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特開2024-136822左官材の製造方法、左官材、及び、左官工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136822
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】左官材の製造方法、左官材、及び、左官工法
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20240927BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B28C7/04
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048088
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 重裕
(72)【発明者】
【氏名】安久 憲一
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB31
4G112PA02
4G112PB03
4G112PB08
4G112PC03
(57)【要約】
【課題】グラウト組成物が用いられつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間が改善された左官材を製造することができる左官材の製造方法を提供することを課題とする。また、グラウト組成物が用いられつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間が改善された左官材、及び、左官材を用いた左官工法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る左官材の製造方法は、左官材を製造する方法であって、ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を混練して混練物を得る混練工程と、前記混練物に、前記ポルトランドセメントの添加量に対して2.5質量%以上30.0質量%以下のドライアイスを添加する添加工程と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左官材を製造する方法であって、
ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物に、前記ポルトランドセメントの添加量に対して2.5質量%以上30.0質量%以下のドライアイスを添加する添加工程と、を含む、左官材の製造方法。
【請求項2】
ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を含み、
左官材における二酸化炭素の固定率が、4.1%以上5.5%以下である、左官材。
【請求項3】
請求項2に記載の左官材を、コンクリート構造物の補修箇所又は補強箇所に塗布する、左官工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左官材の製造方法、左官材、及び、左官工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤、構造物等の補修、補強等を行うために、セメント系材料であるグラウト材が用いられることがある。グラウト材は、一般的に流動性が高いことから、部材間の隙間、狭い空洞等に充填される充填材料として好適に用いられる。
【0003】
グラウト材は、施工場所及び施工条件によって、流動性以外に種々の性能が求められる。そのため、グラウト材に要求性能を付与する目的で、該要求性能に応じた添加剤がグラウト材に添加されることがある。例えば、特許文献1~3には、増粘剤が添加されたグラウト材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-111343号公報
【特許文献2】特開2019-006665号公報
【特許文献3】特開2022-186934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、セメント系材料の作業性を現場等で調整して、用途展開することが検討されている。例えば、グラウト材を左官材として用いる場合には、左官材における作業性の要求性能である、(i)垂直面に材料を付けた際にダレないこと(ダレ性),(ii)コテで塗り広げた時に伸びが良いこと(左官性),(iii)作業に必要な時間が確保できること(可使時間)という全ての性能をグラウト材に付与する必要がある。
【0006】
上記の性能を付与する方法として、例えば、グラウト材(又は、グラウト組成物)に増粘剤を添加することが考えられる。しかし、建設現場でグラウト組成物に増粘剤を添加しようとすると、粉体の増粘剤を用いる場合には、増粘剤が十分に分散しない虞があり、また、増粘剤の最適量が非常に少ないことから、現場での計量精度の確保が困難となる虞もある。液体の増粘剤を用いる場合には、粉体よりも添加量を増やすことが可能になるが、左官材の水セメント比が上がってしまうため、強度及びひび割れ抵抗性が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、グラウト組成物が用いられつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間が改善された左官材を製造することができる左官材の製造方法を提供することを課題とする。また、グラウト組成物が用いられつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間が改善された左官材、及び、左官材を用いた左官工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る左官材の製造方法は、左官材を製造する方法であって、ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を混練して混練物を得る混練工程と、前記混練物に、前記ポルトランドセメントの添加量に対して2.5質量%以上30.0質量%以下のドライアイスを添加する添加工程と、を含む。
【0009】
前記左官材の製造方法は、グラウト組成物と水を混練して形成される前記混練物に、前記ポルトランドセメントの添加量に対して2.5質量%以上30.0質量%以下のドライアイスを添加する添加工程を含むことにより、グラウト組成物が用いられつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間が改善された左官材を製造することができる。
【0010】
また、前記左官材の製造方法は、前記添加工程を含むことにより、特殊な装置を用いることなく、建設現場で容易に左官材を製造することができる。
【0011】
本発明に係る左官材は、ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を含み、左官材における二酸化炭素の固定率が、4.1%以上5.5%以下である。
【0012】
前記左官材は、ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を含み、左官材における二酸化炭素の固定率が、4.1%以上5.5%以下であることにより、グラウト組成物を用いつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間を改善することができる。
【0013】
本発明に係る左官工法は、前記左官材を、コンクリート構造物の補修箇所又は補強箇所に塗布する。
【0014】
前記左官工法において、前記左官材は、グラウト組成物を用いつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間を改善することができる。そのため、前記左官材をコンクリート構造物の補修箇所又は補強箇所に塗布することにより、良好な仕上がり面を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、グラウト組成物が用いられつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間が改善された左官材を製造することができる左官材の製造方法を提供することができる。また、グラウト組成物が用いられつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間が改善された左官材、及び、左官材を用いた左官工法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る左官材の製造方法、左官材、及び、左官工法について説明する。
【0017】
<左官材の製造方法>
本実施形態に係る左官材の製造方法は、ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を混練して混練物を得る混練工程と、前記混練物に、前記ポルトランドセメントの添加量に対して2.5質量%以上30.0質量%以下のドライアイスを添加する添加工程と、を含む。以下、本実施形態に係る左官材の製造方法に用いられる各材料について説明した後、左官材の製造方法について説明する。
【0018】
グラウト組成物は、ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含む。本明細書において、グラウト組成物とは、水と混練し、部材間の隙間、狭い空洞等に充填される流動性の高い充填用の材料として好適に用いられるものであって、混練する水との混練直後に、JIS R 5201:2015に基づいて測定した、無打撃時のフロー値が300mm以上の高い流動性をもつものをいう。なお、グラウト組成物は、グラウト組成物を構成する各材料を予め混合しているものであってもよいし、グラウト組成物を構成する各材料を現場で混合して得られたものであってもよい。
【0019】
ポルトランドセメントとしては、例えば、JIS R 5210で規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等が挙げられる。なお、ポルトランドセメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記ポルトランドセメントの含有量は、グラウト組成物に対して、20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることが好ましい。なお、ポルトランドセメントが2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。また、前記ポルトランドセメントの含有量は、例えば、単位量(kg/m:グラウト組成物と水をあわせたもの1m当たりの質量)で、300kg/m以上1000kg/m以下とすることができ、400kg/m以上900kg/m以下とすることができる。なお、ポルトランドセメントが2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0021】
流動化剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩系、ナフタレンスルホン酸塩系、リグニンスルホン酸塩系、メラミンスルホン酸塩系等の流動化剤が挙げられる。なお、流動化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記流動化剤の含有量は、グラウト組成物に対して、0.01質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。なお、流動化剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0023】
細骨材とは、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85%以上通過する骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。細骨材としては、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される山砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然由来の砂、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、フェロニッケルスラグ等のスラグ由来の砂、再生骨材、人工軽量骨材、回収骨材等が挙げられる。なお、これらの細骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記細骨材の含有量は、グラウト組成物に対して、30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下であることが好ましい。なお、細骨材が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0025】
グラウト組成物は、混和材をさらに含んでいてもよい。混和材としては、例えば、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、セメントキルンダスト、高炉フューム、転炉スラグ微粉末、無水石膏、半水石膏、二水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末等の無機質微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等の無機物系フィラーが挙げられる。なお、混和材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記混和材の含有量は、グラウト組成物に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下とすることができ、5.0質量%以上15.0質量%以下とすることができる。なお、混和材が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0027】
グラウト組成物は、流動化剤以外のその他の混和剤をさらに含んでいてもよい。その他の混和剤としては、例えば、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、分離低減剤、凝結遅延剤(例えば、酒石酸等)、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤、消泡剤等が挙げられる。なお、その他の混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記その他の混和剤の含有量は、グラウト組成物に対して、0.01質量%以上5.0質量%以下とすることができ、0.05質量%以上3.0質量%以下とすることができる。なお、その他の混和剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0029】
水は、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。
【0030】
ドライアイスとしては、例えば、ペレット状のドライアイス、粉末状のドライアイス等が挙げられる。なお、ドライアイスは、1種を単独で用いてもよいし、異なる形態のものを併用してもよい。
【0031】
混練工程は、ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を混練して混練物を得る。各材料を混練する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ハンドミキサ、二軸強制練りミキサ等のミキサを用いて、従来公知の方法により混練することができる。混練時間は、例えば、目視にて均一と確認される60~180秒とすることができる。
【0032】
前記水(W)と前記ポルトランドセメント(C)との比(W/C)は、強度及び作業性を向上させる観点から、30%以上80%以下であることが好ましく、35%以上70%以下であることがより好ましい。また、前記水とグラウト組成物(B)との比(W/B)は、強度及び作業性を向上させる観点から、10%以上30%以下であることが好ましく、15%以上25%以下であることがより好ましい。
【0033】
添加工程は、混練工程で得た混練物にドライアイスを添加する。前記ドライアイスの添加量は、ポルトランドセメントの添加量に対して、2.5質量%以上30.0質量%以下であり、左官材としての作業性を確保する観点から、ポルトランドセメントの添加量に対して、2.8質量%以上28.0質量%以下であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る左官材の製造方法は、さらにドライアイスと前記混練物を混練するドライアイス混練工程を含んでいてもよい。ドライアイス混練工程では、気化した二酸化炭素が逃げないように混練することが好ましい。例えば、前記混練物とドライアイスを蓋つきの容器に入れて混練することが好ましい。混練時間は、例えば、目視にて均一(ドライアイスの白い粒が残っていない状態)と確認される60~300秒とすることができる。なお、混練時間は、ドライアイスの添加量、及び、環境温度に応じて適宜変更することができる。
【0035】
本実施形態に係る左官材の製造方法は、上述した混練工程及び添加工程を含むことにより、グラウト組成物が用いられつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間が改善された左官材を製造することができる。また、前記左官材の製造方法は、前記添加工程を含むことにより、特殊な装置を用いることなく、建設現場で容易に左官材を製造することができる。
【0036】
<左官材>
以下、本実施形態に係る左官材について説明する。
【0037】
本実施形態に係る左官材は、上述した、ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を含み、左官材における二酸化炭素の固定率が、4.1%以上5.5%以下である。
【0038】
二酸化炭素の固定率は、左官材としての作業性を確保する観点から、4.1%以上5.5%以下であり、4.3%以上5.1%以下であることが好ましい。なお、二酸化炭素固定率は、左官材及びグラウト組成物について、熱重量示差熱分析(TG-DTA)を行うことにより求められる。より詳細には、左官材の練り上がり直後にチャック袋に30gを分取し、空気に触れないよう密閉する。室温20℃湿度60%の環境で材齢7日まで養生し、材齢7日目にめのう乳鉢等で細かく粉砕し、熱重量示差熱分析(TG-DTA)の試料とする。熱重量示差熱分析装置(雰囲気ガス:空気)を用いて試料を10℃/分の昇温速度で1000℃まで加熱して減量曲線を得る。この減量曲線における550~800℃の吸熱ピーク範囲における質量の減少を、左官材に含まれている炭酸カルシウムの脱炭酸によるものと判断し、前記減少量から左官材に含まれる二酸化炭素の固定率(質量%)を算出する。別途、グラウト組成物を試料とし、同様の方法で熱重量示差熱分析を行うことで、グラウト組成物にもともと含まれている二酸化炭素(すなわち、グラウト組成物に含まれる二酸化炭素の固定率)を同様の測定で求めておく。左官材に含まれる二酸化炭素の固定率から,グラウト組成物に含まれる二酸化炭素の固定率を差し引くことにより、左官材の二酸化炭素の固定率を求める。
【0039】
本実施形態に係る左官材は、上述のグラウト組成物、ドライアイス、及び水を混練する混練することにより、製造することができる。混練方法は、特に限定されるものではなく、例えば、従来公知のミキサ等を用いて、従来公知の方法により混練することができる。
【0040】
本実施形態に係る左官材は、後述する左官工法、吹付け工法等で好適に用いることができる。吹付け工法では、モルタルポンプ等の装置を用いてコンクリート構造物の補修箇所又は補強箇所に左官材を吹き付ける。
【0041】
本実施形態に係る左官材は、ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を含み、左官材における二酸化炭素の固定率が、4.1%以上5.5%以下であることにより、グラウト組成物を用いつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間を改善することができる。
【0042】
<左官工法>
以下、本実施形態に係る左官工法について説明する。
【0043】
本実施形態に係る左官工法は、上述した左官材を、コンクリート構造物の補修箇所又は補強箇所に塗布する。より詳細には、職人が鏝板に適量のモルタルを載せ、金鏝等を用いてコンクリート構造物の補修箇所又は補強箇所に左官材を塗り付ける。
【0044】
本実施形態に係る左官工法において、前記左官材は、グラウト組成物を用いつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間を改善することができる。そのため、前記左官材をコンクリート構造物の補修箇所又は補強箇所に塗布することにより、良好な仕上がり面を得ることができる。
【0045】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]左官材を製造する方法であって、
ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物に、前記ポルトランドセメントの添加量に対して2.5質量%以上30.0質量%以下のドライアイスを添加する添加工程と、を含む、左官材の製造方法。
[2]ポルトランドセメント、流動化剤、及び、細骨材を含むグラウト組成物と、水と、を含み、
左官材における二酸化炭素の固定率が、4.1%以上5.5%以下である、左官材。
[3][2]に記載の左官材を、コンクリート構造物の補修箇所又は補強箇所に塗布する、左官工法。
【実施例0046】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
表1に示す配合となるようにグラウト組成物と水を蓋部分にハンドミキサの軸を通す穴が形成された蓋つきの容器に投入して、回転数1300rpmの王冠形羽根使用のハンドミキサ(マキタ社製攪拌機UT1305)で2分間混練して混練物を得た(混練工程)。より詳細に、前記混練は、グラウト組成物を水に投入しながら30秒間、その後60秒間行った後、ハンドミキサを停止して30秒間掻き落としを行った。続いて、表1に示すドライアイスを表1に示す添加率で混練物に投入し(添加工程)、直ちに容器の蓋を閉めて、前記ハンドミキサで120秒間混練して各実施例及び各比較例の左官材を得た。なお、左官材を作製した時の室温は20℃であり、湿度は60%RHであった。
【0048】
表1に示す各材料の詳細を以下に示す。
グラウト組成物(1)~(3):市販のグラウト組成物(ポルトランドセメント以外に、細骨材、流動化剤、フライアッシュを含む)
ドライアイス:ドライアイスペレット(φ3m×1cm)
ドライアイススノー(炭酸ガスを粉末状にしたもの)
水:上水道水
【0049】
【表1】
【0050】
[フロー試験]
各実施例及び各比較例の左官材について、練上り直後、及び、練上りから15分後に、JIS R 5201:2015に基づいて、無打撃及び15打撃時のフロー値を測定した。測定値を表2に示す。
【0051】
[二酸化炭素の固定率]
各実施例及び各比較例の左官材について、熱重量示差熱分析(TG-DTA)を行い、二酸化炭素の固定率を求めた。より詳細には、左官材の練り上がり直後にチャック袋に30gを分取し、空気に触れないよう密閉した。室温20℃湿度60%の環境で材齢7日まで養生し、材齢7日目にめのう乳鉢等で細かく粉砕し、熱重量示差熱分析(TG-DTA)の試料とした。熱重量示差熱分析装置(雰囲気ガス:空気)を用いて試料を10℃/分の昇温速度で1000℃まで加熱して減量曲線を得た。この減量曲線における550~800℃の吸熱ピーク範囲における質量の減少を、左官材に含まれている炭酸カルシウムの脱炭酸によるものと判断し、前記減少量から左官材に含まれる二酸化炭素の固定率(質量%)を算出した。別途、グラウト組成物を試料とし、同様の方法で熱重量示差熱分析を行うことで、グラウト組成物にもともと含まれている二酸化炭素(すなわち、グラウト組成物に含まれる二酸化炭素の固定率)を同様の測定で求めておいた。左官材に含まれる二酸化炭素の固定率から、グラウト組成物に含まれる二酸化炭素の固定率を差し引いた値を、左官材の二酸化炭素の固定率とした。
【0052】
[ダレ性]
ダレ性は、練上り直後に測定した無打撃時のフロー値が、150mm以下であったものを「〇」、150mmを超えたものを「×」と評価した。評価結果を表2に示す。
【0053】
[左官性]
左官性は、練上りから15分後に測定した15打撃時と無打撃時のフロー値の差が、30mm以上であったものを「〇」、30mm未満であったものを「×」と評価した。評価結果を表2に示す。
【0054】
[可使時間]
可使時間は、練上りから15分後に測定した無打撃時のフロー値と練り上がり直後に測定した無打撃時のフロー値の差が、40mm未満であったものを「〇」、40mm以上であったものを「×」と評価した。評価結果を表2に示す。評価結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす各実施例の左官材は、グラウト組成物を用いつつ、ダレ性、左官性、及び、可使時間を改善することができる。