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特開2024-137282ガスバリアフィルム、積層フィルム及び包装袋
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  • 特開-ガスバリアフィルム、積層フィルム及び包装袋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137282
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ガスバリアフィルム、積層フィルム及び包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240927BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D30/02
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048747
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】浅輪 賢志
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 甲介
(72)【発明者】
【氏名】佐野 薫
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 健太
(72)【発明者】
【氏名】田邉 貫太
【テーマコード(参考)】
3E064
4F100
【Fターム(参考)】
3E064BA26
3E064BA30
3E064BA54
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC20
3E064EA30
3E064HM01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK02C
4F100AK04C
4F100AK07C
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK43A
4F100AL07C
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10C
4F100CB03C
4F100EA02
4F100EH17
4F100EH20
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB16
4F100JA04A
4F100JA05B
4F100JA06
4F100JA11A
4F100JD02
4F100JD03
4F100JD04
4F100JK03
4F100JK06
4F100JL12C
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】優れたガスバリア性及び引裂強度を有するアルミニウムフリーのガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】本発明の一態様によるガスバリアフィルムは、基材層と、前記基材層の一方の面に積層された補助層とを有し、前記基材層は、融点が230℃以下である液晶ポリマーからなり、前記補助層は、ポリエステル樹脂を含み、前記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と、ジエチレングリコール成分を1mol%~5mol%含む多価アルコール成分との重縮合物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一方の面に積層された補助層とを有し、
前記基材層は、融点が230℃以下である液晶ポリマーからなり、
前記補助層は、ポリエステル樹脂を含み、
前記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と、ジエチレングリコール成分を1mol%~5mol%含む多価アルコール成分との重縮合物であるガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、-10℃~40℃である請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記液晶ポリマーは、前記液晶ポリマーを構成するモノマー成分として、p-ヒドロキシ安息香酸成分及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分を含む請求項2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記基材層の厚さをA、前記補助層の厚さをBとすると、B/Aは、0.1~0.4である請求項3に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記補助層の厚さは、10μm~30μmである請求項4に記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
流れ方向の引裂強度は、0.80N/100μm以上である請求項5に記載のガスバリアフィルム。
【請求項7】
前記基材層と前記補助層との流れ方向及び幅方向の接着強度は、それぞれ2.0N以上である請求項6に記載のガスバリアフィルム。
【請求項8】
前記基材層と前記補助層との幅方向の接着強度は、流れ方向の接着強度より大きい請求項7に記載のガスバリアフィルム。
【請求項9】
前記基材層及び前記補助層が、共押出成形によりフィルム状に形成されている請求項8に記載のガスバリアフィルム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムと、
前記補助層の表面に積層されたシーラント層とを有し、
前記シーラント層は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び環状オレフィン系樹脂の1種以上を含む積層フィルム。
【請求項11】
前記シーラント層は、イソフタル酸で変性されたイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートを含む請求項10に記載の積層フィルム。
【請求項12】
前記ガスバリアフィルムに対して前記シーラント層と反対側に設けられた他の層を有し、
前記他の層は、液晶ポリマー以外の樹脂を含む請求項11に記載の積層フィルム。
【請求項13】
請求項10に記載の積層フィルムを用いて形成された包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアフィルム、積層フィルム及び包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医薬品等の内容物を収容する包装袋として、例えば、フィルムや紙等からなる基材層の内面に複数の層が積層された積層フィルムからなる包装袋が広く使用されている。このような包装袋に用いられる積層フィルムとしては、一般的に、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素等、内容物を変質させる気体の進入を遮断するガスバリア性を有する積層フィルムが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材層/第一接着層/ガスバリア層/第二接着層/シーラント層を、順次積層した積層フィルムを、該シーラント層を内面とし、シールしてシール部を形成してなる包装袋が開示されている。また、ガスバリア層が、アルミニウム蒸着または無機酸化物を蒸着したポリエステルフィルムであることによりガスバリア性に優れ、香りの品質を長く保持することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-5013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の積層フィルムでは、ガスバリア層が、アルミニウム蒸着したポリエステルフィルムやアルミ箔である場合が多く、このようなアルミニウムを含む積層フィルムは、製造や廃棄の工程でCOの発生量が多くなり、また、廃棄の際の分別回収が難しいという問題がある。この問題に対して、ガスバリア層として、優れたガスバリア性を有する液晶ポリマーを用いることが考えられるが、液晶ポリマーは、単体ではフィルムに加工する場合、引裂強度に欠けるという欠点がある。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、優れたガスバリア性及び引裂強度を有するアルミニウムフリーのガスバリアフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるガスバリアフィルムは、基材層と、前記基材層の一方の面に積層された補助層とを有し、前記基材層は、融点が230℃以下である液晶ポリマーからなり、前記補助層は、ポリエステル樹脂を含み、前記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と、ジエチレングリコール成分を1mol%~5mol%含む多価アルコール成分との重縮合物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、優れたガスバリア性及び引裂強度を有するアルミニウムフリーのガスバリアフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるガスバリアフィルムの断面を示す模式図である。
図2】一実施形態による積層フィルムの断面を示す模式図である。
図3】一実施形態による包装袋の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断りがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
(ガスバリアフィルム)
図1は、一実施形態によるガスバリアフィルム1の断面を示す模式図である。本実施形態のガスバリアフィルム1は、基材層2と、基材層2の一方の面に積層された補助層3とを有する。
【0012】
基材層2は、融点が230℃以下である液晶ポリマー(A)からなり、補助層3は、ポリエステル樹脂(B)を含み、ポリエステル樹脂(B)は、多価カルボン酸成分と、ジエチレングリコール成分を1mol%~5mol%含む多価アルコール成分との重縮合物である。この構成により、ガスバリアフィルム1は、外側からの気体の侵入を遮断することができ、優れたガスバリア性を発揮することができる。また、ジエチレングリコール成分を1mol%~5mol%含む多価アルコール成分により、ポリエステル樹脂(B)の柔軟性を向上させることができるため、ガスバリアフィルム1は、優れた引裂強度を有する。そして、ガスバリアフィルム1は、優れた引裂強度を有するため、良好な加工性を有する。なお、本明細書において、ガスバリア性とは、気体を遮断する特性であり、水蒸気を遮断する水蒸気バリア性、及び酸素を遮断する酸素バリア性を含む。また、ジエチレングリコール成分を1mol%~5mol%含む多価アルコール成分により、ポリエステル樹脂(B)の柔軟性を向上させることができるため、基材層2と補助層3との、特に幅方向の接着強度を高めることができ、ガスバリアフィルム1は、基材層2から補助層3が剥離することを抑制することができる。
【0013】
本実施形態のガスバリアフィルム1は、アルミニウムフリー(アルミニウムを含まない)であるため、製造や廃棄の工程でCOの発生量を削減することができる。また、廃棄の際、ガスバリアフィルム1は、プラスチックごみとして廃棄することができるため、容易に分別回収することができる。さらに、本実施形態のガスバリアフィルム1は、アルミニウムフリーであるため、金属製の異物等を検出する金属検出機を用いる生産ラインで使用することができる。
【0014】
基材層2を構成する液晶ポリマー(A)の融点は、220℃以下であることが好ましい。液晶ポリマー(A)の融点が、220℃以下であることにより、成形時の温度を比較的低くすることができ、補助層3のポリエステル樹脂(B)が、熱分解等により変化することを抑制することができる。よって、ガスバリアフィルム1は、より優れた引裂強度を発揮することができる。
【0015】
液晶ポリマー(A)を構成するモノマーとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸ハイドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4'-ビフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0016】
液晶ポリマー(A)は、液晶ポリマー(A)を構成するモノマー成分として、p-ヒドロキシ安息香酸成分及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分を含むことが好ましい。液晶ポリマー(A)が、モノマー成分として、p-ヒドロキシ安息香酸成分及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分を含むことにより、ガスバリアフィルム1は、より優れたガスバリア性を発揮することができると共に、優れた引裂強度を有する。液晶ポリマー(A)は、ガスバリア性を高める観点から、モノマー成分として、p-ヒドロキシ安息香酸成分及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分を主成分として含むことがさらに好ましい。ここで、主成分とは、液晶ポリマー(A)を構成するモノマー成分として、50mol%以上含むことを意味する。
【0017】
液晶ポリマー(A)は、液晶ポリマー(A)を構成するモノマー成分として、テレフタル酸成分及びハイドロキノン成分をさらに含むことが好ましい。これにより、ガスバリアフィルム1は、さらに優れたガスバリア性を発揮することができると共に、優れた引裂強度を有する。
【0018】
液晶ポリマー(A)を構成するモノマー成分は、芳香族化合物であることが好ましい。これにより、ガスバリアフィルム1は、より優れたガスバリア性を発揮することができると共に、優れた引裂強度を有する。
【0019】
液晶ポリマー(A)としては、例えば、Celanese社製のVECTORA(登録商標)、ZENITE(登録商標)、Polyplastics社製のLAPEROS(登録商標)、ENEOS社製のXYDAR(登録商標)、住友化学社製のスミカスーパー LCP(登録商標)、上野製薬社製のUENO LCP(登録商標)等が挙げられる。
【0020】
補助層3に含まれるポリエステル樹脂(B)を構成する多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0021】
ポリエステル樹脂(B)を構成する多価アルコール成分としては、ジエチレングリコール以外では、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジプロピル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-イソプロピル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-イソプロピル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂(B)は、非液晶性であり液晶ポリマー(A)とは異なる。
【0022】
ポリエステル樹脂(B)は、テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、エチレングリコール成分、及び1,4-ブタンジオール成分を含むジオール成分からなる変性ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。これにより、ガスバリアフィルム1は、優れたガスバリア性を発揮することができると共に、より優れた引裂強度を有する。また、基材層2と補助層3との、特に幅方向の接着強度をより高めることができ、基材層2から補助層3が剥離することをより抑制することができる。
【0023】
ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度は、-10℃~40℃であることが好ましく、10℃~30℃であることがより好ましい。ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度が、-10℃~40℃であることにより、ポリエステル樹脂(B)の柔軟性をより向上させることができるため、ガスバリアフィルム1は、より優れた引裂強度を有する。また、基材層2と補助層3との、特に幅方向の接着強度をより高めることができ、ガスバリアフィルム1は、基材層2から補助層3が剥離することをより抑制することができる。
【0024】
基材層2の厚さをA、補助層3の厚さをBとすると、B/Aは、0.1~0.4であることが好ましく、0.2~0.3であることがより好ましい。B/Aが、0.1~0.4であることにより、ガスバリアフィルム1は、より優れたガスバリア性を発揮することができると共に、より優れた引裂強度を有する。
【0025】
基材層2の厚さは、特に限定されないが、総厚100μmに対して70μm~90μmであってよく、補助層3の厚さは、10μm~30μmであってよい。基材層2の厚さが、70μm~90μmであり、補助層3の厚さが、10μm~30μmであることにより、ガスバリアフィルム1は、より優れたガスバリア性を発揮することができると共に、より優れた引裂強度を有する。また、ガスバリアフィルム1を特に包装袋に好適に使用できる。
【0026】
ガスバリアフィルム1は、共押出成形によりフィルム状に形成されていることが好ましい。ガスバリアフィルム1は、共押出成形により、基材層2を構成する材料と、補助層3を構成する材料とを同時に溶融押出し、フィルム成形することができる。これにより、基材層2と補助層3とをラミネート法により積層する場合に比べて、基材層2と補助層3との接着強度を高めることができる。また、基材層2を構成する液晶ポリマー(A)は融点が230℃以下であるため、共押出成形の際の加熱温度を比較的低くすることができ、補助層3を構成するポリエステル樹脂(B)が熱分解等により変化することを抑制することができる。よって、ガスバリアフィルム1は、優れた引裂強度を発揮することができる。長尺のガスバリアフィルム1を連続的に成形し、成形後にフィルムの長尺成形体を巻き取る場合であっても、ガスバリアフィルム1は、優れた引裂強度を有するため裂けることを抑制することができる。
【0027】
ガスバリアフィルム1の流れ方向の引裂強度は、0.80N/100μm以上であることが好ましい。ここで、引裂強度は、JIS K 7128-1に準拠して測定した値を意味する。ガスバリアフィルム1の流れ方向の引裂強度が、0.80N/100μm以上であることにより、長尺のガスバリアフィルム1を連続的に成形し、成形後にフィルムの長尺成形体を巻き取る場合であっても、ガスバリアフィルム1は、より優れた引裂強度を有するため裂けることをより抑制することができる。
【0028】
基材層2と補助層3との流れ方向及び幅方向の接着強度は、それぞれ2.0N以上であることが好ましい。接着強度は、リング法により測定することができる。基材層2と補助層3との流れ方向及び幅方向の接着強度が、それぞれ2.0N以上であることにより、ガスバリアフィルム1は、基材層2から補助層3が剥離することをより抑制することができる。
【0029】
基材層2と補助層3との幅方向の接着強度は、流れ方向の接着強度より大きいことが好ましい。一般的に、長尺の積層フィルムを連続的に成形し、成形後に流れ方向に沿ってフィルムの長尺成形体を巻き取る場合、曲げの荷重がかかることにより、幅方向の端部において、基材層と補助層とが剥離し易くなる。本実施形態のガスバリアフィルム1では、基材層2と補助層3との幅方向の接着強度が、流れ方向の接着強度より大きいことにより、成形後に流れ方向に沿ってガスバリアフィルム1の長尺成形体を巻き取る場合においても、基材層2から補助層3が剥離することを抑制することができる。
【0030】
(積層フィルム)
図2は、一実施形態による積層フィルムの断面を示す模式図である。図2に示すように、本実施形態の積層フィルム5は、本実施形態のガスバリアフィルム1と、ガスバリアフィルム1の補助層3の表面に積層されたシーラント層4とを有する。シーラント層4は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び環状オレフィン系樹脂の1種以上を含む。シーラント層4は、積層フィルム5の一方の最表面となる。ここで、シーラント層4とは、ヒートシールに用いられる層であり、積層フィルム5を包装材料として用いた場合、内容物に接する最内層に配置される層である。補助層3とシーラント層4とは、接着剤層又はアンカー剤層を介して接合されていてもよいが、直接接合されていることが好ましい。シーラント層4は、耐熱性、機械的特性、及び印刷適性に優れた樹脂フィルムであることが好ましい。
【0031】
積層フィルム5を包装材料として用いる際、内容物と接するシーラント層4よりも外側にガスバリアフィルム1が位置することにより、外側からの気体の侵入を遮断することができ、本実施形態の積層フィルム5は、優れたガスバリア性を発揮することができる。また、積層フィルム5は、ガスバリアフィルム1を有することにより、優れた引裂強度を有する。そして、積層フィルム5は、優れた引裂強度を有するため、良好な加工性を有する。
【0032】
シーラント層4は、イソフタル酸で変性されたイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分とジオール成分との縮合重合によって得られる線状ポリエステル樹脂のうち、ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を主成分とし、イソフタル酸をさらに含有し、ジオール成分が、エチレングリコールを主成分とする共重合体である。ここで、主成分とは、最も含有率が大きい成分を意味する。シーラント層4が、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートであることにより、本実施形態の積層フィルム5は、さらに優れたガスバリア性を発揮することができる。また、シーラント層4がポリエステル系樹脂であることにより、ポリエステル樹脂(B)を含む補助層3との接着性を向上させることができる。
【0033】
イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートを構成するジカルボン酸成分におけるイソフタル酸成分の共重合比率は、3mol%~30mol%であることが好ましく、5mol%~25mol%であることが好ましい。ここで、ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸成分の共重合比率とは、ジカルボン酸成分のうちイソフタル酸成分が占める割合(mol百分率)である。ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸成分の共重合比率が、3mol%以上であることにより、本実施形態の積層フィルム5は、より優れたガスバリア性及び引裂強度を発揮することができる。また、ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸成分の共重合比率が、30mol%以下であることにより、積層フィルム5同士、若しくは積層フィルム5と他のフィルムをヒートシールする際の熱に耐え得る耐熱性、又は積層フィルム5で形成された包装袋等に高温の内容物が充填された際の内容物の熱に耐え得る耐熱性を有する積層フィルム5を提供することができる。
【0034】
シーラント層4の厚さは、包装材料の用途にも依存し、特に限定されるものではないが、例えば、10μm~50μmであってよい。
【0035】
シーラント層4は、樹脂以外の成分として、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0036】
積層フィルム5は、基材層2に対してシーラント層4と反対側に設けられた他の層を有していてよく、他の層は、液晶ポリマー以外の樹脂を含むことが好ましい。他の層は、例えば、中間層、接着剤層、アンカー剤層等の層を含んでいてもよい。中間層としては、補強層、ガスバリア層、遮光層、印刷層など、適宜、一層または複数層を選択することができる。
【0037】
積層フィルム5を製造する方法としては、特に限定されることなく、押出ラミネート法、ドライラミネート法、共押出法又はこれらの併用が挙げられる。また、成形後のフィルムを積層前に一軸延伸、二軸延伸することでフィルムの強度、及び耐熱変形性を向上させることができる。
【0038】
(包装袋)
図3は、一実施形態による包装袋10の概略図である。包装袋10は、本実施形態の積層フィルム5を用いて形成されている。図3に示すように、包装袋10は、積層フィルム5から形成された袋状の胴部11と、胴部11の周縁の少なくとも1箇所に接合された口部12とを有する。胴部11の形態は特に限定されないが、三方袋、四方袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。胴部11が、例えばバッグインボックス用の内袋など大型の包装袋であってもよい。
【0039】
口部12を構成する材料としては、包装袋10を構成する積層フィルム5のシーラント層4と接合して密封性が確保できれば好適に使用できるが、積層フィルム5のシーラント層4とヒートシール可能な樹脂であることが好ましい。これにより、口部12と積層フィルム5とをヒートシールによって接合することができる。このため、口部12を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましく、イソフタル酸変性PETがより好ましい。これにより、口部12を積層フィルム5のシーラント層4と容易にヒートシールすることができ、また、包装袋10のガスバリア性を向上させることができる。
【0040】
積層フィルム5と口部12とをヒートシールする場合、シーラント層4を内側として積層フィルム5を重ね合わせ、重なったシーラント層4同士の間に口部12を挿入してヒートシールしてよい。また、口部12の一端にフランジ部や舟形の融着基部を設け、このフランジ部や融着基部を積層フィルム5に設けた穴の周縁や包装袋の開口部内面とヒートシールしてもよい。
【実施例0041】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
液晶ポリマーとして、UENO LCP(登録商標)A-8100(上野製薬社製、密度ρ=1.40g/cm、融点Tm=220℃)、ポリエステル樹脂として、PRIT30(ベルポリエステルプロダクツ社製、密度ρ=1.24g/cm、融点Tm=188℃、ガラス転移温度Tg=30℃、極限粘度IV=0.75dl/g)を用いて、共押出法により、液晶ポリマーからなる厚さ80μmの基材層と、ポリエステル樹脂からなる厚さ20μmの補助層を積層した実施例1のガスバリアフィルムを作製した。
【0043】
実施例1で用いた液晶ポリマー(UENO LCP(登録商標)A-8100)は、モノマー成分として、p-ヒドロキシ安息香酸成分、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分、テレフタル酸成分、及びハイドロキノン成分を含有する。ポリエステル樹脂(PRIT30)は、テレフタル酸成分からなるジカルボン酸成分と、ジエチレングリコール成分を2mol%(その他、エチレングリコール成分、及び1,4-ブタンジオール成分を含む)含有するジオール成分からなる。
【0044】
(比較例1)
液晶ポリマーとして、UENO LCP(登録商標)A-8100(上野製薬社製、密度ρ=1.40g/cm、融点Tm=220℃)を用いて、Tダイ押出機により押出成形し、厚さ100μmの基材層のみからなる、比較例1のガスバリアフィルムを作製した。
(比較例2)
ポリエステル樹脂として、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(イソフタル酸成分の共重合比率12mol%、密度ρ=1.34g/cm、融点Tm=224℃、極限粘度IV=0.80dl/g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリマーからなる厚さ80μmの基材層と、ポリエステル樹脂からなる厚さ20μmの補助層とを積層した比較例2のガスバリアフィルムを作製した。
(比較例3)
ポリエステル樹脂として、ネオペンチルグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(商品名「ベルペット(登録商標)E-03」、ベルポリエステルプロダクツ社製、密度ρ=1.29g/cm、極限粘度IV=0.83dl/g、変性率16mol%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリマーからなる厚さ80μmの基材層と、ポリエステル樹脂からなる厚さ20μmの補助層とを積層した比較例3のガスバリアフィルムを作製した。
(比較例4)
ポリエステル樹脂として、変性ポリエチレンテレフタレート(ジオール成分:1,4―シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、1,4―ブタンジオール)(商品名「OKY100」、密度ρ=1.08g/cm、融点Tm=178℃、極限粘度IV=0.84dl/g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリマーからなる厚さ80μmの基材層と、ポリエステル樹脂からなる厚さ20μmの補助層とを積層した比較例4のガスバリアフィルムを作製した。
【0045】
次に、得られた各フィルムについて、以下のように評価を行った。比較例1のガスバリアフィルムについては、補助層を設けていないため接着強度以外の評価を行った。
【0046】
(引裂強度)
JIS K 7128-1に準拠し、トラウザー引裂法にて、150mm×50mmにカットしたサンプルの中央に長さ75mmのスリットを入れ、チャック間幅50mm、引張速度200mm/minで流れ方向の引裂強度を測定した。
【0047】
(接着強度)
リング法により、25.4mm×200mmにカットしたサンプルについて、剥離距離30mm、剥離速度5mm/minにて、補助層を掴み具で挟んで接着強度を測定した。流れ方向(MD)の接着強度が2.0N以上、且つ幅方向(TD)の接着強度が2.0N以上を合格、流れ方向(MD)の接着強度が2.0N未満、且つ幅方向(TD)の接着強度が2.0N未満を不合格として評価した。
【0048】
(酸素ガス透過度、水蒸気透過度)
JIS K 7126-2、JIS K 7129-2に準拠し、作製したフィルムの酸素ガス透過度、及び水蒸気透過度を測定した。
【0049】
以上の評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、実施例1のガスバリアフィルムでは、酸素透過度及び水蒸気透過度が、液晶ポリマー単体からなる比較例1のガスバリアフィルムと同等であり、優れたガスバリア性を有することを確認した。また、実施例1のガスバリアフィルムでは、比較例1~4に対して優れた引裂強度を有することを確認した。さらに、実施例1のガスバリアフィルムは、流れ方向、幅方向共に合格基準の接着強度を有することを確認した。一般的なフィルムでは、幅方向の接着強度が小さくなる傾向があるが、実施例1のガスバリアフィルムは、幅方向の接着強度が、流れ方向の接着よりも大きく、特に、幅方向の接着強度に優れることを確認した。なお、比較例2~4のガスバリアフィルムは、接着強度が合格基準を満たさず、実使用上問題があるため、酸素ガス透過度及び水蒸気透過度の測定は行わなかった。
【0052】
さらに、実施例1の各原料と、シーラント層を構成する原料としてイソフタル酸変性PETを用いて、共押出成形により、液晶ポリマーからなる厚さ80μmの基材層、ポリエステル樹脂からなる厚さ20μmの補助層、イソフタル酸変性PETからなる厚さ50μmのシーラント層が順に積層された3層の積層フィルムを作製した。そして、ヒートシール温度170℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1secで三包シール袋を作製し、問題なく包装袋を作製できることを確認した。
【0053】
(本発明の態様)
本発明は、以下の態様を含む。
<態様1>
基材層と、前記基材層の一方の面に積層された補助層とを有し、
前記基材層は、融点が230℃以下である液晶ポリマーからなり、
前記補助層は、ポリエステル樹脂を含み、
前記ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と、ジエチレングリコール成分を1mol%~5mol%含む多価アルコール成分との重縮合物であるガスバリアフィルム。
<態様2>
前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、-10℃~40℃である態様1に記載のガスバリアフィルム。
<態様3>
前記液晶ポリマーは、前記液晶ポリマーを構成するモノマー成分として、p-ヒドロキシ安息香酸成分及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸成分を含む態様1又は2に記載のガスバリアフィルム。
<態様4>
前記基材層の厚さをA、前記補助層の厚さをBとすると、B/Aは、0.1~0.4である態様1から3のいずれか一つに記載のガスバリアフィルム。
<態様5>
前記補助層の厚さは、10μm~30μmである態様4に記載のガスバリアフィルム。
<態様6>
流れ方向の引裂強度は、0.80N/100μm以上である態様1から5のいずれか一つに記載のガスバリアフィルム。
<態様7>
前記基材層と前記補助層との流れ方向及び幅方向の接着強度は、それぞれ2.0N以上である態様1から6のいずれか一つに記載のガスバリアフィルム。
<態様8>
前記基材層と前記補助層との幅方向の接着強度は、流れ方向の接着強度より大きい態様1から7のいずれか一つに記載のガスバリアフィルム。
<態様9>
前記基材層及び前記補助層が、共押出成形によりフィルム状に形成されている態様1から8のいずれか一つに記載のガスバリアフィルム。
<態様10>
態様1から9のいずれか一つに記載のガスバリアフィルムと、
前記補助層の表面に積層されたシーラント層とを有し、
前記シーラント層は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び環状オレフィン系樹脂の1種以上を含む積層フィルム。
<態様11>
前記シーラント層は、イソフタル酸で変性されたイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートを含む態様10に記載の積層フィルム。
<態様12>
前記ガスバリアフィルムに対して前記シーラント層と反対側に設けられた他の層を有し、
前記他の層は、液晶ポリマー以外の樹脂を含む態様10又は11に記載の積層フィルム。
<態様13>
態様10から12のいずれか一つに記載の積層フィルムを用いて形成された包装袋。
【符号の説明】
【0054】
1 ガスバリアフィルム
2 基材層
3 補助層
4 シーラント層
5 積層フィルム
10 包装袋
11 胴部
12 口部
図1
図2
図3