(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136542
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】濁水処理設備の管理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/52 20230101AFI20240927BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C02F1/52 B
B01D21/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047689
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504212611
【氏名又は名称】ランドソリューション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】平尾 孝典
(72)【発明者】
【氏名】原田 要
(72)【発明者】
【氏名】栗原 信一
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 真一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宜幸
(72)【発明者】
【氏名】高柳 克也
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA19
4D015BB09
4D015BB12
4D015CA10
4D015CA11
4D015DA04
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA03
4D015EA32
4D015FA03
4D015FA19
(57)【要約】
【課題】建設現場で発生する濁水の処理設備の稼働状況データを適切に把握して保存しておくことができる濁水処理設備の管理システムを提供する。
【解決手段】建設現場で発生する濁水の凝集処理設備を管理するシステムであって、凝集処理設備の入口及び出口の水の流量測定機及び濃度測定手段と、該流量測定手段及び濃度測定手段の測定値に基づいて水中の固形分及び水分を(流量)×(濃度)から算出する算出手段と、濁水に添加している薬液の吐出量の信号を受信する受信手段と、算出された固形分濃度と薬液吐出量とに基づいて薬剤の対固形分添加率を計算する添加率計算手段と、少なくとも濁水の流量及び濃度、薬剤添加量及び薬剤の対固形分添加率(計算値)の各データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶されたデータの表示手段とを有する濁水処理設備の管理システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場で発生する濁水の凝集処理設備を管理するシステムであって、
凝集処理設備の入口及び出口の水の流量測定機及び濃度測定手段と、
該流量測定手段及び濃度測定手段の測定値に基づいて水中の固形分及び水分を(流量)×(濃度)から算出する算出手段と、
濁水に添加している薬液の吐出量の信号を受信する受信手段と、
算出された固形分濃度と薬液吐出量とに基づいて薬剤の対固形分添加率を計算する添加率計算手段と、
少なくとも濁水の流量及び濃度、薬剤添加量及び薬剤の対固形分添加率(計算値)の各データを記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶されたデータの表示手段と
を有する濁水処理設備の管理システム。
【請求項2】
前記凝集処理設備の凝集処理の凝集状態を光散乱式の凝集状態測定センサで測定し、この測定結果に基づいて凝集剤の種類の選択又は添加量を制御する手段を有する請求項1の濁水処理設備の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木排水等の各種分野で用いられる濁水処理設備の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地中連続壁の構築工事、杭工事、ボーリング工事、シールド工事などの建設現場において発生する土砂を含む濁水は、分級、凝集沈澱、脱水処理などの処理が施されて、固形分である土砂と凝集分離水や脱水ろ液に分離される。
【0003】
この凝集沈澱処理又は脱水処理を効率的に行うため、水溶性合成高分子化合物が開発され、広く使用されている。
【0004】
水溶性合成高分子化合物は、例えばポリアクリルアミドの様なノニオン性、ポリアクリルアミド-ポリアクリル酸又はその塩の共重合物のようなアニオン性、ジアミノメチルアクリレートやジアミノジメチルアンモニウムクロライドの様なカチオン性を有するもののほか、両性高分子化合物が、無機凝集剤と併用される(又は高分子単独で使用される)。濁水のpH、土砂の性状に適した水溶性合成高分子化合物が選定される。泥水中の土砂はこれらの水溶性合成高分子化合物によって凝集され、固形分と水が分離しやすい状態に調質された後、沈澱分離又は加圧による脱水処理が施される。
【0005】
建設現場では、天然地盤を掘削する為、掘削位置、深度によって異なる性状、粒径の土砂が排出される。また、掘削には安定液やグラウト注入剤の様な掘削工事用薬剤を添加することもあり、これらが掘削された土砂及び水と混合され、泥水として排出される。このため、泥水の性状は常に変化しており、土砂を凝集させる水溶性合成高分子化合物は、都度、最適なものを選定する必要がある。
【0006】
建設現場では、受入れ、分級、凝集、脱水、移送などの機械処理の管理、マスバランス(流量、濃度、比重)管理、薬剤使用量(添加量)の管理が必要である。これらは作業員によって実施されるものと機械である程度自動化されているものがある。工事の進捗、工程を管理するには、機械的処理の情報、マスバランスの情報、薬剤使用量などを集約し、現在の工事情報の把握や、次工程のスケジュールなどを決める必要がある。
【0007】
上述のように、建設工事では、掘削地盤は工事の進行に伴い土質が変化する為、それに伴い、処理対象となる掘削汚泥の性状の変動による水質変動により、処理水質が変動し、例えば適正な凝集管理ができていなければ、処理水が悪化することになる。
【0008】
工程によっては、セメント、石灰などの高アルカリ性薬剤の添加によるpHの変化、カルシウムスケール障害の発生などが起こり得る。これにより各設備の能力低下や運転停止が発生するが、広い建設現場全体を把握することは難しい。
【0009】
現場情報の取得方法の多くは、流量計などのそばで計測値を手動で定められたタイミング(午前、午後、夕方など)に記録を取るだけであり、正確な汚泥量、汚泥性状などの工程管理につながるマスバランスを把握されていなかった。
【0010】
排水量については、殆ど管理していないか、電磁流量計を用いて測定しているが、測定値は手動で記録している。
【0011】
濁水処理の固液分離工程において、粒子の大きさに応じて複数の工程から分級された土砂が排出されるため、それぞれの工程から排出される土砂量を把握するのは処理工程の管理、アテリアルバランスの把握、出来高を管理する上で非常に重要である。しかし、この管理には非常に手間がかかるうえ、精度も低い。
【0012】
レーザー光を水中に向けて発光し、水中のフロック等によって散乱される散乱光を受光して凝集状態を測定する凝集状態モニタリングセンサーが特許文献1~3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002-195947号公報
【特許文献2】特開2005-214652号公報
【特許文献3】特開2005-241338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
泥水の処理水の水質の変動を抑制する為には薬品量の最適化が必要であり、従来は、薬品量の最適化には、数回/日の人手による分析が必要であった。その為、処理最適化のタイムラグ、薬注量の過不足、人件費の増加が生じていた。
【0015】
薬注量の不足は、処理水質の悪化を招く。一方、薬注量過多はコストアップ、後段の脱水処理の悪化を招く。
【0016】
泥水は汚泥濃度が数パーセントと高濃度であり、土の密度が2.4~2.6g/cm3程度と大きいため、泥水の比重も、例えば固形分濃度10%ならば、泥水比重1.05程度、20%ならば1.15程度になる。
【0017】
泥水中の固形分の算出は“(容積(量))×比重×濃度”となるため、泥水処理では比重の要素が大きく、光散乱式の濁度計で測定した値のみでは正確に濃度が測定できない。
【0018】
本発明は、建設現場で発生する濁水の処理設備の稼働状況データを適切に把握して保存しておくことができる濁水処理設備の管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の要旨は、以下の通りである。
【0020】
[1] 建設現場で発生する濁水の凝集処理設備を管理するシステムであって、
凝集処理設備の入口及び出口の水の流量測定機及び濃度測定手段と、
該流量測定手段及び濃度測定手段の測定値に基づいて水中の固形分及び水分を(流量)×(濃度)から算出する算出手段と、
濁水に添加している薬液の吐出量の信号を受信する受信手段と、
算出された固形分濃度と薬液吐出量とに基づいて薬剤の対固形分添加率を計算する添加率計算手段と、
少なくとも濁水の流量及び濃度、薬剤添加量及び薬剤の対固形分添加率(計算値)の各データを記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶されたデータの表示手段と
を有する濁水処理設備の管理システム。
【0021】
[2] 前記凝集処理設備の凝集処理の凝集状態を光散乱式の凝集状態測定センサで測定し、この測定結果に基づいて凝集剤の種類の選択又は添加量を制御する手段を有する[1]の濁水処理設備の管理システム。
【発明の効果】
【0022】
本発明の濁水処理設備の管理システムによると、建設現場の濁水の凝集処理設備の流量、濃度、薬剤の添加量及び対固形分添加率等のデータを自動的に把握して保存しておき、必要に応じて表示することができる。
【0023】
これにより、凝集処理設備の運転管理が容易かつ正確に行われ、管理作業の省略化が実現される。
【0024】
本発明の一態様によると、光散乱式の凝集フロック測定装置により凝集状態を確認し、これに基づいて凝集剤を選定したり凝集剤添加量を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0027】
図1の通り、掘削土は、粗分級機(この実施の形態では、振動フィルター)1に供給され、貯水槽22から水が注水され、濁水と礫とに分級される。濁水は撹拌槽(この実施の形態では、曝気槽)2に導入され、撹拌される。撹拌槽2内の水の一部は循環ライン2aによって循環される。
【0028】
撹拌槽2内で撹拌されて土が水に十分に分散された濁水は、中粒分級機(この実施の形態では、スパイラル分級機)3に導入され、砂と濁水とに分級される。
【0029】
濁水は、一旦細粒分級機用原水槽4に貯留された後、細粒分級機(この実施の形態では、遠心分離機)5に導入され、シルト分(例えば粒径0.005mm以下の分級土)と濁水とに分級される。
【0030】
濁水は、泥水槽6及び中継槽7を経て凝集用原水槽8に導入され、ここで無機凝集剤(この実施の形態では、PAC)がPAC添加設備9から添加される。
【0031】
凝集用原水槽8からの送水ライン10において、凝集用原水に対し、アニオン凝集剤添加設備11によってアニオン系ポリマー凝集剤が添加された後、凝集沈殿槽12に導入され、凝集処理水と汚泥とに分離される。凝集処理水は、ライン18を介して濾水・処理水混合槽20に送水される。
【0032】
凝集沈殿槽12からの汚泥は、ライン13において脱水剤(カチオン系ポリマー凝集剤)が脱水剤添加設備14から添加された後、フィルタープレス15に送られ、脱水ケーキと脱水濾液とに分離される。脱水濾液はライン16によって濾水・処理水混合槽20に送水される。
【0033】
この濾水・処理水混合槽20内の水の一部がライン21によって貯水槽22に送水される。
【0034】
この設備内の各部分における送水量又は送泥量を検知するために、以下のセンサが設けられている。
【0035】
貯水槽22から粗分級機1への送水量(加水量)を測定する流量計31
粗分級機1から撹拌槽2への送泥量を測定する流量計32
循環ライン2aの循環量を測定する流量計33
撹拌槽2から中粒分級機への送泥量を測定する流量計34
貯水槽22から中粒分級機3への送水量(加水量)を測定する流量計35
中粒分級機3から原水槽4への送泥量を測定する流量計36
細粒分級機5から泥水槽6への送泥量を測定する流量計37
中継槽7から凝集用原水槽8への送泥量を測定する流量計38
凝集用原水槽8から凝集沈殿槽12への送泥量を測定する流量計40
凝集沈殿槽12からフィルタープレス15への送泥量を測定する流量計41
【0036】
また、各凝集剤添加設備9,11,14からの薬注量を測定するために流量計44が設けられてもよいが、この実施の形態では、薬注ポンプの回転数を制御するインバータ信号センサ42が設けられている。
【0037】
PAC添加設備のタンクには、残量を検知するための液量計45が設けられている。
【0038】
細粒分級機用原水槽4及び中継槽7には、SS計46,50及びpH計47,51が設けられている。
【0039】
凝集沈殿槽12には、光散乱式の凝集状態測定センサ52(この実施の形態では、栗田工業株式会社製 S.sensingCS-p)が設けられている。濾水・処理水混合槽20には、光散乱式の凝集状態測定センサ53、SS計54及びpH計55が設けられている。
【0040】
これらの測定計器の測定信号は、管理装置に送信される。
【0041】
【0042】
管理装置60は、コンピュータを備えており、各センサ(流量計、SS計、pH計、液量計、インバータ信号センサ、凝集状態測定センサ)の検出信号が入力部61を介して入力される。
【0043】
なお、各センサ又は管理装置60には、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路が設けられており、管理装置60内ではデジタル信号として処理される。
【0044】
管理装置60のコンピュータの記憶部63は、管理プログラムのほか、各センサのデータを記憶するメモリを備えている。コンピュータがプログラムを実行することにより、演算部62が構成される。
【0045】
演算部62では、濁水の流量と濃度(SS計検出値)と、必要に応じさらに比重計(図示略)の比重値に基づいて濁水中の固形分量を算出する。
【0046】
この演算結果は、各入力データと共に記憶部のメモリに保存される。
【0047】
出力部64は、表示要求信号が入力されると、この保存データを液晶パネル等よりなるディスプレイ65に表示すると共に、印刷要求信号が入力されるとプリンター66に印刷を行わせる。また、必要に応じ、集中管理センターのホストコンピューターに送信する。表示や印刷は帳票形式であってもよく、処理フローに従ったフローチャートの各ブロックにデータを表示させる表示であってもよい。また、データのうち所望部分のみを表示又は印刷するようにしてもよい。
【0048】
前述の通り、建設現場では、天然地盤を掘削する為、掘削位置、深度によって異なる性状、粒径の土砂が排出される。また、掘削には安定液やグラウト注入剤の様な掘削工事用薬剤を添加することもあり、これらが掘削された土砂及び水と混合され、泥水として排出される。このため、泥水の性状は常に変化しており、土砂を凝集させる水溶性合成高分子化合物は、都度、最適なものを選定する必要がある。
【0049】
本実施の形態によると、光散乱式の凝集フロック測定装置(S.sensingCS-p)により、汚泥の凝集状態が測定され、この凝集状態をディスプレイ等によって確認できるので、凝集剤を適切に選定することができる。加えて、処理最適化のタイムラグが小さくなり、薬注量の過不足及び人件費の増加が抑制される。
【0050】
即ち、本実施の形態では、凝集状態センサによる水質の連続測定により水質の変動を常に読み取る。そして、連続的に測定された凝集状態を確認して、高分子ポリマーの種類を選択し、添加量を制御する。また、従来は、水質分析、1日の処理量管理、工程の管理、汚泥性状の変化、機械の故障による各工程の作業効率の低下などに、数時間/日を費やしていたが、上記の通り、これを自動化することで、これらに費やしていた時間の削減と省力化が実現される。
【0051】
なお、土質が変化した場合、その土質によって、作用する凝集剤の割合(対固形分添加率)は異なる為、凝集しやすい土質なのか、凝集しづらい土質なのか、添加材の影響で凝集性が低下しているのかを把握するために、泥水中の固形分濃度を算出し、連続監視している薬剤使用量と掛け合わせ、例えば凝集状態を監視することができる。
【0052】
例えば、固形分濃度と薬剤添加量の関係から、汚泥中の“固形分当たりの薬剤添加量(%対ds)”を管理装置で試算でき、この値が大きくなった場合は、難凝集性と判断することができるため、より正確な薬剤管理が可能となる。
【0053】
また、凝集フロックの大きさが一定になるように、薬剤添加量を管理する事で、一定の沈降速度が確保でき、処理水質を維持できる。
【0054】
また、建設現場では、受入れ、分級、凝集、脱水、移送などの機械処理の管理、マスバランス(流量、濃度、比重)管理、薬剤使用量(添加量)の管理が必要である。この実施の形態によると、マスバランスの情報、薬剤使用量などを集約し、現在の工事情報を容易に把握でき、次工程のスケジュールなどを決めることができる。
【0055】
また、従来、現場情報の取得方法の多くは、流量計などのそばで計測値を手動で定められたタイミング(午前、午後、夕方など)に記録を取るだけであり、正確な汚泥量、汚泥性状などの工程管理につながるマスバランスを把握されていなかった。これに対し、本実施の形態では、各センサの計測値やそれに基づく演算値を管理装置の管理、計算、及び帳票出力することで、進捗管理や薬剤添加率の算出が可能となる。建設工事は工期内に完了させる必要があり、日々の進捗管理が重要である。
【0056】
各設備の運転データを自動で帳票化し、出力することは帳票作成時間を短縮し、作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 粗粒分級機
2 撹拌槽
3 中粒分級機
5 細粒分級機
9 PAC添加設備
12 凝集沈殿槽
15 フィルタープレス
20 濾水・処理水混合槽
60 管理装置