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特開2024-136946レーダ装置、プログラム、及び、レーダ装置制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136946
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】レーダ装置、プログラム、及び、レーダ装置制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01S13/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048258
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】堀 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】小出 健
(72)【発明者】
【氏名】日比野 勉
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC19
5J070AF03
5J070AF04
5J070AK14
(57)【要約】
【課題】移動体の動作に応じて、レーダ波の検出距離を調整するレーダ装置を提供する。
【解決手段】レーダ装置1は、所定の領域内を移動する移動体5に搭載されるレーダ装置1であって、移動体5の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波2を送信するレーダ波送信部3と、レーダ波送信部3が送信したレーダ波2の反射波を受信するレーダ波受信部4と、所定の領域内における移動体5の動作に応じて、反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更部101と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域内を移動する移動体に搭載されるレーダ装置であって、
前記移動体の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波を送信する送信部と、
前記送信部が送信した前記レーダ波の反射波を受信する受信部と、
前記所定の領域内における前記移動体の動作に応じて、前記反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更部と、
を有するレーダ装置。
【請求項2】
前記所定の領域内における前記移動体の動作は、前記移動体の前記周辺環境の情報を取得して前記所定の領域の境界を識別する第1の動作と、前記境界の識別を伴わずに前記所定の領域内を移動する第2の動作とを含む、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記移動体の進行方向を示す方位情報を取得する方位情報取得部と、
前記受信部が受信した前記反射波を処理して点群を検知し、検知した点群について、クラスタリング処理及びトラッキング処理を行う点群処理部と、
前記位置情報取得部が取得した前記位置情報と、前記方位情報取得部が取得した前記方位情報と、前記点群処理部による処理後の信号とに基づいて前記移動体の前記周辺環境を表すマップを作成するマップ作成部と、
を有し、
前記検出距離変更部は、前記移動体が前記所定の領域内を移動する場合に、前記マップ作成部が作成した前記マップと前記位置情報及び前記方位情報とに基づいて前記送信部が送出する前記レーダ波の出力及び/又は前記受信部の受信利得を変更する、
請求項1又は請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記検出距離変更部は、前記所定の領域の前記境界が、前記レーダ波の反射率が低く前記所定の領域を構成する平面に対して凸状に盛り上がって構成されている場合、前記第1の動作において前記境界に対して照射する前記レーダ波について、前記第2の動作の場合と比較して、前記送信部が出力する前記レーダ波の出力を上げる及び/又は前記受信部の受信利得を上げる、
請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
マップ作成部が、前記移動体が前記第1の動作により前記所定の領域の前記境界に関する境界情報を取得する場合、
前記検出距離変更部は、前記移動体が前記第2の動作により前記所定の領域内を移動する場合と比較して、前記送信部が出力する前記レーダ波の出力を上げる及び/又は前記受信部の受信利得を上げる、
請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記検出距離変更部は、前記移動体が前記第2の動作により前記所定の領域内において移動する場合、前記第1の動作により前記境界の情報を取得する場合と比較して、前記送信部が出力する前記レーダ波の出力を下げる及び/又は前記受信部の受信利得を下げる、
請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記検出距離変更部は、受信信号が飽和しないように、前記送信部が出力する前記レーダ波の出力及び/又は前記受信部の受信利得を変更する、
請求項1又は請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記送信部及び前記受信部が、前記移動体の進行方向前方の左右に設けられる、
請求項1又は請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項9】
所定の領域内を移動する移動体に搭載され、前記移動体の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波を送信する送信部と、前記送信部が送信した前記レーダ波の反射波を受信する受信部とを有するレーダ装置の制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記所定の領域内における前記移動体の動作に応じて、前記反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更処理を実行させるプログラム。
【請求項10】
所定の領域内を移動する移動体に搭載され、前記移動体の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波を送信する送信部と、前記送信部が送信した前記レーダ波の反射波を受信する受信部とを有するレーダ装置の制御方法であって、
前記移動体の動作に応じて、前記反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更ステップ、
を有するレーダ装置制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置、プログラム、及び、レーダ装置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、目標物への距離の測定を行うレーダ装置が使用されている。一般的に、レーダによる探知距離は、送信波の出力電力に依存する。例えば特許文献1には、目標物体の反射特性に合わせてレーダの感度を調整する技術が記載されている。目標物体から反射されてくる受信信号のパワーが高ければ、次回送信する送信信号のパワーを低くし、逆に受信信号のパワーが低ければ、次回送信する送信信号のパワーを高くするよう、受信パワーに応じて送信パワーを制御する。これにより、目標物体までの測距のために必要な送信パワーにて距離測定が行えるようにする。又、不必要に送信パワーを強めないようにして人体への安全性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4994419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の領域内における移動体の動作においては、その領域の内外を区切る境界を如何に検出するかが課題となる。ここで、物標が土や樹木などの場合、金属に比べて、反射波を処理して得られる検出信号が低いため、これらの物標の検出精度を高めるために、センサの出力電力を高く設定する必要がある。しかしながら、金属などで構成されている作業車や農機具等の物体が含まれる場合、出力電力を単に高く設定してしまうと、反射波を処理して得られる検出信号が大きすぎて飽和してしまい、物標を検出することが困難な可能性がある。
【0005】
本発明は、移動体の動作に応じて、反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更するレーダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)レーダ装置は、所定の領域内を移動する移動体に搭載されるレーダ装置であって、移動体の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波を送信する送信部と、送信部が送信したレーダ波の反射波を受信する受信部と、所定の領域内における移動体の動作に応じて、反射を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更部と、を有する。
【0007】
(2)(1)の記載のレーダ装置において、所定の領域内における移動体の動作は、移動体の周辺環境の情報を取得して所定の領域の境界を識別する第1の動作と、境界の識別を伴わずに所定の領域内を移動する第2の動作とを含む。
【0008】
(3)(1)又は(2)に記載のレーダ装置は、移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、移動体の進行方向を示す方位情報を取得する方位情報取得部と、受信部が受信した反射波を処理して点群を検知し、検知した点群について、クラスタリング処理及びトラッキング処理を行う点群処理部と、位置情報取得部が取得した位置情報と、方位情報取得部が取得した方位情報と、点群処理部による処理後の信号とに基づいて移動体の周辺環境を表すマップを作成するマップ作成部と、を有し、検出距離変更部は、移動体が所定の領域内を移動する場合に、マップ作成部が作成したマップと位置情報及び方位情報とに基づいて送信部が送出するレーダ波の出力及び/又は受信部の受信利得を調整する。
【0009】
(4)(3)のレーダ装置において、検出距離変更部は、所定の領域の境界が、レーダ波の反射率が低く所定の領域を構成する平面に対して凸状に盛り上がって構成されている場合、第1の動作において境界に対して照射するレーダ波について、第2の動作の場合と比較して、送信部が出力するレーダ波の出力を上げる及び/又は受信部の受信利得を上げる。
【0010】
(5)(3)のレーダ装置において、マップ作成部が、移動体が第1の動作により所定の領域の境界に関する境界情報を取得する場合、検出距離変更部は、移動体が第2の動作により所定の領域内を移動する場合と比較して、送信部が出力するレーダ波の出力を上げる及び/又は受信部の受信利得を上げる。
【0011】
(6)(3)のレーダ装置において、検出距離変更部は、移動体が第2の動作により所定の領域内において移動する場合、第1の動作により境界情報を取得する場合と比較して、送信部が出力するレーダ波の出力を下げる及び/又は受信部の受信利得を下げる。
【0012】
(7)(1)から(6)の何れか1つのレーダ装置において、検出距離変更部は、受信信号が飽和しないように、送信部が出力するレーダ波の出力及び/又は受信部の受信利得を、調整する。
【0013】
(8)(1)から(6)の何れか1つのレーダ装置において、送信部及び受信部が、移動体の進行方向前方の左右に設けられる。
【0014】
(9)プログラムは、所定の領域内を移動する移動体に搭載され、移動体の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波を送信する送信部と、送信部が送信したレーダ波の反射波を受信する受信部とを有するレーダ装置の制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、コンピュータに、所定の領域内における移動体の動作に応じて、反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更処理を実行させる。
【0015】
(10)レーダ装置制御方法は、所定の領域内を移動する移動体に搭載され、移動体の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波を送信する送信部と、送信部が送信したレーダ波の反射波を受信する受信部とを有するレーダ装置の制御方法であって、移動体の動作に応じて、反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更ステップ、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、移動体の動作に応じて、レーダ波の検出距離を調整するレーダ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るレーダ装置が搭載される移動体の動作を示す模式図である。
図2】本発明に係るレーダ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本発明に係るレーダ装置の機能的構成を示すブロック図である。
図4】本発明に係るレーダ装置を搭載した移動体が第1の経路上を移動している場合を示す模式図である。
図5】本発明に係るレーダ装置を搭載した移動体が第2の経路上を移動している場合を示す模式図である。
図6】本発明に係るレーダ装置を搭載した移動体が圃場の周辺部にあり境界と平行な方位を向いている場合を示す模式図である。
図7】本発明に係るレーダ装置を搭載した移動体が圃場の周辺部にあり境界に向いている場合を示す模式図である。
図8】本発明に係るレーダ装置を搭載した移動体が第1の経路上を走行する場合のレーダ装置の制御プロセスを示すフローチャートである。
図9】本発明に係るレーダ装置を搭載した移動体が第2の経路上を走行する場合のレーダ装置の制御プロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るレーダ装置1について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付す。又、構成要素が同様の機能を有し特に区別する必要のない場合には符号として区別されない。構成要素が同様の機能を有するものの特に区別する必要のある場合には、符号に追加の小文字アルファベットを付与して構成要素は互いに区別される。
【0019】
図1は、本発明に係るレーダ装置1が使用されている状況を示す模式図である。レーダ装置1は、例えば移動体5に搭載されている。レーダ装置1は、レーダ波2を送信するレーダ波送信部3とレーダ波2を受信するレーダ波受信部4とを制御する。レーダ波送信部3及びレーダ波受信部4は、例えば、移動体5の進行方向前方の左右に設けられる。移動体5は、例えば、トラクター等の作業車である、移動体5は、手動或いは自動で、所定の領域9内を移動する。領域9は例えば圃場である。領域9は例えば畝状の境界91により区分けされている。畝状の境界91は例えば畦道である。レーダ波送信部3は、移動体5の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波2を送信する。レーダ波受信部4は、レーダ波送信部3が送信したレーダ波2の反射波を受信する。所定の領域9内における移動体5の動作、位置、方位に応じて、レーダ波2の検出距離が調整される。移動体5の位置は衛星測位モジュール6の測位結果に基づいて求められる。移動体5の方位は方位測位モジュール7の測位結果に基づいて求められる。移動体5の動作は、移動体5の周辺環境の情報を取得して所定の領域9の境界91を識別する第1の動作と、境界91の識別を伴わずに所定の領域9内を移動する第2の動作とを含む。
【0020】
図2は、レーダ装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、レーダ装置1は、レーダ装置制御部10と、入出力部16と、通信部17と、記憶部18と、を備える。レーダ装置制御部10は、プロセッサ11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インタフェース15とを有する。レーダ装置1のレーダ装置制御部10は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な汎用のパーソナルコンピュータであってもよいし、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。
【0021】
プロセッサ11は、各種演算及び処理を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)等である。或いは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。又、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであってもよい。
【0022】
プロセッサ11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。プロセッサ11は、ROM12に記録されているプログラム又はRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていてもよい。
【0023】
バス14は入出力インタフェース15にも接続される。入出力インタフェース15には、入出力部16と、通信部17と、記憶部18とが接続されている。
【0024】
入出力部16は、有線又は無線により電気的に入出力インタフェース15に接続される。入出力部16は例えばキーボード及びマウス等の入力部と撮影画像を表示するディスプレイ及び音声を拡声するスピーカ等の出力部とによって構成される。なお、入出力部16はタッチパネルのように表示機能と入力機能が一体的な構成であってもよい。
【0025】
通信部17は、プロセッサ11が、他の装置との間で通信を行うための装置である。通信部17は例えばWi-Fi等の短距離通信手段である。他の装置は、例えば、レーダ波送信部3、レーダ波受信部4、衛星測位モジュール6、方位測位モジュール7、撮像装置8などを含む。これらの装置は、通信部17を介して、レーダ装置制御部10により制御される。但し、これらの装置は、通信部17を介さず、有線にてレーダ装置制御部10により制御されてもよい。記憶部18は、後述するノード情報及びリンク情報等を記憶する例えばハードディスクドライブ(HDD)、半導体ドライブ(SSD)等の記憶装置である。
【0026】
図2に関して示したハードウェア構成は、あくまで一例であり、特にこの構成に限定されるわけではない。シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを、プロセッサとしての機能的構成を実現するものとして採用してもよい。レーダ装置1が記憶部18を有するのではなく、記憶部18が別途設けられる構成が採用されてもよい。
【0027】
図3は、本実施形態に係るレーダ装置1が有するレーダ装置制御部10の機能的構成、を示すブロック図である。図3に示す各機能は、図2に示すレーダ装置1の有するプロセッサ11等により実現される。レーダ装置制御部10は、検出距離変更部101と位置情報取得部102と方位情報取得部103と点群処理部104とマップ作成部105とを有する。
【0028】
本実施形態において、トラクター等の移動体5は、手動走行のほかに移動体5の走行を自動で制御する自動走行制御部50を備える。移動体5の有する自動走行制御部50の機能的構成を図3に示す。図3に示す自動走行制御部50の各機能は、図2に示すハードウェア構成と同様の構成を備える情報処理装置の有するプロセッサ11等により実現される。自動走行制御部50は、走行経路を選択する経路選択部501と走行を制御する走行制御部502とを有する。自動走行制御部50は、レーダ装置制御部10が生成したマップ及び位置情報、方位情報を通信部17bを通して入手する。自動走行制御部50は、マップ及び位置情報、方位情報に基づいて移動体5の走行を制御する。
【0029】
位置情報取得部102は、衛星測位モジュール6を通して、移動体5の位置情報を取得する。衛星測位モジュール6は、例えばGPS(Global Positioning System)である。方位情報取得部103は、方位測位モジュール7を通して移動体5の進行方向を示す方位情報を取得する。方位測位モジュール7は例えばジャイロ、地磁気センサ、加速度センサを用いた装置である。点群処理部104は、レーダ波受信部4が受信した反射波を処理して点群を検知し、検知した点群について、クラスタリング処理及びトラッキング処理を行う。マップ作成部105は、位置情報取得部102が取得した位置情報と、方位情報取得部103が取得した方位情報と、点群処理部104による処理後の信号とに基づいて移動体5の周辺環境を表すマップを作成する。検出距離変更部101は、移動体5が所定の領域9の中を移動する場合に、マップ作成部105が作成したマップと位置情報及び方位情報とに基づいてレーダ波送信部3が送出するレーダ波2の出力及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を調整する。
【0030】
図1から図7を参照して、検出距離変更部101の働きについてより詳細に説明する。
図1に示すように、移動体5は、手動或いは自動で、所定の領域9内を移動する。領域9は例えば畝状の境界91により区分けされている。畝状の境界91は例えば畦道である。レーダ波送信部3は、移動体5の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波2を送信する。レーダ波受信部4は、レーダ波送信部3が送信したレーダ波2の反射波を受信する。
【0031】
所定の領域9内における移動体5の動作、位置、方位に応じて、レーダ波2の検出距離が調整される。移動体5の位置は衛星測位モジュール6の測位結果に基づいて求められる。移動体5の方位は方位測位モジュール7の測位結果に基づいて求められる。移動体5の動作は、移動体5の周辺環境の情報を取得して所定の領域9の境界91を識別する第1の動作による第1の経路R1上の走行と、境界91の識別を伴わずに所定の領域9内を移動する第2の動作による第2の経路R2上の走行とを含む。
【0032】
図4は、移動体5が第1の動作により第1の経路R1上を移動している場合を示す。第1の動作においては、移動体5は手動で操作される。第1の経路R1は領域9の縁に沿っている。領域9の外周を移動体5が手動で走行させられる際、同時に雑草の草刈り等の作業を行うとしてもよい。マップ作成部105が、移動体5が第1の動作により所定の領域9の境界91に関して取得した境界情報を取得する。更に、マップ作成部105は、境界情報に基づいて領域9のマップを作成する。領域9のマップが既に記憶部18に保持されている場合には、第1の動作で取得した領域9のマップ情報を補正に使用してもよい。領域9の形は、区画整理及び/又は風雨等の自然の影響で少しずつ変形することが考えられるため、領域9のマップの補正が有効である。
【0033】
ここで、比較のため、移動体5が第2の動作により第2の経路R2上を移動している場合について触れる。詳細は後述される。図5は、移動体5が第2の動作により第2の経路R2上を移動している状況を示す模式図である。移動体5は所定の領域9内を移動する。第1の経路R1が領域9の縁に沿っていたのに対して、第2の経路R2は、領域9の中央に近い、第1の経路R1を含まない領域9に設けられている。第2の経路R2においては、移動体5は自動で移動する。
【0034】
図4に戻り、移動体5が第1の動作により第1の経路R1上を移動している場合について更に説明を加える。図1に示すように所定の領域9の境界91が、畝状の境界91として構成されている場合が想定される。畝状の境界91は、所定の領域9を構成する平面に対して凸状に盛り上がっている。畝状の境界91においては、検出対象が圃場や畔を形成する土等の反射率の低い物質のため、レーダ波2の反射率が低い。検出距離変更部101は、第1の動作において、第2の動作の場合と比較して、境界91に対してレーダ波送信部3が照射するレーダ波2の出力を上げる及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を上げる。この場合、領域9内の図1に示すような障害物92或いは図4に示す障害物92bが受信飽和により検知出来ないことが有り得る。或いは、図4に示すような領域9外の強反射の障害物92aを検出してしまう可能性がある。この場合は、領域9外の障害物92aであるにも関わらず移動体5を停止させる信号が発せられる可能性がある。しかしながら、第1の動作は境界91の位置を検出すべく手動で制御されており、受信利得を高めたことによる受信信号の飽和や境界91外にある強反射物の誤検知は問題にならない。
【0035】
検出距離変更部101は、マップ作成部105が作成した領域9のマップを記憶部18に記憶されている過去のデータ或いはライブラリ、例えば移動体5が過去に領域9を走行した際の移動経路記録とレーダ装置1の動作条件との関係等と比較し、検出距離の制御パターンを決定してもよい。
【0036】
次に、移動体5が、図5に示すように、第2の動作により第2の経路R2を移動する場合について説明する。検出距離変更部101は、衛星測位モジュール6から位置情報取得部102が取得した位置情報と、方位測位モジュール7から方位情報取得部103が取得した移動体5の方位との組み合わせから得られる情報に基づいて、検出距離を調整する。領域9内の走行経路に障害物92がある場合には、回避経路を設定し、その経路に従って作業走行が行われる。
【0037】
検出距離変更部101は、移動体5が第2の動作により所定の領域9内において移動する場合、第1の動作により境界情報を取得する場合と比較して、レーダ波送信部3が出力するレーダ波2の出力を下げる及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を下げる。領域9のマップ情報と自車位置・方位情報に基づいて出力及び/又は利得を比較的低く設定するため、領域9内の障害物92cが飽和によって未検出となることを防ぐことが出来る。又、出力及び/又は利得を、レーダ波2の検知範囲が領域9外に及ばないように設定することで領域9のエリア外の障害物92dの検出を回避することが出来る。例えば、移動体5から畝状の境界91までが検出範囲となるように設定してもよい。或いは、移動体5から畝状の境界91までの距離の所定の割合の距離が検出範囲とされてもよい。所定の割合の例は例えば50%から100%の間に設定される。
【0038】
移動体5が領域9内の同様の位置に存在したとしても、移動体5の方位を考慮すると検出すべき範囲が変わる可能性がある。例えば、図6に示したように移動体5の前方に位置する畝状の境界91から移動体5が遠い場合がある。一方、図7に示したように、移動体5が図6と同じ位置に存在する場合でも移動体5の向きによっては移動体5の前方に位置する畝状の境界91に近接している場合がある。図6に示したように、移動体5が、その進行方向の畝状の境界91に遠い場合には、検出距離変更部101はレーダ波2の出力及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を高くする。図7に示したように、移動体5が、その進行方向の畝状の境界91に近い場合には、検出距離変更部101はレーダ波2の出力及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を低くする。移動体5の方位とマップ作成部105が作成するマップ情報とを組み合わせて、検出距離変更部101はレーダ波2の出力及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を調整する。
【0039】
以下、レーダ装置1の行う処理について、図8及び図9のフローチャートを参照して説明する。図8は、領域9のマップが生成されるフローを示す。処理がスタートすると、第1の動作として、手動で移動体5が操作され移動体5は第1の経路R1上を移動する。適宜レーダ波2が送受信され、移動体5の前方領域に存在する領域9内の地面と畔の位置及び高さを示す点群情報が取得される(ステップS101)。取得した点群情報は撮像装置8で取得した画像にマッピングされる(ステップS102)。マッピングにより領域9と畔との境界91が識別される(ステップS103)。識別は、点群情報から得られる高さ情報及び色度などの情報を利用して行ってもよい。又、マッピング情報を機械学習させることにより、マッピングの精度を向上することが出来るようにしてもよい。領域9内の手動走行による境界91の識別処理が終了していない場合(ステップS104:NО)、処理はステップS101に戻る。境界91の識別処理が終了している場合(ステップS104:YES)、マップ作成部105は、領域9のマップを生成する(ステップS105)。そして、処理は終了する。
【0040】
図9は、第2の動作として、自動で移動体5の作業走行が行われる場合のレーダ装置1による処理フローを示す。前記のように、移動体5は、移動体5の走行を自動で制御する自動走行制御部50を備える。作業走行処理がスタートすると、移動体5の有する自動走行制御部50は領域9のマップ情報を取得する(ステップS201)。取得したマップ情報に則り、経路選択部501は走行経路を選択する(ステップS202)。自動走行制御部50は、マップ作成部105により作成された領域9のマップ及び/又は境界91に基づいて移動体5の機体制御をおこなう。検出距離変更部101は、初期値としてのレーダ波2の送信出力と受信利得とを設定する(ステップS203)。第2の動作として作業走行が行われる(ステップS204)。レーダ装置制御部10の位置情報取得部102が位置情報を取得し、方位情報取得部103が方位情報を取得する(ステップS205)。検出距離変更部101が取得された位置情報と方位情報とに基づいてレーダ波2の送信出力と受信利得とを設定する(ステップS206)。作業走行が終了していない場合(ステップS207;NO)、処理は作業走行(ステップS204)に戻る。作業走行が終了している場合(ステップS207:YES)、本処理は終了する。
【0041】
上記の実施形態においては、レーダ波2の出力及び受信利得は、移動体5の位置情報及び方位情報に基づいて決定されるとしている。レーダ波2の出力及び受信利得は、これらに限られず、移動体5の速度、天候などにも依存する。従って、移動体5の移動速度が速い場合には検出範囲を広くし、移動速度が遅い場合には検出範囲を狭くするなど、速度情報がレーダ波2の出力及び受信利得に反映されてもよい。又、降雨センサなどから取得した天候情報に基づいて、電波の減衰率を考慮し、レーダ波2の送信出力を変更してもよい。
【0042】
上記においては、レーダ装置1がレーダ装置制御部10を有し、情報処理機能を内蔵している。レーダ装置1の機能の一部を独立させて別の情報処理装置に設けるとしてもよい。その場合、レーダ装置1と別のコンピュータに各機能を実現させるプログラムが独立して提供されるとしてもよい。
【0043】
本開示は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。又、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0044】
以上説明した実施形態に係るレーダ装置1によれば以下のような効果が奏される。
【0045】
(1)レーダ装置1は、所定の領域9内を移動する移動体5に搭載されるレーダ装置1であって、移動体5の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波2を送信するレーダ波送信部3と、レーダ波送信部3が送信したレーダ波2の反射波を受信するレーダ波受信部4と、所定の領域9内における移動体5の動作に応じて、反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更部101と、を有する。
【0046】
これにより、移動体5の動作に応じて、レーダ波2の検出距離を調整するレーダ装置1が提供される。そして、所定の領域の境界検出と障害物検出とを効率的に行うことが出来る。
【0047】
(2)(1)に記載のレーダ装置1において、所定の領域9内における移動体5の動作は、移動体5の周辺環境の情報を取得して所定の領域9の境界91を識別する第1の動作と、境界91の識別を伴わずに所定の領域9内を移動する第2の動作とを含むとしてもよい。
【0048】
これにより、第1の動作により領域9の境界91が確定され、第2の動作により移動体5による作業がより円滑に実行される。
【0049】
(3)(1)又は(2)に記載のレーダ装置1は、移動体5の位置情報を取得する位置情報取得部102と、移動体5の進行方向を示す方位情報を取得する方位情報取得部103と、レーダ波受信部4が受信した反射波を処理して点群を検知し、検知した点群について、クラスタリング処理及びトラッキング処理を行う点群処理部104と、位置情報取得部102が取得した位置情報と、方位情報取得部103が取得した方位情報と、点群処理部104による処理後の信号とに基づいて移動体5の周辺環境を表すマップを作成するマップ作成部105と、を有し、検出距離変更部101は、移動体5が所定の領域9内を移動する場合に、マップ作成部105が作成したマップと位置情報及び方位情報とに基づいてレーダ波送信部3が送出するレーダ波2の出力及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を変更するとしてもよい。
【0050】
これにより、レーダ波2が強すぎて対象物が飽和した信号に埋もれる、或いは、レーダ波2が弱すぎて境界91を移動体5が検出出来ないといった事態を未然に防ぐことが出来る。
【0051】
(4)(3)のレーダ装置1において、検出距離変更部101は、所定の領域9の境界91が、レーダ波2の反射率が低く所定の領域9を構成する平面に対して凸状に盛り上がって構成されている場合、第1の動作において境界91に対して照射するレーダ波2について、第2の動作の場合と比較して、レーダ波送信部3が出力するレーダ波2の出力を上げる及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を上げるとしてもよい。
【0052】
これにより、レーダ波2の反射率が低く検知しにくい、凸状に盛り上がって構成された畦道等の地面、が確実に検出され得る。
【0053】
(5)(3)のレーダ装置1において、マップ作成部105が、移動体5が第1の動作により所定の領域9の境界91に関する境界情報を取得する場合、検出距離変更部101は、移動体5が第2の動作により所定の領域9内を移動する場合と比較して、レーダ波送信部3が出力するレーダ波2の出力を上げる及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を上げるとしてもよい。
【0054】
これにより、境界91が確実に検出され得る。
【0055】
(6)(3)のレーダ装置1において、検出距離変更部101は、移動体5が第2の動作により所定の領域9内において移動する場合、第1の動作により境界情報を取得する場合と比較して、レーダ波送信部3が出力するレーダ波2の出力を下げる及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を下げるとしてもよい。
【0056】
これにより、領域9内に想定外の障害物92があるような場合においても、障害物92は確実に検出され得る。
【0057】
(7)(1)から(6)の何れか1つのレーダ装置1において、検出距離変更部101は、受信信号が飽和しないように、レーダ波送信部3が出力するレーダ波2の出力及び/又はレーダ波受信部4の受信利得を、変更するとしてもよい。
【0058】
これにより、例えば、想定外の障害物92が飽和した受信信号に埋もれることがない。確実に障害物92を避けて移動車は移動することが出来る。
【0059】
(8)(1)から(6)の何れか1つのレーダ装置1において、レーダ波送信部3及びレーダ波受信部4が、移動体5の進行方向前方の左右に設けられるとしてもよい。
【0060】
これにより、移動体5の前方付近にある障害物92や境界物を確実に検出することが出来る。
【0061】
(9)本実施形態によるプログラムは、所定の領域9内を移動する移動体5に搭載され、移動体5の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波2を送信するレーダ波送信部3と、レーダ波送信部3が送信したレーダ波2の反射波を受信するレーダ波受信部4とを有するレーダ装置1の制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、コンピュータに、所定の領域9内における移動体5の動作に応じて、反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更処理を実行させる。
【0062】
(10)本実施形態によるレーダ装置制御方法は、所定の領域9内を移動する移動体5に搭載され、移動体5の周辺環境に関する情報を取得するためにレーダ波2を送信するレーダ波送信部3と、レーダ波送信部3が送信したレーダ波2の反射波を受信するレーダ波受信部4とを有するレーダ装置1の制御方法であって、移動体5の動作に応じて、反射波を処理して得られる検出信号の大きさを変更する検出距離変更ステップ、を有する。
【0063】
上記のプログラム、レーダ装置制御方法によれば、移動体5の動作に応じて、レーダ波2の検出距離を調整するレーダ装置1が提供される。そして、境界検出と障害物検出とを効率的に行うことが出来る。
【符号の説明】
【0064】
1 レーダ装置
2 レーダ波
3 レーダ波送信部
4 レーダ波受信部
5 移動体
6 衛星測位モジュール
7 方位測位モジュール
8 撮像装置
9 領域
91 境界
92 障害物
10 レーダ装置制御部
11 プロセッサ
12 ROM
13 RAM
14 バス
15 入出力インタフェース
16 入出力部
17 通信手段
18 記憶部
50 自動走行制御部
101 検出距離変更部
102 位置情報取得部
103 方位情報取得部
104 点群処理部
105 マップ作成部
501 経路選択部
502 走行制御部
R1 第1の経路
R2 第2の経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9