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特開2024-137175多軸レーザ干渉測長器を用いた測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137175
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】多軸レーザ干渉測長器を用いた測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01B11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048590
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永井 真人
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA07
2F065AA09
2F065FF51
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ02
2F065JJ05
2F065JJ09
2F065JJ15
2F065LL16
2F065QQ01
(57)【要約】
【課題】工作機等の1軸に対する多自由度の変位を同時に測定するに際して、測定機器の管理(校正)コストを軽減する。
【解決手段】多軸レーザ干渉計3と、測定対象の直進運動と共に移動するターゲット1と、ターゲット1の後方に固定された反射体2と、ターゲット1に配置された複数のリトロリフレクタ1-1、1-2、1-3及び多軸レーザ干渉計3からの入射ビームを分離する複数の偏光プリズム1-4、1-5、1-6と、反射体2に設けられた複数の偏光プリズム1-4、1-5、1-6のそれぞれに対応した位置に配置された反射プリズム2-4、2-5、2-6と、を備え、リトロリフレクタ1-1、1-2、1-3及び偏光プリズム1-4、1-5、1-6による多軸レーザ干渉計3で得られた変位に基づいて多自由度の変位を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸レーザ干渉計を用いて、一つの測定軸に対する測定対象の複数方向の変位を測定する測定装置であって、
前記測定軸に沿った位置に固定された前記多軸レーザ干渉計と、
前記測定対象に固定され、前記測定軸に沿った前記測定対象の直進運動と共に移動するターゲットと、
前記測定軸の延長上であり、前記ターゲットの後方に固定された反射体と、を備え、
前記ターゲットは、前記多軸レーザ干渉計から入射した光を入射方向と反対の方向へと反射して前記多軸レーザ干渉計へ戻す、少なくとも1つのリトロリフレクタと、
前記多軸レーザ干渉計からの入射ビームを進行方向の異なる一組の直線偏光ビームに分離する偏光分離素子と、を備え、
前記反射体は、前記偏光分離素子に対応した位置に配置されて、前記直線偏光ビームのそれぞれを反射して、前記偏光分離素子を介して前記多軸レーザ干渉計へ戻す少なくとも1つの反射プリズムを備え、
前記多軸レーザ干渉計は、前記リトロリフレクタ、及び、前記反射プリズムからの反射光に基づく変位から、前記測定対象の複数方向の変位を算出する測定装置。
【請求項2】
前記ターゲットは、
前記少なくとも1つの偏光分離素子として、
前記測定軸との交点位置に配置された第2偏光プリズム(1-5)と、
前記交点位置を通り前記測定軸と直交する第1軸上に、前記交点位置を中心として対称に配置された第1偏光プリズム(1-4)、及び、第3偏光プリズム(1-6)と、
を備え、
前記第1偏光プリズム、前記第2偏光プリズム、及び、前記第3偏光プリズムによりそれぞれ分離される一組の前記直線偏光ビームの光路がそれぞれ含まれる、第1仮想面、第2仮想面、及び、第3仮想面を観念したとき、
前記第2仮想面と前記第1仮想面とのなす角、前記第2仮想面と前記第3仮想面とのなす角が等しく、かつ、0°(deg)を超えて、90°(deg)以下である、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記ターゲットは、
前記少なくとも1つのリトロリフレクタとして、
前記交点位置を通り前記第1軸と直交する第2軸上に、前記第2軸の一方の方向に沿って、前記第2偏光プリズムから所定距離を離間して配置された第1リトロリフレクタ(1-1)と、
前記第2軸の他方の方向に沿って、前記第1軸から所定距離を離間して、かつ、互いに離間して配置された第2リトロリフレクタ(1-2)、及び、第3リトロリフレクタ(1-3)と、を備える、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第1リトロリフレクタと前記第2リトロリフレクタとの距離、及び、
前記第1リトロリフレクタと前記第3リトロリフレクタとの距離が等しい、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記反射体は、前記少なくとも1つの反射プリズムとして、
前記第1偏光プリズム、前記第2偏光プリズム、及び、前記第3偏光プリズムのそれぞれに対応して配置された、第1反射プリズム(1-4)、第2反射プリズム(2-5)、及び、第3反射プリズム(2-6)と、を備える、請求項3に記載の測定装置。
【請求項6】
前記測定対象が前記測定軸に沿って変位したとき、
前記第1リトロリフレクタ、前記第2リトロリフレクタ、及び、前記第3リトロリフレクタからの反射光により得られる変位をそれぞれD1、D2、及び、D3とし、
前記第1反射プリズム、前記第2反射プリズム、及び、前記第3反射プリズムからの反射光により得られる変位をそれぞれV1、V2、及び、V3としたとき、
前記測定対象の、
前記測定軸方向の変位を{D1+(D2+D3)/2}/2として、
前記第1軸方向の変位をV2として、
前記第2軸方向の変位を(V1+V3)/2として、
それぞれ計算する請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定対象が前記測定軸に沿って変位したとき、
前記第1リトロリフレクタ、前記第2前記リトロリフレクタ、及び、前記第3リトロリフレクタからの反射光により得られる変位をそれぞれD1、D2、及び、D3とし、
前記第1反射プリズム、前記第2反射プリズム、及び、前記第3反射プリズムからの反射光により得られる変位をそれぞれV1、V2、及び、V3とし、
前記第1リトロリフレクタと前記第3リトロリフレクタに対する、前記第2リトロリフレクタの前記第2軸方向の距離をL1とし、
前記第2リトロリフレクタと前記第3リトロリフレクタの前記第1軸方向の距離をL2とし、
前記第1偏光プリズムと前記第3偏光プリズムの前記第1軸方向の距離をL3とし、
前記測定対象の、前記測定軸に対する、
ローリング方向の変位を(V1-V3)/L3として、
ピッチング方向の変位を(D1-(D2+D3)/2)/L1として、
ヨーイング方向の変位を(D2-D3)/L2として、
それぞれ計算する請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
前記第1軸から前記第1リトロリフレクタの中心位置までの距離(L1U)と、
前記第1軸からの前記第2リトロリフレクタと前記第3リトロリフレクタのそれぞれの中心位置までの距離(L1D)と、
前記第2軸からの前記第2リトロリフレクタの中心位置までの距離(L2L)と、
前記第2軸からの前記第3リトロリフレクタの中心位置までの距離(L2R)と、
が等しく配置された、請求項3に記載の測定装置。
【請求項9】
前記ターゲットは、
前記少なくとも1つの偏光分離素子として、
前記測定軸との交点位置に配置され、前記交点位置を通り前記測定軸と直交する第1軸に沿って前記直線偏光ビームを分離する第2偏光プリズム(1-5)と、
前記第1軸上に、前記交点位置を中心として対称に配置され、前記第2偏光プリズムとは前記直線偏光ビームの分離方向が直交する第1偏光プリズム(1-4)及び第3偏光プリズム(1-6)と、を備え、
また、前記少なくとも1つのリトロリフレクタとして、
第1軸から一方の方向に所定距離離間し、かつ、前記交点位置を通り前記第1軸と直交する第2軸から一方の方向に所定距離離間して配置された第1リトロリフレクタ(1-1)と、
前記第1軸から他方の方向に所定距離離間し、かつ、前記第2軸から他方の方向に所定距離離間して配置された第2リトロリフレクタ(1-2)と、を備る請求項1に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸レーザ干渉測長器に関し、特に、測定対象であるNC工作機等の軸に対する多自由度の変位を同時に測定して精度検査を行う多軸レーザ干渉測長器を用いた測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、NC工作機等の精度管理は非常に重要となっている。このため、製造段階から、それらがユーザの生産現場に設置され稼動するまでに、多くの精度検査が行われている。ユーザに納入後も定期的に必要な検査が行われ、製品精度が低下しないように工作機械の精度管理が必要とされている。
【0003】
例えば、NC工作機械等の主軸やステージは、1軸の運動方向のみにおいても直進運動精度として、その1軸に対してX、Y、Zの3軸方向及びローリング、ピッチング、ヨーイングの3方向の移動誤差が存在し、時間、設置環境、使用状況により両方向位置決め、繰り返し精度が変化する。
【0004】
特許文献1は、トランスミッタ・ユニットを工作台上に、光学ユニットを機械のクイル上に取り付け、トランスミッタ・ユニットから光学ユニットまでの距離をレーザ干渉測長器で測定することと、光学ユニットにリトロリフレクタを設け、トランスミッタ・ユニットに設けられた検出器における光ビームの位置を2次元アレイの画素や位置感受性検出器(PSD)などの光学ポジションセンサで測定することと、を組み合わせ、光学ユニットの2つの真直度、ピッチ、ロール、及びヨーを測定することを記載している。
【0005】
特許文献2は、可動テーブルに反射ターゲットであるリトロリフレクタを配置し、レーザ干渉測長器をステージに固定し、各レーザ光源の光軸の延長上にリトロリフレクタを設置し、リトロリフレクタまでの距離を測定することで可動テーブルのヨーイング及びピッチングを検出することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005-532544号公報
【特許文献2】特開2020-85704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のものは、レーザ干渉測長器と光学ポジションセンサと言う測定原理の異なるセンサーを用いている。そのため、システムの校正を行う場合は、異なる測定原理に応じた複数の校正設備及び校正の手法が必要となり、トレーサビリティとしても煩雑化して統一化されず、管理コストが大きくなる。
【0008】
特許文献2に記載のものは、単に、レーザ干渉測長器でリトロリフレクタまでの距離を測定してヨーイング及びピッチングするので、1軸の長さ測定、直進運動精度は、リトロリフレクタの位置(レーザ光軸)と測定軸との距離及び傾きによりアッベ誤差を生じる。つまり、X、Y、Zの測定とローリング、ピッチング、ヨーイングの測定とを同一測定軸に配置したものでなく、測定対象物の6自由度全ての姿勢変位を同時かつより高精度に測定するには十分では無かった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、測定対象である工作機等の1軸に対する多自由度の変位を同時に測定するに際して、使用する測定機器のトレーサビリティを統一し、管理(校正)コストを軽減すると共に、より高精度化を図り、工作機械の高性能化に伴う高度な精度評価が可能な多軸レーザ干渉測長器を用いた測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の構成は以下のとおりである。
【0011】
[1] 多軸レーザ干渉計を用いて、一つの測定軸に対する測定対象の複数方向の変位を測定する測定装置であって、上記測定軸に沿った位置に固定された上記多軸レーザ干渉計と、上記測定対象に固定され、上記測定軸に沿った上記測定対象の直進運動と共に移動するターゲットと、上記測定軸の延長上であり、上記ターゲットの後方に固定された反射体と、を備え、上記ターゲットは、上記多軸レーザ干渉計から入射した光を入射方向と反対の方向へと反射して上記多軸レーザ干渉計へ戻す、少なくとも1つのリトロリフレクタと、上記多軸レーザ干渉計からの入射ビームを進行方向の異なる一組の直線偏光ビームに分離する偏光分離素子と、を備え、上記反射体は、上記偏光分離素子に対応した位置に配置されて、上記直線偏光ビームのそれぞれを反射して、上記偏光分離素子を介して上記多軸レーザ干渉計へ戻す少なくとも1つの反射プリズムを備え、上記多軸レーザ干渉計は、上記リトロリフレクタ、及び、上記反射プリズムからの反射光に基づく変位から、上記測定対象の複数方向の変位を算出する測定装置。
[2] 上記ターゲットは、上記少なくとも1つの偏光分離素子として、上記測定軸との交点位置に配置された第2偏光プリズム(1-5)と、上記交点位置を通り上記測定軸と直交する第1軸上に、上記交点位置を中心として対称に配置された第1偏光プリズム(1-4)、及び、第3偏光プリズム(1-6)と、を備え、上記第1偏光プリズム、上記第2偏光プリズム、及び、上記第3偏光プリズムによりそれぞれ分離される一組の上記直線偏光ビームの光路がそれぞれ含まれる、第1仮想面、第2仮想面、及び、第3仮想面を観念したとき、上記第2仮想面と上記第1仮想面とのなす角、上記第2仮想面と上記第3仮想面とのなす角が等しく、かつ、0°(deg)を超えて、90°(deg)以下である、[1]に記載の測定装置。
[3] 上記ターゲットは、上記少なくとも1つのリトロリフレクタとして、上記交点位置を通り上記第1軸と直交する第2軸上に、上記第2軸の一方の方向に沿って、上記第2偏光プリズムから所定距離を離間して配置された第1リトロリフレクタ(1-1)と、上記第2軸の他方の方向に沿って、上記第1軸から所定距離を離間して、かつ、互いに離間して配置された第2リトロリフレクタ(1-2)、及び、第3リトロリフレクタ(1-3)と、を備える、[2]に記載の測定装置。
[4]上記第1リトロリフレクタと上記第2リトロリフレクタとの距離、及び、上記第1リトロリフレクタと上記第3リトロリフレクタとの距離が等しい、[3]に記載の測定装置。
[5] 上記反射体は、上記少なくとも1つの反射プリズムとして、上記第1偏光プリズム、上記第2偏光プリズム、及び、上記第3偏光プリズムのそれぞれに対応して配置された、第1反射プリズム(1-4)、第2反射プリズム(2-5)、及び、第3反射プリズム(2-6)と、を備える、[3]に記載の測定装置。
[6] 上記測定対象が上記測定軸に沿って変位したとき、上記第1リトロリフレクタ、上記第2リトロリフレクタ、及び、上記第3リトロリフレクタからの反射光により得られる変位をそれぞれD1、D2、及び、D3とし、上記第1反射プリズム、上記第2反射プリズム、及び、上記第3反射プリズムからの反射光により得られる変位をそれぞれV1、V2、及び、V3としたとき、上記測定対象の、上記測定軸方向の変位を{D1+(D2+D3)/2}/2として、上記第1軸方向の変位をV2として、上記第2軸方向の変位を(V1+V3)/2として、それぞれ計算する[5]に記載の測定装置。
[7]上記測定対象が上記測定軸に沿って変位したとき、上記第1リトロリフレクタ、上記第2上記リトロリフレクタ、及び、上記第3リトロリフレクタからの反射光により得られる変位をそれぞれD1、D2、及び、D3とし、上記第1反射プリズム、上記第2反射プリズム、及び、上記第3反射プリズムからの反射光により得られる変位をそれぞれV1、V2、及び、V3とし、上記第1リトロリフレクタと上記第3リトロリフレクタに対する、上記第2リトロリフレクタの上記第2軸方向の距離をL1とし、上記第2リトロリフレクタと上記第3リトロリフレクタの上記第1軸方向の距離をL2とし、上記第1偏光プリズムと上記第3偏光プリズムの上記第1軸方向の距離をL3とし、上記測定対象の、上記測定軸に対する、ローリング方向の変位を(V1-V3)/L3として、ピッチング方向の変位を(D1-(D2+D3)/2)/L1として、ヨーイング方向の変位を(D2-D3)/L2として、それぞれ計算する[5]に記載の測定装置。
[8] 上記第1軸から上記第1リトロリフレクタの中心位置までの距離(L1U)と、上記第1軸からの上記第2リトロリフレクタと上記第3リトロリフレクタのそれぞれの中心位置までの距離(L1D)と、上記第2軸からの上記第2リトロリフレクタの中心位置までの距離(L2L)と、上記第2軸からの上記第3リトロリフレクタの中心位置までの距離(L2R)と、が等しく配置された、[3]に記載の測定装置。
[9] 上記ターゲットは、上記少なくとも1つの偏光分離素子として、上記測定軸との交点位置に配置され、上記交点位置を通り上記測定軸と直交する第1軸に沿って上記直線偏光ビームを分離する第2偏光プリズム(1-5)と、上記第1軸上に、上記交点位置を中心として対称に配置され、上記第2偏光プリズムとは上記直線偏光ビームの分離方向が直交する第1偏光プリズム(1-4)及び第3偏光プリズム(1-6)と、を備え、また、上記少なくとも1つのリトロリフレクタとして、第1軸から一方の方向に所定距離離間し、かつ、上記交点位置を通り上記第1軸と直交する第2軸から一方の方向に所定距離離間して配置された第1リトロリフレクタ(1-1)と、上記第1軸から他方の方向に所定距離離間し、かつ、上記第2軸から他方の方向に所定距離離間して配置された第2リトロリフレクタ(1-2)と、を備る[1]に記載の測定装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測定対象である工作機等の1軸の直進運動と共に移動するターゲットと、ターゲットの後方に固定して設置された反射体と、ターゲットに配置された複数のリトロリフレクタ及び複数の偏光分離素子と、反射体に設けられた反射プリズムと、を備え、複数方向、特に多自由度の変位をリトロリフレクタ及び偏光分離素子を通って多軸レーザ干渉計で得られた変位に基づいて算出して同時に測定する。したがって、複数方向の変位をレーザのみによって算出でき、トレーサビリティが統一されるため、管理(校正)コストを軽減すると共に、より高精度化を図り、工作機械の高性能化に伴う高度な精度評価が可能となる
【0013】
さらに、取り付け空間の省スペース化を図り、機種毎に様々なサイズ、移動方向の工作機械等に対応、汎用的に使用が可能であり、取り付け調整が容易で大気擾乱の彫響を受けにくい安定した測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る主要部を示す斜視図。
図2】本発明の第1実施形態に係る工作機械等の主軸の精度を測定する例を示す側面図。
図3】本発明の第1実施形態に係るターゲットの詳細を示す正面図。
図4】本発明の第1実施形態に係る反射体の詳細を示す正面図。
図5】本発明の第1実施形態に係る偏光プリズムと反射プリズムとの配置関係を示す側面図。
図6】本発明の第1実施形態に係る偏光プリズムによるZ軸方向の変位検出を示す側面図。
図7】本発明の第1実施形態に係るローリング方向変位を説明する正面図。
図8】本発明の第1実施形態に係るヨーイング方向変位説明する上面図。
図9】リトロリフレクタのより好ましい配置例を示す正面図。
図10】本発明の第2実施形態に係るターゲット及び反射体を示す正面図。
図11】本発明の第3実施形態に係るターゲット及び反射体を示す正面図。
図12】本発明の第4実施形態に係るターゲットを示す正面図。
図13】分離される直線偏光ビームと、各偏光プリズムとの関係の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る主要部を示す斜視図である。図2は、工作機械等の主軸50の精度を測定する例を示す側面図である。図2において、工作機械の主軸50は、X軸方向を運動方向として(a)、(b)、(c)の如く直進運動し、多軸レーザ干渉計3は、X軸を測定軸5として位置決め精度を検査する。主軸50は、一つの測定軸5に対してX、Y、Zの3軸方向及びローリング、ピッチング、ヨーイングの3方向で6つの移動誤差が存在する。
【0016】
多軸レーザ干渉計3は、測定軸5に沿った位置に固定して配置する。ターゲット1は、主軸50(測定対象)に固定して設置され、主軸50の直進運動と共に移動する。反射体2は、測定軸5の延長上であり、ターゲット1の後方に固定して設置される。多軸レーザ干渉計3は、レーザ光4の送光部と干渉光の受光部(図示せず)を備える。
【0017】
多軸レーザ干渉計3は、基本的な原理はマイケルソン干渉計に順ずる。マイケルソン干渉計は、一つの波長の分かっているレーザ光4を用いてビームを二つの経路に分岐し、ターゲット1あるいは反射体2でそれぞれ反射させて再び合流させる。そして、多軸レーザ干渉計3は、干渉信号を作成し、干渉信号を光電変換して干渉縞の数により光路差を算出する。
【0018】
多軸レーザ干渉計3の基本構成は、以下である。(1)光源より出力されたレーザ光4を偏光ビームスプリッタ等で基準測定光と参照測定光に分岐する。(2)分岐した参照測定光をハーフミラー等により第1、第2、…、第n参照測定光に分岐する。(3)基準測定光をn個に分岐し、ターゲット1あるいは反射体2で反射後の各参照測定光と干渉させ、それぞれの干渉信号をn個の受光器で光電変換する。
【0019】
多軸レーザ干渉計3の測定数は、参照測定光のn次数に等しく、n個に分岐された反射後の基準測定光と、n個の参照測定光とをそれぞれ干渉させるためにn個の偏光ビームスプリッタを設けて合流させる。(又は、複数個のレーザ光源からのレーザ光を分岐させて、又は、分岐させずに用いてもよい。)これにより、多軸レーザ干渉計3は、1光源、1ユニットでかつ1つの基準測定光を軸としてn個軸の測定を同時に行うことができる。
【0020】
図3は、ターゲット1の詳細を示す正面図である。ターゲット1は、3つの第1リトロリフレクタ1-1、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3と3つの第2偏光プリズム1-5、第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6が固定されて、配置される。第1リトロリフレクタ1-1、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3は、入射した光を、入射方向と平行で、かつ反対の方向へと反射する。第2偏光プリズム1-5、第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6は、多軸レーザ干渉計3からの入射ビームを、所定の角度(分離角)をつけて進行方向の異なる一組の(言い換えれば2つの)直線偏光ビームに分離して透過させる偏光分離素子である。
なお、偏光プリズムに代えて、他の偏光分離素子を用いてもよい。
【0021】
第2偏光プリズム1-5は、測定軸5となるX軸を通る中心O点に配置される。この中心O点は、測定軸5と、ターゲット1との交点位置である。第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6は、中心O点に対して、対称であって、かつ、中心線OY(交点位置を通り測定軸5と直交する第1軸)上に配置される。なお、本明細書において、測定軸5、第1軸(中心線OY)、第2軸(中心線OZ)は、中心O点で直交する異なる軸(線)を意味する。
【0022】
第1偏光プリズム1-4、第2偏光プリズム1-5、及び、第3偏光プリズム1-6は、それぞれ、複数の光源からの(又は、1つの光源から分岐された)入射光(レーザ)を進行方向の異なる一組の直線偏光ビームに分離する。
図13は、分離される直線偏光ビームと、各偏光プリズムとの関係の説明図である。なお、図13においては、説明に不要な構成の図示は省略される。
【0023】
図13(A)は、第2偏光プリズム1-5により分離される一対の直線偏光ビーム4a、4bと、それらの光路が属する第2仮想面PL2との関係を示す図である。第2偏光プリズム1-5は、第1軸(Y軸)の+、-方向に入射光を(レーザ光)を分離し、それらの光路は、第2仮想面PL2に含まれる。
【0024】
図13(B)は、第1偏光プリズム1-4、及び、第3偏光プリズム1-6により分離される一対の直線偏光ビーム4a、4bと、それらの光路が属する第1仮想面PL1、第3仮想面PL3との関係を示す図である。
第1偏光プリズム1-4は、第2軸(Z軸)の+、-方向に入射光を(レーザ光)を分離し、それらの光路は、第1仮想面PL1に含まれる。同様に、第3偏光プリズム1-6は、第2軸(Z軸)の+、-方向に入射光を(レーザ光)を分離し、それらの光路は、第3仮想面PL3に含まれる。第1仮想面PL1と第3仮想面PL3は平行である。
【0025】
これらの各仮想面において以下の関係が成り立つように、各偏光プリズムは配置、調整される。
・第1仮想面PL1と第3仮想面PL3は平行であり、第2仮想面PL2と第1仮想面PL1とのなす角ag1と、第2仮想面PL2と第3仮想面PL3とのなす角ag2とが等しい。
・なす角ag1、ag2がそれぞれ、0°(deg)を超えて、90°(deg)以下である。
【0026】
上記配置により、後述するように、測定対象のY軸、及び、Z軸方向の変位を算出でき、かつ、測定軸周りの回転(変位)も算出できる。
上記なす角は、0degを超えれば、上記効果が得られるものの、より変位検出の感度が向上しやすい観点では、45deg以上が好ましく、60deg以上がより好ましく、80deg以上が更に好ましく、一形態として、90degが特に好ましい。なす角が90degに近づくほど、直交する2成分(X軸、Y軸)方向の変位に関する情報が取得しやすく、感度がより向上しやすい。
【0027】
第2仮想面PL2と、第1仮想面PL1(及び第3仮想面PL3)が直交に近づくほど、XY平面上における変位をより高感度に検出できる。なお、図3では、第2偏光プリズム1-5は、Y軸(中心線OY)方向の左右(+、-方向)に2つの直線偏光ビームを分離して出射し、第1偏光プリズム1-4、及び、第3偏光プリズム1-6は、Z軸方向の上下(+、-方向)に2つの直線偏光ビームを分離して出射可能に構成されている。
この直線偏光ビームは、後述する反射プリズムで反射された後、最終的には、多軸レーザ干渉計に戻される。
【0028】
図3に戻り、第1リトロリフレクタ1-1は、第2偏光プリズム1-5から中心線OZの上方向に所定距離を持って(離間して)、中心線OZ(交点位置を通り第1軸と直交する第2軸)上に配置される。
一方、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3は、中心線OY(第1軸)から第2軸(中心線OZ)の下方向に所定距離離間して、中心線OY2上に配置される。
第1偏光プリズム1-4と第3偏光プリズム1-6との距離(中心間の距離)はL3とされる。
【0029】
また、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3は、中心線OZの左右に、中心O点からの距離が等しくなるように中心線OZに対して対称に配置される。したがって、第1リトロリフレクタ1-1、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3の各中心位置は、少なくとも二等辺三角形となるように配置される。すなわち、第1リトロリフレクタ1-1と第2リトロリフレクタ1-2との距離、及び、第1リトロリフレクタ1-1と第3リトロリフレクタ1-3との距離が等しくなるように配置される。
【0030】
第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3と第1リトロリフレクタ1-1とのZ軸方向の距離はL1とされる。すなわち、第2リトロリフレクタ1-2、及び、第3リトロリフレクタ1-3の中心を結ぶ中心線OY2と、第1リトロリフレクタ1-1との距離はL1とされる。
また、第2リトロリフレクタ1-2と第3リトロリフレクタ1-3とのY軸方向(中心軸OY2上)の距離はL2とされる。
【0031】
図4は、反射体2の詳細を示す正面図である。反射体2には、第1反射プリズム2-4、第2反射プリズム2-5、第3反射プリズム2-6が設けられ、これらは、第2偏光プリズム1-5、第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6のそれぞれに対応した位置に配置される。
第1反射プリズム2-4、第2反射プリズム2-5、第3反射プリズム2-6は、側面から見て三角形状のプリズムであり、第2偏光プリズム1-5、第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6を透過し、所定の分離角をもって分離させたレーザ光4を反射して多軸レーザ干渉計3へ戻す役目を担う。
【0032】
第2反射プリズム2-5は、第2偏光プリズム1-5に対応し、中心線OY上に配置される。すなわち、第2偏光プリズム1-5により、Y軸(中心線OY)方向の左右に分離された一組の直線偏光ビームのそれぞれを反射可能に構成される。
一方、第1反射プリズム2-4、第3反射プリズム2-6は、それぞれ第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6に対応し、第1反射プリズム2-4は中心線OZと平行な中心線OZ1、第3反射プリズム2-6は中心線OZと平行な中心線OZ2上に配置される。すなわち、第1偏光プリズム1-4、及び、第3偏光プリズム1-6により、Z軸方向に分離された一組の直線偏光ビームのそれぞれを反射可能に構成される。
【0033】
図5は、第2偏光プリズム1-5、第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6と第1反射プリズム2-4、第2反射プリズム2-5、第3反射プリズム2-6との配置関係を示す側面図である。多軸レーザ干渉計3と反射体2は固定されており、ターゲット1がX軸(測定軸5)に沿って移動する。第1リトロリフレクタ1-1、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3に入射したレーザ光4は、反対の方向へと反射して多軸レーザ干渉計3へ参照測定光として戻る。
【0034】
第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6に入射したレーザ光4は、上下(Z軸の+、-方向)に分離され一組の直線偏光ビームとされる。分離された直線偏光ビームは、第1反射プリズム2-4、第3反射プリズム2-6により反射される。その後、反射光は、それぞれ第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6にそれぞれ戻され平行光となり、最終的には、多軸レーザ干渉計3へ参照測定光として戻される。
一方、第2偏光プリズム1-5に入射したレーザ光4は、左右(Y軸の+、-方向)に分離され一組の直線偏光ビームとされる。分離された直線偏光ビームは、第2反射プリズム2-5により反射される。その後、反射光は第2偏光プリズム1-5に戻され、平行光となり、最終的には、多軸レーザ干渉計3へ参照測定光として戻される。
【0035】
図6は、第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6によるZ軸方向の変位検出を示す側面図である。第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6にZ軸方向の変位が生じた場合、上下に広がったレーザ光4は、光路長に変化が生じる。図6の第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6が矢印方向に変位した場合は、上の光路長L1はL2よりも僅かに長くなる。多軸レーザ干渉計3は、上下のレーザ光4の光路長の差を捉えて長さに換算し、第1偏光プリズム1-4、第3偏光プリズム1-6のZ軸方向の変位を検出する。
【0036】
6自由度の変位は、X、Y、Zの測定とローリング、ピッチング、ヨーイングの測定とを同一測定軸である中心O点を通るX軸に換算するため、以下のように算出する。以下の説明は、第1リトロリフレクタ1-1からの反射光により多軸レーザ干渉計3で得られた変位をD1、同様に、第2リトロリフレクタ1-2からの反射光により得られた変位をD2、第3リトロリフレクタ1-3からの反射光により得られた変位をD3とする。
【0037】
また、第1偏光プリズム1-4を通って、第1反射プリズム2-4からの反射により、多軸レーザ干渉計3で得られた変位をV1、同様に、第2偏光プリズム1-5を通って、第2反射プリズム2-5からの反射により得られた変位をV2、第3偏光プリズム1-6を通って、第3反射プリズム2-6からの反射により得られた変位をV3とする。
【0038】
X、Y、Z軸共に測定軸5と一致した中心O点に換算して、X(測定軸)方向の変位は、{D1+(D2+D3)/2}/2と表され、Y(第1軸)方向の変位は、V2と表され、Z(第2軸)方向変位は、(V1+V3)/2と表される。
【0039】
図7は、ローリング方向変位を説明する正面図、図8は、ヨーイング方向変位説明する上面図である。X、Y、Z方向変位と同様に、ローリング、ピッチング、ヨーイングの3方向の変位も中心O点に換算して、ローリング方向の変位は、arctan{(V1-V3)/L3}、ピッチング方向の変位は、arctan{(D1-(D2+D3)/2)/L1}、ヨーイング方向変位はarctan{(D2-D3)/L2}と表される。
【0040】
なお、ローリング、ピッチング、ヨーイングの移動誤差(変位量)は、工作機械に適用する場合等は、一般には微小のため、ローリング方向の変位を(V1-V3)/L3、ピッチング方向の変位を(D1-(D2+D3)/2)/L1、ヨーイング方向の変位を(D2-D3)/L2と計算する方がより実用的である場合が多い。
【0041】
なお、L1は第2リトロリフレクタ1-2及び第3リトロリフレクタ1-3と第1リトロリフレクタ1-1とのZ軸方向の距離、言い換えれば、第1リトロリフレクタ1-2と第3リトロリフレクタ1-3を結ぶ中心線OYと、第1リトロリフレクタ1-1(中心線OY2と平行、かつ、第1リトロリフレクタ1-1の中心を通る中心線OY3)との距離を表す。
【0042】
また、L2は第2リトロリフレクタ1-2と第3リトロリフレクタ1-3とのY軸(第1軸、左右)方向の距離を表す。
また、L3は第1偏光プリズム1-4と第3偏光プリズム1-6とのY軸(第1軸、左右)方向の距離を表す。
【0043】
図9は、第1リトロリフレクタ1-1、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3の配置例を示す正面図である。ピッチング方向変位とヨーイング方向変位とは、角度測定と長さであるX方向変位を同時に測定する。したがって、光軸位置による誤差を避けるため中心線OY(第1軸)からの第1リトロリフレクタ1-1の中心位置までの距離L1U、中心線OY(第1軸)からの第2リトロリフレクタ1-2と第3リトロリフレクタ1-3の中心位置までの距離L1D、中心線OZ(第2軸)からの第2リトロリフレクタ1-2の中心位置までの距離L2L、中心線OZ(第2軸)からの第3リトロリフレクタ1-3の中心位置までの距離L2Rは、全て等しく配置している。
【0044】
これにより、X、Y、Zの測定とローリング、ピッチング、ヨーイングの測定とを同一測定軸である中心O点を通るX軸に均等に換算できるので、アッベ誤差をより小さくすることができる。
【0045】
また、第1リトロリフレクタ1-1、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3は、中心O点に極力近接して設置されることが望ましい。これにより、多軸レーザ干渉計3の光軸調整等のアライメント作業は、容易となり、同時に長さを測定する場合であっても光軸位置による誤差要因を少なくできる。
【0046】
多軸レーザ干渉計3は、環境は大きな影響を及ぼし、環境誤差を最小限に抑えることが重要となる。環境要因としては、測定対象のメカニカルな振動及び空気の乱れが挙げられる。ターゲット1を測定対象である主軸50等に固定する場合、固定位置からの距離が長いと、振動が増幅されるため、極力短く固定する必要がある。
【0047】
3つの第1リトロリフレクタ1-1、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3と3つの第1偏光プリズム1-4、第2偏光プリズム1-5、第3偏光プリズム1-6は、近接して設置されれば、多軸レーザ干渉計3の光軸調整を一度の取り付けで済むので、従来のように各光軸で個別に行うものに比べて誤差要因を少なくできる。
【0048】
図10は、ターゲット1及び反射体2の第2実施形態を示す正面図である。本例は、図3で示したターゲット1及び図4で示した反射体2において、3つの第1リトロリフレクタ1-1、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3と3つの第1偏光プリズム1-4、第2偏光プリズム1-5、第3偏光プリズム1-6及び第1反射プリズム2-4、第2反射プリズム2-5、第3反射プリズム2-6とを90°回転して配置したことが異なり、他は同様である。
【0049】
この場合、X、Y、Z軸共に測定軸5と一致した中心O点に換算して
X方向変位={D1+(D2+D3)/2}/2
Y方向変位=-(V1+V3)/2
Z方向変位=V2
ローリング方向変位=(V1-V3)/L3
ピッチング方向変位=(D3-D2)/L2
ヨーイング方向変位=(D1-(D2+D3)/2)/L1
となる。
【0050】
図11は、ターゲット1及び反射体2の第3実施形態を示す正面図である。本例は、図3で示したターゲット1及び図4で示した反射体2において、3つの第1リトロリフレクタ1-1、第2リトロリフレクタ1-2、第3リトロリフレクタ1-3と3つの第1偏光プリズム1-4、第2偏光プリズム1-5、第3偏光プリズム1-6及び第1反射プリズム2-4、第2反射プリズム2-5、第3反射プリズム2-6とを角度θ°回転して配置したことが異なり、他は同様である。
【0051】
X、Y、Z軸共に測定軸5と一致した中心O点に換算して
X方向変位={D1+(D2+D3)/2}/2
Y方向変位=V2cosθ-{(V1+V3)/2}sinθ
Z方向変位=V2sinθ+{(V1+V3)/2}cosθ
となる。
【0052】
ローリング方向変位=(V1-V3)/L3
ピッチング方向変位=
{(D1-(D2+D3)/2)/L1}cosθ
-{(D2-D3)/L2}sinθ
ヨーイング方向変位=
{(D1-(D2+D3)/2)/L1}sinθ
+{(D2-D3)/L2}cosθ
となる。
【0053】
第3実施形態は、第1実施形態、第2実施形態に比べて各変位の算出が複雑になる。第3実施形態で示した各変位の算出は、主軸50の各軸とターゲット1と反射体2との各軸がθ°ずれていたときの修正と同様となる。また、主軸50の各軸とターゲット1と反射体2との各軸のずれθ°が小さく微小角と見なすことができれば実質的に差はない。
【0054】
図12は、ターゲット1の第4実施形態を示す正面図である。図3で説明した第1実施形態に対して第3リトロリフレクタ1-3を省略し、第1リトロリフレクタ1-1は、中心線OZからY軸方向へ移動したことが異なり、他は同様である。つまり、第1リトロリフレクタ1-1は、第2偏光プリズム1-5からZ軸方向で上に所定距離を持ち、かつ第2偏光プリズム1-5を通る中心線OZからY軸方向へ所定距離を持って配置されている。また、第2リトロリフレクタ1-2は、第2偏光プリズム1-5からZ軸方向で下に所定距離を持ち、かつ第1リトロリフレクタ1-1とはY軸方向で反対方向へ所定距離を持って配置されている。
【0055】
各変位は、
X方向変位=(D1+D2)/2
Y方向変位=V2
Z方向変位=(V1+V3)/2
ローリング方向変位=(V1-V3)/L3
ピッチング方向変位=(D1-D2)/L1
ヨーイング方向変位=(D2-D1)/L2
となる。
【0056】
ただし、L3は第1偏光プリズム1-4と第3偏光プリズム1-6とのY軸方向の距離、L1は第1リトロリフレクタ1-1と第2リトロリフレクタ1-2とのZ軸方向の距離、L2は第1リトロリフレクタ1-1と第2リトロリフレクタ1-2とのY軸方向の距離である。第4実施形態は、ピッチング、ヨーイングの変位が中心O点に換算されないが、第1リトロリフレクタ1-1と第2リトロリフレクタ1-2とを近接して設置すれば誤差を小さくできる。
【0057】
以上、本発明によれば、多自由度の変位として角度と長さが同時に測定できる。角度単体の測定では被測定物の移動における機械誤差は、測定位置誤差となるのに対し、角度と長さを同時に取得できるので、測定点をサブミクロンの単位で管理できる。また、複数方向、特に6自由度の変位を同時に行うことは、校正する上で複数の機材を使用することがないので、段取り等も含めて測定時間を低減することができる。
【0058】
また、取り付け空間の省スペース化、取り付け調整が容易、大気擾乱の彫響を受けにくい安定した測定が可能となり汎用性も高めることができる。さらに、位置決め精度だけではなく、工作機械に要求されるステージや主軸50の挙動解析、動的な挙動解析にも対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1…ターゲット
1-1…第1リトロリフレクタ
1-2…第2リトロリフレクタ
1-3…第3リトロリフレクタ
1-4…第1偏光プリズム
1-5…第2偏光プリズム
1-6…第3偏光プリズム
2…反射体
2-4…第1反射プリズム
2-5…第2反射プリズム
2-6…第3反射プリズム
3…多軸レーザ干渉計
4…レーザ光
5…測定軸
50…主軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13