(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136914
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】レーダ装置、プログラム及び追い越し車両判定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/931 20200101AFI20240927BHJP
【FI】
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048225
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】寺山 透星
(72)【発明者】
【氏名】居村 祐介
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC13
5J070AD02
5J070AE01
5J070AF03
5J070AK14
(57)【要約】
【課題】処理負荷を抑えつつ、自車両によって追い越される追い越し車両を確実に特定できるレーダ装置、プログラム及び追い越し車両判定方法を提供すること。
【解決手段】レーダ装置1は、自車両100に搭載されるレーダ装置1であって、送信波及び反射波から特定される他車両200の挙動に基づいて、他車両200が自車両100によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定部35と、第1判定部35によって他車両200が候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、候補車両が他車両200の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定部36と、第2判定部36によって肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、候補車両が追い越し車両であるか否かを判定する第3判定部37と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載され、前記自車両の周囲に存在する移動体に対して送信波を送信し、該送信波が前記移動体により反射されて形成された反射波を受信するレーダ装置であって、
前記送信波及び前記反射波から特定される前記移動体の挙動に基づいて、前記移動体が前記自車両によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部によって前記移動体が前記候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、前記候補車両が前記移動体の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部によって前記肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、前記候補車両が前記追い越し車両であるか否かを判定する第3判定部と、を備えるレーダ装置。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記自車両が所定の速度以上で移動しており、かつ前記移動体が少なくとも前記自車両の車両中心よりも後方に設定された判定エリア内に存在している状況で、前記移動体の挙動が前記自車両から離れる挙動を示す場合に、前記移動体が前記候補車両であると判定する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記第2判定部は、前記移動体が前記判定エリア内に存在している状況で、前記移動体の挙動が前記自車両から離れる挙動を示す場合に、前記肯定条件を満たしていると判定する請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記第3判定部は、前記第2判定部によって前記肯定条件を満たしていると判定されるとインクリメントされるカウンタを備え、
前記カウンタの値が所定の閾値を超えた場合に、前記追い越し車両であると判定する請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記第2判定部は、前記肯定条件を満たさないと判定した場合に、前記移動体が前記判定エリア内に存在している状況で、前記移動体の挙動が前記自車両に近づく挙動を示す条件である否定条件を満たしているか否かを判定し、
前記カウンタは、前記第2判定部によって前記否定条件を満たしていると判定されるとデクリメントされる請求項4に記載のレーダ装置。
【請求項6】
自車両に搭載され、前記自車両の周囲に存在する移動体に対して送信波を送信し、該送信波が前記移動体により反射されて形成された反射波を受信するレーダ装置に含まれるコンピュータに、
前記送信波及び前記反射波から特定される前記移動体の挙動に基づいて、前記移動体が前記自車両によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定機能と、
前記第1判定機能によって前記移動体が前記候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、前記候補車両が前記移動体の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定機能と、
前記第2判定機能によって前記肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、前記候補車両が前記追い越し車両であるか否かを判定する第3判定機能と、を実行させるプログラム。
【請求項7】
自車両に搭載され、前記自車両の周囲に存在する移動体に対して送信波を送信し、該送信波が前記移動体により反射されて形成された反射波を受信するレーダ装置が実行する追い越し車両判定方法であって、
前記送信波及び前記反射波から特定される前記移動体の挙動に基づいて、前記移動体が前記自車両によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記第1判定ステップで前記移動体が前記候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、前記候補車両が前記移動体の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定ステップと、
前記第2判定ステップで前記肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、前記候補車両が前記追い越し車両であるか否かを判定する第3判定ステップと、を含む追い越し車両判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置、プログラム及び追い越し車両判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の周りを移動する他車両等の移動体を検出し、検出された移動体が自車両によって追い越される追い越し車両であるかを判定する装置が知られている。例えば特許文献1では、得られたビート信号に周波数解析を行うことで、距離方向及び相対速度方向に対する2次元周波数スペクトルを生成し、生成された2次元周波数スペクトルのピーク分布と、物標の種別ごとに予め生成されたモデル分布とを比較することで、物標が自車両に対して追い越し前か追い越し後かを判定するレーダ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、電波の反射の仕方によっては記憶されたモデル分布とマッチするものがなく、正しい判定が行われないおそれがある。また仮に全てのピーク分布のモデル分布を網羅しようとすれば、モデル分布のデータ量が膨大となることが予想され、大きな記憶容量が必要となる。さらに全モデル分布に対してパターンマッチを行うことから、処理時間も膨大となることが考えられる。
【0005】
本発明は、処理負荷を抑えつつ、自車両によって追い越される追い越し車両を確実に特定できるレーダ装置、プログラム及び追い越し車両判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)レーダ装置は、自車両に搭載され、前記自車両の周囲に存在する移動体に対して送信波を送信し、該送信波が前記移動体により反射されて形成された反射波を受信するレーダ装置であって、前記送信波及び前記反射波から特定される前記移動体の挙動に基づいて、前記移動体が前記自車両によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部によって前記移動体が前記候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、前記候補車両が前記移動体の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定部と、前記第2判定部によって前記肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、前記候補車両が前記追い越し車両であるか否かを判定する第3判定部と、を備える。
【0007】
(2)(1)に記載のレーダ装置において、前記第1判定部は、前記自車両が所定の速度以上で移動しており、かつ前記移動体が少なくとも前記自車両の車両中心よりも後方に設定された判定エリア内に存在している状況で、前記移動体の挙動が前記自車両から離れる挙動を示す場合に、前記移動体が前記候補車両であると判定する請求項1に記載のレーダ装置。
【0008】
(3)(1)又は(2)に記載のレーダ装置において、前記第2判定部は、前記移動体が前記判定エリア内に存在している状況で、前記移動体の挙動が前記自車両から離れる挙動を示す場合に、前記肯定条件を満たしていると判定する。
【0009】
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載のレーダ装置において、前記第3判定部は、前記第2判定部によって前記肯定条件を満たしていると判定されるとインクリメントされるカウンタを備え、前記カウンタの値が所定の閾値を超えた場合に、前記追い越し車両であると判定する。
【0010】
(5)(4)に記載のレーダ装置において、前記第2判定部は、前記肯定条件を満たさないと判定した場合に、前記移動体が前記判定エリア内に存在している状況で、前記移動体の挙動が前記自車両に近づく挙動を示す条件である否定条件を満たしているか否かを判定し、前記カウンタは、前記第2判定部によって前記否定条件を満たしていると判定されるとデクリメントされる。
【0011】
(6)プログラムは、自車両に搭載され、前記自車両の周囲に存在する移動体に対して送信波を送信し、該送信波が前記移動体により反射されて形成された反射波を受信するレーダ装置に含まれるコンピュータに、前記送信波及び前記反射波から特定される前記移動体の挙動に基づいて、前記移動体が前記自車両によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定機能と、前記第1判定機能によって前記移動体が前記候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、前記候補車両が前記移動体の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定機能と、前記第2判定機能によって前記肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、前記候補車両が前記追い越し車両であるか否かを判定する第3判定機能と、を実行させる。
【0012】
(7)追い越し車両判定方法は、自車両に搭載され、前記自車両の周囲に存在する移動体に対して送信波を送信し、該送信波が前記移動体により反射されて形成された反射波を受信するレーダ装置が実行する追い越し車両判定方法であって、前記送信波及び前記反射波から特定される前記移動体の挙動に基づいて、前記移動体が前記自車両によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定ステップと、前記第1判定ステップで前記移動体が前記候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、前記候補車両が前記移動体の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定ステップと、前記第2判定ステップで前記肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、前記候補車両が前記追い越し車両であるか否かを判定する第3判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処理負荷を抑えつつ、自車両によって追い越される追い越し車両を確実に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置を搭載した自車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るレーダ装置を搭載した自車両が他車両を追い越す様子を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るレーダ装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るレーダ装置のレーダ制御部の追い越し車両判定処理に関する機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るレーダ装置が候補車両を追い越し車両であると判定するまでの様子を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るレーダ装置が候補車両を追い越し車両ではないと判定するまでの様子を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るレーダ装置が備えるカウンタの値の推移の一例を示すグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態に係るレーダ装置による追い越し車両判定処理の流れのうち候補車両判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係るレーダ装置による追い越し車両判定処理のうち追い越し車両確定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係るレーダ装置による追い越し車両判定処理のうち肯定条件判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態に係るレーダ装置による追い越し車両判定処理のうち否定条件判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態に係るレーダ装置1について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーダ装置1を搭載した自車両100の構成を示すブロック図である。
図2は、レーダ装置1を搭載した車両(以下、自車両という)100が移動体としての他車両200を追い越す様子を示す平面図である。なお、
図2において、自車両100と他車両200とは、同じ方向に走行している。また
図2において、一点鎖線は一つのレーダ装置1の検出可能範囲Dを示し、破線は一つのレーダ装置1の判定エリアAを示している。判定エリアAは検出可能範囲Dの内側に設定される。白抜き矢印Vは自車両100に対する他車両200の相対速度を示している。また自車両100の進行する方向を進行方向Yとする。
【0017】
レーダ装置1は、自車両100に搭載され、自車両100の周囲に存在する他車両200を検出し、検出した他車両200の挙動を特定可能な装置である。レーダ装置1は、例えば自車両100の後部左側のバンパ内と後部右側のバンパ内に配置される。本明細書では、後部左側に配置されるレーダ装置1をレーダ装置1-1といい、後部右側に配置されるレーダ装置1をレーダ装置1-2といい、レーダ装置1-1、1-2を区別なく呼ぶ場合にはレーダ装置1という。
【0018】
レーダ装置1は、自車両100の周囲に存在する他車両200に対して電磁波である送信波を送信し、該送信波が他車両200により反射されて形成された反射波を受信する。この送信波及び反射波に基づいて他車両200に関する距離、相対速度、及び、方位角等の情報である物標が検出される。
【0019】
レーダ装置1は、検出した他車両200が追い越し車両であるか否かを判定する追い越し車両判定処理を実行する。追い越し車両とは、自車両100と同じ方向に走行し、自車両100によって追い越される移動体である。レーダ装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2に接続され、ECU2と情報を送受信する。
【0020】
ECU2は、自車両100の電子部品の各種の制御を行うコンピュータである。ECU2は、例えばレーダ装置1に自車両100の移動速度に関する移動速度情報を送信し、レーダ装置1から追い越し車両判定処理の結果(以下、追い越し車両判定結果という)を受信する。ECU2には、ユーザに報知の対象の存在を報知するための報知装置3が接続されていてもよい。
【0021】
報知装置3は、自車両100に乗車しているユーザに対して他車両200等の報知対象が存在していることを光、音、映像又はこれらの組み合わせによって、そのユーザに注意を促すための報知を行う機器である。報知装置3は、例えば、光を点灯する表示灯、音を発生させるスピーカ、映像を表示するディスプレイ等によって構成される。なお、ECU2は、ECU2が受信した追い越し車両判定結果を利用して報知装置3を制御して報知を発生させるか否かを判定してもよい。
【0022】
次に、レーダ装置1のハードウェア構成について
図3を参照しながら説明する。レーダ装置1のハードウェア構成はあくまで一例であり、この構成に限定されるわけではない。
【0023】
図3は、本実施形態のレーダ装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3の例では、レーダ装置1は、電磁波を送受信するアンテナ部20と、アンテナ部20の検出信号の処理等、レーダ装置1の各種の制御を行うレーダ制御部10と、を備える。
【0024】
アンテナ部20は、送信波を送信する送信アンテナ21と、他車両200等の物体によって反射された反射波を受信する受信アンテナ22と、を備える。送信アンテナ21及び受信アンテナ22は、それぞれ、複数のアンテナ素子によって構成される。アンテナ部20は、受信アンテナ22の受信信号を処理し、レーダ制御部10に送信する。
【0025】
レーダ制御部10は、プロセッサ11、ROM(read-only memory)12、RAM(random-access memory)13、補助記憶装置14、通信I/F(interface)15を備え、各部がバス16等によって接続されるコンピュータである。
【0026】
プロセッサ11は、レーダ装置1の動作に必要な演算及び制御等の処理を行うコンピュータの中枢部分であり、各種演算及び処理等を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)等である。あるいは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであっても良い。
【0027】
プロセッサ11は、ROM12又は補助記憶装置14等に記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア等のプログラムに基づいて、レーダ装置1の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、プロセッサ11は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていても良い。
【0028】
ROM12及びRAM13は、プロセッサ11を中枢としたコンピュータの主記憶装置である。ROM12は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM12は、上記のプログラムのうち、例えばファームウェア等を記憶する。また、ROM12は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ等も記憶する。RAM13は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM13は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶するワークエリア等として利用される。RAM13は、典型的には揮発性メモリである。
【0029】
補助記憶装置14は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はフラッシュメモリ等である。補助記憶装置14は、上記のプログラムのうち、例えば、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア等を記憶する。また、補助記憶装置14は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサ11での処理によって生成されたデータ及び各種の設定値、後述する判定エリアAの位置に関する判定エリア位置情報、レーダ装置1の取付位置及び取付角度等に関する取付情報、自車両100の長さや幅等の車両情報等を記憶する。判定エリア位置情報とは、例えば自車両100を基準とした相対位置の情報であってもよい。
【0030】
通信I/F15は、ECU2と通信するためのインターフェースである。レーダ制御部10の検出結果は、通信I/F15からECU2に送信される。
【0031】
次に、プロセッサ11によって実現されるレーダ装置1の機能について
図2、
図4を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態のレーダ装置1の追い越し車両判定処理に関する機能的構成の一例を示すブロック図である。本実施形態におけるレーダ装置1による追い越し車両判定処理については、
図2に示すように3車線の道路Rを走行する自車両100が、自車両100の走行車線に隣接する車線を走行する他車両200を追い抜く場合を例に説明する。
【0032】
図4に示すように、レーダ装置1のレーダ制御部10は、プロセッサ11によって実行される機能部として、検出処理部31と、車両速度取得部32と、周波数取得部33と、相対速度取得部34と、第1判定部35と、第2判定部36と、第3判定部37と、出力処理部38と、を備える。
【0033】
検出処理部31は、送信アンテナ21から送信された送信波と、受信アンテナ22が受信した反射波に基づいて、他車両200を検出する処理を実行する。具体的には、検出処理部31は、受信した反射波を分析し、視野角θの検出可能範囲D内に存在する複数の点群を検出し、これらの点群に対してクラスタリング等の処理を行うことによって他車両200に対応する物標を検出する。また検出処理部31は、送信波の送信から反射波の受信までの経過時間から算出した物標までの距離や反射波を受信した方位角等に関する情報を検出する。そして検出処理部31は、検出した距離及び方位角と、自車両100の長さや幅等の車両情報と、自車両100におけるレーダ装置1の取付位置や角度に関する情報に基づいて、自車両100の車体中心Cを中心とした他車両200の位置を特定する。
【0034】
車両速度取得部32は、ECU2から自車両100の移動速度情報を取得する処理を実行する。
【0035】
周波数取得部33は、送信アンテナ21から送信された送信波の周波数と、該送信波が他車両200によって反射され、受信アンテナ22が受信した反射波の周波数との差(以下、周波数成分という)を取得する処理を実行する。周波数成分は、他車両200が自車両100に近づく場合に正、遠ざかる場合に負となり、その絶対値は他車両200と自車両100の相対速度差が大となるにつれて大となる。
【0036】
相対速度取得部34は、検出処理部31によって取得された他車両200の位置の時間変化に基づいて他車両200の相対速度を特定する。例えば相対速度取得部34は、ある時点での他車両200の位置と所定時間経過後の他車両200の位置との差と、経過時間から自車両100に対する他車両200の相対速度を算出する。
【0037】
第1判定部35は、送信波及び反射波から特定される他車両200の挙動に基づいて、他車両200が追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する処理(以下、候補車両判定という)を実行する。
【0038】
第1判定部35は、例えば次の(a)~(d)の条件を全て満たした場合に、他車両200を候補車両であると判定する。
(a)自車両100が所定の速度以上で移動している
(b)他車両200が判定エリアAに存在する
(c)他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動を示す
(d)他車両200は初めて候補車両判定がされる移動体である
【0039】
(a)の条件について、第1判定部35は、例えば車両速度取得部32によって取得された移動速度情報が所定の速度以上である場合に(a)の条件を満たすと判定する。所定の速度とは、例えば20km/h等であってもよい。
【0040】
(b)の条件について、第1判定部35は、例えば補助記憶装置14に記憶された判定エリア位置情報と検出処理部31によって特定された他車両200の位置情報に基づいて、他車両200の少なくとも一部が判定エリアA内に存在するか否かを判定する。判定エリアAは、自車両100との相対的な位置情報の領域として設定される。判定エリアAは、例えば自車両100の車両中心Cよりも後方に設定される。本実施形態では、判定エリアAは、自車両100のユーザの死角に存在する移動体の挙動を判定できるように、自車両100から斜め後方に設定される。例えば
図1に示すように、判定エリアAは、自車両100が
図1において左側の車線を走行する場合に、衝突の危険のある真ん中の車線のみに設定され、衝突の危険の少ない右側の車線を走行する移動体を判定の対象から除外するように設定されてもよい。
【0041】
(c)の条件について、第1判定部35は、周波数取得部33によって取得された周波数成分に基づいて他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動か近づく挙動かを判定してもよい。例えば第1判定部35は、周波数取得部33によって取得された周波数成分から自車両100に対する他車両200の相対速度(以下、変換前相対速度という)を特定する。そして第1判定部35は、変換前相対速度を自車両100の車両中心Cを基準に自車両100の進行方向Yを正として変換し、変換後の相対速度(以下、変換後相対速度という)に基づいて他車両200が自車両100に対して離れる挙動を示すか近づく挙動を示すかを特定してもよい。第1判定部35は、この条件と(b)の条件により、ドップラ効果による周波数の特性と他車両200の自車両100に対する相対位置に基づいて、他車両200の挙動を特定している。
【0042】
また(c)の条件について、第1判定部35は、相対速度取得部34によって取得された他車両200の相対速度に基づいて他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動か近づく挙動かを判定してもよい。例えば第1判定部35は、他車両200の相対速度を自車両100の車両中心Cを基準に進行方向Yを正として変換し、変換後の相対速度が自車両100から離れる値か近づく値かを判定する。そして第1判定部35は、変換後の相対速度が自車両100から離れる値であると判定した場合に、他車両200が自車両100に対して離れる挙動を示すと判定する。この条件と(b)の条件を満たす場合、即ち他車両200が自車両100の後方の判定エリアAに存在し、かつ他車両200の相対速度が自車両100から離れる値になる場合、他車両200が自車両100によって追い抜かれることになる。なお、候補車両判定における(c)の条件の判定は、他車両200の検出初期におけるデータの信頼性の観点から、相対速度よりも周波数成分に基づいて行うことが好ましい。
【0043】
(d)の条件により、第1判定部35は、判定エリアAに進入して直ぐの移動体に対して候補車両判定がされることになる。
【0044】
第2判定部36は、第1判定部35によって他車両200が候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する処理(以下、肯定条件判定という)を実行する。肯定条件判定を行う所定の時間間隔とは、例えば0.05秒おきであってもよい。
【0045】
肯定条件は、例えば次の(e)(f)(g)の全てを満たす条件である。
(e)他車両200は候補車両である
(f)他車両200が判定エリアAに存在する
(g)他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動を示す
【0046】
(f)について、本実施形態では、判定エリアAは上記(b)の判定エリアAと同じ位置に設定されるが、(b)と(f)の判定エリアAが異なる位置に設定されてもよい。
【0047】
(g)について、第2判定部36は、第1判定部35による上記(c)と同様に、例えば周波数成分に基づいて他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動かを判定してもよく、他車両200の相対速度に基づいて他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動かを判定してもよい。
【0048】
また第2判定部36は、肯定条件判定で肯定条件を満たしていないと判定した場合に、所定の否定条件を満たしているか否かを判定する処理(以下、否定条件判定という)を実行する。
【0049】
否定条件は、例えば次の(h)(i)の全てを満たす条件である。
(h)他車両200が判定エリアAに存在する
(i)他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動を示す
【0050】
(h)について、本実施形態では、判定エリアAは上記(b)(f)の判定エリアAと同じ位置に設定されるが、(b)、(f)、(h)の判定エリアAが異なる位置に設定されてもよい。
【0051】
(i)について、第2判定部36は、例えば周波数成分に基づいて他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動かを判定してもよく、他車両200の相対速度に基づいて他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動かを判定してもよい。
【0052】
例えば(h)(i)の条件により、他車両200が自車両100の後方の判定エリアAに存在し、かつ他車両200の相対速度が自車両100に近づく値になる場合、他車両200が自車両100を追い越すことになる。
【0053】
第3判定部37は、第2判定部36によって肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、候補車両が追い越し車両であるか否かを判定する処理(以下、追い越し車両確定処理という)を実行する。本実施形態の第3判定部37は、第2判定部36によって肯定条件を満たしていると判定されるとインクリメントされ、否定条件を満たしているとデクリメントされるカウンタを備える。第3判定部37は、例えばカウンタの値が所定の閾値(以下、判定用閾値)を超えた場合に、候補車両である他車両200が追い越し車両であると判定する。反対に第3判定部37は、例えばカウンタの値が判定用閾値を超え、追い越し車両と判定した後に、デクリメントによりカウンタの値が再び判定用閾値以下となった場合に、他車両200が追い越し車両ではないと判定してもよい。判定用閾値は、例えば10であってもよい。
【0054】
出力処理部38は、第3判定部37によって判定された追い越し車両判定結果をECU2等に出力する処理を実行する。出力処理部38によって出力された他車両200に対する追い越し車両判定結果は、例えば報知装置3による警報の発生の要否を判定するための情報として利用される。なお、本実施形態では、レーダ制御部10は、他車両200が候補車両であると判定されてから所定の期間経過するまで追い越し車両確定処理を所定の時間間隔で繰り返す。
【0055】
ここで、他車両200が候補車両であると判定された後の追い越し車両判定処理の例について
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5は、レーダ装置1が候補車両を追い越し車両であると判定するまでの様子を示す平面図である。
図6は、レーダ装置1が一度追い越し車両と判定された他車両200が追い越し車両ではないと判定されるまでの様子を示す平面図である。
図5及び
図6において、破線は判定エリアAの位置を示し、白抜き矢印Vは自車両100に対する他車両200の相対速度を示している。
【0056】
図5では、紙面左側の自車両100と他車両200の位置関係は他車両200が候補車両と判定された後所定の時間経過後のものを示しており、紙面右側に向かうにつれて時間が進んだ場合の自車両100と他車両200の位置関係を示している。
図5に示すように、自車両100から見て他車両200が判定エリアA内で自車両100から離れる挙動を続けると、所定の時間間隔でカウンタがインクリメントされる。そして、カウンタの値が積算され、候補車両である他車両200は、最も紙面右側の位置で追い越し車両であると判定される。
【0057】
図6では、紙面左側の他車両200は追い越し車両と判定された他車両200を示しており、紙面右側に向かうにつれて時間が進んだ場合の自車両100と他車両200の位置関係を示している。
図6に示す例では、追い越し車両であると判定された他車両200は、
図6の紙面左側の状態で自車両100から離れる挙動を示しているものの、途中から自車両100に近づく挙動に変わっている。これに応じてカウンタがデクリメントされ、一度追い越し車両と判定された他車両200は、最も紙面右側の位置で追い越し車両ではないと判定される。
【0058】
図7は、追い越し車両判定において他車両200が候補車両と判定された直後からの時間の経過と第3判定部37のカウンタの増減の一例を示す図である。
図7の縦軸はカウンタの値を示し、横軸は時間を示している。
図7に示すFalseとTrueは、追い越し車両であることを示すフラグの状態を示している。
【0059】
図7に示すように、他車両200が肯定条件を満たし続けると、カウンタの値が蓄積され、判定用閾値を超え、候補車両が追い越し車両と判定される。その後、他車両200の挙動が肯定条件を満たさずに否定条件を満たすような挙動に変化すると、カウンタがデクリメントされ、判定用閾値を下回ると、追い越し車両フラグがFalseになる。その後、再び他車両200の挙動が肯定条件を満たし続けると、カウンタの値が蓄積され、追い越し車両フラグがTrueとなる。
図7に示す例のように、本実施形態では、他車両200が候補車両から追い越し車両に認定された場合であっても、他車両200の挙動が自車両100を追い越すような挙動に変化した場合に再び追い越し車両ではないと判定できる。
【0060】
次に、本実施形態に係るレーダ装置1が実行する追い越し車両判定処理の流れの一例について
図8~
図11を参照しながら説明する。
図8は、レーダ装置1による追い越し車両判定処理のうち候補車両判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0061】
追い越し車両判定処理では、まず
図8に示すような候補車両判定処理を実行する。本実施形態では、候補車両判定処理は、レーダ装置1によって初めて検出された移動体に対して行われる。「レーダ装置1によって初めて検出された移動体」とは、自車両100の進行方向前方側からレーダ装置1において設定されている判定エリアA内に入った他車両200等の移動体を意味している。
【0062】
図8に示すように、ステップS11において、検出処理部31は、アンテナ部20から送信波及び反射波に関する情報を取得し、分析することで検出可能範囲D内の他車両200を検出する。
【0063】
ステップS12において、検出処理部31は、ステップS11で取得した送信波及び反射波に基づいて他車両200の位置を特定する。このとき、車両速度取得部32は、ECU2から自車両100の移動速度情報を取得する。
【0064】
ステップS13において、第1判定部35は、ステップS12で取得した自車両100の移動速度が所定の速度以上であるか判定する。第1判定部35は、自車両100の移動速度が所定の速度以上であると判定した場合(ステップS13;YES)、処理をステップS14に移行させる。一方で、第1判定部35は、ステップS12で取得した自車両100の移動速度が所定の速度未満であると判定した場合(ステップS13;NO)、追い越し車両判定処理を終了する。
【0065】
ステップS14において、第1判定部35は、ステップS12で取得した他車両200の位置が判定エリアA内であるか判定する。第1判定部35は、他車両200の位置が判定エリアA内であると判定した場合(ステップS14;YES)、処理をステップS15に移行させる。一方で、第1判定部35は、ステップS12で取得した他車両200の位置が判定エリアA外であると判定した場合(ステップS14;NO)、追い越し車両判定処理を終了する。
【0066】
ステップS15において、第1判定部35は、送信波の周波数と他車両200によって反射された反射波の周波数との差に基づいて特定される他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動を示すか否かを判定する。第1判定部35は、他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動であると判定した場合(ステップS15;YES)、処理をステップS16に移行させる。一方で、第1判定部35は、他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動であると判定した場合(ステップS15;NO)、追い越し車両判定処理を終了する。
【0067】
ステップS16において、第1判定部35は、候補車両フラグをTrueにする。即ち、第1判定部35は、他車両200が追い越し車両の候補車両であると判定する。その後、レーダ制御部10は、
図9に示す追い越し車両確定処理に移行する。
【0068】
次に、追い越し車両確定処理について
図9を参照しながら説明する。
図9は、レーダ装置1による追い越し車両確定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0069】
図9のフローチャートのステップS20において、第2判定部36は、肯定条件判定を行う。肯定条件判定の流れについては後述する。
【0070】
ステップS41において、第2判定部36は、ステップS20で行った肯定条件判定の結果が肯定条件を満たすか判定する。第2判定部36は、肯定条件を満たすと判定した場合(ステップS41;YES)、処理をステップS42に移行させる。そして、ステップS42において、第3判定部37は、カウンタを1インクリメントし、その後処理をステップS45に移行させる。一方で、第2判定部36は、肯定条件を満たさないと判定した場合(ステップS41;NO)、処理をステップS30に移行させる。
【0071】
ステップS30において、第2判定部36は、否定条件判定を行う。否定条件判定の流れについては後述する。
【0072】
ステップS43において、第2判定部36は、ステップS30で行った否定条件判定の結果が否定条件を満たすか判定する。第2判定部36は、否定条件を満たすと判定した場合(ステップS41;YES)、処理をステップS44に移行させる。そして、ステップS44において、第3判定部37は、カウンタを1デクリメントし、その後処理をステップS45に移行させる。一方で、第2判定部36は、否定条件を満たさないと判定した場合(ステップS43;NO)、ステップS44の処理を飛ばし、処理をステップS45に移行させる。
【0073】
ステップS45において、第3判定部37は、カウンタの値が判定用閾値を超えたか否かを判定する。第3判定部37は、カウンタの値が判定用閾値を超えたと判定した場合(ステップS45;YES)、処理をステップS46に移行させる。そして、ステップS46において、第3判定部37は、追い越し車両フラグをTrueにする。即ち、第3判定部37は、候補車両である他車両200を自車両100によって追い越される追い越し車両であると判定する。第3判定部37は、その後処理をステップS20に戻す。一方で、第3判定部37は、カウンタの値が判定用閾値未満であると判定した場合(ステップS45;NO)、処理をステップS47に移行させる。
【0074】
ステップS47において、第3判定部37は、追い越し車両フラグの状態がTrueであるか判定する。第3判定部37は、追い越し車両フラグの状態がTrueである場合(ステップS47;YES)、処理をステップS48に移行させる。そして、ステップS48において、第3判定部37は、追い越し車両フラグをFalseにし、処理をステップS20に戻す。一方で、第3判定部37は、追い越し車両フラグの状態がFalseである場合(ステップS47;NO)、ステップS48の処理を飛ばし、処理をステップS20に戻す。
【0075】
なお、追い越し車両確定処理は、車両候補フラグがTrueになった後から行われ、予め設定された任意の時間経過後に終了させてもよい。またレーダ制御部10の出力処理部38は、追い越し車両フラグの状態が変更されるたびに判定結果をECU2等に出力してもよく、追い越し車両確定処理の終了後に判定結果をECU2等に出力してもよい。
【0076】
次に、肯定条件判定処理について
図10を参照しながら説明する。
図10は、レーダ装置1による肯定条件判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0077】
ステップS21において、検出処理部31は、送信波と受信した反射波に基づいて、現時点での他車両200の位置に関する位置情報を取得する。
【0078】
ステップS22において、第2判定部36は、ステップS21で取得した他車両200の位置が判定エリアA内であるか判定する。第2判定部36は、他車両200の位置が判定エリアA内であると判定した場合(ステップS22;YES)、処理をステップS23に移行させる。一方で、第2判定部36は、ステップS21で取得した他車両200の位置が判定エリアA外であると判定した場合(ステップS22;NO)、肯定条件を満たさないと判定し、その後肯定条件判定処理を終了する。
【0079】
ステップS23において、第2判定部36は、他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動であるか判定する。
図10に示す例では、第2判定部36は、送信波の周波数と反射波の周波数との差に基づいて特定される他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動を示す場合か、他車両200の位置の時間変化に基づいて特定される自車両100に対する他車両200の相対速度が自車両100から離れる値である場合の何れかの場合に、他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動であると判定する。第2判定部36は、他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動であると判定した場合(ステップS23;YES)、肯定条件を満たすと判定する。一方で、第2判定部36は、他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動ではないと判定した場合(ステップS23;NO)、肯定条件を満たさないと判定する。その後、肯定条件判定処理を終了する。
【0080】
次に、否定条件判定処理について
図11を参照しながら説明する。
図11は、レーダ装置1による否定条件判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0081】
ステップS31において、検出処理部31は、送信波と受信した反射波に基づいて、現時点での他車両200の位置に関する位置情報を取得する。
【0082】
ステップS32において、第2判定部36は、ステップS31で取得した他車両200の位置が判定エリアA内であるか判定する。第2判定部36は、他車両200の位置が判定エリアA内であると判定した場合(ステップS32;YES)、処理をステップS33に移行させる。一方で、第2判定部36は、ステップS31で取得した他車両200の位置が判定エリアA外であると判定した場合(ステップS32;NO)、否定条件を満たさないと判定し、その後否定条件判定処理を終了する。
【0083】
ステップS33において、第2判定部36は、他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動であるか判定する。
図11に示す例では、第2判定部36は、送信波の周波数と反射波の周波数との差に基づいて特定される他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動を示す場合か、他車両200の位置の時間変化に基づいて特定される自車両100に対する他車両200の相対速度が自車両100に近づく値である場合の何れかの場合に、他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動であると判定する。第2判定部36は、他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動であると判定した場合(ステップS33;YES)、否定条件を満たすと判定する。一方で、第2判定部36は、他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動ではないと判定した場合(ステップS33;NO)、否定条件を満たさないと判定する。その後、否定条件判定処理を終了する。
【0084】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0085】
本実施形態に係るレーダ装置1は、自車両100に搭載され、自車両100の周囲に存在する他車両200に対して送信波を送信し、該送信波が他車両200により反射されて形成された反射波を受信するレーダ装置1であって、送信波及び反射波から特定される他車両200の挙動に基づいて、他車両200が自車両100によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定部35と、第1判定部35によって他車両200が候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、候補車両が他車両200の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定部36と、第2判定部36によって肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、候補車両が追い越し車両であるか否かを判定する第3判定部37と、を備える。
【0086】
これにより、送信波及び反射波から特定される挙動から追い越し車両の候補であるか否かを判定し、候補であると判定された後に、車両の挙動に関する条件を満たしている頻度に基づいて追い越し車両であるか2段階で判定するので、2次元マップのパターンマッチ等を行う場合に比べてより少ない処理負荷で確実に追い越し車両を判定することができる。よって、処理負荷を抑えつつ、自車両100によって追い越される追い越し車両を確実に特定できる。
【0087】
また本実施形態に係るレーダ装置1において、第1判定部35は、自車両100が所定の速度以上で移動しており、かつ他車両200が少なくとも自車両100の車両中心Cよりも後方に設定された判定エリアA内に存在している状況で、他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動を示す場合に、他車両200が候補車両であると判定する。
【0088】
これにより、他車両200の位置と周波数の差に基づいて特定した他車両200の挙動から候補車両を判定するので、より少ない処理負荷で追い越し車両の候補を特定できる。
【0089】
また本実施形態に係るレーダ装置1において、第2判定部36は、他車両200が判定エリアA内に存在している状況で、他車両200の挙動が自車両100から離れる挙動を示す場合に、肯定条件を満たしていると判定する。
【0090】
これにより、他車両200の位置と周波数の差に基づいて特定した他車両200の挙動、相対速度に基づいて追い越し車両を判定するので、より少ない処理負荷で候補車両が追い越し車両であるかを特定できる。
【0091】
また本実施形態に係るレーダ装置1において、前記第3判定部37は、第2判定部36によって肯定条件を満たしていると判定されるとインクリメントされるカウンタを備え、カウンタの値が所定の閾値を超えた場合に、追い越し車両であると判定する。
【0092】
これにより、他車両200の挙動が追い越し車両の挙動に関する条件を所定の頻度で満たす場合を簡素な処理で特定できる。
【0093】
また本実施形態に係るレーダ装置1において、第2判定部36は、肯定条件を満たさないと判定した場合に、他車両200が判定エリアA内に存在している状況で、他車両200の挙動が自車両100に近づく挙動を示す条件である否定条件を満たしているか否かを判定し、カウンタは、第2判定部36によって否定条件を満たしていると判定されるとデクリメントされる。
【0094】
これにより、積算されたカウンタをデクリメントできるので、例えばカウンタの閾値を超え追い越し車両であると判定された後、他車両200の挙動が自車両100を追い越す挙動等に変わる場合であっても、一度追い越し車両と認定された車両を追い越し車両ではないと判定することができる。
【0095】
本実施形態に係るプログラムは、自車両100に搭載され、自車両100の周囲に存在する他車両200に対して送信波を送信し、該送信波が他車両200により反射されて形成された反射波を受信するレーダ装置1に含まれるコンピュータに、送信波及び反射波から特定される他車両200の挙動に基づいて、他車両200が自車両100によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定機能と、第1判定機能によって他車両200が候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、候補車両が他車両200の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定機能と、第2判定機能によって肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、候補車両が追い越し車両であるか否かを判定する第3判定機能と、を実行させる。
【0096】
本実施形態に係る追い越し車両判定方法は、自車両100に搭載され、自車両100の周囲に存在する他車両200に対して送信波を送信し、該送信波が他車両200により反射されて形成された反射波を受信するレーダ装置1が実行する追い越し車両判定方法であって、送信波及び反射波から特定される他車両200の挙動に基づいて、他車両200が自車両100によって追い越される追い越し車両の候補である候補車両であるか否かを判定する第1判定ステップと、第1判定ステップで他車両200が候補車両であると判定された場合に、その判定後から所定の時間間隔で、候補車両が他車両200の挙動に関する所定の肯定条件を満たしているか否かを判定する第2判定ステップと、第2判定ステップで肯定条件を満たすと判定された頻度に基づいて、候補車両が追い越し車両であるか否かを判定する第3判定ステップと、を含む。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0098】
上記実施形態では、第3判定部のカウンタは肯定条件を満たすと判定されるとインクリメントされ、否定条件を満たすと判定されるとデクリメントされていたが、デクリメントされる機能を有さず、インクリメントのみされるものであってもよい。この場合、第3判定部は、あらかじめ定められた所定の期間内に肯定条件を所定の回数満たす場合に候補車両が追い越し車両であると判定することになる。
【0099】
上記実施形態では、候補車両が追い越し車両あると判定するときの判定用閾値と、追い越し車両と判定された車両が追い越し車両ではないと判定するときの判定用閾値とが等しかったが、異なる値であってもよい。
【0100】
また、上述した上記実施形態及び変形例における一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。そして、コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 レーダ装置
35 第1判定部
36 第2判定部
37 第3判定部
100 自車両
200 他車両(移動体)