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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136746
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】磁歪式トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01L3/10 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047965
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤森 亮利
(72)【発明者】
【氏名】鬼本 隆
(57)【要約】
【課題】小型化が可能な磁歪式トルクセンサを提供する。
【解決手段】磁歪効果を有する回転軸8の周囲に取り付けられ、回転軸8によって伝達されるトルクを検出する磁歪式トルクセンサ1は、回転軸8が挿通される空洞20が中心部に形成された円筒部21を有する樹脂製のホルダ2と、所定の方向に並ぶ複数の検出コイル410~419,420~429,430~439,440~449を組み合わせてなるコイル群4A~4Dが配線パターンによって形成された検出部40、及びコイル群4A~4Dと外部装置6とを電気的に接続する複数の信号線491~494が配線パターンによって形成された信号線路部400を有するフレキシブル基板4と、を備える。フレキシブル基板4は、検出部40がホルダ2の円筒部21の外周に巻き付けられてホルダ2に保持され、信号線路部400の一部がホルダ2の外部に導出されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁歪効果を有する回転軸の周囲に取り付けられ、前記回転軸によって伝達されるトルクを検出する磁歪式トルクセンサであって、
前記回転軸が挿通される空洞が中心部に形成された円筒部を有する樹脂製のホルダと、
所定の方向に並ぶ複数の検出コイルを組み合わせてなるコイル群が配線パターンによって形成された検出部、及び前記コイル群と外部装置とを電気的に接続する複数の信号線が配線パターンによって形成された信号線路部を有するフレキシブル基板と、を備え、
前記フレキシブル基板は、前記検出部が前記ホルダの前記円筒部の外周に巻き付けられて前記ホルダに保持され、前記信号線路部の一部が前記ホルダの外部に導出されている、
磁歪式トルクセンサ。
【請求項2】
前記検出部は、前記複数の検出コイルの並び方向が長辺方向となる長方形状であり、
前記信号線路部は、前記検出部から前記長辺方向に対して垂直な方向に突出した突出部と、前記突出部から前記長辺方向に延びる線状部とを有し、
前記線状部の一部が前記ホルダの外部に導出されている、
請求項1に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項3】
前記ホルダは、前記線状部の一部を収容する凹部を有し、
前記線状部は、前記凹部の内部で屈曲され、前記円筒部の周方向に対して垂直な方向に延びるように前記ホルダの外部に導出されている、
請求項2に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項4】
前記ホルダの前記凹部に嵌合する凸部を有するカバー部材をさらに備え、
前記線状部が前記凹部の内面と前記凸部の外周面との間に挟持されている、
請求項3に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項5】
前記凹部及び前記凸部の一方に、前記線状部が前記ホルダの外部で引っ張られたときに前記線状部との接触面圧が高くなる凸角部が設けられ、
前記凹部及び前記凸部の他方に、前記凸角部に対応する凹角部が設けられており、
前記凸角部と前記凹角部との間に前記線状部が配置されている、
請求項4に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項6】
前記フレキシブル基板の前記検出部の外周を囲むように配置された軟磁性体からなる円筒状の磁性リングをさらに備え、
前記磁性リングによって前記ホルダの前記凹部から前記凸部が離脱する方向への前記カバー部材の移動が規制されている、
請求項4又は5に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項7】
前記フレキシブル基板の前記検出部が前記ホルダの前記円筒部に接着され、前記検出部と前記磁性リングとの間に空間が形成されている、
請求項6に記載の磁歪式トルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪効果を有する回転軸によって伝達されるトルクを検出する磁歪式トルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のエンジンの出力回転軸などのトルクを検出するために、磁歪式のトルクセンサが用いられている。磁歪式のトルクセンサは、応力によって回転軸の透磁率が変化する磁歪効果を利用し、回転軸の周囲に配置した検出コイルのインダクタンスの変化に基づいて回転軸に付与されたトルクを検出するように構成されている。本出願人は、複数の検出コイルが形成されたフレキシブル基板を回転軸の周囲に配置し、複数の検出コイルのインダクタンスの変化に基づいて回転軸に付与されたトルクを検出する磁歪式トルクセンサを提案している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された磁歪式トルクセンサは、樹脂ハウジング内に複数の検出コイルが形成されたフレキシブル基板が収容されている。フレキシブル基板の端部には複数の端子部が設けられており、樹脂ハウジング内においてこれらの端子部にケーブルの信号線が接続されている。ケーブルは、樹脂ハウジングから導出され、制御装置に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-74405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転軸の周囲には、トルクセンサを設置するスペースを確保することが難しい場合があり、トルクセンサの小型化が要請されている。本発明は、この要請に応えるべくなされたものであり、その目的は、小型化が可能な磁歪式トルクセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目標を達成するため、磁歪効果を有する回転軸の周囲に取り付けられ、前記回転軸によって伝達されるトルクを検出する磁歪式トルクセンサであって、前記回転軸が挿通される空洞が中心部に形成された円筒部を有する樹脂製のホルダと、所定の方向に並ぶ複数の検出コイルを組み合わせてなるコイル群が配線パターンによって形成された検出部、及び前記コイル群と外部装置とを電気的に接続する複数の信号線が配線パターンによって形成された信号線路部を有するフレキシブル基板と、を備え、前記フレキシブル基板は、前記検出部が前記ホルダの前記円筒部の外周に巻き付けられて前記ホルダに保持され、前記信号線路部の一部が前記ホルダの外部に導出されている、磁歪式トルクセンサを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁歪式トルクセンサを小型化することができ、設置スペースの省スペース化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る磁歪式トルクセンサを検出対象の回転軸と共に示す斜視図である。
図2】磁歪式トルクセンサの分解斜視図である。
図3図2とは異なる方向から見た磁歪式トルクセンサの分解斜視図である。
図4】磁歪式トルクセンサの断面図である。
図5】(a)は、一枚のフレキシブル基板を示す平面図である。(b)は、複数のフレキシブル基板を多面取りする母材を示す平面図である。
図6】フレキシブル基板の層構成を示す断面図である。
図7】(a)~(d)は、第1乃至第4の配線層を示す平面図である。
図8】フレキシブル基板、発振器、及び電圧計によって構成される電気回路の構成例を模式的に示す回路図である。
図9】(a)は、ホルダにカバー部材及びフレキシブル基板が取り付けられた状態を軸方向から見た構成図である。(b)は、(a)に示す状態からカバー部材の図示を省略した構成図である。
図10】(a)は、ホルダの凹部を軸方向から見た構成図である。(b)は、凹部の周辺部を示す斜視図である。
図11】(a)及び(b)は、カバー部材を示す斜視図である。
図12】第1の変形例に係るホルダの凹部及びカバー部材の凸部をフレキシブル基板の線状部の一部と共に示す構成図である。
図13】第2の変形例に係るホルダの凹部及びカバー部材の凸部をフレキシブル基板の線状部の一部と共に示す構成図である。
図14】第3の変形例に係るホルダの凹部及びカバー部材の凸部をフレキシブル基板の線状部の一部と共に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る磁歪式トルクセンサ1を検出対象の回転軸8と共に示す斜視図である。図2は、磁歪式トルクセンサ1の分解斜視図である。図3は、図2とは異なる方向から見た磁歪式トルクセンサ1の分解斜視図である。図4は、磁歪式トルクセンサ1の断面図である。
【0010】
磁歪式トルクセンサ1は、回転軸8の周囲に取り付けられ、回転軸8によって伝達されるトルクを検出する。回転軸8は、例えば自動車のエンジンあるいは電動モータ等の駆動源の駆動力を伝達するシャフトである。磁歪式トルクセンサ1によって得られたトルクの検出結果は、駆動源や自動変速機などの制御のために用いられる。
【0011】
回転軸8は、磁歪効果を有する強磁性体であり、回転軸線Oを中心として回転してトルクを伝達する。ここで、磁歪効果とは、強磁性体に磁場を印加して磁化させると形状に歪(ひずみ)が現れる現象である。そして、この現象を逆に利用し、形状の歪によって発生する磁気特性の変化を検出することで、回転軸8に付与されたトルクを検出することができる。回転軸8としては、例えばクロム鋼、クロムモリブデン鋼、又はニッケルクロムモリブデン鋼等のクロムを含有するクロム鋼からなる軸状体に浸炭焼入れ及び焼戻し処理を施し、さらにショットピーニングを施したものを好適に用いることができる。以下、回転軸8の回転軸線Oに平行な方向を軸方向という。
【0012】
磁歪式トルクセンサ1は、ホルダ2と、カバー部材3と、フレキシブル基板4と、軟磁性体からなる磁性リング5と、ホルダ2の外部に配置された外部装置6とを有して構成されている。外部装置6は、発振器61及び電圧計62を有し、フレキシブル基板4と電気的に接続される。外部装置6の動作については後述する。
【0013】
ホルダ2は、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂材料からなる樹脂製であり、射出成形されている。ホルダ2は、回転軸8が挿通される空洞20が中心部に形成された円筒部21と、フレキシブル基板4の一部を収容する凹部22と、磁性リング5の軸方向の一端部を収容する環状溝23とを有している。円筒部21の中心軸線Cは、回転軸8の回転軸線Oと一致する。凹部22は、円筒部21の外周に設けられている。環状溝23は、凹部22が形成された部分以外の円筒部21の外周に設けられている。凹部22及び環状溝23は、共に軸方向一方側に開口している。
【0014】
カバー部材3は、例えばホルダ2と同様の樹脂材料からなる樹脂製であり、凹部22の軸方向一方側を覆う板部31と、凹部22に嵌合する凸部32とを一体に有している。カバー部材3及び凹部22の形状の詳細については後述する。
【0015】
磁性リング5は、例えば鋼材や焼結磁性体からなり、軟磁性を有し、ホルダ2の円筒部21の外径よりも内径が大きい円筒状に形成されている。磁性リング5が鋼材からなる場合、電磁ステンレス等の磁性鉄鋼材を好適に用いることができ、その成形方法としては、例えば深絞りを用いることができる。また、長尺なパイプ状の鋼材を所定の長さに切り出して磁性リング5としてもよい。磁性リング5は、例えば接着によってホルダ2に固定されている。また、磁性リング5は、カバー部材3と軸方向に並び、ホルダ2の凹部22から凸部32が離脱する方向へのカバー部材3の移動を規制している。
【0016】
本実施の形態では、磁性リング5が外径の異なる大径部51と小径部52とを一体に有している。大径部51の内径と小径部52の内径とは同じである。大径部51は、磁性リング5の軸方向の端部に設けられ、ホルダ2の環状溝23に収容されている。磁性リング5は、大径部51が環状溝23にインロー嵌合されることにより、ホルダ2に対して位置決めされている。より具体的には、大径部51の外周面51aが環状溝23の外周を形成する環状壁231の内周面231aに接することより、軸方向に対して垂直な径方向におけるホルダ2との相対位置が決められている。
【0017】
図3に示すように、磁性リング5の大径部51における軸方向の端面51bには、カバー部材3の板部31と向かい合う部分に、端面51bから軸方向に窪む切り欠き510が形成されている。カバー部材3及び磁性リング5がホルダ2に組付けられたとき、カバー部材3の板部31の一部が切り欠き510に収容され、大径部51の端面51bが環状溝23の底面23aに当接する。
【0018】
図5(a)は、一枚のフレキシブル基板4を示す平面図である。図5(b)は、複数のフレキシブル基板4を多面取りする母材7を示す平面図である。フレキシブル基板4は、母材7から切り出して製造される。
【0019】
フレキシブル基板4は、回転軸8の磁界を検出するための複数の検出コイルを有する検出部40、及び外部装置6と検出部40とを電気的に接続する複数の信号線が配線パターンによって形成された信号線路部400を一体に有している。図5では、複数の検出コイル及び複数の信号線の図示を省略している。フレキシブル基板4は、検出部40がホルダ2の円筒部21の外周に巻き付けられてホルダ2に保持され、信号線路部400の一部がホルダ2の外部に導出される。検出部40には、所定の方向に並ぶ複数の検出コイルを組み合わせてなるコイル群が配線パターンによって形成されている。検出部40は、複数の検出コイルの並び方向が長辺方向となる長方形状である。
【0020】
信号線路部400は、検出部40から長辺方向に対して垂直な方向に突出した突出部401と、突出部401から長辺方向に延びる線状部402とを有している。このフレキシブル基板4の形状により、図5(b)に示すように母材7の不要な面積を小さくして複数のフレキシブル基板4を切り出すことができ、歩留まりを向上させることができる。線状部402の長さは、例えば50mm以上100mm以下である。
【0021】
線状部402は、突出部401の近傍にあたる基端部を除き、先端部を含む一部がホルダ2の外部に導出されている。線状部402の先端部には、図1に拡大して示すように、第1乃至第4の電極402a~402dが形成されている。フレキシブル基板4の線状部402は、外部装置6に直接接続されていてもよく、複数の電線を有するケーブルを介して外部装置6に接続されていてもよい。次に、図6乃至図8を参照し、検出部40の構成の一例について詳細に説明する。
【0022】
図6は、フレキシブル基板4の層構成を示す断面図である。フレキシブル基板4は、第1乃至第4の配線層41~44を有する多層構造であり、円筒部21の外周に巻き付けられた際の湾曲の外側にあたる一方面4aから湾曲の内側にあたる他方面4bに向かって順に、カバーレイフィルム451、接着層461、第1の配線層41、第1のベースフィルム471、第2の配線層42、接着層462、カバーレイフィルム452、両面テープ48,カバーレイフィルム453、接着層463、第3の配線層43、第2のベースフィルム472、第4の配線層44、接着層464、及びカバーレイフィルム454が積層されている。
【0023】
第1の配線層41及び第2の配線層42は、銅箔をエッチングして形成された配線パターンであり、第1のベースフィルム471の表(おもて)面471a及び裏面471bにそれぞれ形成されている。同様に、第3の配線層43及び第4の配線層44は、銅箔をエッチングして形成された配線パターンであり、第2のベースフィルム472の表面472a及び裏面472bにそれぞれ形成されている。カバーレイフィルム451,452,453,454は、接着層461,462,463,464によって第1乃至第4の配線層41~44に貼り付けられた保護フィルムである。第1及び第2のベースフィルム471,472、ならびにカバーレイフィルム451,452,453,454は、ポリイミド等の絶縁性樹脂からなる。
【0024】
図7(a)は、第1のベースフィルム471の表面471aに形成された第1の配線層41の配線パターンを示す平面図である。図7(b)は、第1のベースフィルム471の表面471a側から見た第2の配線層42の配線パターンを示す平面図である。図7(c)は、第2のベースフィルム472の表面472aに形成された第3の配線層43の配線パターンを示す平面図である。図7(d)は、第2のベースフィルム472の表面472a側から見た第4の配線層44の配線パターンを示す平面図である。
【0025】
第1の配線層41には、検出部40の長辺方向に並ぶ第1乃至第10の検出コイル410~419が配線パターンによって形成されている。第1及び第10の検出コイル410,419は三角形状であり、第2乃至第9の検出コイル411~418は平行四辺形状である。第2の配線層42にも同様に、検出部40の長辺方向に並ぶ第1乃至第10の検出コイル420~429が配線パターンによって形成されている。第1及び第10の検出コイル420,429は三角形状であり、第2乃至第8の検出コイル421~428は平行四辺形状である。
【0026】
第3の配線層43には、検出部40の長辺方向に並ぶ第1乃至第10の検出コイル430~439が配線パターンによって形成されている。第1及び第10の検出コイル430,439は三角形状であり、第2乃至第9の検出コイル431~438は平行四辺形状である。第4の配線層44にも同様に、検出部40の長辺方向に並ぶ第1乃至第10の検出コイル440~449が配線パターンによって形成されている。第1及び第10の検出コイル440,449は三角形状であり、第2乃至第9の検出コイル441~448は平行四辺形状である。
【0027】
第1の配線層41の第1乃至第10の検出コイル410~419、及び第4の配線層44の第1乃至第10の検出コイル440~449は、検出部40の短辺方向に対して一方側に所定角度(+45°)傾斜した直線部410a~419a,440a~449aをそれぞれ有している。第2の配線層42の第1乃至第10の検出コイル420~429、及び第3の配線層43の第1乃至第10の検出コイル430~439は、検出部40の短手方向に対して他方側に所定角度(-45°)傾斜した直線部420a~429a,430a~439aをそれぞれ有している。
【0028】
図8は、フレキシブル基板4、発振器61、及び電圧計62によって構成される電気回路の構成例を模式的に示す回路図である。第1の配線層41の第1乃至第10の検出コイル410~419は、直列に接続されて第1のコイル群4Aを形成し、第2の配線層42の第1乃至第10の検出コイル420~429は、直列に接続されて第2のコイル群4Bを形成している。また、第3の配線層43の第1乃至第10の検出コイル430~439は、直列に接続されて第3のコイル群4Cを形成し、第4の配線層44の第1乃至第10の検出コイル440~449は、直列に接続されて第4のコイル群4Dを形成している。
【0029】
第1のコイル群4A及び第3のコイル群4C、ならびに第2のコイル群4B及び第4のコイル群4Dは、第1の電極402aと第2の電極402bとの間にそれぞれ直列に接続されている。第1のコイル群4A及び第2のコイル群4Bのそれぞれの一端と第1の電極402aとは、第1の信号線491によって接続されている。第3のコイル群4C及び第4のコイル群4Dのそれぞれの一端と第2の電極402bとは、第2の信号線492によって接続されている。
【0030】
第1のコイル群4Aの他端と第3のコイル群4Cの他端とを直列に接続する第3の信号線493は、第3の電極402cに接続されている。第2のコイル群4Bの他端と第4のコイル群4Dの他端とを直列に接続する第4の信号線494は、第4の電極402dに接続されている。第1乃至第4の信号線491~494は、信号線路部400に配線パターンによって形成されている。発振器61は、第1の電極402aと第2の電極402bとの間に交流電圧を印加する。電圧計62は、第3の電極402cと第4の電極402dとの間の電圧を測定する。
【0031】
回転軸8にトルクが付与されると、軸方向に対して+45度の方向の透磁率が減少(又は増加)し、軸方向に対して-45度方向の透磁率が増加(又は減少)する。よって、発振器61から交流電圧を印加した状態で回転軸8にトルクが付与されると、第1のコイル群4A及び第4のコイル群4Dのインダクタンスが減少(又は増加)し、第2のコイル群4B及び第3のコイル群4Cではインダクタンスが増加(又は減少)する。その結果、電圧計62で測定される電圧が変化するので、この電圧の変化を基に回転軸8に付与されたトルクを検出することができる。
【0032】
なお、図7(a)~(d)では、第1乃至第4の配線層41~44の第1乃至第10の検出コイル410~419,420~429,430~439,440~449を直列に接続する部分の配線パターンや、第1乃至第4の信号線491~494の配線パターンの図示を省略している。
【0033】
検出部40は、他方面4bが接着剤によりホルダ2の円筒部21の外周面21aに接着される。磁性リング5は、検出部40の外周を囲むように配置されている。磁性リング5により、各検出コイル410~419,420~429,430~439,440~449に鎖交する磁束が増大し、磁歪式トルクセンサ1の感度が高められている。検出部40の一方面4aと磁性リング5の内周面5aとの間には空間が形成されており、フレキシブル基板4と磁性リング5とが接触しないようになっている。
【0034】
図9(a)は、ホルダ2にカバー部材3及びフレキシブル基板4が取り付けられた状態を軸方向から見た構成図である。図9(b)は、図9(a)に示す状態からカバー部材3の図示を省略した構成図である。図10(a)は、ホルダ2の凹部22を軸方向から見た構成図である。図10(b)は、凹部22の周辺部を示す斜視図である。図11(a)及び(b)は、異なる方向から見たカバー部材3を示す斜視図である。図10(b)では、凹部22の図示方向手前側にあたる環状壁231の一部を切除した状態を示している。
【0035】
凹部22は、突出部401の近傍における線状部402の一部を収容する。ホルダ2には、凹部22の軸方向一方側に、カバー部材3の板部31を収容する板部収容部24が形成されている。凹部22は、ホルダ2の第1壁部221と第2壁部222との間に形成されている。第1壁部221及び第2壁部222は、凹部22の底面22aから軸方向に突出して設けられている。第1壁部221の頂面221a及び第2壁部222の頂面222aには、カバー部材3の板部31が当接する。線状部402は、凹部22の内部で屈曲され、円筒部21の周方向に対して垂直な径方向に延びるようにホルダ2の外部に導出されている。
【0036】
第1壁部221と第2壁部222とは、凹部22を介して対向している。第1壁部221における第2壁部222との対向面221b、及び第2壁部222における第1壁部221との対向面222bは、凹部22の内面である。フレキシブル基板4の線状部402は、第1壁部221の対向面221bに沿って湾曲し、第1壁部221の対向面221bとカバー部材3の凸部32の外周面32aとの間に挟持されている。凹部22内における線状部402の表面(一方面4a及び他方面4b)は、円筒部21の中心軸線Cと平行であり、線状部402は、凹部22内において厚さ方向に湾曲している。
【0037】
このように線状部402が湾曲していることにより、湾曲した線状部402の復元力によって検出部40の一部が円筒部21から浮き上がってしまうことを防ぐことができる。つまり、仮に線状部402が検出部40の長辺方向に対して垂直な方向に延在している場合には、検出部40の近傍で線状部402を湾曲させると、線状部402の根本付近の検出部40が線状部402の復元力によって円筒部21から浮き上がってしまい、検出精度が低下するおそれがあるが、本実施の形態では、信号線路部400が突出部401から検出部40の長辺方向に沿って延在しているので、このような浮き上がりを抑制することができる。
【0038】
第1壁部221の対向面221bは、ホルダ2の外周端部側にあたる凹部22の出口付近で線状部402に接する出口側ガイド面221cと、円筒部21の近傍における凹部22の入口付近で線状部402に接する入口側ガイド面221dと、出口側ガイド面221cと入口側ガイド面221dとの間の傾斜ガイド面221eとを含んでいる。線状部402は、凹部22内において、入口側ガイド面221d、傾斜ガイド面221e、及び出口側ガイド面221cに沿うように延在している。
【0039】
出口側ガイド面221cは、円筒部21の中心軸線Cに対して垂直な方向に沿う平面である。入口側ガイド面221dは、出口側ガイド面221cと平行な平面であり、出口側ガイド面221cに対して第2壁部222から離間する方向にオフセットしている。傾斜ガイド面221eは、円筒部21の中心軸線Cに対して垂直な方向に対して傾斜した傾斜面であり、入口側ガイド面221d及び出口側ガイド面221cと鈍角をなしている。
【0040】
カバー部材3の凸部32には、図11(a)に示すように、第2壁部222の対向面222bに押し当てられる複数の突起321,322を有しており、複数の突起321,322が第2壁部222の対向面222bに押し当てられて凸部32が弾性変形することにより、その復元力によって凸部32が第1壁部221側に付勢される。
【0041】
線状部402が凹部22内で挟持されることにより、ホルダ2の外部における線状部402が引っ張られたとしても、その引っ張り力が突出部401を経て検出部40に及ぶことが抑えられ、磁歪式トルクセンサ1の検出精度の低下が抑制される。また、線状部402は、円筒部21の周方向に対して垂直な径方向に延びるようにホルダ2の外部に導出されているので、図9(b)に矢印Aで示す線状部402の延在方向に線状部402が引っ張られたとしても、その引っ張り力によってホルダ2に回転モーメントが発生してしまうことが抑制される。
【0042】
(実施の形態の効果)
以上説明した実施の形態によれば、ホルダ2の外部にフレキシブル基板4の線状部402が導出されているので、ホルダ2の内部でフレキシブル基板4をケーブルに接続する必要がなく、磁歪式トルクセンサ1を小型化することができる。このため、回転軸8の周囲の設置スペースが狭い場合でも、磁歪式トルクセンサ1を配置しやすくなる。
【0043】
(変形例)
次に、ホルダ2の凹部22及びカバー部材3の凸部32の形状の第1乃至第3の変形例について図12乃至14を参照して説明する。
【0044】
図12は、第1の変形例に係るホルダ2の凹部22及びカバー部材3の凸部32をフレキシブル基板4の線状部402の一部と共に示す構成図である。図12では、凹部22からの線状部402の導出方向を矢印Aで示している。本変形例では、凹部22に凹角部223が設けられると共に、凹角部223に対応する凸角部323が凸部32に設けられており、凹角部223と凸角部323との間に線状部402が配置されている。線状部402がホルダ2の外部で矢印A方向に引っ張られたときには、引っ張り力によって線状部402が凸角部323に押し付けられる。これにより、凸角部323と線状部402との接触面圧が高くなって引っ張り力が受け止められ、引っ張り力が突出部401側に伝わることが抑制される。凹角部223は、矢印A方向に対して垂直な方向に窪み、凸角部323は、凹角部223に向かって矢印A方向に対して垂直な方向に突出している。
【0045】
図13は、第2の変形例に係るホルダ2の凹部22及びカバー部材3の凸部32をフレキシブル基板4の線状部402の一部と共に示す構成図である。図13では、凹部22からの線状部402の導出方向を矢印Aで示している。本変形例では、凹部22に第1の凹角部224が設けられ、凸部32に第1の凹角部224に対応する第1の凸角部324が設けられると共に、凸部32に第2の凹角部325が設けられ、凹部22に第2の凹角部325に対応する第2の凸角部225が設けられている。線状部402がホルダ2の外部で矢印A方向に引っ張られると、引っ張り力によって線状部402が第1の凸角部324及び第2の凸角部225に押し付けられて接触面圧が高くなり、引っ張り力が突出部401側に伝わることが抑制される。第1の凸角部324及び第2の凸角部225は、矢印A方向と、矢印A方向に対して垂直な方向との交差により、略直角に形成されている。
【0046】
図14は、第3の変形例に係るホルダ2の凹部22及びカバー部材3の凸部32をフレキシブル基板4の線状部402の一部と共に示す構成図である。図14では、凹部22からの線状部402の導出方向を矢印Aで示している。本変形例では、第1の凹角部224及び第1の凸角部324、ならびに第2の凹角部325及び第2の凸角部225に加え、凹部22に第3の凸角部226が設けられ、凸部32に第3の凸角部226に対応する第3の凹角部326が設けられている。線状部402がホルダ2の外部で矢印A方向に引っ張られると、引っ張り力によって線状部402が第1の凸角部324、第2の凸角部225、及び第3の凸角部226に押し付けられて接触面圧が高くなり、引っ張り力が突出部401側に伝わることが抑制される。
【0047】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0048】
[1]磁歪効果を有する回転軸(8)の周囲に取り付けられ、前記回転軸(8)によって伝達されるトルクを検出する磁歪式トルクセンサ(1)であって、前記回転軸(8)が挿通される空洞(20)が中心部に形成された円筒部(21)を有する樹脂製のホルダ(2)と、所定の方向に並ぶ複数の検出コイル(410~419,420~429,430~439,440~449)を組み合わせてなるコイル群(4A~4D)が配線パターンによって形成された検出部(40)、及び前記コイル群(4A~4D)と外部装置(6)とを電気的に接続する複数の信号線(491~494)が配線パターンによって形成された信号線路部(400)を有するフレキシブル基板(4)と、を備え、前記フレキシブル基板(4)は、前記検出部(40)が前記ホルダ(2)の前記円筒部(21)の外周に巻き付けられて前記ホルダ(2)に保持され、前記信号線路部(400)の一部が前記ホルダ(2)の外部に導出されている、磁歪式トルクセンサ(1)。
【0049】
[2]前記検出部(40)は、前記複数の検出コイル(410~419,420~429,430~439,440~449)の並び方向が長辺方向となる長方形状であり、前記信号線路部(400)は、前記検出部(40)から前記長辺方向に対して垂直な方向に突出した突出部(401)と、前記突出部(401)から前記長辺方向に延びる線状部(402)とを有し、前記線状部(402)の一部が前記ホルダ(2)の外部に導出されている、上記[1]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
【0050】
[3]前記ホルダ(2)は、前記線状部(402)の一部を収容する凹部(22)を有し、前記線状部(402)は、前記凹部(22)の内部で屈曲され、前記円筒部(21)の周方向に対して垂直な方向に延びるように前記ホルダ(2)の外部に導出されている、上記[2]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
【0051】
[4]前記ホルダ(2)の前記凹部(22)に嵌合する凸部(32)を有するカバー部材(3)をさらに備え、前記線状部(402)が前記凹部(22)の内面(対向面221b)と前記凸部(32)の外周面(32a)との間に挟持されている、上記[3]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
【0052】
[5]前記凹部(22)及び前記凸部(32)の一方に、前記線状部(402)が前記ホルダ(2)の外部で引っ張られたときに前記線状部(402)との接触面圧が高くなる凸角部(225,323,324,326)が設けられ、前記凹部(22)及び前記凸部(32)の他方に、前記凸角部(225,323,324,326)に対応する凹角部(223,224,226,325)が設けられており、前記凸角部(225,323,324,326)と前記凹角部(223,224,226,325)との間に前記線状部(402)が配置されている、上記[4]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
【0053】
[6]前記フレキシブル基板(4)の前記検出部(40)の外周を囲むように配置された軟磁性体からなる円筒状の磁性リング(5)をさらに備え、前記磁性リング(5)によって前記ホルダの前記凹部(22)から前記凸部(32)が離脱する方向への前記カバー部材(3)の移動が規制されている、上記[4]又は[5]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
【0054】
[7]前記フレキシブル基板(4)の前記検出部(40)が前記ホルダ(2)の前記円筒部(21)に接着され、前記検出部(40)と前記磁性リング(5)との間に空間が形成されている、上記[6]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
【0055】
以上、本発明の実施の形態及び変形例を説明したが、上記の実施の形態及び変形例は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0056】
1…磁歪式トルクセンサ
2…ホルダ
20…空洞
21…円筒部
22…凹部
223,224,325,326…凹角部
225,226,323,324…凸角部
3…カバー部材
32…凸部
4…フレキシブル基板
40…検出部
400…信号線路部
401…突出部
402…線状部
491~494…第1乃至第4の信号線
410~419,420~429,430~439,440~449…検出コイル
4A~4D…第1乃至第4のコイル群
5…磁性リング
6…外部装置
8…回転軸
図1
図2
図3
図4
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