(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136554
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】光半導体素子および光半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/22 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01S5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047704
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 直輝
(72)【発明者】
【氏名】西條 義人
(72)【発明者】
【氏名】川北 泰雅
(72)【発明者】
【氏名】吉田 順自
(72)【発明者】
【氏名】石川 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏辰
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA21
5F173AA41
5F173AH03
5F173AP62
5F173AR96
(57)【要約】
【課題】例えば、活性層の側面における光学損傷を抑制することが可能となるような、より改善された新規な構成を有した光半導体素子、および当該光半導体素子の製造方法を得。
【解決手段】光半導体素子は、例えば、第一方向に第一クラッド層と、活性層と、第二クラッド層と、が積層され、第一方向と交差した第二方向における所定幅で第一方向および第二方向と交差した第三方向に延び、第二方向の端部および第二方向の反対方向の端部に側面を有した、メサと、第一クラッド層と電気的に接続された第一電極と、第二クラッド層と電気的に接続された第二電極と、を備え、側面に沿って活性層を覆う窓領域が設けられる。メサは、GaAs系半導体材料で作られてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に第一クラッド層と、活性層と、第二クラッド層と、が積層され、前記第一方向と交差した第二方向における所定幅で前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延び、前記第二方向の端部および前記第二方向の反対方向の端部に側面を有した、メサと、
前記第一クラッド層と電気的に接続された第一電極と、
前記第二クラッド層と電気的に接続された第二電極と、
を備え、
前記側面に沿って前記活性層を覆う窓領域が設けられた、光半導体素子。
【請求項2】
前記メサは、GaAs系半導体材料で作られた部位を有した、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記窓領域は、前記メサ内に設けられた混晶化層である、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記窓領域は、前記メサ内に設けられた不純物拡散層である、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記窓領域は、前記メサ外に設けられたワイドバンドギャップ層である、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記メサに対して前記第二方向にずれて位置し、当該メサと同じ積層構造を有した積層部を備え、
前記積層部と前記メサとの間にトレンチが設けられた、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記メサは、前記第三方向に向かうにつれて前記幅が変化する部位を有した、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項8】
半導体レーザ素子として構成された、請求項1~7のうちいずれか一つに記載の光半導体素子。
【請求項9】
半導体光増幅器として構成された、請求項1~7のうちいずれか一つに記載の光半導体素子。
【請求項10】
第一方向に第一クラッド層と、活性層と、第二クラッド層と、が積層され、前記第一方向と交差した第二方向における所定幅で前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延び、前記第二方向の端部および前記第二方向の反対方向の端部に側面を有するメサを、形成する工程と、
前記第一クラッド層と電気的に接続された第一電極を形成する工程と、
前記第二クラッド層と電気的に接続された第二電極を形成する工程と、
前記側面に沿って前記活性層を覆う窓領域を形成する工程と、
を備えた、光半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子および光半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GaAs系半導体材料で作られた光半導体素子として、リッジ構造を形成するトレンチが上側のクラッド層から活性層を超えて下側クラッド層まで延びた光半導体素子が知られている(例えば、非特許文献1)。このような構造によれば、トレンチによって電流のリッジ外への漏れを抑制することができ、当該漏れによって例えば供給する電力のエネルギロスが増大したり光に横高次モードが生じたりといった不都合な事象が生じるのを、抑制することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Joseph P. Donnelly, Robin K. Huang, James N. Walpole, Leo J. Missaggia, Chris T. Harris, Jason J. Plant, Robert J. Bailey, Daniel E. Mull, William D. Goodhue, and George W. Turner、 AlGaAs-InGaAs Slab-Coupled Optical Waveguide Lasers、 IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS, VOL. 39, NO. 2, FEBRUARY 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性層がトレンチに面した構成にあっては、当該活性層のトレンチに面した側面において、酸化等によって欠陥が生じる虞がある。また、エッチングによってトレンチを形成する際に、当該側面に欠陥が生じる虞がある。活性層の側面に欠陥が生じた場合、当該欠陥を介して電子と正孔が結合することにより側面の温度が上昇し、それに伴い側面の半導体材料のバンドギャップが縮小し、その結果、光吸収が増大する。光吸収が増大すると、さらに側面の温度が上昇し、バンドギャップがさらに縮小し、光吸収がさらに増大する、という循環に陥り、最終的に半導体材料の溶融に至る場合もある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、活性層の側面における光学損傷を抑制することが可能となるような、より改善された新規な構成を有した光半導体素子、および当該光半導体素子の製造方法を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光半導体素子は、例えば、第一方向に第一クラッド層と、活性層と、第二クラッド層と、が積層され、前記第一方向と交差した第二方向における所定幅で前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延び、前記第二方向の端部および前記第二方向の反対方向の端部に側面を有した、メサと、前記第一クラッド層と電気的に接続された第一電極と、前記第二クラッド層と電気的に接続された第二電極と、を備え、前記側面に沿って前記活性層を覆う窓領域が設けられる。
【0007】
前記光半導体素子では、前記メサは、GaAs系半導体材料で作られた部位を有してもよい。
【0008】
前記光半導体素子では、前記窓領域は、前記メサ内に設けられた混晶化層であってもよい。
【0009】
前記光半導体素子では、前記窓領域は、前記メサ内に設けられた不純物拡散層であってもよい。
【0010】
前記光半導体素子では、前記窓領域は、前記メサ外に設けられたワイドバンドギャップ層であってもよい。
【0011】
前記光半導体素子は、前記メサに対して前記第二方向にずれて位置し、当該メサと同じ積層構造を有した積層部を備え、前記積層部と前記メサとの間にトレンチが設けられてもよい。
【0012】
前記光半導体素子では、前記メサは、前記第三方向に向かうにつれて前記幅が変化する部位を有してもよい。
【0013】
前記光半導体素子は、半導体レーザ素子として構成されてもよい。
【0014】
前記光半導体素子は、半導体光増幅器として構成されてもよい。
【0015】
本発明の光半導体素子の製造方法は、例えば、第一方向に第一クラッド層と、活性層と、第二クラッド層と、が積層され、前記第一方向と交差した第二方向における所定幅で前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延び、前記第二方向の端部および前記第二方向の反対方向の端部に側面を有するメサを、形成する工程と、前記第一クラッド層と電気的に接続された第一電極を形成する工程と、前記第二クラッド層と電気的に接続された第二電極を形成する工程と、前記側面に沿って前記活性層を覆う窓領域を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、活性層の側面における光学損傷を抑制することが可能となるような、より改善された新規な構成を有した光半導体素子、および当該光半導体素子の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態の光半導体素子の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の光半導体素子の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の光半導体素子の製造途中の生成物の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の光半導体素子の製造途中の生成物の例示的かつ模式的な断面図であって、
図3より後の段階を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の光半導体素子の製造途中の生成物の例示的かつ模式的な断面図であって、
図4より後の段階を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の光半導体素子の製造途中の生成物の例示的かつ模式的な断面図であって、
図5より後の段階を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の光半導体素子の製造途中の生成物の例示的かつ模式的な断面図であって、
図6より後の段階を示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の光半導体素子の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の光半導体素子の製造途中の生成物の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の光半導体素子の製造途中の生成物の例示的かつ模式的な断面図であって、
図9より後の段階を示す図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態の光半導体素子の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態の光半導体素子の製造途中の生成物の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態の光半導体素子の製造途中の生成物の例示的かつ模式的な断面図であって、
図12より後の段階を示す図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態の光半導体素子の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図15】
図15は、第5実施形態の光半導体素子の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図16】
図16は、第6実施形態の光半導体素子の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0019】
以下の実施形態および変形例は、同様の構成要素を有している。以下では、それら同様の構成要素については、共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する場合がある。
【0020】
また、本明細書において、序数は、方向や、部位、部材等を区別するために便宜上付与されうるものである。また、序数は、優先順位や順番を示すものではないし、数を特定するものでもない。
【0021】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。
【0022】
[第1実施形態]
[光半導体素子の構成]
図1は、第1実施形態の光半導体素子100A(100)の断面図である。また、
図2は、光半導体素子100A(100)の一部の平面図である。本実施形態では、光半導体素子100Aは、半導体レーザ素子として構成されている。X方向は、光半導体素子100からのレーザ光の出射方向である。また、X方向は、長手方向とも称され、Y方向は、幅方向とも称されうる。
【0023】
図1に示されるように、光半導体素子100は、第一電極21と、積層部10と、パッシベーション膜15と、導電層16と、第二電極22と、を備えている。
【0024】
積層部10は、基板11上に、第一半導体層12、第二半導体層13、および第三半導体層14が、Z方向にこの順に積層された構成を有している。Z方向は、第一方向の一例であり、積層方向とも称されうる。また、積層部10は、GaAs系半導体材料で作られており、半導体積層部とも称されうる。
【0025】
基板11は、Z方向と交差するとともに直交している。基板11は、例えば、GaAsで作られている。
【0026】
第一半導体層12は、基板11に対してZ方向に積層されている。第一半導体層12は、Z方向と交差するとともに直交している。第一半導体層12は、例えば、n-AlGaAsで作られている。
【0027】
第二半導体層13は、第一半導体層12に対してZ方向に積層されている。第二半導体層13は、Z方向と交差するとともに直交している。第二半導体層13は、例えば、InGaAsで作られている。
【0028】
第三半導体層14は、第二半導体層13に対してZ方向に積層されている。第三半導体層14は、Z方向と交差するとともに直交している。第三半導体層14は、例えば、p-AlGaAsで作られている。
【0029】
積層部10には、Z方向の端面10bから、Z方向の反対方向に凹むトレンチ10cが設けられている。トレンチ10cは、第三半導体層14および第二半導体層13を貫通し、第一半導体層12の途中まで延びている。なお、トレンチ10cは、さらにZ方向の反対方向に延びて、基板11の途中まで到達してもよい。
図2に示されるように、トレンチ10cは、Y方向における所定幅で、X方向に延びている。トレンチ10cは、溝部や凹部とも称されうる。
【0030】
また、
図1に示されるように、積層部10には、略同一形状のトレンチ10cが、Y方向に間隔をあけて二つ設けられている。
図2に示されるように、これら二つのトレンチ10cは、互いに略平行に、X方向に延びている。これにより、
図1,2に示されるように、二つのトレンチ10cの間には、二つのトレンチ10cの底部に対して相対的にZ方向に突出したメサ30が形成される。メサ30は、Y方向における所定幅で、X方向に延びている。Y方向は第二方向の一例であり、X方向は、第三方向の一例である。
【0031】
本実施形態では、トレンチ10cは、基板11上に、第一半導体層12、第二半導体層13、および第三半導体層14が積層された後に、形成される。このため、二つのトレンチ10cの間に位置するメサ30、およびY方向およびY方向の反対方向においてトレンチ10cに対してメサ30の反対側に位置する積層部50は、同じ半導体層が同じ順に積層された同じ積層構造を有している。
【0032】
メサ30は導波路として機能する。当該メサ30において、第一半導体層12は、第一クラッド層31の一例であり、下側クラッド層とも称されうる。メサ30において、第二半導体層13は、活性層32の一例である。当該活性層32は、コア層とも称されうる。また、メサ30において、第三半導体層14は、第二クラッド層33の一例であり、上側クラッド層とも称されうる。
【0033】
図1に示されるように、パッシベーション膜15は、トレンチ10cが形成された積層部10の、基板11とは反対側の端面を覆っている。パッシベーション膜15は、トレンチ10c内の側面10c1および底面も覆っている。パッシベーション膜15は、略一定の厚さを有し、X方向に延びている。また、メサ30のZ方向の端部において、パッシベーション膜15には、開口15aが設けられている。パッシベーション膜15は、例えば、SiNで作られる。パッシベーション膜15は、絶縁層あるいは誘電体層とも称されうる。
【0034】
第二電極22は、パッシベーション膜15を、基板11とは反対側から覆っている。第二電極22は、p電極である。また、第二電極22は、パッシベーション膜15に設けられた開口15aを貫通し、メサ30の第二クラッド層33(第三半導体層14)と接して電気的に接続されている。
【0035】
導電層16は、第二電極22に対してZ方向に積層されている。導電層16は、例えば、Auで作られたメッキ層である。また、導電層16は、トレンチ10cを埋めている。
【0036】
第一電極21は、基板11の端面10aに対してZ方向の反対方向に積層されている。第一電極21は、n電極であり、基板11と電気的に接続されている。なお、第一電極21は、基板11と電気的に接続されればよく、第一電極21は、基板11の端面10a上とは異なる場所に設けられてもよい。
【0037】
第一電極21と第二電極22との間で通電した場合、メサ30において、電流は、Z方向の反対方向に略沿って流れる。
【0038】
このような構成において、活性層32は、トレンチ10cと面した側面10c1において、酸化等により欠陥が生じたり、トレンチ10cのエッチングの際に欠陥が生じたりする虞がある。このような欠陥は、光吸収による活性層32の光学損傷の一因となる。そこで、本実施形態では、メサ30のY方向およびY方向の反対方向を向いた二つの側面10c1に沿って、当該メサ30の活性層32を覆う窓領域40が設けられている。窓領域40によって側面10c1付近のバンドギャップを拡大することができるため、光吸収を抑制し、ひいては光学損傷を抑制することができる。
【0039】
本実施形態では、窓領域40は、混晶化層40Aとして構成されている。以下、
図3~7を参照しながら、混晶化層40Aを含む光半導体素子100Aの製造方法について説明する。
図3~7は、光半導体素子100Aの製造途中の各段階における断面図である。
【0040】
まずは、
図3に示されるように、基板11、第一半導体層12、第二半導体層13、および第三半導体層14をこの順にZ方向に積層して、積層部10を形成する。
【0041】
次に、
図4に示されるように、積層部10のZ方向の端面10b上に、誘電体膜101を形成する。誘電体膜101は、Z方向における所定厚さおよびY方向における所定幅で、X方向に延びている。二つの誘電体膜101は、Y方向に間隔をあけて設けられ、互いに平行にX方向に延びている。
【0042】
次に、
図5に示されるように、impurity free vacancy disordering(IFVD)法により、第三半導体層14、バンドギャップが拡大した混晶化層40Aを形成する。ここでは、短時間熱処理(rapid thermal anneal:RTA)により拡散したGaが誘電体膜101に吸収され、第三半導体層14の誘電体膜101に接触する部分で空孔が発生し、その空孔が活性層である第二半導体層13に拡散することにより、誘電体膜101の下方にある第二半導体層13が限定的に混晶化する。
【0043】
次に、
図6に示されるように、積層部10を選択的にエッチングして、二つのトレンチ10cを形成する。トレンチ10cは、端面10bから第三半導体層14および第二半導体層13を貫通し、第一半導体層12に至るように形成される。この際、各トレンチ10cに対して他方のトレンチ10c側に混晶化層40Aが残るように、エッチングされる。これにより、混晶化層40Aは、メサ30のトレンチ10cと面した側面10c1に沿って、当該メサ30内に、混晶化されなかった活性層32を覆う状態に形成される。また、混晶化層40Aは、トレンチ10cの側面10c1全体に沿って設けられるのではなく、活性層32およびその周辺となる側面10c1の一部に設けられる。
【0044】
次に、
図7に示されるように、積層部10のZ方向の端部およびトレンチ10c内を覆うようにパッシベーション膜15を形成し、メサ30のZ方向の端部において、パッシベーション膜15の開口15aを形成する。
【0045】
その後、パッシベーション膜15を覆うように導電層16を積層し、さらに当該導電層16を覆う第二電極22を形成するとともに、積層部10のZ方向の反対側の端面10a上に第一電極21を形成することにより、
図1に示される光半導体素子100Aが得られる。
【0046】
以上、説明したように、本実施形態によれば、メサ30内に、側面10c1に沿って活性層32を覆う窓領域40を設けることにより、活性層32の劣化ひいては光学損傷を抑制することができる。このような構成は、積層部10すなわち半導体層がGaAs系半導体材料で作られる場合に有効である。
【0047】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態の光半導体素子100B(100)の断面図である。本実施形態では、窓領域40が、不純物拡散層40Bとして構成されている。この点を除き、光半導体素子100Bは、上記第1実施形態の光半導体素子100Aと同様の構成を備えている。
【0048】
以下、
図9,10を参照しながら、不純物拡散層40Bを含む光半導体素子100Bの製造方向について説明する。
図9,10は、光半導体素子100Bの製造途中の各段階における断面図である。
【0049】
本実施形態では、
図9に示される積層部10が形成され、上記第1実施形態と同様の二つのトレンチ10cが形成された後、窓領域40としての不純物拡散層40Bが形成される。不純物拡散層40Bは、メサ30の側面10c1の活性層32およびその隣接領域に対して不純物として例えばプロトンの注入が行われることにより、形成される。これにより、不純物拡散層40Bは、メサ30のトレンチ10cと面した側面10c1に沿って、当該メサ30内に、不純物拡散されなかった活性層32を覆う状態に形成される。また、不純物拡散層40Bは、トレンチ10cの側面10c1全体に対応して設けられるのではなく、活性層32およびその周辺となる側面10c1の一部に対応して設けられる。
【0050】
次に、
図10に示されるように、積層部10のZ方向の端部およびトレンチ10c内を覆うようにパッシベーション膜15を形成し、メサ30のZ方向の端部において、パッシベーション膜15の開口15aを形成する。
【0051】
その後、パッシベーション膜15を覆うように導電層16を積層し、さらに当該導電層16を覆う第二電極22を形成するとともに、積層部10のZ方向の反対側の端面10a上に第一電極21を形成することにより、
図8に示される光半導体素子100Bが得られる。
【0052】
本実施形態でも、メサ30内に、側面10c1に沿って活性層32を覆う窓領域40として不純物拡散層40Bを設けることにより、活性層32の劣化ひいては光学損傷を抑制することができる。
【0053】
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態の光半導体素子100C(100)の断面図である。本実施形態では、窓領域40が、ワイドバンドギャップ層40Cとして構成されている。この点を除き、光半導体素子100Cは、上記第1実施形態の光半導体素子100Aと同様の構成を備えている。
【0054】
以下、
図12,13を参照しながら、ワイドバンドギャップ層40Cを含む光半導体素子100Cの製造方法について説明する。
図12,13は、光半導体素子100Cの製造途中の各段階における断面図である。
【0055】
本実施形態では、
図12に示される積層部10が形成され、上記第1実施形態と同様の二つのトレンチ10cが形成された後、当該二つのトレンチ10cの内面に対して、水素クリーニングが行われる。その後、当該二つのトレンチ10cに対して、窓領域40としてのワイドバンドギャップ層40Cが形成される。ワイドバンドギャップ層40Cは、メサ30の側面10c1の活性層32およびその隣接領域を含むトレンチ10cの底部を含む下部を覆うように成膜される。ワイドバンドギャップ層40Cは、例えば、ZnSeで作られる。これにより、ワイドバンドギャップ層40Cは、メサ30のトレンチ10cと面した側面10c1に沿って、当該メサ30外に、活性層32を覆う状態に形成される。また、ワイドバンドギャップ層40Cは、トレンチ10cの側面10c1全体に対応して設けられるのではなく、活性層32およびその周辺となる側面10c1の一部に対応して設けられる。
【0056】
次に、
図13に示されるように、積層部10のZ方向の端部およびトレンチ10c内を覆うようにパッシベーション膜15を形成し、メサ30のZ方向の端部において、パッシベーション膜15の開口15aを形成する。
【0057】
その後、パッシベーション膜15を覆うように導電層16を積層し、さらに当該導電層16を覆う第二電極22を形成するとともに、積層部10のZ方向の反対側の端面10a上に第一電極21を形成することにより、
図11に示される光半導体素子100Cが得られる。
【0058】
本実施形態によれば、メサ30外に、側面10c1に沿って活性層32を覆う窓領域40としてワイドバンドギャップ層40Cを設けることにより、活性層32の劣化ひいては光学損傷を抑制することができる。
【0059】
[第4実施形態]
図14は、第4実施形態の光半導体素子100D(100)の断面図である。本実施形態の光半導体素子100Dは、トレンチ10cおよび当該トレンチ10cを挟んでメサ30とは反対側の積層部50(
図1等参照)が設けられていない点を除き、上記第1~第3実施形態と同様の構成を備えている。すなわち、本実施形態でも、メサ30内またはメサ30外に、側面10c1に沿って活性層32を覆う窓領域40を設けることができ、これにより、活性層32の劣化ひいては光学損傷を抑制することができる。なお、窓領域40は、混晶化層40A、不純物拡散層40B、およびワイドバンドギャップ層40Cのうちいずれであってもよい。
【0060】
[第5実施形態]
図15は、第5実施形態の光半導体素子100E(100)の一部の平面図である。本実施形態の光半導体素子100Eは、半導体光増幅器として構成されている。導波路を構成するメサ30は、Y方向における幅が略一定の直状部30sと、X方向に向かうにつれてY方向における幅が拡大するように変化するテーパ部30tと、を有している。テーパ部30tは、拡幅部とも称されうる。直状部30sおよびテーパ部30tは、二つのトレンチ10cの間に設けられており、これら二つのトレンチ10cは、いずれも、第二クラッド層33から活性層32を貫通して第一クラッド層31に至るまで延びており、Z方向の反対方向における深さが略一定である。そして、窓領域40が、直状部30sの活性層32のみならず、テーパ部30tの活性層32にも対応して設けられている。
【0061】
本実施形態のような、テーパ部30tを有した半導体光増幅器として構成された光半導体素子100Eにおいても、メサ30内またはメサ30外に、側面10c1(
図1参照)に沿って活性層32を覆う窓領域40を設けることにより、活性層32の劣化ひいては光学損傷を抑制することができる。また、テーパ部30tにおいては、本来、直状部30sと同じような深さのトレンチ10cは不要であるが、本実施形態では、当該トレンチ10cを含め、直状部30sとテーパ部30tとを類似の構成とすることにより、製造の手間やコストをより低減することができるという効果も得られる。
【0062】
[第6実施形態]
図16は、第6実施形態の光半導体素子100F(100)の一部の平面図である。本実施形態の光半導体素子100Fも、半導体光増幅器として構成されており、上記第5実施形態の光半導体素子100Eと同様の構成を備えている。ただし、本実施形態では、直状部30sとテーパ部30tとの間に、ギャップ10dが設けられている。ギャップ10dは、トレンチ10cと同様に、溝のような形状を有している。また、ギャップ10dと隣接した第二半導体層13にも、窓領域40が設けられる。本実施形態の光半導体素子100Fにおいても、メサ30内またはメサ30外に、トレンチ10cおよびギャップ10dの側面10c1(
図1参照)に沿って活性層32を覆う窓領域40を設けることにより、活性層32の劣化ひいては光学損傷を抑制することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…積層部
10a…端面
10b…端面
10c…トレンチ
10c1…側面
10d…ギャップ
11…基板
12…第一半導体層
13…第二半導体層
14…第三半導体層
15…パッシベーション膜
15a…開口
16…導電層
21…第一電極
22…第二電極
30…メサ
30t…テーパ部
30s…直状部
31…第一クラッド層
32…活性層
33…第二クラッド層
40…窓領域
40A…混晶化層
40B…不純物拡散層
40C…ワイドバンドギャップ層
50…積層部
100A~100D…光半導体素子(半導体レーザ素子)
100E,100F…光半導体素子(半導体光増幅器)
101…誘電体膜
X…方向(第三方向)
Y…方向(第二方向)
Z…方向(第一方向)