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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136956
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】加工装置及び被加工物の搬出方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240927BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240927BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20240927BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20240927BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20240927BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B23Q11/00 K
B24B41/06 L
B24B41/06 A
B24B55/06
B23Q3/08 A
B23Q7/04 K
B23Q7/00 Z
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048271
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】現王園 二郎
【テーマコード(参考)】
3C016
3C033
3C034
3C047
5F131
【Fターム(参考)】
3C016DA05
3C033BB04
3C033CC07
3C033HH26
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB87
3C047FF04
3C047FF19
3C047HH15
5F131AA02
5F131BA31
5F131BA32
5F131CA12
5F131CA32
5F131DB22
5F131DB62
5F131EA05
5F131EA14
5F131EA15
5F131EA22
5F131EB01
5F131EB03
5F131EB78
5F131JA16
5F131JA23
5F131JA26
(57)【要約】
【課題】被加工物の搬出に際して該被加工物を保持面から離間させる際、加工屑を含む流体の飛散を防いで被加工物の洗浄を瞬時に行うこと。
【解決手段】研削装置(加工装置)1の保持ユニット10は、保持面11aと、吸引バルブV1と、エア噴出バルブV2及び水噴出バルブV3と、吸引口12aと、該吸引口12aと吸引源5とを連通または遮断させる吸引口吸引バルブV4を備える。この研削装置1におけるウェーハ(被加工物)Wの搬出方法は、吸引バルブV1を閉じエア噴出バルブV2と水噴出バルブV3を開けることによって、保持面11aにエアと水との混合流体を供給して保持面11aからウェーハWを離間させる離間工程と、保持面11aから離間したウェーハWを搬出する搬出工程とを備え、離間工程において、吸引口吸引バルブV4を開け、保持面11aの外側で混合流体を吸引する吸引工程を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面によって被加工物を吸引保持する保持ユニットと、該保持面に吸引保持された被加工物を加工する加工ユニットと、を備える加工装置であって、
該保持ユニットは、
被加工物を吸引保持する該保持面と、
該保持面と吸引源とを連通または遮断させる吸引バルブと、
該保持面と流体供給源とを連通または遮断させる流体噴出バルブと、
該保持面の外側にリング状に配置され、該保持面から噴出した流体を吸引する吸引口と、
該吸引口と吸引源とを連通または遮断させる吸引口吸引バルブと、
を備え、
該吸引バルブを閉じることと、該流体噴出バルブを開けることと、該吸引口吸引バルブを開けることとを制御する制御部を備えた、加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の加工装置を用いて、該吸引源に連通した該保持面に吸引保持された被加工物を、該保持面から搬出する被加工物の搬出方法であって、
該吸引バルブを閉じ該流体噴出バルブを開けることによって、該保持面に流体を供給して該保持面から被加工物を離間させる離間工程と、
該保持面から離間した被加工物を該保持面から搬出する搬出工程と、を備え、
該離間工程において、該吸引口吸引バルブを開け、該保持面の外側で該流体を吸引する吸引工程を含む、被加工物の搬出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持ユニットの保持面に保持されたウェーハなどの被加工物を加工する加工装置と、該加工装置によって加工された被加工物を保持ユニットの保持面から離間させて搬出する搬出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ウェーハなどの被加工物を研削する研削装置は、保持ユニットのチャックテーブルの保持面を吸引源に接続し、保持面によって吸引保持されたウェーハの上面に環状の研削砥石を回転させながら当接させることによって、該ウェーハの上面を研削加工している。そして、ウェーハに対する研削加工が終了すると、チャックテーブルの保持面から水とエアとの混合流体を噴出させてウェーハを保持面から離間させ、離間したウェーハを搬送パッドによって搬出している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、保持テーブルの保持面に保持されたウェーハなどの板状ワークを搬出する場合において、流体供給源から保持面への混合流体の供給圧力を検知することによって、搬出手段の保持パッドの大きさや板状ワークの厚さの違いに関わらず、保持テーブルの吸引保持力を確実に開放して板状ワークを保持テーブルの保持面から確実に離間させるようにした板状ワークの保持解除方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-025341号公報
【特許文献2】特開2013-184269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被加工物を搬出するために保持面から混合流体を噴出させて該被加工物を保持面から離間させる際、混合流体は、被加工物の加工時に保持面が吸引した加工屑を含んでいるため、加工屑を含んだ混合流体が保持面から浮上した被加工物の外周から噴出し、被加工物の側面と上面が加工屑によって汚される。このため、保持面から離間した被加工物を洗浄して加工屑を除去する必要があり、洗浄に要する時間が長くなって効率が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、被加工物の搬出に際して保持面から流体を噴出させて該被加工物を保持面から離間させる際、加工屑を含む流体の飛散を防いで被加工物の洗浄を瞬時に行うことができる加工装置及び被加工物の搬出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、保持面によって被加工物を吸引保持する保持ユニットと、該保持面に吸引保持された被加工物を加工する加工ユニットと、を備える加工装置であって、該保持ユニットは、被加工物を吸引保持する該保持面と、該保持面と吸引源とを連通または遮断させる吸引バルブと、該保持面と流体供給源とを連通または遮断させる流体噴出バルブと、該保持面の外側にリング状に配置され、該保持面から噴出した流体を吸引する吸引口と、該吸引口と吸引源とを連通または遮断させる吸引口吸引バルブと、を備え、該吸引バルブを閉じることと、該流体噴出バルブを開けることと、該吸引口吸引バルブを開けることとを制御する制御部を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記加工装置を用いて、該吸引源に連通した該保持面に吸引保持された被加工物を、該保持面から搬出する被加工物の搬出方法であって、該吸引バルブを閉じ該流体噴出バルブを開けることによって、該保持面に流体を供給して該保持面から被加工物を離間させる離間工程と、該保持面から離間した被加工物を該保持面から搬出する搬出工程と、を備え、該離間工程において、該吸引口吸引バルブを開け、該保持面の外側で該流体を吸引する吸引工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る加工装置を用いて実施される被加工物の搬出方法によれば、離間工程において、吸引バルブを閉じて流体噴出バルブを開けることによって、保持ユニットの保持面に流体を供給して該保持面から被加工物を離間させる際に、吸引工程を同時に実施し、吸引口吸引バルブを開けて保持面の外側で流体を吸引するようにしたため、被加工物の加工時に保持面が吸引した加工屑を含む流体が加工物の離間(浮上)に供された後に保持面の外側の吸引口から吸引される。このため、加工屑を含む流体が被加工物の外周から噴出して該流体に含まれる加工屑が被加工物の側面と上面を汚すことがない。この結果、加工屑を含む流体の飛散を防いで被加工物の洗浄を短時間で行うことができる。また、加工屑を含む流体を吸引口から吸引しているので、搬送パッドを汚すことがないという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る加工装置の一形態としての研削装置の一部を破断して示す斜視図である。
図2図1に示す研削装置の搬送パッドとその昇降機構を示す斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る被加工物の搬出方法における搬送パッドの下降工程を示す破断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る被加工物の搬出方法における離間工程と吸引工程を示す破断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る被加工物の搬出方法における搬出工程を示す破断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る被加工物の搬出方法における搬送パッドの下降工程を示す破断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る被加工物の搬出方法における離間工程と吸引工程を示す破断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る被加工物の搬出方法における搬出工程を示す破断面図である。
図9】チャックテーブルの別形態1を示す斜視図である。
図10】チャックテーブルの別形態2を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
[研削装置の構成]
まず、本発明に係る加工装置の一形態としての研削装置の構成を図1に基づいて説明すると、図1に示す研削装置1は、被加工物である円板状のウェーハW(図3参照)を研削加工するものであって、次の構成要素を備えている。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0013】
すなわち、研削装置1は、上面の円形の保持面11aでウェーハWを保持するチャックテーブル11を備える保持ユニット10と、該チャックテーブル11の保持面11aに吸引保持されたウェーハWを研削加工する加工ユニットである研削ユニット20と、該研削ユニット20をチャックテーブル11の保持面11aに対して垂直方向(Z軸方向)に上下動させる垂直移動機構30と、チャックテーブル11を保持面11aに対して水平方向(Y軸方向)に移動させる水平移動機構40と、ウェーハWを保持して搬送する搬送パッド50と、制御部70を主要な構成要素として備えている。
【0014】
ここで、ウェーハWは、単結晶のシリコン母材で構成されており、図3に示す状態において下方を向いている表面には、複数の不図示のデバイスが形成されており、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された不図示の保護テープによって保護されている。そして、ウェーハWは、その表面(図3においては下面)がチャックテーブル11の保持面11aに吸引保持され、裏面(図3においては上面)が研削ユニット20の研削砥石25bによって研削される。
【0015】
次に、研削装置1の主要な構成要素である保持ユニット10、研削ユニット20,垂直移動機構30、水平移動機構40、搬送パッド50及び制御部70の構成についてそれぞれ説明する。
【0016】
(保持ユニット)
保持ユニット10が備えるチャックテーブル11は、円板状の部材であって、その中央部には、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材11Aが組み込まれている。そして、ポーラス部材11Aは、その上面が円板状のウェーハWを吸引保持する保持面11aを構成しており、このポーラス部材11Aの径方向外側には、多孔質のリング状の吸引部材12がポーラス部材11Aを外側から囲繞するように配設されている。なお、吸引部材12の上面には、多数の吸引口12aが開口している。
【0017】
ここで、図3に示すように、チャックテーブル11の中心部には、ポーラス部材11Aに連通する1つの連通路13が垂直に形成されており、この連通路13には、1つの配管2が接続されている。また、チャックテーブル11の外周部には、吸引部材12に連通する複数の連通路14(図3には、2つのみ図示)が垂直に形成されており、これらの連通路14には、配管3がそれぞれ接続されている。
【0018】
そして、上記連通路13から延びる配管2からは3つの分岐管2a,2b,2cが分岐しており、分岐管2aは、流量調整弁(絞り弁)4と吸引バルブV1を介して吸引源5に接続され、分岐管2bは、流量調整弁6とエア噴出バルブV2を介してエア供給源7に接続され、分岐管2cは、流量調整弁8と水噴出バルブV3を介して水供給源9に接続されている。また、複数の連通路14からそれぞれ延びる配管3は、1つの合流管3aに合流しており、合流管3aは、吸引口吸引バルブV4を介して吸引源5に接続されている。ここで、吸引バルブV1とエア噴出バルブV2、水噴出バルブV3及び吸引口吸引バルブV4は、制御部70に電気的に接続されており、これらの開閉動作、つまり、保持面11aと吸引源5との連通または遮断、保持面11aとエア供給源7との連通または遮断、保持面11aと水供給源9との連通または遮断、吸引口12aと吸引源5との連通または遮断が制御部70によって制御される。
【0019】
ところで、チャックテーブル11は、不図示の回転機構によって垂直な中心軸回りに回転駆動される。ここで、本実施の形態に係る研削装置1は、図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース100を備えており、このベース100に開口するY軸方向に長い矩形の開口部100aにはチャックテーブル11が配置されている。そして、ベース100の上面に開口する開口部100aのチャックテーブル11の周囲は、矩形プレート状のカバー15によって覆われており、開口部100aのカバー15の前後(-Y方向と+Y方向)の部分は、カバー15と共に移動して伸縮する蛇腹状の伸縮カバー16,17によってそれぞれ覆われている。
【0020】
(研削ユニット)
研削ユニット20は、ホルダ21に固定されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回移転駆動される垂直なスピンドル23と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に取り付けられた加工具である複数の研削砥石25bによって構成されている。
【0021】
(垂直移動機構)
垂直移動機構30は、研削ユニット20をチャックテーブル11の保持面11aに対して垂直な方向(Z軸方向)に沿って昇降動させるものであって、図1に示すように、ベース100の上面の+Y軸方向端部(後端部)上に垂直に立設された矩形ボックス状のコラム101の-Y軸方向端面(前面)に配置されている。この垂直移動機構30は、ホルダ21の背面に取り付けられた矩形プレート状の昇降板31を、ホルダ21及び該ホルダ21に保持されたスピンドル23と研削ホイール25と共に左右一対のガイドレール32に沿ってZ軸方向に昇降動させるものである。ここで、左右一対のガイドレール32は、コラム101の前面に垂直且つ互いに平行に配設されている。
【0022】
また、左右一対のガイドレール32の間には、回転可能なボールネジ33がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ33の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ34に連結されている。ここで、サーボモータ34は、コラム101の上面に取り付けられた矩形プレート状のブラケット35を介して縦置き状態で取り付けられている。また、ボールネジ33の下端は、コラム101に回転可能に支持されており、このボールネジ33には、昇降板31の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。
【0023】
したがって、サーボモータ34を駆動してボールネジ33を正逆転させれば、このボールネジ33に螺合する不図示のナット部材が取り付けられた昇降板31が研削ユニット20と共にZ軸に沿って上下動する。
【0024】
(水平移動機構)
水平移動機構40は、チャックテーブル11を保持面11aに対して水平方向(Y軸方向)に移動させる機構であって、図1に示すように、ベース100の内部に収容された矩形ブロック状の内部ベース102の上に配設されている。この水平移動機構40は、ブロック状のスライダ41を備えており、このスライダ41は、Y軸方向(前後方向)に沿って互いに平行に配設された左右一対のガイドレール42に沿ってY軸方向に摺動可能である。したがって、このスライダ41に支持されたチャックテーブル11と不図示の回転機構は、スライダ41と共にY軸方向に沿って摺動可能である。
【0025】
そして、内部ベース102上の左右一対のガイドレール42の間には、Y軸方向(前後方向)に沿って延びる回転可能なボールネジ43が配設されており、該ボールネジ43のY軸方向一端(図1の左端)は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ44に連結されている。また、ボールネジ43のY軸方向他端(図1の右端)は、内部ベース102上に立設された軸受45によって回転可能に支持されている。そして、このボールネジ43には、スライダ41から下方に向かって突設された不図示のナット部材が螺合挿通している。
【0026】
したがって、サーボモータ44を起動してボールネジ43を正逆転させると、このボールネジ43に螺合挿通する不図示のナット部材がスライダ41と共にボールネジ43に沿ってY軸方向(前後方向)に摺動するため、このスライダ41と共にチャックテーブル11もY軸方向に沿って一体的に移動する。この結果、チャックテーブル11の保持面11aに吸引保持されたウェーハWもY軸方向に沿って移動する。
【0027】
(搬送パッド)
搬送パッド50は、ウェーハWを吸引保持してこれを搬送するものであって、図1に示すように、ベース100を貫通して垂直に起立する上下動可能なロッド51の上端から水平に延びるアーム52の先端に取り付けられている。具体的には、アーム52の先端には、円環状の支持リング53が取り付けられており、この支持リング53には、円板状の搬送パッド50が3本のピン54によって支持されている。なお、図3に示すように、各ピン54の外周であって、支持リング53と搬送パッド50との間にはスプリング55がそれぞれ縮装されている。
【0028】
ここで、搬送パッド50は、図3に示すように、円板状の枠体50Aと、該枠体50Aの中央部に組み込まれた円板状の吸引材50Bによって構成されている。ここで、枠体50Aの中心部には、支持リング53を貫通する配管56の一端が接続されており、該配管56の他端は、吸引源57に接続されている。そして、配管56の途中には、吸引バルブV5が接続されており、この吸引バルブV5は、制御部70に電気的に接続されている。したがって、吸引バルブV5の開閉動作、つまり、搬送パッド50の吸引材50Bと吸引源57との連通または遮断が制御部70によって制御される。
【0029】
そして、搬送パッド50は、図2に示す昇降機構60によって垂直方向(Z軸方向)に沿って昇降動可能であり、昇降機構60は、ボールネジ機構によって構成されている。すなわち、図2に示すように、垂直に起立する矩形平板状のプレート61には、前後一対のガイドレール62が垂直且つ互いに平行に取り付けられており、これらのガイドレール62には、昇降板63が上下動可能に嵌合保持されている。そして、昇降板63には、矩形のブロック64が取り付けられており、このブロック64には、ロッド51の下端が取り付けられている。
【0030】
また、前後一対のガイドレール62の間には、正逆転可能なボールネジ65が垂直に配置されており、このボールネジ65の下端は、回転駆動源であるサーボモータ66に連結されている。また、ボールネジ65の上端は、軸受67を介してプレート61に回転可能に支持されている。そして、図3に示すように、昇降板63の背面には、ナット部材68が突設されており、このナット部材68には、ボールネジ65が螺合挿通している。
【0031】
したがって、サーボモータ66を起動してボールネジ65を正逆転させると、このボールネジ65に螺合するナット部材68が突設された昇降板63がブロック64とロッド51と共に上下動するため、ロッド51にアーム52と支持リング53を介して支持された搬送パッド50がロッド51と共に上下動する。
【0032】
(制御部)
制御部70は、制御プログラムにしたがって演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶部などを備えている。この制御部70は、保持ユニット10、研削ユニット20、垂直移動機構30、水平移動機構40、搬送パッド50の昇降機構60などを制御するが、本発明に係るウェーハWの搬出方法においては、吸引バルブV1,V5、エア噴出バルブV2、水噴出バルブV3及び吸引口吸引バルブV4の開閉動作を制御する。なお、ウェーハWの搬出方法における吸引バルブV1,V5、エア噴出バルブV2、水噴出バルブV3及び吸引口吸引バルブV4の開閉動作の詳細については後述する。
【0033】
[研削装置の作用]
次に、以上のように構成された研削装置1を用いて実施されるウェーハWの研削加工について説明する。
【0034】
ウェーハWを研削加工する際には、該ウェーハWをチャックテーブル11の保持面11a上に保護テープを下にして載置する。そして、チャックテーブル11のポーラス部材11Aに接続されている吸引源5を駆動してポーラス部材11Aを真空引きする。すなわち、図3に示す吸引バルブV1を開くとともに、エア噴出バルブV2と水噴出バルブV3及び吸引口吸引バルブV4を閉じる。すると、ポーラス部材11A内のエアが連通路13と配管2、分岐管2a及び流量調整弁4を経て吸引源5によって吸引されるためにポーラス部材11Aに負圧が発生し、ポーラス部材11Aの上面(保持面11a)上に保護テープを介して載置されているウェーハWが負圧によって保持面11a上に吸引保持される。
【0035】
上記状態から水平移動機構40を駆動してチャックテーブル11を+Y軸方向(後方)に移動させ、該チャックテーブル11に吸引保持されているウェーハWを研削ユニット20の研削ホイール25の下方に位置決めする。そして、不図示の回転機構を駆動してチャックテーブル11を回転させ、該チャックテーブル11の保持面11aに保持されているウェーハWを所定の回転速度で回転させるとともに、スピンドルモータ22を起動して研削ホイール25を回転させておく。
【0036】
上述のように、ウェーハWと研削ホイール25が回転している状態で、垂直移動機構30を駆動して研削ホイール25を-Z軸方向に下降させる。すなわち、サーボモータ34が駆動されてボールネジ33が回転すると、このボールネジ33に螺合する不図示のナット部材が設けられた昇降板31が研削ユニット20と共に-Z軸方向に下降する。すると、研削ホイール25の研削砥石25bの下面(加工面)がウェーハWの上面(裏面)に接触する。このように、研削砥石25bの下面がウェーハWの上面に接触している状態から、研削ホイール25をさらに-Z軸方向に所定量だけ下降させると、ウェーハWの上面が研削砥石25bによって所定量だけ研削される。なお、ウェーハWの研削加工時においては、研削砥石25bとウェーハWとの接触部には、不図示の研削水供給源から研削水(純水)が供給される。
【0037】
而して、上述のように、ウェーハWの上面が所定量だけ研削されると、該ウェーハWがチャックテーブル11の保持面11aから離間し、この離間したウェーハWが搬送パッド50によってチャックテーブル11から搬出されるが、以下、本発明に係るウェーハWの搬出方法の実施形態について説明する。
【0038】
<第1実施形態>
以下、第1実施形態に係るウェーハWの搬出方法を図3図5にしたがって説明する。
【0039】
本実施形態においては、ウェーハWの外径がチャックテーブル11の保持面11aの外径と略同一である場合に、研削加工が終了したウェーハWを搬送パッド50によって吸引保持してこれをチャックテーブル11から搬出する工程について説明するが、ウェーハWは、1)搬送パッド下降工程、2)離間・吸引工程、3)搬出工程を順次経てチャックテーブル11から搬出される。以下、各工程について説明する。
【0040】
1) 搬送パッド下降工程:
搬送パッド下降工程においては、図3に示すように、昇降機構60によって搬送パッド50が下降してウェーハWの上方に位置決めされる。このとき、研削加工時と同様に、制御部70による制御によって吸引バルブV1のみが開かれ、他のエア噴出バルブV2、水噴出バルブV3、吸引口吸引バルブV4及び吸引バルブV5は、閉じられている。
【0041】
上述のように吸引バルブV1が開かれると、チャックテーブル11のポーラス部材11A内のエアが、図3に矢印にて示すように、チャックテーブル11の中心部に形成された連通路13と配管2及び分岐管2aを経て吸引源5によって吸引されるため、ポーラス部材11Aに負圧が発生し、この負圧に引かれてウェーハWがチャックテーブル11の保持面11aによって吸引保持される。
【0042】
2) 離間・吸引工程:
離間工程と吸引工程は、同時に実施され、ウェーハWをチャックテーブル11の保持面11aから離間させる場合には、図4に示すように、制御部70は、吸引バルブV1のみを閉じ、他のエア噴出バルブV2、水噴出バルブV3、吸引口吸引バルブV4及び吸引バルブV5を開く。すると、エア供給源7から供給されるエアが分岐管2bを経て配管2に流入するとともに、水供給源9から供給される水が分岐管2cを経て配管2に流入する。すると、配管2においてエアと水とが混合した混合流体(二流体)が形成され、この混合流体がチャックテーブル11の中心部に形成された連通路13を通ってポーラス部材11Aの保持面11aからウェーハWに向けて噴出する。すると、ウェーハWは、混合流体の圧力を下面に受けて浮上する。ここで、搬送パッド50の吸引材50Bは、吸引源57によって真空引きされているため、ウェーハWは、図4に示すように、吸引材50Bによって吸引保持され、該ウェーハWとチャックテーブル11の保持面11aとの間には隙間δが形成される。
【0043】
上記離間工程において、ウェーハWが離間して搬送パッド50の吸引材50Bに吸引保持され、該ウェーハWとチャックテーブル11の保持面11aとの間に隙間δが形成されると、研削加工時にチャックテーブル11のポーラス部材11Aに混入した研削屑を含む混合流体がウェーハWの下面に向けて噴出し、この混合流体は、ウェーハWの下面に衝突して該ウェーハWの径方向外へと向かって流れ、ウェーハWの外周から流出する。ここで、チャックテーブル11に設けられた吸引部材12は、吸引源5によって真空引きされている。つまり、吸引部材12内のエアは、図4に矢印にて示すように、チャックテーブル11の外周部に形成された複数の連通路14と、各連通路14に接続された配管3及び合流管3aを流れて吸引源5によって吸引され、吸引部材12に負圧が発生する。
【0044】
上述のように、チャックテーブル11に設けられた吸引部材12が吸引源5によって真空引きされると、ウェーハWの外周から流出する混合流体が吸引部材12の上面に開口する複数の吸引口12aから吸引される。このため、加工屑を含む混合流体がウェーハWの外周から噴出して該混合流体に含まれる加工屑がウェーハWの側面と上面を汚すことがない。この結果、研削屑を含む混合流体の飛散が防がれ、ウェーハWの洗浄を短時間で瞬時に行うことができる。
【0045】
3) 搬出工程:
上記離間・吸引工程において、研削屑を含む混合流体が吸引部材12によって吸引されてウェーハWから除去されると、次の搬出工程において、図5に示すように、昇降機構60が駆動されて搬送パッド50が上昇することによって、ウェーハWがチャックテーブル11から搬出される。なお、この場合、吸引バルブV1とエア噴出バルブV2及び水噴出バルブV3が閉じられ、吸引口吸引バルブV4と吸引バルブV5が開かれている。
【0046】
<第2実施形態>
ウェーハWの搬出方法の第2実施形態は、図6図8に示すように、チャックテーブル11の保持面11aの外径よりも大きな外径のウェーハWを搬出する方法であって、この搬出方法においても、前記第1実施形態と同様に、1)搬送パッド下降工程と、2)離間・吸引工程と、3)搬出工程が順次実施されるが、本実施形態においても、図6に示す搬送パッド下降工程と図8に示す搬出工程は、前記第1実施形態における搬送パッド下降工程(図3参照)と搬出工程(図5参照)と同じであるため、これらについての再度の説明は省略し、以下、離間・吸引工程のみを図7にしたがって説明する。
【0047】
本実施形態における離間・吸引工程においては、ウェーハWの外径がチャックテーブル11の保持面11aの外径よりも大きく、該ウェーハWの外周部が保持面11aの外周から径方向外方へとリング状にはみ出している。この場合においても、チャックテーブル11の保持面11aから噴出する混合流体は、ウェーハWの下面に圧力を及ぼすためにウェーハWが保持面11aから上方に離間し、該ウェーハWの上面と搬送パッド50の下面との間には図示の隙間δが形成される。
【0048】
上述のように、ウェーハWの上面と搬送パッド50の下面との間に図示の隙間δが形成され、研削加工時にチャックテーブル11のポーラス部材11Aに混入した研削屑を含む混合流体がウェーハWの下面に向けて噴出すると、この混合流体は、ウェーハWの下面に衝突して隙間δをウェーハWの径方向外方に向かって流れ、ウェーハWの外周から流出する。ここで、前述のように、ウェーハWの外周部がチャックテーブル11の保持面11aの外周から径方向外方へとリング状にはみ出して吸引部材12の一部を上方から覆うため、吸引部材12が吸引源5によって真空引きされると、ウェーハWの外周から流出する混合流体は、ウェーハWの側面から上面へと回り込むことがなく、吸引部材12に開口する複数の吸引口12aから吸引される。したがって、研削屑を含む混合流体の飛散が一層効果的に防がれ、ウェーハWの洗浄を短時間で瞬時に行うことができる。なお、図6図8においては、図3図5において示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0049】
なお、以上の実施形態では、チャックテーブル11の保持面11aの径方向外側に多孔質の吸引部材12を配置し、この吸引部材12の上面に開口する複数の吸引口12aから混合流体を吸引する構成を採用したが、図9に示すように、チャックテーブル11の保持面11aの外周上面に円孔状の複数の吸引口12aを同一円周上に周方向に等角度ピッチで開口させる構成を採用してもよい。この場合、複数の吸引口12aは、内外二重の円周上に2列に亘って同心状に形成してもよい。
【0050】
また、図10に示すように、チャックテーブル11の保持面11aの外周上面にリング状の溝12Aを形成し、この溝12Aに複数の吸引口12aを開口させる構成を採用してもよい。
【0051】
ところで、以上は本発明を加工装置の一形態としての研削装置1と、この研削装置1におけるウェーハWの搬出方法に適用した実施形態について説明したが、本発明は、研削装置以外の研磨装置や切削装置などの他の任意の加工装置と該加工装置におけるウェーハ、或いはウェーハ以外の任意の被加工物の搬出方法に対しても同様に適用可能である。
【0052】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1:研削装置(加工装置)、2:配管、2a,2b,2c:分岐管、3:配管、
3a:合流管、4:流量調整弁、5:吸引源、6:流量調整弁、7エア供給源、
8:流量調整弁、9:水供給源、10:保持ユニット、11:チャックテーブル、
11A:ポーラス部材、11a:保持面、12:吸引部材、12A:溝、
12a:吸引口、13,14:連通路、15:カバー、16,17:伸縮カバー、
20:研削ユニット(加工ユニット)、21:ホルダ、22:スピンドルモータ、
23:スピンドル、24:マウント、25:研削ホイール、25a:基台、
25b:研削砥石、30:垂直移動機構、31:昇降板、32:ガイドレール、
33:ボールネジ、34:サーボモータ、35:ブラケット、40:水平移動機構、
41:スライダ、42:ガイドレール、43:ボールネジ、44:サーボモータ、
45:軸受、50:搬送パッド、50A:枠体、50B:吸引材、51:ロッド、
52:アーム、53:支持リング、54:ピン、55:スプリング、56:配管、
57:吸引源、60:昇降機構、61:プレート、62:ガイドレール、63:昇降板、
64:ブロック、65:ボールネジ、66:サーボモータ、67:軸受、
68:ナット部材、70:制御部、V1:吸引バルブ、
V2:エア噴出バルブ(流体噴出バルブ)、V3:水噴出バルブ(流体噴出バルブ)、
V4:吸引口吸引バルブ、V5:吸引バルブ、W:ウェーハ(被加工物)
δ:ウェーハと搬送パッドとの隙間
図1
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図10