IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧

特開2024-137265縮合環化合物、有機電子素子用材料、光電変換素子用材料、有機薄膜、および有機電子素子
<>
  • 特開-縮合環化合物、有機電子素子用材料、光電変換素子用材料、有機薄膜、および有機電子素子 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137265
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】縮合環化合物、有機電子素子用材料、光電変換素子用材料、有機薄膜、および有機電子素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/61 20060101AFI20240927BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240927BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240927BHJP
   H10K 50/18 20230101ALI20240927BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240927BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20240927BHJP
【FI】
C07C211/61 CSP
H10K50/10
H10K85/60
H10K50/18
H10K50/15
H10K101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048723
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100203312
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 敬孝
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓夢
(72)【発明者】
【氏名】森中 裕太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 華奈
(72)【発明者】
【氏名】江崎 有
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋平
【テーマコード(参考)】
3K107
4H006
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107AA03
3K107CC11
3K107DD71
3K107DD78
3K107FF05
3K107FF18
3K107FF19
4H006AA01
4H006AB91
(57)【要約】      (修正有)
【課題】応答速度に優れ、暗電流が低く、外部量子効率が高い光電変換素子の作製に資する縮合環化合物、および該化合物を含む光電変換素子用材料を提供する。
【解決手段】例えば、下記式の反応生成物である11-[ビス(4-ビフェニリル)アミノ]トリベンゾ[b,g,p]クリセン等の縮合環化合物が示される。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される縮合環化合物。
【化1】
式中、
~R18はそれぞれ独立して、
水素原子または置換基を表す。ただし、R~R18の少なくとも1つ以上は、
重水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、チオール基、アリル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、
置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、
置換基を有していてもよいシリル基、
炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基、
炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルキル基、
炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルコキシ基、または、
下記式(2)で表される基である。
【化2】
式中、
~Rはそれぞれ独立して、
水素原子、重水素原子、
置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、または、
炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルキル基を表し;
Yは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、または、
単結合を表し;
nは、1または2を表し、
Yが単結合の場合、nは1であり、
Yが単結合でない場合、nは1または2であり;
nが2の場合、複数のR~Rは、同一であっても異なっていてもよく;
Yは、隣接するRaおよびRbのいずれかまたは両方と結合し、環を形成してもよい。
【請求項2】
式(1)においてR~Rが水素原子である、請求項1に記載の縮合環化合物。
【請求項3】
式(1)においてR~RおよびR13~R18が水素原子である、請求項1に記載の縮合環化合物。
【請求項4】
式(1)においてR~R12の少なくとも一つ以上が前記式(2)で表される基である、請求項1に記載の縮合環化合物。
【請求項5】
分子量が1500以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物。
【請求項6】
分子量が1000以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物。
【請求項7】
HOMO値が5.0~6.5eVである、請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物。
【請求項8】
バンドギャップが2.5~4.0eVである、請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物。
【請求項9】
LUMO値が2.0~3.5eVである、請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物。
【請求項10】
ガラス転移温度が130℃以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物を含む、有機電子素子用材料。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物を含む、光電変換素子用材料。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物を含む、撮像素子用光電変換素子用材料。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物を含む、撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物を含む、撮像素子用光電変換素子用正孔輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電子ブロッキング材料。
【請求項16】
請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物を含む、有機薄膜。
【請求項17】
請求項1~4のいずれか1項に記載の縮合環化合物を含む、有機電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合環化合物、有機電子素子用材料、光電変換素子用材料、有機薄膜、および有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子用光電変換素子は、携帯電話やカメラ等の用途で使用されており、その開発が精力的に行われている。
【0003】
近年の撮像素子用光電変換素子に対する市場からの要求は益々高くなり、暗電流、外部量子効率、応答速度のいずれにおいても優れた材料が求められている。その状況下、新たな材料の母核として種々の多環式の化合物の可能性について、探索、検討が続けられている。多環式化合物として、特許文献1には、ベンゾチエノベンゾチオフェンを母核とした誘導体が開示されている。また、特許文献2には、ベンゾチエノベンゾチオフェンに加え、様々な母核が開示されている。特許文献3には、無置換のジベンゾ[g,p]クリセンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/163349号
【特許文献2】国際公開第2020/022421号
【特許文献3】特開2010-258438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様の目的は、新たな材料の母核として種々の多環式の化合物の可能性について、探索、検討が続けられている中、その新たな母核を有する化合物を用いた光電変換素子用材料および光電変換素子を提案することにある。
【0006】
本発明の他の一態様の目的は、応答速度に優れ、暗電流が低く、外部量子効率が高い光電変換素子の作製に資する縮合環化合物、および該化合物を含む光電変換素子用材料を提供することである。
ところで、特許文献3は、光電変換層と上部電極との間に無置換のジベンゾ[g,p]クリセンを結晶層として用いる記載がある。しかし、特許文献3ではジベンゾ[g,p]クリセンの分子構造上の特徴や、ジベンゾ[g,p]クリセンを含むアモルファス膜に関して一切言及していない。加えて、特許文献3に記載のジベンゾ[g,p]クリセンは、撮像素子用光電変換素子の性能を向上させる知見を何ら提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の縮合環化合物を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本開示の態様は、以下の縮合環化合物、有機電子素子用材料、光電変換素子用材料、有機薄膜、および有機電子素子に関する。
【0009】
[1] 下記式(1)で表される縮合環化合物。

【化1】
式中、
~R18はそれぞれ独立して、
水素原子または置換基を表す。ただし、R~R18の少なくとも1つ以上は、
重水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、チオール基、アリル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、
置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、
置換基を有していてもよいシリル基、
炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基、
炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルキル基、
炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルコキシ基、または、
下記式(2)で表される基である。
【化2】
式中、
~Rはそれぞれ独立して、
水素原子、重水素原子、
置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、または、
炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルキル基を表し;
Yは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、または、
単結合を表し;
nは、1または2を表し、
Yが単結合の場合、nは1であり、
Yが単結合でない場合、nは1または2であり;
nが2の場合、複数のR~Rは、同一であっても異なっていてもよく;
Yは、隣接するRaおよびRbのいずれかまたは両方と結合し、環を形成してもよい。
【0010】
[2] 式(1)においてR~Rが水素原子である、[1]に記載の縮合環化合物。
[3] 式(1)においてR~RおよびR13~R18が水素原子である、[1]に記載の縮合環化合物。
[4] 式(1)においてR~R12の少なくとも一つ以上が前記式(2)で表される基である、[1]に記載の縮合環化合物。
[5] 分子量が1500以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の縮合環化合物。
[6] 分子量が1000以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の縮合環化合物。
[7] HOMO値が5.0~6.5eVである、[1]~[6]のいずれかに記載の縮合環化合物。
[8] バンドギャップが2.5~4.0eVである、[1]~[7]のいずれかに記載の縮合環化合物。
[9] LUMO値が2.0~3.5eVである、[1]~[8]のいずれかに記載の縮合環化合物。
[10] ガラス転移温度が130℃以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の縮合環化合物。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の縮合環化合物を含む、有機電子素子用材料。
[12] [1]~[10]のいずれかに記載の縮合環化合物を含む、光電変換素子用材料。
[13] [1]~[10]のいずれかに記載の縮合環化合物を含む、撮像素子用光電変換素子用材料。
[14] [1]~[10]のいずれかに記載の縮合環化合物を含む、撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料。
[15] [1]~[10]のいずれかに記載の縮合環化合物を含む、撮像素子用光電変換素子用正孔輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電子ブロッキング材料。
[16] [1]~[10]のいずれかに記載の縮合環化合物を含む、有機薄膜。
[17] [1]~[10]のいずれかに記載の縮合環化合物を含む、有機電子素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、応答速度に優れ、暗電流が低く、外部量子効率が高い光電変換素子の作製に資する縮合環化合物、および該化合物を含む光電変換素子用材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一態様にかかる撮像素子用光電変換素子用材料を含む撮像素子用光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一態様にかかる縮合環化合物について詳細に説明する。
【0014】
≪縮合環化合物≫
本開示の一態様にかかる縮合環化合物は、下記式(1)で表される。
【化3】
【0015】
式中、
~R18はそれぞれ独立して、
水素原子または置換基を表す。ただし、R~R18の少なくとも1つ以上は、
重水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、チオール基、アリル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、
置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、
置換基を有していてもよいシリル基、
炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基、
炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルキル基、
炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルコキシ基、または、
下記式(2)で表される基である。
【0016】
【化4】
式中、
~Rはそれぞれ独立して、
水素原子、重水素原子、
置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、または、
炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルキル基を表し;
Yは、それぞれ独立して、
置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基、または、
単結合を表し;
nは、1または2を表し、
Yが単結合の場合、nは1であり、
Yが単結合でない場合、nは1または2であり;
nが2の場合、複数のR~Rは、同一であっても異なっていてもよく;
Yは、隣接するRaおよびRbのいずれかまたは両方と結合し、環を形成してもよい。
【0017】
上記特定の構造を有することで、上記式(1)で表される縮合環化合物は、応答速度に優れ、暗電流が低く、外部量子効率が高い光電変換素子の作製に資する縮合環化合物、および該化合物を含む光電変換素子用材料を提供することができる。
【0018】
上記式(1)における定義の好ましい態様は以下のとおりである。
【0019】
<R~R18
~R18としての置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基(以下、「(a-1)で示される基」とも称する)としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フルオレニル基、フルオランテニル基、アントリル基、フェナントリル基、ベンゾフルオレニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基、ジフェニルフルオレニル基、ジベンゾ[g,p]クリセニル基等が挙げられる。また、炭素数6~30の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基は、炭素数6~18の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0020】
なお、R~R18としての芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、該置換基は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、チオール基、置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、置換基を有していてもよいシリル基、炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族基、またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基であることが好ましい。これらの中では、アルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族基がより好ましい。
【0021】
上記置換基であるホスフィンオキシド基としては、無置換のホスフィンオキシド基、置換基を有するホスフィンオキシド基が挙げられる。置換基を有するホスフィンオキシド基であることが好ましい。
【0022】
上記置換基である置換基を有するホスフィンオキシド基としては、炭素数6~18の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基、または、縮環のヘテロ芳香族基を有するホスフィンオキシド基が好ましい。具体的には、例えば、ジフェニルホスフィンオキシド等、2つのアリール基で置換された基が挙げられる。
【0023】
上記置換基であるシリル基としては、無置換のシリル基、置換基を有するシリル基が挙げられる。置換基を有するシリル基であることが好ましい。
【0024】
上記置換基である置換基を有するシリル基としては、炭素数6~18の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基、または、縮環のヘテロ芳香族基を有するシリル基が好ましい。具体的には、例えば、トリフェニルシリル基等、3つのアリール基で置換された基が挙げられる。
【0025】
上記置換基である炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基としては、例えば、ジヒドロキシボリル基(-B(OH))、4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]-ジオキサボロラニル基、5,5-ジメチル-[1,3,2]-ジオキサボリナン基等が挙げられる。
【0026】
上記置換基であるアルキル基としては、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましい。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0027】
上記置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
上記置換基である芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フルオレニル基、フルオランテニル基、アントリル基、フェナントリル基、ベンゾフルオレニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基、ジフェニルフルオレニル基、ジベンゾ[g,p]クリセニル基等が挙げられる。
【0029】
上記置換基であるヘテロ芳香族基としては、例えば、ピロリル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピリミジル基、ピラジル基、1,3,5-トリアジル基、1,3,5-トリアジルフェニル基、1,3,5-トリアジルビフェニリル基、4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジル基、インドリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、9-フェニルカルバゾリル基、9-(4-ビフェニリル)カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジン基、チアントレニル基等が挙げられる。
【0030】
~R18としての置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基(以下、「(a-2)で示される基」とも称する)としては、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を芳香環上に含有する炭素数3~36の単環、連結、もしくは縮環のヘテロ芳香族基が挙げられる。
【0031】
該ヘテロ芳香族基としては、例えば、ピロリル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピリミジル基、ピラジル基、1,3,5-トリアジル基、1,3,5-トリアジルフェニル基、1,3,5-トリアジルビフェニリル基、4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジル基、インドリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、9-フェニルカルバゾリル基、9-(4-ビフェニリル)カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジン基、チアントレニル基等が挙げられる。
【0032】
なお、R~R18としてのヘテロ芳香族基が置換基を有する場合、該置換基は、それぞれ独立して、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族基、またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基であることが好ましい。これらの中では、アルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロ芳香族基がより好ましい。
【0033】
上記置換基であるアルキル基としては、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましい。該アルキル基としては、前述したR~R18としての芳香族炭化水素基が置換基を有する場合において、該置換基として例示したアルキル基と同じものが挙げられる。
【0034】
上記置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基としては、前述したR~R18としての芳香族炭化水素基が置換基を有する場合において、該置換基として例示したアルコキシ基と同じものが挙げられる。
【0035】
上記置換基である芳香族炭化水素基としては、前述したR~R18としての芳香族炭化水素基が置換基を有する場合において、該置換基として例示した芳香族炭化水素基と同じものが挙げられる。
【0036】
上記置換基であるヘテロ芳香族基としては、前述したR~R18としての芳香族炭化水素基が置換基を有する場合において、該置換基として例示したヘテロ芳香族基と同じものが挙げられる。
【0037】
~R18としての置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基としては、無置換のホスフィンオキシド基、置換基を有するホスフィンオキシド基が挙げられる。置換基を有するホスフィンオキシド基であることが好ましい。
置換基を有するホスフィンオキシド基としては、炭素数6~18の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基、または、縮環のヘテロ芳香族基を有するホスフィンオキシド基が好ましい。具体的には、例えば、ジフェニルホスフィンオキシド等、2つのアリール基で置換された基が挙げられる。
【0038】
~R18としての置換基を有していてもよいシリル基としては、無置換のシリル基、置換基を有するシリル基が挙げられる。置換基を有するシリル基であることが好ましい。
置換基を有するシリル基としては、炭素数6~18の単環、連結、もしくは縮環の芳香族炭化水素基、または、縮環のヘテロ芳香族基を有するシリル基が好ましい。具体的には、例えば、トリフェニルシリル基等、3つのアリール基で置換された基が挙げられる。
【0039】
~R18としての炭素数2~10の飽和炭化水素基を有していてもよいボロニル基としては、例えば、ジヒドロキシボリル基(-B(OH))、4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]-ジオキサボロラニル基、5,5-ジメチル-[1,3,2]-ジオキサボリナン基等が挙げられる。
【0040】
~R18としての炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルキル基(以下、「(a-3)で示される基」とも称する)としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0041】
~R18としての炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
【0042】
(式(2)で表される基)
~R18としての上記式(2)で表される基において、RおよびRとしての置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基としては、例えば、前述した(a-1)で示される基と同じものが挙げられる。
【0043】
~R18としての上記式(2)で表される基において、RおよびRとしての置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基としては、例えば、前述した(a-2)で示される基と同じものが挙げられる。
【0044】
~R18としての上記式(2)で表される基において、RおよびRとしての炭素数1~18の直鎖もしくは分枝のアルキル基としては、例えば、前述した(a-3)で示される基と同じものが挙げられる。
【0045】
~R18としての上記式(2)で表される基において、Yとしての置換基を有していてもよい炭素数6~30の単環、連結、若しくは縮環の芳香族炭化水素基としては、例えば、前述した(a-1)で示される基と同じものが挙げられる。
【0046】
~R18としての上記式(2)で表される基において、Yとしての置換基を有していてもよい炭素数3~36の単環、連結、若しくは縮環のヘテロ芳香族基としては、例えば、前述した(a-2)で示される基と同じものが挙げられる。
【0047】
式(1)において、R~Rが水素原子であることが好ましい。
式(1)において、R~RおよびR13~R18が水素原子であることが好ましい。
式(1)においてR~R12の少なくとも一つ以上が上記式(2)で表される基であることが好ましい。
上記態様の縮合環化合物を用いることで、応答速度に優れ、暗電流が低く、外部量子効率が高い光電変換素子の作製に資する縮合環化合物を提供することができる。
【0048】
<縮合環化合物の物性>
以下に、式(1)で表される縮合環化合物の好ましい物性について説明する。
【0049】
(分子量)
式(1)で表される縮合環化合物の分子量は、特に限定されないが、昇華時の耐熱安定性の観点から、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。
【0050】
(HOMO値)
式(1)で表される縮合環化合物のHOMO値は、特に限定されないが、撮像素子用光電変換素子への適合性の観点から、5.0~6.5eVであることが好ましい。なお、このHOMO値は、蒸着膜に対して、大気中光電子収量分光装置による測定から得られた値である。
【0051】
(バンドギャップ)
式(1)で表される縮合環化合物のバンドギャップは、特に限定されないが、撮像素子用光電変換素子への適合性の観点から、2.5~4.0eVであることが好ましい。なお、このバンドギャップは、蒸着膜の吸収スペクトルの波長端から得られた値である。
【0052】
(LUMO値)
式(1)で表される縮合環化合物のLUMO値は、特に限定されないが、撮像素子用光電変換素子への適合性の観点から、2.0~3.5eVであることが好ましい。なお、このLUMO値は、上記HOMO値およびバンドギャップから得られた値である。
【0053】
(ガラス転移温度について)
式(1)で表される縮合環化合物のガラス転移温度は、特に限定されないが、撮像素子用光電変換素子への適合性の観点から、130℃以上であることが好ましい。なお、このガラス転移温度は、示差走査熱量測定から得られた値である。
【0054】
<縮合環化合物の好ましい具体例>
以下に、式(1)で表される縮合環化合物について、好ましい化合物を例示するが、該縮合環化合物はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0055】
表B-1~B-4は、表A-1~A-2に示された(A)~(K)の骨格を有し、かつ、該骨格が有する置換基Rが、表B-1~B-4に示された基である、(X-m)の化合物を示している。
ここで、mは1~130の任意の整数を示している。すなわち、(X-m)の化合物とは、(X-1)~(X-130)の化合物を示している。また、XはA~Kの任意の記号を表す。
したがって、例えば、m=6である(X-6)という化合物の場合、X=Aのときは、(A)の骨格を有し、該骨格が有する置換基Rがメチル基である(A-6)の化合物を示している。
【0056】
【表A-1】
【0057】
【表A-2】
【0058】
【表B-1】
【0059】
【表B-2】
【0060】
【表B-3】
【0061】
【表B-4】
【0062】
<縮合環化合物の用途>
式(1)で表される縮合環化合物は、有機電子素子用材料または光電変換素子用材料として用いることができる。すなわち、本実施形態の有機電子素子用材料または光電変換素子用材料は、式(1)で表される縮合環化合物を含む。
光電変換素子用材料としては、例えば、撮像素子用光電変換素子用材料が挙げられる。撮像素子用光電変換素子用材料としては、例えば、撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料が好ましい。撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料としては、例えば、撮像素子用光電変換素子用正孔輸送材料が好ましい。撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料としては、例えば、撮像素子用光電変換素子用電子ブロッキング材料が好ましい。
有機電子素子としては、有機エレクトロルミネセンス素子、有機光電変換素子が挙げられる。有機電子素子用材料としては、有機エレクトロルミネセンス素子用材料、有機光電変換素子用材料が挙げられる。式(1)で表される縮合環化合物を含む有機電子素子用材料は、有機薄膜として用いることが好ましい。
【0063】
<各種材料の物性>
式(1)で表される縮合環化合物を含む前述した各種の材料の好ましい分子量、HOMO値、バンドギャップ、LUMO値、およびガラス転移温度は、前述した式(1)で表される縮合環化合物の好ましい分子量、HOMO値、バンドギャップ、LUMO値、およびガラス転移温度と同じである。
【0064】
以下、一例として、本実施形態にかかる撮像素子用光電変換素子について説明する。
【0065】
≪撮像素子用光電変換素子≫
本実施形態の撮像素子用光電変換素子は、前述した撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料を含む。
撮像素子用光電変換素子の構成については特に限定されないが、例えば、以下に示す(i)~(v)の構成が挙げられる。
【0066】
(i)下部電極/光電変換層/上部電極
(ii)下部電極/電子輸送層(正孔ブロッキング層)/光電変換層/上部電極
(iii)下部電極/光電変換層/正孔輸送層(電子ブロッキング層)/上部電極
(iv)下部電極/電子輸送層(正孔ブロッキング層)/光電変換層/正孔輸送層(電子ブロッキング層)/上部電極
(v)下部電極/電子輸送層(正孔ブロッキング層)/光電変換層/正孔輸送層(電子ブロッキング層)/バッファ層/上部電極
【0067】
なお、バッファ層は、必要に応じて、他の名称または機能を有する層で置き換えてもよい。他の名称または機能を有する層としては、例えば、正孔注入層、仕事関数調整層などが挙げられる。
撮像素子用光電変換素子は、電子輸送層(正孔ブロッキング層)、光電変換層、正孔輸送層(電子ブロッキング層)及びバッファ層からなる群より選択される少なくとも1層に撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料を含んでいてよい。また、撮像素子用光電変換素子は、光電変換層及び/又は正孔輸送層(電子ブロッキング層)に撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料を含むことが好ましく、正孔輸送層(電子ブロッキング層)に撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料を含むことがより好ましい。なお、撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料は、撮像素子用光電変換素子が備える複数の層に含まれていてもよい。
【0068】
以下、本実施形態にかかる撮像素子用光電変換素子を、上記(v)の構成を例に挙げて、図1を参照しながらより詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかる撮像素子用光電変換素子用正孔輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電子ブロッキング材料を含む撮像素子用光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【0069】
図1の撮像素子用光電変換素子100は、基板1、下部電極2、電子輸送層(正孔ブロッキング層)3、光電変換層4、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5、バッファ層6、及び上部電極7をこの順で備える。なお、本実施形態の撮像素子用光電変換素子は、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、他の層が追加されていてもよい。
【0070】
撮像素子用光電変換素子100では、透明な下部電極2の下方から、光が入射する。また、撮像素子用光電変換素子100は、光電変換層4で発生した電荷(正孔及び電子)のうち、電子が下部電極2に移動し、正孔が上部電極7に移動するように、電圧が印加される。すなわち、撮像素子用光電変換素子100は、下部電極2を電子捕集電極とし、上部電極7を正孔捕集電極としている。
【0071】
[撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料を含む層]
撮像素子用光電変換素子100は、電子輸送層(正孔ブロッキング層)3、光電変換層4、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5及びバッファ層6からなる群より選択される少なくとも1層に撮像素子用光電変換素子用材料を含む。撮像素子用光電変換素子100は、光電変換層4及び/又は正孔輸送層(電子ブロッキング層)5に撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料を含むことが好ましく、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5に撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料を含むことがより好ましい。なお、撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料は、撮像素子用光電変換素子100が備える複数の層に含まれていてもよい。
【0072】
以下、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5が撮像素子用光電変換素子用正孔輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電子ブロッキング材料を含む撮像素子用光電変換素子100について説明する。
【0073】
[基板1]
基板としては特に限定はなく、例えばガラス板、石英板、プラスチック板等が挙げられる。基板1側から光が入射する構成の場合、基板1は光の波長に対して高い透過性(例えば、透過率80%以上、好ましくは透過率90%以上)を有することが好ましい。
【0074】
[下部電極2]
基板1上には下部電極2が設けられている。
光が下部電極2を通過して、光電変換層に入射する構成の撮像素子用光電変換素子の場合、下部電極2は入射する光の波長に対して高い透過性(例えば、透過率80%以上、好ましくは透過率90%以上)を有することが好ましい。
【0075】
下部電極2に用いられる透明材料としては、特に限定されない。光透過性に優れる観点からは、下部電極2を構成する材料は、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、硫化亜鉛等の金属硫化物等であってよい。
【0076】
なお、上部電極7側のみから光が光電変換層に入射する構成の撮像素子用光電変換素子の場合、下部電極2の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の下部電極2に用いられる材料の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等であってよい。
【0077】
[電子輸送層(正孔ブロッキング層)3]
下部電極2と光電変換層4との間には、電子輸送層(正孔ブロッキング層)3が設けられている。
【0078】
電子輸送層(正孔ブロッキング層)3は、光電変換層4で発生した電子を下部電極2へ輸送する役割と、光電変換層4で発生した正孔が下部電極2へ移動するのをブロックする役割とを有する。
【0079】
電子輸送層(正孔ブロッキング層)3は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。電子輸送層(正孔ブロッキング層)3は、例えば、正孔ブロッキング性に特化した材料からなる光電変換層4と隣接する層と、電子輸送性に特化した材料からなる下部電極2に隣接する層と、を含む2層構造であってよい。
【0080】
電子輸送層(正孔ブロッキング層)3は、従来公知の電子輸送材料を含有する層であってよい。従来公知の電子輸送材料としては、例えば、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジン、N,N’-ジフェニル-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、およびN,N’-ジ(4-ピリジル)-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
【0081】
[光電変換層4]
電子輸送層(正孔ブロッキング層)3と後述する正孔輸送層(電子ブロッキング層)5との間には、光電変換層4が設けられている。光電変換層4は、光電変換機能を有する材料を含む。
【0082】
光電変換層4は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
一種の材料からなる単層構造の光電変換層としては、例えば、クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体等の材料からなる光電変換層が挙げられる。
二種の材料からなる単層構造である光電変換層としては、例えば、(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体からなる群より選択される第一の材料と、(ii)フラーレンおよびその誘導体からなる群より選択される第二の材料とを含む光電変換層が挙げられる。当該光電変換層は、(iii)正孔輸送材料を更に含んでいてもよい。これらの材料からなる光電変換層4は、例えば、各材料の粉末を混合した混合粉末を用いた蒸着により形成してもよく、任意の割合で各材料を共蒸着することで形成してもよい。
【0083】
(i)クマリン誘導体の具体例としては、クマリン6、クマリン30等が挙げられる。キナクリドン誘導体の具体例としては、N,N-ジメチルキナクリドン等が挙げられる。フタロシアニン誘導体の具体例としては、ホウ素サブフタロシアニンクロリド、ホウ素サブナフタロシアニンクロリド(SubNC)等が挙げられる。
(ii)フラーレンおよびその誘導体の具体例としては、[60]フラーレン、[70]フラーレン、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチル([60]PCBM)等が挙げられる。
(iii)正孔輸送材料は、公知の正孔輸送材料であってよい。正孔輸送材料としては、例えば、芳香族第三級アミン化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、テトラセン化合物、ペンタセン化合物、フェナントレン化合物、ピレン化合物、ペリレン化合物、フルオレン化合物、カルバゾール化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピセン化合物、チオフェン化合物、ベンゾトリフラン化合物、ベンゾトリチオフェン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾジチオフェン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が挙げられる。これらの中でも、フルオレン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が好ましく、フルオレン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物がより好ましい。
【0084】
正孔輸送材料の具体例としては、9,9’-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7’-ジイル)ビス[9H-カルバゾール]、2,7-ジフェニル[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン(DiPh-BTBT)、ベンゾ[1,2-b:3,4-b’:5,6-b’’]トリフラン化合物、ベンゾ[1,2-b:3,4-b’:5,6-b’’]トリチオフェン化合物、ナフト[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン、ナフト[2,3-b]ナフト[2’,3’:4,5]チエノ[2,3-d]チオフェン、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジフラン、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ビス[1]ベンゾチオフェン、ナフト[1,2-b:5,6-b’]ビス[1]ベンゾチオフェン、クリセノ[1,2-b:8,7-b’]ジチオフェン、[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン、下記式(ic-1)で表される化合物、下記式(ic-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0085】
【化5】
【0086】
なお、上述の光電変換機能を有する材料は、光電変換層4のみに含有されていてもよく、光電変換層4以外の層にも含有されていてもよい。例えば、光電変換層4に隣接した層(電子輸送層(正孔ブロッキング層)3、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5)は、光電変換機能を有する材料を含有していてもよい。
【0087】
[正孔輸送層(電子ブロッキング層)5]
光電変換層4と後述するバッファ層6との間には、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5が設けられている。
【0088】
正孔輸送層(電子ブロッキング層)5は、光電変換層4で発生した正孔を上部電極7側へ輸送する役割と、光電変換層4で発生した電子が上部電極7側へ移動するのをブロックする役割とを有する。正孔輸送層(電子ブロッキング層)5は、上述の撮像素子用光電変換素子用電荷輸送材料または撮像素子用光電変換素子用電荷ブロッキング材料を含むことが好ましい。
【0089】
正孔輸送層(電子ブロッキング層)5は、一種又は二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。正孔輸送層(電子ブロッキング層)5は、例えば、電子ブロッキング性に特化した材料からなる光電変換層4と隣接する層と、正孔輸送性に特化した材料からなるバッファ層6に隣接する層と、を含む2層構造であってよい。
【0090】
正孔輸送層(電子ブロッキング層)5は、上述の撮像素子用光電変換素子用材料に加えて、更に、従来公知の正孔輸送材料を含んでいてもよい。従来公知の正孔輸送材料の好ましい化合物及び具体例としては、光電変換層4の項目に記載した正孔輸送材料と同じものが挙げられる。
【0091】
[バッファ層6]
正孔輸送層(電子ブロッキング層)5と後述する上部電極7との間には、バッファ層6が設けられている。バッファ層6は、上部電極7をスパッタリング法により形成する場合、スパッタリング時の有機層(例えば正孔輸送層(電子ブロッキング層)5)へのダメージを低減する役割がある。また、バッファ層6の仕事関数を調整することで、正孔輸送層(電子ブロッキング層)5から正孔を効率よく受容する役割もあり、正孔注入層又は仕事関数調整層とも呼ばれる。
【0092】
バッファ層6を構成する材料は公知の材料であってよく、例えば、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(HATCN)等であってよい。
【0093】
[上部電極7]
バッファ層6上には上部電極7が設けられている。
上部電極7の材料は特に限定されず、例えば、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、銀、マグネシウム/銀混合物、アルミニウム、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等であってよい。
【0094】
[各層の形成方法]
下部電極2および上部電極7以外の各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて更に結着樹脂等の材料、溶剤等)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法等の公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
下部電極2及び上部電極7以外の各層の厚さは特に限定されず、状況に応じて適宜選択することができる。下部電極2及び上部電極7以外の各層の厚さは、通常は5nm以上5μm以下の範囲である。
【0095】
下部電極2および上部電極7は、電極材料を蒸着、スパッタリング等の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
下部電極2及び上部電極7はパターンを有する場合、例えば、所望の形状のマスクを介してパターンを形成できる。また、蒸着、スパッタリング等によって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0096】
下部電極2および上部電極7の膜厚は、1μm以下であってよく、10nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0097】
下部電極2および上部電極7は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えても良い(逆型構造とも呼ばれる)。このような構造の場合、光は上部電極7を通過して、光電変換層4に入射する構成の撮像素子用光電変換素子となる。
【0098】
本実施形態にかかる光電変換素子を備えた撮像素子は、例えば、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像素子、および、携帯電話等に内蔵された撮像素子等に適用することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0099】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0100】
[合成例-1] 9-{3-[3-クロロ-6-(ピロリジン-1-イルジアゼニル)フェニル]ナフタレン-2-イル}フェナントレンの合成
【化6】
【0101】
アルゴン気流下、200mLのニ口フラスコに、トリフルオロメタンスルホン酸2-[3-(9-フェナントレニル)]ナフチル(5.25g,11.6mmоl)、4-クロロ-[2-(ピロリジン-1-イルジアゼニル)フェニル]ボロン酸(4.41g,17.4mmоl)、ジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(0.43g,0.58mmоl)、4Мの水酸化ナトリウム水溶液(5.80mL,23.2mmоl)、および1,4-ジオキサン(60mL)を加え、100℃で7時間攪拌した。室温まで冷却後、トルエンと純水を加えて分液し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、再沈殿(トルエン/1-ブタノール)により9-{3-[3-クロロ-6-(ピロリジン-1-イルジアゼニル)フェニル]ナフタレン-2-イル}フェナントレンの白色粉末を5.20g(10.2mmоl、収率87.5%)得た。
【0102】
[合成例-2] 11-クロロトリベンゾ[b,g,p]クリセンの合成
【化7】
【0103】
アルゴン気流下、100mLのニ口フラスコに、9-{3-[3-クロロ-6-(ピロリジン-1-イルジアゼニル)フェニル]ナフタレン-2-イル}フェナントレン(2.00g,3.91mmоl)およびクロロベンゼン(28mL)を加え、この溶液を撹拌しながら0℃に冷却し、別途調整した三臭化鉄(1.50g,5.78mmоl)のニトロメタン溶液(2mL)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液に純水を加え、クロロホルムと純水で分液し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、再沈殿(トルエン/ヘキサン)により11-クロロトリベンゾ[b,g,p]クリセンの白色粉末を1.50g(3.63mmоl、収率93.0%)得た。
化合物の同定はH-NMR測定により行った。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):9.10(s,1H),9.05(s,1H),8.85(dd,1H),8.75-8.71(m,3H),8.58(dd,1H),8.52(d,1H),8.15(d,1H),8.03(d,1H),7.76-7.55(m,7H)
【0104】
[合成実施例-1]11-[ビス(4-ビフェニリル)アミノ]トリベンゾ[b,g,p]クリセン(化合物(F-91))の合成
【化8】
【0105】
アルゴン気流下、100mLのニ口フラスコに、11-クロロトリベンゾ[b,g,p]クリセン(1.50g,3.63mmоl)N,N-ビスビフェニリルアミン(1.40g,4.36mmоl)、酢酸パラジウム(16.3mg,0.073mmоl)、トリ-t-ブチルホスフィン(25%キシレン溶液)(0.14mL,0.15mmоl)、ナトリウム-tert-ブトキシド(0.52g,5.45mmоl)およびキシレン(25mL)を加え、140℃で4時間攪拌した。室温まで冷却後、トルエンと純水を加えて分液し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、再沈殿(トルエン/1-ブタノール)により、11-[ビス(4-ビフェニリル)アミノ]トリベンゾ[b,g,p]クリセンの黄色粉末を1.40g(2.01mmоl)得た(収率55.2%,HPLC純度99.8%)。化合物(F-91)の昇華温度は310℃であり、昇華品の化合物(F-91)はガラス状であることを確認した。
化合物の同定はH-NMR測定により行った。
H-NMR(DMSO-d6)δ(ppm):9.15(d,2H),8.95-8.83(m,3H),8.67(d,1H),8.64(dd,1H),8.57(d,1H),8.24-8.16(m,2H),7.82-7.70(m,12H),7.72-7.57(m,2H),7.50-7.45(m,5H),7.37-7.31(m,6H)
【0106】
(比較例-1)
比較例-1として、下記式で表される化合物(X1)を用いた。なお、化合物(X1)は、特開2019-034939号公報に開示された方法にしたがい、合成した。
【化9】
【0107】
(ガラス転移温度)
日立ハイテクサイエンス社製のDSC7020を用いて測定した。
結果を表1に示す。
【0108】
(バンドギャップ)
化合物の蒸着膜(石英基板上に0.10nm/秒の速度で100nm成膜したもの)のHOMO値と、吸収スペクトルの波長端から算出した。蒸着膜のHOMO値は、理研計器社製の大気中光電子分光装置(AC-3)を用いて測定し、吸収スペクトルは日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計(V-750)を用いて測定した。
結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
(素子実施例A-1:化合物(F-91)を用いた撮像素子用光電変換素子の作製)
図1に示すように、基板1/下部電極2/電子輸送層(正孔ブロッキング層)3/光電変換層4/正孔輸送層(電子ブロッキング層)5/バッファ層6/上部電極7からなる積層構成を有する撮像素子用光電変換素子100を作製し、特性を評価した。
【0111】
(基板1及び下部電極2の用意)
下部電極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0112】
(真空蒸着)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層を積層した。具体的には、真空蒸着槽内に、ITO透明電極付きガラス基板を導入し、7.0×10-5Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層を作製した。
(1)電子輸送層(正孔ブロッキング層)3の作製)
昇華精製した4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジンを0.10nm/秒の速度で10nm成膜し、電子輸送層(正孔ブロッキング層)3を作製した。
(2)光電変換層4の作製
N,N-ジメチルキナクリドン及びC60を4:1(質量比)の割合で120nm成膜し、光電変換層4を作製した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
(3)正孔輸送層(電子ブロッキング層)5の作製
昇華精製した化合物(F-91)を0.10nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送層5を作製した。
(4)バッファ層6の作製
昇華精製した2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(HATCN)を0.10nm/秒の速度で10nm成膜し、バッファ層6を作製した。
【0113】
(5)(上部電極7の作製)
基板上のITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、上部電極7を成膜した。上部電極は、銀を80nm成膜した。銀の成膜速度は0.1nm/秒であった。
【0114】
上記の方法により、面積4mmの撮像用光電変換素子を作製した。なお、各層の厚さは、触針式膜厚測定計(DEKTAK、Bruker社製)で測定した。作成した素子は、酸素及び水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップとビスフェノールF型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0115】
(素子比較例A-1)
素子実施例A-1の正孔輸送層104の作製において、化合物(F-91)の代わりに、(X1)を用いたこと以外は、素子実施例A-1と同様の方法により、素子比較例A-1の撮像素子用光電変換素子を作製した。
【0116】
(暗電流、外部量子効率及び応答時間の測定)
上記のとおり作製した撮像素子用光電変換素子に、下部電極2側に電子が、上部電極7側に正孔が輸送される様に、絶対値として2.5Vの電圧を印加したときの、暗所での電流(暗電流)、外部量子効率及び応答時間を評価した。暗電流は、ケースレー社製ソース・メジャー・ユニット2636Bを用いて評価した。外部量子効率は、太陽電池分光感度測定装置(相馬光学社製)を用い、照射光の波長は560nmで、強度50μW/cmで測定を行った。応答時間は、光パルスを照射し、照射後、電流値が照射前に戻るまでの時間を測定した。
【0117】
結果を表2に示す。なお、表2に示す結果は、素子比較例A-1における結果を基準値(1.0)とした相対値である。暗電流は数値が低いほど性能に優れ、外部量子効率は数値が高いほど性能に優れ、応答時間は短いほど性能に優れることを示す。得られた測定結果を表1に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
表2に示すとおり、特定の撮像素子用光電変換素子用材料を用いた実施例の素子は、比較例の素子と比較して、応答速度に優れ、暗電流が抑制され、高い外部量子効率が得られ、且つ、応答性に優れていた。
【符号の説明】
【0120】
1 基板
2 下部電極
3 電子輸送層(正孔ブロッキング層)
4 光電変換層
5 正孔輸送層(電子ブロッキング層)
6 バッファ層
7 上部電極
100 撮像素子用光電変換素子
図1