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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137287
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048752
(22)【出願日】2023-03-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「スマートバイオ産業・農業基盤技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晋一
(72)【発明者】
【氏名】八谷 満
(72)【発明者】
【氏名】原田 久富美
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】自動運転式のロボット農機を用いる場合であっても、無理のない農作業の作業計画を作成するのに必要な情報である、農作業の作業能率を得ることができるようにする。
【解決手段】プログラムは、コンピュータに、農地情報、ロボット農機を用いて行う農作業の内容を示す作業情報、およびロボット農機の作業機に関する作業機情報を取得する処理と、農地情報、作業情報および作業機情報に基づいて、ロボット農機の自動運転の一時停止を伴う人的作業の頻度を算出する処理と、人的作業の頻度、農地情報および作業機情報に基づいて、農作業の作業能率を、ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する処理と、を実行させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
農作業の対象となる農地に関する農地情報、位置情報に基づいて自動運転するロボット農機を用いて行う農作業の内容を示す作業情報、および前記ロボット農機に備えられる作業機に関する作業機情報を取得する情報取得処理と、
前記農地情報、前記作業情報および前記作業機情報に基づいて、前記ロボット農機の自動運転の一時停止を伴う人的作業の頻度を算出する頻度算出処理と、
前記人的作業の頻度、前記農地情報および前記作業機情報に基づいて、前記農作業の作業能率を、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する作業能率算出処理と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記コンピュータに、
前記人的作業の頻度と、前記農地情報、前記作業情報および前記作業機情報に基づいて、前記人的作業を行う作業者の作業時間を、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する作業時間算出処理と、
前記農地情報または前記作業時間に基づいて、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の各組合せが実現可能であるか否かをそれぞれ判断する実現性判断処理と、
実現可能と判断された前記ロボット農機の運用台数および運用方法の複数の組合せの中から、最も作業能率が高い組合せを抽出する台数・方法抽出処理と、
をさらに実行させることを特徴とする、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記情報取得処理において、前記農作業で利用可能な、前記ロボット農機が有する自動運転機能を示す機能情報をさらに取得し、
前記頻度算出処理において、前記農地情報、前記作業情報、前記作業機情報および前記機能情報に基づいて、前記人的作業の頻度を算出することを特徴とする、
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記人的作業には、作業者が乗車して手動運転する必要のある公道を、前記作業者が乗車した前記ロボット農機が前記手動運転で渡ることが含まれ、
前記農地情報には、圃場または隣接する複数の圃場の集まりである団地の面積を示す面積情報と、前記圃場から隣接する他の圃場へ移動する時間、または前記団地から他の団地へ移動する時間を示す移動時間情報と、が含まれることを特徴とする、
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記人的作業には、作業者が前記ロボット農機に資材を補給することが含まれることを特徴とする、
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項6】
前記運用方法は、複数台のロボット農機を複数の団地で用いる方法を含むことを特徴とする、
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項7】
前記機能情報には、作業者が他の前記ロボット農機に対し前記人的作業を行っている間、待機するか否かを示す待機情報が含まれており、
前記作業能率算出処理において、前記運用方法および前記待機情報にさらに基づいて前記作業能率を算出することを特徴とする、
請求項3に記載のプログラム。
【請求項8】
前記情報取得処理において、自動運転機能を有していない非ロボット農機を併用するか否かを示す併用情報をさらに取得し、
前記情報取得処理で非ロボット農機を併用する旨の併用情報を取得した場合、前記作業能率算出処理において、前記作業能率を、前記ロボット農機および前記非ロボット農機の各運用台数ならびに運用方法ごとに算出することを特徴とする、
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項9】
前記情報取得処理において、前記ロボット農機に夜間も農作業を行わせるか否かを示す夜間作業情報をさらに取得し、
前記情報取得処理で夜間も農作業を行わせる旨の夜間作業情報を取得した場合、前記作業能率算出処理において、夜間の作業時間を加味した第2の作業能率を算出することを特徴とする、
請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項10】
農作業の対象となる農地に関する農地情報、位置情報に基づいて自動運転するロボット農機を用いて行う農作業の内容を示す作業情報、および前記ロボット農機に備えられる作業機に関する作業機情報を取得する情報取得部と、
前記農地情報、前記作業情報および前記作業機情報に基づいて、前記ロボット農機の自動運転の一時停止を伴う人的作業の頻度を算出する頻度算出部と、
前記人的作業の頻度、前記農地情報および前記作業機情報に基づいて、前記農作業の作業能率を、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する作業能率算出部と、
を備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
農作業の作業計画を作成する各種技術が従来提案されている。例えば特許文献1には、農地の地形および地表の状態を含む農地情報を記憶する農地情報データベースと、農機の性能を含む農機情報を記憶する農機情報データベースと、農地情報データベースおよび農機情報データベースに記憶されている情報に基づいて農作業を完了するための作業計画を作成する作業計画作成部と、を有する、農作業計画作成装置について記載されている。また、特許文献1には、農機、手作業、を組み合わせて、農作業を行う作業計画を作成することや、農地情報データベースに記憶されている、地形、地質、障害物、雑草種類、繁茂状況と、農機情報データベースに記憶されている、農機の個別性能・特性データと、に基づいて作業計画を作成すること、農機には無人による自動運転式のもの(以下、ロボット農機)が含まれること、作業計画には、複数台の農機を最適に配置することや、農機毎の最適経路を算出することが含まれること、について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022‐037557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来技術で、ロボット農機を用いた農作業の作業計画を作成しても、実際には作業計画通りに農作業を進めることが困難であった。すなわち、従来技術では、ロボット農機を用いる場合に、無理のない作業計画を作成することが困難であった。
【0005】
本発明の一態様は、自動運転式のロボット農機を用いる場合であっても、無理のない農作業の作業計画を作成するのに必要な情報である、農作業の作業能率を得ることができるようすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
位置情報を利用して自動運転するロボット農機は、比較的大規模な農地で用いられることが多い。こうした大規模な農地でのロボット農機を用いた農作業においては、途中で、例えば公道を跨ぐ圃場間の移動や、資材(肥料、種、農薬、燃料等)の補給等、ロボット農機の自動運転を一時停止させて人が行う作業(以下、人的作業)を挟む必要が出てくる。本発明の発明者は、こうした人的作業の存在が、作成する作業計画に無理が生じる原因になっているという知見を得て、本発明に想到するに至った。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、 農作業の対象となる農地に関する農地情報、位置情報に基づいて自動運転するロボット農機を用いて行う農作業の内容を示す作業情報、および前記ロボット農機に備えられる作業機に関する作業機情報を取得する情報取得処理と、前記農地情報、前記作業情報および前記作業機情報に基づいて、前記ロボット農機の自動運転の一時停止を伴う人的作業の頻度を算出する頻度算出処理と、前記人的作業の頻度、前記農地情報および前記作業機情報に基づいて、前記農作業の作業能率を、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する作業能率算出処理と、を実行させる。
【0008】
また、本発明の他の態様に係るシステムは、農作業の対象となる農地に関する農地情報、位置情報に基づいて自動運転するロボット農機を用いて行う農作業の内容を示す作業情報、および前記ロボット農機に備えられる作業機に関する作業機情報を取得する情報取得部と、前記農地情報、前記作業情報および前記作業機情報に基づいて、前記ロボット農機の自動運転の一時停止を伴う人的作業の頻度を算出する頻度算出部と、前記人的作業の頻度、前記農地情報および前記作業機情報に基づいて、前記農作業の作業能率を、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する作業能率算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、自動運転式のロボット農機を用いる場合であっても、無理のない農作業の作業計画を作成するのに必要な情報である、農作業の作業能率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係るシステムの一例を示すブロック図である。
図2】同システムが実行する情報提示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3】同システムが取得する機能情報の一覧を示す表である。
図4】必要となる人的作業を自動化レベルごとに示す表である。
図5】同実施形態に係るシステムが取得する待機情報の一覧を示す表である。
図6】ロボット農機の運用方法の一例を示す図である。
図7】同実施形態に係るシステムが抽出するロボット農機の運用台数および運用方法の組合せの一例を示す表である。
図8】本発明の実施形態2に係るシステムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
[構成]
本実施形態に係るシステム1は、ロボット農機を用いる農作業の作業計画を作成し、ユーザに提示するものである。ここでのロボット農機は、位置情報に基づいて自動運転する農機を指す。本実施形態に係るシステム1は、一つの装置で構成されている。図1に示したように、本実施形態に係るシステム1は、入力部11と、出力部12と、記憶部13と、制御部14と、を備える。
【0013】
〔入力部〕
入力部11は、例えば、キーボード、ポインティングディバイス(マウス等)、タッチパネル等である。
【0014】
〔出力部〕
出力部12は、例えば、表示デバイス、スピーカ、他の出力装置と接続される端子等である。以下、出力部12が表示デバイスで構成されている場合を例に説明を続ける。
【0015】
〔記憶部〕
記憶部13は、プログラム131を記憶している。プログラム131は、システム1の動作が記述されたものである。すなわち、本実施形態に係るシステム1は、プログラム131を実行するコンピュータである。本実施形態に係る記憶部13は、半導体メモリ、ハードディスク等で構成されている。なお、プログラム131は、汎用のアプリケーション(例えば表計算)のプログラムを加工したものであってもよい。
【0016】
〔制御部〕
制御部14は、プロセッサ、メモリで構成されている。制御部14は、記憶部13に記憶されているプログラム131に基づいて、情報提示処理を実行する。図2に示したように、本実施形態に係る情報提示処理は、情報取得処理S1と、頻度算出処理S2と、作業能率算出処理S3と、作業時間算出処理S4と、実現性判断処理S5と、台数・方法抽出処理S6と、出力処理S7と、を含む。
【0017】
(情報取得処理)
初めの情報取得処理S1で、制御部14は、農地情報、作業情報、および作業機情報を取得する。本実施形態に係る情報取得処理S1において、制御部14は、機能情報、併用情報、その他情報をさらに取得する。本実施形態に係る情報取得処理において、制御部14は、出力部12に所定の情報入力画面を出力部12に出力するよう、当該出力部12を制御する。制御を受けた出力部12は、図示しない情報入力画面を表示する。情報入力画面の表示中に入力部11に所定の入力操作がなされると、入力操作に応じた各種情報が情報入力画面に入力される。本実施形態に係る制御部14は、情報入力画面に入力された各種情報を、農地情報、作業情報、作業機情報、機能情報、併用情報、およびその他情報として取得する。
【0018】
農地情報は、ロボット農機を用いて行う農作業の対象となる農地に関する情報である。農地情報には、面積情報と、移動時間情報と、が含まれる。面積情報は、圃場または隣接する複数の圃場の集まりである団地の面積(ha)を示す情報である。移動時間情報は、圃場から隣接する他の圃場へ移動する時間(h)、または団地から他の団地へ移動する時間(h)を示す情報である。圃場から隣接する他の圃場へ移動する時間には、ロボット農機が無人の自動運転により移動する場合の時間と、作業者が乗車したロボット農機が手動運転により移動する場合の時間と、が含まれる。また、団地から他の団地へ移動する時間には、作業者が乗車したロボット農機が手動運転により移動する場合の時間と、手動運転によるロボット農機の移動を終えた作業者が移動手段(自転車、トラック等)を用いて、または徒歩で移動する場合の時間と、が含まれる。
【0019】
作業情報は、ロボット農機を用いて行う農作業の内容を示す情報である。農作業には、農地に資材を供給する作業と、農地に資材を供給しない作業と、が含まれる。農地に資材を供給する作業には、施肥、播種等が含まれる。すなわち、農地に供給する資材には、圃場に施す肥料、圃場に蒔く種、農作物に散布する農薬等が含まれる。農地に資材を供給しない作業には、耕起、砕土整地、代掻き、中耕除草、心土破砕、反転集草等が含まれる。
【0020】
作業機情報は、ロボット農機に備えられる作業機に関する情報である。作業機は、ロボット農機から動力を得て農地に農作業を施す装置である。作業機は、ロボット農機に接続されるものであってもよいし、ロボット農機と一体になったものであってもよい。農作業が農地に資材を供給しないもの(耕起、砕土整地、代掻き、中耕除草、心土破砕、反転集草等)である場合、作業機情報には、作業能率、作業幅が含まれる。作業能率は、単位時間あたりに作業機によって農作業を施される農地の面積(ha/h)である。作業幅は、作業機が同時に農作業を施すことのできる農地の幅(m)である。一方、農作業が農地に資材を供給するもの(施肥、播種等)である場合、作業機情報には、作業能率(ha/h)、作業幅(m)の他に、資材を保持する資材タンクの容量(L)が含まれる。
【0021】
機能情報は、農作業で利用可能な、ロボット農機の自動化レベルを示す情報である。すなわち、機能情報は、ロボット農機が有する自動運転機能を示す情報である。本実施形態に係るシステム1が対応している自動化レベルは、レベル2、レベル3-0、レベル3-1、レベル3-2の4つである。図3に示したように、自動運転機能には、遠隔監視機能、自動外周作業機能、自動許可農道走行機能、自動すれ違い機能が含まれる。遠隔監視機能は、監視者がロボット農機から離れた場所において、当該ロボット農機の周囲の様子を監視したり、当該ロボット農機を操作したりするための(目視を不要とする)機能である。自動外周作業機能は、圃場の外周部(農道に接する部分)における農作業を自動で行う機能である。自動許可農道走行機能は、圃場から許可農道に自動で上がり、当該許可農道を自動で渡って隣接する圃場へ移動する機能である。許可農道は、レベル3-2の自動運転による走行が許可されている農道である。自動すれ違い機能は、自身に近づいてくる物体(他の農機、車両等)と自動ですれ違う機能である。ロボット農機が有する自動運転機能は、そのロボット農機の自動化レベルによって異なる。なお、レベル2のロボット農機は、上記4つの自動運転機能をいずれも有していないが、監視者の目視による監視の下で、圃場の中央部(外周部以外)における農作業を自動で行う機能は有している。このような、機能情報を制御部14が取得し、後述する各種処理で用いることにより、一つのシステムで、自動化レベルの異なる複数種類のロボット農機の作業能率を算出することができる。
【0022】
機能情報には、待機情報が含まれる。待機情報は、作業者が他のロボット農機に対し人的作業を行っている間、待機するか否かを示す情報である。人的作業は、ロボット農機の自動運転の一時停止を伴う作業である。人的作業には、資材補給と、公道走行と、が含まれる。資材補給は、作業者がロボット農機に資材を補給する作業である。公道走行は、公道を、作業者が乗車したロボット農機が手動運転で渡る作業である。公道は、作業者が乗車して手動運転する必要のある道路を指す。公道には、一般道の他に、規則によって自動運転によるロボット農機の走行が規制されている農道が含まれる。また、図4に示したように、対象のロボット農機の自動化レベルが相対的に低い場合、これらとは別の作業が人的作業に加わる。例えば、対象のロボット農機がレベル3-1以下である場合、許可農道走行も人的事項に含まれる。許可農道走行は、許可農道を、作業者が乗車したロボット農機が手動運転で渡る作業である。また、対象のロボット農機がレベル3-0以下である場合、外周作業も人的事項に含まれる。外周作業は、作業者が手動運転して圃場の外周部における農作業である。作業者は、人的作業専任の人であってもよいし、ロボット農機を監視する人が兼ねていてもよい。ロボット農機に補給する資材には、肥料、種、農薬の他、ロボット農機を動かすための燃料等が含まれる。図5に示したように、他のロボット農機に対し人的作業を行っている間待機するか否かは、ロボット農機の自動化レベル、および他のロボット農機に対して行っている人的作業の内容によって異なる。このため、機能情報に待機情報を含めることにより、より実態に合った作業能率を算出することができる。
【0023】
併用情報は、農作業を行う際に、自動運転機能を有していない非ロボット農機を併用するか否かを示す情報である。
【0024】
その他情報には、補給時間情報と、マージン情報と、が含まれる。補給時間情報は、ロボット農機に資材を補給するのに要する時間を示す情報である。マージン情報は、人的作業を行う際に予備として確保しておく時間を示す情報である。制御部14は、このような情報取得処理S1を実行することにより、情報取得部141として機能する。
【0025】
(頻度算出処理)
各種情報を取得した後は、頻度算出処理S2に移る。頻度算出処理S2において、制御部14は、農地情報、作業情報および作業機情報に基づいて、人的作業の頻度を算出する。本実施形態に係る頻度算出処理S2において、制御部14は、農地情報、作業情報、作業機情報および機能情報に基づいて、人的作業の頻度を算出する。頻度は、単位時間当たりの人的作業の繰り返し回数(回/h)である。制御部14は、機能情報が示すロボット農機の自動化レベルにおいて、農地情報が示す面積の圃場またはブロックに対し、作業情報が示す農作業を、作業機情報が示す作業機を用いて行った場合、人的作業がどの程度の頻度で発生するかを算出する。例えば、農地情報が複数の団地を含むことを示している場合、制御部14は、公道走行の頻度を算出する。また、作業情報が圃場に資材を供給する作業(施肥、播種等)を示している場合、制御部14は、資材補給の頻度を算出する。また、機能情報がレベル3-1を示し、かつ農地情報が複数の圃場の存在を示している場合、制御部14は、公道走行の頻度を算出する。また、機能情報がレベル3-0を示し、農地情報が複数の団地の存在を示し、かつ作業情報が圃場に資材を供給する作業(施肥、播種等)を示している場合、制御部14は、公道走行の頻度、外周作業の頻度、資材補給の頻度をそれぞれ算出する。制御部14は、このような頻度算出処理S2を実行することにより、頻度算出部142として機能する。
【0026】
(作業能率算出処理)
人的作業の頻度を算出した後は、作業能率算出処理S3に移る。作業能率算出処理S3において、制御部14は、人的作業の頻度、農地情報および作業機情報に基づいて、農作業の作業能率を、ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する。本実施形態に係る作業能率算出処理S3において、制御部14は、運用方法および待機情報にさらに基づいて作業能率を算出する。作業能率は、ロボット農機が単位時間当たりに農作業を施す圃場または団地の面積(ha/h)である。用いるロボット農機が1台の場合、運用方法は、農地情報に応じて1パターンに決定される。一方、用いるロボット農機が複数台の場合、運用方法には、例えば、以下のような方法が含まれる。
・複数台のロボット農機を一筆の圃場内だけで用いる方法
・複数台のロボット農機を一つの団地内だけで用いる方法
・複数台のロボット農機を複数の団地で用いる方法。
【0027】
複数台のロボット農機を複数の団地で用いる方法には、例えば図6左側に示した団地内1台運用と、団地内複数台運用が含まれる。団地内1台運用では、まず、各団地(団地A、B)にロボット農機を1台ずつ配置し、各団地において農作業を行わせる。そして、最初に農作業を終えた(例えば団地Bに配置された)ロボット農機を作業者が手動運転して次の団地(団地C)へ移動させる。その後、作業者は、次に農作業を終えた(団地Aに配置された)ロボット農機のところに移動する。そして、次に農作業を終えたロボット農機を作業者が手動運転して、最初に農作業を終えたロボット農機が移動した団地(団地C)とは異なる団地(団地D)へ移動させる。団地内1台運用は、作業者の移動距離が長くなる反面、ロボット農機の公道走行の回数が少なくなるという利点がある。団地内複数台運用では、まず、複数の団地の何れか(例えば団地A)に複数のロボット農機を配置し、農作業を行わせる。そして、最初に農作業を終えたロボット農機を作業者が手動運転して次の団地(団地B)へ移動させる。その後、作業者は、次に農作業を終えたロボット農機のところに移動する。そして、次に農作業を終えたロボット農機を作業者が手動運転して、最初に農作業を終えたロボット農機が移動した団地(団地B)とは同じ団地(団地B)へ移動させる。団地内複数台運用は、ロボット農機の公道走行の回数が覆うなる反面、作業者の移動距離が短くなる利点がある。なお、どの運用方法を用いた場合に作業能率が高まるかは、ロボット農機の自動化レベル、団地の数や面積、各ロボット農機が行う農作業が同一か異なるか等によって変わってくる。このため、団地でのロボット農機の運用方法を考慮することにより、より実態に合った作業能率を算出することができる。
【0028】
上記情報取得処理S1で非ロボット農機を併用する旨の併用情報を取得した場合、作業能率算出処理S3において、制御部14は、作業能率を、ロボット農機および非ロボット農機の各運用台数ならびに運用方法ごとに算出する。現在、多くの農業従事者が、非ロボット農機を所有している(ロボット農機のみで農業を営んでいる農業従事者は稀である)。このため、非ロボット農機を併用した場合の作業能率を算出できるようにすることで、多くの農業従事者の実態に即した作業能率を算出することができる。制御部14は、このような作業能率算出処理S3を実行することにより、作業能率算出部143として機能する。
【0029】
(作業時間算出処理)
農作業の作業能率を算出する前または後、もしくは作業能率の算出と並行して、作業時間算出処理S4に移る。作業時間算出処理S4において、制御部14は、人的作業の頻度と、農地情報、作業情報および作業機情報に基づいて、人的作業を行う作業者の作業時間(h)を、ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する。制御部14は、農地情報が示す面積の圃場またはブロックに対し、作業情報が示す農作業を、作業機情報が示す作業機を用いて行った場合であって、その間に算出した頻度で人的作業を行った場合、人的作業を合計でどの程度の時間行うことになるかを算出する。制御部14は、このような作業時間算出処理S4を実行することにより、作業時間算出部144として機能する。
【0030】
(実現性判断処理)
作業者の作業時間を算出した後は、実現性判断処理S5に移る。実現性判断処理S5において、制御部14は、農地情報または作業時間に基づいて、ロボット農機の運用台数および運用方法の各組合せが実現可能であるか否かをそれぞれ判断する。具体的には、例えば、以下のような条件に当てはまる組合せを実現可能ではないと判断する。
・圃場または団地の面積に対し、面積毎に決められている上限運用台数を超えている組合せ。
・作業者の一日当たりの作業時間が所定の上限作業時間を超えている組合せ。
これにより、作業能率が高いというだけで現実には実施が困難なロボット農機の運用台数および運用方法の組合せを提案してしまうのを防ぐことができる。制御部14は、このような実現性判断処理S5を実行することにより、実現性判断部145として機能する。
【0031】
(台数・方法抽出処理)
農作業の作業能率を算出し、かつロボット農機の運用台数および運用方法の各組合せが実現可能であるか否かを判断した後は、台数・方法抽出処理S6に移る。台数・方法抽出処理において、制御部14は、実現可能と判断されたロボット農機の運用台数および運用方法の複数の組合せの中から、最も作業能率が高い組合せを抽出する。運用方法を複数台のロボット農機を複数の団地で用いる方法、各ロボット農機が同一の農作業を行うという条件の下では、農作業および圃場(団地)の面積ごとの作業能率が最も高い運用台数は、例えば図7に示したように抽出される。なお、台数・方法抽出処理において、制御部14は、作業能率が所定以上の組合せを複数抽出してもよい。制御部14は、このような台数・方法抽出処理S6を実行することにより、台数・方法抽出部146として機能する。
【0032】
(出力処理)
最も作業能率が高い組合せを抽出した後は、出力処理S7に移る。出力処理S7において、制御部14は、抽出したもっとも作業能率が高い組合せ(ロボット農機の運用台数および運用方法)を出力部12に出力するよう、当該出力部12を制御する。制御を受けた出力部12は、最も作業能率が高いロボット農機の運用台数および運用方法を提示(表示)する。制御部14は、このような出力処理S7を実行することにより、出力処理部147として機能する。
【0033】
[作用効果]
以上説明してきたシステム1は、ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとの作業能率を、自動運転の一時停止を伴う人的作業にかかる手間を考慮して算出する。このため、システム1によれば、自動運転式のロボット農機を用いる場合であっても、無理のない農作業の作業計画を作成するのに必要な情報である、農作業の作業能率を得ることができる。その結果、本実施形態に係るシステム1は、得られた作業能率に基づいて、運用台数および運用方法を自動で抽出し、それをユーザに提示することができる。
【0034】
また、本実施形態のシステムは、人的作業の頻度として、公道走行の頻度や、資材補給の頻度を考慮する。このため、システム1によれば、農作業の途中で道路を跨いで団地間を移動することや、農作業の途中で資材を切らしてしまうことの多い、ロボット農機の運用エリアでの農作業の作業能率を正確に算出することができる。
【0035】
<変形例>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
例えば、情報提示処理は、作業時間算出処理S4、実現性判断処理S5、および台数・方法抽出処理S6を含んでいなくてもよい。この場合、制御部14は、作業能率算出処理S3において作業能率を算出した後、出力処理S7において、算出した作業能率を出力させてもよい。このような構成であっても、農業従事者は、算出された複数の運用台数および運用方法の組合せと、それぞれに対応する作業能率と、を勘案して、ロボット農機をどのように導入すればよいか比較検討することができる。
【0037】
また、人による監視が不要となる程度に自動化レベルの高いロボット農機は、将来的に夜間も運用することができるようになる可能性がある。このため、上記情報取得処理S1において、制御部14は、夜間作業情報をさらに取得してもよい。夜間作業情報は、ロボット農機に夜間も農作業を行わせるか否かを示す情報である。そして、上記情報取得処理S1で夜間も農作業を行わせる旨の夜間作業情報を取得した場合、作業能率算出処理S3において、制御部14は、夜間の作業時間を加味した第2の作業能率を算出する。第2の作業能率は、ロボット農機が一日当たりに農作業を施す圃場または団地の面積(ha/日)である。この場合、作業能率算出処理S3において、制御部14は、各組合せに対応する作業能率に、夜間作業の有無に応じた一日当たり作業時間をそれぞれ乗じて、第2の作業能率を算出する。乗じる一日当たりの作業時間は、例えば、夜間作業が無い場合を8時間、有る場合を12時間とする。このようにすれば、夜間も運用可能なロボット農機を用いた農作業の正確な作業能率を得ることができる。
【0038】
また、上記システム1(プログラム131)は、上記情報取得処理S1において、機能情報を取得する、すなわち複数種類の自動化レベルに対応したものであった。しかし、システム1はこれに限られない。例えば、システム1(プログラム131)は、1種類の自動化レベルに対応したものであってもよい。この場合、自動化レベルごとに複数のシステム1(プログラム131)を用意することで、各自動化レベルに対応することができる。
【0039】
また、上記システム1(プログラム131)は、上記情報取得処理S1において、併用情報を取得する、すなわちロボット農機と非ロボット農機を組み合わせた場合の作業能率を算出することが可能であった。しかし、システム1(プログラム131)はこれに限られない。例えばシステム1(プログラム131)は、ロボット農機のみを用いた農作業の作業能率を算出するものであってもよい。
【0040】
また、図8に示したように、システム1は、通信ネットワークNを介して互いに通信する、1台以上の端末装置1aと、サーバ1bと、で構成されていてもよい。そして、端末装置1aが、情報取得処理S1、頻度算出処理S2、作業能率算出処理S3、作業時間算出処理S4、実現性判断処理S5、台数・方法抽出処理S6、および出力処理S7のうちの一部の処理を実行し、サーバ1bが残りの処理を実行してもよい。特に、端末装置1aがブラウザを有し、サーバ1bが情報入力画面および提示画面のウェブページを生成する機能を有していれば、ユーザは、端末装置1aに専用のアプリケーションをインストールすることなく、運用台数および運用方法の提示を受けることができる。また、このようにすれば、既存の営農管理情報システムを提供するサーバ1bに、本発明に係るプログラムを追加的にインストールすることにより、本発明を、既存の営農管理情報システムの一部機能として利用することも可能となる。
【0041】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0042】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0043】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るプログラムは、コンピュータに、農作業の対象となる農地に関する農地情報、位置情報に基づいて自動運転するロボット農機を用いて行う農作業の内容を示す作業情報、および前記ロボット農機に備えられる作業機に関する作業機情報を取得する情報取得処理と、前記農地情報、前記作業情報および前記作業機情報に基づいて、前記ロボット農機の自動運転の一時停止を伴う人的作業の頻度を算出する頻度算出処理と、前記人的作業の頻度、前記農地情報および前記作業機情報に基づいて、前記農作業の作業能率を、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する作業能率算出処理と、を実行させる構成である。
【0044】
本発明の態様2に係るプログラムは、上記の態様1において、前記コンピュータに、前記人的作業の頻度と、前記農地情報、前記作業情報および前記作業機情報に基づいて、前記人的作業を行う作業者の作業時間を、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する作業時間算出処理と、前記農地情報または前記作業時間に基づいて、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の各組合せが実現可能であるか否かをそれぞれ判断する実現性判断処理と、実現可能と判断された前記ロボット農機の運用台数および運用方法の複数の組合せの中から、最も作業能率が高い組合せを抽出する台数・方法抽出処理と、をさらに実行させる構成としてもよい。
【0045】
本発明の態様3に係るプログラムは、上記の態様1または2において、前記情報取得処理において、前記農作業で利用可能な、前記ロボット農機が有する自動運転機能を示す機能情報をさらに取得し、前記頻度算出処理において、前記農地情報、前記作業情報、前記作業機情報および前記機能情報に基づいて、前記人的作業の頻度を算出する構成としてもよい。
【0046】
本発明の態様4に係るプログラムは、上記の態様1から3の何れかにおいて、前記人的作業には、作業者が乗車して手動運転する必要のある公道を、前記作業者が乗車した前記ロボット農機が前記手動運転で渡ることが含まれ、前記農地情報には、圃場または隣接する複数の圃場の集まりである団地の面積を示す面積情報と、前記圃場から隣接する他の圃場へ移動する時間、または前記団地から他の団地へ移動する時間を示す移動時間情報と、が含まれる構成としてもよい。
【0047】
本発明の態様5に係るプログラムは、上記の態様1から4の何れかにおいて、前記人的作業には、作業者が前記ロボット農機に資材を補給することが含まれる構成としてもよい。
【0048】
本発明の態様6に係るプログラムは、上記の態様1から5の何れかにおいて、前記運用方法は、隣接する複数の圃場の集まりである団地への前記ロボット農機を配置する方法を含む構成としてもよい。
【0049】
本発明の態様7に係るプログラムは、上記の態様3において、前記機能情報には、作業者が他の前記ロボット農機に対し前記人的作業を行っている間、待機するか否かを示す待機情報が含まれており、前記作業能率算出処理において、前記運用方法および前記待機情報にさらに基づいて前記作業能率を算出する構成としてもよい。
【0050】
本発明の態様8に係るシステムは、上記の態様1から7の何れかにおいて、前記情報取得処理において、自動運転機能を有していない非ロボット農機を併用するか否かを示す併用情報をさらに取得し、前記情報取得処理で非ロボット農機を併用する旨の併用情報を取得した場合、前記作業能率算出処理において、前記作業能率を、前記ロボット農機および前記非ロボット農機の各運用台数ならびに運用方法ごとに算出する構成としてもよい。
【0051】
本発明の態様9に係るシステムは、上記の態様1から8の何れかにおいて、前記情報取得処理において、前記ロボット農機に夜間も農作業を行わせるか否かを示す夜間作業情報をさらに取得し、前記情報取得処理で夜間も農作業を行わせる旨の夜間作業情報を取得した場合、前記作業能率算出処理において、前記作業能率を、〇〇〇算出する構成としてもよい。
【0052】
本発明の態様10に係るシステムは、農作業の対象となる農地に関する農地情報、位置情報に基づいて自動運転するロボット農機を用いて行う農作業の内容を示す作業情報、および前記ロボット農機に備えられる作業機に関する作業機情報を取得する情報取得部と、前記農地情報、前記作業情報および前記作業機情報に基づいて、前記ロボット農機の自動運転の一時停止を伴う人的作業の頻度を算出する頻度算出部と、前記人的作業の頻度、前記農地情報および前記作業機情報に基づいて、前記農作業の作業能率を、前記ロボット農機の運用台数および運用方法の組合せごとに算出する作業能率算出部と、を備える構成である。
【符号の説明】
【0053】
1 システム
11 入力部
12 出力部
13 記憶部
131 プログラム
14 制御部
141 情報取得部
142 頻度算出部
143 作業能率算出部
144 作業時間算出部
145 実現性判断部
146 台数・方法抽出部
147 出力処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8