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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137652
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】シート搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/06 20060101AFI20240927BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240927BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240927BHJP
   B65H 29/52 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65H7/06
G03G21/00 370
G03G15/00 480
B65H29/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023195473
(22)【出願日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2023045270
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 遼平
【テーマコード(参考)】
2H072
2H270
3F048
3F101
【Fターム(参考)】
2H072AA02
2H072AA09
2H072AA16
2H072AA22
2H072HA08
2H270LC10
2H270LC14
2H270LC22
2H270LD03
2H270LD08
2H270LD14
2H270LD15
2H270QB06
2H270RA03
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC06
3F048AA01
3F048AB01
3F048AB05
3F048AB06
3F048AB07
3F048BA14
3F048BB04
3F048BB05
3F048BB09
3F048CC03
3F048CC04
3F048CC12
3F048DA06
3F048DC14
3F048EB22
3F101FB08
3F101FC11
3F101LA01
3F101LB03
3F101LB08
(57)【要約】
【課題】シート状の被搬送物の先端のセンサ到達以外を正しく検知することが困難なシート状の被搬送物においても、誤検知を防止する。
【解決手段】シート状の被搬送物を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される前記被搬送物の経路を形成するカーブした搬送経路と、前記搬送経路のカーブ位置に配され、前記被搬送物の有無を検知する搬送センサと、前記搬送センサの出力結果から前記被搬送物の詰まりを判断する判断部と、を備え、特定の種別の前記被搬送物が搬送される場合、前記判断部は、前記被搬送物の先端の通過を検知されてから前記被搬送物の後端が前記搬送センサを通過するまでの期間、前記被搬送物の詰まりの判断を停止する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被搬送物を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記被搬送物の経路を形成するカーブした搬送経路と、
前記搬送経路のカーブ位置に配され、前記被搬送物の有無を検知する搬送センサと、
前記搬送センサの出力結果から前記被搬送物の詰まりを判断する判断部と、
を備え、
特定の種別の前記被搬送物が搬送される場合、前記判断部は、前記被搬送物の先端の通過を検知されてから前記被搬送物の後端が前記搬送センサを通過するまでの期間、前記被搬送物の詰まりの判断を停止する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記被搬送物の詰まりの判断の停止期間は、前記被搬送物の搬送方向の長さと前記被搬送物の搬送速度に応じて予め設計された時間である、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記判断部は、前記被搬送物の後端が前記搬送センサを通過した後、前記被搬送物の詰まりの判断を再開する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記搬送部を制御する制御部は、前記被搬送物の搬送を開始する前に、前記被搬送物を搬送方向下流に搬送する方向に前記搬送部を駆動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記搬送センサから射出される光の光軸延長線上における前記搬送経路のガイド面は、前記搬送センサから射出される光の光軸に対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記搬送経路は、前記搬送センサに対応する位置より搬送方向上流側の搬送経路よりも、前記搬送センサに対応する位置より搬送方向下流側の搬送経路の方が、搬送経路の湾曲度合いまたは傾斜角度が大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記搬送経路には、前記被搬送物を加熱および搬送方向下流側に搬送する定着装置が配置されており、
前記搬送センサは、前記定着装置の搬送方向下流側に配置されており、前記定着装置で発生する前記被搬送物の詰りを検知するセンサを用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記搬送経路を搬送される前記被搬送物の表面と直交する方向において、前記搬送経路と対向する位置には両面搬送経路を有し、
前記搬送センサから射出される光の光軸延長線上における前記両面搬送経路のガイド面は、前記搬送センサの光軸に対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載のシート搬送装置と、
被搬送物に画像を印刷する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、OHP用紙等の透明用紙のセンサの非検知による紙詰りの誤判断を解消するため、用紙の先端を検知してから用紙の後端がセンサを通過するよりも早いタイミングまでを紙詰りの判断を停止する紙詰り無効検知期間を設ける技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来技術によれば、透明用紙の用紙後端がセンサを通過するタイミングは紙詰りの判断を再開している。しかし、用紙の搬送経路が湾曲している位置に光学センサが配置されている場合などでは、用紙後端がセンサを通過するタイミングで用紙がセンサの検知可能範囲を超えてしまい、用紙後端が抜けたことを検知できず、誤検知を起こしてしまう場合がある。この場合、紙詰りが生じていないのに誤検知により装置を停止することになり、印刷の生産性が低下する、という問題がある。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シート状の被搬送物の先端のセンサ到達以外(搬送途中やシート状の被搬送物の後端センサ抜け)を正しく検知することが困難なシート状の被搬送物においても、誤検知を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、シート状の被搬送物を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送される前記被搬送物の経路を形成するカーブした搬送経路と、前記搬送経路のカーブ位置に配され、前記被搬送物の有無を検知する搬送センサと、前記搬送センサの出力結果から前記被搬送物の詰まりを判断する判断部と、を備え、特定の種別の前記被搬送物が搬送される場合、前記判断部は、前記被搬送物の先端の通過を検知されてから前記被搬送物の後端が前記搬送センサを通過するまでの期間、前記被搬送物の詰まりの判断を停止する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シート状の被搬送物の先端のセンサ到達以外(搬送途中やシート状の被搬送物の後端センサ抜け)を正しく検知することが困難なシート状の被搬送物においても、誤検知を防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態にかかるMFPの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、MFPのハードウェア構成図である。
図3図3は、MFPの機能構成を示すブロック図である。
図4図4は、カーブした搬送経路を用紙が搬送されている状態を示す図である。
図5図5は、用紙を搬送した際の搬送センサの検知信号例を示す図である。
図6図6は、紙詰まり判断部による判断例を示す図である。
図7図7は、紙詰まり判断処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、紙詰まり判断処理の流れを示すフローチャートの変形例である。
図9図9は、搬送経路および両面搬送経路に搬送センサを備えている例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、シート搬送装置および画像形成装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施の形態にかかるMFP1000の構成を概略的に示す図である。本実施形態は、シート搬送装置および画像形成装置として、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有するMFP(Multifunction Peripheral/Product/Printer:複合機)1000を適用したものである。MFP1000は、プリンタ部100およびスキャナ部500を備えている。
【0010】
図1に示すように、プリンタ部100は、給紙ローラ101、中継ローラ102、レジストローラ103、感光体104、帯電装置105、LED106、転写ローラ107、定着ローラ108、搬送センサ109、排紙ローラ110を備えている。
【0011】
プリンタ部100は、下部に、給紙装置200を備える。プリンタ部100は、給紙装置200をプリンタ部100の内部に収納する。
【0012】
シート状の被搬送物である用紙Pは、給紙装置200が備える分離ローラ201と、プリンタ部100に設置されている給紙ローラ101とによって、給紙装置200からプリンタ部100に対して送り出される。すなわち、分離ローラ201を含む給紙装置200が、プリンタ部100における給紙部を構成する。
【0013】
給紙装置200から送り出された用紙Pは、中継ローラ102、レジストローラ103、排紙ローラ110によって、点線矢印で示されているようなカーブ(湾曲)した経路を形成する搬送経路300に搬送される。中継ローラ102によって搬送された用紙Pは、レジストローラ103において一旦停止し弛みが形成される。
【0014】
給紙ローラ101、中継ローラ102、レジストローラ103、排紙ローラ110は、用紙Pを搬送する搬送部として機能する用紙搬送部66(図3参照)を構成する。制御部61(図3参照)の指示信号に基づき、駆動源であるモータが駆動され、モータの駆動力が用紙搬送部66に伝達されることで、用紙搬送部66は用紙Pを搬送する。用紙搬送部66は、用紙Pを感光体104等により形成される画像形成部65に搬送し、その後用紙Pを排出する。
【0015】
プリンタ部100は、感光体104の周囲に、当該感光体104の表面を帯電する帯電装置105と、帯電された感光体104の表面を画像情報により露光して感光体104上に静電潜像を形成する光源としてのLED106と、を備える。感光体104と帯電装置105とLED106とは、電子写真方式により画像形成する画像形成部65を形成する構成要素である。プリンタ部100は、これらの感光体104等により形成される画像形成部65の動作によって、用紙Pに転写される画像を形成する。
【0016】
プリンタ部100は、感光体104に形成されたトナー像に対して、所定のタイミングで、レジストローラ103による用紙Pの搬送を開始する。これによって、プリンタ部100は、感光体104と、感光体104の対面に設置されている転写ローラ107との間に用紙Pを搬送して、感光体104のトナー像を用紙Pに転写する。
【0017】
なお、画像形成部65は、上述したような電子写真方式によって画像を形成するものに限るものではなく、インクジェット方式などのような他の方式によって画像を形成するものであってもよい。
【0018】
その後、プリンタ部100は、用紙Pを、定着ローラ108に搬送し、定着ローラ108により転写されたトナー像が加熱(加圧)して定着され、さらに定着ローラ108により用紙Pが下流側に搬送され、排紙ローラ110を経て、プリンタ部100の筐体上面に設けられている排紙トレイ100aに排出する。
【0019】
プリンタ部100は、一般的に、各ローラ(給紙ローラ101、中継ローラ102、レジストローラ103、排紙ローラ110)の駆動タイミングを、搬送センサ109を用いて制御する。具体的には、プリンタ部100は、光学的に用紙Pの存在を検知する搬送センサ109(例えば、反射型フォトセンサ)を用いて、用紙Pを検知している間、後述する制御部61(図3参照)へ検知信号を出力する。
【0020】
搬送センサ109は、用紙Pの搬送経路300がカーブ(湾曲)している位置に配置される。なお、搬送センサ109としては、用紙検知専用のセンサではなく、定着装置である定着ローラ108の搬送方向下流側に設けられるものであって、定着ローラ108に用紙Pが巻き付くことによる用紙詰まりを検知するセンサ(定着出口センサ)を用いるようにしてもよい。
【0021】
図2は、MFP1000のハードウェア構成図である。図2に示されているように、MFP(Multifunction Peripheral/Product/Printer)1000は、コントローラ910、近距離通信回路920、エンジン制御部930、操作パネル940、ネットワークI/F950を備えている。
【0022】
これらのうち、コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU(Central Processing Unit)901、システムメモリ(MEM-P)902、ノースブリッジ(NB)903、サウスブリッジ(SB)904、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)907、HDDコントローラ908、及び、記憶部であるHD909を有し、NB903とASIC906との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続した構成となっている。
【0023】
これらのうち、CPU901は、MFP1000の全体制御を行う制御部である。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904、及びAGPバス921とを接続するためのブリッジであり、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを有する。
【0024】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM902a、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いるRAM902bとからなる。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0025】
SB904は、NB903とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDDコントローラ908およびMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC906は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部500及びプリンタ部100との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。なお、ASIC906には、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースを接続するようにしてもよい。
【0026】
MEM-C907は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HD909は、CPU901の制御にしたがってHD909に対するデータの読出又は書込を制御する。AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0027】
また、近距離通信回路920には、近距離通信回路920aが備わっている。近距離通信回路920は、NFC、Bluetooth等の通信回路である。
【0028】
更に、エンジン制御部930は、スキャナ部500及びプリンタ部100によって構成されている。また、操作パネル940は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940a、並びに、濃度の設定条件などの画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキー及びコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作パネル940bを備えている。コントローラ910は、MFP1000全体の制御を行い、例えば、描画、通信、操作パネル940からの入力等を制御する。スキャナ部500又はプリンタ部100には、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれている。
【0029】
なお、MFP1000は、操作パネル940のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0030】
また、ネットワークI/F950は、通信ネットワーク100を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。近距離通信回路920及びネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
【0031】
次に、MFP1000の機能構成について説明する。
【0032】
図3は、MFP1000の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、MFP1000は、制御部61、記憶部62、画像メモリ63、画像処理部64、画像形成部65、用紙搬送部66、入力操作部67及びネットワークI/F部68を備える。制御部61は、記憶部62、画像メモリ63、画像処理部64、画像形成部65、用紙搬送部66、入力操作部67及びネットワークI/F部68をそれぞれ接続する。
【0033】
制御部61は、図2に示すCPU901などによって構成される。制御部61は、記憶部62に記憶されたプログラムを読み出して、各種処理(各機能部への指示信号の出力、用紙搬送部66を駆動する指示信号の出力、データ転送など)を行い、MFP1000の各部を統括的に制御する。
【0034】
また、制御部61は、判断部として機能する紙詰まり判断部611を備える。また、紙詰まり判断部611は、時間をカウントするタイマー612を有する。
【0035】
紙詰まり判断部611は、搬送センサ109から出力される検知信号を取り込んで、用紙Pの紙詰まりの有無を判断する。例えば、紙詰まり判断部611は、タイマー612のカウントによって所定時間が経過した場合でも搬送センサ109から検知信号が出力されない場合、搬送センサ109の上流で用紙Pの紙詰まりが発生したと判断する。
【0036】
記憶部62は、MFP1000の備える種々の機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶する。記憶部62は、図2に示すローカルメモリ(MEM-C)907、HD909などが対応する。
【0037】
画像メモリ63は、ネットワークI/F部68を介して外部装置から送信された画像データなどを一時的に記憶する。画像メモリ63は、図2に示すRAM902bなどが対応する。
【0038】
画像処理部64は、画像メモリ63に記憶されている画像データに対して、画像補正や拡大・縮小などの画像処理を施す。画像処理部64は、図2に示すASIC906などが対応する。
【0039】
入力操作部67は、選択部として機能するものであって、図示しない電源キー、テンキー、各種メッセージを表示、紙種情報(シート状の被搬送物の種別情報)などを入力するパネルを備える。なお、本実施形態では選択部である入力操作部67によりユーザが紙種情報を入力することで説明するが、これに限らず、印刷する用紙をセンサで読み取ることにより、紙種情報を自動で識別する紙種センサを用いてもよい。入力操作部67は、図2に示す操作パネル940などが対応する。
【0040】
ネットワークI/F部68は、LANボードなどの通信モジュールから構成される。ネットワークI/F部68は、当該ネットワークI/F部68と接続された外部装置を種々のデータの送受信を行う。ネットワークI/F部68は、図2に示す近距離通信回路920、ネットワークI/F950などが対応する。
【0041】
続いて、従来の課題について説明する。
【0042】
搬送センサ109は、搬送する用紙Pに対して搬送センサ109から射出される光の光軸が垂直(理想角度90度)になるように配置することが理想である。それは搬送センサ109の光軸と用紙Pの成す角度が一定の閾値を超えると、搬送センサ109で用紙Pを検知できないケースがあるためである。
【0043】
例えば、白紙は検出可能角度が広いのに対して、黒紙は白紙よりも検出可能角度が狭く、さらに透明用紙であるOHP用紙では検出可能角度が極端に狭くなる。このように検出可能角度が狭くなる場合において、例えば搬送センサ109の光軸と用紙Pの理想角度90度に対して15~20度程度傾いて設置されていると、搬送センサ109で用紙Pを検知できなくなる場合がある。
【0044】
このように搬送センサ109で用紙Pを検知できなくなると、例えば搬送センサ109の前に用紙P(例えばOHP用紙)があるにも関わらず用紙Pを検知できず、用紙Pの紙詰まりが発生したと誤った判断がされる可能性がある。
【0045】
ところで、本実施形態のプリンタ部100のように、搬送センサ109の光軸を用紙Pに対して垂直(理想角度90度)に配置できないカーブした搬送経路300上に、搬送センサ109を配置しなければならない場合がある。
【0046】
ここで、図4はカーブした搬送経路300を用紙Pが搬送されている状態を示す図、図5は用紙Pを搬送した際の搬送センサ109の検知信号例を示す図である。より詳細には、図4(a),(b),(c)は、定着ローラ108から排紙ローラ110までのカーブした搬送経路300を用紙Pが搬送された状態を段階的に示している。また、図5は、図4(a),(b),(c)それぞれの位置での搬送センサ109の検知信号を示している。
【0047】
図5において、検知信号Aは用紙PとしてOHP用紙を適用した例、検知信号Bは用紙Pとして普通紙(白紙や黒紙など透明用紙以外)を適用した例を示している。図5において、検知信号がHighレベルの時は搬送センサ109が用紙Pを検知していることを示し、検知信号がLowレベルの時は搬送センサ109が用紙Pを検知していないことを示す。
【0048】
図4に示すように、搬送センサ109の光軸延長線上における搬送経路300のガイド面300aは、搬送センサ109の光軸に対して傾斜している。
【0049】
また、図4に示すように、搬送経路300(定着ローラ108と排紙ローラ110の間の経路)は、搬送センサ109から射出される光の光軸延長線が搬送経路300のガイド面300aと交わる位置(搬送経路300における搬送センサ109に対応する位置)より搬送方向上流側の搬送経路(定着ローラ108と搬送センサ109の間の経路)よりも、搬送センサ109より搬送方向下流側の搬送経路(搬送センサ109と排紙ローラ110の間の経路)の方が、搬送経路300の湾曲度合いまたは傾斜角度が大きい。
【0050】
図4(a)は、定着ローラ108から搬送されて、搬送センサ109の光軸に用紙Pの先端が到達した状態、つまり用紙Pの先端が搬送センサ109の検知範囲に到達した状態を示している。図4(a)に示す状態では、搬送センサ109の光軸に対して用紙Pの先端が垂直に搬送されているため、白紙や黒紙、OHP用紙のいずれでも、搬送センサ109は用紙Pの先端を検知することができる。すなわち、図4(a)に示す状態では、図5に示すように、検知信号A及び検知信号BはHighレベルになる。
【0051】
図4(b)は、定着ローラ108から搬送されて、排紙ローラ110に用紙Pの先端が到達した状態を示している。図4(b)に示す状態では、用紙Pは搬送センサ109の光軸に対して斜めに搬送されることになる。この時、搬送センサ109の光軸と用紙Pの成す角度が用紙Pの検知の閾値を超えると、搬送センサ109での用紙Pの検出が不安定になり、正しく検知ができなくなる。例えば、用紙PとしてOHP用紙を適用した場合、閾値付近の角度の状態で用紙Pの搬送が続くと、図5に示す検知信号Aのように、HighレベルとLowレベルを繰り返すことになる。一方、用紙Pとして普通紙(白紙や黒紙など透明用紙以外)を適用した場合、閾値付近の角度の状態で用紙Pの搬送が続いたとしても、図5に示す検知信号Bのように、Highレベルを維持し続ける。
【0052】
図4(c)は、用紙Pの後端が定着ローラ108を抜ける直前の状態を示している。図4(c)に示す状態では、搬送センサ109の光軸に対する用紙Pの角度がさらに大きくなる。そのため、用紙PとしてOHP用紙を適用した場合、引き続き搬送センサ109にて用紙Pを検出できず、図5に示す検知信号Aのように、Lowレベルが続くことになる。一方、用紙Pとして普通紙(白紙や黒紙など透明用紙以外)を適用した場合、用紙Pの後端が搬送センサ109を抜けたタイミングで、図5に示す検知信号BのようにLowレベルに変化する。
【0053】
上述したように、プリンタ部100は、搬送センサ109から出力される検知信号を制御部61が取り込んで、紙詰まり判断部611が検知信号の有無によって用紙Pの紙詰まりの有無を判断する。上述したように、用紙PとしてOHP用紙を適用した場合、搬送センサ109での用紙Pの検出が正しくできない。そのため、プリンタ部100は、搬送センサ109の前に用紙Pがあるのにも関わらず、制御部61(紙詰まり判断部611)では用紙Pの搬送センサ109に対する抜けが早い(用紙Pが短い)と誤検知して、プリンタ部100を停止させることになる。この誤検知は、安定した連続通紙を妨げ、生産性を落とす原因となる。
【0054】
そこで、本実施形態においては、プリンタ部100は、特定の紙種情報(シート状の被搬送物の種別情報)を入力操作部67にて選択時、用紙Pの先端の搬送センサ109への到達を検知以降、用紙Pの後端が搬送センサ109を通過するまで、用紙Pの紙詰まり判定を停止している。つまり、用紙Pの後端が搬送センサ109を通過するタイミングも含めて用紙Pの紙詰まり判定を停止している。これにより、搬送途中に搬送センサ109の誤検知により検知信号がLowレベルに変化しても、用紙Pの紙詰まりとせずに用紙Pの搬送を継続するようにしたものである。
【0055】
ここで、図6は紙詰まり判断部611による判断例を示す図である。図6(a)は用紙PとしてOHP用紙を適用した場合の検知信号の一例を示し、図6(b)は紙詰まり判断部611による紙詰まり判断動作のON/OFFの一例を示している。図6において、紙詰まり判断動作がONの時は紙詰まり判断部611が検知信号を用いて紙詰まりの有無を判断している期間であり、紙詰まり判断動作がOFFの時は紙詰まりの有無の判断を停止している期間を示す。
【0056】
図6に示すように、紙詰まり判断部611は、用紙Pの先端が搬送センサ109に到達したことを搬送センサ109にて検知したタイミング(T1)で、紙詰まり判断動作をOFFし、検知信号による紙詰まり判断動作を行わない。これにより、紙詰まり判断部611は、紙詰まり判断動作をOFFにしている期間中に、搬送センサ109の誤検知により検知信号がHigh/Lowの信号変化を繰り返しても、用紙Pの紙詰まりと判断してプリンタ部100の動作を停止することはない。
【0057】
図6に示すように、紙詰まり判断部611は、用紙Pの後端が搬送センサ109を通過したタイミング(T2)より後に、紙詰まり判断動作をONに切り替える(T3)。なお、用紙Pの後端が搬送センサ109を通過したタイミング(T2)は、用紙Pの搬送方向の長さと搬送速度に応じて算出して設定する。こうすることで、実際に用紙Pの紙詰まりが発生し検知信号にてHighレベルが継続していた場合に、用紙Pの紙詰まりと判断してプリンタ部100を停止させ、ユーザに用紙Pの紙詰まりの発生をアラートすることができる。
【0058】
なお、用紙Pの後端が搬送センサ109を通過したタイミング(T2)は用紙サイズに応じて異なるため、各サイズについて予めタイミング(T2)を決定しておき、記憶部62や制御部61内のワークメモリ(不図示)等に予め記憶させておく。また、用紙Pの後端が搬送センサ109を通過したタイミング(T2)は用紙長ばらつきや、搬送センサ109の検知ばらつき、搬送速度のばらつきなどを考慮して、用紙Pの搬送方向の長さと搬送速度から算出した値よりも少し長く設定しておくとよい。
【0059】
上述した紙詰まり判断部611における制御は、搬送センサ109の誤検知が発生しやすいOHP用紙、黒紙などの特定の紙種を用紙Pとして適用する場合にのみ適用する。そうすることで、搬送センサ109の誤検知の発生がない普通紙などの紙種では、設定よりも短い用紙Pを通紙した時などに、T2よりも早いタイミングで検知信号のHighレベルからLowレベルの信号変化を検知し、搬送異常をユーザにアラートすることが可能となる。
【0060】
続いて、紙詰まり判断処理の流れについて説明する。
【0061】
ここで、図7は紙詰まり判断処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、まず、紙詰まり判断部611は、用紙Pの搬送がスタートすると、搬送センサ109にて検知信号が出力されたか否かを判断する(ステップS11)。
【0062】
紙詰まり判断部611は、搬送センサ109が一定時間以上ONしない場合(ステップS11のNo、ステップS19のYes)、用紙Pの紙詰まりであるジャムとして確定する(ステップS20)。
【0063】
一方、紙詰まり判断部611は、搬送センサ109がONされて搬送センサ109から検知信号が出力されると(ステップS11のYes)、搬送センサ109での誤検知の発生の可能性がある紙種かどうかの判断をする(ステップS12)。なお、図7では仮に紙種をOHP用紙として記載しているが、他の誤検知の可能性がある紙種(たとえば、黒紙)でも同様の制御となる。
【0064】
紙詰まり判断部611は、紙種がOHP用紙である場合(ステップS12のYes)、紙詰まり判断動作をOFFにする(ステップS13)。
【0065】
続いて、紙詰まり判断部611は、用紙Pの搬送方向の長さと搬送速度から算出した用紙Pの後端が搬送センサ109を通過する時間(T2)が経過したかを判断する(ステップS14)。紙詰まり判断部611は、用紙Pの後端が搬送センサ109を通過する時間(T2)が経過すると(ステップS14のYes)、紙詰まり判断動作を再びONに変更する(ステップS15)。
【0066】
その後、紙詰まり判断部611は、搬送センサ109がOFFとなっている場合(ステップS21のNo)、正常排紙したものとして搬送完了する(ステップS22)。一方、用紙Pの後端が搬送センサ109を通過した時間(T2)の経過後にも搬送センサ109のONが継続している場合(ステップS21のYes)、用紙Pの紙詰まりが発生している可能性があるため、ジャムとして確定する(ステップS20)。
【0067】
一方、紙詰まり判断部611は、紙種がOHP用紙ではない場合において(ステップS12のNo)、搬送センサ109が用紙Pを検知しておらずOFFであるかを判断する(ステップS16)。
【0068】
紙詰まり判断部611は、搬送センサ109が用紙Pを検知しておらずOFFである場合(ステップS16のYes)、搬送センサ109がOFFになるのが早いかを判断する(ステップS17)。
【0069】
紙詰まり判断部611は、搬送センサ109がOFFになるのが早い場合(ステップS17のYes)、用紙Pの紙詰まりが発生している可能性があるため、状態異常検知(ジャムまたは用紙セットミス)とする(ステップS20)。一方、搬送センサ109がOFFになるのが遅い場合(ステップS17のNo)、正常排紙したものとして搬送完了する(ステップS22)。
【0070】
加えて、紙詰まり判断部611は、搬送センサ109が用紙Pを検知していてONである場合であって(ステップS16のNo)、搬送センサ109がOFFになるのが遅い場合(ステップS18のYes)、用紙Pの紙詰まりが発生している可能性があるため、ジャムとして確定する(ステップS20)。
【0071】
なお、図7では誤検知発生の可能性がある紙種にて制御を切り替える構成だが、黒紙でも搬送センサ109における誤検知の発生の可能性がある。ここで、図8は紙詰まり判断処理の流れを示すフローチャートの変形例である。図7で説明したように、搬送センサ109での誤検知の発生の可能性がある紙種かどうかの判断をする(ステップS12)のではなく、紙詰まり判断部611は、図8に示すように、印刷する画像濃度(印刷する画像データから算出される値である)が一定の値以上どうかを判断して(ステップS31)、制御を切り替えることも可能である。
【0072】
なお、図7または図8で示した制御であっても、実際に用紙Pの紙詰まりが発生していても、紙詰まり判断動作の再開後の搬送センサ109の検知にて誤検知が発生した場合(搬送センサ109の手前に用紙Pが存在していても検知信号がLowレベルのとき)は、用紙Pの紙詰まりの発生を判断することができない。そこで、制御部61(図3参照)は、特定の紙種が選択されているときには、用紙Pの搬送を開始する前(画像形成装置の場合には印刷動作を開始する前)に、用紙搬送部66を駆動させて搬送センサ109よりも搬送方向下流にジャムの用紙Pを搬送することが好ましい。具体的には、用紙搬送部66を構成するローラ(給紙ローラ101、中継ローラ102、レジストローラ103、排紙ローラ110)を、用紙Pを搬送方向下流に搬送させる方向に回すローラ回転時間を設けることで、搬送センサ109よりも搬送方向下流に設けられたセンサまでジャムの用紙Pを搬送し、搬送方向下流に設けられたセンサにて用紙Pの紙詰まり判定をすることができる。または、搬送センサ109よりも搬送方向下流に用紙Pを搬送して機外に用紙Pを排出するようにしてもよい。
【0073】
このように本実施形態によれば、特定の紙種を選択時、用紙Pの先端の搬送センサ109への到達以降、用紙Pの後端が搬送センサ109を通過するまで用紙Pの紙詰まり判定を停止することで、搬送途中に搬送センサ109の誤検知により検知信号がOFFになっても、用紙Pの紙詰まりとせず搬送を継続することができる。これにより、用紙Pの先端の搬送センサ109到達以外(搬送途中や用紙後端センサ抜け)を正しく検知することができない用紙Pにおいても、誤検知を防止し、不要にプリンタ部100を停止することなく、正常に用紙を搬送し続けることができるので、印刷の生産性を低下させないようにすることができる。
【0074】
なお、本実施形態においては、片面印刷のためのカーブ(湾曲)した搬送経路300について説明したが、これに限るものではない。ここで、図9は搬送経路300および両面搬送経路400を備えている例を示す図である。
【0075】
図9に示すように、プリンタ部100は、搬送経路300を搬送される用紙Pの表面と直交する方向(図9の左右方向)において、搬送経路300と対向する位置には両面印刷のための両面搬送経路400を備える。そして、搬送センサ109から射出される光の光軸延長線上における両面搬送経路400のガイド面400aは、搬送経路300を搬送される用紙Pの有無を検知する搬送センサ109から射出される光の光軸に対して傾斜するように設けられている。これにより、両面搬送経路400を搬送される用紙Pと搬送センサ109との光軸方向における距離を離すことができ、搬送センサ109が誤って、両面搬送経路400を搬送中の用紙Pを検出しないようにすることができる。
【0076】
なお、上記実施の形態では、本発明のシート搬送装置および画像形成装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、プリンタ、複写機、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【0077】
本発明のシート搬送装置は、画像形成装置以外にも、画像形成装置に対して外付されるシート搬送装置(たとえば、大容量給紙バンク)に対しても適用することができる。
【0078】
また、上記実施の形態で説明したシート状の被搬送物は、コート紙、厚紙、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等であってもよい。
【0079】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0080】
65 画像形成部
66 搬送部
67 選択部
109 搬送センサ
300 搬送経路
400 両面搬送経路
611 判断部
1000 シート搬送装置、画像形成装置
P シート状の被搬送物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開2010-254456号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9