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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137686
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ポリオレフィンの多段熱分解法
(51)【国際特許分類】
   C07C 4/04 20060101AFI20240927BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 9/06 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 11/24 20060101ALI20240927BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C07C4/04 ZAB
C07C11/04
C07C9/06
C07C11/24
C08J11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219087
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2023046545
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】福本 和貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀越 智
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA70
4F401CA90
4F401CB03
4F401CB14
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4H006AA05
4H006AC26
4H006BB61
4H006BC10
(57)【要約】
【課題】ポリオレフィンの熱分解において、オレフィンモノマーとなるエチレンやプロピレンを収率高く得るとともに、タールやチャー等の多環芳香族炭化水素類の生成を抑える熱分解法を提供する。加えて、省エネルギーかつ温度応答性の良いマイクロ波加熱を用いることで、原料変化や需給バランスに適した熱分解法を提供し、かつ固定床反応器で伝熱面積を大きくすることによりコンパクトな反応器での熱分解法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィンを熱分解するプロセスであって、ポリオレフィンを加熱により粗分解する第1の工程と、前記第1の工程で得られた粗分解物を加熱により600℃以上1000℃未満で分解する第2の工程と、を含む、ポリオレフィンの多段熱分解法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを熱分解するプロセスであって、
ポリオレフィンを加熱により粗分解する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた粗分解物を加熱により600℃以上1000℃未満で分解する第2の工程と、を含むポリオレフィンの多段熱分解法。
【請求項2】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンおよびポリプロピレンの少なくとも一方を含む、請求項1に記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
【請求項3】
前記ポリオレフィンを酸素濃度0.5ppm以下の不活性ガス流通下で加熱する、請求項1に記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
【請求項4】
前記第1の工程において400℃以上700℃以下で粗分解する、請求項1に記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
【請求項5】
前記第2の工程での分解が700℃以上1000℃未満である、請求項1に記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
【請求項6】
前記第2の工程での加熱がマイクロ波加熱である、請求項1に記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
【請求項7】
前記マイクロ波加熱を、マイクロ波吸収体を充填物とする固定床反応器で行う、請求項6に記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンの多段熱分解法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの中でも、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンは、生産量および廃棄量が多い。ポリオレフィンのケミカルリサイクル法としては、例えば、ポリオレフィンの熱分解法が知られている。ポリオレフィンの熱分解法では、分解物が分子量分布を持つとともに、固相から液相、液相から気相への相変化を伴うため、モノマーまたはその誘導体を効率的に得る熱分解温度の精緻な設計が求められる。
【0003】
ポリオレフィンを効率的に熱分解する手法として、例えば、熱分解を2つの工程に分割し、1段目で油分またはワックス分まで分解し、さらに高温な2段目でプラスチックの原料物質および原料物質の複合体からなるガス状生成物を製造する装置または方法が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1、2参照)。特許文献1には、炭化水素含有材料を第1反応器でガス状炭化水素まで分解し、より高温な第2反応器に移送し加熱分解する装置が記載されている。非特許文献1および2には、500℃付近での第1反応器と800℃~900℃程度の第2反応器を用いた2段分解法により、ポリエチレンから軽質ガスを効率的に得られると記載されている。特に第2反応器の滞留時間を短くすることで分解物の再重合や芳香族化を抑えると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014-503610号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Artetxe M.ら、Industrial & Engineering Chemistry Research、51巻、2012年1月19日、13915)
【非特許文献2】Della Zassa M.ら、Journal of Analytical and Applied Pyrolysis、87巻、2009年6月22日、248)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、プラスチックが例示されているものの、具体的なプラスチックの分解反応については記載されていない。また、プラスチックを原料とした実施例もなく、具体的な分解条件についての記載も一切ない。また、非特許文献1には、ポリエチレンの分解において第1反応器の温度は500℃で一定となっており、第2反応器の温度は800℃~950℃と示されているが、950℃では多環芳香族炭化水素類の生成が確認されている。加えて、非特許文献1および2では、第2反応器の加熱にチューブ反応器の外部加熱を採用しており、原料組成の安定しない廃棄プラスチックの分解においては樹脂組成に起因する分解の適正温度が変化しやすく、温度管理の応答性の低さによるオレフィン類の製造安定性の低下が懸念される。また、伝熱面積の観点からスケールアップに際してチューブの長尺化等、装置が大型化してしまう課題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ポリオレフィンの熱分解において、オレフィンモノマーとなるエチレンやプロピレンを収率高く得るとともに、アセチレンおよびタールやチャー等の多環芳香族炭化水素類の生成を抑える熱分解法を提供することを目的とする。加えて、省エネルギーかつ温度応答性の良いマイクロ波加熱を用いることで、原料変化や需給バランスに適した熱分解法を提供し、かつ固定床反応器で伝熱面積を大きくすることによりコンパクトな反応器での熱分解法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]ポリオレフィンを熱分解するプロセスであって、
ポリオレフィンを加熱により粗分解する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた粗分解物を加熱により600℃以上1000℃未満で分解する第2の工程と、を含む、ポリオレフィンの多段熱分解法。
[2]前記ポリオレフィンが、ポリエチレンおよびポリプロピレンの少なくとも一方を含む、[1]に記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
[3]前記ポリオレフィンを酸素濃度0.5ppm以下の不活性ガス流通下で加熱する、[1]または[2]に記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
[4]前記第1の工程において400℃以上700℃以下で粗分解する、[1]~[3]のいずれかに記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
[5]前記第2の工程での分解が700℃以上1000℃未満である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
[6]前記第2の工程での加熱がマイクロ波加熱である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリオレフィンの分多段熱解法。
[7]前記マイクロ波加熱を、マイクロ波吸収体を充填物とする固定床反応器で行う、[6]に記載のポリオレフィンの多段熱分解法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリオレフィンの熱分解において、オレフィンモノマーとなるエチレンやプロピレンを収率高く得るとともに、タールやチャー等の多環芳香族炭化水素類の生成を抑える熱分解法を提供できる。加えて、省エネルギーかつ温度応答性の良いマイクロ波加熱を用いることで、原料変化や需給バランスに適した熱分解法を提供し、かつ固定床反応器で伝熱面積を大きくすることによりコンパクトな反応器での熱分解法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るポリオレフィンの多段熱分解法で用いられるポリオレフィン分解装置を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るポリオレフィンの多段熱分解法で用いられるポリオレフィン分解装置を構成する反応容器を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0012】
[ポリオレフィンの多段熱分解法]
本発明の一実施形態に係るポリオレフィンの多段熱分解法は、ポリオレフィンを加熱により粗分解する第1の工程と、第1の工程で得られた粗分解物を加熱により600℃以上1000℃未満で分解する第2の工程と、を含むことにより、ポリオレフィンを分解する。
また、本発明のポリオレフィンの多段熱分解法は、第1及び第2の工程以外の工程を有していてもよい。例えば、ポリオレフィンの前処理工程、脱塩工程、中和工程、洗浄工程、滅菌工程、除害工程、熱交換工程、蒸留工程、抜出工程等が挙げられる。第1及び第2の工程の間に、他の工程を設けてもよいが、放熱による粗分解物の固化による閉塞や、第2の工程での炉温低下を防ぐため、第1及び第2の工程は連続して行い、保温されていることが好ましい。
【0013】
「ポリオレフィン」
本実施形態に係るポリオレフィンの多段熱分解法における、処理対象物質であるポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリαオレフィン、ポリスチレン等が挙げられる。ポリオレフィンは、ポリエチレンおよびポリプロピレンの少なくとも一方を含むことが好ましい。すなわち、ポリエチレンまたはポリプロピレンのみを含んでいてもよく、ポリエチレンおよびポリプロピレンを含んでいてもよい。ポリオレフィンは2種類以上のモノマーを用いて重合された共重合体であってもよい。
ポリオレフィンは、利用後に回収されたプラスチック廃棄物や、製造工程や成形工程から回収されたものが用いられる。
【0014】
ポリオレフィンは、分解する前に前処理を行うことが好ましい。
ポリオレフィンが汚れている場合、ポリオレフィンを洗浄して、汚れを除去する。
ポリオレフィンは、様々な形状をなしている。このままの状態でポリオレフィンを熱分解しようとしても、均一に熱分解することができないことがある。そのため、ポリオレフィンを、予め粉砕すると分解速度を向上させることができる。
【0015】
ポリオレフィンの成型物等は、かさばるため、粉砕や圧縮することにより容量を小さくすることが好ましい。
粉砕後のポリオレフィンの形状は、例えば、削りくず状、片状、粒状、粉末状、チップ状、シート状のいずれであってもよく、これらの組合せでもよい。
ポリオレフィンを粉砕する手段としては、例えば、固定刃を備えた回転軸が回転している円筒状内部にホッパーから供給し、回転刃の作用で切断する装置が用いられる。
ポリオレフィンを圧縮する手段としては、例えば、プレス機により物理圧縮されたもの、単軸または多軸押出機により減容処理されたもののいずれであってもよく、これらの組合せでもよい。
【0016】
「第1の工程」
第1の工程では、ポリオレフィンを加熱することにより、前記ポリオレフィンを粗分解し、得られた粗分解物を第2の工程へと供給する。
なお、本発明において粗分解とは、ポリオレフィンを最大分子量1000以下の化合物に低分子化することを指す。第1の工程での粗分解物の分子量の上限は、1000以下であり、800以下が好ましく、700以下がより好ましい。粗分解物の最大分子量が上記上限値以下であることで、粗分解物を第2の工程へ気相または液相で供給することが可能になり、オレフィンモノマーの歩留まりが良くなるとともに、粗分解物の固化による第1の工程と第2の工程間の配管の閉塞を防ぐことができる。
【0017】
上記粗分解物の分子量は、レーザー脱離イオン化質量分析法(LDI-MS)にて分析して、測定される。前記LDI-MS測定は、粗分解物をターゲットプレートに載せ、Nd:YLFレーザー強度53%、Delay Time300ns、マトリックスなしの条件にて分析する。前記粗分解物の分子量は、得られたLDI-MS(+)スペクトルより、ヘテロ原子を含まない化合物ピークを有意なピークとみなし、前記有意ピークのうち、ピーク高さがスペクトル中の最大ピーク強度の1%以上となる化合物の中で、最も大きい分子量を有する化合物ピークの分子量をポリオレフィン分解物の最大分子量とする。
【0018】
第1の工程で用いられる反応器は、ポリオレフィンを加熱することができれば特に限定されないが、例えば、回分反応器、槽型反応器、管型反応器のいずれであってもよく、これらの組合せでもよい。反応器の形式は、固定床、流動床、懸濁床、噴流床、キルン、ロータリーキルンのいずれであってもよく、これらの組合せでもよい。反応器の加熱方法は、スチーム加熱、オイル加熱、バーナー加熱、高周波誘導加熱、高周波誘電加熱、ハロゲンランプ加熱、プラズマ加熱、マイクロ波加熱のいずれであってもよく、これらの組合せでもよい。
【0019】
第1の工程でのポリオレフィンを分解する際の反応器内の温度は、特に限定されないが、下限は通常400℃であり、500℃が好ましく、550℃がより好ましい。分解時の反応器内の温度が上記下限値以上であることで、ポリオレフィンの熱分解による低分子化が進行し、第2の工程へ気相または液相で供給することが可能になる。また、反応器内の温度の上限は通常700℃であり、650℃が好ましく、625℃がより好ましい。分解時の反応器内の温度が上記上限値以下であることで、ポリオレフィンの過剰な分解によるタールやチャーなど多環芳香族炭化水素の生成を抑制することで、オレフィンモノマーおよびその誘導体ガスの歩留まりが良くなる。また、温度が高いほど粗分解物の最大分子量は小さくなる。
【0020】
第1の工程でのポリオレフィンの粗分解で、反応器内に流通する不活性雰囲気は、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、水蒸気のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。不活性雰囲気は、水素、軽質パラフィンガスを含んでいてもよい。不活性雰囲気の酸素濃度の上限は、0.5ppmであり、0.1ppmが好ましく、0.02ppmがより好ましい。不活性雰囲気の酸素濃度が上記上限値以下であることで、発熱反応であるポリオレフィンの酸化による熱暴走を抑え、さらにオレフィンモノマーおよびその誘導体ガスの歩留まりが良くなる。
【0021】
第1の工程で用いられる反応器と第2の工程で用いられる反応器の間は、特に限定されないが、連結されていることが好ましい。第1の工程で用いられる反応器と第2の工程で用いられる反応器が連結されていることで昇降温の過程を必要とせず、余分なエネルギー消費を防ぐとともに、粗分解ガスの冷却固化による閉塞を防ぐことができる。また、第1の工程で用いられる反応器と第2の工程で用いられる反応器の間に温度勾配があってもよい。
【0022】
「第2の工程」
第2の工程では、反応器内で、第1の工程で粗分解された前記ポリオレフィンの粗分解物を600℃以上1000℃未満に加熱し、前記粗分解物を熱分解する。
【0023】
第2の工程で用いられる反応器は、第1の工程で粗分解された前記ポリオレフィン分解物を加熱することができれば、特に限定はされないが、例えば、回分反応器、槽型反応器、管型反応器のいずれであってもよく、管型反応器が好ましい。反応器の形式は、固定床、流動床、懸濁床、噴流床、キルン、ロータリーキルンのいずれであってもよく、固定床が好ましい。反応の方法は、バッチ法または流通法のいずれであってもよく、流通法が好ましい。第2工程の分解反応器が前記固定床流通反応器であると、充填物と被加熱物の伝熱面積を大きくすることができ、反応器サイズが小さくなる。
【0024】
反応器の加熱方法は、マイクロ波加熱が好ましい。前記マイクロ波加熱により、反応器に充填されたマイクロ波発熱体を直接加熱する内部加熱を採用することで、加熱電力の制御が容易で、温度応答が早く、均一加熱が可能となり、過剰な熱分解による分解ガスの再重合を抑え、オレフィンモノマーおよびその誘導体ガスの収率が高くなる。
【0025】
第2の工程では、反応器に充填されたマイクロ波発熱体にマイクロ波を照射して、マイクロ波発熱体を600℃以上1000℃未満に加熱し、第1の工程で粗分解された前記ポリオレフィンの粗分解物をマイクロ波発熱体に接触させることで熱分解することが好ましい。
【0026】
マイクロ波発熱体としては、特に限定されないが、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、炭素繊維、カーボンドット、カーボンナノワイヤ、すす、有機物由来の炭化物、等が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、ファーネス、チャネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等のいずれであってもよく、これらの組合せでもよい。マイクロ波発熱体の形状は、特に限定されないが、例えば、粉末状、球状、ペレット状、押出型、リング状、ハニカム状が挙げられる。また、マイクロ波発熱体は、担体に担持またはコーティングされていてもよい。
【0027】
マイクロ波発熱体の粒径は、特に限定されないが、下限は0.1mmであり、0.5mmが好ましく、1mmがより好ましい。粒径が上記下限値以上であることで、圧力損失や反応管の閉塞を防ぐことができ、さらに蓄熱によりマイクロ波加熱の効率が向上する。また、マイクロ波発熱体の粒径の上限は100mmであり、75mmが好ましく、50mmがより好ましい。粒径が上記上限値以下であることで、表面積を大きくすることができるとともに、均一なマイクロ波加熱ができる。
【0028】
第2の工程の反応器に照射するマイクロ波の周波数は、特に限定されないが、300MHz~300GHzであり、一般的な工業規格であるISM周波数である902MHz~928MHz、2.2GHz~2.7GHz、または5.55GHz~6.05GHzが好ましい。マイクロ波の強度は制御部によって適宜制御されてもよく、例えば、温度等のセンシング結果を用いたフィードバック制御が用いられる。
【0029】
第2の工程でのポリオレフィンを分解する際の反応器内の温度は、特に限定されないが、下限は600℃であり、700℃が好ましく、800℃がより好ましく、900℃がさらに好ましい。分解時の反応器内の温度が上記下限値以上であることで、エタンやプロパンの副生を抑制し、エチレンやプロピレンを収率高く得ることができる。また、上限は990℃が好ましく、980℃がより好ましく、970℃がさらに好ましい。分解時の反応器内の温度が上記上限値以下であることで、ポリオレフィンの過剰な分解によるメタンやアセチレンおよびタールやチャー等の多環芳香族炭化水素類の副生を抑制し、モノマー収率あるいは選択性を向上できる傾向にある。
【0030】
上記分解時の温度は、反応器に充填されたマイクロ波発熱体にマイクロ波を照射した際に加熱された充填物より放射される赤外線を、あらかじめ黒体基準器にて校正した石英透過型放射温度計(実行波長1.95μm~2.6μm)にて検出し、測定する。
【0031】
第2の工程でのポリオレフィンを分解で流通する不活性雰囲気は、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、水蒸気のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。不活性雰囲気は、水素、軽質パラフィンガスを含んでいてもよい。不活性雰囲気の酸素濃度の上限は、0.5ppmであり、0.1ppmが好ましく、0.02ppmがより好ましい。不活性雰囲気の酸素濃度が上記上限値以下であることで、発熱反応であるポリオレフィンの酸化による熱暴走を抑え、さらにオレフィンモノマーおよびその誘導体ガスの歩留まりが良くなる。
【0032】
「ポリオレフィン分解装置」
次に、ポリオレフィン分解装置を用いたポリオレフィンのマイクロ波分解法を説明するが、装置などはこれに限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係るポリオレフィンの多段熱分解法で用いられるポリオレフィン分解装置を示す模式図である。図2は、図1に示すポリオレフィン分解装置を構成する反応容器を示す模式図である。
図1に示すように、ポリオレフィン分解装置1は、ポリオレフィン供給部10と、電気炉加熱装置部20と、マイクロ波加熱装置部30と、電気炉加熱測温部40と、マイクロ波加熱測温部50と、反応容器60と、制御PC70と、を備える。
【0033】
ポリオレフィン供給部10は、エアレスフィードコック11と、コネクター12と、Y字管13と、を有する。これらの部材は、この順に連設している。コネクター12には、枝管があり、導入管91を通じて不活性ガスを反応容器60に導入するためのものである。
【0034】
電気炉加熱装置部20は、電気炉21を有する。電気炉加熱装置部20は、電気炉21による加熱により、ポリオレフィン供給部10より落下導入されたポリオレフィンを粗分解する。電気炉加熱装置部20は、空洞部22が垂直になるよう縦置きされており、空洞部22には反応容器60が設置される。
【0035】
マイクロ波加熱装置部30は、マイクロ波発振器31と、同軸ケーブル32と、インピーダンス整合器33と、同軸導波管変換器34と、共振器35と、検波器36と、窓37と、を有する。これらの部材は、この順に連設しており、共振器35は電気炉21の一端(紙面下側)に連結されている。マイクロ波発振器31から発振したマイクロ波(進行波)は同軸ケーブル32を伝搬し、インピーダンス整合器33により整合されたマイクロ波が同軸導波管変換器34を伝搬して共振器35に導入されている。反応容器60等で反射してマイクロ波発振器31側へ戻ったマイクロ波(反射波)を、マイクロ波発振器31内のパワーモニタ出力信号で検知する。マイクロ波発振器31は、制御PC71と接続されている。共振器35は、検波器36と、放射温度計51と、を有する。検波器36と、放射温度計51とは、制御PC71に接続されており、ワークの共振周波数と反応容器60の内温を測定している。
また、共振器35には、共振器35内に挿入された反応容器60を観察するための窓37が設けられている。
【0036】
電気炉加熱測温部40は、熱電対41と、温度調節器42と、データロガー43と、を有する。電気炉加熱装置部20の内温は熱電対41にて測定され、温度調節器42にて温度制御されるとともに、データロガー43で測定データが記録される。
【0037】
マイクロ波加熱測温部50は、放射温度計51を有する。放射温度計51は、窓37に配置されている。また、放射温度計51は、制御PC71と接続されている。
【0038】
反応容器60は、円筒形状である。図2に示すように、反応容器60は、長手方向の上部に充填物101と下部にマイクロ波発熱体102を収容する。また、反応容器60には、充填物101における反応容器60の長手方向の下端に接するようにガラスウール103が収容され、マイクロ波発熱体102における反応容器60の長手方向の下端に接するようにガラスウール103が収容されている。
【0039】
また、反応容器60は、電気炉加熱装置部20内および共振器35内に配置されている。詳細には、反応容器60は、電気炉加熱装置部20の内部に貫通する貫通孔に挿入されて、電気炉加熱装置部20の中心部に充填物101の中心部が配置される。また、共振器35には、共振器35内に挿入された反応容器60を観察するための窓37が設けられている。この窓37に、マイクロ波発熱体102が対面するように、共振器35の中心部に対して充填物101の中心部が配置される。また、反応容器60の一端61(紙面上側)にはY字管13と、コネクター12と、エアレスフィードコック11が連設している。コネクター12には、反応容器60内に窒素ガスを導入する導入管91が接続されている。さらに、反応容器60の他端(紙面下側)62には、反応容器60内から分解ガスを排出する排出管92が接続されている。排出管92における反応容器60とは反対側の端には、ガスバックが接続される。
【0040】
ポリオレフィン分解装置1を用いて、ポリオレフィンを熱分解するには、まず、反応容器60内上部に、充填物101とガラスウール103とを収容するとともに、反応容器60内の上部に固定する。また、反応容器60内の下部に、マイクロ波発熱体102とガラスウール103とを収容するとともに、反応容器60内の下部に固定する。
【0041】
次いで、充填物101とマイクロ波発熱体102を収容した反応容器60を、電気炉加熱装置部20および共振器35を貫通するよう配置する。この際、充填物101の中央部は電気炉加熱装置部20の中央に配置し、マイクロ波発熱体102の中央部は電場が最大となる共振器35の中心部に配置するよう反応容器60を固定する。
【0042】
次いで、窒素雰囲気下にてポリオレフィンを封入したエアレスフィードコック11と、コネクター12と、Y字管13と、を接続したポリオレフィン供給部10を反応容器60の一端61(紙面上側)に連結する。この際、熱電対41を、Y字管13から反応容器60内の上部の充填物101の中心部に位置するよう、熱電対41を固定する。
【0043】
次いで、導入管91からコネクター12を通じて反応容器60内への窒素ガスの流通を開始し、その状態で数分間静置し、反応容器60内を窒素雰囲気下とする。
次いで、排出管92における反応容器60とは反対側の端にガスバックを接続する。
次いで、窒素流通下で電気炉加熱装置部20と温度調節器42とを起動し、所定温度制御で反応容器60内の充填物101を加熱し、所定温度まで到達し、温度が数分間一定となるまで静置する。
【0044】
次いで、窒素流通下でマイクロ波発振器31を起動し、所定温度制御で反応容器60内のマイクロ波発熱体102にマイクロ波を照射しながら、インピーダンス整合器33を調節して、進行波と反射波の差が最大となるよう調整する。
マイクロ波発熱体102にマイクロ波を照射すると、マイクロ波発熱体102が発熱して、所定温度まで到達し、温度が数分間一定となるまで静置する。
【0045】
次いで、エアレスフィードコック11のコックを回転させ、ポリオレフィンを間欠的に投下し、ポリオレフィンを熱分解する。
ポリオレフィンが熱分解することによって発生した分解ガスは、排出管92を通って、反応容器60の外部へ排出され、ガスバックに回収される。回収された分解ガスには、オレフィンモノマーと、オレフィンモノマー誘導体、メタンを含むパラフィンおよび水素が含まれる。
【0046】
本発明に係るポリオレフィンの多段熱分解法によれば、ポリオレフィンの熱分解におけるオレフィンモノマーとなるエチレンやプロピレンが収率高く得られる熱分解法を提供できる。加えて、省エネルギーかつ温度応答性の良いマイクロ波加熱を用いることで、原料変化や需給バランスに適した熱分解法を、コンパクトな固定床反応器で提供できる。
【実施例0047】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)0.964gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)0.602gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器の上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にて高密度ポリエチレン(Sigma-Aldrich社製)0.5058gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を600℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる900℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計15分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。反応中の電気管状炉の内温は600℃、マイクロ波吸収体の温度は900℃であった。
得られた分解ガスの収率は61%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成は目視で観測されなかった。
また、ガス成分について、下記の条件でガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレン選択率は0.4%、エチレン選択率は49.6%、エタン選択率は7.0%、プロピレン選択率は17.4%、プロパン選択率は1.4%、メタン選択率は22.2%であった。
また、第1の工程で得られる粗分解物について、最大分子量を下記の条件でLDI-MS測定を行ったところ、698であった。
【0049】
<GC測定>
ガスクロマトグラフ:GC-2014(型式名)、島津製作所社製
カラム:ShincarbonST 50/80(1.0m・3mm、信和化工社製)
カラムオーブン温度:40℃
移動相:He30mL/min
分析時間:30min
検出:TCD検出器
試料:1mL注入
<LDI-MS測定>
レーザー脱離イオン化法飛行時間質量分析装置:JMS-S3000(型式名)、日本電子社製
レーザー :Nd:YLFレーザー(349nm)
強度:53%
Delay Time:300nsec
Detector:70
イオン収束モード:スパイラルモード
検出イオン:正イオン検出
走査質量数範囲:50~5000(m/z)
マトリックス:なし
【0050】
[実施例2]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)0.990gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)1.996gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にて高密度ポリエチレン(Sigma-Aldrich社製)0.4950gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を620℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる950℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計15分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。反応中の電気管状炉の内温は620℃、マイクロ波吸収体の温度は950℃であった。
得られた分解ガスの収率は95%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成は目視で観測されなかった。
また、ガス成分について、下記の条件でガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレン選択率は0.2%、エチレン選択率は48.5%、エタン選択率は7.5%、プロピレン選択率は19.7%、プロパン選択率は1.2%、メタン選択率は19.9%であった。
【0051】
[実施例3]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)0.993gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)2.006gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にて高密度ポリエチレン(Sigma-Aldrich社製)0.5017gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を450℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる950℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計15分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。反応中の電気管状炉の内温は450℃、マイクロ波吸収体の温度は950℃であった。
得られた分解ガスの収率は57%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成は目視で観測されなかった。
また、ガス成分について、下記の条件でガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレン選択率は0.3%、エチレン選択率は50.3%、エタン選択率は5.1%、プロピレン選択率は24.7%、プロパン選択率は1.1%、メタン選択率は12.7%であった。
また、第1の工程で得られる粗分解物について、実施例1と同様にしてLDI-MS測定を行ったところ、最大分子量は726であった。
【0052】
[実施例4]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)0.988gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)2.0177gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にてポリプロピレン(Sigma-Aldrich社製)0.5090gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を620℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる950℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計15分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。反応中の電気管状炉の内温は620℃、マイクロ波吸収体の温度は950℃であった。
得られた分解ガスの収率は98%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成は目視で観測されなかった。
また、ガス成分について、下記の条件でガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレン選択率は0.2%、エチレン選択率は21.0%、エタン選択率は10.3%、プロピレン選択率は40.0%、プロパン選択率は1.5%、メタン選択率は22.7%であった。
【0053】
[実施例5]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)0.988gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)2.002gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にて高密度ポリエチレン(Sigma-Aldrich社製)0.4980gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を450℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる750℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計15分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。反応中の電気管状炉の内温は450℃、マイクロ波吸収体の温度は740℃であった。
得られた分解ガスの収率は54%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成は目視で観測されなかった。
また、ガス成分について、下記の条件でガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレンは観測されず、エチレン選択率は35.3%、エタン選択率は9.6%、プロピレン選択率は20.8%、プロパン選択率は9.9%、メタン選択率は14.7%であった。
【0054】
[実施例6]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)0.992gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)2.0311gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にてポリプロピレン(Sigma-Aldrich社製)0.4982gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を450℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる650℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計15分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。反応中の電気管状炉の内温は450℃、マイクロ波吸収体の温度は650℃であった。
得られた分解ガスの収率は62%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成は目視で観測されなかった。
また、ガス成分について、下記の条件でガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレンは観測されず、エチレン選択率は3.4%、エタン選択率は10.0%、プロピレン選択率は73.7%、プロパン選択率は4.2%、メタン選択率は7.5%であった。
【0055】
[比較例1]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)0.982gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)0.604gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にて高密度ポリエチレン(Sigma-Aldrich社製)0.5089gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を600℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる1000℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計15分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。反応中の電気管状炉の内温は600℃、マイクロ波吸収体の温度は1000℃であった。
得られた分解ガスの収率は63%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成が観測された。
また、ガス成分について、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレン選択率は15.2%、エチレン選択率は43.6%、エタン選択率は1.2%、プロピレン選択率は6.9%、プロパン選択率は0.3%、メタン選択率は32.6%であった。
【0056】
[比較例2]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)0.986gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)0.5097gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にて高密度ポリエチレン(Sigma-Aldrich社製)0.5075gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を450℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる1200℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計30分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。反応中の電気管状炉の内温は450℃、マイクロ波吸収体の温度は1200℃であった。
得られた分解ガスの収率は56%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成が観測された。
また、ガス成分について、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレン選択率は18.8%、エチレン選択率は45.4%、エタン選択率は1.6%、プロピレン選択率は8.2%、プロパン選択率は0.3%、メタン選択率は24.1%であった。
【0057】
[比較例3]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)0.999gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)0.5278gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にてポリプロピレン(Sigma-Aldrich社製)0.5014gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を450℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる1200℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計30分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。反応中の電気管状炉の内温は450℃、マイクロ波吸収体の温度は1200℃であった。
得られた分解ガスの収率は86%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成が観測された。
また、ガス成分について、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレン選択率は12.8%、エチレン選択率は33.3%、エタン選択率は2.4%、プロピレン選択率は17.3%、プロパン選択率は0.3%、メタン選択率は31.4%であった。
【0058】
[比較例4]
ポリオレフィン分解装置としては、図1に示すようなセラミック電気管状炉(アサヒ理化製作所社製、ARF-16KC)にシングルモードのマイクロ波加熱装置(凌和電子社製、MR-2G-100、励磁周波数2.4GHz~2.5GHz、円筒型TM010モード)を接続した装置を用いた。反応容器としては、石英管(管長40cm、内径8mm)を用いた。反応容器内に、電気管状炉部位の充填物としてディクソンパッキン(トウトクエンジ社製)1.013gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。加えて、マイクロ波発熱体となる炭化ケイ素(東工薬株式会社製カーボランダム16メッシュ)0.587gを投入し、充填物の下に、ガラスウールを詰めて、反応容器内に前記充填物を収容した。
電気管状炉、およびマイクロ波加熱装置の内部に、それぞれ充填物が中心となる位置に反応容器を固定した。
反応容器上部をY字型連結管に接続し、一方からは熱電対をディクソンパッキン充填物の半分の深さの位置まで差し込み、もう一方には吹込管付き連結管および窒素下にて高密度ポリエチレン(Sigma-Aldrich社製)0.4991gを封入したエアレスフィードコック(旭製作所社製)を接続した。反応容器の上部の吹込管から、反応容器内に窒素(G3規格、酸素濃度0.5volppm)を流速20mL/minで流通し、その状態で5分間静置し、反応容器内を窒素雰囲気下とした。反応容器の下部にガスバックを接続した。
上記窒素流通下で電気管状炉を450℃に昇温するとともに、マイクロ波発振器を起動し、ダブルスラグを調節して進行波と反射波の差が最大となるよう調整し、反応容器内部のマイクロ波吸収体の温度を石英透過型放射温度計(型式名:FLHX-TNE0220、ジャパンセンサー社製)で測定し、フィードバック制御により設定値となる600℃で安定させた。
電気管状炉およびマイクロ波加熱装置の温度調整終了時刻を反応開始時刻とし、エアレスフィードコックのコックを回転させて、ポリエチレンペレットを1分おきに15mg~30mgずつ反応容器に投入し、合計10分間反応させ、ポリオレフィンの分解ガスをガスバック内に回収した。このとき、反応容器内でのポリエチレンの閉塞が観測された。反応中の電気管状炉の内温は450℃、マイクロ波吸収体の温度は590℃であった。
得られた分解ガスの収率は12%であった。反応後の反応容器にタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成は目視で観測されなかった。
また、ガス成分について、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー測定を行い、アセチレン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンおよびメタン量を定量したところ、アセチレンは観測されず、エチレン選択率は31.2%、エタン選択率は12.5%、プロピレン選択率は26.7%、プロパン選択率は17.1%、メタン選択率は12.4%であった。
【0059】
実施例1~6および比較例1~4の結果をまとめて表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示す結果から、第2工程を600℃以上1000℃未満とする実施例1~6は、第2工程を600℃未満または1000℃以上とする比較例1~4よりも、オレフィンモノマーとなるエチレンまたはプロピレンの収率に優れており、かつ副生物となるアセチレンとタールやチャー等の多環芳香族炭化水素の生成が抑制されていることが分かる。
さらに、実施例1~3および実施例5では、原料に高密度ポリエチレンを用いることでエチレンの収率に優れることが分かる。また、実施例4では、原料にポリプロピレンを用いることでプロピレンの収率が優れていることが分かる。また、実施例1~6から、第2工程に固定床流通反応器を用いた、コンパクトな反応器でポリオレフィンの分解が可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のポリオレフィンの多段熱分解法は、分解ガス中のオレフィンモノマーの収率が高く、タールやチャーなど多環芳香族炭化水素の生成が抑制されることから、ポリオレフィンのリサイクル法として非常に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 ポリオレフィン分解装置
10 ポリオレフィン供給部
20 電気炉加熱装置部
30 マイクロ波加熱装置部
40 電気炉加熱測温部
50 マイクロ波加熱測温部
60 反応容器
70 制御PC
図1
図2