の積層体の搬送方法により、搬送された積層体を加熱接合する工程を有することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項12】
請求項10記載の積層体の搬送方法により、搬送された積層体を加熱接合する工程を有することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載の接合体の製造方法により得られた接合体の金属板にレジストを塗布する工程と、金属板をエッチングする工程を有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【請求項14】
請求項12記載の接合体の製造方法により得られた接合体の金属板にレジストを塗布する工程と、金属板をエッチングする工程を有することを特徴とするセラミックス回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、おおむね、積層体の搬送方法およびそれを用いた接合体の製造方法並びにセラミックス回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高性能化が進められている。高性能化が進むことに伴い、半導体素子の発熱量が増加している。半導体素子を実装する回路基板として、セラミックス回路基板が用いられている。セラミックス回路基板は、TCT(耐熱サイクル試験)特性の良いものが開発されている。例えば、特許第6789955号公報(特許文献1)では、接合層はみ出し部のサイズを制御することにより、TCT特性を向上させている。
セラミックス回路基板は、セラミックス基板上にろう材層、金属板を配置した積層体を加熱接合して作製している。セラミックス基板上にろう材層、金属板を配置した積層体を得るには、位置合わせをしながら配置することが必要である。
例えば、特許第6314567号公報(特許文献2)では、ガイドピンによりセラミックス基板を固定し、ろう材層、金属板を配置する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6789955号公報
【特許文献2】特許第6314567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2の方法であれば、正確な位置合わせが可能である。一方、積層体を加熱接合するには、加熱接合装置まで搬送が必要である。積層体を作製した後の搬送工程中に、金属板がずれるといった課題が発生していた。
実施形態は、搬送行程中の金属板の位置ズレを抑制する積層体の搬送方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態にかかる積層体の搬送方法は、セラミックス基板の少なくとも一方の面に、ろう材層と金属板を積層した積層体の搬送方法であって、該積層体を搬送容器に収納する工程と、搬送容器を傾ける工程、搬送容器を搬送する工程、を有することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態にかかる積層体の一例を示す図。
図2】実施形態にかかる積層体の搬送行程の一例を示す図。
図3】実施形態にかかる積層体の搬送行程の別の一例を示す図。
図4】実施形態にかかる接合体の一例を示す図。
図5】実施形態にかかるセラミックス回路基板の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態にかかる積層体の搬送方法は、セラミックス基板の少なくとも一方の面に、ろう材層と金属板を積層した積層体の搬送方法であって、
該積層体を搬送容器に収納する工程と、
搬送容器を傾ける工程、
搬送容器を搬送する工程、
を有することを特徴とするものである。
図1に積層体の一例を示した。また、図2および図3に積層体の搬送方法の一例を示した。
図中、符号1は積層体、符号2はセラミックス基板、符号3は金属板、符号4はろう材層、符号5は搬送容器、符号6はセッター、符号7は搬送装置、である。
積層体1は、セラミックス基板2上に、ろう材層4、金属板3を積層配置したものである。図1はセラミックス基板2の両面にろう材層4、金属板3を積層したものである。積層体1は、このような構造に限られるものではない。例えば、セラミックス基板2の片面のみにろう材層4および金属板3を積層してもよい。また、セラミックス基板2/ろう材層4/金属板3の3層構造を繰り返す多層構造としてもよい。
【0008】
まず、積層体1を用意する。次に、該積層体を搬送容器に収納する工程を行う。図2の搬送容器5は断面コの字状のものを例示した。搬送容器5は、少なくとも積層体1を載置する底面部と、積層体1を位置合わせするための側面部を有する。また、搬送容器5の上面部は搬送装置7で固定する場所に使うことができる。搬送装置で固定は、吸着などロボットを使っても良い。なお、搬送装置7の固定は、搬送容器5の側面部や底面部を用いてもよい。また、側面部は、搬送容器5の側面にそれぞれ設けても良い。また、積層体1は予め積層したものを用いても良いし、搬送容器5内で積層しても良い。
また、複数の積層体1を搬送容器5に収納してもよい。複数の積層体の収納は、横に並べて配置しても良いし、積層して配置しても良い。図2は複数の積層体1を積層配置したものを例示している。複数の積層体1を収納容器5に収納する場合、積層体1の間にセッター6を配置することが好ましい。セッター6は加熱接合工程の温度で変形しないものとする。このようなセッターとして、窒化硼素板またはカーボン板が挙げられる。セッター6の配置個数は、任意である。セッター6は、個々の積層体1同士の間に配置してもよい。また、複数の積層体1ごとにセッター6を配置しても良い。また、セッター6は、個々の積層体1同士の間に配置することが好ましい。積層体1同士の間にセッター6を配置することにより、加熱接合工程で金属板同士が焼き付くのを防ぐことができる。
【0009】
次に、搬送容器を傾ける工程を行う。搬送容器5を傾けることにより、搬送容器5の側面部側に積層体1が集まっていく。つまり、搬送容器5の側面部は、積層体1の位置合わせを行う役目がある。また、搬送容器を傾ける工程は、搬送容器を傾ける角度は5°以上30°以下の範囲内であることが好ましい。搬送容器を傾ける角度θは、積層体1を水平に配置したときを0°としてカウントする。搬送容器を傾ける角度θが5°未満であると、傾きが小さいため、積層体1の位置合わせにばらつきが生じる可能性がある。また、角度θが30°を超えると、それ以上の効果が得られない可能性がある。また、積層体1の位置合わせの際に、金属板3表面がこすれて傷がつく可能性がある。このため、搬送容器を傾ける角度θは5°以上30°以下、さらには7°以上20°以下の範囲内であることが好ましい。また、角度θは、X軸方向またはY軸方向の一方また両方の傾ける角度となる。便宜上、X方向は積層体1の長手方向、Y軸方向は積層体1の短辺方向とする。
【0010】
図4に位置合わせ後の積層体1を例示した。図中、符号2はセラミックス基板、符号3は金属板である。搬送容器を傾ける工程により、金属板3の位置合わせが行われた状態を示したものである。図4(a)は、セラミックス基板2の一辺と金属板3の一辺が位置合わせされたものである。また、図4(b)はセラミックス基板2の二辺と金属板3の二辺が位置合わせされたものである。例えば、角度θをX軸方向またはY軸方向の一方に付与すると図4(a)のようになり易い。また、角度θをX軸方向またはY軸方向の両方に付与すると図4(b)のようになり易い。
搬送容器を傾ける工程により、セラミックス基板と金属板の少なくとも一辺は、沿面距離0mm以上0.5mm以下の範囲内になることが好ましい。上記のように、セラミックス基板2と金属板3の一辺または二辺の位置合わせを行うことにより、沿面距離を小さくすることができる。また、位置合わせの精度を考慮すると沿面距離は0mmであることが好ましい。沿面距離は、小数点2桁目を四捨五入して求めるものとする。
また、セラミックス基板2と金属板3の少なくとも1辺は沿面距離が0.5mmを超えていることが好ましい。セラミックス基板2と金属板3の一辺または二辺の位置合わせした個所は沿面距離が0mm以上0.5mm以下になっている。位置合わせしていない辺は沿面距離が0.5mmを超えていることが好ましい。
【0011】
例えば、セラミックス基板2、ろう材層4上に金属板3を配置する際に予め沿面距離が0.5mm以下にしたとしても搬送時に金属板3がズレることがある。このため、搬送容器を傾ける工程により位置合わせを行うことが有効である。搬送中の金属板3のズレを抑制するために、搬送容器5を傾けたまま搬送することが有効である。
また、搬送容器5を傾けることにより、沿面距離を制御することができる。このため、積層体1を作製する際の金属板3の配置位置がズレていたとしても、搬送工程中に位置合わせができる。つまり、積層体1を作製する際の金属板3の配置精度が悪くても、搬送工程中に沿面距離の制御ができるのである。
また、搬送容器5を傾けることにより、金属板3の沿面距離が0mm以上0.5mm以下の範囲内にすることができる。金属板3の移動に伴って、ろう材層4も移動する。後述するように活性金属ろう材はペーストにして塗布してろう材層4となる。ペーストは粘性があるので、金属板3の移動時に一緒に移動する。また、金属板が移動する範囲を想定して、予めろう材層を広めに塗布しても良いものとする。
また、搬送容器5を搬送する工程が機械化されていることが好ましい。機械化とは、ロボットを用いた工程である。ロボットを用いて自動化することにより、角度θの制御を行い易くすることができる。
搬送行程を行った後、搬送された積層体を加熱接合する工程を行う。加熱接合工程を行うことにより、接合体を得ることができる。また、加熱接合工程を行うことにより、ろう材層4が接合層10となる。得られた接合体は、セラミックス基板と金属板の少なくとも一辺は、沿面距離0mm以上0.5mm以下の範囲内になったものとなる。
【0012】
また、実施形態にかかる接合体はセラミックス回路基板に用いることができる。図5にセラミックス回路基板の一例を示した。図中、符号2はセラミックス基板、符号8は回路板、符号9は放熱板、符号10は接合層、符号11はセラミックス回路基板、である。図5は、表金属板を回路板8、裏金属板を放熱板9としたものである。実施形態にかかるセラミックス回路基板は、このような構造に限定されるものではなく、両面を回路板8としても良いものである。また、図5は回路板8を2つのものを例示したが、必要に応じ、回路板8の個数を増やすことができる。
また、金属板3に回路形状を付与することにより、回路板8となる。回路形状を付与する工程は、エッチング工程が好ましい。エッチング工程は薬液を使って、金属板を除去する方法である。エッチング工程は、回路形状として残したい個所にレジストを塗布することになる。レジストの塗布工程は、機械化が行われている。回路形状に合わせて塗布する位置の検出を行っている。位置検出には、セラミックス基板2または金属板3の端部が使われる。セラミックス基板2または金属板3の端部を検出器で位置検出する。検出器としてはCCDカメラなどが挙げられる。
セラミックス基板と金属板の少なくとも一辺に、沿面距離0mm以上0.5mm以下の範囲内となる個所を基準に位置検出を行うことができる。また、位置検出は、沿面距離0.5mmを超えた個所を用いても良い。
【0013】
沿面距離を0mmとするために、セラミックス基板2と金属板3の縦横サイズを同じにすることも考えられる。縦横サイズが同じであると、搬送時にズレが生じることがある。また、個々にズレ方にばらつきが生じ易く、位置検出精度が低下する。位置検出精度が低下すると、レジストの塗布位置がズレる。レジストの塗布位置のズレは、回路形状のズレにつながる。
搬送容器を傾けることにより、沿面距離0mm以上0.5mm以下の範囲内となる個所を作ることができる。これによりセラミックス基板2と金属板3の位置を一定にすることができる。また、搬送容器を傾けながら搬送することにより、搬送中の金属板のズレを抑制することができる。この点からすると沿面距離が0mmの個所があることが好ましい。
また、沿面距離0mm以上0.5mm以下の範囲内となる個所および沿面距離が0.5mmを超えた個所があることにより、位置検出精度を向上させることができる。例えば、CCDカメラを用いた場合、コントラストの差で位置検出を行う。沿面距離が0.5mmを超えた個所があることにより、セラミックス基板の端部を検出し易くなる。つまり、沿面距離0.5mm未満の個所で金属板のズレを防止し、沿面距離0.5mmを超えた個所でセラミックス基板の端部の位置検出精度を向上させることができる。これにより、レジストの塗布位置のズレを防止できる。言い換えると、レジストを塗布してエッチング工程を行うセラミックス回路基板に好適である。
また、エッチング工程により、回路板8および放熱板9の側面に傾斜形状を付与しても良い。また、回路板8および放熱板9の端部から接合層をはみ出させた接合層はみ出し部を設けても良い。
【0014】
また、セラミックス基板2は、様々なものを適用することができる。セラミックス基板としては、窒化珪素基板、窒化アルミニウム基板、アルミナ基板、ジルコニア基板、アルジル基板が挙げられる。なお、アルジル基板とはアルミナとジルコニアを混合したセラミックス焼結体である。また、セラミックス基板2の厚さとしては0.2mm以上3mm以下の範囲内のものが好ましい。
窒化珪素基板は、3点曲げ強度が600MPa以上のものであることが好ましい。また、熱伝導率は80W/m・K以上のものであることが好ましい。窒化珪素基板の強度を上げることにより、基板厚さを薄くすることができる。このため、窒化珪素基板は3点曲げ強度は600MPa以上、さらには700MPa以上が好ましい。窒化珪素基板は基板厚さを2mm以下、さらには0.40mm以下と薄くできる。
また、窒化アルミニウム基板は3点曲げ強度は300~450MPa程度である。その一方、窒化アルミニウム基板の熱伝導率は160W/m・K以上である。窒化アルミニウム基板は強度が低いため、基板厚さは0.60mm以上が好ましい。
また、酸化アルミニウム基板は3点曲げ強度は300~450MPa程度であるが、安価である。また、アルジル基板は3点曲げ強度が550MPa程度と高いが熱伝導率は30~50W/m・K程度である。
セラミックス基板2としては窒化珪素基板であることが好ましい。窒化珪素基板は強度が高い。そのため、搬送容器5を傾けたときの衝撃で破損することがない。
また、金属板3は、銅板(銅合金含む)、アルミニウム板(アルミニウム合金含む)が挙げられる。また、銅板としては無酸素銅板が挙げられる。無酸素銅はJIS-H-3100に示されているように銅純度99.96wt%以上である。
【0015】
また、ろう材は、活性金属ろう材であることが好ましい。
銅板を接合する際の活性金属ろう材は、チタン(Ti)を含有するものとなる。Tiは活性金属である。Tiがセラミックス基板と反応して接合強度を向上させることができる。また、活性金属ろう材に用いるTiは、チタンまたは水素化チタン(TiH)を用いることができる。また、活性金属ろう材は、Ag(銀)、Cu(銅)、Sn(錫)、In(インジウム)、C(炭素)から選ばれる1種または2種以上を含有させることが好ましい。また、活性金属ろう材は、Tiと、CuまたはAgから選ばれる1種または2種と、Sn、InまたはCから選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。
活性金属ろう材の成分としては、Ti(チタン)またはTiH(水素化チタン)を1質量%以上15質量%以下が挙げられる。また、Cu(銅)を15質量%以上85質量%以下、Ag(銀)を0質量%以上70質量%以下が挙げられる。また、Sn(錫)およびIn(インジウム)から選ばれる1種または2種を1質量%以上50質量%以下が挙げられる。また、C(炭素)を0.1質量%以上2質量%以下が挙げられる。
また、アルミニウム板を接合する際の活性金属ろう材は、珪素(Si)またはマグネシウム(Mg)の1種または2種を含有したAl系ろう材であることが好ましい。SiまたはMgが活性金属となる。活性金属ろう材の成分として、Siは0.01質量%以上20質量%以下の範囲内が好ましい。また、Mgは0.01質量%以上20質量%以下の範囲内が好ましい。
活性金属ろう材を用いた加熱接合方法は活性金属接合法と呼ばれる。活性金属ろう材をバインダまたは溶媒と混合して、活性金属ろう材ペーストを作製する。ペーストとすることにより、搬送容器5を傾けた際の金属板3の移動に合わせてろう材層4も移動することができる。また、金属板3の移動範囲が大きい場合は、予めろう材ペーストを広めに塗布することを行っても良い。
セラミックス基板2に活性金属ろう材ペーストを塗布し、その上に金属板3を配置する。この工程により積層体1を作製する。加熱接合工程は、接合温度は600℃以上980℃以下の範囲内が好ましい。
実施形態にかかる積層体の搬送方法は、搬送時のセラミックス基板2と金属板3の位置ズレを抑制できる。このため、接合体の歩留まりも向上させることができる。また、エッチング工程での回路形状のばらつきも抑制することができる。
【0016】
(実施例)
(実施例1~4、比較例1)
窒化珪素基板(縦200mm×横160mm×厚さ0.32mm)の両面に、Tiを含む活性金属ろう材を塗布し、銅板(縦195mm×横150mm×厚さ0.8mm)を配置して、積層体を作製した。搬送容器として、断面コの字状のものを用意した。つまり、搬送容器は底面部、側面部、上面部を有するものである。
搬送容器内に、積層体とセッターを交互に積層配置した。積層個数とは、積層体の個数である。例えば、積層体/セッター/積層体/セッターと積層配置した場合は、積層個数は2個となる。
搬送工程を表1に示すように行った。なお、搬送工程は機械化したものである。
【0017】
【表1】
【0018】
表からわかる通り、実施例1~4は沿面距離0mm以上0.5mm以下の個所が形成された。実施例1はX軸方向にだけ傾けたので、沿面距離0mm以上0.5mm以下の個所は1辺だけであった。実施例2~4は、X軸方向およびY軸方向に傾けたので沿面距離0mm以上0.5mm以下の個所は2辺となった。比較例1は傾けながらの搬送を行っていないので、沿面距離0mm以上0.5mm以下の個所は形成されなかった。また、比較例1は沿面距離のばらつきも生じていた。これは搬送時に金属板の位置ズレが生じているためである。
【0019】
次に、加熱接合して、積層体を作製した。次に、レジスト塗布工程およびエッチング工程を行いセラミックス回路基板を作製した。
レジスト塗布工程は、CCDカメラを用いた位置検出を行いレジストを塗布した。また、CCDカメラを用いた位置検出は沿面距離0.5mmを超えた個所を基準に行った。
目的とするレジスト塗布位置に対し、0mm以上0.3mm以下の範囲内に収まったものを良品とした。また、レジストの位置ズレが0.4mm以上となる個所が一か所でも観察されたものを不良品とした。良品の割合が99%以上100%以下のものを◎、良品の割合が95%以上99%未満のものを〇、95%未満のものを×とした。その結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
実施例は、レジスト塗布位置のズレが低減された。このため、エッチング工程後の回路形状のズレも抑制された。それに対し、比較例1はレジスト塗布位置のズレが大きく、エッチング後の回路形状にばらつきが生じていた。
実施例にかかるセラミックス回路基板の製造方法は、回路形状のばらつきを抑制したものを歩留まり良く得ることができる。
【0022】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態はその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…積層体
2…セラミックス基板
3…金属板
4…ろう材層
5…搬送容器
6…セッター
7…搬送装置
8…回路板
9…放熱板
10…接合層
11…セラミックス回路基板
図1
図2
図3
図4
図5