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特開2024-136796光成形用樹脂組成物、成形品、及び成形品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136796
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】光成形用樹脂組成物、成形品、及び成形品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240927BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240927BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20240927BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240927BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/314
B29C64/124
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048045
(22)【出願日】2023-03-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 悠
(72)【発明者】
【氏名】牧口 孝祐
(72)【発明者】
【氏名】岡田 能宜
(72)【発明者】
【氏名】大場 矢登
【テーマコード(参考)】
4F213
4J127
【Fターム(参考)】
4F213AA21
4F213AR06
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL96
4J127BA081
4J127BB031
4J127BB221
4J127BC151
4J127BD411
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CA02
4J127CA051
4J127CA052
4J127CB141
4J127CB151
4J127CB152
4J127CB162
4J127CC022
4J127CC121
4J127CC182
4J127CC292
4J127FA06
(57)【要約】
【課題】本開示は、適度に低い硬度を有するとともに、高い強度及び高い破断伸度を示す成形品を光成形によって形成することのできる樹脂組成物に関する。
【解決手段】重合性不飽和基を有する重合性成分を含む光成形用樹脂組成物。重合性成分が、1000以上の分子量を有する高分子量多官能(メタ)アクリレートと、-10℃以上のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成する単官能モノマーである反応性希釈剤とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和基を有する重合性成分を含み、
前記重合性成分が、
1000以上の分子量を有する高分子量多官能(メタ)アクリレートと、
-10℃以上のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成する単官能モノマーである反応性希釈剤と、
を含む、光成形用樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合性成分が、-10℃未満のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートを更に含む、又は、該単官能(メタ)アクリレートを含まず、
前記高分子量多官能(メタ)アクリレート、前記反応性希釈剤、及び前記単官能(メタ)アクリレートの合計の含有量が、前記重合性成分の量を基準として80質量%以上であり、
前記高分子量多官能(メタ)アクリレートの含有量が、前記高分子量多官能(メタ)アクリレート、前記反応性希釈剤、及び前記単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として5質量%以上90質量%以下であり、
前記反応性希釈剤の含有量が、前記高分子量多官能(メタ)アクリレート、前記反応性希釈剤、及び前記単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として10質量%以上95質量%以下である、
請求項1に記載の光成形用樹脂組成物。
【請求項3】
光重合開始剤を更に含む、請求項1又は2に記載の光成形用樹脂組成物。
【請求項4】
三次元光造形用組成物である、請求項1又は2に記載の光成形用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の光成形用樹脂組成物を含む成形材料の光硬化物を含む、成形品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の光成形用樹脂組成物を含む成形材料を光硬化させることを含む、成形品を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光成形用樹脂組成物、成形品、及び成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンタを用いた三次元光造形等の光成形の分野において、高い破断伸度を有する成形品、又は臓器に近い触感の成形品を形成するための組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-99750号公報
【特許文献2】特開2021-146657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂成形品が適用される部材に関して、適度に低い硬度(例えば、タイプAのデュロメータによる硬度が10~80程度)を有することが求められることがある。そのような適度に低い硬度を有する成形品を光成形で形成すると、部材の用途によっては、強度又は破断伸度が不足することがあった。
【0005】
本開示は、適度に低い硬度を有するとともに、高い強度及び高い破断伸びを示す成形品を光成形によって形成することのできる樹脂組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、少なくとも以下の事項を含む。
[1]
重合性不飽和基を有する重合性成分を含み、
前記重合性成分が、
1000以上の分子量を有する高分子量多官能(メタ)アクリレートと、
-10℃以上のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成する単官能モノマーである反応性希釈剤と、
を含む、光成形用樹脂組成物。
[2]
前記重合性成分が、-10℃未満のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートを更に含む、又は、該単官能(メタ)アクリレートを含まず、
前記高分子量多官能(メタ)アクリレート、前記反応性希釈剤、及び前記単官能(メタ)アクリレートの合計の含有量が、前記重合性成分の量を基準として80質量%以上であり、
前記高分子量多官能(メタ)アクリレートの含有量が、前記高分子量多官能(メタ)アクリレート、前記反応性希釈剤、及び前記単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として5質量%以上90質量%以下であり、
前記反応性希釈剤の含有量が、前記高分子量多官能(メタ)アクリレート、前記反応性希釈剤、及び前記単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として10質量%以上95質量%以下である、
[1]に記載の光成形用樹脂組成物。
[3]
光重合開始剤を更に含む、[1]又は[2]に記載の光成形用樹脂組成物。
[4]
三次元光造形用組成物である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の光成形用樹脂組成物。
[5]
[1]~[4]のいずれか一項に記載の光成形用樹脂組成物を含む成形材料の光硬化物を含む、成形品。
[6]
[1]~[4]のいずれか一項に記載の光成形用樹脂組成物を含む成形材料を光硬化させることを含む、成形品を製造する方法。
【発明の効果】
【0007】
適度に低い硬度を有するとともに、高い強度及び高い破断伸びを示す柔軟な成形品を光成形によって形成することのできる樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は以下の例に限定されない。
【0009】
樹脂組成物の一例は、重合性不飽和基を有する重合性成分を含む。重合性成分は、高分子量多官能(メタ)アクリレートと、反応性希釈剤とを含む。樹脂組成物は、光成形のための成形材料として用いることができる。
【0010】
高分子量多官能(メタ)アクリレートは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基のうち少なくとも一方の重合性不飽和基を複数有する化合物である。高分子量多官能(メタ)アクリレートが有する重合性不飽和基の数は、2以上であり、30以下、20以下、10以下又は5以下であってもよい。
【0011】
高分子量多官能(メタ)アクリレートが、低いガラス転移温度を有するホモポリマーを形成する化合物であると、適度に低い硬度を有する成形品がより形成され易い。高分子量多官能(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度が-100℃以上40℃以下であってもよい。高分子量多官能(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度は、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下、0℃以下、-10℃以下、-20℃以下、-25℃以下、-30℃以下、又は-35℃以下であってもよい。
【0012】
本明細書において、ホモポリマーのガラス転移温度は、重合性成分であるモノマーが単独重合によってホモポリマーを形成したときに、そのホモポリマーのガラス転移温度を意味する。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定により測定される融解曲線を、JIS K7121-1987に準拠した方法により解析して得られる中間点ガラス転移温度であることができる。各種のモノマーのホモポリマーの文献値(例えば「POLYMER HANDBOOK」(Wiley-Interscience)を参照することもできる。
【0013】
高分子量多官能(メタ)アクリレートは、例えばウレタン(メタ)アクリレートであってもよく、特に2官能のウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレートは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基のうち少なくとも一方と、ウレタン基とを有するオリゴマー又はポリマーである。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエステルポリオールに由来するソフトセグメントを有するポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリオールに由来するソフトセグメントを有するポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0015】
高分子量多官能(メタ)アクリレートは、1000以上の分子量を有する。高分子量多官能(メタ)アクリレートの分子量が、1000以上100000以下であってもよい。高分子量多官能(メタ)アクリレートの分子量が、2000以上、3000以上、4000以上、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上、9000以上、又は10000以上であってもよく、90000以下、80000以下、70000以下、60000以下、又は50000以下であってもよい。
【0016】
高分子量多官能(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)が、5000以上100000以下であってもよい。高分子量多官能(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)が、6000以上、7000以上、8000以上、9000以上、又は10000以上であってもよく、100000以下、90000以下、80000以下、70000以下、60000以下、又は50000以下であってもよい。ここでのMnは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される、標準ポリスチレン換算値であることができる。通常、5000以上のMnを有する分子量分布の高分子量多官能(メタ)アクリレートのうち大部分は、1000以上の分子量を有する成分で占められると考えられる。
【0017】
反応性希釈剤は、比較的高いガラス転移温度を有するホモポリマーを形成する1種又は2種以上の単官能モノマーである。高分子量多官能(メタ)アクリレートと、低いガラス転移温度を有するホモポリマーを形成する単官能モノマーとの組み合わせが、適度に低い硬度を有するとともに、高い強度及び高い破断伸びを示す柔軟な成形品の形成に寄与することができる。反応性希釈剤として用いられる単官能モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、-10℃以上であってもよく、-10℃以上200℃以下であってもよい。反応性希釈剤として用いられる単官能モノマーのホモポリマーのガラス転移温度が、-5℃以上、0℃以上、5℃以上、10℃以上、15℃以上又は20℃以上であってもよく、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下又は150℃以下であってもよい。
【0018】
反応性希釈剤として用いられる単官能モノマーは、アクリロイル基又はメタクリロイル基と、環状基とを有する化合物であってもよい。環状基を構成する炭素原子及びヘテロ原子の合計数が、例えば4~8であってもよい。環状基は、脂環基、環状エーテル基又は芳香族基であってもよく、脂環基又は環状エーテル基であってもよい。環状基がアルキル基等の置換基を有していてもよい。例えば、単官能モノマーが、下記式(1)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体、又は下記式(2)で表される環状(メタ)アクリレート化合物のうち少なくとも一方であってもよい。
【化1】
【0019】
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは(メタ)アクリロイル基に結合した窒素原子を含む環状基を示す。式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは置換基を有していてもよいメチレン基、又は直接結合を示し、Xは置換基(例えばアルキル基)を有していてもよい環状基を示す。反応性希釈剤が、式(1)又は(2)で表される1種以上の単官能モノマーを含んでいてもよい。
【0020】
式(1)で表されるアクリルアミド誘導体の例としては、下記式で表されるアクリロイルモルフォリン(ホモポリマーのTg:145℃)が挙げられる。
【化2】
【0021】
式(2)で表される環状(メタ)アクリレート化合物の例としては、下記式で表されるイソボルニルアクリレート(ホモポリマーのTg:97℃)、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(ホモポリマーのTg:10℃)、及び2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート(ホモポリマーのTg:-7℃)が挙げられる。
【0022】
【化3】
【0023】
重合性成分は、必要により他の化合物を更に含むことができる。例えば、重合性成分が、反応性希釈剤とは異なる1種以上の単官能(メタ)アクリレートを含んでもよい。この単官能(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度が、-10℃未満であってもよく、-100℃以上-10℃未満であってもよい。単官能(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度が、-15℃以下、-20℃以下、-25℃以下、-30℃以下、-35℃以下、又は-40℃以下であってもよい。
【0024】
-10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートは、例えば、式(A)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、又は式(B)で表されるアルコキシ(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方であってもよい。
【化4】

【化5】
【0025】
式(A)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはアルキル基を示す。Rは直鎖又は分岐状のアルキル基であってもよい。式(B)中、Rが水素原子若しくはメチル基を示し、Rがアルカンジイル基を示し、Rがアルキル基を示し、nは1以上の整数を示す。同一分子中の複数のRは同一でも異なってもよい。Rはエチレン基又はプロピレン基であってもよい。Rはメチル基又はエチル基であってもよい。nはオキシアルキレン基の繰り返し数であり、1以上20以下の整数であってもよい。
【0026】
式(A)で表されるアルキル(メタ)アクリレートの例としては、エチルアクリレート(ホモポリマーのTg:-20℃)、n-ブチルアクリレート(ホモポリマーのTg:-55℃)、イソブチルアクリレート(ホモポリマーのTg:-26℃)、n-ヘキシルアクリレート(ホモポリマーのTg:-65℃)、n-オクチルアクリレート(ホモポリマーのTg:-70℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(ホモポリマーのTg:-85℃)、n-ノニルアクリレート(ホモポリマーのTg:-37℃)、イソノニルアクリレート(ホモポリマーのTg:-58℃)、n-ドデシルアクリレート(ホモポリマーのTg:-23℃)、及びイソステアリルアクリレート(ホモポリマーのTg:-18℃)が挙げられる。
【0027】
式(B)で表されるアルコキシ(メタ)アクリレートの例としては、メトキシエチルアクリレート(ホモポリマーのTg:-50℃)、及びメトキシポリエチレングリコールアクリレートが挙げられる。メトキシポリエチレングリコールアクリレートのホモポリマーのTgは、オキシエチレン基の繰り返し数nが2であるとき、-67℃であり、3であるとき、-60℃であり、9であるとき、-50℃であり、13であるとき、-40℃である。
【0028】
樹脂組成物は、光重合開始剤を更に含んでもよい。光重合開始剤は、必要な反応性等に基づいて、樹脂組成物の光硬化(UV硬化)のために通常用いられているものから選択することができる。光重合開始剤の含有量は、例えば、重合性成分の量を基準として0.1質量%以上5質量%以下であってもよい。
【0029】
樹脂組成物は、他の成分を更に含んでもよい。例えば、樹脂組成物が充填材を含んでもよい。充填材は、樹脂組成物中に分散する微粒子であり、無機フィラー、有機フィラー、又はこれらの組み合わせであることができる。充填材は、例えばシリカ粒子、又は顔料を含んでもよく、シリカ粒子、ハイドロタルサイト粒子、ケイ酸アルミニウム粒子、酸化カルシウム粒子、及び炭酸カルシウム粒子から選ばれる1種以上の無機フィラーを含んでもよい。
【0030】
樹脂組成物における重合性成分の合計の含有量は、樹脂組成物の全体量を基準として、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。高分子量多官能(メタ)アクリレート、反応性希釈剤、及び-10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートの合計の含有量が、重合性成分の量を基準として80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってもよく、実質的に100質量%であってもよい。
【0031】
高分子量多官能(メタ)アクリレートの含有量は、高分子量多官能(メタ)アクリレート、反応性希釈剤、及び-10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として、5質量%以上90質量%以下であってもよい。高分子量多官能(メタ)アクリレートの含有量は、高分子量多官能(メタ)アクリレート、反応性希釈剤、及び-10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上又は30質量%以上であってもよく、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下又は70質量%以下であってもよい。
【0032】
反応性希釈剤の含有量が大きいと、成形品の強度及び破断伸度がより向上する傾向がある。反応性希釈剤の含有量が、高分子量多官能(メタ)アクリレート、反応性希釈剤、及び-10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として、10質量%以上95質量%以下であってもよい。応性希釈剤の含有量が、高分子量多官能(メタ)アクリレート、反応性希釈剤、及び-10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上、19質量%以上、20質量%以上、21質量%以上、22質量%以上、23質量%以上、24質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってもよく、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、45質量%以下、40質量%以下又は30質量%以下であってもよい。
【0033】
-10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートの含有量は、高分子量多官能(メタ)アクリレート、反応性希釈剤、及び-10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として、0質量%以上85質量%以下であってもよい。10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートの含有量は、高分子量多官能(メタ)アクリレート、反応性希釈剤、及び-10℃未満のホモポリマーを形成する単官能(メタ)アクリレートの合計量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上であってもよく、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下又は50質量%以下であってもよい。
【0034】
樹脂組成物又は成形材料の25℃における粘度が、10mPa・s以上9000mPa・s以下であってもよい。樹脂組成物の粘度がこの範囲内にあると、三次元光造形によって、窪み及び反りのような変形の少ない成形品が形成され易い。同様の観点から、樹脂組成物又は成形材料の25℃における粘度が、50mPa・s以上、又は100mPa・s以上であってもよく、8000mPa・s以下、7000mPa・s以下、6000mPa・s以下、5000mPa・s以下、4000mPa・s以下、3000mPa・s以下、又は2000mPa・s以下であってもよい。25℃における粘度は、Brookfield型粘度計(B型粘度計)を用いて25℃にて4~200rpmの回転速度で測定される値であることができる。
【0035】
以上のように例示された樹脂組成物を、光成形によって各種の成形品を製造するために用いることができる。光成形のために、樹脂組成物をそのまま成形材料として用いてもよい。あるいは、必要により樹脂組成物にその他の成分(例えば、光重合開始剤)を混合して調製された成形材料を用いてもよい。
【0036】
光成形は、光硬化の工程を含む成形方法である。例えば、光成形が、成形型内の成形材料を光硬化することを含む成形方法であってもよく、成形材料の膜を光硬化させることを繰り返すことを含む、三次元光造形であってもよい。三次元光造形の方法は特に限定されず、例えば引き上げ方式、又は引き下げ方式による三次元光造形のために成形材料を適用することができる。光成形により、成形材料の光硬化物である成形品を得ることができる。形成される成形品の形態は、所望の用途等に基づいて適宜選択でき、特に限定されない。
【0037】
本開示に係る樹脂組成物の光成形によって形成される成形品は、適度に低い硬度とともに、高い強度及び高い破断伸度が求められる部材として用いることができる。樹脂組成物の光硬化物(成形品)のタイプAのデュロメータによる硬度が、10以上又は20以上であってもよく、80以下であってもよい。樹脂組成物の光硬化物(成形品)の引張強度が、1.0MPa以上又は1.3MPa以上であってもよく、15.0MPa以下であってもよい。樹脂組成物の光硬化物(成形品)の破断伸度が、100%以上又は150%以上であってもよく、1500%以下又は500%以下であってもよい。
【0038】
成形品が適用される部材の例としては、アンドロイドなどのロボット用スキン、手術トレーニング用の臓器模型、パッド、グリッパ、グロメット、ベローズ、パッキン、及びガスケットが挙げられる。
【0039】
[実施例]
本発明は以下の実施例に限定されない。
1.材料
以下の材料を準備した。
(A)単官能(メタ)アクリレート
・A1:2-エチルヘキシルアクリレート(分子量:184、ホモポリマーのTg:-85℃)
・A2:メトキシエチレングリコールアクリレート(分子量:130、ホモポリマーのTg:-50℃、エチレングリコールの繰り返し数:1)
・A3:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(分子量:483、ホモポリマーのTg:-50℃、エチレングリコールの繰り返し数:9)
(B)高分子量多官能(メタ)アクリレート
・B1:ウレタンアクリレート(Mn:約15000、ホモポリマーのTg:43℃、2官能)
・B2:ウレタンアクリレート(Mn:約35000、ホモポリマーのTg:-43℃、2官能)
・B3:ポリブタジエンジアクリレート(Mn:約10000、2官能)
・B4:メタクリロイルオキシ基を有する変性ポリイソプレン(Mn:約35000、3官能以上)
・B5:ウレタンアクリレート(Mn:5000、ホモポリマーのTg:35℃、2官能)
(C)反応性希釈剤
・C1:アクリロイルモルフォリン(分子量:145、ホモポリマーのTg:145℃)
・C2:イソボルニルアクリレート(分子量:208、ホモポリマーのTg:97℃)
・C3:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(分子量:200、ホモポリマーのTg:10℃)
(D)光重合開始剤
・D1:Omnirad1173(商品名):2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(IGM Resins B.V.)
【0040】
2.樹脂組成物(成形材料)
各材料を、表1に示される質量比で混合し、混合物を自転・公転ミキサーを用いて攪拌した。攪拌後の混合物を脱泡して、均一な液状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を光成形のための成形材料として用いた。
【0041】
3.光成形
成形材料をテフロンシャーレ上にキャストし、厚み2mmの樹脂膜を形成した。樹脂膜に対して、コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製、アイグランデージECS-4011GX)で紫外線を照射して、成形材料(樹脂組成物)の光硬化物であるシート状の成形品を形成した。紫外線照射の条件は以下のとおりであった。比較のため、市販の光造形用組成物(Elastic 50A resin、商品名、Formlabs社)を用いて同様の方法でシート状の成形品を作製した。
・ランプ:高圧水銀ランプ
・ランプ出力:4kW
・ランプ高さ:130mm
・コンベアスピード:84m/min
・積算光量:5J/cm(紫外線積算光量計UVICURE PLUS II、UV-A測定値、FusionUV Systems Japan K.K.社))
シート状の成形品から、物性評価用のダンベル状3号形試験片を切り出した。
【0042】
4.成形品の評価
JIS-A硬度
デュロメーター タイプAを備える自動硬度計(エクセル社製、RH-105A)により、温度23℃の雰囲気下で、試験片(成形品)の硬度(Duro-A)を測定した。
【0043】
引張試験
引張試験機(上島製作所社製、QUICK READER P-57)により、温度23℃の雰囲気下、引張速度500mm/minの試験条件で、試験片の引張試験を行った。測定結果から、成形品の破断強度(TB)、及び破断伸び(EB)を求めた。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1及び表2に示される評価結果から、実施例の光成形用組成物は、適度に低い硬度、高い強度及び高い破断伸度を示すことが確認された。