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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136732
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】プローバ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240927BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20240927BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R31/28 H
G01R31/28 K
G01R31/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047945
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】山添 直幸
【テーマコード(参考)】
2G003
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA10
2G003AG03
2G003AG04
2G003AG12
2G003AG13
2G003AG20
2G003AH07
2G132AE02
2G132AE04
2G132AF02
2G132AF06
2G132AF07
2G132AL04
4M106AA01
4M106BA01
4M106CA02
4M106DD03
4M106DD10
4M106DH12
4M106DJ02
4M106DJ05
(57)【要約】
【課題】省スペース且つ低コストにプローブ針の先端の高さ位置を確実に検出可能なプローバを提供する。
【解決手段】ウェーハWの保持面16aを有するチャック16の移動機構(Zθ移動部15a)と、保持面16aに接続されたケーブル40と、ケーブル40の途中に接続された第1リレー50と、一端が第1リレー50に接続され他端が接地された抵抗52と、プローブ針25に接続された第1電源(接触判定用電源42)と、移動機構を駆動してチャック16をプローブ針25に接近させる接近制御部64と、抵抗52の電圧を検出する検出器54の検出値に基づきプローブ針25へのウェーハWの接触の有無を判定する接触判定部66と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持する保持面を有するチャックと、
プローブ針を有するプローブカードと、
前記チャックを移動させる移動機構と、
一端にコネクタが設けられ、他端が前記保持面に電気的に接続されたケーブルと、
前記ケーブルの途中に電気的に接続された第1リレーと、
一端が前記第1リレーに電気的に接続されて、他端が接地されている抵抗と、
前記抵抗の電圧を検出する検出器と、
前記プローブ針に電気的に接続された第1電源と、
前記第1リレーのオン状態への切替と前記第1電源による前記プローブ針への電流供給とを実行した状態で、前記移動機構を駆動して前記チャックを前記プローブ針の下方位置から前記プローブ針へ接近させる接近制御部と、
前記プローブ針への前記チャックの接近中に前記検出器の検出値を監視して、前記プローブ針への前記ウェーハの接触の有無を判定する接触判定部と、
を備えるプローバ。
【請求項2】
前記プローブ針に前記ウェーハが接触したと前記接触判定部が判定した場合に、前記移動機構による前記プローブ針への前記チャックの接近を停止させる停止制御部を備える請求項1に記載のプローバ。
【請求項3】
前記プローブ針に前記ウェーハが接触したと前記接触判定部が判定した場合の前記チャックの位置に基づいて、前記プローブ針の先端の高さ位置を検出する高さ位置検出部を備える請求項1に記載のプローバ。
【請求項4】
前記第1電源が、前記プローブカードに取り付けられている請求項1に記載のプローバ。
【請求項5】
前記プローブ針及び前記コネクタが、前記半導体チップの電気的特性を検査するテスタに電気的に接続され、
前記第1電源が、前記テスタに設けられている請求項1に記載のプローバ。
【請求項6】
前記第1電源が、前記第1リレー、前記抵抗及び前記検出器を含むチャック接続回路に設けられている請求項1に記載のプローバ。
【請求項7】
前記第1電源による前記プローブ針への電流供給を停止させた状態で前記第1リレーをオン状態に切り替えて、前記チャック及び前記ウェーハを除電する除電制御部を備える請求項1から6のいずれか1項に記載のプローバ。
【請求項8】
第2電源と、
一端が前記第2電源に電気的に接続されて、他端が前記保持面に電気的に接続されてさらに前記保持面を介して前記ケーブルに電気的に接続されている追加ケーブルと、
前記第1リレーのオン状態への切替と、前記第1電源による前記プローブ針への電流供給の停止と、前記第2電源による前記追加ケーブルへの電流供給と、を含む断線検査モードを実行する断線検査制御部と、
前記断線検査モードが実行された場合に、前記検出器の検出値に基づいて前記ケーブルの断線の有無を判定する断線判定部と、
を備える請求項1から6のいずれか1項に記載のプローバ。
【請求項9】
一端が前記第1電源と前記プローブ針とを接続する配線の途中に電気的に接続されて、他端が前記抵抗と前記検出器とを電気的に接続する配線の途中に電気的に接続された第2リレーと、
前記第1リレーのオフ状態への切替と、前記第2リレーのオン状態への切替と、前記第1電源による前記プローブ針への電流供給と、を含む電源検査モードを実行する電源検査制御部と、
前記電源検査モードが実行された場合に、前記検出器の検出値に基づいて前記第1電源から前記プローブ針への電流供給が正常に実行可能か否かを判定する電流供給判定部と、
を備える請求項1から6のいずれか1項に記載のプローバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハに複数形成された半導体チップの電気的特性の検査に用いられるプローバに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの表面には、同一の電気素子回路を有する複数の半導体チップが形成されている。各半導体チップは、ダイサーで個々に切断される前に、ウェーハテストシステムにより電気的特性が検査される。このウェーハテストシステムは、プローバとテスタとを備える(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
プローバは、ウェーハをチャック上に保持した状態で、プローブ針を有するプローブカードに対してその下方位置からチャックを接近(上昇)させることにより、半導体チップの電極にプローブ針を電気的に接触(コンタクト)させる。テスタは、プローブ針に接続された端子を介して半導体チップに各種の試験信号を供給すると共に、半導体チップから出力される信号を受信及び解析して半導体チップの電気的特性を検査する。
【0004】
このようにプローブカードの下方位置からチャックを上昇させて半導体チップの電極にプローブ針を接触させる場合には、電極にプローブ針が接触した時点でチャックの上昇を停止させないと、プローブ針が半導体チップの電極に正しく接触しないプロービングミスが生じる。この場合には、電極へのプローブ針の接触が不十分で半導体チップの電気的特性検査が正しく実行されなかったり、逆に電極にプローブ針が接触した後もチャックの上昇を継続することでプローブ針が破損したりするおそれがある。このため、特許文献1及び特許文献2に記載のプローバは、プローブ針の先端の高さ位置を予め検出して、その高さ位置の検出結果に基づいてプローブ針に対する半導体チップ(ウェーハ)の接触を制御している。
【0005】
特許文献1に記載のプローバは、チャックが設けられているステージ上にカメラを備え、このカメラにより撮影されたプローブ針の先端の撮影画像に基づいてプローブ針の先端位置を検出する。具体的にはプローバは、カメラの水平面内での位置座標(XY座標)に基づいてプローブ針の先端の水平面内での位置座標を検出して、カメラの焦点位置に基づいてプローブ針の先端の高さ位置を検出する。
【0006】
特許文献2に記載のプローバは、物理的にプローブ針の先端に接触するプローブ針高さ検出器を備える。このプローブ針高さ検出器は、接触面と線形可変差動変圧器とを備え、この接触面をプローブ針の下方位置から上昇させて、接触面がプローブ針に接触した際の微小変位を線形可変差動変圧器で検出することで、プローブ針の先端の高さ位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-37538号公報
【特許文献2】特開2019-35653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載のプローバではカメラの焦点位置に基づいてプローブ針の先端の高さ位置を検出しているが、プローブ針の種類によってはその先端に対するカメラのピント合わせが困難な場合がある。この場合には、カメラのピント合わせを複数回繰り返す必要があるので、高さ位置の検出に時間がかかるおそれがある。また、カメラの焦点がプローブ針の先端に合わない場合には、その先端位置を見失うことで、プローブ針及びプローブカードを破損するおそれがある。
【0009】
一方、特許文献2に記載のプローバでは、プローブ針の下方位置から接触面を接近させて接触させることでプローブ針の先端の高さ位置を物理的に検出可能であるので、プローブ針の先端を見失うことなくその高さ位置を検出可能である。しかしながら、特許文献2に記載のプローバでは、プローブ針高さ検出器を設ける必要があるのでそのためのスペースが必要になる。また、プローバの種類によっては、プローブ針高さ検出器の設置スペースを確保できない場合もある。さらに、プローブ針高さ検出器のような複雑な検出器又は検出回路が必要となり高コストである。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、省スペース且つ低コストにプローブ針の先端の高さ位置を確実に検出可能なプローバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的を達成するためのプローバは、複数の半導体チップが形成されたウェーハを保持する保持面を有するチャックと、プローブ針を有するプローブカードと、チャックを移動させる移動機構と、一端にコネクタが設けられ、他端が保持面に電気的に接続されたケーブルと、ケーブルの途中に電気的に接続された第1リレーと、一端が第1リレーに電気的に接続されて、他端が接地されている抵抗と、抵抗の電圧を検出する検出器と、プローブ針に電気的に接続された第1電源と、第1リレーのオン状態への切替と第1電源によるプローブ針への電流供給とを実行した状態で、移動機構を駆動してチャックをプローブ針の下方位置からプローブ針へ接近させる接近制御部と、プローブ針へのチャックの接近中に検出器の検出値を監視して、プローブ針へのウェーハの接触の有無を判定する接触判定部と、を備える。
【0012】
このプローバによれば、プローブ針に対してチャックをその下方位置から接近させた場合に、プローブ針に対するウェーハの接触を電気的に検出することができるので、物理的な接触検知装置及び複雑な回路の追加を行うことなく、プローブ針の高さ位置を検出することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係るプローバにおいて、プローブ針にウェーハが接触したと接触判定部が判定した場合に、移動機構によるプローブ針へのチャックの接近を停止させる停止制御部を備える。これにより、プローブ針及びプローブカードの破損が防止される。
【0014】
本発明の他の態様に係るプローバにおいて、プローブ針にウェーハが接触したと接触判定部が判定した場合のチャックの位置に基づいて、プローブ針の先端の高さ位置を検出する高さ位置検出部を備える。これにより、省スペース且つ低コストにプローブ針の先端の高さ位置を確実に検出することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係るプローバにおいて、第1電源が、プローブカードに取り付けられている。
【0016】
本発明の他の態様に係るプローバにおいて、プローブ針及びコネクタが、半導体チップの電気的特性を検査するテスタに電気的に接続され、第1電源が、テスタに設けられている。これにより、第1電源を別途設ける必要がなくなるので、プローバの省スペース化且つ低コスト化が図れる。
【0017】
本発明の他の態様に係るプローバにおいて、第1電源が、第1リレー、抵抗及び検出器を含むチャック接続回路に設けられている。これにより、チャック接続回路と第1電源とを一体化させられるので、プローバの省スペース化が図れる。
【0018】
本発明の他の態様に係るプローバにおいて、第1電源によるプローブ針への電流供給を停止させた状態で第1リレーをオン状態に切り替えて、チャック及びウェーハを除電する除電制御部を備える。これにより、ウェーハの検査時に半導体チップとプローブ針との間に放電によるアークが発生して半導体チップを損傷することが防止される。
【0019】
本発明の他の態様に係るプローバにおいて、第2電源と、一端が第2電源に電気的に接続されて、他端が保持面に電気的に接続されてさらに保持面を介してケーブルに電気的に接続されている追加ケーブルと、第1リレーのオン状態への切替と、第1電源によるプローブ針への電流供給の停止と、第2電源による追加ケーブルへの電流供給と、を含む断線検査モードを実行する断線検査制御部と、断線検査モードが実行された場合に、検出器の検出値に基づいてケーブルの断線の有無を判定する断線判定部と、を備える。これにより、ケーブルが断線している状態でプローブ針の高さ位置の検出、すなわちプローブ針に対するチャックの接近が実行されることが防止されるので、プローブ針及びプローブカードの破損が防止される。
【0020】
本発明の他の態様に係るプローバにおいて、一端が第1電源とプローブ針とを接続する配線の途中に電気的に接続されて、他端が抵抗と検出器とを電気的に接続する配線の途中に電気的に接続された第2リレーと、第1リレーのオフ状態への切替と、第2リレーのオン状態への切替と、第1電源によるプローブ針への電流供給と、を含む電源検査モードを実行する電源検査制御部と、電源検査モードが実行された場合に、検出器の検出値に基づいて第1電源からプローブ針への電流供給が正常に実行可能か否かを判定する電流供給判定部と、を備える。これにより、第1電源に問題がある状態でプローブ針の高さ位置の検出、すなわちプローブ針に対するチャックの接近が実行されることが防止されるので、プローブ針及びプローブカードの破損が防止される。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、省スペース且つ低コストにプローブ針の先端の高さ位置を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】プローバを備えるウェーハテストシステムの概略図である。
図2】ケーブル、接触判定用電源及びチャック接続回路を説明するための説明図である。
図3】第1実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
図4】第1実施形態の除電制御部によるチャックの除電制御を説明するための説明図である。
図5】第1実施形態の接近制御部及び接触判定部の機能を説明するための説明図である。
図6】第1実施形態の接触判定部、停止制御部及び高さ位置検出部の機能を説明するための説明図である。
図7】第1実施形態のプローバの針先端高さ位置の検出処理、及びチャックの除電処理の流れを示したフローチャートである。
図8】第1実施形態のプローバに設けられている接触判定用電源の配置の変形例を説明するための説明図である。
図9】第1実施形態のプローバに設けられている接触判定用電源の配置の変形例を説明するための説明図である。
図10】第2実施形態のウェーハテストシステムのプローバの概略図である。
図11】第2実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
図12】第2実施形態のプローバの除電処理、針先端高さ位置の検出処理、及びケーブルの断線検査処理の流れを示したフローチャートである。
図13】第2実施形態のプローバの接触判定用電源の検査処理の流れを示したフローチャートである。
図14】第2実施形態の除電モード時の除電制御部の機能を説明するための説明図である。
図15】第2実施形態の高さ位置検出モード時の接近制御部、接触判定部、停止制御部及び高さ位置検出部の機能を説明するための説明図である。
図16】断線検査モード時の断線検査制御部及び断線判定部の機能を説明するための説明図である。
図17】電源検査モード時の電源検査制御部及び電流供給判定部の機能ついて説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明のプローバ10を備えるウェーハテストシステム9の概略図である。なお、図中の互いに直交するXYZ方向のうちでX方向及びY方向は水平面に平行な方向であり、Z方向は上下方向に平行な方向である。
【0024】
ウェーハテストシステム9は、ウェーハWに形成された複数の半導体チップ(図示は省略、以下同じ)の電気的特性を検査する。このウェーハテストシステム9は、プローバ10とテスタ30とを備える。
【0025】
プローバ10は、ウェーハW上の個々の半導体チップの表面に形成された表面電極(図示は省略、以下同じ)にプローブ針25を接触させると共に、個々の半導体チップの裏面に形成された裏面電極(図示は省略、以下同じ)に後述のチャック16の導電性の保持面16aを接触させる。テスタ30は、プローブ針25と裏面電極(保持面16a)とに電気的に接続され、個々の半導体チップの電気的特性を検査する。
【0026】
プローバ10は、基台11と、ベース12と、Yステージ13と、Xステージ14と、Zθステージ15と、チャック16と、プローブ位置検出カメラ18と、高さ調整機構21と、ウェーハアライメントカメラ19と、ヘッドステージ22と、カードホルダ23と、プローブカード24と、プローブ針25と、を備える。
【0027】
基台11の上面には、略平板状のベース12が固定されている。なお、基台11の代わりに脚部材を用いてもよいし、或いは基台11とベース12を一体に形成しても良い。
【0028】
ベース12の上面には、Y移動部13a(図3参照)を介してYステージ13がY方向に移動自在に設けられている。Y移動部13aは、例えば、ベース12の上面に設けられ且つY方向に平行なガイドレールと、Yステージ13の下面に設けられ且つガイドレールに係合するスライダと、Yステージ13をY方向に移動させるモータ等のアクチュエータと、を備える。このY移動部13aを駆動することにより、ベース12上でYステージ13と、後述のXステージ14及びZθステージ15等とが一体的にY方向に移動される。
【0029】
Yステージ13の上面には、X移動部14a(図3参照)を介してXステージ14がX方向に移動自在に設けられている。X移動部14aは、Yステージ13の上面に設けられ且つX軸に平行なガイドレールと、Xステージ14の下面に設けられ且つガイドレールに係合するスライダと、Xステージ14をX方向に移動させるモータ等のアクチュエータと、を備える。このX移動部14aを駆動することにより、Yステージ13上でXステージ14及び後述のZθステージ15等が一体的にX方向に移動される。
【0030】
Xステージ14の上面には、Zθステージ15及び高さ調整機構21が設けられている。Zθステージ15の内部にはZθ移動部15a(図3参照)が設けられている。また、Zθステージ15の上面には、Zθ移動部15aを介して、チャック16が保持されている。このZθ移動部15aは、Y移動部13a及びX移動部14aと共に本発明の移動機構を構成する。Zθ移動部15aは、例えば、Zθステージ15の上面をZ方向に移動自在な昇降機構と、且つこの上面をZ方向に平行なZ軸の軸周り方向に回転させる回転機構と、を有する。このため、Zθ移動部15aは、Zθステージ15を介してチャック16をZ方向に移動させると共にZ軸の軸周り方向に回転させる。
【0031】
チャック16は、既述のYステージ13とXステージ14とZθステージ15とにより、ベース12に対してXYZ方向に移動自在に支持されている共に、Z軸の軸周り方向に回転自在に支持されている。このチャック16の上面は、ウェーハWをその裏面側から保持する保持面16aである。これにより、チャック16を移動させることで、ウェーハWに後述のプローブ針25を接触させることができる。
【0032】
保持面16aは、例えばアルミメッキ又は金メッキ等の各種表面処理が施されており、導電性を有している。なお、この表面処理にはメッキ以外の導電性コーティング処理も含まれる。この保持面16aは、ウェーハWの各半導体チップの裏面電極に接触する。そして、この保持面16aは、後述のケーブル40(図2参照)を介してテスタ30に電気的に接続されており、このテスタ30の測定電極として作用する。これにより、ウェーハWの各半導体チップの検査時の各種測定条件に応じて、テスタ30から各半導体チップの裏面電極に対して各種試験信号が印加される。
【0033】
高さ調整機構21は、後述のプローブ位置検出カメラ18のZ方向の昇降を行う。この高さ調整機構21は、公知の直線的な移動機構であればよく、例えばリニアガイド機構及びボールネジ機構等が用いられる。
【0034】
ヘッドステージ22は、不図示の支柱等によってチャック16(ウェーハW)の上方に支持されている。ヘッドステージ22は、略環状に形成されており、その中央部にはプローブカード24を保持する略環状のカードホルダ23が設けられている。すなわちヘッドステージ22は、カードホルダ23を介してプローブカード24を保持する。
【0035】
プローブカード24は複数のプローブ針25を有している。これらプローブ針25は、検査対象のウェーハWの各半導体チップの表面電極の配置に対応したパターンでプローブカード24に配置されている。
【0036】
プローブ位置検出カメラ18は、高さ調整機構21に取り付けられている。プローブ位置検出カメラ18は、各プローブ針25を下方から撮影する。このプローブ位置検出カメラ18にて撮影された各プローブ針25の撮影画像と、プローブ位置検出カメラ18の既知のXY座標と、に基づいてプローブ針25の先端位置のXY座標を検出可能である。なお、プローブ針25の先端位置のZ座標、すなわち先端の高さ位置については、後述の図2に示す接触判定用電源42及びチャック接続回路46等を用いて検出する。
【0037】
プローバ10は、動作モードとして、ウェーハWの各半導体チップの電気的特性を検査する公知の検査モードの他に、プローブ針25の先端の高さ位置(以下、針先端高さ位置という)を検出する高さ位置検出モードと、チャック16の除電(ディスチャージ)を実行する除電モードと、を有する。
【0038】
テスタ30は、テストヘッド31と、テストヘッド31に設けられたコンタクトリング32とを備えている。プローブカード24には、各プローブ針25に接続される端子が設けられている。そして、コンタクトリング32は、プローブカード24の各端子に接触可能な配置パターンで配置されたスプリングプローブを有する。
【0039】
テストヘッド31は、各プローブ針25を介してウェーハWの検査対象の半導体チップの表面電極に電気的に接続され、且つケーブル40(図2参照)及び保持面16a等を介して検査対象の半導体チップの裏面電極に電気的に接続される。そして、テストヘッド31は、検査対象の半導体チップに各種試験信号を印加することで、検査対象の半導体チップの電気的特性を検査する。
【0040】
図2は、ケーブル40、接触判定用電源42及びチャック接続回路46を説明するための説明図である。図2に示すように、ケーブル40の一端部にはテストヘッド31に接続されるBNC(Bayonet Neill Concelman)型のコネクタ40aが設けられている。なお、コネクタ40aの種類は特に限定はされない。また、ケーブルの他端部は、保持面16aに電気的に接続されている。これにより、保持面16aとテスタ30とがケーブル40を介して電気的に接続される。
【0041】
接触判定用電源42は、本発明の第1電源に相当するものであり、プローブカード24に取り付けられている。接触判定用電源42は、高さ位置検出モード時において後述のチャック接続回路46と共に、各プローブ針25に対するウェーハWの接触の有無を判定する接触判定に用いられる。この接触判定用電源42は、電源本体42aと電源リレー42bとにより構成されている。
【0042】
電源本体42aは、電源リレー42bを介して各プローブ針25に電流を供給する。電源リレー42bは、特に種類は限定されないが、例えば高絶縁リレーが用いられる。この電源リレー42bは、電源本体42aと各プローブ針25との双方の間において、双方を電気的に接続するオン状態(接続状態、クローズ状態)と、双方の電気的な接続を解除したオフ状態(非接続状態、オープン状態)とに切替可能である。後述の制御装置60の下、電源リレー42bをオン状態に切り替えることで接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給が実行され、逆に電源リレー42bをオフ状態に切り替えることで接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給が停止(遮断)される。
【0043】
チャック接続回路46は、ケーブル40の途中に電気的に接続されており、このケーブル40を介して保持面16aに電気的に接続されている。チャック接続回路46は、高さ位置検出モード時には既述の接触判定用電源42と共にウェーハWに対する各プローブ針25の接触判定を実行する「接触判定回路」として機能する。また、チャック接続回路46は、除電モード時にはチャック16及びウェーハWを除電する「除電回路」として機能する。このチャック接続回路46は、第1リレー50と、抵抗52と、検出器54と、を備える。
【0044】
第1リレー50は、その一端が不図示の分岐コネクタを介してケーブル40の途中に電気的に接続され、その他端が抵抗52に電気的に接続されている。この第1リレー50は、後述の制御装置60の下、ケーブル40(保持面16a)と抵抗52との双方の間において、双方を電気的に接続するオン状態と双方の電気的な接続を解除したオフ状態とに切替可能である。第1リレー50をオン状態に切り替えることで高さ位置検出モード又は除電モードが実行可能になり、第1リレー50をオフ状態に切り替えることで検査モードが実行可能になる。
【0045】
抵抗52は、その一端が第1リレー50に電気的に接続され、その他端が接地(符号FG参照)されている。ここでいう接地とは、金属製の筐体に接続されるフレーム接地が例として挙げられる。なお、抵抗52を接地する方法については特に限定はされない。
【0046】
検出器54は、第1リレー50と抵抗52とを接続する配線の途中に電気的に接続されており、抵抗52の電圧(両端電圧、電位差)を検出する電圧計である。検出器54は、高さ位置検出モード時に電圧の検出値を制御装置60へ出力する。
【0047】
図3は、第1実施形態の制御装置60の機能ブロック図である。なお、図3では、制御装置60の高さ位置検出モード及び除電モードに係る機能のみを図示し、他の機能については公知技術であるので図示を省略する。
【0048】
図3に示すように、制御装置60は、プローバ10の各部を統括制御する。なお、制御装置60は、プローバ10の本体に内蔵されていてもよいし、或いはこの本体と別体に設けられていてもよい。また、制御装置60には、既述のY移動部13a、X移動部14a、Zθ移動部15a、接触判定用電源42及びチャック接続回路46の他に、操作部48が接続されている。
【0049】
操作部48は、プローバ10の動作モードの切替操作及びプローバ10の設定操作等の各種の操作入力を受け付ける。
【0050】
制御装置60は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置60の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0051】
制御装置60は、不図示の記憶部から読み出した不図示の制御プログラムを実行することにより、除電制御部62、接近制御部64、接触判定部66、停止制御部68及び高さ位置検出部70として機能する。
【0052】
図4は、第1実施形態の除電制御部62によるチャック16の除電制御を説明するための説明図である。チャック16には電荷(静電気)が帯電し、さらにチャック16上のウェーハWにも電荷が帯電するため、ウェーハWの検査に伴って半導体チップの表面電極と各プローブ針25とが接触する際に、半導体チップと各プローブ針25との間に放電によるアークが発生して半導体チップを損傷するおそれがある。そこで、図4及び既述の図3に示すように、除電制御部62は、操作部48でプローバ10の動作モードが除電モードに切り替えられた場合に作動して、チャック16の除電を実行する。
【0053】
具体的には除電制御部62は、電源リレー42bをオフ状態に切り替えて接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給を停止させる。また、除電制御部62は、第1リレー50をオン状態に切り替える。これにより、チャック16及びウェーハWに帯電した電荷がケーブル40、第1リレー50及び抵抗52を経て接地側に流れる。その結果、チャック16等を放電することができる。
【0054】
図4に戻って、接近制御部64、接触判定部66、停止制御部68及び高さ位置検出部70は、操作部48でプローバ10の動作モードが高さ位置検出モードに切り替えられた場合に作動して、針先端高さ位置の検出を実行する。本実施形態では、保持面16aにウェーハWを保持させた状態で各プローブ針25の下方位置からチャック16をZ方向上方側に移動させて、この移動中の検出器54の検出値に基づいて各プローブ針25に対するウェーハW(半導体チップ)の接触判定を実行することで、針先端高さ位置を検出する。なお、高さ位置検出モードで使用するウェーハWは、製品ウェーハ又はサンプルウェーハのいずれでもよい。
【0055】
図5は、第1実施形態の接近制御部64及び接触判定部66の機能を説明するための説明図である。図6は、第1実施形態の接触判定部66、停止制御部68及び高さ位置検出部70の機能を説明するための説明図である。
【0056】
図5及び既述の図3に示すように、接近制御部64は、操作部48でプローバ10の動作モードが高さ位置検出モードに切り替えられた場合に、第1リレー50及び電源リレー42bの双方をオン状態に切り替える。第1リレー50をオン状態に切り替えることで抵抗52等が保持面16aに電気的に接続される。また、電源リレー42bをオン状態に切り替えることで接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給が開始される。
【0057】
次いで、接近制御部64は、Zθ移動部15aを駆動して、各プローブ針25(プローブカード24)の下方位置からウェーハWを保持するチャック16をZ方向上方側に移動させて(矢印Z1参照)、各プローブ針25に対してチャック16及びウェーハWを接近させる。なお、接近制御部64は、各プローブ針25のZ方向下方側にチャック16が位置調整されていない場合には、Y移動部13a及びX移動部14aを駆動して各プローブ針25のZ方向下方側にチャック16を位置調整した後、Zθ移動部15aを駆動してチャック16をZ方向上方側に移動させる。
【0058】
接触判定部66は、各プローブ針25へのチャック16及びウェーハWの接近中に、検出器54の検出値を連続的に監視して、各プローブ針25に対するウェーハWの接触の有無を判定する接触判定を実行する。ウェーハWが各プローブ針25に接触するまでの間は、接触判定用電源42から各プローブ針25に供給されている電流がウェーハW、保持面16a、ケーブル40及び第1リレー50を経て抵抗52まで流れることはない。この場合には、検出器54の検出値は所定の閾値未満、具体的にはGND電位である0Vとなる。このため、接触判定部66は、各プローブ針25へのチャック16等の接近中に、検出器54の検出値が閾値未満であればウェーハWが各プローブ針25に接触してないと判定する。
【0059】
図6及び既述の図3に示すように、各プローブ針25にウェーハWが接触すると、接触判定用電源42から各プローブ針25に供給されている電流がウェーハW、保持面16a、ケーブル40及び第1リレー50を経て抵抗52まで流れる。この場合には検出器54の検出値が増加する。このため、接触判定部66は、各プローブ針25へのチャック16等の接近中に、検出器54の検出値が閾値以上になった場合には各プローブ針25にウェーハWが接触したと判定する。このように本実施形態では、各プローブ針25に対するウェーハWの接触を電気的に検出することができる。
【0060】
停止制御部68は、各プローブ針25にウェーハWが接触したと接触判定部66が判定した場合には、Zθ移動部15aの駆動を停止させることで、各プローブ針25へのチャック16等の接近を停止させる。
【0061】
高さ位置検出部70は、各プローブ針25にウェーハWが接触したと接触判定部66が判定した場合に、その時のチャック16の位置(Z方向位置)及び既知のウェーハWの厚み情報に基づいて、針先端高さ位置を検出する。針先端高さ位置は、所定の基準面からのプローブ針25の先端の高さ位置である。ここで、基準面とはプローバ10の全般において高さの基準となる面であり、任意の面、例えばXステージ14の上面に設定される。
【0062】
[第1実施形態の作用]
図7は、第1実施形態のプローバ10の針先端高さ位置の検出処理、及びチャック16の除電処理の流れを示したフローチャートである。
【0063】
図7に示すように、検者はプローバ10の針先端高さ位置の検出を実行する場合には操作部38によりプローバ10の動作モードを「高さ位置検出モード」に切り替えて、チャック16等の除電を実行する場合には操作部38によりプローバ10の動作モードを「除電モード」に切り替える(ステップS1)。
【0064】
プローバ10の動作モードが除電モードに切り替えられると(ステップS2でNO、ステップS3)、制御装置60の除電制御部62が作動する。そして、除電制御部62が、既述の図4に示したように、電源リレー42bをオフ状態に切り替えて接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給を停止させると共に(ステップS4)、第1リレー50をオン状態に切り替える(ステップS5)。なお、ステップS4及びステップS5の順番は逆又は同時であってもよい。
【0065】
ステップS4及びステップS5が完了すると、チャック16及びウェーハWに帯電した電荷が、ケーブル40、第1リレー50及び抵抗52を経て接地側に放電される。その結果、チャック16が除電されるので、ウェーハWの検査時に半導体チップとプローブ針25との間に放電によるアークが発生して半導体チップを損傷することが防止される。
【0066】
一方、プローバ10の動作モードが高さ位置検出モードに切り替えられた場合には(ステップS2でYES)、制御装置60の接近制御部64、接触判定部66、停止制御部68及び高さ位置検出部70が作動する。
【0067】
最初に接近制御部64が、既述の図5に示したように第1リレー50をオン状態に切り替えると共に(ステップS6)、電源リレー42bをオン状態に切り替えることで接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給を開始させる(ステップS7)。なお、ステップS6及びステップS7の順番についても逆又は同時であってもよい。
【0068】
次いで、接近制御部64が、Zθ移動部15aを駆動して、各プローブ針25の下方位置にあるチャック16をZ方向上方側に移動させることで、各プローブ針25に対してチャック16及びウェーハWを接近させる(ステップS8)。
【0069】
各プローブ針25へのチャック16等の接近が開始されると、接触判定部66が、検出器54の検出値を連続的に監視して、この検出値が閾値以上となるか否かに基づいてウェーハWに対する各プローブ針25の接触判定を実行する(ステップS9)。以下、検出器54の検出値が閾値以上となるまで、すなわちウェーハWが各プローブ針25に接触するまで、チャック16の移動及び接触判定部66の接触判定が継続する(ステップS10でNO)。
【0070】
既述の図6に示したように、ウェーハWが各プローブ針25に接触すると、接触判定用電源42から各プローブ針25に供給されている電流がウェーハWから保持面16a、ケーブル40及び第1リレー50を経て抵抗52まで流れることで、検出器54の検出値が閾値以上となる。これにより、接触判定部66は、ウェーハWが各プローブ針25に接触したと判定する(ステップS10でYES)。
【0071】
接触判定部66がステップS10でYESと判定した場合には、停止制御部68がZθ移動部15aの駆動を停止させる(ステップS11)。これにより、各プローブ針25へのチャック16等の更なる接近が防止されることで、各プローブ針25及びプローブカード24の破損が防止される。
【0072】
また、接触判定部66がステップS10でYESと判定した場合には、高さ位置検出部70がその時のチャック16の位置等に基づいて、針先端高さ位置を検出する(ステップS12)。この針先端高さ位置の検出結果に基づいて、検査モード時に各プローブ針25をウェーハWの各半導体チップの表面電極に正しく接触させることができる。
【0073】
以上のように第1実施形態のプローバ10では、各プローブ針25へのチャック16等の接近中に、チャック16の除電に用いられるチャック接続回路46(除電回路)を利用して各プローブ針25に対するウェーハWの接触を電気的に検出することで、各プローブ針25に対するウェーハWの接触判定を実行可能である。
【0074】
このように第1実施形態では除電回路の改良(検出器54の追加)と、プローブカード24への接触判定用電源42の取り付けと、を実行するだけで、各プローブ針25に対するウェーハWの接触を電気的に検出することができる。このため、上記特許文献2に記載のプローブ針高さ検出器を用いる場合と比較して、低コスト化及び省スペース化が図れる。また、各プローブ針25に対するウェーハWの接触を電気的に検出するので、上記特許文献1に記載のカメラを用いる場合と比較して短時間で且つ確実に針先端高さ位置を検出することができる。その結果、省スペース且つ低コストに針先端高さ位置を確実に検出することができる。
【0075】
[第1実施形態の変形例]
図8及び図9は、第1実施形態のプローバ10に設けられている接触判定用電源42の配置の変形例を説明するための説明図である。上記第1実施形態では接触判定用電源42をプローブカード24に取り付けているが、例えば図8に示すように、接触判定用電源42をテスタ30に設ける、すなわちテスタ30の電源を接触判定用電源42として利用してもよい。これにより、接触判定用電源42を別途設ける必要がなくなるので、プローバ10の省スペース化且つ低コスト化が図れる。
【0076】
また、図9に示すように、接触判定用電源42をチャック接続回路46に設けてもよい。この場合には接触判定用電源42(電源リレー42b)を、コネクタ43及び各種配線を用いて、テスタ30と各プローブ針25とを接続する配線の途中に電気的に接続する。これにより、チャック接続回路46と接触判定用電源42とを一体化させられるので、プローバ10の省スペース化が図れる。
【0077】
なお、電源リレー42bは高絶縁リレーであるので、例えば検査モード時(接触判定用電源42を使用しない場合)には電源リレー42bをオフ状態に切り替えることで、電源本体42aが出力される電流が遮断される。その結果、電源本体42aから出力される電流が、テスタ30と各プローブ針25との間で検査モード時の試験用信号に影響を与えることが防止される。
【0078】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態のウェーハテストシステム9のプローバ10の概略図である。上記第1実施形態(その変形例を含む、以下同じ)のプローバ10では、接触判定部66が検出器54の検出値に基づいて各プローブ針25に対するウェーハWの接触判定を実行している。この際に、例えばケーブル40が断線していた場合、或いは接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給に問題がある場合には、各プローブ針25へのウェーハWの接触の有無に関わらず、検出器54の検出値が閾値以上にならない。この場合には各プローブ針25へのチャック16等の接近が継続されるので、各プローブ針25及びプローブカード24が破損するおそれがある。
【0079】
そこで、第2実施形態のプローバ10は、動作モードとして、既述の高さ位置検出モード及び除電モードの他に、断線検査モードと電源検査モードとを有する。断線検査モードは、ケーブル40の断線の有無を検査する動作モードである。電源検査モードは、接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給が正常に実行可能か否かを検査する動作モードである。
【0080】
図10に示すように、第2実施形態のプローバ10は、断線判定用電源76、追加ケーブル77及び第2リレー78を備える点と、制御装置60の機能が一部異なる点とを除けば、上記第1実施形態のプローバ10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。なお、第2実施形態のプローバ10では、接触判定用電源42がテスタ30又はチャック接続回路46に設けられているものとする。
【0081】
断線判定用電源76は、本発明の第2電源に相当するものであり、チャック接続回路46に設けられている。この断線判定用電源76は、断線検査モード時においてケーブル40の断線の有無を判定する断線判定に用いられる。断線判定用電源76は、電源本体76aと電源リレー76bとにより構成されている。
【0082】
電源本体76aは、電源リレー76bを介して追加ケーブル77及び保持面16aに電流を供給する。電源リレー76bは、例えば電源リレー42bと同様の高絶縁リレーが用いられる。この電源リレー76bは、制御装置60の下、電源本体76aと追加ケーブル77との双方の間においてオン状態とオフ状態とに切替可能である。電源リレー76bをオン状態に切り替えることで、断線判定用電源76による追加ケーブル77及び保持面16aへの電流供給が実行される。逆に電源リレー76bをオフ状態に切り替えることで断線判定用電源76による追加ケーブル77及び保持面16aへの電流供給が停止(遮断)される。
【0083】
追加ケーブル77の一端は断線判定用電源76に電気的に接続され、追加ケーブル77の他端は保持面16aに電気的に接続されている。このため、追加ケーブル77は、保持面16aを介してケーブル40に電気的に接続されている。なお、追加ケーブル77としては、事前の検査で断線していないことが保証されているものが用いられる。
【0084】
第2リレー78は、チャック接続回路46に設けられている。第2リレー78の一端は、不図示の配線及び分岐コネクタ等を介して、接触判定用電源42と各プローブ針25とを接続する配線の途中に電気的に接続されている。また、第2リレー78の他端は、不図示の配線及び分岐コネクタ等を介して、抵抗52と検出器54とを接続する配線の途中に電気的に接続されている。
【0085】
第2リレー78は、制御装置60の下、オン状態とオフ状態とに切替可能であり、電源検査モード時にのみオン状態に切り替えられる。この第2リレー78をオン状態に切り替えることで、接触判定用電源42を、各プローブ針25、ウェーハW、保持面16a、ケーブル40及び第1リレー50を介さずに、抵抗52に対して直接電気的に接続することができる。これにより、接触判定用電源42から抵抗52に対する電流供給を直接実行することができる。
【0086】
図11は、第2実施形態の制御装置60の機能ブロック図である。図11に示すように、第2実施形態の制御装置60は、既述の除電制御部62、接近制御部64、接触判定部66、停止制御部68及び高さ位置検出部70の他に、断線検査制御部80と、断線判定部82と、電源検査制御部84と、電流供給判定部86として機能する。
【0087】
第2実施形態の除電制御部62は、除電モード時に作動して、電源リレー42b、第1リレー50、電源リレー76b及び第2リレー78の計4種類のリレーの切り替えを制御することで、第1実施形態と同様にチャック16及びウェーハWの放電を実行する。
【0088】
第2実施形態の接近制御部64、接触判定部66、停止制御部68及び高さ位置検出部70は、高さ位置検出モード時に作動して、第1実施形態と同様に針先端高さ位置を検出する。この際に第2実施形態の接近制御部64は、上述の4種類のリレーの切り替えを制御する。一方、第2実施形態の接触判定部66、停止制御部68及び高さ位置検出部70の機能ついては上記第1実施形態と同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0089】
断線検査制御部80及び断線判定部82は、断線検査モード時に作動して、ケーブル40の断線の有無を検査する。
【0090】
電源検査制御部84及び電流供給判定部86は、電源検査モード時に作動して、接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給が正常に実行可能であるのか否かを検査する。
【0091】
図12は、第2実施形態のプローバ10の除電処理、針先端高さ位置の検出処理、及びケーブル40の断線検査処理の流れを示したフローチャートである。図13は、第2実施形態のプローバ10の接触判定用電源42の検査処理の流れを示したフローチャートである。
【0092】
図14は、第2実施形態の除電モード時の除電制御部62の機能を説明するための説明図である。図15は、第2実施形態の高さ位置検出モード時の接近制御部64、接触判定部66、停止制御部68及び高さ位置検出部70の機能を説明するための説明図である。図16は、断線検査モード時の断線検査制御部80及び断線判定部82の機能を説明するための説明図である。図17は、電源検査モード時の電源検査制御部84及び電流供給判定部86の機能ついて説明するための説明図である。
【0093】
図12及び図14に示すように、操作部48でプローバ10の動作モードが除電モードに切り替えられると(ステップS1、ステップS2AでYES)、除電制御部62が電源リレー42b,76bのオフ状態への切り替えを実行する。これにより、接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給が停止されると共に(ステップS4)、断線判定用電源76から追加ケーブル77への電流供給が停止される(ステップS4A)。
【0094】
また、除電制御部62は、第1リレー50のオン状態への切替(ステップS5)と、第2リレー78のオフ状態への切替(ステップS5A)と、を実行する。これにより、第1実施形態と同様に、チャック16及びウェーハWに帯電した電荷をケーブル40、第1リレー50及び抵抗52を経て接地側に流すことで、チャック16等を放電することができる。なお、ステップS4、ステップS4A、ステップS5、ステップS5Aは同時又は順不同で実行してもよい。
【0095】
図12及び図15に示すように、操作部48でプローバ10の動作モードが高さ位置検出モードに切り替えられると(ステップS2AでNO、ステップS3AでYES)、接近制御部64が、第1リレー50をオン状態に切り替えると共に(ステップS6)、第2リレー78をオフ状態に切り替える(ステップS6A)。
【0096】
また、接近制御部64は、電源リレー76bのオフ状態への切り替えと電源リレー42bのオン状態への切り替えとを実行する。これにより、断線判定用電源76から追加ケーブル77への電流供給が停止される一方で(ステップS6B)、第1実施形態と同様に接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給が開始される(ステップS7)。なお、ステップS6、ステップS6A、ステップS6B、ステップS7は同時又は順不同で実行してもよい。
【0097】
以下、既述の図7で説明した第1実施形態のステップS8からステップS12までの処理が実行されて、高さ位置検出部70により針先端高さ位置が検出される。
【0098】
図12及び図16に示すように、操作部48でプローバ10の動作モードが断線検査モードに切り替えられると(ステップS2A,S3AでNO、ステップS20でYES)、断線検査制御部80が電源リレー42bをオフ状態に切り替えて、接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給を停止させる(ステップS21)。また、断線検査制御部80は、第2リレー78のオフ状態への切り替え(ステップS22)と、第1リレー50のオン状態への切り替え(ステップS23)と、を実行する。
【0099】
さらに、断線検査制御部80は、電源リレー76bをオン状態に切り替えて、断線判定用電源76から追加ケーブル77及び保持面16aを介してケーブル40への電流供給を開始させる(ステップS24)。なお、ステップS21からステップS24は同時又は順不同で実行してもよい。また、図16では各プローブ針25にウェーハWが接触しているが、断線検査モード時には、既述の図4に示したように、各プローブ針25とウェーハWとが離間していてもよい(後述の図17に示す電源検査モード時も同様)。
【0100】
断線判定部82は、断線検査制御部80による電源リレー42b,76b、第1リレー50及び第2リレー78の切り替えが完了すると、検出器54の検出値に基づいてケーブル40の断線の有無を判定する(ステップS25,S26)。
【0101】
具体的にはケーブル40が断線している場合には、断線判定用電源76から供給される電流がケーブル40で遮断されて抵抗52まで流れないので、検出器54の検出値が所定の閾値よりも小さい値(GND電位:0V)になる。逆にケーブル40が断線していない場合には、断線判定用電源76から供給される電流が抵抗52まで流れるため、検出器54の検出値が所定の閾値以上になる。このため、接触判定部66は、検出器54の検出値が所定の閾値未満であるのか否かに基づいて、ケーブル40の断線の有無を判定する。
【0102】
図12図13及び図17に示すように、操作部48でプローバ10の動作モードが電源検査モードに切り替えられると(ステップS2A,S3A,S20でNO、ステップS30)、電源検査制御部84が電源リレー76bをオフ状態に切り替えて、断線判定用電源76から追加ケーブル77への電流供給を停止させる(ステップS31)。
【0103】
また、電源検査制御部84は、第1リレー50のオフ状態への切り替えと(ステップS32)、第2リレー78のオン状態への切り替えと(ステップS33)、を実行する。さらに、電源検査制御部84は、電源リレー42bをオン状態に切り替えて、接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給を開始させる(ステップS34)。これにより、接触判定用電源42から抵抗52に対して直接的に電流供給が可能になる。なお、ステップS31からステップS34は同時又は順不同で実行してもよい。
【0104】
電流供給判定部86は、電源検査制御部84による電源リレー42b,76b、第1リレー50及び第2リレー78の切り替えが完了した場合に、検出器54の検出値に基づいて接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給が正常に実行可能か否かを判定する(ステップS35,S36)。
【0105】
具体的には接触判定用電源42の故障等の原因で電流供給が正常に実行されていない場合には、電流が抵抗52まで流れないので、検出器54の検出値が所定の閾値よりも小さい値(GND電位:0V)になる。逆に接触判定用電源42からの電流供給が正常に実行されている場合には、電流が抵抗52まで正常に流れるため、検出器54の検出値が所定の閾値以上になる。このため、電流供給判定部86は、検出器54の検出値が所定の閾値未満であるのか否かに基づいて、接触判定用電源42から各プローブ針25への電流供給が正常に実行可能か否かを判定する。
【0106】
以上のように第2実施形態のプローバ10では、高さ位置検出モードの前に断線検査モード及び電源検査モードを実行して、ケーブル40の断線の有無及び接触判定用電源42が正常であるのか否かを事前に確認することができる。その結果、高さ位置検出モードに各プローブ針25へのウェーハWの接触を確実に検出することができるので、各プローブ針25及びプローブカード24の破損が防止される。
【0107】
なお、第2実施形態のプローバ10では、断線検査モード及び電源検査モードの双方を選択的に実行可能であるが、いずれか一方のみが実行可能であってもよい。そして、断線検査モードを実行しない場合には断線判定用電源76及び追加ケーブル77を省略可能であり、逆に電源検査モードを実行しない場合には第2リレー78を省略可能である。
【0108】
[その他]
上記各実施形態では、電源リレー42b,76b(高絶縁リレー)のオン状態とオフ状態とを切り替えることで接触判定用電源42及び断線判定用電源76の電力供給のオンオフを切り替えているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、高絶縁リレーの代わりに、FET(Field Effect Transistor)、トランジスタ、フォトカプラ等の半導体素子、メカニカルスイッチ又は物理スイッチなどを用いて、接触判定用電源42及び断線判定用電源76の電力供給のオンオフを切り替えてもよい。
【符号の説明】
【0109】
9…ウェーハテストシステム、10…プローバ、11…基台、12…ベース、13…Yステージ、13a…Y移動部、14…Xステージ、14a…X移動部、15…Zθステージ、15a…Zθ移動部、16…チャック、16a…保持面、18…プローブ位置検出カメラ、19…ウェーハアライメントカメラ、21…高さ調整機構、22…ヘッドステージ、23…カードホルダ、24…プローブカード、25…プローブ針、30…テスタ、31…テストヘッド、32…コンタクトリング、38…操作部、40…ケーブル、40a…コネクタ、42…接触判定用電源、42a…電源本体、42b…電源リレー、43…コネクタ、46…チャック接続回路、48…操作部、50…第1リレー、52…抵抗、54…検出器、60…制御装置、62…除電制御部、64…接近制御部、66…接触判定部、68…停止制御部、70…高さ位置検出部、76…断線判定用電源、76a…電源本体、76b…電源リレー、77…追加ケーブル、78…第2リレー、80…断線検査制御部、82…断線判定部、84…電源検査制御部、86…電流供給判定部、W…ウェーハ
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