IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京精密の特許一覧

特開2024-136551自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ
<>
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図1
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図2
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図3
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図4
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図5
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図6
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図7
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図8
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図9
  • 特開-自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136551
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサ
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20240927BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240927BHJP
   B23B 31/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B23Q3/155 Z
B23Q17/00 A
B23B31/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047701
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金井 謙次郎
(72)【発明者】
【氏名】戸ヶ▲崎▼ 満俊
(72)【発明者】
【氏名】武田 一希
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
3C032
【Fターム(参考)】
3C002AA04
3C002BB01
3C002HH06
3C002KK04
3C029EE02
3C032AA01
3C032FF04
(57)【要約】
【課題】渦電流センサを用いたATC振れ検出システムにおいて、検出精度を損なうこと無く、ツールチェンジ動作を高速にすることが可能な自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサを得る。
【解決手段】工具25が取り付けられたツールホルダ11を主軸ヘッド26に装着してワーク24を加工する自動工具交換装置付き工作機械において、ツールホルダ11のフランジ部11Bの外周面に測定端面1-4が対向するように設置された渦電流センサ1と、渦電流センサ1で測定されたデータに基づいて、主軸ヘッド26へ装着された工具25-1の振れを検出するデータ処理装置3と、を有し、渦電流センサ1は、円筒容器であるボビン内1-3に保持され渦巻き状に形成されたコイル1-2と、コイル1-2の軸中心に測定端面1-4側に配置された軟質磁性体であるコア1-1と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が取り付けられたツールホルダを主軸ヘッドに装着し、前記主軸ヘッドを回転駆動してワークを加工する自動工具交換装置付き工作機械において、
前記ツールホルダのフランジ部の外周面に測定端面が対向するように設置された渦電流センサと、
前記渦電流センサで測定されたデータに基づいて、前記主軸ヘッドへ装着された工具の振れを検出するデータ処理装置と、を有し、
前記渦電流センサは、
円筒容器であるボビン内に保持され渦巻き状に形成されたコイルと、
前記コイルの軸中心に前記測定端面側に配置された軟質磁性体であるコアと、
を備えたことを特徴とする自動工具交換装置付き工作機械。
【請求項2】
前記コアの軸方向長さであるコア長は、前記コイルの軸方向長さであるコイル長と実質的に等しい長さとされたことを特徴とする請求項1に記載の自動工具交換装置付き工作機械。
【請求項3】
前記コアの軸方向長さであるコア長は、前記コイルの軸方向長さであるコイル長よりも前記測定端面と反対側に延長されたことを特徴とする請求項1に記載の自動工具交換装置付き工作機械。
【請求項4】
前記コイルの径は、前記フランジ部の厚さHよりも小さい径とされたことを特徴とする請求項1に記載の自動工具交換装置付き工作機械。
【請求項5】
前記コアの材質は、ニッケル系フェライトコア、マンガン系フェライトコア、パーマロイのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の自動工具交換装置付き工作機械。
【請求項6】
前記コイルの軸方向長さであるコイル長に対する前記コアの軸方向長さであるコア長の比率(コア長/コイル長)は1.35~1.65とされたことを特徴とする請求項1、3、4、5のいずれか1項に記載の自動工具交換装置付き工作機械。
【請求項7】
前記コイルの軸方向長さであるコイル長に対する前記コアの軸方向長さであるコア長の比率(コア長/コイル長)は1.40~1.60とされたことを特徴とする請求項1、3、4、5のいずれか1項に記載の自動工具交換装置付き工作機械。
【請求項8】
前記コイルの軸方向長さであるコイル長に対する前記コアの軸方向長さであるコア長の比率(コア長/コイル長)は1.70以下とされたことを特徴とする請求項1、3、4、5のいずれか1項に記載の自動工具交換装置付き工作機械。
【請求項9】
自動工具交換装置付き工作機械の主軸ヘッドへ装着された工具の振れの検出に用いられる渦電流センサにおいて、
円筒容器であるボビン内に保持され渦巻き状に形成されたコイルと、
該コイルの軸中心に測定端面側に配置された軟質磁性体であるコアと、
を備え、前記コイルの軸方向長さであるコイル長に対する前記コアの軸方向長さであるコア長の比率(コア長/コイル長)が1.35~1.65とされた渦電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NC(数値制御)加工機やマシニングセンタをはじめとするワーク(加工対象物、測定対象物)の加工を自動制御によって行う自動制御型の工作機械に関し、特に、加工用工具を適宜選択して着脱する自動工具交換装置(ATC)を備え、加工対象物の加工途中や一応の加工処理が終了した時点で、ワークの形状等を自動的に測定する自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサに好適である。
【背景技術】
【0002】
NC加工機やマシニングセンタは、加工工程に従って各種工具を自動的に選択し、主軸に自動で装着して多種類の加工を行う装置である。そして、ワークを載置固定する加工用テーブルと、工具を取り付ける工具主軸を通る工具主軸の位置に装着された加工用の装着工具を駆動する主軸ヘッドと、主軸ヘッドに取り付けられる装着工具を適宜選択して着脱する自動工具交換装置(ATC装置)とを備えている。
【0003】
工具の交換は自動工具交換(ATC:オートツールホルダチェンジ)装置で行われる。ATC装置は、工具が取り付けられたツールホルダを、工具マガジンから自動で取り出し、主軸に自動で装着する(ツールチェンジ動作)。工具は、ATC装置による装着及び脱着が可能なように、大きさや形状等が所定の規格によって定められたツールホルダ部に取り付けられている。
【0004】
自動工具交換装置は、加工品のコストダウン、サイクルタイム(一回の工程にかかる所要時間)を短縮するため、ツールチェンジ動作を高速化することが望まれている。通常、ツールチェンジ動作において、工具はマシニングセンタの主軸から着脱される際に左右に振れながら工具マガジンに収まる。従来、工具の振れは、渦電流センサを用いて金属である工具が回転している時の工具と渦電流センサとのギャップを測定することで、ATC振れ検出システムを構成していた。
【0005】
ATC振れ検出システムにおいて、渦電流センサは、主軸ヘッドにブラケットを介して取り付け、主軸ヘッドに装着されたツールホルダのフランジ部の外周面までの距離を変位の電気信号として検出することが知られ、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-89738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術において、渦電流センサは、検出精度を高めるためにはツールホルダのフランジ部の外周面に可能な範囲で近い位置に配置する必要があった。また、ツールチェンジ動作を高速化した際の工具の振れは大きくなり、工具と渦電流センサとのギャップ(距離)は、渦電流センサと工具との衝突を防ぐために拡大する必要があった。
【0008】
渦電流センサと工具とが衝突した場合は、渦電流センサが破壊されて故障し、渦電流センサの外ケース割れや内部配線の破断となる。従来の渦電流センサは検出距離が短く、工具と渦電流センサとのギャップ(距離)を拡大した場合、検出精度を高めることが困難であった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、渦電流センサを用いたATC振れ検出システムにおいて、検出精度を損なうこと無く、ツールチェンジ動作を高速にすることが可能な自動工具交換装置付き工作機械及びそれに用いられる渦電流センサを提供することにある。また、他の目的は、渦電流センサを用いたATC振れ検出システムの信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、工具が取り付けられたツールホルダを主軸ヘッドに装着し、前記主軸ヘッドを回転駆動してワークを加工する自動工具交換装置付き工作機械において、前記ツールホルダのフランジ部の外周面に測定端面が対向するように設置された渦電流センサと、前記渦電流センサで測定されたデータに基づいて、前記主軸ヘッドへ装着された工具の振れを検出するデータ処理装置と、を有し、前記渦電流センサは、円筒容器であるボビン内に保持され渦巻き状に形成されたコイルと、前記コイルの軸中心に前記測定端面側に配置された軟質磁性体であるコアと、を備えたものである。
【0011】
また、上記の自動工具交換装置付き工作機械において、前記コアの軸方向長さであるコア長は、前記コイルの軸方向長さであるコイル長と実質的に等しい長さとされたことが好ましい。
【0012】
さらに、上記の自動工具交換装置付き工作機械において、前記コアの軸方向長さであるコア長は、前記コイルの軸方向長さであるコイル長よりも前記測定端面と反対側に延長されたことが好ましい。
【0013】
さらに、上記の自動工具交換装置付き工作機械において、前記コイルの径は、前記フランジ部の厚さHよりも小さい径とされたことが好ましい。
【0014】
さらに、上記の自動工具交換装置付き工作機械において、前記コアの材質は、ニッケル系フェライトコア、マンガン系フェライトコア、パーマロイのいずれかであることが好ましい。
【0015】
さらに、上記の自動工具交換装置付き工作機械において、前記コイルの軸方向長さであるコイル長に対する前記コアの軸方向長さであるコア長の比率(コア長/コイル長)は1.35~1.65とされたことが好ましい。
【0016】
さらに、上記の自動工具交換装置付き工作機械において、前記コイルの軸方向長さであるコイル長に対する前記コアの軸方向長さであるコア長の比率(コア長/コイル長)は1.40~1.60とされたことが好ましい。
【0017】
さらに、上記の自動工具交換装置付き工作機械において、前記コイルの軸方向長さであるコイル長に対する前記コアの軸方向長さであるコア長の比率(コア長/コイル長)は1.70以下とされたことが好ましい。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明は、自動工具交換装置付き工作機械の主軸ヘッドへ装着された工具の振れの検出に用いられる渦電流センサにおいて、円筒容器であるボビン内に保持され渦巻き状に形成されたコイルと、該コイルの軸中心に測定端面側に配置された軟質磁性体であるコアと、を備え、前記コイルの軸方向長さであるコイル長に対する前記コアの軸方向長さであるコア長の比率(コア長/コイル長)が1.35~1.65とされたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自動工具交換装置付き工作機械において、ツールホルダのフランジ部の外周面に測定端面が対向するように設置された渦電流センサは、円筒容器であるボビン内に保持され渦巻き状に形成されたコイルと、コイルの軸中心に測定端面側に配置された軟質磁性体であるコアと、を備えるので、渦電流センサと工具とのギャップ(距離)を拡大しても検出精度を損なうことが無い。したがって、渦電流センサと工具とのギャップ(距離)を拡大してツールチェンジ動作の高速化に伴う渦電流センサと工具の衝突を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来の渦電流センサ及び本発明の一実施の形態に係る渦電流センサの断面図
図2】本発明の実施の形態に係るマシニングセンタ(自動工具交換装置付き工作機械)を示す正面図
図3】本発明の実施の形態に係るマシニングセンタ(自動工具交換装置付き工作機械)を示す側面図
図4】ツールホルダの装着状態を示す断面図
図5】ATC振れ検出システムを示すブロック図
図6】ツールホルダの着脱状態を示す断面図
図7】渦電流センサによる高周波磁束の発生状態を示す図
図8】渦電流センサによる高周波磁束を計算機シミュレーションで可視化した図
図9】距離対渦電流センサの出力電圧を示すグラフ
図10】コイル長に対するコア長の比率対感度を解析した結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、渦電流センサ1の断面図を示し、(a)は従来の渦電流センサ1、(b)はコア1-1を配置した例、(c)は、本発明の実施の形態に係る渦電流センサ1である。渦電流センサ1は、内部のコイル1-2に高周波電流を流して、高周波磁束を発生させる。
【0022】
高周波磁束内の測定対象物(金属)は、電磁誘導作用によって、対象物表面に磁束の通過と垂直方向の渦電流が流れる。渦電流センサ1と測定対象物(金属)との距離の変化は、コイルを貫く磁束の量の変化となり、コイル1-2のインピーダンスが変化する。そして、距離は、この変化に伴う発振振幅を整流して直流電圧の変化として測定される。
【0023】
渦電流センサ1は、測定対象物となるツールホルダ11のフランジ部11B(図5参照)の外周面に測定端面1-4が対向するように設置される。渦巻き状に形成された円板状のコイル1-2は、エポキシ等のプラスティックで形状を保持されたのち、樹脂製のキャップ形状の円筒容器であるボビン1-3内に保持されている。ボビン1-3は、円筒状の外ケース1-5に収納される。典型的な渦電流センサ1は、外ケース1-5の外径がφ5mmであり、軸方向長さは約16mmである。コイル1-2の軸方向長さであるコイル長は、2mm程度である。
【0024】
図1(b)は、渦電流センサ1内のコイル1-2の軸中心に高周波数領域で透磁率が下がらないフェライト材等による軟質磁性体であるコア1-1を測定端面1-4側に配置した例である。図1(b)で示したコア1-1の軸方向長さであるコア長は、コイル1-2の軸方向長さであるコイル長と実質的に等しい長さとしている。これにより、コア1-1を貫く磁束密度は、増加して指向性が上がるので、図1(a)の従来の渦電流センサ1に比べ感度が向上する。このとき、コア1-1は、コイル1-2の測定端面1-4側の端部からは突出しないよう配置されている。言い換えれば、コア1-1と、コイル1-2とが測定端面1-4側ではフラットに段差のないように(つらいち:面一)配置される。
【0025】
図1(c)は、一実施の形態による渦電流センサ1であり、コア1-1は、測定端面1-4と反対側となる後ろ方向に延長、つまり、コア1-1の軸方向長さであるコア長は、コイル1-2の軸方向長さであるコイル長よりも測定端面1-4と反対側に延長されている。図1(c)は、コイル長に対するコア長の比率(コア長/コイル長)は略1.50(150%)としたものである。これにより、コア1-1を貫く磁束密度は、より増加して指向性が上がるので、図1(b)の渦電流センサ1に比べ感度が向上する。
【0026】
したがって、同じ感度を得る場合において、渦電流センサ1と測定対象物(金属)との距離、つまり、渦電流センサ1とツールホルダ11のフランジ部11Bの外周面までの距離d(図5参照)を大きくできるので、距離d(図5参照)を拡大して渦電流センサ1とツールホルダ11との衝突を回避することが可能となる。
【0027】
一実施の形態による渦電流センサ1の詳細を説明する前に、自動工具交換装置(ATC装置)を備えたマシニングセンタ20を説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るマシニングセンタ20を示す正面図、図3は側面図である。
【0028】
図2及び図3において、ワーク(加工時には加工対象物となり、測定時には測定対象物となる。)24は、マシニングセンタ20の可動テーブル21の上面に載置した状態で固定具23によって固定される。ワーク24の上方に装着工具25-1が取り付けられる主軸ヘッド26が配設されている。
【0029】
マシニングセンタ20は、ワーク24の取り付けを変えずに、フライス・穴あけ・中ぐり・ねじ立てなど種々の加工を行う数値制御工作機械である。工具マガジン28には多数の工具25を格納している。そして、コンピュータ数値制御の指令によって工具25を自動的に交換して加工を行う。したがって、加工を主目的としているため、マシニングセンタ20の設置された環境は、微粒子であるオイルミスト、粉塵があり、さらに、ワーク及びスピンドル周辺にはゴミ、切粉が存在する。
【0030】
主軸ヘッド26は、工具25を垂直方向に送る機構と水平面内で回転動作を与える機構を備え、工具主軸29は装着工具25-1が回転する回転軸となる。自動工具交換装置(ATC装置)27により、工具25は個々にツールホルダ11に取り付けられて、ツールホルダ11が主軸ヘッド26へ自動的に装着及び脱着される。
【0031】
また、自動工具交換装置(ATC装置)27は、制御装置22の制御の下でアーム17を用いて、工具25を収納する工具マガジン28からツールホルダ11を介して装着工具25-1を取り出す。そして、自動工具交換装置(ATC装置)27は、主軸ヘッド26への装着工具25-1の装着及び脱着、工具マガジン28への収納を行う機構を備えている。
【0032】
可動テーブル21のX軸及びY軸方向への移動制御、主軸ヘッド26のZ軸方向への移動制御、装着工具25-1の交換制御等、切削等の加工、ワーク24の形状や加工誤差の測定に係わるこれらの一連の制御は、制御装置22がその内部に記憶している加工用及び測定プログラムを実行することによって行われる。
【0033】
図4は、ツールホルダの装着状態を示す断面図であり、主軸ヘッド26へツールホルダ11を装着した状態を示している。ツールホルダ11は、円錐状の嵌合部11Aを有しており、嵌合部11Aを主軸ヘッド26に形成された円錐状の被嵌合部26Aに嵌合させて装着される。装着は、まず、軸杆33を上方に引っ張ることにより、ボール保持体34及びボール35が移動する。
【0034】
次に、ボール35の移動により、プルスタッド(ドローイングボルト)36が引っ張られ、ツールホルダ11の円錐状の嵌合部11Aが主軸ヘッド26の円錐状の被嵌合部26Aに押し付けられる。これにより、嵌合部11Aが被嵌合部26Aと密着して装着(チャッキング)がなされる。
【0035】
図5は、ATC振れ検知システムを示すブロック図であり、装着工具25-1を保持するツールホルダ11のフランジ部11Bの形状測定部50を示している。形状測定部50は、ATC装置で主軸ヘッド26に装着されたツールホルダ11の装着状態を自動で検出する装置であり、主として渦電流センサ1とデータ処理装置3とで構成されている。渦電流センサ1は、主軸ヘッド26にブラケット10を介して取り付けられている。渦電流センサ1は、主軸ヘッド26に装着されたツールホルダ11のフランジ部11Bの外周面までの距離dを信号電圧として検出する。
【0036】
ツールホルダ11の形状は、嵌合部11Aのみならず、フランジ部11Bの外周形状も規格されて、同一化されている。したがって、フランジ部11Bの外周形状を測定することにより、装着工具25-1の装着状態が分かる。外周形状は、ツールホルダ11を一回転させて距離dを測定することにより求められる。
【0037】
データ処理装置3は、渦電流センサ1で測定されたデータに基づき、ツールホルダ11の装着工具25-1の装着状態を示す振れを検出するもので、A/Dコンバータ4、CPU6、メモリ5、入出力回路7等を備えている。A/Dコンバータ4は、渦電流センサ1から出力された信号電圧を、ディジタル信号に変換してCPU6に出力する。
【0038】
データ処理装置3は、ディジタル信号に変換されたデータに基づいて、主軸ヘッド26へ装着された装着工具25-1の装着状態を示す振れを検出する。CPU6による距離dの演算処理は、入出力回路7を介して制御装置22から測定開始の指令を受けて行われる。そして、渦電流センサ1から出力される距離dのデータをメモリ5に記憶する。
【0039】
図6は、ツールホルダ11の着脱状態を示す断面図であり、主軸ヘッド26から装着工具25-1が取り付けられたツールホルダ11を着脱する際の状態を示している。通常、図6(a)に示すように、ツールホルダ11は振れが無く、主軸ヘッド26から矢印のように着脱が行われる。ところが、図6(b)に示されるように、ツールホルダ11が傾いて振れながら着脱すると、ツールホルダ11のフランジ部11Bと渦電流センサ1とが衝突する。
【0040】
渦電流センサ1とツールホルダ11とが衝突した場合は、渦電流センサが破壊されて故障し、渦電流センサの外ケース割れや内部配線の破断となる。図6(b)に対して、図6(c)に示すようにツールホルダ11のフランジ部11Bの外周面までの距離dを大きくすれば渦電流センサ1とツールホルダ11との衝突を避けることができる。
【0041】
また、ツールホルダ11のフランジ部11Bの外周面までの距離dを大きくすることは、単に、装着工具25-1の回転中の装着状態、例えばゴミ、切粉が嵌合部11Aと被嵌合部26Aとの間に混入して振れが大きくなった状態、を検知するのみならず、ツールホルダ11を着脱する際にツールホルダ11が暴れることも判定できる。
【0042】
図7は、渦電流センサ1による高周波磁束の発生状態を示す図であり、図7(a)に示すように、コイル1-2に高周波電流を流した時の高周波磁束は、対象金属となるフランジ部11Bに対し放射状に発生する。また、コイル1-2は、図7(b)に示すように、径を大きくすることで感度を高め、距離dを広くすることができる。
【0043】
しかし、この場合は、設置の制限に加えて、高周波磁束の範囲が測定対象であるフランジ部11Bの厚さHよりも大きくなることで周囲金属の影響を受けることになる。そのため、コイル1-2の径は、フランジ部11Bの厚さHよりも小さい径とすることが好ましい。なお、コア1-1の径は、太い方が良いが、コイル1-2の径と連動して定め、コイル1-2の内径以内とする。
【0044】
図8は、渦電流センサ1による高周波磁束を計算機シミュレーションで可視化した図であり、図8(a)は図1(a)、すなわちコア1-1のない場合、図8(b)は図1(b)すなわち、コイル長と実質的に等しい長さのコア1-1を備える場合、及び、図8(c)は図1(c)、コイル長より長いコア1-1を備える渦電流センサ1を用いて高周波電流を流した場合の磁束分布を可視化して示している。
【0045】
図8(a)の従来の渦電流センサ1において、高周波磁束はコイル1-2の先端(測定端面1-4)より放射状に広がり、フランジ部11Bに対向する中央の磁束が粗となり、磁束密度が低い。図8(b)では、中央の磁束が図8(a)に比べ密(図では磁束が集中して色が濃くなっている)となり、磁束密度が高くなることが分かる。
【0046】
図8(c)では、中央の磁束が図8(b)に比べより密となり、より磁束密度が高くなることが分かる。磁束分布は、より中央に集中して指向性も上昇し、渦電流センサ1の感度が向上する。コア1-1の材質は、ニッケル系フェライトコア、マンガン系フェライトコア、パーマロイ等を用いることが温度変化の影響を避ける意味でも好ましい。
【0047】
また、渦電流センサ1の感度調整は、コア1-1の材質を変えることで可能であり、渦電流センサ1の検出距離をコントロールすることができる。なお、感度の調整は、データ処理装置3(図5参照)の許容入力電圧範囲を超えないようにするために必要となる。すなわち、コア1-1を備えることにより、感度、及び、検出距離を、渦電流センサ1を大型化せずとも、目的に合わせて適宜調整できる。
【0048】
図9は、距離d対渦電流センサ1の出力電圧を示すグラフである。縦軸は渦電流センサ1の出力電圧(V)、横軸は渦電流センサ1とのフランジ部11Bの外周面までの距離dを示している。図9(a)は図1(a)、図9(b)は図1(b)、図9(c)は図1(c)で示した渦電流センサ1で測定した結果である。各グラフの傾きは、渦電流センサ1の感度となる。そして、渦電流センサ1を設置する位置は、傾きが大きい点とすることが感度を大きくする上で好ましい。
【0049】
図9(a)は、コア1-1が無い渦電流センサ1であり、距離dを1mmとなるように渦電流センサ1をA点で設置すると、感度は7V/mmであった。同様に図9(b)は、図1(b)のようにコア1-1を配置した渦電流センサ1であり、距離dを2mmとなるように渦電流センサ1をB点で設置すると、感度は7V/mmであった。これにより、コア1-1を配置した渦電流センサ1は、コア1-1が無い場合に比べ感度を落とさずに距離dを広げることができる。
【0050】
図9(c)は、図1(c)のようにコア1-1を後ろ方向に延長して配置したものであり、距離dを2mmとなるように渦電流センサ1をB点で設置すると、感度は14V/mmであった。これにより、コア1-1を延長した渦電流センサ1は、コア1-1が無い場合に比べ距離dを広げるばかりで無く、感度を向上できることが分かる。したがって、コア1-1を延長して配置した渦電流センサ1は、渦電流センサ1とツールホルダ11との衝突を回避できるだけで無く、コイル1-2の径を大きくすること無く指向性を上昇させて感度を向上できる。
【0051】
図10は、コイル長に対するコア長の比率対感度を解析した結果を示すグラフである。横軸はコイル長に対するコア長の比率(コア長/コイル長、単位%)、縦軸は感度比を示し、従来の渦電流センサ1の感度を基準にした倍数で示している。図10は距離dを一定にした結果である。
【0052】
図10より、コイル1-2の軸方向長さであるコイル長に対するコア1-1の軸方向長さであるコア長の比率(コア長/コイル長)は、図9で示したように距離dを2倍にした位置で感度を向上するには135~165%(1.35~1.65)(図中Mの範囲)、より好ましくは140~160%(1.40~1.60)とすることが良い。また、コア長の比率(コア長/コイル長)は、感度がより向上する観点では、170%(1.70)以下とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1…渦電流センサ
1-1…コア
1-2…コイル
1-3…ボビン
1-4…測定端面
1-5…外ケース
3…データ処理装置
4…A/Dコンバータ
5…メモリ
6…CPU
7…入出力回路
10…ブラケット
11…ツールホルダ
11A…嵌合部
11B…フランジ部
17…アーム
20…マシニングセンタ
21…可動テーブル
22…制御装置
23…固定具
24…ワーク
25…工具
25-1…装着工具
26…主軸ヘッド
26A…被嵌合部
28…工具マガジン
29…工具主軸
33…軸杆
34…ボール保持体
35…ボール
50…形状測定部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10