(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137517
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240927BHJP
H01L 21/316 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049063
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保井 毅
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヴァン チュウ
【テーマコード(参考)】
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
5F045AA20
5F045AB32
5F045AC00
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC14
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AE01
5F045AF03
5F045AF12
5F045BB19
5F045DP03
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ10
5F045EB10
5F045EE14
5F045EF04
5F045EF14
5F045EH11
5F045EK07
5F045GB02
5F058BA09
5F058BC02
5F058BF54
5F058BF55
5F058BF60
5F058BF62
5F058BF63
5F058BF73
5F058BJ06
5F058BJ07
(57)【要約】
【課題】処理室内への外部気体の混入を抑制する。
【解決手段】上部容器と、前記上部容器の下方に設けられ、前記上部容器との間に処理室を構成する下部容器と、前記上部容器と前記下部容器の境界領域に配され、第一のシール部材及び第二のシール部材とを有する第一のシール部と、前記上部容器の下方において最も高い位置に配される支持面を備え、水平方向において前記第一のシール部材と前記第二のシール部材との間に設けられ、前記第一のシール部材及び前記第二のシール部材よりも固い材質で構成される支持部材と、を有する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部容器と、
前記上部容器の下方に設けられ、前記上部容器との間に処理室を構成する下部容器と、
前記上部容器と前記下部容器の境界領域に配され、第一シール部材及び第二シール部材とを有する第一シール部と、
前記上部容器の下方において最も高い位置に配される支持面を備え、水平方向において前記第一シール部材と前記第二シール部材との間に設けられ、前記第一シール部材及び前記第二シール部材よりも固い材質で構成される支持部材と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記支持部材は、
基板を処理する際、前記処理室内の圧力が前記処理室の外の圧力よりも低い状態の場合に、
前記下部容器と前記上部容器とが接触せずに、前記下部容器と前記上部容器との間の空間を確保可能なよう構成される、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記上部容器の側壁は、少なくとも鉛直方向に延伸される周壁と、前記周壁から水平方向に延伸するフランジとで構成され、
前記第一シール部材及び前記支持部材の少なくとも一部及び前記支持面は前記フランジの下方に配される、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記下部容器には、
前記第一シール部材及び前記支持部材が配置される第一溝が設けられる、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記下部容器には、
前記第二シール部材が配される第二溝が設けられ、前記第一溝は、前記第二溝よりも前記上部容器の中心側に設けられる、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第一溝では、前記第一シール部材が前記支持部材よりも前記上部容器の中心側に配され、前記支持部材は前記第一シール部材に接触した状態で配置される、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第一溝は上溝及び下溝で構成され、
前記第一シール部材及び前記支持部材は前記上溝に配され、
前記下溝には排出孔が設けられる、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項8】
更に、
前記第一溝内の空間と連通する排出路を備える
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第一溝内の空間と連通する排出路が設けられ、
前記第一溝では、
前記第一シール部材が前記支持部材よりも前記上部容器の中心側に配置され、
前記支持部材は前記第一シール部材に接触した状態で配置され、
前記第一溝を構成する壁のうち、前記上部容器の中心側と反対側の壁と、前記支持部材との間に、隙間が設けられるよう構成されている、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第一溝内の空間と連通する排出路が設けられ、
前記第一溝では、
前記第一シール部材が前記支持部材よりも前記上部容器の中心側に配され、
前記支持部材は複数分割された状態で配されるとともに、前記第一シール部材に接触した状態で配され、
前記第一溝を構成する壁のうち、前記上部容器の中心側と反対側では、前記支持部材と前記第一溝を構成する壁との間に隙間が設けられ、前記隙間は、それぞれの前記支持部材間の空間に連通するよう構成されている、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第一溝内の空間は、供給路及び/又は排出路と連通するよう構成されている、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項12】
供給路と連通する供給孔と排出路と連通する排出孔は、前記第一溝に設けられ、
前記第一溝において、前記供給孔と前記排出孔との間には壁が設けられている、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項13】
供給路と連通する供給孔と、排出路と連通する排出孔は前記第一溝に設けられ、
前記第一溝は周状に設けられ、
前記供給孔と前記排出孔との間には壁が設けられている、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記上部容器の上方には、蓋体と、前記上部容器と前記蓋体との間に配される第二シール部とが設けられ、
更に前記第二シール部に設けられた第二排出路と、前記供給路と前記第二排出路とを連通する中間流路と、
を有する請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記中間流路には圧力センサが設けられ、
前記処理室にて基板を処理する前に、前記圧力センサは前記中間流路内の圧力を検出するよう構成される、請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記中間流路には圧力センサと、バルブが設けられ、
前記上部容器と前記下部容器とで構成される処理室にて基板を処理した後にメンテナンスを行う際、
前記バルブを閉じた状態で前記中間流路に不活性ガスを供給し、前記圧力センサが前記中間流路内の圧力が所定値以上となったら、前記不活性ガスの供給を停止するよう構成される、請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記処理室にはポンプが設けられる排気管が連通され、
前記排気管の内、前記ポンプの下流側には前記排出路が連通されるよう構成される請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項18】
上部容器と、
前記上部容器の下方に設けられ、前記上部容器との間に処理室を構成する下部容器と、
前記上部容器と前記下部容器の境界領域に配され、第一シール部材及び第二シール部材とを有する第一シール部と、
前記上部容器の下方において最も高い位置に配される支持面を備え、水平方向において前記第一シール部材と前記第二シール部材との間に設けられ、前記第一シール部材及び前記第二シール部材よりも固い材質で構成される支持部材と、
を有する基板処理装置の、前記処理室内において、基板を処理する基板処理方法。
【請求項19】
請求項18に記載の基板処理方法を用いた半導体装置の製造方法。
【請求項20】
上部容器と、
前記上部容器の下方に設けられ、前記上部容器との間に処理室を構成する下部容器と、
前記上部容器と前記下部容器の境界領域に配され、第一シール部材及び第二シール部材とを有する第一シール部と、
前記上部容器の下方において最も高い位置に配される支持面を備え、水平方向において前記第一シール部材と前記第二シール部材との間に設けられ、前記第一シール部材及び前記第二シール部材よりも固い材質で構成される支持部材と、
を有する基板処理装置の、前記処理室内において、基板を処理するよう、コンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板の処理を行う基板処理装置には、基板を処理する処理室が設けられており、当該処理室は基板処理中に外部から密閉される。特許文献1では、石英製の上部容器と金属製の下部容器とで処理室が構成されており、フランジ押さえで上部容器の下部に設けられたフランジ部を下方へ押さえると共に、支持部材で支持する。そして、上部容器と下部容器の間をシール部材で封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように上部容器と下部容器の間をシール部材で封止していても、処理室中に外部気体が混入することがある。
【0005】
本開示は、処理室内への外部気体の侵入を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
上部容器と、
前記上部容器の下方に設けられ、前記上部容器との間に処理室を構成する下部容器と、 前記上部容器と前記下部容器の境界領域に配され、第一のシール部材及び第二のシール部材とを有する第一のシール部と、
前記上部容器の下方において最も高い位置に配される支持面を備え、水平方向において前記第一のシール部材と前記第二のシール部材との間に設けられ、前記第一のシール部材及び前記第二のシール部材よりも固い材質で構成される支持部材と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、処理室内への外部気体の侵入を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図である。
【
図2A】第一シール部と第二シール部を含む、
図4の2A-2A線の断面図である。
【
図2B】第一シール部と第二シール部を含む、
図4の2B-2B線の断面図である。
【
図6】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の制御部の構成を示す図である。
【
図7】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理工程を示すフロー図である。
【
図9】本開示の変形例の第一シール部と第二シール部を含む、一部断面図である。
【
図10】本開示の他の態様で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について
図1~
図8を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
本開示の一態様に係る基板処理装置100について、
図1を用いて以下に説明する。本開示の一態様に係る基板処理装置100は、主に基板面上に形成された膜や下地に対して酸化処理や窒化処理等の改質処理を行うように構成されている。
【0011】
(処理室)
基板処理装置100は、基板としてのウエハ200をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、円筒状の上部容器210と、碗型の下部容器211とを備えている。上部容器210が下部容器211の上に被さることにより、上部容器210と下部容器211の間に処理室201が形成される。上部容器210は、石英で形成されている。また、上部容器210は、処理ガスがプラズマ励起されるプラズマ生成空間を形成するプラズマ容器を構成する。下部容器211は、金属で形成されている。
【0012】
図2A、
図2Bに示されるように、上部容器210の側壁は、鉛直方向に延伸する周壁210Bと、周壁210Bの下端から水平方向に延伸するフランジ210Aを有している。下部容器211の上部には、環状の下蓋211Aが設けられている。下蓋211Aは、下部容器211の一部を構成するが、下部容器本体211Mと別体とされている。フランジ210Aと下蓋211Aとの境界部分(境界領域)に第一シール部270が構成されている。第一シール部270は、後述する第一シール部材284、第二シール部材292を有する構成である。
【0013】
フランジ210Aには、リング状のフランジ押さえ213が設けられている。フランジ押さえ213は、フランジ210Aよりも内径が小さい押さえ部213Aと、フランジ210Aよりも内径が大きく押さえ部213Aの外側に設けられて下向きに突出する側部213Bを有している。押さえ部213Aの下面にはクッション材214が設けられている。クッション材214としては、一例としてテフロン(登録商標)を用いることができる。
【0014】
フランジ210Aの上面はクッション材214を介してフランジ押さえ213と当接されており、フランジ210Aとフランジ押さえ213との直接の接触がないように構成されている。フランジ押さえ213は、側部213Bの貫通孔に挿入されたボルト213Cにより下蓋211Aに締結されている。
【0015】
下部容器211の下蓋211Aには、第一溝280が形成されている。
図3に示されるように、第一溝280は、環状(周状)に形成され、上溝280Aと下溝280Bとで構成されている。なお、
図3において、第一シール部材284、第二シール部材292は図示が省略されている。上溝280Aは、下蓋211Aの上面側に配置され、下溝280Bは、上溝280Aよりも狭幅とされ上溝280Aの下側に段差をもって形成されている。
図4に示されるように、下溝280Bには、隔壁281が形成されている。隔壁281は、下溝280Bの周方向の一部を埋めるように上溝280Aの底面と面一の高さまで形成されている。
【0016】
第一溝280の外周側には、第二溝290が第一溝280と同心円状に形成されている。すなわち、第一溝280は、鉛直方向から見て、第二溝290よりも上部容器210の中心側に配置されている。第一溝280と第二溝290の間には、隔壁部294が形成されている。
【0017】
第一溝280の上溝280Aには、支持部材282が配置されている。支持部材282は、樹脂性とされ、一例としてポリイミド、ベスペル等の材料で形成されている。支持部材282は、後述する第一シール部材284、第二シール部材292よりも固い材料で形成されている。ここでの「固い」は、変形しにくいことを意味しており、支持部材282は、第一シール部材284、第二シール部材292よりも弾性変形しにくい材料で形成されている。また、支持部材282は、水平方向において、後述する第一シール部材284と第二シール部材292との間に設けられている。
【0018】
図3に示されるように、支持部材282は、第一溝280において複数に分割されて(本実施形態では4分割)おり、各ピースが周方向において互いに離隔することにより隙間SKが形成されている。
図2Aに示されるように、支持部材282は、断面四角形状で、上溝280Aの深さよりも高さが高く、下溝280Bの溝幅よりも径方向の幅が大きく設定されている。支持部材282は、下溝280Bの一部を覆うように上溝280A内に配置されている。支持部材282は、上面がフランジ210Aの下面と当接され、上部容器210の下方で、上部容器210と下部容器211とが離隔され、互いに非接触となるようにフランジ210Aを支持している。支持部材282がフランジ210Aを支持する支持面は、鉛直方向に見て、フランジ210Aの下方の最も高い位置となるよう構成されている。
【0019】
第一溝280Aの上溝280Aには、支持部材282よりも径方向内側(上部容器210の中心側)に、第一シール部材284が配置されている。第一シール部材284は、ゴム、エラストマーなどの弾性材料で構成されている。第一シール部材284は、弾性変形していない状態において、同じく弾性変形していない状態の支持部材282よりも上端が上側になるように設定されている。フランジ210Aと下蓋211Aとの間に挟まれて押圧力を受けることにより、第一シール部材284が弾性変形してつぶれ、支持部材282がフランジ210Aの下面に当接し、第一シール部材284は、支持部材282の径方向内側で、フランジ210Aと下蓋211Aとの間をシールする。
【0020】
第一シール部材284は、径方向外側が支持部材282と接触しつつ配置されている。支持部材282は、隔壁部294の第一溝280を構成する内壁面(隔壁部294の径方向内側の壁面)と離隔配置され、周方向に隙間282Aが形成されている。隙間282Aは、隙間SKと連通されている。
【0021】
第二溝290には、第二シール部材292が配置されており、第一シール部材284と第二シール部材292とは、径方向の内と外に水平方向に配置されている。第二シール部材292は第一シール部材284と同様の材料で構成される。また、第二シール部材292の断面は第一シール部材284と同様に、弾性変形していない状態の支持部材282よりも上端が上側になるように設定されている。フランジ210Aと下蓋211Aとの間に挟まれて押圧力を受けることにより、第二シール部材292が弾性変形してつぶれ、支持部材282がフランジ210Aの下面に当接し、第二シール部材292は、支持部材282の径方向外側でフランジ210Aと下蓋211Aとの間をシールする。
【0022】
後述する基板処理工程等の際に、処理室201内が真空となり、処理室201外の圧力(大気圧)よりも低圧となった場合でも、フランジ210A(上部容器210)と下蓋211A(下部容器211)との間に空間が確保されるように、支持部材282、第一シール部材284、及び、第二シール部材292の固さ、弾性率が設定されている。
【0023】
図4に示されるように、下蓋211Aには、隔壁281を挟んで一方側に、下溝280Bと連通する供給孔297Aが形成され、隔壁281を挟んで他方側に、下溝280Bと連通する排出孔296Aが形成されている。
図2Bに示されるように、供給孔297Aは、下溝280Bから下蓋211Aの厚み方向に非貫通で穿孔され、径方向に穿孔された供給孔297Bと連通されている。供給孔297Bは、供給孔297Aに対応する位置から径方向外側に延出し、径方向外端に渡って形成されている。供給孔297A及び供給孔297Bにより、供給路297が形成される。
【0024】
図2Aに示されるように、排出孔296Aは、下溝280Bから下蓋211Aの厚み方向に貫通して穿孔され、下部容器本体211Mに形成された周溝218Cと連通されている。周溝218Cは、排出孔296Aに対応する位置から供給孔297Aに対応する位置まで、略一周に渡って形成されている。下蓋211Aの隔壁281に対応する位置に設けられた隔壁(不図示)を挟んで一方側と他方側に排出孔296Aと供給孔297Aが配される。
図2Bに示されるように、下部容器本体211Mには、周方向において供給孔297Aに対応する位置に、周溝218Cと連通する排出孔296Bが形成されている。排出孔296A、周溝218C、及び排出孔296Bにより、排出路296が形成される。
【0025】
下部容器本体211Mには、下蓋211Aとの境界面に、環状に下内溝218A、下外溝218Bが全周に渡って配されている。下内溝218Aは、周溝218Cの径方向内側に配され、下外溝218Bは、周溝218Cの径方向外側に配されている。下内溝218Aには、下内シール部材217Aが配置され、下外溝218Bには下外シール部材217Bが配置されている。供給路297は、後述する第一中間流路321と接続され、排出路296は、後述する第二中間流路322と接続されている。また、供給路297及び排出路296は、第一溝280内の空間と連通されている。
【0026】
図1に示されるように、下部容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているとき、搬送機構を用いて、搬入出口245を介して、処理室201内へウエハ200を搬入したり、処理室201外へとウエハ200を搬出したりすることができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0027】
処理室201は、周囲に電極としてのコイルである共振コイル212が設けられているプラズマ生成空間と、プラズマ生成空間に連通し、ウエハ200が処理される基板処理室としての基板処理空間を有する。プラズマ生成空間はプラズマが生成される空間であって、処理室201の内、共振コイル212の下端より上方であって、且つ共振コイル212の上端より下方の空間を言う。一方、基板処理空間は、基板がプラズマを用いて処理される空間であって、共振コイル212の下端より下方の空間を言う。本開示の一態様では、プラズマ生成空間と基板処理空間の水平方向の径は略同一となるように構成されている。
【0028】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、ウエハ200を載置する基板載置台としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217は、処理室201内の共振コイル212の下方に設けられている。
サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウエハ200を加熱することができるように構成されている。サセプタ217は、下部容器211とは電気的に絶縁されている。
【0029】
サセプタ217には、サセプタ217を昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。また、サセプタ217には貫通孔217aが設けられるとともに、下部容器211の底面にはウエハ突上げピン266が設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、ウエハ突上げピン266がサセプタ217とは非接触な状態で、貫通孔217aを突き抜けるように構成されている。
【0030】
(ガス供給部)
処理室201の上方、つまり上部容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、反応ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入される反応ガスを分散する分散空間としての機能を持つ。
【0031】
酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端と、水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給管232bの下流端と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するよう、処理ガス供給管232が設けられている。処理ガス供給管232は、ガス導入口234と連通するよう、蓋体233に接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、上流側から順に、酸素含有ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。水素含有ガス供給管232bには、上流側から順に、水素含有ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。不活性ガス供給管232cには、上流側から順に、不活性ガス供給源250c、MFC252c、バルブ253cが設けられている。処理ガス供給管232には、バルブ243aが設けられ、ガス導入口234の上流端に接続されている。バルブ253a,253b,253c,243aを開閉させることによって、MFC252a,252b,252cによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、ガス供給管232a,232b,232cを介して、酸素含有ガス、水素含有ガス、不活性ガス等の処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0032】
上部容器210の上部には、開口238が形成されており、開口238は、蓋体233で覆われている。
図2A及び
図2Bに示されるように、上部容器210と蓋体233の間の境界部分には、環状に第二シール部310が配されている。更に、蓋体233と側壁210との間には、支持部材230が設けられている。第二シール部310に対応する蓋体233の下面には、内溝33A及び外溝233Bが全周に渡って配されている。内溝233Aには、内シール部材312Aが配置され、外溝233Bには外シール部材312Bが配置されている。内溝233Aと外溝233Bの間には、蓋体233の下側に開口する蓋溝314が形成されている。
図5に示されるように、蓋溝314の周方向の一部には、仕切壁313が設けられている。仕切壁313は、蓋体233の下面と面一に設けられている。
【0033】
蓋体233には、仕切壁313を挟んで一方側に、蓋溝314と連通する供給孔317が形成され、仕切壁313を挟んで他方側に、蓋溝314と連通する第二の排出路としての排出孔316が形成されている。供給孔317及び排出孔316は、蓋体233を貫通するように穿孔形成されている。供給孔317は、後述する第二不活性ガス供給管232dと接続され、排出孔316は、後述する第一中間流路321と接続されている。
【0034】
第二不活性ガス供給管232dには、上流側から順に、第二不活性ガス供給源250d、MFC252d、バルブ253dが設けられている。バルブ253dを開閉させることによって、MFC252dにより不活性ガスの流量を調整しつつ、第二不活性ガス供給管232dを介して、不活性ガスを供給孔317へ供給できるように構成されている。
【0035】
(排気部)
下部容器211の側壁には、処理室201内から反応ガスを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排出路としてのガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。
【0036】
(中間流路)
第二シール部310における排出孔316と第一中間流路321の一端とが連通するよう、第一中間流路321と蓋体233が接続されている。第一中間流路321の他端は、下部容器211の供給路297と接続されている。下部容器211の排出路296には、第二中間流路322の一端が接続されている。第二中間流路322の他端は、ガス排気管231の真空ポンプ246よりも下流側に接続されている(
図1参照)。第一中間流路321と第二中間流路322により、中間流路320が構成される。第二不活性ガス供給管232dから、供給孔317、蓋溝314、排出孔316、第一中間流路321、供給路297、第一溝280、排出路296、第二中間流路322が、ガス排気管231まで、一筆書きに連通されている。供給孔317から第二中間流路322までの流路を、シール関連流路326と称する。
【0037】
第二中間流路322には、圧力センサ324が設けられている。また、圧力センサ324よりも下流側に、バルブ325が設けられている。
【0038】
(プラズマ生成部)
処理室201の外周部、すなわち上部容器210の側壁の外側には、上部容器210の外周に沿って螺旋状に複数回巻回するように、共振コイル212が設けられている。共振コイル212には、RFセンサ272、高周波電源273、高周波電源273のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器274が接続される。
【0039】
高周波電源273は、共振コイル212に高周波電力(RF電力)を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源273の出力側に設けられ、供給される高周波電力の進行波や反射波の情報をモニタするものである。RFセンサ272によってモニタされた反射波電力は整合器274に入力され、整合器274は、RFセンサ272から入力された反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源273のインピーダンスや出力される高周波電力の周波数を制御するものである。
【0040】
高周波電源273は、発振周波数および出力を規定するための高周波発振回路およびプリアンプを含む電源制御手段(コントロール回路)と、所定の出力に増幅するための増幅器(出力回路)とを備えている。電源制御手段は、操作パネルを通じて予め設定された周波数および電力に関する出力条件に基づいて増幅器を制御する。増幅器は、共振コイル212に伝送線路を介して一定の高周波電力を供給する。
【0041】
共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、共振コイル212の電気的長さは、高周波電源273から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍、2倍、…)に相当する長さに設定される。
【0042】
共振コイル212の両端は電気的に接地されている。共振コイル212の両端のうちの一端は、固定グランドとして第1の接地点302において接地される。また、共振コイル212の他端は、第2の接地点304において接地される。第2の接地点304は、当該共振コイルの電気的長さを微調整するため、可動タップを介して接地されるようにしてもよい。さらに、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に共振コイル212のインピーダンスを微調整するため、共振コイル212の接地された両端の間には、可動タップ215によって給電部が構成される。また、可動タップ215は、共振コイル212の共振特性を高周波電源273と略等しくするように位置が調整される。共振コイル212が可変式グランド部及び可変式給電部を備えていることによって、後述するように、処理室201の共振周波数及び負荷インピーダンスを調整するにあたり、より一層簡便に調整することができる。
【0043】
遮蔽板223は、共振コイル212の外側の電界を遮蔽すると共に、共振回路を構成するのに必要な容量成分(C成分)を共振コイル212との間に生成するために設けられる。遮蔽板223は、一般的には、アルミニウム合金などの導電性材料を使用して円筒状に構成される。遮蔽板223は、共振コイル212の外周から5~150mm程度隔てて配置される。
【0044】
(制御部)
制御部としてのコントローラ221は、信号線Aを通じてAPCバルブ242、バルブ243b及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じてRFセンサ272、高周波電源273及び整合器274を、信号線Fを通じてMFC252a~252d、バルブ253a~253d,243a,325,圧力センサ324、を、それぞれ制御するように構成されている。
【0045】
図6に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、例えばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置225が接続されている。
【0046】
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置221c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ221に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0047】
I/Oポート221dは、上述のMFC252a~252d、バルブ253a~253d,243a,243b、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、RFセンサ272、高周波電源273、整合器274、サセプタ昇降機構268、ヒータ電力調整機構276、等に接続されている。
【0048】
CPU221aは、記憶装置221cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置225からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU221aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221d及び信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動・停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276によるヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、整合器274及び高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252dによる各種処理ガスの流量調整動作、及びバルブ253a~253d,243aの開閉動作、等を制御するように構成されている。
【0049】
コントローラ221は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)226に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置221cや外部記憶装置226は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置221c単体のみを含む場合、外部記憶装置226単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置226を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0050】
(2)基板処理工程
次に、本開示の一態様における基板処理工程について、主に
図7を用いて説明する。
図7は、本開示の一態様に係る基板処理工程を示すフロー図である。本開示の一態様に係る基板処理工程は、例えばフラッシュメモリ等の半導体デバイスの製造工程の一工程として、上述の基板処理装置100により実施される。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ221により制御される。
【0051】
なお、図示は省略するが、本開示の一態様に係る基板処理工程で処理されるウエハ200の表面には、アスペクト比の高い凹凸部を有するトレンチが予め形成されている。本開示の一態様においては、トレンチの内壁に露出した例えばシリコン(Si)の層に対して、プラズマを用いた処理として酸化処理を行う。
【0052】
(基板搬入工程S110)
まず、上記のウエハ200を処理室201内に搬入する。具体的には、サセプタ昇降機構268がウエハ200の搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aにウエハ突上げピン266を貫通させる。その結果、ウエハ突き上げピン266が、サセプタ217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。
【0053】
続いて、ゲートバルブ244を開き、処理室201に隣接する真空搬送室から、ウエハ搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内にウエハ200を搬入する。搬入されたウエハ200は、サセプタ217の表面から突出したウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201内にウエハ200を搬入したら、ウエハ搬送機構を処理室201外へ退避させ、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。そして、サセプタ昇降機構268がサセプタ217を上昇させることにより、ウエハ200はサセプタ217の上面に支持される。
【0054】
(昇温・真空排気工程S120)
続いて、処理室201内に搬入されたウエハ200の昇温を行う。ヒータ217bは予め加熱されており、ヒータ217bが埋め込まれたサセプタ217上にウエハ200を保持することで、例えば150~750℃の範囲内の所定値にウエハ200を加熱する。また、ウエハ200の昇温を行う間、真空ポンプ246によりガス排気管231を介して処理室201内を真空排気し、処理室201内の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S160が終了するまで作動させておく。
【0055】
(反応ガス供給工程S130)
次に、反応ガスとして、酸素含有ガスと水素含有ガスの供給を開始する。具体的には、バルブ253a及びバルブ253bを開け、MFC252a及びMFC252bにて流量制御しながら、処理室201内へ酸素含有ガス及び水素含有ガスの供給を開始する。このとき、酸素含有ガスの流量を、例えば20~2000sccmの範囲内の所定値とする。また、水素含有ガスの流量を、例えば20~1000sccmの範囲内の所定値とする。
【0056】
また、処理室201内の圧力が、例えば1~250Paの範囲内の所定圧力となるように、APCバルブ242の開度を調整して処理室201内の排気を制御する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S140の終了時まで酸素含有ガス及び水素含有ガスの供給を継続する。
【0057】
酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。酸素含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0058】
また、水素含有ガスとしては、例えば、水素(H2)ガス、重水素(D2)ガス、H2Oガス、アンモニア(NH3)ガス等を用いることができる。水素含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、酸素含有ガスとしてH2Oガスを用いる場合は、水素含有ガスとしてH2Oガス以外のガスを用いることが好ましく、水素含有ガスとしてH2Oガスを用いる場合は、酸素含有ガスとしてH2Oガス以外のガスを用いることが好ましい。
【0059】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスを用いることができ、この他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0060】
(プラズマ処理工程S140)
処理室201内の圧力が安定したら、共振コイル212に対して高周波電源273からRFセンサ272を介して、高周波電力の印加を開始する。
【0061】
これにより、酸素含有ガス及び水素含有ガスが供給されているプラズマ生成空間内に高周波電磁界が生成され、係る電磁界により、プラズマ生成空間の共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するドーナツ状のプラズマが励起される。また、共振コイル212の下端の高さ位置に、上述の通り、コイル離間距離を調整することにより処理容器203の内周方向におけるプラズマ密度の分布が均一に近づくように調整されたプラズマが励起される。なお、共振コイル212の上端の高さ位置にもプラズマが励起されるが、本開示の一態様では、下端側とは異なり、コイル離間距離を調整することによる処理容器203の内周方向におけるプラズマ密度の分布の調整は行われない。プラズマ状の酸素含有ガス及び水素含有ガスは解離し、酸素を含む酸素ラジカル(酸素活性種)や酸素イオン、水素を含む水素ラジカル(水素活性種)や水素イオン、等の反応種が生成される。
【0062】
基板処理空間でサセプタ217上に保持されているウエハ200には、誘導プラズマにより生成されたラジカルと加速されない状態のイオンがトレンチ内に均一に供給される。供給されたラジカル及びイオンは側壁と均一に反応し、表面の層(例えばSi層)をステップカバレッジが良好な酸化層(例えばSi酸化層)へと改質する。
【0063】
その後、所定の処理時間、例えば10~300秒が経過したら、高周波電源273からの電力の出力を停止して、処理室201内におけるプラズマ放電を停止する。また、バルブ253a及びバルブ253bを閉めて、酸素含有ガス及び水素含有ガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プラズマ処理工程S140が終了する。
【0064】
(真空排気工程S150)
酸素含有ガス及び水素含有ガスの供給を停止したら、ガス排気管231を介して処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内の酸素含有ガスや水素含有ガス、これらガスの反応により発生した排ガス等を処理室201外へと排気する。その後、APCバルブ242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室(ウエハ200の搬出先。図示せず)と同じ圧力に調整する。
【0065】
(基板搬出工程S160)
処理室201内が所定の圧力となったら、サセプタ217をウエハ200の搬送位置まで下降させ、ウエハ突上げピン266上にウエハ200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、ウエハ搬送機構を用いてウエハ200を処理室201外へ搬出する。
【0066】
以上により、本開示の一態様に係る基板処理工程を終了する。
【0067】
(リークチェック)
基板処理工程の前の装置立ち上げ時や、基板処理工程の後のメンテナンス時には、処理室201、シール関連流路326のリークチェックが実施される。リークチェックは、第一段階として、処理室201内を真空状態とし、シール関連流路326を真空から大気圧に戻す大気圧復帰処理が実施される。
【0068】
大気圧復帰処理は、
図8に示されるように、ステップS10で、バルブ325を閉鎖し、ステップS12で、第二不活性ガス供給管253dからシール関連流路326へ不活性ガスの供給を開始する。ステップS14で、圧力センサ324で、シール関連流路326が所定の圧力、ここでは大気圧以上となったかどうかを判断する。判断が肯定された場合には、第二不活性ガス供給管253dからのガス供給を停止する。
【0069】
シール関連流路326を大気圧にして、処理室201内の圧力上昇がないことを確認する。ここでの圧力上昇がないと判断した場合には、第一シール部270、第二シール部310から処理室201へのガスのリークがないことを確認できたことになる。
【0070】
第二段階で、処理室201内を真空状態としたまま、バルブ253dを閉鎖し、不図示の真空ポンプを作動させて、シール関連流路326を真空にする。そして、バルブ325を閉鎖し、圧力センサ324で、シール関連流路326の圧力を検知する。圧力センサ324で検知された圧力が所定の範囲内であれば、リークなしと判断することができる。
【0071】
(効果)
本実施形態によれば、以下に挙げる一つ又はそれ以上の効果を奏する。
【0072】
(A)第一シール部材284と、第一シール部材284よりも上部容器210の中心から離れて配置される第二シール部材292とでフランジ210Aと下蓋211Aとの間をシールする。そして、水平方向において第一のシール部材284と第二のシール部材292の間に設けられた支持部材282の上面で、フランジ210Aの下面に当接して上部容器210を支持する。したがって、支持部材282を第二シール部材292の外側(第一シール部材284と反対側)に設けた場合と比較して、上部容器210を支持する位置が中心に近くなる。これにより、処理室201内が真空状態の時に、上部容器210の側壁が外部の大気圧により内側へ押されても、側壁の傾きが抑制され、第一シール部270における密閉性を確保することができる。
【0073】
(B)基板処理工程等の際に、処理室201内を真空状態にした場合でも、フランジ210A(上部容器210)と下蓋211A(下部容器211)との間に空間が確保されるように、支持部材282、第一シール部材284、及び、第二シール部材292が設定されている。したがって、上部容器210と下蓋211Aとの非接触状態を維持することができる。
【0074】
(C)フランジ210Aの下方に第一シール部材284及び支持部材282が配置されているので、上部容器210の周壁210Bの厚みを薄くすることできる。
【0075】
(D)上溝280A(第一溝280)に、第一シール部材284及び支持部材282の両方を配置しているので、別々に溝を形成した場合と比較して、全体として径方向のサイズを小さくすることができる。
【0076】
(E)第一シール部材284及び支持部材282が配置される第一溝280が、第二シール部材292が配置される第二溝290よりも上部容器210の中心側に設けられている。したがって、支持部材282により上部容器210を支持する支点を上部容器210の中心側に寄せることができ、処理室の外部からの圧力により周壁210Bの内側へ向かう力が作用した場合の、回転モーメントを小さくすることができる。
【0077】
(F)第一溝280において、支持部材282は第一シール部材284に接触した状態で配置される。したがって、第一シール部材284の移動やねじれを抑制することができる。
【0078】
(G)第一溝280において、第一シール部材284及び支持部材282は上溝280Aに配置され、これらが配置されていない下溝280Bに排出孔296Aが接続されている。したがって、下溝280Bでスムーズに気体を移動させることができ、雰囲気の滞留を抑制できる。
【0079】
(H)第一溝280は、排出路296と接続されている。したがって、第一溝280の気体を容易に排出することができる。
【0080】
(I)支持部材282と、隔壁部294の第一溝280を構成する壁との間に隙間282Aが形成されている。したがって、支持部材282と第一シール部材284の間に滞留した気体を、隙間282A経由で排出することができる。
【0081】
(J)支持部材282は、第一溝280において、周方向複数に分割され、隙間SKが形成されており、この隙間SKが隙間282Aと連通されている。したがって、支持部材282と第一シール部材284の間に滞留した気体を、支持部材282間の空間である隙間SKと隙間282A経由で排出することができる。
【0082】
(K)第一溝280内の空間は、シール関連流路326の一部を構成しており、供給路297、及び、排出路296と連通されている。したがって、供給路297から不活性ガスを供給することにより、第一溝280内の気体を押し出すことができ、第一溝280内の気体を排出路296から排出することができる。
【0083】
(L)下溝280Bには、隔壁281が形成され、隔壁281を挟んで一方側に、下溝280Bと連通する供給孔297Aが形成され、隔壁281を挟んで他方側に、下溝280Bと連通する排出孔296Aが形成されている。したがって、第一溝280内に不活性ガスを滞留させて、雰囲気のパージ効果を高めることができる。
【0084】
(M)下溝280Bは周状に形成されると共に隔壁281が形成され、隔壁281を挟んで一方側に、下溝280Bと連通する供給孔297Aが形成され、隔壁281を挟んで他方側に、下溝280Bと連通する排出孔296Aが形成されている。したがって、第一溝280内の一端から他端まで周状に不活性ガスを通過させて、雰囲気のパージ効果を高めることができる。
【0085】
(N)上部容器210の上部において、第二シール部310が形成され、第二のシール部310の内シール部材312Aと外シール部材312Bとの間の蓋溝314を含む空間は、排出孔316と連通されている。そして、排出孔316は、第一中間流路321を介して第一シール部270の供給路297と接続されている。したがって、第一シール部270と第二シール部310内の気体を連続して排出できる。そのため、それぞれを独立した場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0086】
(O)第二中間流路322には圧力センサ324が設けられている。処理室201内で基板を処理する前に、圧力センサ324で、中間流路320を含むシール関連流路326内の圧力を検出することにより、リークチェックを実施することができる。
【0087】
(P)第二中間流路322には圧力センサ324とバルブ325が設けられている。処理室201にて基板を処理した後にメンテナンスを行う際、大気圧復帰処理を行うことにより、第一シール部270及び第二シール部310を含むシール関連流路326を大気圧に戻すことができる。
【0088】
(Q)処理室201には真空ポンプ246が設けられるガス排気管231が連通され、ガス排気管231の真空ポンプ246の下流側には、排出路296が第二中間流路322を介して接続されている。したがって、真空ポンプ246の性能を落とすことなく、シール関連流路326内の気体を排気することができる。
【0089】
(3)変形例
【0090】
上述の実施形態における第一シール部270は、以下に示す変形例のように変形することができる。特に説明がない限り、各変形例における構成は、上述した実施形態における構成と同様である。また、第一シール部270の変形例である第一シール部270-2について、上述の実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0091】
変形例においては、支持部材331は、
図9に示されるように、断面が径方向内側を向くL字状とされており、下支持部331A、外支持部331Bを有している。支持部材331は、リング状とされている。下支持部331Aは、フランジ210Aの下面に当接され、フランジ210Aを支持している。外支持部331Bは、フランジ210Aの外周端面に当接されている。
【0092】
フランジ押さえ213は、フランジ210Aに外嵌され、フランジ210Aの上面と押さえ部213Aとの間には、第三シール部材293が配置されている。押さえ部213Aの下面で、第三シール部材293の警報区外側には、クッション材214が設けられており、クッション材214を介してフランジ210Aがフランジ押さえ213と当接されている。側部213Bの径方向内側下面には、第二シール部材292が配置されている。
【0093】
下蓋211Aの上面の径方向内側には、溝330が形成されている。溝330は、環状に形成され、上溝330Aと下溝330Bで構成されている。上溝330Aは、下蓋330Aの上面側に配置され、下溝330Bは、上溝330Aよりも狭幅とされ上溝330Aの下側に段差をもって形成されている。下溝330Bには、前述の下溝280Bに形成された隔壁281と同様に隔壁が形成されている。下溝330Bには、供給路297及び排出路296が接続されている。
【0094】
本変形例は、フランジ210Aの径方向の長さが比較的短い場合に好適である。
【0095】
<他の態様>
以上、本開示の種々の典型的な実施形態及び変形例を説明してきたが、本開示はそれらの実施形態に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。
【0096】
例えば、上記の実施形態では、基板を一枚ずつ処理する枚葉式装置について説明したが、
図10に示す縦型の基板処理装置400に適用することもできる。基板処理装置400は、ウエハ200を処理する処理炉402を備えている。処理炉402には、処理室401を構成する処理容器403が設けられている。処理容器403は、加熱装置407の内側に儲けられている。処理容器403は、円筒状の上部容器410と、上部容器410の下部開口を覆う下部容器411とを備えている。上部容器410が下部容器411の上に被さることにより、上部容器410と下部容器411の間に処理室401が形成される。
【0097】
処理容器403内の中央部には、複数枚のウエハ200を多段に同一間隔で載置するボート417が設けられている。ボート417は、ウエハ200を水平姿勢で多段に保持する基板保持具である。ボート417は、下部容器411の上部に石英キャップ418を介して支持されている。
【0098】
ボート417は、図示しないボートエレベータによる昇降により、処理容器403に出入りできるようになっている。また処理の均一性を向上する為にボート417を回転するためのボート回転機構467が設けてあり、このボート回転機構467によって石英キャップ418に保持されたボート417を回転するようになっている。
【0099】
基板処理装置400におけるガス供給は、処理ガス供給管232に設けられた、処理ガス供給源440、マスフローコントローラ441、バルブ443とで構成することができる。また、処理室401からガスを排気する排気系として、ガス排気管431、APCバルブ455、真空ポンプ446で構成することができる。
【0100】
上部容器410の下端には、フランジ410Aが形成されフランジ410Aと下部容器411との境界部分に第一シール部470が構成されている。第一シール部470は、前述の第一シール部270と同様の構成とすることができる。第一シール部470からガスを排出する第二中間流路322は、ガス排気管431の真空ポンプ446よりも下流側に接続される。
【0101】
なお、本開示を特定の実施形態及び変形例について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0102】
100、400 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201、401 処理室
210、410 上部容器
210A、410A フランジ(側壁)
210B 周壁(側壁)
211 下部容器
231 ガス排気管(排気管)
270 第一シール部
280 第一溝
280A 上溝
280B 下溝
282 支持部材
284 第一シール部材
290 第二溝
292 第二シール部材
296 排出路
296A 排出孔
297 供給路
297A 供給孔
310 第二シール部
316 排出孔(第二排出路)
320 中間流路
321 第一中間流路(中間流路)
322 第二中間流路(中間流路)
324 圧力センサ
325 バルブ