(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137516
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240927BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/316 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/44 B
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049062
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】林 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】石坂 光範
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030EA03
4K030EA04
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4K030EA11
4K030KA08
5F045AA06
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5F045AD07
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5F058BG02
(57)【要約】
【課題】基板処理を行う処理室内に処理ガスを供給する際、処理室内における処理ガスの分圧を所望の圧力まで上昇させる速度を向上させる。
【解決手段】基板を収容する内側容器と、内側容器の側壁を囲う外側容器と、内側容器の側壁の、内側容器における基板の配置領域に対向する位置に設けられた内側排気口と、外側容器の、内側容器の側壁の周方向において内側排気口とは異なる位置に設けられた外側排気口と、内側容器内に第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給系と、周方向における内側排気口と外側排気口との間の位置に設けられたガス供給口から内側容器と外側容器の間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する内側容器と、
前記内側容器の側壁を囲う外側容器と、
前記内側容器の前記側壁の、前記内側容器における前記基板の配置領域に対向する位置に設けられた内側排気口と、
前記外側容器の、前記内側容器の側壁の周方向において前記内側排気口とは異なる位置に設けられた外側排気口と、
前記内側容器内に第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給系と、
前記周方向における前記内側排気口と前記外側排気口との間の位置に設けられたガス供給口から前記内側容器と前記外側容器の間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給口は、前記外側容器の前記側壁における前記外側排気口と同じ高さ位置に設けられている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ガス供給口は、前記外側容器の前記側壁における前記内側排気口とは異なる高さ位置に設けられている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ガス供給口は、前記周方向において前記内側排気口よりも前記外側排気口に近い位置に設けられている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ガス供給口は、前記内側容器の前記側壁に向けて前記不活性ガスを供給するように設けられている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ガス供給口は、前記周方向において前記内側排気口から遠ざかり、かつ前記外側排気口へ向かう方向へ前記不活性ガスを供給するように設けられている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記外側排気口は、前記周方向において前記内側排気口とは90度以上離間する位置に設けられている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記内側容器は、前記基板を含む複数の基板を基板面方向に垂直な方向に配列するように収容可能に構成されており、
前記内側排気口は、前記内側容器の前記側壁に前記複数の基板の配列方向に沿って設けられている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記不活性ガス供給系は、前記複数の基板の配列方向に延伸するノズルを有し、
前記ノズルの側面には、前記ガス供給口を含む複数のガス供給口、又は前記ノズルの延伸方向に沿うように形成されたスリット状の前記ガス供給口が設けられている請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記複数のガス供給口、又は前記スリット状の前記ガス供給口は、前記周方向において前記内側排気口から遠ざかり、かつ前記外側排気口へ向かう方向へ前記不活性ガスを供給するように設けられている請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記複数のガス供給口、又は前記スリット状の前記ガス供給口は、前記周方向において前記外側排気口から遠ざかり、かつ前記内側排気口へ向かう方向へ前記不活性ガスを供給するように設けられている請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項12】
(a)前記内側容器内に前記第1処理ガスを供給する処理と、
(b)(a)の実行期間において、前記ガス供給口から前記不活性ガスを供給する処理と、を行うように前記第1処理ガス供給系及び前記不活性ガス供給系を制御することが可能に構成されている制御部、を更に備える請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、(b)では、(a)における前記第1処理ガスの供給の開始以後に、前記不活性ガスの供給を開始するように、前記不活性ガス供給系を制御することが可能に構成されている請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、(b)では、前記内側容器内又は前記外側排気口における圧力が所定の圧力に到達したときに、前記不活性ガスの供給を停止、又は供給流量を減少させるように、前記不活性ガス供給系を制御することが可能に構成されている請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記外側排気口に接続され、前記外側容器内を排気する排気系を更に備え、
前記制御部は、(a)における前記第1処理ガスの供給開始時に前記外側容器内の排気を停止するように、前記排気系を制御することが可能なように構成されている請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記制御部は、(a)では、前記内側容器内又は前記外側排気口における圧力が所定の圧力に到達したタイミングに基づいて、前記第1処理ガスの供給を停止、又は供給流量を減少させるように、前記第1処理ガス供給系を制御することが可能なように構成されている請求項15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記内側容器内に第2処理ガスを供給する第2処理ガス供給系を更に備え、
前記制御部は、(a)、(b)及び(c)前記内側容器内に前記第2処理ガスを供給する処理、を含むサイクルを所定回数行い、(b)では前記サイクルのそれぞれにおいて(c)の実行期間における前記不活性ガスの供給を不実施とするように、前記第1処理ガス供給系、前記第2処理ガス供給系、及び前記不活性ガス供給系を制御することが可能なように構成されている請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記第1処理ガスは、1分子中に少なくとも1つのアミノ基及び所定元素を含む原料ガスである請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項19】
基板を収容する内側容器と、前記内側容器の側壁を囲う外側容器と、前記内側容器の側壁の、前記内側容器における前記基板の配置領域に対向する位置に設けられた内側排気口と、前記外側容器の、前記内側容器の側壁の周方向において前記内側排気口とは異なる位置に設けられた外側排気口と、を備える基板処理装置の前記内側容器内に前記基板を収容する工程と、
前記内側容器内に第1処理ガスを供給する工程と、
前記周方向における前記内側排気口と前記外側排気口との間の位置から前記内側容器と前記外側容器の間に不活性ガスを供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項20】
基板を収容する内側容器と、前記内側容器の側壁を囲う外側容器と、前記内側容器の側壁の、前記内側容器における前記基板の配置領域に対向する位置に設けられた内側排気口と、前記外側容器の、前記内側容器の側壁の周方向において前記内側排気口とは異なる位置に設けられた外側排気口と、を備える基板処理装置の前記内側容器内に基板を収容する手順と、
前記内側容器内に第1処理ガスを供給する手順と、
前記周方向における前記内側排気口と前記外側排気口との間の位置から前記内側容器と前記外側容器の間に不活性ガスを供給する手順と、
をコンピュータによって、前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
内部反応管としてのインナチューブと、該インナチューブを同心円状に取り囲む外部反応管としてのアウタチューブと、を備えた2重管構成を有する基板処理装置が開示されている(特許文献1参照)。インナチューブとアウタチューブとの間の円環状の空間である排気空間と、処理室内とは、排気口を介して連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板処理を行う処理室内に処理ガスを供給する際、例えば基板処理のスループット向上等の観点から、処理室内における処理ガスの分圧を所望の圧力まで速やかに上昇させることが求められることがある。
【0005】
しかしながら、上記した従来例のように、インナチューブの内側の処理室内とインナチューブとアウタチューブの間の排気空間とが排気口を介して連通していると、処理室内に供給した処理ガスの一部が排気口を通じて排気空間へ流れる。このため、処理室内における処理ガスの分圧の上昇を上昇させるのに時間を要する。
【0006】
本開示は、基板処理を行う処理室内に処理ガスを供給する際、処理室内における処理ガスの分圧を所望の圧力まで上昇させる速度を向上させることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、
基板を収容する内側容器と、前記内側容器の側壁を囲う外側容器と、前記内側容器の前記側壁の、前記内側容器における前記基板の配置領域に対向する位置に設けられた内側排気口と、前記外側容器の、前記内側容器の側壁の周方向において前記内側排気口とは異なる位置に設けられた外側排気口と、前記内側容器内に第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給系と、前記周方向における前記内側排気口と前記外側排気口との間の位置に設けられたガス供給口から前記内側容器と前記外側容器の間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る技術によれば、基板処理を行う処理室内に処理ガスを供給する際、処理室内における処理ガスの分圧を所望の圧力まで上昇させる速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態の成膜シーケンスの一例を示すタイミング図である。
【
図5】本開示の一実施形態において、処理室内の圧力変化、APCバルブの開度の変化、処理室内に供給される原料ガスの供給流量の変化、および排気空間に供給される不活性ガスの供給流量の変化を示すタイミング図である。
【
図6】変形例1に係る基板処理装置を示す、
図2に相当する断面図である。
【
図7】変形例2に係る基板処理装置を示す、
図2に相当する断面図である。
【
図9】変形例3に係る基板処理装置を示す、
図2に相当する断面図である。
【
図10】変形例4に係る基板処理装置を示す、
図2に相当する断面図である。
【
図11】変形例5について、処理室内の圧力変化、APCバルブの開度の変化、処理室内に供給される原料ガスの供給流量の変化、および排気空間に供給される不活性ガスの供給流量の変化を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0011】
<本開示の一実施形態>
以下に、本開示の一実施形態(第1の実施形態)について、
図1~
図5を用いて説明する。
【0012】
(1)基板処理装置の構成
図1から
図3において、本実施形態に係る基板処理装置としての処理炉202は、内側容器としてのインナチューブ204と、外側容器としてのアウタチューブ203と、内側排気口204cと、外側排気口203cと、第1処理ガス供給系10と、不活性ガス供給系30とを有している。処理炉202は、更に第2処理ガス供給系20と、制御部の一例としてのコントローラ121とを有していてもよい。
【0013】
インナチューブ204は、基板としてのウエハ200を収容可能とされている。
アウタチューブ203は、インナチューブ204の側壁を囲うように構成されている。
内側排気口204cは、インナチューブ204の側壁のうち、インナチューブ204におけるウエハ200の配置領域に対向する位置に設けられている。
外側排気口203cは、アウタチューブ203のうち、インナチューブ204の側壁の周方向において内側排気口204cとは異なる位置に設けられている。
【0014】
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0015】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管210が配設されている。反応管210は、内部反応管としてのインナチューブ204と、インナチューブ204を同心円状に取り囲む外部反応管としてのアウタチューブ203と、を備えた二重管構造を有している。インナチューブ204およびアウタチューブ203は、それぞれ、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
【0016】
インナチューブ204の筒中空部には、基板としてのウエハ200に対する処理が行われる処理室201が形成される。処理室201は、ウエハ200を処理室201内の一端側(下方側)から他端側(上方側)へ向けて、ウエハ200の面に対して垂直な方向に沿って配列させた状態で収容可能に構成されている。処理室201内において1または複数枚のウエハ200が配列される領域を、基板配置領域(ウエハ配置領域)とも称する。また、処理室201内においてウエハ200が配列される方向を、基板配列方向(ウエハ配列方向)とも称する。
【0017】
インナチューブ204およびアウタチューブ203は、それぞれ、マニホールド209によって下方から支持されている。マニホールド209は、ステンレス(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の内壁の上端部には、SUS等の金属材料により構成され、マニホールド209の径方向内側に向けて延出した環状のフランジ部209aが設けられている。インナチューブ204の下端は、フランジ部209aの上面に当接している。アウタチューブ203の下端は、マニホールド209の上端に当接している。アウタチューブ203とマニホールド209との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209の下端開口は、処理炉202の炉口として構成されており、後述するボートエレベータ115によりボート217が上昇した際に、蓋体としての円盤状のシールキャップ219によって気密に封止される。マニホールド209とシールキャップ219との間には、シール部材としてのOリング220bが設けられている。
【0018】
シールキャップ219の下方には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管210の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217により支持されたウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0019】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0020】
アウタチューブ203とインナチューブ204との間には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、アウタチューブ203の内壁に沿って設けられている。
【0021】
図2に示すように、インナチューブ204の側壁には、ノズル249a,249b,249dを収容するノズル収容室204aと、ノズル249cを収容するノズル収容室204bと、が形成されている。ノズル収容室204a,204bは、それぞれ、インナチューブ204の側壁からインナチューブ204の径方向外向きに突出し、垂直方向に沿って延在するチャンネル形状に形成されている。ノズル収容室204a,204bの内壁は、それぞれ、処理室201の内壁の一部を構成している。ノズル収容室204aとノズル収容室204bとは、インナチューブ204の内壁に沿って、すなわち、処理室201内に収容されたウエハ200の外周に沿って、互いに所定距離離れた位置にそれぞれ配置されている。具体的には、ノズル収容室204a,204bは、処理室201内に収容されたウエハ200の中心とノズル収容室204aの中心とを結ぶ直線L1と、処理室201内に収容されたウエハ200の中心とノズル収容室204bの中心とを結ぶ直線L2と、が作る中心角θ(ノズル収容室204a,204bの各中心を両端とする弧に対する中心角)が例えば30~150°の範囲内の角度となるような位置にそれぞれ配置されている。ノズル収容室204a内に収容されたノズル249b,249dは、ノズル249aを挟んでその両側に、すなわち、ノズル収容室204aの内壁(ウエハ200の外周部)に沿ってノズル249aを両側から挟み込むように配置されている。本明細書では、ノズル249a,249bを順にR1,R2とも称し、ノズル249c,249d,249eを順にR3,R4,R5とも称する。
【0022】
アウタチューブ203の側壁には、アウタチューブ203に差し込まれるように、短管状のノズル249eが設けられている。一例として、ノズル249eの先端を開口させることにより、ガス供給口としてのガス噴出口250eが形成されている。すなわち、ガス噴出口250eは、インナチューブ204とアウタチューブ203の間の空間である排気空間205内に配置されている。
【0023】
ノズル249a~249eには、ガス供給管232a~232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232a~232eには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241eおよび開閉弁であるバルブ243a~243eがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232gが接続されている。ガス供給管232gには、ガス流の上流側から順に、MFC241gおよびバルブ243gがそれぞれ設けられている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232fが接続されている。ガス供給管232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241fおよびバルブ243fが設けられている。
【0024】
ガス供給管232aからは、第1処理ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。第1処理ガスは、形成しようとする膜を構成する主元素としての所定元素、例えばシリコン(Si)を含有する原料ガス(原料)である。原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。
【0025】
ガス供給管232bからは、第2処理ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。第2処理ガスは反応ガス(反応体)としての酸素(O)含有ガスである。O含有ガスは、酸化剤(酸化ガス)、すなわち、Oソースとして作用する。なお、以降では、第1処理ガスと第2処理ガスを総称して処理ガスと称することがある。
【0026】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ノズル249c,249dを介して処理室201内へ供給される。また、ガス供給管232eからは、不活性ガスが、MFC241e、バルブ243e、ノズル249eを介して排気空間205内へ供給される。また、ガス供給管232gからは、不活性ガスが、MFC241g、バルブ243g、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。ノズル249c,249dより処理室201内へ供給される不活性ガスは、主に、後述する希釈ガスとして作用する。また、ノズル249a,249bより処理室201内へ供給される不活性ガスは、主に、パージガスおよびキャリアガスの少なくとも何れかとして作用する。ノズル249eより排気空間205内へ供給される不活性ガスの作用については後述する。なお、ガス供給管232c~232gからそれぞれ供給される不活性ガスは、同じ不活性ガスであってもよく、また、少なくとも何れか一つが異なる不活性ガスであってもよい。
【0027】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1処理ガス供給系10(原料ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2処理ガス供給系20(反応ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、不活性ガス供給系30が構成される。主に、ガス供給管232c,232d,232f,232g、MFC241c,241d,241f,241g、バルブ243c,243d,243f,243gにより、不活性ガス供給系40が構成される。上述の各ガス供給系には、それぞれガス供給源を含めてもよい。
【0028】
第1処理ガスを供給するノズル249aを第1処理ガス供給部又は第1処理ガスノズルとも称する。ノズル249bより反応ガスを供給する際、ノズル249bを反応ガス供給部又は反応ガスノズルとも称する。ノズル249a,249bを総称して処理ガス供給部又は処理ガスノズルとも称する。不活性ガスを供給するノズル249c~249eを総称して不活性ガス供給部又は不活性ガスノズルとも称する。また、ノズル249c,249dは、それぞれ希釈ガス供給部及び希釈ガスノズルと称することもある。ノズル249a,249bより不活性ガスを供給する際、ノズル249a,249bを不活性ガス供給部に含めて考えてもよい。
【0029】
ノズル249a~249dは、ノズル収容室204a,204bの下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列方向に沿って立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249dは、ウエハ配置領域の側方の、ウエハ配置領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配置領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249dの側面には、第1~第4ガス供給口としてのガス噴出口250a~250dがそれぞれ設けられている。
【0030】
なお、ガス噴出口250a~250dは、それぞれが処理室201の中心を向くように開口しており、ウエハ200の中心に向けてガスを供給することが可能となっている。また、ガス噴出口250a~250dは、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0031】
インナチューブ204の側壁には、インナチューブ204とアウタチューブ203との間の円環状の空間である排気空間205と、処理室201内とを連通させる排気口としての内側排気口204cが設けられている。内側排気口204cは、1または複数のウエハ200の配列方向に沿って、インナチューブ204の側壁のウエハ配置領域に対向する位置に設けられる。これにより、複数のウエハ200が配置されたインナチューブ204内からのガスのパージを円滑に行うことができる。
【0032】
より具体的には、インナチューブ204の側面には、例えばスリット状の貫通口として構成された内側排気口(排気スリット)204cが、垂直方向に細長く開設されている。内側排気口204cは、正面視において例えば矩形であり、インナチューブ204の側壁の下部から上部にわたって設けられている。内側排気口204cは、平面視において、上述の直線L1の延長線上に配置されている。すなわち、ノズル収容室204aと内側排気口204cとは、処理室201内に収容されたウエハ200の中心を挟んで対向している。また、ノズル249aのガス噴出口250aと内側排気口204cとは、処理室201内に収容されたウエハ200の中心を挟んで対向している。内側排気口204cは、一つの開口により構成されていてもよく、ウエハ200の配列方向に沿って配置された複数の開口により構成されていてもよい(図示せず)。なお、ノズル249a~249eは、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成されている。
【0033】
アウタチューブ203の側壁の下部には、排気空間205および内側排気口204cを介して処理室201内の雰囲気を排気するための排気口としての外側排気口203cが設けられている。外側排気口203cには排気管231が接続されている。排気管231には、排気管231内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245が設けられている。ここで、圧力センサ245によって排気管231内の圧力を検出することにより、間接的に外側排気口203cおよび処理室201内の圧力を検出することができる。また、排気管231には、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。内側排気口204c、排気空間205、真空ポンプ246の少なくとも何れか一つを排気系に含めて考えてもよい。
【0034】
外側排気口203cは、インナチューブ204の側壁の周方向(以下、単に周方向と称することがある)において内側排気口204cとは90度以上離間する位置に設けられている。
図2は、外側排気口203cと内側排気口204cとがなす角度φが90度以上であることを示している。なお、角度φは120度、180度等であってもよい。
図2に示されるように、外側排気口203cが、処理室201内に収容されたウエハ200の中心を挟んで内側排気口204cの反対側に位置する場合、θ=φである。
【0035】
なお、角度φを90度以上として、周方向における内側排気口204cの位置と周方向における外側排気口203cの位置との間に十分な空間を設けることにより、後述するガス噴出口250eから供給される不活性ガスが内側排気口204cを介してインナチューブ204内に流入することを抑制することができる。これにより、後述するガス噴出口250eから供給される不活性ガスによる基板処理への影響を抑制することが容易となる。φが90度未満の場合、ガス噴出口250eの位置が内側排気口204cに近くなり、ガス噴出口250eから供給される不活性ガスが内側排気口204cを介してインナチューブ204内に流入することを抑制し難くなることがある。さらに角度φを120度以上とすることにより、周方向における内側排気口204cの位置と周方向における外側排気口203cの位置との間の空間を更に大きく確保することができるため、不活性ガスのインナチューブ204内への流入をより確実に抑制することができる。
【0036】
続いて、排気空間205内に不活性ガスを供給するノズル249eおよびガス噴出口250eについて説明する。不活性ガス供給系30は、ノズル249eを介して、周方向における内側排気口204cと外側排気口203cとの間の位置に設けられたガス噴出口250eから排気空間205に不活性ガスを供給するように構成されている。インナチューブ204とアウタチューブ203の間であって、周方向におけるガス噴出口250eから外側排気口203cまでの間の最短経路上には、空間が設けられている。換言すれば、排気空間205におけるこの最短経路上には、不活性ガスの供給を妨げる構造物、例えばインナチューブ204のノズルバッファ等が配置されていない。
【0037】
基板処理を行うインナチューブ204内に処理ガスを供給する際、上述のように排気空間205内に設けられているガス噴出口250eから、不活性ガスを排気空間205内へ供給することにより、インナチューブ204内における処理ガス(特に第1処理ガスである原料ガス)の分圧を所望の圧力まで上昇させる速度を向上させることができる。すなわち、二重管構造における処理室201内(インナチューブ204内)での処理ガスの分圧上昇速度を向上させ、スループット向上を実現することができる。また、処理ガスの消費量を低減することができる。
【0038】
更に、周方向における内側排気口204cの位置と周方向における外側排気口203cの位置との間の位置にガス噴出口250e(ノズル249e)を設けることにより、ガス噴出口250eから供給される不活性ガスが内側排気口204cを介してインナチューブ204内に流入し、基板処理に影響を与えることを抑制できる。例えば、インナチューブ204内における処理ガスの分圧低下、インナチューブ204内における処理ガスの分圧分布の変化等を抑制できる。さらに、ガス噴出口250e(ノズル249e)を、周方向において内側排気口204cよりも外側排気口203cに近い位置に設けている。このような位置にガス噴出口250eを設けることにより、インナチューブ204内に流入する不活性ガスが与える基板処理への影響をより効果的に抑制することができる。
【0039】
図1に示されるように、ノズル249eおよびガス噴出口250eは、アウタチューブ203の側壁に設けられた外側排気口203cと同じ高さ位置に設けられている。「同じ高さ位置」とは、例えば外側排気口203cの上端と下端の間の高さ位置、又は外側排気口203cの上端もしくは下端からその直径の50%程度の範囲の高さ位置に、ガス噴出口250eの少なくとも一部が入るような場合を含む。
【0040】
このような高さ位置にガス噴出口250を設けることにより、ガス噴出口250eから供給された不活性ガスが外側排気口203cへと排気されるまでの間に、内側排気口204cを通じてインナチューブ204に不活性ガスが流入し、基板処理に影響を与えることを効果的に抑制することができる。
【0041】
さらに、ノズル249eおよびガス噴出口250eは、インナチューブ204の側壁に設けられた内側排気口204cとは異なる高さ位置に設けられている。例えば
図1においては、ガス噴出口250eは、内側排気口204cの下端よりも下方側に位置している。
【0042】
このような高さ位置にガス噴出口250を設けることにより、ガス噴出口250eから供給された不活性ガスがインナチューブ204内に流入し、基板処理に影響を与えることを効果的に抑制することができる。なお、上述のような外側排気口203c、内側排気口204c、およびガス噴出口250eの高さ方向における位置関係を実現するためには、
図1に示すように、内側排気口204cと外側排気口203cは、内側排気口204cの下端が外側排気口203cよりも高い位置となるように配置されていることが好ましい。
【0043】
また、
図2に示されるように、ガス噴出口250eは、インナチューブ204の側壁に向けて不活性ガスを供給するように設けられている。
【0044】
これにより、ガス噴出口250eから供給された不活性ガスが内側排気口204cの方向に流れてインナチューブ204内に流入し、基板処理に影響を与えることを更に効果的に抑制することができる。
【0045】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0046】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0047】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241g、バルブ243a~243g、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0048】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241gによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0049】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0050】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上に膜を形成する基板処理シーケンス例、すなわち、成膜シーケンス例について、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0051】
図4に示す成膜シーケンスでは、
ウエハ200に対して第1処理ガス供給部としてのノズル249aより、第1処理ガスとして所定元素を含有する原料ガスを供給するステップAと、
ウエハ200に対して第2処理ガス供給部としてのノズル249bより第2処理ガスとして反応ガスを供給するステップBと、
を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上に所定元素を含有する膜を形成する。以下、一例として、所定元素がシリコン(Si)であり、反応ガスは酸素(O)含有ガスであり、ウエハ200上にSiおよびOを含む膜、すなわち、Si酸化膜(SiO膜)を形成する場合について説明する。
【0052】
なお、
図4に示す成膜シーケンスのステップAでは、第1処理ガス供給部とは異なる不活性ガス供給部、すなわち、ノズル249aとは異なるノズル249c,249dよりウエハ200に対して不活性ガスを供給し、その不活性ガスの流量を制御することで、ウエハ200の配列方向における原料ガスの濃度の分布を調整する。ノズル249c,249dより供給される不活性ガスは、原料ガスに対する希釈ガスとして機能する。
【0053】
本明細書では、
図4に示す成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。
図4では、ステップA~Bの実施期間を、便宜上、それぞれA~Bと表している。これらの点は、後述する変形例や他の実施形態においても同様である。
【0054】
(R1:原料ガス → R2:反応ガス)×n
【0055】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0056】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0057】
(圧力調整および温度調整)
続いて、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって処理室201内が真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。
図5に示す例では、この際、APCバルブ244の開度を最大(全開)としている。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0058】
(成膜ステップ)
その後、ボート217のウエハ配置領域に複数枚のウエハ200を配列させた状態で、次のステップA~Cを順次実行する。
【0059】
[ステップA]
このステップでは、処理室201内の排気制御を行いながら、処理室201内のウエハ200に対して第1処理ガスとしての原料ガスを供給することにより、ウエハ200の最表面に所定元素を含む第1層を形成するステップ(第1層形成ステップ、または原料ガス供給ステップ)と、処理室201内をパージするステップ(パージステップ)が行われる。第1層形成ステップにおける排気制御については後述する。
【0060】
具体的には、第1層形成ステップでは、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aの側面に設けられた複数のガス噴出口250aのそれぞれより処理室201内、すなわちインナチューブ204内へ供給される。さらに、原料ガスは、内側排気口204cを介して排気空間205へと流出(拡散)する。これにより、ウエハ200に対して原料ガスが供給される。
【0061】
このとき、バルブ243c,243dを開き、ノズル249c,249dより処理室201内へ不活性ガスを供給する。またこの際、ノズル249bより不活性ガスを供給することで、ノズル249b内への原料ガスの侵入を抑制することができる。
【0062】
第1層形成ステップにおける処理条件としては、
原料ガス供給流量:0.01~2slm、好ましくは0.1~1slm
不活性ガス供給流量(R3,R4毎):0.5~10slm
不活性ガス供給流量(R1):0~10slm
不活性ガス供給流量(R2):0~0.1slm
不活性ガス供給流量(R5):0.1~5slm
各ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
処理温度:250~800℃、好ましくは400~700℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは67~1333Pa
が例示される。
【0063】
本明細書における「250~800℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「250~800℃」とは「250℃以上800℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。また、供給流量に0slmが含まれる場合、0slmとは、その物質(ガス)を供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0064】
上述の条件下でウエハ200に対して所定元素としてのSiを含む原料ガスを供給することにより、ウエハ200の最表面上に、所定元素を含む第1層としてのSi含有層が形成される。Si含有層は、ウエハ200の最表面に、原料ガスや、原料ガスの一部が熱分解したSiを含む物質、原料ガスに含まれるSi原子、の少なくともいずれかが物理吸着、もしくは化学吸着、またはその両方の吸着をすることにより形成される。
【0065】
第1層が形成された後、パージステップでは、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ243c,243d,243f,243gを開き、ノズル249a~249dより処理室201内へ不活性ガスを供給する。この不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0066】
第1処理ガスである原料ガスとして、1分子中に少なくとも1つのアミノ基及び所定元素を含むガスを用いることができる。原料ガスとして、例えば、1分子中に主元素である所定元素(Si)と、それに結合した少なくとも1つのアミノ基を含むガスであるアミノシラン系ガスを用いることができる。原料ガスとして、例えば、(ジメチルアミノ)シラン((CH3)2NSiH3)ガス、(ジメチルアミノ)トリメチルシラン((CH3)2NSi(CH3)3)ガス、(ジイソブチルアミノ)シラン((C4H9)2NSiH3)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン((C3H7)2NSiH3)ガスなどの、1分子中にSiとアミノ基との結合を1つ含むアミノシラン系ガス(モノアミノシランガス)を用いることができる。また、原料ガスとして、例えば、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン([(C4H9)NH]2SiH2)ガス、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン([(CH3)2N]2Si(CH3)2)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン([(C2H5)2N]2SiH2)ガスなどの、1分子中にSiとアミノ基との結合を2つ含むアミノシラン系ガスを用いることができる。また、原料ガスとして、例えば、トリス(ジメチルアミノ)シラン([(CH3)2N]3SiH)ガス、トリス(ジメチルアミノ)メチルシラン([(CH3)2N]3SiCH3)ガスなどの、1分子中にSiとアミノ基との結合を3つ含むアミノシラン系ガスを用いることができる。また、原料ガスとして、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン([(CH3)2N]4Si)ガスなどの、1分子中にSiとアミノ基との結合を4つ含むアミノシラン系ガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0067】
原料ガスとして、1分子中に所定元素に結合した少なくとも1つのアミノ基を含むガスを、ウエハ200に対して比較的高い分圧条件で供給することにより、アミノ基を含まないガスを用いる場合に比べて、ウエハ200上に形成する所定元素含有膜の形成速度(成膜レート)を高めることができる。すなわち、インナチューブ204内における原料ガス(第1処理ガス)の分圧上昇速度を向上させる後述の本開示技術は、原料ガスとして1分子中に所定元素に結合した少なくとも1つのアミノ基を含むガスを用いて、ウエハ200上に所定元素含有膜を形成する際の速度(成膜レート)を高める場合において、好適に適用することができる。
【0068】
また、原料ガスとして、所定元素とハロゲン基を含むガスを用いることができる。ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。原料ガスとして、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8)ガス等のハロシラン系ガス(より具体的にはクロロシラン系ガス)を用いることができる。
【0069】
不活性ガスとしては、N2ガスや、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0070】
以下、第1層形成ステップにおける、不活性ガス供給系30による排気空間205内への不活性ガス供給制御、および排気系50による排気制御について、主に
図5を用いて詳述する。
【0071】
本ステップでは、(a)第1処理ガス供給系10(ノズル249a)からインナチューブ204内に原料ガス(第1処理ガス)を供給する工程と、(b)(a)の実行期間A1において、不活性ガス供給系30(ノズル249e)から、インナチューブ204とアウタチューブ203の間の排気空間205内に不活性ガスを供給する工程と、を行う。
【0072】
図5において、横軸は時間を示している。上段の図の縦軸はインナチューブ204内の圧力(太線、左側の縦軸)と、後述する排気系50のAPCバルブ244の開度(細線、右側の縦軸)を示している。APCバルブ244の開度は、全開を100とし、全閉を0として表記している。中段の図の縦軸は第1処理ガスとしての原料ガスの流量を示している。下段の図の縦軸は、ノズル249eから供給される不活性ガスの流量を示している。上段の図における二点鎖線は、比較例を示している。
【0073】
本ステップでは、(a)の実行期間A1と、不活性ガスを供給する実行期間A2とが、ほぼ一致している。すなわち、インナチューブ204内への原料ガスの供給開始タイミングおよび供給停止タイミングと、排気空間205内への不活性ガスの供給開始タイミングおよび供給停止タイミングとが、それぞれほぼ一致している。
【0074】
インナチューブ204とアウタチューブ203の間に不活性ガスを供給することで、基板処理を行うインナチューブ204内に原料ガスを供給する際、インナチューブ204内における第1処理ガスの分圧を所望の圧力まで上昇させる速度を向上させることができる。また、原料ガスの消費量を低減することができる。インナチューブ204内の圧力上昇は、比較例では二点鎖線のように比較的緩やかであるが、本実施形態では実線(太線)のように速くなる。
【0075】
また、本ステップでは、ステップの開始(すなわち原料ガスの供給開始)と同時にAPCバルブ244の開度を最小(全閉)とし、インナチューブ204およびアウタチューブ203内の排気を停止する。このようにステップ開始時に排気を停止することにより、インナチューブ204内における原料ガスの分圧を所望の圧力まで上昇させる速度を向上させることができる。また、原料ガスの消費量を低減することができる。
【0076】
なお、本開示技術は、(a)と(b)を同時に開始する形態に限定されず、(b)では、(a)における原料ガスの供給の開始以後に、不活性ガスの供給を開始するように、不活性ガス供給系30が制御されてもよい。
【0077】
インナチューブ204内に不活性ガスが流入する前に原料ガスをインナチューブ204内に供給すると、不活性ガスの流入を抑制しながら、原料ガスの分圧の上昇速度を向上させることができる。ただし、不活性ガス供給系30による不活性ガスの供給は、排気空間205全体が原料ガスにより充填される前に開始されることが好ましい。さらに、不活性ガス供給系30による不活性ガスの供給は、インナチューブ204内に供給された原料ガスが内側排気口204cを介して排気空間205内に到達する前に開始されてもよい。
【0078】
インナチューブ204内における原料ガスの分圧、もしくは全圧が所望の圧力へ到達した後は、原料ガスの供給を継続しながら、圧力が一定に維持されるように排気系50のAPCバルブ244の開度を、例えば全閉と全開の間で調整する。インナチューブ204内の原料ガスの分圧、もしくは全圧は、排気管231内に設けられた圧力センサ245により測定された外側排気口203cにおける圧力に基づいて算出することができる。ただし、インナチューブ204内の圧力を直接検出するため、インナチューブ204内に圧力センサを更に設けてもよい。
本ステップでは、
図5の上側の図において示すように、インナチューブ204内の圧力上昇速度が比較例に比べて高まっていることに伴い、排気系50のAPCバルブ244を開けるタイミングを、比較例(二点鎖線)の位置から実線(太線)の位置に早めている。
【0079】
また、本開示技術は、原料ガスの供給停止タイミングと排気空間205内への不活性ガスの供給停止タイミングを同時とする形態に限定されず、(b)では、インナチューブ204内又は外側排気口203cにおける圧力が所定の圧力に到達したときに、不活性ガスの供給を停止、又は流量を減少させるように、不活性ガス供給系30を制御してもよい。
【0080】
不活性ガス供給の停止又は減少のタイミングは、インナチューブ204内又は外側排気口203cにおける圧力が所定圧力に到達したタイミングと同時が好ましいが、到達したタイミングから所定時間経過後でもよく、また圧力の変化速度が所定値以下となったタイミングでもよい。予め第1処理ガスの供給開始から所定圧力に到達するまでの時間を測定しておき、その時間に基づいて不活性ガス供給の停止又は減少のタイミングを決定することもできる。
【0081】
このように、インナチューブ204内又は外側排気口203cにおける圧力が所定の圧力に到達したときに、不活性ガスの供給を停止、又は流量を減少させることにより、インナチューブ204内の第1処理ガスの分圧が所望の値まで到達した後、不活性ガスがインナチューブ204内に流入することをさらに抑制することができる。
【0082】
[ステップB]
ステップAが終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層に対して第2処理ガスとしての反応ガスを供給することにより、第1層を第2層に改質するステップ(第2層形成ステップ、または反応ガス供給ステップ)と、処理室201内をパージするステップ(パージステップ)が行われる。
【0083】
具体的には、第2層形成ステップでは、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ反応ガスガスを流す。反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bの側面に設けられた複数のガス噴出口250bのそれぞれより処理室201内へ供給され、内側排気口204c、排気空間205を介して排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対して反応ガスが供給される。
【0084】
このとき、第1層形成ステップと同様に、ノズル249c,249dより処理室201内へ不活性ガスを供給する。第2層形成ステップでは、ノズル249c,249d内への反応ガスの侵入を抑制することを目的としてノズル249c,249dより処理室201内へ不活性ガスを供給する。
【0085】
なお、第2層形成ステップでは、第1層形成ステップと同様に、ノズル249a,249bより処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0086】
本ステップにおける処理条件としては、
反応ガス供給流量:0.1~10slm
不活性ガス供給流量(R3,R4毎):0~0.1slm
不活性ガス供給流量(R2):0~10slm
不活性ガス供給流量(R1):0~0.1slm
不活性ガス供給流量(R5):0slm
各ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは1~3000Pa、より好ましくは10~233Pa
が例示される。他の処理条件は、第1層形成ステップにおける処理条件と同様とする。
【0087】
上述の条件下でウエハ200に対して反応ガスとしてのO含有ガス(酸化剤、酸化ガス)を供給することにより、ウエハ200上に形成された第1層の少なくとも一部が酸化(改質)される。第1層が改質されることで、ウエハ200上に、第2層として、SiおよびOを含む層、すなわち、SiO層が形成される。
【0088】
第2層が形成された後、パージステップでは、バルブ243bを閉じ、処理室201内への反応ガスの供給を停止する。そして、ステップAのパージステップと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0089】
O含有ガスとしては、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。O含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0090】
また、反応ガスとしては、酸化ガスの他に、例えば、窒素(N)を含む窒化ガスを用いることができる。N含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H5ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。N含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。また、反応ガスとしては、酸化ガスや窒化ガスの他に、例えば、水素(H2)ガス等の還元ガスや、活性化された希ガス等の改質ガスなどを用いることができる。
【0091】
なお、第2層形成ステップでは、第1層形成ステップとは異なり、ノズル249eからの排気空間205内への不活性ガス供給を停止する。特に、第1層形成ステップにおいて設定される第1処理ガス(原料ガス)の分圧に比べて、第2層形成ステップにおいて設定される第2処理ガス(反応ガス)の分圧が低い場合には、第2層形成ステップにおける第2処理ガスの昇圧速度を高める必要性が相対的に低い。そのため、第2層形成ステップにおいては、ノズル249eからの排気空間205内への不活性ガス供給を不実施とすることにより、不活性ガスの使用量を削減することができる。また、不活性ガスがインナチューブ204内に流入することによる第2層形成ステップにおける処理への影響を低減することができる。
【0092】
[所定回数実施]
ステップA~Bを非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを1回以上(n回)行うことにより、ウエハ200上に、所望膜厚、所望組成のSiO膜を形成することができる。上述のサイクルは、1回以上行うのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第2層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第2層を積層することで形成されるSiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを1回以上行うのが好ましい。
【0093】
(アフターパージ~大気圧復帰)
成膜ステップが終了した後、ノズル249a~249dより不活性ガスを処理室201内へ供給し、内側排気口204c、排気空間205を介して排気管231より排気する。不活性ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0094】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、マニホールド209の下端から反応管210の外部に搬出(ボートアンロード)される。処理済のウエハ200は、反応管210の外部に搬出された後、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0095】
(3)変形例
本態様における装置構成や処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例における各装置構成、および各処理ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の装置構成および各処理ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0096】
(変形例1)
上述の態様では、ガス噴出口250eが短管状のノズル249eの先端に設けられる例について説明した。しかし、本開示技術はこれに限定されず、
図6に示される変形例1のように、ガス噴出口250eは、周方向において内側排気口204cから遠ざかり、かつ外側排気口203cへ向かう方向へ不活性ガスを供給するように設けられていてもよい。このガス噴出口250eは、短管状のノズル249eにおける外側排気口203c側の側面に形成されている。
【0097】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例においては、ガス噴出口250eから供給された不活性ガスが、周方向において内側排気口204cとは反対の方向に流れるため、この不活性ガスがインナチューブ204内に流入して基板処理に影響を与えることを更に効果的に抑制することができる。
【0098】
(変形例2)
図7、
図8に示される変形例2のように、不活性ガス供給系30が、複数のウエハ200の配列方向に延伸するノズル249eを有し、ノズル249eの側面には、複数のガス噴出口250eが設けられていてもよい。また、ノズル249eの延伸方向に沿うように形成されたスリット状のガス噴出口(図示せず)によりガス噴出口250eが構成されていてもよい。
【0099】
複数のガス噴出口250e、又はスリット状に構成されたガス噴出口250eは、周方向において内側排気口204cから遠ざかり、かつ外側排気口203cへ向かう方向へ不活性ガスを供給するように設けられていてもよい。
【0100】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例においては、複数のウエハ200の配列方向において、ノズル249eから供給される不活性ガスの流量の分布を調整することにより、配列方向における各ウエハ200に対する第1処理ガスを用いた処理量を調整することができる。例えば、複数のウエハ200のそれぞれに形成される膜の厚さ(処理量)が、ウエハ200間で均一に近づくように調整することができる。
【0101】
また、本変形例においても、変形例1と同様に、ガス噴出口250eから供給された不活性ガスがインナチューブ204内に流入して基板処理に影響を与えることを更に効果的に抑制することができる。
【0102】
なお、複数のガス噴出口250e又はスリット状に構成されたガス噴出口250eは、複数のウエハ200が配列されたウエハ配置領域全体に亘って設けられていてもよい。
【0103】
ノズル249eに設けられた複数のガス噴出口250e又はスリット状に構成されたガス噴出口250eは、複数のウエハ200の配列方向において、吐出される不活性ガスの流量の分布が不均一となるように構成されていてもよい。この不活性ガスの流量の分布は、例えば、当該分布が均一である場合に比べて、複数のウエハ200のそれぞれへの処理量がウエハ200間で均一に近づくような分布である。
【0104】
複数のウエハ200の配列方向において、ノズル249eから供給される不活性ガスの流量の分布を不均一とすることにより、流量の分布を均一とする場合に比べて、同方向における各ウエハ200に対する処理量を容易に調整できることがある。
【0105】
ノズル249eから供給される不活性ガスの流量の分布を調整する一形態としては、第1に、ガス噴出口250eの開口面積をウエハ200の配列方向において異ならせることが挙げられる。ガス噴出口250eの開口面積が大きいと、流量が大きくなる。第2に、スリット状のガス噴出口250eの幅をウエハ200の配列方向において異ならせることが挙げられる。ガス噴出口の幅が大きいと、流量が大きくなる。第3に、ウエハ200の配列方向におけるガス噴出口250eの配列密度(間隔)を異ならせることが挙げられる。ガス噴出口250eの密度が大きいと、流量が大きくなる。
【0106】
例えば、複数のガス噴出口250eのうち、外側排気口203cに近く、アウタチューブ203の下方側に位置するガス噴出口250eから供給される不活性ガスの流量を、外側排気口203cから遠く、アウタチューブ203の上方側に位置するガス噴出口250eから供給される不活性ガスの流量よりも大きくなるように、ノズル249eから不活性ガスを供給する。これにより、配列方向において分布が生じることがある複数のウエハ200のそれぞれへの処理量が、ウエハ間で均一に近づくように調整できることがある。
【0107】
(変形例3)
図9に示すように、ウエハ200の配列方向に沿って立設したノズル249eに設けられる複数のガス噴出口250e、又はスリット状に構成されたガス噴出口250eは、周方向において外側排気口203cから遠ざかり、かつ内側排気口204cへ向かう方向へ不活性ガスを供給するように設けられていてもよい。その他の構成は、変形例2の構成と同様である。
【0108】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、ノズル249eから供給される不活性ガスの供給方向によって得られる上述の効果以外については、変形例2と同様の効果が得られる。また、本変形例においては、複数のウエハ200の配列方向における各ウエハ200に対する処理量を調整することを、変形例2に比べてより容易とすることできる場合がある。
【0109】
(変形例4)
図10に示すように、ウエハ200の配列方向に沿って立設したノズル249eに設けられる複数のガス噴出口250e、又はスリット状に構成されたガス噴出口250eは、内側容器の側壁に向けて不活性ガスを供給するように設けられていてもよい。その他の構成は、変形例2の構成と同様である。
【0110】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、ノズル249eから供給される不活性ガスの供給方向によって得られる上述の効果以外については、変形例2と同様の効果が得られる。
【0111】
(変形例5)
図5で示される上述の態様では、インナチューブ204内又は外側排気口203cにおける圧力が所定の圧力に到達した後も、第1処理ガス(原料ガス)の供給を継続するとともに、APCバルブ244の開度を調整することでインナチューブ204内の圧力を所定の圧力に維持する例について説明した。しかし、本開示技術はこれに限定されず、
図11に示される変形例5のように、第1層形成ステップにおける「(a)インナチューブ204内に第1処理ガスを供給する処理」では、インナチューブ204内又は外側排気口203cにおける圧力が所定の圧力に到達したタイミングに基づいて、第1処理ガスの供給を停止、又は流量を減少させるようにしてもよい。
図11における各線の説明は、
図5と同様である。
【0112】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例においては、第1処理ガスの消費量を低減しながら、インナチューブ204内の処理ガスの分圧を維持することができる。
【0113】
図11に示される例では、(a)における第1処理ガスの供給の停止、又は流量の減少を行った後、第1層形成ステップが実行される所定時間の間、アウタチューブ203内の排気を実質的に停止する状態を維持するように、APCバルブ244を制御する。すなわち、APCバルブ244は、第1処理ガスの供給開始から、第1層形成ステップの終了まで閉じられている。また、インナチューブ204内又は外側排気口203cにおける圧力が所定の圧力に到達したタイミングで、第1処理ガスの供給を停止している。
【0114】
また、本変形例では、インナチューブ204内又は外側排気口203cにおける圧力が所定の圧力に到達したタイミングに基づいて、ガス噴出口250eからの不活性ガスの供給を停止、又は流量を減少させる。
図11に示される例では、その圧力が所定の圧力に到達したタイミングでガス噴出口250eからの不活性ガスの供給を停止している。
【0115】
第1処理ガス供給の停止又は減少のタイミング、およびガス噴出口250eからの不活性ガス供給の停止または減少のタイミングは、いずれも所定圧力に到達したタイミングと同時である場合に限定されず、到達したタイミングから所定時間経過後のタイミングでもよく、また圧力の変化速度が所定値以下となったタイミングでもよい。予め第1処理ガスの供給開始から所定圧力に到達するまでの時間を測定しておき、その時間に基づいて停止又は減少のタイミングを決定することもできる。
【0116】
なお、処理室201からのパーティクルの排出等を目的として、インナチューブ204内又は外側排気口203cにおける圧力が所定の圧力に到達した後は、インナチューブ204の圧力に実質的な影響を与えない程度に排気を行うようにAPCバルブ244の開度を制御してもよい。
【0117】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態の一例について説明したが、本開示の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0118】
明細書中に特段の断りが無い限り、各要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0119】
本明細書において用いる「剤」という用語は、ガス状物質および液体状物質のうち少なくともいずれかを含む。液体状物質はミスト状物質を含む。すなわち、成膜剤、改質剤、エッチング剤は、ガス状物質を含んでいてもよく、ミスト状物質等の液体状物質を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができる。
【0121】
これらの各種薄膜の形成に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、基板処理の内容に応じて、それぞれ個別に用意することが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のプロセスレシピの中から、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体(外部記憶部225)を介して、基板処理装置が備える記憶部221c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶部221c内に格納された複数のプロセスレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。
【0122】
また、本開示は、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本開示に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本開示に係るプロセスレシピに変更したりすることも可能である。
【0123】
また、上述の実施形態では、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の実施形態に限定されず、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0124】
上述の実施形態は、各構成要素を適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の実施形態や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【0125】
上記プログラムは、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として提供されてもよい。また、上記プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムであってもよい。
【0126】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の他の態様について付記する。
【0127】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)基板を収容する内側容器と、前記内側容器の側壁を囲う外側容器と、前記内側容器に設けられ、前記外側容器に向けて開口する内側排気口と、前記外側容器に設けられた外側排気口と、を備える基板処理装置の前記内側容器内に前記基板を収容する工程と、
(b)前記内側容器内に第1処理ガスを供給する工程と、
(c)(b)の実行期間において、前記内側容器と前記外側容器の間に不活性ガスを供給する工程と、
(d)前記内側容器内又は前記外側排気口における圧力が所定の圧力に到達したときに、前記不活性ガスの供給を停止、又は流量を減少させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法又は基板処理方法が提供される。
【0128】
(付記2)
本開示の一態様によれば、
付記1記載の方法の工程(手順)をコンピュータによって、前記基板処理装置に実行させるプログラム、又は該プログラムを記録したコンピュータにより読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0129】
(付記3)
本開示の一態様によれば、
基板を収容する内側容器と、
前記内側容器の側壁を囲う外側容器と、
前記内側容器に設けられ、前記外側容器に向けて開口する内側排気口と、
前記外側容器に設けられた外側排気口と、
前記内側容器内に第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給系と、
ガス供給口から前記内側容器と前記外側容器の間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
付記1記載の方法の工程(処理)を行うように前記第1処理ガス供給系及び前記不活性ガス供給系を制御することが可能に構成された制御部と、
を備える基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0130】
10 第1処理ガス供給系
20 第2処理ガス供給系
30 不活性ガス供給系
200 ウエハ(基板)
203 アウタチューブ(外側容器)
203c 外側排気口
204 インナチューブ(内側容器)
204c 内側排気口
250e ガス噴出口(ガス供給口)