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特開2024-13650浮選回収率予測装置、浮選回収率予測方法およびプログラム
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  • 特開-浮選回収率予測装置、浮選回収率予測方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013650
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】浮選回収率予測装置、浮選回収率予測方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B03D 1/02 20060101AFI20240125BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240125BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20240125BHJP
   C22B 34/34 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B03D1/02 108
C22B1/00 101
C22B15/00
C22B34/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115902
(22)【出願日】2022-07-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年8月11日にhttps://www.mdpi.com/2075-163X/11/8/869にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 善之
(72)【発明者】
【氏名】平島 剛
(72)【発明者】
【氏名】青木 悠二
(72)【発明者】
【氏名】三木 一
(72)【発明者】
【氏名】グディ パンディ ウィスヌ スーヤンタラ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA09
4K001AA17
4K001BA03
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA03
4K001DB25
(57)【要約】
【課題】複数の鉱物が混合された鉱石に対する浮選において金属の回収率の予測精度を向上させる。
【解決手段】浮選回収率予測装置は、複数の鉱物を含む鉱石から選別対象の金属を分離する浮遊選別において、前記選別対象の金属の回収率を予測するための浮選回収率予測装置であって、前記鉱石に占める可溶性金属比率を受け付ける受付部と、可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報を取得する取得部と、前記可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報と、前記鉱石に占める可溶性金属比率とに基づいて、前記選別対象の金属の回収率を算出する算出部と、算出された前記選別対象の金属の回収率を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉱物を含む鉱石から選別対象の金属を分離する浮遊選別において、前記選別対象の金属の回収率を予測するための浮選回収率予測装置であって、
前記鉱石に占める可溶性金属比率を受け付ける受付部と、
可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報を取得する取得部と、
前記可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報と、前記鉱石に占める可溶性金属比率とに基づいて、前記選別対象の金属の回収率を算出する算出部と、
算出された前記選別対象の金属の回収率を出力する出力部と、を備える、
浮選回収率予測装置。
【請求項2】
前記受付部は、鉱石の粉砕後の粒径と、浮遊選別で用いられる溶液のpH値と、鉱石に占める対象金属の比率及び可溶性金属比率とを受け付け、
前記算出部は、前記可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報と、前記鉱石の粉砕後の粒径と、前記浮遊選別で用いられる溶液のpH値と、前記鉱石に占める対象金属の比率及び前記可溶性金属比率とに基づいて、前記選別対象の金属の回収率を算出する、
請求項1に記載の浮選回収率予測装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報に基づいて、前記鉱石に含まれる鉱物の含有率を算出し、
前記出力部は、算出された前記選別対象の金属の回収率および前記鉱石に含まれる鉱物の含有率を出力する、
請求項1に記載の浮選回収率予測装置。
【請求項4】
前記受付部は、複数の鉱石の混合比を示す情報と、前記複数の鉱石に含まれる各鉱石に占める可溶性金属比率とを受け付け、
前記算出部は、前記可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報と、前記複数の鉱石の混合比と、前記複数の鉱石に含まれる各鉱石に占める可溶性金属比率とに基づいて、前記選別対象の金属の回収率を算出する、
請求項1に記載の浮選回収率予測装置。
【請求項5】
前記選別対象の金属は複数の金属であって、
前記算出部は、前記選別対象の複数の金属に含まれる金属ごとに回収率を算出する、
請求項1に記載の浮選回収率予測装置。
【請求項6】
前記選別対象の金属は、CuまたはMoである、
請求項1に記載の浮選回収率予測装置。
【請求項7】
前記鉱石は、硫黄と銅を含む硫化鉱である、
請求項1に記載の浮選回収率予測装置。
【請求項8】
前記鉱石に含まれる鉱物は、黄銅鉱、斑銅鉱、輝銅鉱、銅藍、緑塩銅鉱および自然銅のいずれか1つを含む、
請求項1に記載の浮選回収率予測装置。
【請求項9】
複数の鉱物を含む鉱石から選別対象の金属を分離する浮遊選別において、前記選別対象の金属の回収率を予測するための浮選回収率予測装置が備えるコンピュータが実行する浮選回収率予測方法であって、
前記鉱石に占める可溶性金属比率を受け付けるステップと、
可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報を取得するステップと、
前記可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報と、前記鉱石に占める可溶性金属比率とに基づいて、前記選別対象の金属の回収率を算出するステップと、
算出された前記選別対象の金属の回収率を出力するステップと、を備える、
浮選回収率予測方法。
【請求項10】
複数の鉱物を含む鉱石から選別対象の金属を分離する浮遊選別において、前記選別対象の金属の回収率を予測するための浮選回収率予測装置が備えるコンピュータに、
前記鉱石に占める可溶性金属比率を受け付けるステップと、
可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報を取得するステップと、
前記可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報と、前記鉱石に占める可溶性金属比率とに基づいて、前記選別対象の金属の回収率を算出するステップと、
算出された前記選別対象の金属の回収率を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮選回収率予測装置、浮選回収率予測方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉱山から工場へ送るまでには、採掘、粉砕、磨鉱、浮選、選鉱など、多様な処理過程を含む。これら処理過程を最適化する方法として、例えば、特許文献1には、採掘および採掘物処理作業のオンラインモニタリングと最適化のための処理方法が開示されている。
【0003】
採掘した鉱石が設定される条件によって親水性または疎水性になることを利用し、選別対象の金属を含むものとそれ以外のものに分離する浮遊選鉱(浮選)を行う方法がある。具体的には、細かく砕いた鉱石に水と薬剤を加え、生じた泡の表面に有価金属を付着させて、選別対象の金属を回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-066992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
採掘される鉱石に含まれる鉱物の割合は様々であり、浮選の条件を調整する必要がある。実際の操業における浮遊選鉱の条件の適否を検討するためには、金属の回収率を予測したいという要望がある。しかしながら、従来の技術では、採掘される鉱石に含まれる鉱物の種類によっては浮遊しにくい組成をもつものがあるため、複数の鉱物が混合された鉱石に対する浮選において金属の回収率を精度良く予測することは困難である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の鉱物が混合された鉱石に対する浮選において金属の回収率の予測精度を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る浮選回収率予測装置は、複数の鉱物を含む鉱石から選別対象の金属を分離する浮遊選別において、前記選別対象の金属の回収率を予測するための浮選回収率予測装置であって、前記鉱石に占める可溶性金属比率を受け付ける受付部と、可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報を取得する取得部と、前記可溶性金属比率と鉱物の含有率との関係性を表す情報と、前記鉱石に占める可溶性金属比率とに基づいて、前記選別対象の金属の回収率を算出する算出部と、算出された前記選別対象の金属の回収率を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
複数の鉱物が混合された鉱石に対する浮選において金属の回収率の予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】浮選回収率予測装置の機能構成の一例を示す図である。
図2】可溶性金属比率と鉱物含有率との関係性を表す情報の一例を示す図である。
図3】浮選回収率予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の第二の実施形態に係る鉱石の混合について説明するための図である。
図5】本発明の第二の実施形態に係る画面表示の一例を示す図である。
図6】本発明の第三の実施形態に係る画面表示の一例を示す図である。
図7】浮選回収率予測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
金属鉱山では採掘された鉱石からの選鉱により目的の金属を含有する鉱物が濃縮された精鉱を生産し、生産された精鉱を精錬所の原料として出荷している。ここで、選鉱工程の生産技術は浮遊選鉱(浮選)が採用されることが多い。その場合、選鉱工程は、破砕、粉砕、浮選、脱水に分類される。浮選の成績は鉱山の収益に深く関連するため、採鉱で得られた鉱石の品位、鉱物情報などを選鉱工程に連携させて、目的金属の回収率を予測することは重要な作業になる。
【0011】
選鉱は、鉱物の表面の濡れ性の差を利用した分離法で、鉱石と液体の懸濁液に空気や窒素などの気体を吹き込みながら攪拌する操作である。このとき、鉱石の粒度、懸濁液のpH、添加する捕収剤、起泡剤、その他条件剤などの薬剤を添加する。一般に、鉱物の表面の疎水性が高いほど、表面に気泡が吸着するため、鉱物が懸濁液中を浮上しやすく、鉱物の表面の親水性が高いほど、鉱物が懸濁液中を浮上しにくい。
【0012】
鉱石は、様々な鉱物が含有されており、採掘される場所も様々である。そして、様々な場所で採掘され、様々な鉱物を含有する鉱石が混合して選鉱工程へ供給されるため、選鉱工程に供給される鉱石が含有する鉱物の割合は都度変化する。そのため、これらの変化に合わせた選鉱処理による回収率の予測、精鉱される鉱石の品位の予測等は困難である。
【0013】
そこで、本発明の実施の形態では、採掘される場所、鉱石の種類、混合割合等を加味し、浮選回収率の予測を行う例について説明する。
【0014】
(第一の実施形態)
以下に、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、浮選回収率予測装置の機能構成の一例を示す図である。本実施形態に係る浮選回収率予測装置10は、受付部11と、取得部12と、算出部13と、出力部14と、を備える。
【0016】
受付部11は、鉱石の粉砕後の粒径と、浮遊選別で用いられる溶液のpH値と、鉱石に占める対象金属の比率及び可溶性金属比率とを受け付ける。例えば、受付部11は、表1に示されるように、浮選処理を行う鉱石についての可溶性金属の比率、処理対象の鉱石に占める対象金属の比率(金属比率)、浮選に用いる粉砕後の鉱石の粒子径、浮選処理時の溶液のpHの値を組にして受け付けてもよいし、予め定められた範囲の値を初期値として使用することを前提に、表1に示される値のうちの一部の値のみを受け付けてもよい。例えば、受付部11は、同じ鉱石を連続的に処理する場合等において、鉱石の粉砕などの処理時のpHのみが変わる場合、粒子径、pH等の値の変更のみを受け付けるようにしてもよい。
【0017】
【表1】
【0018】
取得部12は、可溶性金属比率と鉱物含有率との関係性を表す情報をデータベース装置20から取得する。可溶性金属比率は、鉱物各々の対象金属の総量に対する可溶性の金属量を示す比率である。鉱物含有率は、鉱石中の複数の鉱物各々の比率である。可溶性金属比率と鉱物含有率との関係性を表す情報の具体例については後述する。
【0019】
なお、データベース装置20は、浮選回収率予測装置10との間で通信線、通信ネットワーク等を介して通信可能に接続されている。データベース装置20は、可溶性金属比率と鉱物含有率との関係性を表す情報を記憶する記憶装置である。
【0020】
算出部13は、受付部11が受け付けた可溶性金属比率を用いて複数の鉱物の比率と鉱物毎に浮遊選別を行った結果得られる対象金属の回収率を算出する。
【0021】
出力部14は、算出部13が算出した複数の鉱物の比率及び当該鉱物毎の対象金属の回収率を出力する。
【0022】
図2は、可溶性金属比率と鉱物含有率との関係性を表す情報の一例を示す図である。図2において横軸は、選別対象の金属の鉱石中の総量に対する可溶性金属量の比率を示す。図2における縦軸は、対象金属を含む鉱物の鉱石中に含まれる比率、例えば質量%等を示す。例えば、グラフ901は鉱物Aの含有率であり、グラフ902は鉱物Bの含有率であり、グラフ903は鉱物Cの含有率である。図2によれば、例えば、可溶性金属量の比率が40%である場合、鉱物Aの含有率は約25%、鉱物Bの含有率は約10%、鉱物Cの含有率は約30%であることが予測される。
【0023】
データベース装置20は、採掘された鉱石を分析した結果として、可溶性金属比率と鉱物含有率とを対応させて当該情報を記憶する。
【0024】
可溶性金属比率と鉱物含有率との関係性を表す情報は、例えば様々な地域ごとに産出する鉱石を集めた大量のデータがデータベース化されたものであってもよいし、類似する鉱物の種類を指標に、類似する情報をユーザが選定したものであってもよい。
【0025】
例えば、選別対象の金属が銅(Cu)の場合、鉱石を構成する鉱物が生成されたその場所で鉱床となる初生鉱である一次硫化鉱と、表層付近で風化することによって酸化した酸化鉱が再度硫化鉱となる二次硫化鉱とでは、銅の品位も可溶性の銅の比率も異なる。そこで、複数の鉱石における可溶性の銅の比率に対する各鉱物の含有率の関係性を表す情報を、あらかじめデータベース装置20に保存しておくことによって、鉱物の含有率が予測可能となる。
【0026】
次に、浮選回収率予測装置10の動作について、図面を参照して説明する。浮選回収率予測装置10は、ユーザの操作等によって、浮選回収率予測処理を実行する。
【0027】
図3は、浮選回収率予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。受付部11は、浮選回収率予測要求を受け付ける(ステップS101)。取得部12は、可溶性金属比率と鉱物含有率との関係性を表す情報を取得する(ステップS102)。
【0028】
算出部13は、鉱物含有率及び対象金属の回収率を算出する(ステップS103)。具体的には、算出部13は、回収率の予測に、対象となる金属を含む鉱物種ぞれぞれの浮選速度式を用いてもよい。浮選速度式は、式(1)に示されるように、所定条件における浮選時間に対する対象金属の回収率で表される。
【0029】
R=Rmax(1-ekt)・・・(1)
【0030】
ここで、Rは回収率、Rmaxは最終回収率、kは係数、tは時間である。
【0031】
浮選速度式に用いる定数は、溶解性金属比率と鉱物含有率との関係性を示す情報と共に、予め鉱物種毎にデータベース装置20に保存され、所定の係数として用いられることが好ましい。また、類似する鉱物の種類を指標に、類似する情報をユーザが選定して用いてもよい。
【0032】
出力部14は、鉱物含有率及び対象金属の回収率を出力する(ステップS104)。例えば、出力部14は、最終的に回収される回収率(例えば、対象金属αの回収率X%)と、表2に示されるような、選別対象の金属の含まれる鉱物含有率の一覧とを出力してもよい。
【0033】
【表2】
【0034】
算出部13が浮選速度式に基づき計算するため、出力部14は、表3に示されるような、鉱物の含有率及び選別対象の金属の回収率の時間変化を表す一覧を出力してもよい。例えば、鉱物種によっては浮遊選鉱における選別が困難な鉱物種もあるため、鉱物種毎の回収率の予測結果を示すことによってユーザが浮選を行う際の条件の適否がよりわかりやすくなる場合がある。
【0035】
【表3】
【0036】
なお、選別対象の金属は複数の金属であってもよい。その場合、算出部13は、選別対象の複数の金属に含まれる金属ごとに回収率を算出する。
【0037】
選別対象の金属は、CuまたはMoであってもよい。また、選別される鉱石は、硫黄と銅を含む硫化鉱であってもよい。
【0038】
鉱石に含まれる鉱物は、黄銅鉱(chalcopyrite)、斑銅鉱(bornite)、輝銅鉱(chalcocite)、銅藍(Covellite)、緑塩銅鉱(Atacamite)および自然銅(Native Cu)のいずれか1つを含んでいてもよい。
【0039】
本実施形態に係る浮選回収率予測装置10によれば、可溶性金属比率と鉱物含有率との関係性を表す情報に基づく計算によって、選別対象の金属の回収率を予測することができる。また、選別対象の金属の含まれる鉱物の含有率の一覧を出力することによって、回収される金属の品位を予測することができる。
【0040】
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態は、鉱石の混合比を示す情報の入力を受け付けて、対象となる金属の回収率を予測する点が、第一の実施形態と相違する。よって、以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点を中心に説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには、第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0041】
図4は、本発明の第二の実施形態に係る鉱石の混合について説明するための図である。鉱石は、様々な鉱物が含有されており、採掘される場所も様々である。そして、様々な場所で採掘され、様々な鉱物を含有する鉱石が混合して選鉱工程へ供給されるため、選鉱工程に供給される鉱石が含有する鉱物の割合は都度変化する。そこで、本実施形態に係る浮選回収率予測装置10は、鉱石の混合比を示す情報の入力を受け付けて、対象となる金属の回収率を予測する。これによって、様々な鉱物を含有する鉱石が混合する場合における金属の回収率の予測精度を向上させることができる。
【0042】
本実施形態に係る受付部11は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS101において、第一の実施形態に係る受付部11と同様に、鉱石の粉砕後の粒径と、浮遊選別で用いられる溶液のpH値と、鉱石に占める対象金属の比率及び可溶性金属比率とを受け付ける。それに加えて、本実施形態に係る受付部11は、さらに、表4に示されるように、鉱石の混合比を示す情報を入力として受け付ける。
【0043】
【表4】
【0044】
そして、本実施形態に係る算出部13は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS103において、鉱石ごとに鉱物の含有率を予測して対象となる金属の回収率を算出し、さらに鉱石の混合比と可溶性金属量の割合に基づいて、対象となる金属の回収率を算出する。また、算出部13は、鉱石に含まれる鉱物の含有率に基づいて、回収される金属の品位を算出してもよい。品位の算出方法については、鉱物の含有率と金属の品位との相関関係を示す情報がデータベース装置20に格納され、取得部12が当該情報を取得することによって、算出部13が品位を算出できるようにしてもよい。
【0045】
本実施形態に係る出力部14は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS104において、算出された金属の回収率を出力する。ここで、出力部14は、表5に示されるように、算出部13によって算出された金属の品位を出力してもよい。
【0046】
【表5】
【0047】
算出部13が鉱石ごとに浮選速度式に基づく計算をするため、出力部14は、表6に示されるような、鉱石ごとの鉱物の含有率、選別対象の金属の回収率および品位を表す一覧を出力してもよい。例えば、鉱物種を同時に提示することによって、ユーザは回収率、品位等の鉱石による違いをより理解しやすくなる。例えば、鉱物Xが含まれる場合は回収率が悪くなる、などといったことがある。
【0048】
【表6】
【0049】
図5は、本発明の第二の実施形態に係る画面表示の一例を示す図である。出力部14は、鉱石ごとの鉱物の含有率、選別対象の金属の回収率および品位を表す一覧をディスプレイ等の画面に表示してもよい。ここで、所定の鉱物があらかじめ規定された閾値以上の含有率である場合に、枠904のように強調して表示してもよい。これによって、回収率への影響が大きい鉱物を特定しやすくなり、当該鉱物の含有率が大きい鉱石を判別することができる。
【0050】
本実施形態に係る浮選回収率予測装置10によれば、鉱石の混合比を示す情報の入力を受け付けて、対象となる金属の回収率を予測することができる。また、鉱石の混合比を示す情報に基づいて、選別対象の金属の品位を予測することができる。
【0051】
(第三の実施形態)
以下に図面を参照して、第三の実施形態について説明する。第三の実施形態は、所望の回収率を指定する入力を受け付けて、指定された回収率にするための鉱石の混合比を示す情報を出力する点が、第一の実施形態と相違する。よって、以下の第三の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点を中心に説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには、第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0052】
本実施形態に係る浮選回収率予測装置10は、所望の回収率を指定する入力を受け付けて、指定された回収率にするための鉱石の混合比を示す情報を出力する。これによって、鉱石の混合比を調整することによって、回収率をコントロールし、安定的な浮選環境を実現させることができる。
【0053】
本実施形態に係る受付部11は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS101において、表7に示されるように、対象となる金属の回収率の期待値を示す情報を入力として受け付ける。さらに、受付部11は、金属の品位の期待値を示す情報を入力として受け付けてもよい。
【0054】
【表7】
【0055】
また、本実施形態に係るデータベース装置20は、第一の実施形態に係る溶解性金属比率と鉱物含有率との関係性を示す情報に加えて、表6に示されるような、鉱石ごとの鉱物の含有率、選別対象の金属の回収率および品位を表す情報を記憶している。例えば、事前に、各鉱石のサンプルの可溶性金属の比率から推定することによって、当該情報を生成してもよいし、化学分析、例えば(偏光)顕微鏡、X線回折装置、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)等を利用した測定結果から当該情報を生成してもよい。
【0056】
本実施形態に係る取得部12は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS102において、さらに、鉱石ごとの鉱物の含有率、選別対象の金属の回収率および品位を表す情報を取得する。
【0057】
本実施形態に係る算出部13は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS103において、鉱石ごとの鉱物の含有率、選別対象の金属の回収率および品位を表す情報に基づいて、指定された回収率または品位にするための鉱石の混合比をさらに算出する。
【0058】
本実施形態に係る出力部14は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS104において、表8に示されるように、算出された鉱石の混合比を出力する。
【0059】
【表8】
【0060】
また、本実施形態に係る受付部11は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS101において、表9に示されるように、対象となる金属の所望の複数の回収率を示す情報を入力として受け付けてもよい。
【0061】
【表9】
【0062】
この場合、本実施形態に係る算出部13は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS103において、鉱石ごとの鉱物の含有率、選別対象の金属の回収率および品位を表す情報に基づいて、指定された回収率にする場合の鉱石の混合比を、回収率ごとに算出する。
【0063】
本実施形態に係る出力部14は、図3に示される浮選回収率予測処理のステップS104において、表10に示されるように、回収率ごとに算出された鉱石の混合比を出力してもよい。
【0064】
【表10】
【0065】
また、出力部14は、表11に示されるように、回収率ごとに算出された鉱石の混合比とともに、鉱物種ごとの鉱石の混合比を出力してもよい。
【0066】
【表11】
【0067】
これによって、ユーザが回収率の調整が容易か否かを判断するための情報を提供することができる。
【0068】
図6は、本発明の第三の実施形態に係る画面表示の一例を示す図である。受付部11は、図6に示されるように、画面表示に従ってユーザからのインタラクティブな形式での入力操作を受け付けることによって、対象となる金属の回収率の複数の期待値を示す情報を受け付けてもよい。
【0069】
(浮選回収率予測装置のハードウェア構成)
次に、浮選回収率予測装置10のハードウェア構成について説明する。
【0070】
図7は、浮選回収率予測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。浮選回収率予測装置10は、コンピュータによって構成され、例えば、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置102、補助記憶装置103、入力装置104、表示装置105、通信インターフェース装置106、ドライブ装置107を備える。これらの各装置は、バスで接続されている。
【0071】
CPU101は、浮選回収率予測装置10の動作を制御する主制御部であり、主記憶装置102に格納されたプログラムを読みだして実行することで、上述した各種の機能を実現する。
【0072】
主記憶装置102は、浮選回収率予測装置10の起動時に補助記憶装置103からプログラムを読み出して格納する。補助記憶装置103は、インストールされたプログラムを格納すると共に、後述する各種機能に必要なファイル、データ等を格納する。
【0073】
入力装置104は、各種の情報の入力を行うための装置であり、例えばキーボードやポインティングデバイス等により実現される。表示装置105は、各種の情報の表示を行うためものであり、例えばディスプレイ等により実現される。通信インターフェース装置106は、LANカード等を含み、他の装置等との接続の為に用いられる。
【0074】
本実施形態に係るプログラムは、浮選回収率予測装置10を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。プログラムは、例えば記憶媒体108の配布やネットワークからのダウンロード等によって提供される。プログラムを記録した記憶媒体108は、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記憶媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記憶媒体を用いることができる。
【0075】
また、プログラムは、プログラムを記録した記憶媒体108がドライブ装置107にセットされると、記憶媒体108からドライブ装置107を介して補助記憶装置103にインストールされる。ネットワークからダウンロードされたプログラムは、通信インターフェース装置106を介して補助記憶装置103にインストールされる。
【0076】
また、浮選回収率予測装置10は、複数台のコンピュータを通信可能に接続したシステムとして構成し、上述した各処理部を複数台のコンピュータに分散して実現する構成であってもよい。
【0077】
また、浮選回収率予測装置10は、クラウドシステム上で動作する仮想マシンであってもよい。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10 浮選回収率予測装置
11 受付部
12 取得部
13 算出部
14 出力部
20 データベース装置
101 CPU
102 主記憶装置
103 補助記憶装置
104 入力装置
105 表示装置
106 通信インターフェース装置
107 ドライブ装置
108 記憶媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7