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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136991
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】液晶性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/82 20060101AFI20240927BHJP
   C08G 63/60 20060101ALI20240927BHJP
   C08G 69/44 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08G63/82
C08G63/60
C08G69/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048319
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長谷 一輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 真司
(72)【発明者】
【氏名】西山 寛樹
【テーマコード(参考)】
4J001
4J029
【Fターム(参考)】
4J001DA03
4J001DB04
4J001DC03
4J001DC16
4J001EB37
4J001EC14
4J001EC46
4J001EE04D
4J001EE09D
4J001EE36A
4J001EE42A
4J001EE46A
4J001FB03
4J001FC03
4J001GA12
4J001JA01
4J001JB11
4J029AA05
4J029AB05
4J029AC02
4J029AD09
4J029AE01
4J029BB04A
4J029BB05A
4J029BB10A
4J029BB12A
4J029BB13A
4J029BC06A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CB10A
4J029CC06A
4J029CD03
4J029EB04A
4J029EB05A
4J029EB08
4J029EC05A
4J029EC06A
4J029HA01
4J029HB01
4J029JA061
4J029JA091
4J029JA121
4J029JA171
4J029JF021
4J029JF031
4J029JF041
4J029JF051
4J029JF131
4J029JF141
4J029JF151
4J029JF161
4J029JF261
4J029JF271
4J029JF281
4J029JF291
4J029KE03
4J029KE05
(57)【要約】
【課題】従来よりも反応速度が向上した液晶性樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選択される1以上を含む原料モノマーを、周期表第3族から選択される1以上の金属原子(a)を含む少なくとも一つの第1金属化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)を含む少なくとも一つの第2金属化合物と、の存在下で重縮合反応させることを含む、液晶性樹脂の製造方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選択される1以上を含む原料モノマーを、周期表第3族から選択される1以上の金属原子(a)を含む少なくとも一つの第1金属化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)を含む少なくとも一つの第2金属化合物と、の存在下で重縮合反応させることを含む、液晶性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記重縮合反応させることの前に、前記原料モノマーを、周期表第3族から選択される1以上の金属原子(a)を含む少なくとも一つの第1金属化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)を含む少なくとも一つの第2金属化合物と、の存在下でアシル化させることを含む、請求項1に記載の液晶性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記重縮合反応させることで得られた反応生成物を、周期表第3族から選択される1以上の金属原子(a)を含む少なくとも一つの第1金属化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)を含む少なくとも一つの第2金属化合物と、の存在下で固相重合させることを含む、請求項1又は2に記載の液晶性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記第1金属化合物が、前記金属原子(a)の、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物及び塩化物からなる群より選択される1以上を含む、請求項1又は2に記載の液晶性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記第2金属化合物が、前記金属原子(b)の、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物及び塩化物からなる群より選択される1以上を含む、請求項1又は2に記載の液晶性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性ポリエステル樹脂及び液晶性ポリエステルアミド樹脂に代表される液晶性樹脂は、優れた流動性、機械強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等をバランス良く有するため、高機能エンジニアリングプラスチックスとして好適に広く利用されている。
液晶性樹脂の製造方法として、原料モノマーを溶融重合させ必要に応じてさらに固相重合させることによって液晶性樹脂を得る方法や、原料モノマーを溶融重合させてオリゴマーを生成させた後にオリゴマーを固相重合させることによって液晶性樹脂を得る方法が知られている。例えば、特許文献1には、プレポリマー溶融重合と固相重合の2段重合によって液晶性ポリエステルを得る方法が提案されている。溶融重合させる前に、必要に応じて、原料モノマーが有するフェノール性水酸基やアミノ基をアシル化させることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-139674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原料モノマーのアシル化や、溶融重合、及びその後の固相重合において反応速度が遅いと生産性が低下してしまう。
【0005】
本開示は、従来よりも反応速度が向上した液晶性樹脂の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を有する。
[1]芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選択される1以上を含む原料モノマーを、周期表第3族から選択される1以上の金属原子(a)を含む少なくとも一つの第1金属化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)を含む少なくとも一つの第2金属化合物と、の存在下で重縮合反応させることを含む、液晶性樹脂の製造方法。
[2]前記重縮合反応させることの前に、前記原料モノマーを、周期表第3族から選択される1以上の金属原子(a)を含む少なくとも一つの第1金属化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)を含む少なくとも一つの第2金属化合物と、の存在下でアシル化させることを含む、[1]に記載の液晶性樹脂の製造方法。
[3]前記重縮合反応させることで得られた反応生成物を、周期表第3族から選択される1以上の金属原子(a)を含む少なくとも一つの第1金属化合物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)を含む少なくとも一つの第2金属化合物と、の存在下で固相重合させることを含む、[1]又は[2]に記載の液晶性樹脂の製造方法。
[4]前記第1金属化合物が、前記金属原子(a)の、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物及び塩化物からなる群より選択される1以上を含む、[1]から[3]のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法。
[5]前記第2金属化合物が、前記金属原子(b)の、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物及び塩化物からなる群より選択される1以上を含む、[1]から[4]のいずれかに記載の液晶性樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、従来よりも反応速度が向上した液晶性樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について詳細に説明するが、本開示の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。また、特定のパラメータについて、複数の数値範囲が記載されている場合、これらに記載されている任意の数値を組合せて好適な数値範囲とすることができる。また、本開示に記載されている数値範囲の下限値及び/又は上限値は、その数値範囲内の数値であって、実施例で示されている数値に置き換えてもよい。数値範囲を示す「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。
【0009】
[液晶性樹脂の製造方法]
本実施形態に係る液晶性樹脂の製造方法は、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選択される1以上を含む原料モノマー(以下、単に「原料モノマー」ともいう)を、周期表第3族から選択される1以上の金属原子(a)(以下、単に「金属原子(a)」ともいう)を含む少なくとも一つの第1金属化合物(以下、単に「第1金属化合物」ともいう)と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)(以下、単に「金属原子(b)」ともいう)を含む少なくとも一つの第2金属化合物(以下、単に「第2金属化合物」ともいう)と、の存在下で重縮合反応させることを含む。第1金属化合物と第2金属化合物との存在下で原料モノマーを重縮合反応させることにより、所定の最終トルクに到達する時間を従来よりも短くすることができる。その結果、重縮合反応速度を高めることができる。
【0010】
「液晶性」とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有することをいう。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。液晶性を有する樹脂は、直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0011】
<原料モノマー>
原料モノマーは、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる1以上の化合物を含む。本開示において、「重合可能な誘導体」とは、分子構造の一部が変化した化合物のうち溶融重合により重合され得る化合物のことを意味している。例えば、アシル化剤によりフェノール性水酸基及び/又はアミノ基をアシル化したアシル化物、芳香族炭化水素基の1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化物、ハロゲン化剤によりカルボキシル基をハロゲン化した酸ハライド、酸無水物、アルキルエステル(炭素数1~4程度)等が挙げられる。
【0012】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体としては、特に限定されず、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-4-ナフトエ酸、4-ヒドロキシ-4’-カルボキシジフェニルエーテル、2,6-ジクロロ-p-ヒドロキシ安息香酸、2-クロロ-p-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ジメチル-p-ヒドロキシ安息香酸、2,6-ジフルオロ-p-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸、バニリン酸等を挙げることができる。これらから選択される少なくとも1種の化合物を用いることができる。中でも、入手の容易さの点で、4-ヒドロキシ安息香酸及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0013】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体の含有量は、原料モノマーの総量に対して、好ましくは40~70モル%であり、より好ましくは55~65モル%である。
【0014】
一実施形態において、原料モノマーの1以上は、フェノール性水酸基及び/又はアミノ基がアシル化剤でアシル化されたアシル化物であり得る。アシル化反応については後述する。
【0015】
原料モノマーは、さらに、以下の(1)又は(2)を満たすことが好ましい。
(1)芳香族若しくは脂環族ジカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、又は、
(2)芳香族若しくは脂環族ジカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、芳香族若しくは脂環族ジオール、芳香族若しくは脂環族ヒドロキシアミン、芳香族若しくは脂環族ジアミン、及びこれらの重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む。
【0016】
芳香族ジカルボン酸としては、特に限定されず、例えば、テレフタル酸(TA)、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、及び下記一般式(I)で表される化合物等を挙げることができる。
一般式(I):
(Y:-(CH-(n=1~4)及び-O(CHO-(n=1~4)より選ばれる基である。)
【0017】
脂環族ジカルボン酸としては、特に限定されず、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等を挙げることができる。重合可能な誘導体としては、特に限定されず、例えば、上記化合物のアルキルエステル(炭素数1~4程度)、ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0018】
芳香族若しくは脂環族ジカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の総含有量は、原料モノマーの総量に対して、好ましくは5~50モル%であり、より好ましくは15~25モル%である。
【0019】
芳香族ジオールとしては、特に限定されず、例えば、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP)、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(II)で表される化合物、及び下記一般式(III)で表される化合物等を挙げることができる。
【0020】
一般式(II):
(X:アルキレン(C~C)、アルキリデン、-O-、-SO-、-SO-、-S-、及び-CO-より選ばれる基である。)
【0021】
一般式(III):
【0022】
脂環族ジオールとしては、特に限定されず、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール等を挙げることができる。重合可能な誘導体としては、特に限定されず、上記化合物のアルキルエステル(炭素数1~4程度)、ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0023】
芳香族ヒドロキシアミンとしては、特に限定されず、例えば、N-アセチル-p-アミノフェノール(APAP)、4-アミノフェノール、3-アミノフェノール等を挙げることができる。脂環族ヒドロキシアミンとしては、特に限定されず、例えば、4-アミノシクロヘキサノール、3-アミノシクロペンタノール等を挙げることができる。重合可能な誘導体としては、特に限定されず、上記化合物のアルキルエステル(炭素数1~4程度)、ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0024】
芳香族ジアミンとしては、1,4-フェニレンジアミン等を挙げることができる。脂環族ジアミンとしては、特に限定されず、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロペンタンジアミン等を挙げることができる。重合可能な誘導体としては、特に限定されず、上記化合物のアルキルエステル(炭素数1~4程度)、ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0025】
芳香族若しくは脂環族ジオール、芳香族若しくは脂環族ヒドロキシアミン、芳香族若しくは脂環族ジアミン、及びこれらの重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の総含有量は、原料モノマーの総量に対して、好ましくは5~50モル%であり、より好ましくは15~25モル%である。
【0026】
原料モノマーの具体的な組み合わせとしては、例えば、
(I)(Ia)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む(好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物のみからなる);
(II)(IIa)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、(IIb)芳香族若しくは脂環族ジカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、(IIc)芳香族若しくは脂環族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの重合可能な誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む(好ましくは、上記化合物(IIa)と化合物(IIb)と化合物(IIc)とのみからなる);
から選ばれる組み合わせとすることができる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0027】
<第1金属化合物>
第1金属化合物は、周期表第3族から選択される1以上の金属原子(a)を含む。第1金属化合物は、1種であってよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
金属原子(a)としては、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド系原子(ランタン、セリウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、イッテルビウム、ルテチウム)等が挙げられる。
【0029】
一実施形態において、第1金属化合物は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、イッテルビウム、ルテチウムから選択される1以上の金属原子(a)を含むことが好ましく、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、イッテルビウムから選択される1以上の金属原子(a)を含むことがより好ましく、ランタン、セリウム、サマリウムから選択される1以上の金属原子(a)を含むことがさらに好ましい。一実施形態において、第1金属化合物は、ランタンを含むことができる。
【0030】
一実施形態において、第1金属化合物は、上記金属原子(a)の、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物及び塩化物からなる群より選択される1以上を含むことが好ましく、上記金属原子(a)の酢酸塩及び酸化物からなる群より選択される1以上を含むことがより好ましい。水和物を生じる化合物の場合、無水物であってよく、水和物であってもよい。
【0031】
金属原子(a)の酢酸塩としては、酢酸スカンジウム、酢酸イットリウム;酢酸ランタン、酢酸セリウム、酢酸サマリウム、酢酸ユウロピウム、酢酸ガドリニウム、酢酸テルビウム、酢酸イッテルビウム、酢酸ルテチウム等が挙げられる。
金属原子(a)の炭酸塩としては、炭酸スカンジウム、炭酸イットリウム;炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸サマリウム、炭酸ユウロピウム、炭酸ガドリニウム、炭酸テルビウム、炭酸イッテルビウム、炭酸ルテチウム等が挙げられる。
金属原子(a)の酸化物としては、酸化スカンジウム、酸化イットリウム;酸化ランタン、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化テルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等が挙げられる。
金属原子(a)の水酸化物としては、水酸化スカンジウム、水酸化イットリウム;水酸化ランタン、水酸化セリウム、水酸化サマリウム、水酸化イッテルビウム、水酸化ルテチウム等が挙げられる。
金属原子(a)の塩化物としては、塩化スカンジウム、塩化イットリウム;塩化ランタン、塩化セリウム、塩化サマリウム、塩化テルビウム、塩化ジスプロシウム、塩化イッテルビウム、塩化ルテチウム等が挙げられる。
【0032】
第1金属化合物の使用量は、原料モノマーの総量に対して、0.001~0.2mol%であることが好ましく、0.005~0.05mol%であることがより好ましく、0.005~0.01mol%であることがさらに好ましい。
【0033】
<第2金属化合物>
第2金属化合物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びマグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)を含む。第2金属化合物は、1種であってよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】
金属原子(b)としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等のアルカリ金属原子;カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等のアルカリ土類金属;及びマグネシウムが挙げられる。
一実施形態において、金属原子(b)は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウムからなる群より選択される1以上であることが好ましく、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウムからなる群より選択される1以上であることがより好ましく、カリウム、セシウムからなる群より選択される1以上であることがさらに好ましい。一実施形態において、第2金属化合物は、カリウムを含むことができる。別の実施形態において、第2金属化合物は、セシウムを含むことができる。
【0035】
一実施形態において、第2金属化合物は、上記金属原子(b)の、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物及び塩化物からなる群より選択される1以上を含むことが好ましく、上記金属原子(b)の酢酸塩及び炭酸塩からなる群より選択される1以上を含むことがより好ましい。水和物を生じる化合物の場合、無水物であってよく、水和物であってもよい。
【0036】
金属原子(b)の酢酸塩としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム;酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、;酢酸マグネシウム等が挙げられる。
金属原子(b)の炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム;炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸ラジウム;炭酸マグネシウム等が挙げられる。
金属原子(b)の酸化物としては、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム;酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム;酸化マグネシウム等が挙げられる。
金属原子(b)の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウム;水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ラジウム;水酸化マグネシウム等が挙げられる。
金属原子(b)の塩化物としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム;塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化ラジウム;塩化マグネシウム等が挙げられる。
【0037】
第2金属化合物の使用量は、原料モノマーの総量に対して、0.001~0.2mol%であることが好ましく、0.005~0.05mol%であることがより好ましく、0.005~0.01mol%であることがさらに好ましい。
【0038】
<第1金属化合物及び第2金属化合物の組み合わせ>
第1金属化合物及び第2金属化合物の組み合わせは、限定されず、周期表第3族から選択される1以上の金属原子を含む第1金属化合物と、アルカリ金属を含む第2金属化合物との組み合わせ;周期表第3族から選択される1以上の金属原子を含む第1金属化合物と、アルカリ土類金属を含む第2金属化合物との組み合わせ;周期表第3族から選択される1以上の金属原子を含む第1金属化合物と、マグネシウムを含む第2金属化合物との組み合わせ;のいずれであってもよく、任意の1以上の第1金属化合物と、任意の1以上の第2金属化合物とを組み合わせることができる。
第1金属化合物及び第2金属化合物の具体的な組み合わせの例は、限定されないが、好ましくは、第1金属化合物が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、イッテルビウム、ルテチウムから選択される1以上の金属原子(a)を含み、第2金属化合物が、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウムからなる群より選択される1以上の金属原子(b)を含む。これらから選択される1以上の第1金属化合物と1以上の第2金属化合物とを組み合わせることができる。
一実施形態において、第1金属化合物が、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、サマリウム、イッテルビウムから選択される1以上の金属原子(a)を含み、第2金属化合物が、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウムからなる群より選択される1以上金属原子(b)を含むこと好ましい。これらから選択される1以上の第1金属化合物と1以上の第2金属化合物とを組み合わせることができる。
【0039】
一実施形態において、第1金属化合物がランタンを含み、第2金属化合物がカリウム及び/又はセシウムを含むように構成することができる。
一実施形態において、第1金属化合物がランタンの、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物又は塩化物を含み、第2金属化合物がカリウム及び/又はセシウムの、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物又は塩化物を含むように構成することができる。
一実施形態において、第1金属化合物が酢酸ランタン及び酸化ランタンから選択される1以上を含み、第2金属化合物が酢酸カリウム、酢酸セシウム、及び炭酸セシウムから選択される1以上を含むように構成することができる。
【0040】
第1金属化合物及び第2金属化合物の総使用量は、原料モノマーの総量に対して、0.002~0.4mol%であることが好ましく、0.01~0.1mol%であることがより好ましく、0.01~0.02mol%であることがさらに好ましい。
第1金属化合物及び第2金属化合物の使用量の比(第1金属化合物の使用量/第2金属化合物の使用量)は、0.1~10であることが好ましく、0.5~5であることがより好ましく、0.8~1.2であることがさらに好ましく、0.9~1.1であることが特に好ましい。
【0041】
<重縮合反応工程(溶融重合工程)>
重縮合反応工程において、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体からなる群から選択される1以上を含む原料モノマーを重縮合反応させる。重縮合反応は、溶融重合によって行われる。原料モノマーを重縮合反応させることにより液晶性樹脂を得る。
【0042】
重縮合温度は、例えば200~400℃とすることが好ましく、240~380℃とすることがより好ましい。重縮合反応時間は、2~12時間とすることが好ましく、3~10時間とすることがより好ましく、4~7時間であることがさらに好ましい。
【0043】
一実施形態において、重縮合反応は、反応系内が所定温度に達した後、減圧を開始して所定の減圧度にして行うことが好ましい。一実施形態において、重縮合反応させることは、10000~133Pa(好ましくは5000~1330Pa)の減圧下で重縮合反応させることが好ましい。別の実施形態において、重縮合反応は、常圧下(1.013×10Pa)で行われてもよい。重縮合反応が常圧下で行われる場合は、原料モノマーのオリゴマー(重量平均分子量が50,000未満)が得られる。
【0044】
重縮合反応により得られた液晶性樹脂は、さらに、固相重合により分子量の増加を図ることができる。固相重合については、後述する。
【0045】
重縮合反応工程に得られる液晶性樹脂は、重量平均分子量が50,000以上であることが好ましく、70,000以上であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて分析して算出した値とする。
【0046】
<アシル化工程>
一実施形態において、液晶性樹脂の製造方法は、上記重縮合反応させることの前に、原料モノマーを、上記第1金属化合物と、上記第2金属化合物と、の存在下でアシル化させることを含んでいてよい。第1金属化合物及び第2金属化合物については、上記のとおりである。第1金属化合物及び第2金属化合物の存在下で原料モノマーをアシル化させることにより、従来の方法よりも短時間でアシル化率を高めることができる。その結果、従来よりも反応速度が向上した液晶性樹脂の製造方法にすることができる。
【0047】
アシル化工程で用いる第1金属化合物及び第2金属化合物は、重縮合反応工程で用いる第1金属化合物及び第2金属化合物と同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。一実施形態において、アシル化工程に引き続き重縮合反応工程を行う場合は、アシル化工程で使用する第1金属化合物及び第2金属化合物を、引き続き重縮合反応工程において使用することができる。
【0048】
アシル化剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2-エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β-ブロモプロピオン酸等が挙げられるが、特に限定されない。これらから選択される少なくとも1種を用いることができる。価格と取り扱い性の観点から好適なものとしては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸等の無水カルボン酸等を挙げることができる。中でも、入手の容易さの点で、無水酢酸が好ましい。アシル化剤の使用量は、反応制御の容易さの点で、反応に用いる物質の水酸基総量中、1.0~1.1当量であることが好ましく、1.01~1.05当量であることがより好ましい。
【0049】
アシル化は、公知の方法により行うことができる。例えば、原料モノマーを、アシル化剤と混合し、120~160℃の温度範囲で、0.5~5時間程度加熱してアシル化反応させ、アシル化物を含む反応生成物を得る。
【0050】
<固相重合工程>
一実施形態において、液晶性樹脂の製造方法は、重縮合反応させることで得られた反応生成物を、上記第1金属化合物と、上記第2金属化合物と、の存在下で固相重合させることを含んでいてよい。固相重合により、原料樹脂の分子量の増加を図ることができ、強度や耐熱性に優れた液晶性樹脂を得ることができる。第1金属化合物及び第2金属化合物については、上記のとおりである。第1金属化合物及び第2金属化合物の存在下で固相重合させることにより、短い時間で分子量を増加させることができる。その結果、従来の方法よりも固相重合速度を高めることができる。
【0051】
上記の重縮合反応させることで得られた反応生成物は、第1金属化合物及び第2金属化合物を含んでいる。よって、固相重合工程で用いる第1金属化合物及び第2金属化合物は、重縮合反応工程で用いる第1金属化合物及び第2金属化合物と同じ種類であり得る。
【0052】
固相重合は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、減圧又は真空下、窒素ガス等の不活性ガス気流中で、原料樹脂(重縮合工程において得られた樹脂)の液晶形成温度よりも10~120℃低い温度で加熱することにより行うことができる。なお、液晶性樹脂は固相重合が進むにしたがってその融点も上昇するので、原料樹脂の元の融点以上で固相重合することも可能である。固相重合は、一定の温度で実施してもよいし段階的に高温にしてもよい。加熱方法は、特に限定されず、マイクロ波加熱、ヒータ加熱等を用いることができる。
【0053】
[液晶性樹脂]
本実施形態に係る液晶性樹脂の製造方法によって得られる液晶性樹脂は、液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。液晶性ポリエステル及び液晶性ポリエステルアミドとしては、特に限定されないが、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。また、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルとすることもできる。一実施形態において、得られる液晶性樹脂は、全芳香族ポリエステル及び全芳香族ポリエステルアミドから選択される1以上を含むことが好ましい。「全芳香族」とは、全ての原料モノマーが芳香環を有することを意味している。
【0054】
芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドとしては、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその重合可能な誘導体に由来する構成単位を少なくとも含み、より具体的には、
(1)主として(1a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として(2a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(2b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上とからなるポリエステル;
(3)主として(3a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(3b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(3c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(4)主として(4a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(4c1)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(4c2)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(5)主として(5a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(5b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(5c1)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(5c2)芳香族ジオール、脂環族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド等、を挙げることができる。
【0055】
液晶性樹脂の分子量(重量平均分子量Mw)は、特に限定されず、重縮合反応(溶融重合)工程で得られた樹脂としては、50,000~500,000であることが好ましく、75,000~400,000であることがより好ましい。固相重合工程で得られた樹脂としては、60,000~600,000であることが好ましく、75,000~500,000であることがより好ましい。なお、重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて分析して算出することができる。
【0056】
液晶性樹脂の融点は、特に限定されず、250~380℃とすることができる。液晶性樹脂の溶融粘度は、特に限定されず、重縮合反応(溶融重合)工程で得られた樹脂としては、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1000sec-1で測定した溶融粘度が、5Pa・s以上150Pa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは、10Pa・s以上100Pa・s以下である。さらに固相重合工程を行った場合の樹脂は、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1000sec-1で測定した溶融粘度が、5Pa・s以上200Pa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは、10Pa・s以上150Pa・s以下である。「液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高いシリンダー温度」とは、液晶性樹脂が溶融粘度の測定が可能な程度まで溶融することができるシリンダー温度を意味しており、融点よりも何℃高いシリンダー温度とするかは、10~30℃の範囲で原料樹脂の種類によって異なる。液晶性樹脂は、粉粒体混合物の形態とすることができ、ペレット等の溶融混合物(溶融混練物)の形態とすることもできる。本開示において、溶融粘度とは、ISO11443に準拠して測定した溶融粘度をいう。
【実施例0057】
以下に実施例を示して本開示を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本開示の解釈が限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で3時間反応させた(アシル化反応)。アシル化率(アセチル化率)を以下のように算出した。結果を表1に示す。
【0059】
[アシル化(アセチル化)率]
アシル化反応後にサンプリングした試料10mgを0.5mLのDMSO-dに溶解させた。得られた溶液を核磁気共鳴装置(Bruker社製AVANCEIII400)を用いてH-NMR測定を行い、未反応モノマーの芳香環3位プロトン並びにアシル化(アセチル化)モノマーの芳香環3位プロトンの積分値を取得し、以下の式にてアシル化(アセチル化)率を算出した。
アセチル化率=[(アセチル化モノマーのプロトン積分値)/((未反応モノマーのプロトン積分値)+(アセチル化モノマーのプロトン積分値))]×100
その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った(重縮合工程)。
撹拌トルクが所定の値(0.7V)に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。その後、ストランドをペレタイズして液晶性樹脂ペレットを得た。減圧開始から撹拌トルクが所定の値(0.7V)に達するまでに要した時間(最終トルク到達時間)を測定した。結果を表1に示す。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を以下のように算出したところ、131,000であった(プレポリマー)。
(原料)
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA):188.3g(60モル%)
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA):21.4g(5モル%)
テレフタル酸(TA):66.0g(17.5モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP):52.9g(12.5モル%)
N-アセチル-p-アミノフェノール(APAP):17.2g(5モル%)
酢酸ランタン・1.5水和物(La(OAc)・1.5HO):51.5mg(0.0068mol%)
酢酸カリウム(KOAc):14.7mg(0.0068mol%)
アシル化剤(無水酢酸):226.9g
【0060】
[重量平均分子量(Mw)]
得られた液晶性樹脂について、溶媒として3,5-ビストリフルオロメチルフェノールを用いて常温で6時間攪拌して溶解させた。この溶液をゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー(株)製、「HLC-8320GPC」、示差屈折計検出器)を用いて分析し、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0061】
得られた液晶性樹脂ペレット(プレポリマー)を、以下のようにして固相重合した。
窒素導入口/流出口を備えた固相重合容器に、上記において得られた液晶性樹脂ペレット(プレポリマー)を10g仕込み、窒素雰囲気下にした。反応系を295℃まで昇温し、そこから2時間反応させた(固相重合工程)。その後、常温まで降温し液晶性樹脂ペレットを取り出した。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を算出したところ、172,000であった。
以下のようにして固相重合速度を算出した。結果を表1に示す。
[固相重合速度]
固相重合前後に得られた液晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)の差を固相重合時間で除した値を固相重合速度として算出した。
得られた液晶性樹脂のせん断速度1000sec-1、シリンダー温度350℃において測定した溶融粘度は、23Pa・sであった。
【0062】
[実施例2]
酢酸カリウムに替えて酢酸セシウム(CsOAc)を28.8mg(0.0068mol%)用いた以外は、実施例1と同じ方法で液晶性樹脂ペレットを得た。実施例1と同じ方法で、アシル化率(アセチル化率)を算出するとともに、最終トルク到達時間を測定した。結果を表1に示す。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を算出したところ、129,000であった(プレポリマー)。
得られた液晶性樹脂ペレット(プレポリマー)を、実施例1と同じ方法で固相重合し、液晶性樹脂ペレットを得た。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を算出したところ、242,000であった。実施例1と同じ方法で固相重合速度を算出した。結果を表1に示す。
得られた液晶性樹脂のせん断速度1000sec-1、シリンダー温度350℃において測定した溶融粘度は、21Pa・sであった。
【0063】
[実施例3]
酢酸ランタンに替えて酸化ランタン(La)を48.9mg(0.0068mol%)用い、酢酸カリウムに替えて炭酸セシウム(CsCO)を48.9mg(0.0068mol%)用いた以外は、実施例1と同じ方法で液晶性樹脂ペレットを得た。実施例1と同じ方法で、アシル化率(アセチル化率)を算出するとともに、最終トルク到達時間を測定した。結果を表1に示す。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を算出したところ、123,000であった(プレポリマー)。
得られた液晶性樹脂ペレット(プレポリマー)を、実施例1と同じ方法で固相重合し、液晶性樹脂ペレットを得た。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を算出したところ、185,000であった。実施例1と同じ方法で固相重合速度を算出した。結果を表1に示す。
得られた液晶性樹脂のせん断速度1000sec-1、シリンダー温度350℃において測定した溶融粘度は、24Pa・sであった。
【0064】
[比較例1]
第1金属化合物、第2金属化合物及びその他の触媒を用いないこと以外は、実施例1と同じ方法で液晶性樹脂ペレットを得た。実施例1と同じ方法で、アシル化率(アセチル化率)を算出するとともに、最終トルク到達時間を測定した。結果を表1に示す。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を算出したところ、129,000であった(プレポリマー)。
得られた液晶性樹脂ペレット(プレポリマー)を、実施例1と同じ方法で固相重合し、液晶性樹脂ペレットを得た。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を算出したところ、159,000であった。実施例1と同じ方法で固相重合速度を算出した。結果を表1に示す。
得られた液晶性樹脂のせん断速度1000sec-1、シリンダー温度350℃において測定した溶融粘度は、20Pa・sであった。
【0065】
[比較例2]
酢酸ランタン・1.5水和物51.5mg(0.0068mol%)のみを用い、酢酸カリウムを用いないこと以外は、実施例1と同じ方法で液晶性樹脂ペレットを得た実施例1と同じ方法で、アシル化率(アセチル化率)を算出するとともに、最終トルク到達時間を測定した。結果を表1に示す。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を算出したところ、133,000であった(プレポリマー)。
得られた液晶性樹脂ペレット(プレポリマー)を、実施例1と同じ方法で固相重合し、液晶性樹脂ペレットを得た。得られた液晶性樹脂ペレットの重量平均分子量(Mw)を算出したところ、151,000であった。実施例1と同じ方法で固相重合速度を算出した。結果を表1に示す。
得られた液晶性樹脂のせん断速度1000sec-1、シリンダー温度350℃において測定した溶融粘度は、20Pa・sであった。
【0066】
【表1】
【0067】
表1の実施例1~3に示すように、第1金属化合物及び第2金属化合物の存在下で原料モノマーを重縮合させることにより、比較例1、2よりも重縮合反応において最終トルクに到達する時間を短縮することができ、重縮合反応速度を高めることができる。また、比較例1、2よりもアシル化率を高めることができる。さらに、比較例1、2よりも固相重合速度を速めることができる。
比較例2に示すように、第1金属化合物及び第2金属化合物のどちらか一方のみである場合は、従来の方法(比較例1)よりも重縮合反応において最終トルクに到達する時間がむしろ長くなってしまうとともに、固相重合速度も低下してしまう。比較例2において、従来の方法(比較例1)よりもアシル化率を高めることができるが、実施例1~3よりも低い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本実施形態の液晶性樹脂の製造方法は、従来よりも反応速度が向上するので、効率的に液晶性樹脂を製造することができ、産業上の利用可能性を有している。