(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137411
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】アクティブノイズ制御装置、アクティブノイズ制御方法、およびアクティブノイズ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G10K11/178
G10K11/178 100
G10K11/178 110
G10K11/178 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048932
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 崇人
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061FF02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ファンの騒音を効果的に抑制するアクティブノイズ制御装置、アクティブノイズ制御方法、およびアクティブノイズ制御プログラムを提供する。
【解決手段】アクティブノイズ制御(ANC)システム1-1において、アクティブノイズ制御装置100-1は、ファン20の騒音を示す参照信号に応じて、ファンの騒音を打ち消すための制御信号を出力するアクティブノイズ制御部と、ファンの動作設定を取得する動作設定取得部と、動作設定に基づいて、アクティブノイズ制御部に供給する参照信号を生成する参照信号生成部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンの騒音を示す参照信号に応じて、前記ファンの騒音を打ち消すための制御信号を出力するアクティブノイズ制御部と、
前記ファンの動作設定を取得する動作設定取得部と、
前記動作設定に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する参照信号生成部と
を備えるアクティブノイズ制御装置。
【請求項2】
前記ファンの騒音の音響パターンを記憶する音響パターン格納部を更に備え、
前記参照信号生成部は、前記動作設定と前記音響パターン格納部に格納された音響パターンとに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する
請求項1に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項3】
前記音響パターン格納部は、複数種類の動作設定のそれぞれについて前記ファンの騒音の音響パターンを記憶し、
前記参照信号生成部は、前記動作設定に対応する音響パターンを前記音響パターン格納部から読み出して、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する
請求項2に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項4】
前記ファンの騒音の音響パターンを生成するためのモデルまたはパラメータを記憶する音響パターン格納部を更に備え、
前記参照信号生成部は、前記動作設定と前記音響パターン格納部に格納された音響パターンのモデルまたはパラメータとに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する
請求項1に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項5】
前記ファンの騒音の音響パターンを取得する少なくとも1つの参照音響センサに接続される参照センサ接続部を更に備え、
前記参照信号生成部は、前記少なくとも1つの参照音響センサから取得された音響パターンに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する
請求項1に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの参照音響センサは、複数の参照音響センサを含み、
前記参照信号生成部は、前記複数の参照音響センサのうち、前記動作設定に応じて選択した参照音響センサから取得された音響パターンに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する
請求項5に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの参照音響センサは、複数の参照音響センサを含み、
前記参照信号生成部は、前記複数の参照音響センサから取得された複数の音響パターンの、前記動作設定に応じて決定した重み付き和に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する
請求項5に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項8】
前記参照信号生成部は、前記複数の参照音響センサから取得された複数の音響パターンの振幅および位相のそれぞれの、前記動作設定に応じて決定した重み付き和に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する請求項7に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項9】
前記アクティブノイズ制御部は、前記参照信号を前記制御信号に変換する変換特性を有し、
前記変換特性は、前記制御信号に応じて前記ファンの騒音を打ち消すための制御音を出力する音響トランスデューサから前記少なくとも1つの参照音響センサへの音響伝達経路特性を含む請求項5に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項10】
前記ファンの騒音の音響伝達経路の温度または湿度の少なくとも1つを示す環境データを取得する環境データ取得部を更に備え、
前記参照信号生成部は、前記動作設定と前記環境データとに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する
請求項1に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項11】
前記ファンの騒音の打ち消し誤差を取得する少なくとも1つの誤差音響センサに接続される誤差センサ接続部を更に備え、
前記参照信号生成部は、前記少なくとも1つの誤差音響センサから取得された音響パターンに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する
請求項1に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項12】
前記ファンの騒音の打ち消し誤差を取得する少なくとも1つの誤差音響センサに接続される誤差センサ接続部を更に備え、
前記アクティブノイズ制御部は、前記少なくとも1つの誤差音響センサが取得した前記打ち消し誤差に応じて、前記参照信号を前記制御信号に変換する変換特性を調整する
請求項1に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項13】
前記変換特性は、前記ファンから前記少なくとも1つの誤差音響センサへの音響伝達経路特性を含む請求項12に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項14】
前記変換特性のパラメータを格納するパラメータ格納部を更に備え、
前記アクティブノイズ制御部は、前記ファンの前回の動作で前記パラメータ格納部に格納された前記変換特性のパラメータを、前記ファンの今回の動作における初期値として設定する請求項12に記載のアクティブノイズ制御装置。
【請求項15】
アクティブノイズ制御装置のアクティブノイズ制御部が、ファンの騒音を示す参照信号に応じて、前記ファンの騒音を打ち消すための制御信号を出力することと、
前記アクティブノイズ制御装置が、前記ファンの動作設定を取得することと、
前記アクティブノイズ制御装置が、前記動作設定に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成することと
を備えるアクティブノイズ制御方法。
【請求項16】
コンピュータにより実行され、前記コンピュータを、
ファンの騒音を示す参照信号に応じて、前記ファンの騒音を打ち消すための制御信号を出力するアクティブノイズ制御部と、
前記ファンの動作設定を取得する動作設定取得部と、
前記動作設定に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する参照信号生成部と
して機能させるアクティブノイズ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブノイズ制御装置、アクティブノイズ制御方法、およびアクティブノイズ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「いくつかの例示的な実施形態では、HVACシステム120は、例えば、車両内の運転者または乗客などの車両のユーザの環境を暖房、冷却、換気などすることによって、ユーザ体験を改善することができる」(段落0048)、「別の例では、コントローラ193は、HVAC入力129に基づいてHVACシステム120の送風機速度の変化を検出し、検出された変化に基づいて、1つまたは複数のSTF係数を選択的に増減し、STFおよび/またはPFの周波数帯域を変更して、例えば、目標とするHVACシナリオへの適応の周波数帯域を変更し、適応レートを修正し、ならびに/あるいは音制御信号109を生成するための1つまたは複数の他の設定および/またはパラメータを修正するように構成され得る」(段落0185)と記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特表2022-553400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ファンの騒音を効果的に抑制するアクティブノイズ制御を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、ファンの騒音を示す参照信号に応じて、前記ファンの騒音を打ち消すための制御信号を出力するアクティブノイズ制御部と、前記ファンの動作設定を取得する動作設定取得部と、前記動作設定に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する参照信号生成部とを備えるアクティブノイズ制御装置を提供する。
【0005】
上記のアクティブノイズ制御装置は、前記ファンの騒音の音響パターンを記憶する音響パターン格納部を更に備え、前記参照信号生成部は、前記動作設定と前記音響パターン格納部に格納された音響パターンとに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成してよい。
【0006】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置において、前記音響パターン格納部は、複数種類の動作設定のそれぞれについて前記ファンの騒音の音響パターンを記憶し、前記参照信号生成部は、前記動作設定に対応する音響パターンを前記音響パターン格納部から読み出して、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成してよい。
【0007】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置は、前記ファンの騒音の音響パターンを生成するためのモデルまたはパラメータを記憶する音響パターン格納部を更に備え、前記参照信号生成部は、前記動作設定と前記音響パターン格納部に格納された音響パターンのモデルまたはパラメータとに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成してもよい。
【0008】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置は、前記ファンの騒音の音響パターンを取得する少なくとも1つの参照音響センサに接続される参照センサ接続部を更に備え、前記参照信号生成部は、前記少なくとも1つの参照音響センサから取得された音響パターンに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成してよい。
【0009】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置において、前記少なくとも1つの参照音響センサは、複数の参照音響センサを含み、前記参照信号生成部は、前記複数の参照音響センサのうち、前記動作設定に応じて選択した参照音響センサから取得された音響パターンに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成してよい。
【0010】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置において、前記少なくとも1つの参照音響センサは、複数の参照音響センサを含み、前記参照信号生成部は、前記複数の参照音響センサから取得された複数の音響パターンの、前記動作設定に応じて決定した重み付き和に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成してよい。
【0011】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置において、前記参照信号生成部は、前記複数の参照音響センサから取得された複数の音響パターンの振幅および位相のそれぞれの、前記動作設定に応じて決定した重み付き和に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成してよい。
【0012】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置において、前記アクティブノイズ制御部は、前記参照信号を前記制御信号に変換する変換特性を有し、前記変換特性は、前記制御信号に応じて前記ファンの騒音を打ち消すための制御音を出力する音響トランスデューサから前記少なくとも1つの参照音響センサへの音響伝達経路特性を含んでよい。
【0013】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置は、前記ファンの騒音の音響伝達経路の温度または湿度の少なくとも1つを示す環境データを取得する環境データ取得部を更に備え、前記参照信号生成部は、前記動作設定と前記環境データとに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成してよい。
【0014】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置は、前記ファンの騒音の打ち消し誤差を取得する少なくとも1つの誤差音響センサに接続される誤差センサ接続部を更に備え、前記参照信号生成部は、前記少なくとも1つの誤差音響センサから取得された音響パターンに基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成してよい。
【0015】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置は、前記ファンの騒音の打ち消し誤差を取得する少なくとも1つの誤差音響センサに接続される誤差センサ接続部を更に備え、前記アクティブノイズ制御部は、前記少なくとも1つの誤差音響センサが取得した前記打ち消し誤差に応じて、前記参照信号を前記制御信号に変換する変換特性を調整してよい。
【0016】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置において、前記変換特性は、前記ファンから前記少なくとも1つの誤差音響センサへの音響伝達経路特性を含んでよい。
【0017】
上記のいずれかのアクティブノイズ制御装置は、前記変換特性のパラメータを格納するパラメータ格納部を更に備え、前記アクティブノイズ制御部は、前記ファンの前回の動作で前記パラメータ格納部に格納された前記変換特性のパラメータを、前記ファンの今回の動作における初期値として設定してよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、アクティブノイズ制御装置のアクティブノイズ制御部が、ファンの騒音を示す参照信号に応じて、前記ファンの騒音を打ち消すための制御信号を出力することと、前記アクティブノイズ制御装置が、前記ファンの動作設定を取得することと、前記アクティブノイズ制御装置が、前記動作設定に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成することとを備えるアクティブノイズ制御方法を提供する。
【0019】
本発明の第3の態様においては、コンピュータにより実行され、前記コンピュータを、ファンの騒音を示す参照信号に応じて、前記ファンの騒音を打ち消すための制御信号を出力するアクティブノイズ制御部と、前記ファンの動作設定を取得する動作設定取得部と、
前記動作設定に基づいて、前記アクティブノイズ制御部に供給する前記参照信号を生成する参照信号生成部として機能させるアクティブノイズ制御プログラムを提供する。
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係るANCシステム1-1の構成を示す。
【
図2】本実施形態に係るANC装置100-1のアクティブノイズ制御フローを示す。
【
図3】本実施形態に係る音響パターン格納部120に格納される音響パターンの一例を示す。
【
図4】本実施形態の第1変形例に係るANCシステム1-2の構成を示す。
【
図5】第1変形例に係るANC装置100-2のアクティブノイズ制御フローを示す。
【
図6】第1変形例に係る参照信号生成部140による音源分離手法を模式的に示す。
【
図7】音響パターンのモデルを用いる音響パターン格納部720および参照信号生成部740の一例を示す。
【
図8】本実施形態の第2変形例に係るANCシステム1-3の構成を示す。
【
図9】第2変形例に係るANC装置100-3の変換特性および空間伝達経路特性を示す。
【
図10】第2変形例に係るANC装置100-3のアクティブノイズ制御フローを示す。
【
図11】本実施形態の第3変形例に係るANCシステム1-4の構成を示す。
【
図12】第3変形例に係るANC装置100-4のアクティブノイズ制御フローを示す。
【
図13】本実施形態の第4変形例に係るANCシステム1-5の構成を示す。
【
図14】音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160に格納されるパラメータの第1例を示す。
【
図15】本実施形態の第5変形例に係るANCシステム1-6の構成を示す。
【
図16】音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160に格納されるパラメータの第2例を示す。
【
図17】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、本実施形態に係るアクティブノイズ制御(ANC)システム1-1の構成を示す。ANCシステム1-1は、アクティブノイズ制御(ANC)装置100-1によるアクティブノイズ制御(ANC:Active Noise Control)によって、ファン20が発生する騒音を抑制する。本実施形態において、ANCシステム1-1は、ノイズキャンセリング機能を有するダクトファンシステムである。これに代えて、ANCシステム1-1は、室内、車内、列車内、機内、または船内等において空調等のためのファン20が発生する騒音を抑制するシステム等であってもよい。
【0024】
本実施形態において、ANCシステム1-1は、ダクト10と、ファン20と、ファン制御装置30と、音響トランスデューサ60と、ANC装置100-1とを備える。ダクト10は、空調または換気等の目的で気体(例えば空気)を運ぶための管である。ファン20は、ダクト10の内側の空間内に設置される。ファン20は、モータによりファンの羽根を回転させることによりダクト10の内部に気流を生じさせ、これによってダクト10の一端側(例えば図中左側)から他端側(例えば図中右側)へと気体を流す。
【0025】
ファン制御装置30は、ファン20に接続される。ファン制御装置30は、例えばANCシステム1-1の使用者またはANCシステム1-1を制御する機器等からファン20の動作設定を受け付ける。ファン制御装置30は、受け付けた動作設定に応じてファン20を動作させる。また、ファン制御装置30は、使用者から温度設定等を受けて自動運転により動作設定を切り替えながらファン20を動作させてもよい。ファン20に対する動作設定は、例えば風量または風速の設定であってよい。
【0026】
音響トランスデューサ60は、一例としてスピーカであり、ANC装置100-1に接続される。音響トランスデューサ60は、ANC装置100-1からの制御信号に応じて、ファン20の騒音を打ち消すための制御音を出力する。
【0027】
ANC装置100-1は、ファン制御装置30および音響トランスデューサ60に接続される。ANC装置100-1は、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、または中央処理装置等のプロセッサを含むコンピュータにより実現されてよい。また、ANC装置100-1は、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。このようなコンピュータは、アクティブノイズ制御プログラムを実行することにより、ANC装置100-1として機能する。また、ANC装置100-1は、アクティブノイズ制御用に設計された専用コンピュータであってよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。
【0028】
ANC装置100-1は、ファン20の騒音を打ち消すための制御信号を生成して音響トランスデューサ60へと出力し、音響トランスデューサ60により制御音を発生させる。音響トランスデューサ60が発生する制御音は、理想的には、騒音を制御する対象の領域(騒音制御領域)においてファン20からの騒音に対して逆相となる音である。これにより、ファン20からの騒音は、逆相の制御音と重なり合って一部または全て打ち消される。
【0029】
ANC装置100-1は、動作設定取得部110と、音響パターン格納部120と、参照信号生成部140と、アクティブノイズ制御部150と、トランスデューサ接続部180とを有する。動作設定取得部110は、ファン制御装置30に接続される。動作設定取得部110は、ファン制御装置30に対して設定された、ファン20の動作設定を取得する。
【0030】
音響パターン格納部120は、ファン20の騒音の音響パターンを記憶する。この音響パターンは、時間ドメインの信号パターン(例えば時系列の信号パターン)であってよく、周波数ドメインの信号パターン(例えば周波数毎の振幅および位相を示す周波数スペクトル)であってもよい。また、音響パターン格納部120は、ファン20の騒音の時系列の信号パターンを表す近似関数をファン20の騒音の音響パターンとして記憶してもよい。
【0031】
参照信号生成部140は、動作設定取得部110および音響パターン格納部120に接続される。参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定に基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。この参照信号は、参照信号生成部140が抑制対象とする騒音を表す信号であり、本実施形態においてはファン20の騒音を示す信号である。本実施形態において、参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定と音響パターン格納部120に格納された音響パターンとに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。
【0032】
アクティブノイズ制御部150は、参照信号生成部140に接続される。アクティブノイズ制御部150は、参照信号生成部140からの参照信号に応じて、ファン20の騒音を打ち消すための制御信号を出力する。
【0033】
トランスデューサ接続部180は、アクティブノイズ制御部150に接続される。トランスデューサ接続部180は、アクティブノイズ制御部150からの制御信号を音響トランスデューサ60へと出力する。トランスデューサ接続部180は、アクティブノイズ制御部150からの制御信号を必要に応じて増幅等して音響トランスデューサ60へと出力してよい。
【0034】
図2は、本実施形態に係るANC装置100-1のアクティブノイズ制御フローを示す。ステップ210(S210)において、動作設定取得部110は、ファン20の動作設定を取得する。動作設定取得部110は、ファン制御装置30から送信される動作設定データを有線または無線の通信ネットワークを介して受信する等により、ファン20の動作設定を取得してよい。例えば、動作設定取得部110は、GPIポート通信またはシリアルポート通信等によってファン制御装置30から動作設定データを受信してよい。
【0035】
S220において、参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定に基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。本実施形態において、参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定と音響パターン格納部120に格納された音響パターンとに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。例えば、参照信号生成部140は、ファン20の動作設定を動作設定取得部110が取得したタイミングで、その動作設定に応じた音響パターンの時系列信号を出力開始する等により、実際のファン20が発生する騒音と同期またはほぼ同期した音響パターンを参照信号として生成してもよい。
【0036】
ここで、音響パターン格納部120が周波数ドメインの音響パターンを格納している場合には、参照信号生成部140は、周波数ドメインの音響パターンを逆フーリエ変換等により時間ドメインの音響パターンに変換することにより参照信号を生成してよい。また、参照信号生成部140は、周波数ドメインの音響パターンを参照信号としてアクティブノイズ制御部150に供給してもよい。なお、ANC装置100-1における参照信号生成部140およびアクティブノイズ制御部150のそれぞれの音響パターンの信号処理は、時間ドメイン、周波数ドメイン、あるいは時間ドメインおよび周波数ドメインの両用等のいずれの形式で行われてもよく、音響パターン格納部120に格納する音響パターンの形式は参照信号生成部140およびアクティブノイズ制御部150における計算の形式に適合して定められてよい。
【0037】
S230において、アクティブノイズ制御部150は、参照信号生成部140からの参照信号に応じて、ファン20の騒音を打ち消すための制御信号を出力する。トランスデューサ接続部180は、アクティブノイズ制御部150からの制御信号を適宜増幅等して音響トランスデューサ60へと出力する。ここで、アクティブノイズ制御部150は、音響トランスデューサ60が発生する制御音が、騒音制御領域(本図においてダクト10の右側の端部)においてファン20の騒音と逆相となるように制御信号を生成する。アクティブノイズ制御部150は、アクティブノイズ制御部150が有する伝達関数によって参照信号の振幅および位相を調整することにより、騒音制御領域においてファン20の騒音および制御音がほぼ逆相となるようにしてよい。
【0038】
S240において、音響トランスデューサ60は、受け取った制御信号に応じた制御音を発生する。これにより音響トランスデューサ60は、ファン20の騒音の少なくとも一部を打ち消す。
【0039】
図3は、本実施形態に係る音響パターン格納部120に格納される音響パターンの一例を示す。本図においては、各音響パターンは、横軸を周波数とし、縦軸を強度(または振幅)とした周波数領域の信号パターンとして表される。音響パターン格納部120は、複数種類の動作設定のそれぞれについてファン20の騒音の音響パターンを記憶する。本図の例において、音響パターン格納部120は、風量弱の設定に対する音響パターンと、風量強の設定に対する音響パターンとを記憶する。
【0040】
音響パターン格納部120に格納される各音響パターンは、動作設定の種類に応じて周波数プロファイルが異なりうる。例えば、各音響パターンは、ピークとなる周波数、ピークとなる周波数の振幅および位相、極大となる周波数、または、極大となる周波数における振幅および位相等が異なる。本図の例においては、風量強の設定に対する音響パターンは、風量弱の設定に対する音響パターンと比較して、ピークおよび極大となる各周波数が高い。一般的には、ファン20は、風量強に設定すると羽根の回転数が増えるので、ピークおよび極大となる各周波数が高くなる傾向にある。
【0041】
図2のS220において、参照信号生成部140は、動作設定に対応する音響パターンを音響パターン格納部120から読み出して、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。本図の例において、参照信号生成部140は、風量強と設定されたことに応じて風量強の設定に対する音響パターンを音響パターン格納部120から読み出して参照信号を生成し、風量弱と設定されたことに応じて風量弱の設定に対する音響パターンを音響パターン格納部120から読み出して参照信号を生成する。
【0042】
本実施形態に係るANC装置100-1によれば、ファン20の騒音に応じた参照信号を発生し、アクティブノイズ制御部150により参照信号を打ち消すための制御信号を出力することにより、音響トランスデューサ60が発生する制御音を用いてファン20の騒音を打ち消すことができる。ここで、ANC装置100-1がファン20の騒音を音響センサで取得してそのまま参照信号として用いたとすると、例えばANCシステム1-1の近傍での会話等の、ファン20の騒音以外のノイズが参照信号に混入してノイズキャンセリング性能が低下する可能性がある。これに対し、本実施形態に係るANC装置100-1は、ファン20の騒音以外のノイズを極力含まないような音響パターンを音響パターン格納部120に記憶して使用することにより、ファン20の騒音以外のノイズを参照信号に混入させないようにし、ノイズキャンセリング性能が低下するのを防ぐことができる。
【0043】
図4は、本実施形態の第1変形例に係るANCシステム1-2の構成を示す。第1変形例に係るANCシステム1-2は、
図1~3に示したANCシステム1-1の変形例である。本図において、
図1のANCシステム1-1における構成要素と同様の機能および構成を有する構成要素については同一の符号を付し、以下相違点を除いて説明を省略する。
【0044】
ANCシステム1-2は、参照音響センサ40を更に備える。参照音響センサ40は、マイクロフォンまたは加速度センサ等の、ファン20の騒音を測定可能なセンシングデバイスであってよい。参照音響センサ40は、ファン20に比較的近傍に設けられてよく、ファン20の騒音の音響パターンを取得する。
【0045】
また、ANCシステム1-2は、
図1に示したANC装置100-1に代えて、ANC装置100-2を備える。ANC装置100-2は、ANC装置100-1の各構成要素に加えて、参照センサ接続部130を有する。参照センサ接続部130は、参照音響センサ40に接続される。参照センサ接続部130は、参照音響センサ40が測定した、ファン20の騒音の音響パターンを取得する。参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定に加え、参照音響センサ40から取得された音響パターンに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。
【0046】
図5は、第1変形例に係るANC装置100-2のアクティブノイズ制御フローを示す。本アクティブノイズ制御フローは、
図2に示したアクティブノイズ制御フローの変形例である。本図において、
図2における処理と同様の処理を行うブロックについては同一の符号を付し、以下相違点を除いて説明を省略する。
【0047】
S515において、参照センサ接続部130は、参照音響センサ40が測定した、ファン20の騒音の音響パターンを取得する。一例として、参照センサ接続部130はAD変換器を含み、参照音響センサ40が測定したアナログの音響パターンの時系列信号をAD変換することにより、デジタルの音響パターンとして取得してよい。
【0048】
S520において、参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定と参照音響センサ40から取得された音響パターンとに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。参照信号生成部140は、ファン20の動作設定および参照音響センサ40から取得された音響パターンに基づいて、以下に例示するような各種の手法を用いて参照信号を生成してよい。
【0049】
(1)音源分離
参照信号生成部140は、参照音響センサ40から取得された音響パターンを、動作設定取得部110により取得された動作設定に対応付けて音響パターン格納部120に格納された音響パターンを利用して補正することにより、参照信号を生成してよい。一例として、参照信号生成部140は、NMF(非負値行列因子分解)を用いて、制御対象となるファン20の騒音以外のノイズの除去処理を行う。
【0050】
図6は、このような音源分離手法を模式的に示す。本図において、観測行列Yは、参照音響センサ40から取得した音響パターンの周波数スペクトルの時系列パターンを示す。より具体的には、観測行列Yは、連続する複数の時刻を列方向(図中横方向)に配列し、周波数を行方向(図中縦方向)に配列し、各要素は対応する時刻における対応する周波数の強度を示す。
【0051】
基底行列Hは、複数種類の動作設定のそれぞれに対して用意される。基底行列Hは、動作設定に対応するファン20の音響パターンを少なくとも一部に含む。具体的には、基底行列Hは、複数の基底ベクトルを含む。それぞれの基底ベクトルは、ANCシステム1-2が動作する環境で発生しうる騒音の周波数スペクトルを表す。基底ベクトルは、周波数を行方向に配列し、各要素は対応する周波数における騒音の強度を示す。複数の基底ベクトルのうちの少なくとも1つは、動作設定に対応するファン20の騒音の周波数スペクトルを表す。他の基底ベクトルは、制御対象以外の既知の騒音についての周波数スペクトルであってよい。
【0052】
係数行列Uは、本音源分離手法において算出される。係数行列Uは、基底行列Hの複数の基底ベクトルのそれぞれが、各時刻においてどの程度の強度でアクティベーションされるかを示す。具体的には、係数行列Uは、各基底ベクトルに対応する行を有し、各行は複数の時刻のそれぞれにおける、対応する基底ベクトルの騒音が参照音響センサ40からの音源パターンに出現している強度を示す。
【0053】
ここで、基底行列Hが存在しうる全ての騒音に対する基底ベクトルを含むと仮定すると、参照信号生成部140は、観測行列Y=基底行列H×係数行列Uとなるような係数行列Uを算出することにより、参照音響センサ40により取得された騒音には各時刻において各基底ベクトルに対応する騒音がどの程度の強さで含まれていたかを算出することができる。そして、参照信号生成部140は、係数行列Uのうち、制御対象となるファン20の騒音以外の基底ベクトルに関する行を0とした係数行列U'を生成し、基底行列H×係数行列U'を算出することにより、制御対象以外の騒音を除去した時系列の音響パターンを算出することができる。
【0054】
基底行列Hが制御対象外の一部の騒音に対する基底ベクトルを含む場合には、参照信号生成部140は、モデル化行列Y'=基底行列H×係数行列Uが観測行列Yと同一または近似となるような係数行列Uの近似解を算出する。そして、参照信号生成部140は、上述のように、係数行列Uのうち、制御対象となるファン20の騒音以外の基底ベクトルに関する行を0とした係数行列U'を生成し、基底行列H×係数行列U'を算出することにより、制御対象以外の騒音を除去または低減した時系列の音響パターンの近似解を算出することができる。
【0055】
以上に示した音源分離手法において、基底行列Hは、ファン20の騒音の音響パターンを生成するためのパラメータの一例である。音響パターン格納部120は、動作設定に対応する広義の音響パターンとして、時間ドメインまたは周波数ドメインの音響信号自体ではなく、音響パターンを生成するためのパラメータを記憶してよい。参照信号生成部140は、動作設定と音響パターン格納部120に格納された音響パターンのパラメータとに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。
【0056】
なお、以上に示した音源分離手法は一例であり、様々なバリエーションがある。例えば、上記の各行列は行および列が入れ替わってもよい。
【0057】
(2)音響パターンのモデルの利用
図7は、音響パターンのモデルを用いる音響パターン格納部720および参照信号生成部740の一例を示す。本図の音響パターン格納部720および参照信号生成部740は、
図4に示したANCシステム1-2における音響パターン格納部120および参照信号生成部140の代わりに用いられてよい。音響パターン格納部720および参照信号生成部740は、音響パターン格納部120および参照信号生成部140の変形例であるから以下相違点を除き説明を省略する。
【0058】
音響パターン格納部720は、時間ドメインまたは周波数ドメイン等の形式で音響パターン自体を格納するのに代えて、制御対象であるファン20の騒音の音響パターンを生成するためのモデルを広義の音響パターンの一例として格納してもよい。本図において、音響パターン格納部720は、複数種類の動作設定のそれぞれに対応付けて、複数の音響パターンモデル725-1~n(「音響パターンモデル725」とも示す。)のそれぞれを格納する。音響パターン格納部720は、各音響パターンモデル725として、深層学習モデル等の学習モデルにおける学習済みのパラメータセットを格納してよい。
【0059】
参照信号生成部740は、動作設定と音響パターン格納部720に格納された音響パターンのモデルとに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。
図7の例において、参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定に対応する音響パターンモデル725-kを音響パターン格納部720から読み出す。参照信号生成部740は、参照音響センサ40から取得された音響パターンを音響パターンモデル725-kに入力することで、制御対象となるファン20の騒音以外のノイズを除去する。そして、参照信号生成部740は、ファン20以外のノイズが除去された音響パターンを参照信号として出力する。
【0060】
本図の例において、各音響パターンモデル725は、深層ニューラルネットワーク等のニューラルネットワークを用いた学習モデルであってよい。このようなニューラルネットワークは、ResNet、SENet、Transformer、またはその他の任意のネットワーク構造を有してよい。各音響パターンモデル725は、ニューラルネットワーク以外の学習モデルであってもよい。音響パターンモデル725は、参照音響センサ40の音響パターンの学習用入力データと、参照信号生成部740が出力すべき目標の参照信号である学習用出力データとを用いて、例えばANC装置100-2の試作段階または製品出荷前等のような事前の学習により生成されてよい。また、ユーザ等からのフィードバックが得られる場合には、音響パターンモデル725は、フィードバックに応じて適宜更新されてよい。
【0061】
モデルの学習処理においては、学習用入力データ中の各サンプルを音響パターンモデル725に入力した場合の音響パターンモデル725の出力と、学習用出力データ中の対応する目標出力との誤差を低減させるように、音響パターンモデル725のパラメータを更新していく。ここで、学習用入力データの各サンプルは、ANCによる制御対象となるファン20の騒音と、ANCによる制御対象以外のノイズとを含む音響パターンであってよい。学習用出力データの各サンプルは、学習用入力データの各サンプルに対応し、ANCによる制御対象となるファン20の騒音を含み、ANCによる制御対象以外のノイズを含まない音響パターンであってよい。ニューラルネットワークを用いる場合には、各サンプルを入力したことに応じてニューラルネットワークが出力する出力値と目標出力値との誤差を用いて、バックプロパゲーション等の手法により、ニューラルネットワークの各ニューロン間の重みおよび各ニューロンのバイアス等を調整する。
【0062】
このように、参照信号生成部740は、参照信号を生成するための音響パターンの学習モデルを用いて、参照音響センサ40からの音響パターンから制御対象であるファン20の騒音を抽出することができる。また、参照信号生成部740は、ファン20の動作設定に応じた音響パターンの学習モデルを用いることにより、制御対象以外の騒音の低減効果を向上させることができる。
【0063】
(3)参照音響センサ40からの音響パターンの位相の利用
参照信号生成部140は、動作設定取得部110により取得された動作設定に対応付けて音響パターン格納部120に格納された音響パターンを、参照音響センサ40から取得された音響パターンを利用して補正することにより、参照信号を生成してよい。一例として、参照信号生成部140は、参照音響センサ40からの音響パターンの位相を用いて、音響パターン格納部120に格納されたパターンを補正する。
【0064】
具体的には、音響パターン格納部120は、制御対象であるファン20の騒音を含み、制御対象以外のノイズを含まないか、あるいは制御対象以外のノイズが抑えられた音響パターンを予め格納しておく。参照音響センサ40から取得される音響パターンは、制御対象外のノイズを含みうるが、ファン20の動作設定のタイミングに応じた位相を有する。
【0065】
音響パターン格納部120に格納された音響パターンの振幅スペクトルおよび位相スペクトルをAsおよびPsとし、参照音響センサ40から取得された音響パターンの振幅スペクトルおよび位相スペクトルをAmおよびPmとする。参照信号生成部140は、時系列の音響パターンをフーリエ変換等することにより、振幅および位相を算出することができる。
【0066】
参照信号生成部140は、音響パターン格納部120に格納された音響パターンの振幅スペクトルAsを有し、参照音響センサ40から取得された音響パターンの位相スペクトルPmを有する音響パターンを生成し、参照信号として出力する。これにより、参照信号生成部140は、制御対象外のノイズの影響を排除または低減した参照信号を生成することができる。
【0067】
なお、上記の手法は一例であり、様々なバリエーションがある。例えば、参照信号生成部140は、振幅スペクトルAsまたはAmにおける振幅が最大または極大となる周波数等の最も支配的な周波数を特定し、位相スペクトルPsおよびPmにおける特定した周波数での位相差を算出し、算出した位相差に相当する時間差分だけ音響パターン格納部120に格納された音響パターンのタイミングをずらして出力することにより、参照信号を出力してもよい。すなわち例えば、参照信号生成部140は、特定した周波数における位相スペクトルPsの位相が位相スペクトルPmの位相よりも時間差ΔT分だけ遅延している場合には、音響パターン格納部120に格納された音響パターンのタイミングをΔTだけ遅らせて参照信号として出力してよい。
【0068】
本変形例に係るANC装置100-2によれば、ファン20の動作設定と参照音響センサ40により測定されたファン20の騒音の音響パターンとを用いて、制御対象であるファン20の騒音以外のノイズの影響を抑制した参照信号を生成することができる。本変形例に係るANC装置100-2においては、ANC装置100-1と比較して、ファン20の騒音の音響パターンと参照信号との間の振幅および位相合わせをより正確に行うことができ、騒音制御領域においてファン20の騒音をより低減することができる。
【0069】
図8は、本実施形態の第2変形例に係るANCシステム1-3の構成を示す。第2変形例に係るANCシステム1-3は、
図4~6に示したANCシステム1-2の変形例である。本図において、
図4のANCシステム1-2における構成要素と同様の機能および構成を有する構成要素については同一の符号を付し、以下相違点を除いて説明を省略する。
【0070】
ANCシステム1-3は、誤差音響センサ50を更に備える。誤差音響センサ50は、マイクロフォンまたは加速度センサ等の、騒音を測定可能なセンシングデバイスであってよい。誤差音響センサ50は、制御対象であるファン20の騒音を抑制したい空間である騒音制御領域またはその近傍に設けられてよく、騒音制御領域に到達するファン20の騒音を音響トランスデューサ60からの制御音によって打ち消した結果、残りうるファン20の騒音の打ち消し誤差を取得する。
【0071】
また、ANCシステム1-3は、
図4に示したANC装置100-2に代えて、ANC装置100-3を備える。ANC装置100-3は、ANC装置100-2の各構成要素に加えて、誤差センサ接続部170を有する。誤差センサ接続部170は、誤差音響センサ50に接続される。誤差センサ接続部170は、誤差音響センサ50が測定した、ファン20の騒音の打ち消し誤差の音響パターンを取得する。
【0072】
本変形例において、参照信号生成部140は、誤差音響センサ50から取得された音響パターンに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。例えば、ANC装置100-3の参照信号生成部140は、
図4から6を用いて説明したようなANC装置100-2の参照信号生成部140が生成する参照信号と、誤差音響センサ50からの音響パターンとの重み付け和を算出し、ANC装置100-3における参照信号として出力してよい。ここで誤差音響センサ50からの音響パターンの重みの大きさは、ANC装置100-2の参照信号生成部140が生成する参照信号の重みの大きさよりも小さくてもよい。また、ANC装置100-3の参照信号生成部140は、
図4から6を用いて説明したようなANC装置100-2の参照信号生成部140が生成する参照信号と、予め定められた位相差を与えた誤差音響センサ50からの音響パターンとの重み付け和を算出し、ANC装置100-3における参照信号として出力してよい。
【0073】
なお、ANCシステム1-3において、参照信号生成部140は、ANC装置100-2の参照信号生成部140に代えて
図1から3を用いて説明したようなANC装置100-1の参照信号生成部140が生成する参照信号と、誤差音響センサ50からの音響パターンとの重み付け和を算出し、ANC装置100-3における参照信号として出力してよい。また、ANCシステム1-3において、参照信号生成部140は、ANCシステム1-1の参照信号生成部140またはANCシステム1-2の参照信号生成部140と同様に、誤差音響センサ50からの音響パターンを用いずに参照信号を生成してもよい。
【0074】
本変形例において、アクティブノイズ制御部150は、誤差音響センサ50が取得した打ち消し誤差に応じて、参照信号を制御信号に変換する変換特性を調整する。アクティブノイズ制御部150は、騒音の打ち消し誤差がより小さくなるように変換特性を調整することにより、騒音制御領域におけるANCシステム1-3の騒音を低減することができる。
【0075】
図9は、第2変形例に係るANC装置100-3の変換特性および空間伝達経路特性を示す。本図の例においては、説明の便宜上、ANC装置100-3が参照音響センサ40からの音響パターンを参照信号として用いる場合について説明する。本図は、アクティブノイズ制御部150における、参照信号を制御信号に変換する変換特性を、破線のブロック内に示す。
【0076】
アクティブノイズ制御部150の変換特性は、参照信号生成部140からの参照信号xを制御信号yに変換する伝達特性H(「伝達関数H」または「フィルタ特性H」とも示す。)を含む。すなわち、制御信号y=参照信号x×伝達特性Hである。ここで、「参照信号x×伝達特性H」等の表現は、参照信号xの時系列データを伝達特性Hで表されるフィルタに入力したことに応じてフィルタが出力する出力信号の時系列データを表す。具体的には、「参照信号x×伝達特性H」等の表現は、時間ドメインにおける参照信号xおよび伝達特性Hの間の畳み込み演算、または周波数ドメインにおける参照信号xおよび伝達特性Hの周波数スペクトル同士の積等を意味してよい。アクティブノイズ制御部150が出力する制御信号は、トランスデューサ接続部180を介して音響トランスデューサ60へと供給され、制御音に変換される。音響トランスデューサ60が発生した制御音は、音響トランスデューサ60から騒音制御領域の誤差音響センサ50までの音響伝達経路に沿って伝搬する。ここで、音響トランスデューサ60から誤差音響センサ50までの音響伝達経路(「二次経路」とも示す。)が伝達特性Cであるとすると、参照信号x×伝達特性H×伝達特性Cの制御音が誤差音響センサ50に到達する。
【0077】
なお、トランスデューサ接続部180および音響トランスデューサ60による制御信号から制御音への変換は音の伝搬と比較して非常に高速であるから、本図においてはゼロ遅延と見なしている。したがって、本図においては、制御信号=制御音として扱っている。アクティブノイズ制御部150の変換特性に含まれる各種の音響伝達経路の伝達特性は、音の伝達に加えてANC装置100-3の処理遅延等を含めた伝達特性となるように設定されてもよい。
【0078】
また、ファン20の騒音は、ファン20から誤差音響センサ50までの音響伝達経路(「一次経路」とも示す。)を伝搬して、一次音dとして誤差音響センサ50に到達する。誤差音響センサ50は、参照信号x×伝達特性H×伝達特性Cの制御音と一次音dとが重畳された誤差信号e=参照信号x×伝達特性H×伝達特性C+一次音dを観測する。この誤差信号eは、騒音制御領域におけるファン20の騒音の打ち消し誤差である。
【0079】
アクティブノイズ制御部150は、誤差信号eを低減するように伝達特性Hを調整する。本図においては、アクティブノイズ制御部150がFxLMS(Filtered-x LMS)型のANCコントローラである場合について例示している。本図の例においては、アクティブノイズ制御部150の変換特性は、ファン20から誤差音響センサ50への音響伝達経路特性Cpを含む。音響伝達経路特性Cpは、ファン20から誤差音響センサ50までの実際の音響伝達経路の伝達特性をモデル化した伝達特性である。音響伝達経路特性Cpは、ANCシステム1-3の設計時に決定されてよく、ANCシステム1-3の試作品または実機を用いた測定結果に応じて決定されてもよい。アクティブノイズ制御部150は、誤差音響センサ50に伝搬するファン20の騒音を、参照信号x×伝達特性H×音響伝達経路特性Cpにより推定することができる。
【0080】
アクティブノイズ制御部150は、参照信号xに音響伝達経路特性Cpを適用して得られる、フィルタされた参照信号xCpと、誤差信号eとを用いて、伝達特性Hを調整する。例えば伝達特性HがFIRフィルタにより実現されている場合、アクティブノイズ制御部150は、誤差音響センサ50でのファン20の騒音の推測値xCpのベクトルと誤差信号eのベクトルとを要素毎に乗じたベクトルに係数(0を超え1以下の係数)を乗じて、FIRフィルタの係数ベクトルから減じることにより、FIRフィルタの係数ベクトルを更新してよい。なお、アクティブノイズ制御部150は、以上に示したFxLMSアルゴリズム以外の任意の方法を用いて、誤差信号eを低減または最小化してもよい。
【0081】
参照音響センサ40を備える場合、音響トランスデューサ60が発生する制御音は、参照音響センサ40へと伝搬して参照音響センサ40により観測される可能性がある。本図において、音響トランスデューサ60から参照音響センサ40までの音響伝達経路は、伝達特性Eを有する。参照音響センサ40は、ファン20の雑音に、音響トランスデューサ60が発生する制御音y(=制御信号y)×音響伝達経路特性Eのノイズが重畳された音響パターンを測定する。
【0082】
アクティブノイズ制御部150の変換特性は、このように音響トランスデューサ60からの制御音が参照音響センサ40に回り込む影響を低減または除去するために、制御信号に応じてファン20の騒音を打ち消すための制御音を出力する音響トランスデューサ60から少なくとも1つの参照音響センサ40への音響伝達経路特性Epを含んでよい。音響伝達経路特性Epは、ANCシステム1-3の設計時に決定されてよく、ANCシステム1-3の試作品または実機を用いた測定結果に応じて決定されてもよい。アクティブノイズ制御部150は、参照音響センサ40に伝搬する音響トランスデューサ60の制御音を、制御信号y×音響伝達経路特性Epにより推定することができる。
【0083】
本図の例において、アクティブノイズ制御部150は、音響トランスデューサ60からの制御音を含む参照音響センサ40の音響パターンである参照信号から、制御音y×音響伝達経路特性Epにより推定されたノイズを減じることにより、音響トランスデューサ60から参照音響センサ40へと回り込む制御音の影響を低減または除去した参照信号xを得ることができる。なお、ANC装置100-3は、参照音響センサ40へと回り込む制御音の影響の低減または除去処理を、アクティブノイズ制御部150の代わりに参照信号生成部140で行う構成を採ってよい。
【0084】
図10は、第2変形例に係るANC装置100-3のアクティブノイズ制御フローを示す。本アクティブノイズ制御フローは、
図5に示したアクティブノイズ制御フローの変形例である。本図において、
図5における処理と同様の処理を行うブロックについては同一の符号を付し、以下相違点を除いて説明を省略する。
【0085】
S520において、参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定と参照音響センサ40から取得された音響パターンとに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。本変形例において、参照信号生成部140は、誤差音響センサ50から取得された音響パターンに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成してよい。
【0086】
S950において、誤差センサ接続部170は、誤差音響センサ50が測定した、ファン20の騒音の打ち消し誤差の音響パターンを取得する。S960において、アクティブノイズ制御部150は、誤差音響センサ50が取得した打ち消し誤差をより小さくするように、一例として
図9に関連して示した手法を用いて参照信号を制御信号に変換する変換特性を調整する。
【0087】
本変形例に係るANCシステム1-3によれば、ファン20の騒音の打ち消し誤差を誤差音響センサ50により測定してアクティブノイズ制御部150にフィードバックすることにより、参照信号生成部140が出力する参照信号を用いてファン20の騒音をより精度良く打ち消すことができる。なお、ANCシステム1-3は、参照音響センサ40および参照センサ接続部130を有しない構成を採ってもよい。この場合であっても、アクティブノイズ制御部150は、打ち消し誤差に応じて変換特性を調整することにより、参照信号の遅延量も含めて調整することができる。したがって、アクティブノイズ制御部150は、ファン20の騒音に対して参照信号のタイミングがずれていたとしても、変換特性の調整によってタイミングのずれを少なくともある程度吸収することができる。
【0088】
図11は、本実施形態の第3変形例に係るANCシステム1-4の構成を示す。第3変形例に係るANCシステム1-4は、
図8~10に示したANCシステム1-3の変形例である。本図において、
図8のANCシステム1-3における構成要素と同様の機能および構成を有する構成要素については同一の符号を付し、以下相違点を除いて説明を省略する。
【0089】
ANCシステム1-4のANC装置100-4は、ANCシステム1-3のANC装置100-3の各構成に加えてパラメータ格納部160を更に備える。パラメータ格納部160は、アクティブノイズ制御部150の変換特性のパラメータを格納する。パラメータ格納部160は、アクティブノイズ制御部150の変換特性に含まれる各伝達特性のうち、調整可能な伝達特性を格納してよい。ANC装置100-4内のアクティブノイズ制御部150は、誤差音響センサ50が取得した打ち消し残差に応じて変換特性を調整する。また、パラメータ格納部160には、参照信号生成部140が音源分離処理に用いるパラメータ等を格納してもよい。なお、
図11においては音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160は別個に記載しているが、音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160は同一の記憶装置によって実現されてもよい。
【0090】
図12は、第3変形例に係るANC装置100-4のアクティブノイズ制御フローを示す。S1110において、ANC装置100-4は、アクティブノイズ制御を行う。ANC装置100-4は、
図10に示したアクティブノイズ制御を行うことによりアクティブノイズ制御部150の変換特性を調整して、ファン20の騒音の打ち消し誤差を低減していく。
【0091】
S1120において、ANC装置100-4は、アクティブノイズ制御の停止指示(オフ指示)を受ける。例えば、ANC装置100-4は、ファン制御装置30がファン20の停止を指示する動作設定を受けたことに応じて、この動作設定を動作設定取得部110によって受け取る。また、ANC装置100-4は、ANCシステム1-4の電源オフを指示する動作設定、ファン20を動作させたままアクティブノイズ制御を停止することを指示する動作設定、またはその他の、アクティブノイズ制御の停止を伴う動作設定を受け取ってもよい。
【0092】
S1130において、アクティブノイズ制御部150は、変換特性が収束しているか否かを判断する。例えば、アクティブノイズ制御部150は、誤差音響センサ50が取得する打ち消し誤差が閾値以下に収束していることに応じて、変換特性が収束していると判断してよい。
【0093】
変換特性が収束していると判断した場合には、S1140において、アクティブノイズ制御部150は、アクティブノイズ制御部150の変換特性をパラメータ格納部160に格納する。S1150において、ANCシステム1-4は、S1120で受け付けた運転設定に応じて、アクティブノイズ制御を停止すると共に、運転設定の内容に応じてANCシステム1-4の電源オフ等を行う。
【0094】
S1160において、ANC装置100-4は、アクティブノイズ制御の開始指示(オン指示)を受ける。ANC装置100-4は、ANCシステム1-4の電源オンを指示する動作設定、ファン20を動作させたままアクティブノイズ制御を開始することを指示する動作設定、またはその他の、アクティブノイズ制御の開始を伴う動作設定を受け取ってもよい。
【0095】
S1170において、アクティブノイズ制御部150は、ファン20の前回の動作(前回アクティブノイズ制御を行っていた動作)でパラメータ格納部160に格納された変換特性のパラメータを、パラメータ格納部160から読み出す。S1180において、アクティブノイズ制御部150は、パラメータ格納部160から読み出した変換特性のパラメータを、ファン20の今回の動作(今回アクティブノイズ制御を行う動作)における初期値として設定する。
【0096】
以上に示したANCシステム1-4によれば、電源オフ等によりアクティブノイズ制御を停止する場合に、アクティブノイズ制御部150の収束済みの変換特性をパラメータ格納部160に保存する。そして、ANCシステム1-4は、次回の電源オン等によりアクティブノイズ制御を開始する場合に、パラメータ格納部160に保存した変換特性をアクティブノイズ制御部150に初期設定することができる。これにより、ANCシステム1-4は、アクティブノイズ制御の開始から十分なノイズキャンセリング性能が得られるまでに要する時間を短縮することができる。
【0097】
なお、アクティブノイズ制御部150は、S1130の判断を行わず、アクティブノイズ制御を停止する場合には収束途中の変換特性をパラメータ格納部160に格納してもよい。この場合、アクティブノイズ制御部150は、アクティブノイズ制御が再開されたことに応じて収束途中の変換特性をパラメータ格納部160から読み出して、変換特性を更に収束させることができる。
【0098】
また、アクティブノイズ制御部150は、複数種類の動作設定のそれぞれに対して異なる変換特性を用いてもよい。この場合、アクティブノイズ制御部150は、S1120において例えば風量弱から風量強に切り替える等のような、動作設定を切り替えることを指示されたことに応じて、現在の動作設定に対応する変換特性をパラメータ格納部160に格納し(S1140)、現在の変換特性を用いたアクティブノイズ制御を停止し(S1150)、切り替え後の動作設定に対応する変換特性をパラメータ格納部160から読み出して(S1170)、切り替え後の動作設定における変換特性の初期値としてよい(S1180)。
【0099】
図13は、本実施形態の第4変形例に係るANCシステム1-5の構成を示す。第4変形例に係るANCシステム1-5は、
図11~12に示したANCシステム1-4の変形例である。本図において、
図11のANCシステム1-4における構成要素と同様の機能および構成を有する構成要素については同一の符号を付し、以下相違点を除いて説明を省略する。
【0100】
ファン20が発生する騒音の音圧の分布は、ファン20の動作設定に応じて変化しうる。ANCシステム1-5は複数種類の動作設定のうちANCシステム1-5に設定された動作設定に応じて、適切な位置の参照音響センサ40および誤差音響センサ50からの音響パターンを優先的に使用する。
【0101】
ANCシステム1-5は、複数の参照音響センサ40を備える。本変形例において、複数の参照音響センサ40は、ダクト10内のファン20から騒音制御領域までの間に、ファン20からの距離が互いに異なる位置に配置される。参照信号生成部140は、複数の参照音響センサ40のうち、動作設定に応じて選択した参照音響センサ40から取得された音響パターンに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。ここで、パラメータ格納部160は、複数種類の動作設定のそれぞれに対応して、複数の参照音響センサ40のうち選択すべき参照音響センサ40を指定する設定パラメータを格納してよい。この場合、参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定に応じた参照音響センサ40の指定をパラメータ格納部160から読み出して、指定に対応する参照音響センサ40からの音響パターンを選択して参照信号の生成に用いる。
【0102】
ANCシステム1-5は、複数の誤差音響センサ50を備える。本変形例において、複数の誤差音響センサ50は、騒音制御領域における、ファン20からの距離が互いに異なる位置に配置される。アクティブノイズ制御部150は、複数の誤差音響センサ50のうち、動作設定に応じて選択した誤差音響センサ50から取得された打ち消し誤差に応じて、参照信号を制御信号に変換する変換特性を調整する。ここで、パラメータ格納部160は、複数種類の動作設定のそれぞれに対応して、複数の誤差音響センサ50のうち選択すべき誤差音響センサ50を指定する設定パラメータを格納してよい。この場合、アクティブノイズ制御部150は、動作設定取得部110が取得した動作設定に応じた誤差音響センサ50の指定をパラメータ格納部160から読み出して、指定に対応する誤差音響センサ50からの打ち消し誤差を選択して変換特性の調整に用いる。
【0103】
本変形例に係るANCシステム1-5によれば、動作設定に応じてファン20の騒音およびファン20の騒音の打ち消し誤差をより良好に取得できる参照音響センサ40および誤差音響センサ50を選択して参照信号の生成およびアクティブノイズ制御の変換特性の調整に用いることができる。具体的には、参照信号生成部140およびは、複数の参照音響センサ40のうち、ファン20の騒音の大きさと制御対象外のノイズの大きさとのS/N比がより大きくなる位置の参照音響センサ40を選択することができる。また、アクティブノイズ制御部150は、複数の誤差音響センサ50のうち、ファン20の騒音の大きさと制御対象外のノイズの大きさとのS/N比がより大きくなる位置の誤差音響センサ50を選択することができる。なお、ANCシステム1-5は、複数の参照音響センサ40および複数の誤差音響センサ50を備えるのに代えて、複数の参照音響センサ40を備えるが誤差音響センサ50を1つのみ備えてよく、複数の誤差音響センサ50を備えるが参照音響センサ40を1つのみ備えてもよい。
【0104】
また、参照信号生成部140は、参照音響センサ40を選択するのに代えて、複数の参照音響センサ40から取得された複数の音響パターンの重み付き和に基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成してもよい。この重み付き和の重みは、複数種類の動作設定で共通であってよい。これに代えて、参照信号生成部140は、複数の参照音響センサ40から取得された複数の音響パターンの、動作設定に応じて決定した重み付き和に基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成してもよい。この場合、パラメータ格納部160は、複数種類の動作設定のそれぞれについて、各参照音響センサ40に対する重みパラメータを記憶してよい。同様に、アクティブノイズ制御部150は、誤差音響センサ50を選択するのに代えて、複数の誤差音響センサ50から取得された複数の打ち消し誤差の重み付き和に基づいて、変換特性を調整してもよい。
【0105】
図14は、音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160に格納されるパラメータの第1例を示す。本図の例において、音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160は、複数種類の動作設定のそれぞれに対応付けて、アクティブノイズ制御部150の変換特性(図中「フィルタ係数H」)、動作設定に応じた音響パターン(図中「参照信号テンプレート」)、および、動作設定に応じたマイク位置についてのパラメータを記憶する。ANCシステム1-5においては、音響パターン格納部120は動作設定に応じた音響パターンを格納し、パラメータ格納部160はアクティブノイズ制御部150の変換特性、並びに、動作設定に応じた参照音響センサ40および誤差音響センサ50の位置を格納してよい。
【0106】
アクティブノイズ制御部150は、動作設定取得部110が取得した動作設定に対応付けてパラメータ格納部160に記憶されている変換特性を読み出して、アクティブノイズ制御部150内に設定してよい。例えば、アクティブノイズ制御部150は、風量強の動作設定が取得されたことに応じて、風量強の動作設定に対応付けられたフィルタ係数H_highをパラメータ格納部160から読み出す。そして、アクティブノイズ制御部150は、参照信号xを制御信号yに変換するフィルタのフィルタ係数をH_highに設定することにより、参照信号xを制御信号yに変換する伝達特性Hを設定してよい。
【0107】
また、参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定に対応付けて音響パターン格納部120に記憶されている音響パターンを読み出して、読み出した音響パターンに基づいて参照信号を生成してよい。例えば、参照信号生成部140は、風量弱の動作設定が取得されたことに応じて、風量弱の動作設定に対応付けられた参照信号テンプレートS_Lowを音響パターン格納部120から読み出して、参照信号テンプレートS_Lowで示される音響パターンに基づいて参照信号を生成してよい。
【0108】
また、参照信号生成部140およびアクティブノイズ制御部150は、動作設定取得部110が取得した動作設定に対応付けてパラメータ格納部160に記憶されているマイク位置の指定に応じて、複数の参照音響センサ40および複数の誤差音響センサ50のうち選択すべき参照音響センサ40および誤差音響センサ50を決定してよい。例えば、参照信号生成部140およびアクティブノイズ制御部150は、風量弱の動作設定が取得されたことに応じて、風量弱の動作設定に対応付けられたマイク位置Position_Lowを読み出して、マイク位置Position_Lowのデータ中に指定された参照音響センサ40および誤差音響センサ50の指定に応じて風量弱の動作設定で使用する参照音響センサ40および誤差音響センサ50を選択してよい。
【0109】
図15は、本実施形態の第5変形例に係るANCシステム1-6の構成を示す。第5変形例に係るANCシステム1-6は、
図13に示したANCシステム1-5の変形例である。本図において、
図13のANCシステム1-5における構成要素と同様の機能および構成を有する構成要素については同一の符号を付し、以下相違点を除いて説明を省略する。
【0110】
大気中における音速および音の減衰特性は、大気の温度および湿度によって異なる。ANCシステム1-6は、温度または湿度の少なくとも1つの環境の変化に応じてアクティブノイズ制御部150のパラメータを変更する。
【0111】
ANCシステム1-6は、1または複数の環境センサ70を備える。1または複数の環境センサ70のそれぞれは、ファン20の騒音の音響伝達経路の温度または湿度の少なくとも1つを測定する。本図の例において、各環境センサ70は、ダクト10内の温度または湿度を測定する。これに代えて、ダクト10の内外における環境差が比較的小さい場合には、ANCシステム1-6は、各環境センサ70によりダクト10の外の温度または湿度を測定してファン20の騒音の音響伝達経路の温度または湿度とみなしてもよい。
【0112】
ANCシステム1-6は、
図13に示したANC装置100-5に代えて、ANC装置100-6を備える。ANC装置100-6は、ANC装置100-5の各構成要素に加えて環境データ取得部190を有する。環境データ取得部190は、ファン20の騒音の音響伝達経路の温度または湿度の少なくとも1つを示す環境データを1または複数の環境センサ70から取得する。
【0113】
参照信号生成部140は、動作設定と環境データとに基づいて、アクティブノイズ制御部150に供給する参照信号を生成する。また、アクティブノイズ制御部150は、動作設定と環境データとに基づいて、参照信号を制御信号に変換する変換特性を切り替えてよい。ここで、参照信号生成部140およびアクティブノイズ制御部150は、環境データに応じたパラメータをパラメータ格納部160から読み出してよい。
【0114】
以上に示したANCシステム1-6は、温度または湿度の少なくとも1つに応じてアクティブノイズ制御部150の変換特性を変更する。例えば、
図9における実際の二次経路の伝達特性C、および、音響トランスデューサ60から参照音響センサ40までの音響伝達経路の伝達特性Eは、温度または湿度に応じて変わりうる。そこで、アクティブノイズ制御部150は、温度または湿度の少なくとも1つに応じて、二次経路をモデル化した伝達特性Cp、または、音響トランスデューサ60から参照音響センサ40までの音響伝達経路をモデル化した伝達特性Epのうちの少なくとも1つを変更してよい。また、実際の一次経路の伝達特性もまた、温度または湿度に応じて変わりうる。そこで、アクティブノイズ制御部150は、温度または湿度の少なくとも1つに応じて参照信号xを制御信号yに変換する伝達特性Hを変更してよい。
【0115】
図16は、音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160に格納されるパラメータの第2例を示す。本図の例において、音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160は、様々な動作設定Vおよび様々な温度Tに応じたフィルタ係数H(V,T)と、様々な動作設定Vに応じた参照信号テンプレートS(V)と、ファン20の騒音の様々なピーク周波数Fに応じたマイク位置P(F)とを記憶する。ANCシステム1-6においては、音響パターン格納部120は参照信号テンプレートS(V)を記憶し、パラメータ格納部160はフィルタ係数H(V,T)、並びに、参照音響センサ40および誤差音響センサ50についてのマイク位置P(F)を記憶してよい。
【0116】
アクティブノイズ制御部150は、動作設定取得部110が取得した動作設定vと環境センサ70から取得された温度tとの組に対応するフィルタ係数H(v,t)をパラメータ格納部160から読み出して、読み出したフィルタ係数H(v,t)を設定することにより、伝達特性Hを設定してよい。ここで、パラメータ格納部160が動作設定Vおよび温度Tの関数形式でH(V,T)を記憶している場合には、アクティブノイズ制御部150は、動作設定vおよび温度tを関数に代入してH(v,t)を算出してもよい。
【0117】
参照信号生成部140は、動作設定取得部110が取得した動作設定vに対応する参照信号テンプレートS(v)を音響パターン格納部120から読み出して、読み出した参照信号テンプレートS(v)により示される音響パターンに基づいて参照信号を生成してよい。ここで、音響パターン格納部120が動作設定Vの関数形式でS(V)を記憶している場合には、参照信号生成部140は、動作設定vを関数に代入してS(v)を算出してもよい。
【0118】
参照信号生成部140およびアクティブノイズ制御部150は、参照音響センサ40から取得したファン20の雑音の音響パターンのピーク周波数fを検出し、ピーク周波数fに対応するマイク位置P(f)を音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160から読み出して、読み出したマイク位置P(f)によって指定される参照音響センサ40および誤差音響センサ50を選択してよい。ここで、パラメータ格納部160がピーク周波数Fの関数形式でP(F)を記憶している場合には、参照信号生成部140およびアクティブノイズ制御部150は、ピーク周波数fを関数に代入してP(f)を算出してもよい。
【0119】
なお、音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160は、参照信号生成部140およびアクティブノイズ制御部150が使用する様々なパラメータを格納してよい。例えば、参照信号生成部140またはその変形例である参照信号生成部740が
図5のS520に関連して示した(1)音源分離、(2)音響パターンのモデルの利用、(3)参照音響センサ40からの音響パターンの位相の利用等のような参照信号の生成方法を用いる場合には、音響パターン格納部120およびパラメータ格納部160は、動作設定取得部110が取得した動作設定と環境センサ70から取得される温度および湿度等の環境データにより示される環境条件との組合せに対応して、参照信号の生成に使用する様々なモデルまたはパラメータを格納し、参照信号生成部140等に提供してよい。
【0120】
以上に示したANCシステム1-6によれば、温度または湿度の少なくとも1つを示す環境データに応じて、参照信号生成部140による参照信号の生成およびアクティブノイズ制御部150における変換特性を調整することができる。これにより、ANCシステム1-6は、ファン20の騒音をより高い精度で抑制することができる。
【0121】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0122】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0123】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0124】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のコンピュータ等のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0125】
図17は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0126】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0127】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0128】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0129】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0130】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0131】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0132】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0133】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0134】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0135】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0136】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0137】
1-1~6 ANCシステム
10 ダクト
20 ファン
30 ファン制御装置
40 参照音響センサ
50 誤差音響センサ
60 音響トランスデューサ
70 環境センサ
100-1~6 ANC装置
110 動作設定取得部
120 音響パターン格納部
130 参照センサ接続部
140 参照信号生成部
150 アクティブノイズ制御部
160 パラメータ格納部
170 誤差センサ接続部
180 トランスデューサ接続部
190 環境データ取得部
720 音響パターン格納部
725-1~n 音響パターンモデル
740 参照信号生成部
2200 コンピュータ
2201 DVD-ROM
2210 ホストコントローラ
2212 CPU
2214 RAM
2216 グラフィックコントローラ
2218 ディスプレイデバイス
2220 入/出力コントローラ
2222 通信インターフェイス
2224 ハードディスクドライブ
2226 DVD-ROMドライブ
2230 ROM
2240 入/出力チップ
2242 キーボード