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特開2024-13662EUV光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013662
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】EUV光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240125BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115922
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕大
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 幸雄
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197BA02
2H197CA10
2H197DB23
2H197DC02
2H197DC12
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA05
2H197GA10
2H197GA12
2H197GA16
2H197GA24
2H197HA03
2H197JA07
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安価、小型のミラー用ステージ機構を採用できるEUV光生成装置を提供する。
【解決手段】EUV光生成装置は、内部が大気圧未満に維持され、EUV光を生成可能とするチャンバと、チャンバの内部と連通する第1ベローズ配管と、第1ベローズ配管の他端を大気圧下で密閉する第1蓋部材と、第1蓋部材に接続され、EUV光が入射する光学素子を保持した状態でチャンバの内部に設けられたホルダと、チャンバの外部において第1蓋部材に接続され、EUV光に対する光学素子の位置と角度とを変更するステージ機構と、ステージをチャンバに固定する固定部材と、ホルダを介して第1蓋部材に対向する位置に配置され、光学素子の位置と角度とのうち少なくとも一方の変更に応じて移動可能にホルダに接続され、大気圧とチャンバ内部の圧力との圧力差により第1蓋部材に加わる第1負荷の方向と逆方向の第2負荷をホルダに伝えるキャンセル機構と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が大気圧未満に維持され、EUV光を生成可能とするチャンバと、
一端が前記チャンバに接続され、前記チャンバの内部と連通する第1ベローズ配管と、
前記第1ベローズ配管の他端を大気圧下で密閉する第1蓋部材と、
前記第1蓋部材に接続され、EUV光が入射する光学素子を保持した状態で前記チャンバの内部に設けられたホルダと、
前記チャンバの外部において前記第1蓋部材に接続され、前記EUV光に対する前記光学素子の位置と角度とのうちの少なくとも一方を変更するステージ機構と、
前記ステージ機構を前記チャンバに固定する固定部材と、
前記ホルダを介して前記第1蓋部材に対向する位置に配置され、前記光学素子の位置と角度とのうち少なくとも一方の変更に応じて移動可能に前記ホルダに接続され、大気圧と前記チャンバ内部の圧力との圧力差により前記第1蓋部材に加わる第1負荷の方向と逆方向の第2負荷を前記ホルダに伝えるキャンセル機構と、
を備えるEUV光生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記ステージ機構は、前記第1負荷の方向に直交する方向へ前記第1蓋部材を移動させる。
【請求項3】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記ステージ機構は、前記第1蓋部材を傾斜させる。
【請求項4】
請求項3に記載のEUV光生成装置であって、
前記ステージ機構は、前記光学素子の表面に位置する回転中心を回転軸として前記第1蓋部材を傾斜させる。
【請求項5】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記光学素子は、前記EUV光を反射するミラーである。
【請求項6】
請求項5に記載のEUV光生成装置であって、
前記ホルダは、第1開口及び第2開口が形成された箱形状の部材であり、
前記ミラーは、前記ホルダの内部に配置されており、
前記EUV光が前記第1開口を介して前記ミラーに入射し、前記ミラーで反射された前記EUV光が前記第2開口を介して出力される。
【請求項7】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記光学素子は、前記EUV光を検出する検出器である。
【請求項8】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記キャンセル機構は、一端が前記チャンバに接続され、前記チャンバの内部と連通する第2ベローズ配管と、前記第2ベローズ配管の他端を大気圧下で密閉する第2蓋部材とを含み、
圧力差により前記第2蓋部材に加わる前記第2負荷を前記ホルダに伝える。
【請求項9】
請求項8に記載のEUV光生成装置であって、
前記第1蓋部材は、第1支柱を介して前記ホルダに接続されており、
前記第2蓋部材は、第2支柱を介して前記ホルダに接続されている。
【請求項10】
請求項9に記載のEUV光生成装置であって、
前記第1支柱と前記第2支柱とは、同軸上に配置されている。
【請求項11】
請求項8に記載のEUV光生成装置であって、
前記第1蓋部材と前記第2蓋部材とは、前記チャンバの内部側の面積が等しい。
【請求項12】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記キャンセル機構は、前記第2負荷を発生するバネを含む。
【請求項13】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記キャンセル機構は、前記第2負荷を発生するシリンダを含む。
【請求項14】
電子デバイスの製造方法であって、
内部が大気圧未満に維持され、EUV光を生成可能とするチャンバと、
一端が前記チャンバに接続され、前記チャンバの内部と連通する第1ベローズ配管と、
前記第1ベローズ配管の他端を大気圧下で密閉する第1蓋部材と、
前記第1蓋部材に接続され、EUV光が入射する光学素子を保持した状態で前記チャンバの内部に設けられたホルダと、
前記チャンバの外部において前記第1蓋部材に接続され、前記EUV光に対する前記光学素子の位置と角度とのうちの少なくとも一方を変更するステージ機構と、
前記ステージ機構を前記チャンバに固定する固定部材と、
前記ホルダを介して前記第1蓋部材に対向する位置に配置され、前記光学素子の位置と角度とのうち少なくとも一方の変更に応じて移動可能に前記ホルダに接続され、大気圧と前記チャンバ内部の圧力との圧力差により前記第1蓋部材に加わる第1負荷の方向と逆方向の第2負荷を前記ホルダに伝えるキャンセル機構と、
を備えるEUV光生成装置によって前記EUV光を生成し、
前記EUV光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記EUV光を露光すること、
を含む電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
電子デバイスの製造方法であって、
内部が大気圧未満に維持され、EUV光を生成可能とするチャンバと、
一端が前記チャンバに接続され、前記チャンバの内部と連通する第1ベローズ配管と、
前記第1ベローズ配管の他端を大気圧下で密閉する第1蓋部材と、
前記第1蓋部材に接続され、EUV光が入射する光学素子を保持した状態で前記チャンバの内部に設けられたホルダと、
前記チャンバの外部において前記第1蓋部材に接続され、前記EUV光に対する前記光学素子の位置と角度とのうちの少なくとも一方を変更するステージ機構と、
前記ステージ機構を前記チャンバに固定する固定部材と、
前記ホルダを介して前記第1蓋部材に対向する位置に配置され、前記光学素子の位置と角度とのうち少なくとも一方の変更に応じて移動可能に前記ホルダに接続され、大気圧と前記チャンバ内部の圧力との圧力差により前記第1蓋部材に加わる第1負荷の方向と逆方向の第2負荷を前記ホルダに伝えるキャンセル機構と、
を備えるEUV光生成装置によって生成した前記EUV光をマスクに照射して前記マスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写すること、
を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EUV光生成装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV:Extreme Ultraviolet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲットにレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8669542号明細書
【特許文献2】米国特許第9179534号明細書
【特許文献3】特開2019-129211号公報
【特許文献4】特開2004-214527号公報
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係るEUV光生成装置は、内部が大気圧未満に維持され、EUV光を生成可能とするチャンバと、一端がチャンバに接続され、チャンバの内部と連通する第1ベローズ配管と、第1ベローズ配管の他端を大気圧下で密閉する第1蓋部材と、第1蓋部材に接続され、EUV光が入射する光学素子を保持した状態でチャンバの内部に設けられたホルダと、チャンバの外部において第1蓋部材に接続され、EUV光に対する光学素子の位置と角度とのうちの少なくとも一方を変更するステージ機構と、ステージ機構をチャンバに固定する固定部材と、ホルダを介して第1蓋部材に対向する位置に配置され、光学素子の位置と角度とのうち少なくとも一方の変更に応じて移動可能にホルダに接続され、大気圧とチャンバ内部の圧力との圧力差により第1蓋部材に加わる第1負荷の方向と逆方向の第2負荷をホルダに伝えるキャンセル機構と、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、内部が大気圧未満に維持され、EUV光を生成可能とするチャンバと、一端がチャンバに接続され、チャンバの内部と連通する第1ベローズ配管と、第1ベローズ配管の他端を大気圧下で密閉する第1蓋部材と、第1蓋部材に接続され、EUV光が入射する光学素子を保持した状態でチャンバの内部に設けられたホルダと、チャンバの外部において第1蓋部材に接続され、EUV光に対する光学素子の位置と角度とのうちの少なくとも一方を変更するステージ機構と、ステージ機構をチャンバに固定する固定部材と、ホルダを介して第1蓋部材に対向する位置に配置され、光学素子の位置と角度とのうち少なくとも一方の変更に応じて移動可能にホルダに接続され、大気圧とチャンバ内部の圧力との圧力差により第1蓋部材に加わる第1負荷の方向と逆方向の第2負荷をホルダに伝えるキャンセル機構と、を備えるEUV光生成装置によってEUV光を生成し、EUV光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にEUV光を露光すること、を含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、内部が大気圧未満に維持され、EUV光を生成可能とするチャンバと、一端がチャンバに接続され、チャンバの内部と連通する第1ベローズ配管と、第1ベローズ配管の他端を大気圧下で密閉する第1蓋部材と、第1蓋部材に接続され、EUV光が入射する光学素子を保持した状態でチャンバの内部に設けられたホルダと、チャンバの外部において第1蓋部材に接続され、EUV光に対する光学素子の位置と角度とのうちの少なくとも一方を変更するステージ機構と、ステージ機構をチャンバに固定する固定部材と、ホルダを介して第1蓋部材に対向する位置に配置され、光学素子の位置と角度とのうち少なくとも一方の変更に応じて移動可能にホルダに接続され、大気圧とチャンバ内部の圧力との圧力差により第1蓋部材に加わる第1負荷の方向と逆方向の第2負荷をホルダに伝えるキャンセル機構と、を備えるEUV光生成装置によって生成したEUV光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写すること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、LPP方式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、比較例に係るEUV光生成システムの構成を示す図である。
図3図3は、EUV光伝送システムの第1構成例を示す図である。
図4図4は、EUV光伝送システムの第2構成例を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係るEUV光生成システムの構成を示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係るEUV光伝送システムの構成を示す図である。
図7図7は、ステージ機構が駆動されることにより蓋部材が移動した状態を示す図である。
図8図8は、第1変形例に係るEUV光伝送システムの構成を示す図である。
図9図9は、第2変形例に係るEUV光伝送システムの構成を示す図である。
図10図10は、第3変形例に係るEUV光伝送システムの構成を示す図である。
図11図11は、第4変形例に係るEUV光伝送システムの構成を示す図である。
図12図12は、第5変形例に係るEUV光検出システムの構成を示す図である。
図13図13は、EUV光生成装置に接続された露光装置の構成を概略的に示す図である。
図14図14は、EUV光生成装置に接続された検査装置の構成を概略的に示す図である。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.EUV光生成システムの全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例に係るEUV光生成システム
2.1 構成
2.2 動作
2.3 EUV光伝送システム
2.3.1 第1構成例
2.3.2 課題
2.3.3 第2構成例
2.3.4 課題
3.第1実施形態に係るEUV光生成システム
3.1 構成
3.2 動作
3.3 効果
4.第1実施形態の変形例
4.1 第1変形例
4.1.1 構成
4.1.2 動作
4.1.3 効果
4.2 第2変形例
4.2.1 構成
4.2.2 動作
4.2.3 効果
4.3 第3変形例
4.3.1 構成
4.3.2 動作
4.3.3 効果
4.4 第4変形例
4.4.1 構成
4.4.2 動作
4.4.3 効果
4.5 第5変形例
4.6 その他の変形例
5.その他
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.EUV光生成システムの全体説明
1.1 構成
図1に、LPP方式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザ装置3と共に用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給装置25を含む。チャンバ2は、EUV光33を生成可能とする密閉可能な容器である。ターゲット供給装置25は、ドロップレット状のターゲット27をチャンバ2内部に供給する。ターゲット27の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0012】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔は、ウィンドウ21によって塞がれており、レーザ装置3から出力されるパルスレーザ光31がウィンドウ21を透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を有する。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されている。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域Rに位置し、その第2の焦点が中間集光点IFに位置するように配置されている。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が形成されており、貫通孔24をパルスレーザ光31が通過する。
【0013】
EUV光生成装置1は、プロセッサ12、ターゲットセンサ13等を含む。ターゲットセンサ13は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、及び速度のうち少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ13は、撮像機能を備えていてもよい。
【0014】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と外部装置5の内部とを連通させる接続配管29を含む。接続配管29の内部には、アパーチャ293が形成された壁291が設けられている。壁291は、そのアパーチャ293がEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置されている。例えば、外部装置5は、露光装置である。
【0015】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置14と、レーザ光集光光学系22と、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28とを含む。レーザ光伝送装置14は、レーザ光の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備えている。
【0016】
1.2 動作
図1を参照して、例示的なLPP式のEUV光生成システム11の動作を説明する。レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置14を経て、ウィンドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。チャンバ2内に入射したパルスレーザ光31は、レーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光光学系22により集光されて、ターゲット27に照射される。
【0017】
ターゲット供給装置25は、ターゲット27をチャンバ2内のプラズマ生成領域Rに向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光31が照射される。パルスレーザ光31が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光32が放射される。放射光32に含まれるEUV光33は、EUV集光ミラー23によって選択的に反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光33は、中間集光点IFで集光され、外部装置5に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光31に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0018】
プロセッサ12は、EUV光生成システム11全体を制御する。プロセッサ12は、ターゲットセンサ13の検出結果に基づいて、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、プロセッサ12は、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光31の進行方向、集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0019】
2.比較例に係るEUV光生成システム
2.1 構成
【0020】
図2は、比較例に係るEUV光生成システム11の構成を示す。本比較例では、プロセッサ12は、EUV光生成プロセッサ12aと、ターゲットプロセッサ12bとを含む。EUV光生成プロセッサ12aは、レーザ装置3、ターゲットプロセッサ12b等を制御する。ターゲットプロセッサ12bは、ターゲット供給装置25を制御する。EUV光生成プロセッサ12a及びターゲットプロセッサ12bは、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせたコンピュータで構成されてもよい。
【0021】
比較例に係るEUV光生成システム11には、表示装置15が設けられている。EUV光生成プロセッサ12aは、表示装置15を制御して外部装置5から通知された情報等を表示させる。
【0022】
レーザ光伝送装置14は、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31を反射させてチャンバ2のウィンドウ21に導くための高反射ミラー14a,14bを含む。
【0023】
チャンバ2は、EUV光生成チャンバ2aと、EUV光伝送チャンバ2bとを含む。EUV光生成チャンバ2aは、EUV光33を生成するためのチャンバである。EUV光伝送チャンバ2bは、EUV光生成チャンバ2aで生成されたEUV光33を外部装置5に向けて伝送させるためのチャンバである。
【0024】
EUV光生成チャンバ2aには、上述のウィンドウ21、レーザ光集光光学系22、EUV集光ミラー23、ターゲット供給装置25、ターゲット回収部28、及びターゲットセンサ13が設けられている。EUV光生成チャンバ2aは、ベローズ配管4を介してEUV光伝送チャンバ2bに接続されている。
【0025】
ベローズ配管4は、EUV光33が出力される位置に設けられたEUV光生成チャンバ2aの開口2cと、EUV光伝送チャンバ2bの導入口2dとを接続している。また、ベローズ配管4は、EUV光33の光路を囲むように配置されている。
【0026】
EUV光生成チャンバ2a、EUV光伝送チャンバ2b、及びベローズ配管4は、内部が大気圧未満の水素雰囲気に維持されている。
【0027】
EUV光伝送チャンバ2bの導出口2eには、上述の接続配管29が接続されている。EUV光伝送チャンバ2bは、接続配管29を介して外部装置5に接続されている。
【0028】
EUV光伝送チャンバ2bには、EUV光伝送システム6が設けられている。EUV光伝送システム6は、EUV光33を反射するミラー61と、ミラー61を移動させるステージ機構62とを含む。ミラー61は、EUV光伝送チャンバ2bの内部において、ベローズ配管4から導入口2dを介してEUV光33が入射する位置に配置されている。例えば、ミラー61は、反射面が平面状の平面ミラーである。
【0029】
ステージ機構62は、ミラー61に接続されており、EUV光33に対するミラー61の位置と角度とのうちの少なくとも一方を変更する。EUV光伝送システム6は、EUV光生成プロセッサ12aから送信される制御信号Scに基づいてEUV光33の伝送方向を制御する。
【0030】
外部装置5は、プロセッサ51を備える。プロセッサ51は、EUV光伝送チャンバ2bから接続配管29を介して伝送されてきたEUV光33の状態を検出し、検出結果をEUV光生成プロセッサ12aへ送信する。EUV光33の状態には、中間集光点IFの位置、EUV光33の中間集光点IFへの入射角度等が含まれる。
【0031】
2.2 動作
比較例に係るEUV光生成システム11の動作を説明する。まず、EUV光生成チャンバ2a、EUV光伝送チャンバ2b、及びベローズ配管4の内部が水素雰囲気にされる。ターゲットプロセッサ12bの制御により、ターゲット供給装置25からドロップレット状のターゲット27がEUV光生成チャンバ2a内のプラズマ生成領域Rに向けて出力される。
【0032】
EUV光生成プロセッサ12aの制御により、ターゲット27がプラズマ生成領域Rに到達するタイミングで、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31が照射されることにより、EUV光33が生成される。
【0033】
プラズマ生成領域Rで生成されたEUV光33の一部は、EUV集光ミラー23で反射され、ベローズ配管4内を通ってEUV光伝送チャンバ2bに入射する。EUV光伝送チャンバ2bに入射したEUV光33は、EUV光伝送システム6のミラー61で反射された後、接続配管29内の中間集光点IFで集光されて外部装置5へ出力される。
【0034】
外部装置5のプロセッサ51は、EUV光生成プロセッサ12aに、EUV光33の生成開始及び停止に関する指示信号を送信するとともに、EUV光33の状態を検出して、検出結果を送信する。EUV光生成プロセッサ12aは、検出結果を表示装置15に表示させるとともに、検出結果に基づいて、EUV光33が所望の状態で中間集光点IFを通過するようにEUV光伝送システム6を制御する。
【0035】
2.3 EUV光伝送システム
2.3.1 第1構成例
図3は、EUV光伝送システム6の第1構成例を示す。ミラー61は、ミラーホルダ63により保持されている。ミラーホルダ63は、支柱64により保持されている。ミラーホルダ63は、ミラー61の反射面がX方向及びY方向に平行となるようにミラー61を保持している。支柱64は、ミラーホルダ63の中央に接続され、Z方向に延伸している。ここで、X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する方向である。
【0036】
ステージ機構62は、ミラーホルダ63をX方向及びY方向に移動可能とする2軸のXYステージである。ステージ機構62は、レールガイド621と、レール622と、ステージ保持部623と、モータ624とを含む。
【0037】
レールガイド621は、支柱64に接続され、Y方向に延伸した溝が形成されている。この溝にレール622が摺動可能に嵌合されている。また、レールガイド621は、レール622に固定され、X方向に延伸した溝が形成された図示しない別のレールガイドを含んでいる。この別のレールガイドの溝に図示しない別のレールが摺動可能に嵌合されている。
【0038】
ステージ保持部623は、レール622を保持している。モータ624は、ステージ保持部623に配置され、レールガイド621をX方向及びY方向に駆動させる。モータ624には、EUV光伝送チャンバ2bの外部に配置された電源65からエネルギが供給される。電源65がモータ624に供給するエネルギは、EUV光生成プロセッサ12aから送信される制御信号Scにより制御される。
【0039】
ステージ保持部623は、EUV光伝送チャンバ2bに形成された設置口2fに配置され、固定部材66によりEUV光伝送チャンバ2bに固定されている。固定部材66はフランジ部を備えており、図示しないボルトを用いてフランジ部がEUV光伝送チャンバ2bに固定されている。ステージ機構62は、EUV光伝送チャンバ2b内に配置されている。
【0040】
2.3.2 課題
第1構成例に係るEUV光伝送システム6では、ステージ機構62がEUV光伝送チャンバ2b内に配置されていることにより水素雰囲気に晒されている。このため、ステージ機構62として、汎用のステージを用いることはできず、特注のステージを用いることが必要となる。しかしながら、水素雰囲気内での駆動が保証されるステージは種類が少なく、かつ高価である。したがって、第1構成例に係るEUV光伝送システム6は、製造コストに関する課題がある。
【0041】
2.3.3 第2構成例
図4は、EUV光伝送システム6の第2構成例を示す。第2構成例に係るEUV光伝送システム6は、ステージ機構62がEUV光伝送チャンバ2bの外部に配置されている点が、第1構成例に係るEUV光伝送システム6と異なる。第2構成例に係るEUV光伝送システム6において、ミラーホルダ63は、支柱64、及びステージ機構62に加えて、蓋部材67及びベローズ配管68を含む。
【0042】
EUV光伝送チャンバ2bには、図3で示した設置口2fに代えて駆動口2gが形成されている。駆動口2gには、支柱64が挿通されている。駆動口2gの径は支柱64の径より大きく、支柱64はX方向及びY方向に移動可能である。支柱64の一端はミラーホルダ63に接続され、他端は蓋部材67に接続されている。
【0043】
EUV光伝送チャンバ2bの外面において、駆動口2gの周囲には、駆動口2gを囲むようにリング状のベローズ固定部材68aが設けられている。蓋部材67には、ベローズ固定部材68aと対向する位置に、リング状のベローズ固定部材68bが設けられている。
【0044】
ベローズ配管68は、EUV光伝送チャンバ2bの外側において、駆動口2gを囲むように配置されている。ベローズ配管68は、一端がベローズ固定部材68aを介してEUV光伝送チャンバ2bに接続されており、他端がベローズ固定部材68bを介して蓋部材67に接続されている。蓋部材67は、大気圧下でベローズ配管68の他端の開口を密閉する密閉蓋である。例えば、ベローズ配管68は、X方向、Y方向、及びZ方向へ変形可能な円筒形状の配管であり、伸縮性及び可撓性を有する。
【0045】
支柱64のうちEUV光伝送チャンバ2bの外側に位置する部分は、ベローズ配管68と蓋部材67とで囲まれた空間A1の内部に配置されている。以下、空間A1をベローズ空間A1という。ベローズ空間A1は、駆動口2gを介してEUV光伝送チャンバ2bの内部と連通しており、大気圧未満の水素雰囲気に維持されている。
【0046】
蓋部材67のベローズ配管68とは反対側の面には、上述のステージ機構62が配置されている。レールガイド621は蓋部材67に接続されており、ステージ保持部623は固定部材66に接続されている。固定部材66は、上面と側面とで、ステージ機構62、ベローズ配管68、及び蓋部材67を囲んでいる。固定部材66は、フランジ部を介してEUV光伝送チャンバ2bに固定されている。
【0047】
このように、第2構成例では、ステージ機構62は、EUV光伝送チャンバ2bの外側であって、固定部材66、ベローズ配管68、及び蓋部材67により囲まれた空間A2の内部に配置されている。以下、空間A2を固定部材空間A2という。固定部材空間A2は、大気圧環境である。
【0048】
2.3.4 課題
第2構成例では、ステージ機構62は、大気圧環境の固定部材空間A2内に配置されているため、ステージ機構62として、第1構成例のように水素雰囲気内での駆動が保証される高価なステージを用いる必要はない。
【0049】
しかしながら、固定部材空間A2の気圧が大気圧である一方で、ベローズ空間A1の気圧が大気圧未満であるので、その圧力差により蓋部材67には負荷Paが加わる。この負荷Paは、ステージ機構62に対して-Z方向に作用する。また、ステージ機構62には、蓋部材67を介して固定される支柱64、ミラーホルダ63、及びミラー61の合計重量に相当する負荷が加わる。このような負荷の下でステージ機構62を駆動すると、ステージ機構62が損傷したり、駆動制御の精度が低下したりすることがある。
【0050】
このような負荷に対応可能なステージは、高価で、かつ大型であるため、ステージ機構62として採用することは難しい。
【0051】
3.第1実施形態に係るEUV光生成システム
第1実施形態に係るEUV光生成システム11について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0052】
3.1 構成
図5は、第1実施形態に係るEUV光生成システム11の構成を示す。本実施形態に係るEUV光生成システム11は、EUV光伝送システム6の構成のみが比較例に係るEUV光生成システム11の構成と異なる。本実施形態では、EUV光伝送システム6は、ミラー61及びステージ機構62に加えて、蓋部材67に加わる負荷Paをキャンセルするためのキャンセル機構70を含む。
【0053】
図6は、第1実施形態に係るEUV光伝送システム6の構成を示す。キャンセル機構70は、ミラーホルダ63を介して蓋部材67と対向する位置に配置されている。具体的には、キャンセル機構70は、蓋部材67に加わる負荷Paの方向である-Z方向におけるEUV光伝送チャンバ2bの壁に配置され、ミラー61の位置の変更に応じて移動可能にミラーホルダ63に接続されている。
【0054】
キャンセル機構70は、支柱71と、蓋部材72と、ベローズ配管73とを含む。駆動口2hには、支柱71が挿通されている。駆動口2hの径は支柱71の径より大きく、支柱71はX方向及びY方向に移動可能である。支柱71の一端はミラーホルダ63に接続され、他端は蓋部材72に接続されている。支柱71は、Z方向に延伸している。支柱71と支柱64とは、同軸上に配置されている。
【0055】
EUV光伝送チャンバ2bの外面において、駆動口2hの周囲には、駆動口2hを囲むようにリング状のベローズ固定部材73aが設けられている。蓋部材72には、ベローズ固定部材73aと対向する位置に、リング状のベローズ固定部材73bが設けられている。
【0056】
ベローズ配管73は、EUV光伝送チャンバ2bの外側において、駆動口2hを囲むように配置されている。ベローズ配管73は、一端がベローズ固定部材73aを介してEUV光伝送チャンバ2bに接続されており、他端がベローズ固定部材73bを介して蓋部材72に接続されている。蓋部材72は、大気圧下でベローズ配管73の他端の開口を密閉する密閉蓋である。例えば、ベローズ配管73は、X方向、Y方向、及びZ方向へ変形可能な円筒形状の配管であり、伸縮性及び可撓性を有する。
【0057】
ベローズ配管68とベローズ配管73とは、XY平面における面積が等しくなるように形状及び大きさが選択されている。ベローズ配管68の内径Daとベローズ配管73の内径Dbとは等しい。すなわち、蓋部材67と蓋部材72とは、EUV光伝送チャンバ2bの内部側の面積が等しい。
【0058】
支柱71のうちEUV光伝送チャンバ2bの外側に位置する部分は、ベローズ配管73と蓋部材72とで囲まれた空間B1の内部に配置されている。以下、空間B1をベローズ空間B1という。ベローズ空間B1は、駆動口2hを介してEUV光伝送チャンバ2bの内部と連通しており、大気圧未満の水素雰囲気に維持されている。
【0059】
本実施形態では、ミラーホルダ63は、第1開口63a及び第2開口63bが形成された箱形状の部材であり、ミラーホルダ63の内部にミラー61が配置されている。EUV光33は第1開口63aを介してミラー61に入射する。ミラー61で反射されたEUV光33は、第2開口63bを介して、中間集光点IFに向けて出力される。
【0060】
ミラーホルダ63の上部63cには、支柱64が接続されている。ミラーホルダ63の下部63dには、支柱71が接続されている。ミラー61は、ミラーホルダ63の上部63cの内面側に配置されている。
【0061】
支柱71、蓋部材72、及びベローズ配管73は、それぞれ、支柱64、蓋部材67、及びベローズ配管68と同様の構成である。
【0062】
支柱64は、本開示の技術に係る「第1支柱」に対応する。蓋部材67は、本開示の技術に係る「第1蓋部材」に対応する。ベローズ配管68は、本開示の技術に係る「第1ベローズ配管」に対応する。支柱71は、本開示の技術に係る「第2支柱」に対応する。蓋部材72は、本開示の技術に係る「第2蓋部材」に対応する。ベローズ配管73は、本開示の技術に係る「第2ベローズ配管」に対応する。
【0063】
3.2 動作
次に、第1実施形態に係るEUV光伝送システム6の動作について説明する。EUV光伝送チャンバ2b内と、これに連通するベローズ空間A1,B1とが大気圧未満となると、蓋部材67は-Z方向に負荷Paを受け、キャンセル機構70の蓋部材72は+Z方向に負荷Pbを受ける。負荷Paは、支柱64を介してミラーホルダ63に伝搬し、負荷Pbは、支柱71を介してミラーホルダ63に伝搬する。負荷Paは、本開示の技術に係る「第1負荷」に対応する。負荷Pbは、本開示の技術に係る「第2負荷」に対応する。
【0064】
ベローズ空間A1,B1のXY平面における面積が等しいことから、負荷Pa及び負荷Pbは、大きさが等しくかつ方向が逆方向である。これにより、蓋部材67に加わる負荷Paは、キャンセル機構70が発生する負荷Pbによってキャンセルされる。
【0065】
図7は、ステージ機構62が駆動されることにより蓋部材67が移動した状態を示す。ステージ機構62は、負荷Paの方向に直交する方向へ蓋部材67を移動させる。蓋部材67が移動すると、ミラーホルダ63とともにキャンセル機構70が移動する。このように、蓋部材67及びキャンセル機構70が移動した場合においても、負荷Pa及び負荷Pbは、大きさが等しくかつ方向が逆方向であるのでキャンセルされる。
【0066】
3.3 効果
上記のように負荷Paが負荷Pbによりキャンセルされるので、ベローズ空間A1と固定部材空間A2との圧力差により蓋部材67に加わる負荷Paが理論上常にゼロとなる。これにより、支柱64、ミラーホルダ63、及びミラー61の合計重量のみを考慮して、ステージ機構62として用いるステージの種類を選定することができる。この結果、比較例における第2構成例と比べて、安価かつ小型のステージを採用することができる。
【0067】
4.第1実施形態の変形例
第1実施形態に係るEUV光伝送システム6は、各種の変形が可能である。以下、EUV光伝送システム6の変形例について説明する。
【0068】
4.1 第1変形例
4.1.1 構成
図8は、第1変形例に係るEUV光伝送システム6の構成を示す。本変形例に係るEUV光伝送システム6は、ステージ機構62の構成のみが第1実施形態に係るEUV光伝送システム6の構成と異なる。本変形例では、ステージ機構62は、蓋部材67を傾斜させる傾斜ステージである。傾斜ステージは、例えば、2軸のゴニオステージである。
【0069】
本変形例のステージ機構62は、スイングガイド625と、スイング部626と、ステージ保持部623と、モータ624とを含む。スイングガイド625は蓋部材67に固定されており、スイング部626はステージ保持部623に固定されている。スイング部626には、X方向、Y方向、及びZ方向に湾曲した凸状の曲面が形成されている。スイングガイド625には、スイング部626の曲面が接した状態で、スイング部626を摺動させる凹面が形成されている。モータ624は、スイング部626に固定されており、スイングガイド625を駆動する。
【0070】
4.1.2 動作
本変形例では、ステージ機構62は、EUV光生成プロセッサ12aから送信される制御信号Scに基づいてスイング部626をスイングさせることにより、蓋部材67を傾斜させる。これにより、ミラー61が傾斜して、EUV光33の状態が変化する。
【0071】
ステージ機構62により蓋部材67が傾斜した場合であっても、負荷Pa及び負荷Pbは、大きさが等しくかつ方向が逆方向であるのでキャンセルされる。
【0072】
4.1.3 効果
蓋部材67が傾斜した場合であっても、負荷Paが負荷Pbによりキャンセルされるので、第1実施形態と同様に、ステージ機構62として、安価かつ小型のステージを採用することができる。
【0073】
4.2 第2変形例
4.2.1 構成
図9は、第2変形例に係るEUV光伝送システム6の構成を示す。本変形例に係るEUV光伝送システム6は、ステージ機構62の構成のみが第1実施形態に係るEUV光伝送システム6の構成と異なる。本変形例では、ステージ機構62は、第1変形例と同様に、蓋部材67を傾斜させる傾斜ステージである。傾斜ステージは、例えば、2軸のゴニオステージである。
【0074】
ステージ機構62は、第1変形例と同様に、スイングガイド625と、スイング部626と、ステージ保持部623と、モータ624とを含む。本変形例では、スイングガイド625はステージ保持部623に固定されており、スイング部626は蓋部材67に固定されている。スイングガイド625及びスイング部626は、第1変形例のスイングガイド625及びスイング部626と同様の構成である。本変形例のステージ機構62は、ミラー61の反射面に位置する回転中心Cを回転軸として蓋部材67を傾斜させる。なお、「ミラー61の反射面」は、本開示の技術に係る「光学素子の表面」の一例である。
【0075】
4.2.2 動作
本変形例では、ステージ機構62は、EUV光生成プロセッサ12aから送信される制御信号Scに基づいてスイング部626をスイングさせることにより、蓋部材67を傾斜させる。これにより、ミラー61は、回転中心Cを回転軸として傾斜する。
【0076】
第1変形例と同様に、蓋部材67が傾斜した場合であっても、負荷Pa及び負荷Pbは、大きさが等しくかつ方向が逆方向であるのでキャンセルされる。
【0077】
4.2.3 効果
ステージ機構62により蓋部材67が傾斜した場合であっても、負荷Paが負荷Pbによりキャンセルされるので、第1実施形態と同様に、ステージ機構62として、安価かつ小型のステージを採用することができる。また、本変形例では、ミラー61は、回転中心Cを中心として傾斜するので、蓋部材67の傾斜に伴うミラー61の姿勢の変化量が小さいという利点がある。
【0078】
4.3 第3変形例
4.3.1 構成
図10は、第3変形例に係るEUV光伝送システム6の構成を示す。本変形例に係るEUV光伝送システム6は、キャンセル機構70の構成のみが第1実施形態に係るEUV光伝送システム6の構成と異なる。
【0079】
本変形例では、キャンセル機構70は、バネ80により構成されている。バネ80は、一端がバネ固定部材81を介してミラーホルダ63の下部63dに固定されており、他端がバネ固定部材82を介してEUV光伝送チャンバ2bに固定されている。本変形例では、EUV光伝送チャンバ2bには駆動口2hは形成されていない。
【0080】
バネ80は、発生する負荷Psの方向が、蓋部材67に加わる負荷Paの方向と同軸上となるように配置されている。バネ80は、ミラーホルダ63の下部63dに+Z方向の負荷Psを与える。負荷Psは、支柱64を介して蓋部材67に伝搬する。バネ80として、負荷Paをキャンセルする大きさの負荷Psを発生するバネが選定されている。
4.3.2 動作
本変形例では、EUV光生成プロセッサ12aから送信される制御信号Scに基づいてステージ機構62が駆動されることに伴って、ミラーホルダ63が移動する。バネ80は、ミラーホルダ63の移動とともに弾性変形する。
【0081】
第1実施形態と同様に、蓋部材67が移動した場合であっても、負荷Pa及び負荷Psは、大きさが等しくかつ方向が逆方向であるのでキャンセルされる。
【0082】
4.3.3 効果
ステージ機構62により蓋部材67が移動した場合であっても、負荷Paが負荷Psによりキャンセルされるので、第1実施形態と同様に、ステージ機構62として、安価かつ小型のステージを採用することができる。
【0083】
なお、本変形例において、ステージ機構62として、第1変形例又は第2変形例で説明した傾斜ステージを用いてもよい。
【0084】
4.4 第4変形例
4.4.1 構成
図11は、第4変形例に係るEUV光伝送システム6の構成を示す。本変形例に係るEUV光伝送システム6は、キャンセル機構70の構成のみが第1実施形態に係るEUV光伝送システム6の構成と異なる。
【0085】
本変形例では、キャンセル機構70は、シリンダ90を含んで構成されている。シリンダ90は、蓋部材67に加わる負荷Paをキャンセルするための負荷Pcを発生する。例えば、シリンダ90は、エアシリンダである。シリンダ90は、レギュレータ91を介してポンプ92に接続されている。
【0086】
シリンダ90は、シリンダロッド93を有する。シリンダロッド93は、駆動口2hに挿通されている。駆動口2hの径はシリンダロッド93の径より大きい。
【0087】
EUV光伝送チャンバ2bの外面において、駆動口2hの周囲には、駆動口2hを囲むように箱形状のシリンダ固定部材94が設けられている。シリンダ90は、シリンダ固定部材94により形成されるシリンダ空間A3内に収容され、かつシリンダ固定部材94に固定されている。
【0088】
シリンダロッド93は、ステージ機構95を介してミラーホルダ63の下部63dに接続されている。ステージ機構95は、レールガイド96及びレール97を含んで構成されたXYステージである。レールガイド96及びレール97は、ステージ機構62に含まれるレールガイド621及びレール622と同様の構成である。ステージ機構95は、シリンダ90に対するミラーホルダ63のXY平面内での移動を許容するために設けられている。
【0089】
シリンダ90がシリンダロッド93を押し出すことにより、ミラーホルダ63は+Z方向に負荷Pcを受ける。シリンダロッド93の押し出し力は、蓋部材67に加わる負荷Paをキャンセルする大きさの負荷Pcを発生するように、レギュレータ91によって調整されている。
【0090】
4.4.2 動作
本変形例では、EUV光生成プロセッサ12aから送信される制御信号Scに基づいてステージ機構62が駆動されることに伴って、ミラーホルダ63が移動する。ステージ機構95は、ミラーホルダ63に追従して移動する。
【0091】
第1実施形態と同様に、蓋部材67が移動した場合であっても、負荷Pa及び負荷Pcは、大きさが等しくかつ方向が逆方向であるのでキャンセルされる。
【0092】
4.4.3 効果
ステージ機構62により蓋部材67が移動した場合であっても、負荷Paが負荷Pcによりキャンセルされるので、第1実施形態と同様に、ステージ機構62として、安価かつ小型のステージを採用することができる。
【0093】
なお、本変形例において、ステージ機構62として、第1変形例又は第2変形例で説明した傾斜ステージを用いてもよい。この場合、ステージ機構95とミラーホルダ63の下部63dとの間にフローティングジョイントを配置すればよい。
【0094】
4.5 第5変形例
第5変形例は、EUV光伝送システム6に代えて、EUV光33の状態を検出するためのEUV光検出システム6aをEUV光伝送チャンバ2bに配置した例を示す。
【0095】
図12は、第5変形例に係るEUV光検出システム6aの構成を示す。EUV光検出システム6aは、ミラーホルダ63に代えて検出器ホルダ100を備える点のみが、第1実施形態に係るEUV光伝送システム6の構成と異なる。
【0096】
検出器ホルダ100は、支柱64と支柱71との間に固定されている。検出器ホルダ100は、EUV光33が入射する位置にEUV光33を検出する検出器110を保持している。検出器110は、カメラ又はセンサである。
【0097】
EUV光検出システム6aを用いることにより、EUV光33の状態を高精度に検出することができる。また、第1実施形態と同様に、ステージ機構62として、安価かつ小型のステージを採用することができる。
【0098】
EUV光検出システム6aのステージ機構62及びキャンセル機構70に対して、第1~第4変形例と同様の変形を行うことができる。
【0099】
ミラー61及び検出器110は、本開示の技術に係る「光学素子」の一例である。また、ミラーホルダ63及び検出器ホルダ100は、本開示の技術に係る「ホルダ」の一例である。
【0100】
4.6 その他の変形例
第1実施形態では、ステージ機構62をXYステージとしているが、これに代えて、XYステージと、第1変形例又は第2変形例で説明した傾斜ステージとを組み合わせることにより構成されたステージを用いてもよい。この場合、ステージ機構62は、蓋部材67をX方向及びY方向に移動させることに加えて、蓋部材67をX軸及びY軸をそれぞれ回転軸として傾斜させることができる。また、ステージ機構62は、1軸のリニアステージ若しくは1軸の傾斜ステージ、又はそれらを組み合わせたものであってもよい。
【0101】
5.その他
図13は、EUV光生成装置1に接続された露光装置5aの構成を概略的に示す。図13において、外部装置5としての露光装置5aは、マスク照射部200とワークピース照射部202とを含む。マスク照射部200は、EUV光生成装置1から入射したEUV光33によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部202は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光33を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースは、フォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置5aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光33をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで、電子デバイスを製造できる。
【0102】
図14は、EUV光生成装置1に接続された検査装置5bの構成を概略的に示す。図14において、外部装置5としての検査装置5bは、照明光学系210と、検出光学系212とを含む。EUV光生成装置1は、EUV光33を検査用光源として検査装置5bに出力する。照明光学系210は、EUV光生成装置1から入射したEUV光33を反射して、マスクステージ214に配置されたマスク216を照射する。ここでいうマスク216は、パターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系212は、照明されたマスク216からのEUV光33を反射して検出器218の受光面に結像させる。EUV光33を受光した検出器218は、マスク216の画像を取得する。検出器218は、例えばTDI(Time Delay Integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク216の画像により、マスク216の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置5aを用いて感光基板上に露光転写することで、電子デバイスを製造できる。
【0103】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の各実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0104】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14